JP5110377B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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この発明は、合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度被削材を、高い発熱を伴うとともに、切刃に対して大きな機械的・衝撃的負荷が作用する高速断続高送り切削条件で切削加工した場合でも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、炭化タングステン基(WC基)超硬合金または炭窒化チタン基(TiCN基)サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層として、
(a)下部層として、0.1〜2μmの平均層厚を有する粒状結晶組織のTiC層、TiN層、TiCN層(以下、粒状Ti化合物層という)、
(b)中間層として、0.5〜3μmの平均層厚を有する縦長成長結晶組織のTiCNO層(以下、縦長TiCNO層という)、
(c)上部層として、2〜20μmの平均層厚を有する縦長成長結晶組織のTiCN層(以下、縦長TiCN層という)、
(d)最表面層として、0.2〜15μmの平均層厚を有するAl層、
上記の各層を化学蒸着により形成してなる被覆工具(以下、従来被覆工具という)が知られており、そして、この従来被覆工具は、高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮することが知られている。
なお、上記従来被覆工具における中間層(縦長TiCN層)は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成することができ、そしてこれがすぐれた高温強度を有することも知られている。
特開平11−172464号公報 特開平6−8010号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化、省エネ化、高効率化、低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と過酷な条件下で行われる傾向にあり、被覆工具の長寿命化を図るため、最表面のAl層を厚膜化する試みもなされているが、上記従来被覆工具は、これを合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度被削材の高速連続切削や高速断続切削に用いた場合には、耐摩耗性について特段の問題は生じないが、特にこれを高い発熱を伴うとともに切刃に対して大きな機械的・衝撃的負荷が作用する高速断続高送り切削加工に用いた場合には、硬質被覆層の高温強度が十分でないため、切削加工時に切刃に作用する大きな機械的・衝撃的負荷によりチッピングが発生しやすく、その結果、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、硬質被覆層の耐チッピング性の向上をはかるべく、硬質被覆層の構成層であるTi化合物層、特に、上記従来被覆工具の中間層である縦長TiCNO層に着目し、研究を行った結果、以下のような知見を得た。
(a)上記従来被覆工具の硬質被覆層の下部層(粒状Ti化合物層)と上部層(縦長TiCN層)の間に介在形成された中間層(縦長TiCNO層)は、化学蒸着によって微細結晶組織を有する層として形成され、この上に更に縦長TiCN層を形成した場合に、縦長TiCN層の結晶微細化を促進するという作用を有しており、その結果、すぐれた靭性を有する縦長TiCN層からなる上部層が形成されて被覆工具の特性改善が図られていたが、縦長TiCNO層からなる中間層にかえて、硬質被覆層の下部層(粒状Ti化合物層)と上部層(縦長TiCN層)の間に粒状結晶組織を有するWCNO層(以下、粒状WCNO層という)を中間層として化学蒸着で形成すると、粒状WCNO層からなる中間層は、縦長TiCNO層に比して、すぐれた高温強度を備えるため耐チッピング性向上に有効であるが、その反面、高温硬さの低下がみられ、耐摩耗性が不十分となるため、中間層を粒状WCNO層の単層ではなく、粒状WCNO層と粒状結晶組織を有するTiCNO層(以下、粒状TiCNO層という)との複層として構成したところ、中間層は、高温硬さの低下もなくすぐれた高温強度を有し、その結果、粒状TiCNO層と粒状WCNO層の複層からなる中間層を備えた被覆工具は、大きな発熱を伴い、かつ、切刃に対して大きな機械的・衝撃的負荷が作用する高速断続高送り切削加工に用いた場合にも、すぐれた耐チッピング性を示すこと。
(b)また、例えば、上記従来被覆工具において、耐摩耗性向上、長寿命化のためにAl層からなる最表面層の厚膜化を図った場合、化学蒸着装置内に配置された工具基体は長時間高温に曝されるため、工具基体を構成する成分元素の拡散が生じやすく、特に、高温強度、耐熱塑性変形性等を向上させるためにCr酸化物、Cr炭化物等のCr成分を含有するWC基超硬合金の場合には、工具基体表面に蒸着形成された下部層(粒状Ti化合物層)へのCrの拡散が生じ、しかも、下部層(粒状Ti化合物層)にはCrの拡散を抑制する機能がないため、上部層である縦長TiCN層にまでCrが拡散し、その結果、縦長TiCN層において高温硬さの低下が生じ、また同時に、工具基体中のCr量が基体表面で減少し、そして、工具基体に形成されたこの低Cr領域は耐熱塑性変形性に劣るため、被覆工具には偏摩耗等が生じやすくなり、耐摩耗性が大幅に低下するため、Al層の厚膜化を行ったとしても、被覆工具の耐摩耗性向上、長寿命化を達成することは非常に困難である。
しかし、粒状Ti化合物層からなる下部層と、縦長TiCN層からなる上部層との間に、粒状TiCNO層と粒状WCNO層の複層とからなる中間層を化学蒸着で介在形成すると、粒状WCNO層はCrの拡散抑制作用を有しているため、化学蒸着時に工具基体が高温で長時間曝されたとしても、工具基体からのCr成分の拡散を抑え、したがって、Cr成分が上部層の縦長TiCN層へ拡散することが防止され、その結果として、縦長TiCN層の硬度低下が抑えられ、同時に、工具基体からCrが拡散することによって生じていた工具基体表面近傍の低Cr領域の形成も防止されるため、工具基体自体の耐熱塑性変形性の低下も防止されること。
(c)さらに、粒状Ti化合物層(下部層)の上に粒状TiCNO層と粒状WCNO層の複層(中間層)を蒸着し、さらに、この上に縦長TiCN層(上部層)を蒸着形成すると、縦長TiCNO層の場合と同様に、粒状TiCNO層と粒状WCNO層の複層からなる中間層は、縦長TiCN層(上部層)の結晶微細化を促進するという作用を有しているため、微細結晶の縦長TiCN層が上部層として形成され、その結果、該縦長TiCN層(上部層)はすぐれた靭性を備えるようになること。
(d)したがって、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、粒状Ti化合物層からなる下部層、粒状TiCNO層と粒状WCNO層の複層からなる中間層、縦長TiCN層からなる上部層、さらに、Al層からなる最表面層を硬質被覆層として蒸着形成した被覆工具は、たとえ、高温で長時間曝されたとしても、工具基体からの上部層側へのCrの拡散が抑制され、そのため、工具基体表面近傍の低Cr領域の形成による耐熱塑性変形性の低下が防止され、また、縦長TiCN層(上部層)の硬度低下も防止され、さらに、粒状TiCNO層と粒状WCNO層の複層からなる中間層がすぐれた高温強度と高温硬さを有することから、高い発熱を伴うとともに切刃に対して大きな機械的・衝撃的負荷がかかる合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度被削材の高速断続高送り切削加工に用いた場合であっても、すぐれた耐熱塑性変形性とともにすぐれた耐チッピング性を示し、また、長期にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮するようになること。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、0.1〜2μmの合計平均層厚を有する化学蒸着で形成された、粒状結晶組織のTiの炭化物層(粒状TiC層)、窒化物層(粒状TiN層)、炭窒化物層(粒状TiCN層)のうちの少なくとも1層、
(b)中間層が、0.5〜3μmの合計平均層厚を有する、化学蒸着で形成された粒状結晶組織のTiの炭窒酸化物層(粒状TiCNO層)と、同じく化学蒸着で形成された粒状結晶組織のWの炭窒酸化物層の積層(粒状WCNO層)、
(c)上部層が、2〜20μmの平均層厚を有する化学蒸着で形成された、縦長成長結晶組織のTiの炭窒化物層(縦長TiCN層)、
(d)最表面層が、0.2〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着で形成された酸化アルミニウム層(Al層)、
以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具(被覆工具)。
(2) 前記(1)記載の表面被覆切削工具(被覆工具)において、
上記(c)の縦長成長結晶組織のTiの炭窒化物層(縦長TiCN層)と、上記(d)の酸化アルミニウム層(Al層)との間に、0.1〜3μmの平均層厚を有する化学蒸着で形成された粒状結晶組織のTiの炭化物層(粒状TiC層)、窒化物層(粒状TiN層)、炭窒化物層(粒状TiCN層)、炭酸化物層(粒状TiCO層)、炭窒酸化物層(粒状TiCNO層)のうちの少なくとも1層からなる密着層を介在してなる前記(1)記載の表面被覆切削工具(被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆工具について、詳細に説明する。
(a)工具基体
工具基体としては、従来から汎用されているWC基超硬合金、TiCN基サーメットを用いることができる。特に、工具基体としてWC基超硬合金を用いた場合、通常、WC基超硬合金は硬質相成分と結合相成分からなり、硬質相の主要構成成分としてはWCを含有し、これに加えてさらに、周期律表の4a、5a、6a族の金属炭化物、窒化物、炭窒化物を含有し、また、結合相の主要構成成分としては、鉄族金属元素の少なくとも1種、特にCo、を含有し、これらの構成成分からなるWC基超硬合金は硬質材料であってすぐれた耐摩耗性を有するが、Crの炭化物、窒化物、炭窒化物が含有されている場合には、工具基体表面へ硬質被覆層を蒸着形成する際、特に、厚膜Al層を形成するような場合、長時間高温に曝されるため、Crが硬質被覆層中へ拡散し、工具基体の表面近傍には低Cr領域が形成され、工具基体の耐熱塑性変形性が低下して偏摩耗を生じやすくなり、結果として被覆工具の耐摩耗性が劣化し、一方、硬質被覆層中に拡散Crが含有されることにより、硬質被覆層の高温強度は増大するが、その反面、特に、縦長TiCN層の高温硬さが低下し、これも被覆工具の耐摩耗性低下の原因となる。
しかし、この発明では、硬質被覆層の中間層として、それ自体高温強度にすぐれ、さらに、Crの拡散抑制作用を有する粒状WCNO層と、粒状WCNO層による高温硬さの低下を補完する目的で粒状TiCNO層を複層として蒸着形成したことによって、WC基超硬合金からなる工具基体の構成成分としてCr成分を含有する工具基体であっても、これを高温下で長時間曝したとしても、特にCrの拡散防止が図られることにより、被覆工具の耐熱塑性変形性の低下が防止されるとともに、耐摩耗性の維持向上が図られる。
(b)下部層(粒状TiC層、粒状TiN層、粒状TiCN層)
粒状TiC層、粒状TiN層、粒状TiCN層からなる下部層は、それ自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体と中間層である粒状CrCNO層、粒状TiCNO層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が0.1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が2μmを越えると、特に高速断続高送り切削ではチッピングを起し易くなることから、その合計平均層厚を0.1〜2μmと定めた。
(c)中間層(粒状TiCNO層と粒状WCNO層の複層)
通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、WCl:1〜8%、CO:0.3〜5%、N:5〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:900〜1040 ℃、
反応雰囲気圧力:5〜20 kPa、
の条件で化学蒸着を行うと、粒状結晶構造のWCNO層を蒸着形成できるが、この粒状WCNO層は、縦長TiCNO層に比して、すぐれた高温強度を有し、また、Crの拡散抑制機能を有するため、硬質被覆層の化学蒸着時に、Cr成分が工具基体から硬質被覆層側へと拡散し、工具基体の表面近傍に低クロム領域が形成されることによる耐熱塑性変形性の低下を防止すると同時に、上部層である縦長TiCN層中へCrが拡散し、含有されることによる縦長TiCN層の硬度低下を防止し、その結果として、被覆工具の偏摩耗の発生を防ぎ、もって、高い発熱を伴う鋼や鋳鉄などの高速断続高送り切削加工における被覆工具の耐摩耗性向上、長寿命化に寄与する。さらに、粒状WCNO層は、縦長TiCN層を蒸着形成する際に、縦長TiCN層の結晶微細化を促進するという作用も有しているため、微細結晶の縦長TiCN層が上部層として形成され、その結果、該縦長TiCN層(上部層)は高速断続高送り切削加工においてすぐれた靭性を発揮するようになる。
一方、中間層として粒状WCNO層のみを設けた場合には、中間層の高温硬さが十分でなく耐摩耗性が低下する恐れがあるので、高温硬さの低下を補完するために、粒状結晶構造のTiCNO層を蒸着形成し、中間層を粒状TiCNO層と粒状WCNO層の複層構造として構成する。
粒状TiCNO層は、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:1〜5%、CO:0.5〜5%、CH:1〜10%、N:10〜25%、H2:残り、
反応雰囲気温度:980〜1020 ℃、
反応雰囲気圧力:5〜10 kPa、
の条件で化学蒸着を行うことによって形成することができる。
粒状TiCNO層と粒状WCNO層との複層からなる中間層の合計平均層厚については、その平均層厚が0.5μm未満では、Crの拡散抑制効果が十分に機能せず、高温強度向上効果も少なく、また、その合計平均層厚が3μmを超えると、チッピングを発生する恐れがあるので、粒状TiCNO層と粒状WCNO層との複層からなる中間層の合計平均層厚は0.5〜3μmと定めた。
(d)上部層(縦長TiCN層)
上部層としての、縦長TiCN層は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:2〜10%、CHCN:0.5〜3%、N:10〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:800〜900℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件で蒸着形成されるが、粒状TiCNO層と粒状WCNO層との複層からなる中間層上に形成されることによって、微細結晶かつ縦長成長結晶組織を有する縦長TiCN層として形成され、さらに、工具基体からのCr成分の拡散も防止されるため、その靭性に優れるばかりか、粒状TiCN層に比して、一段とすぐれた高温強度を具備し、高速断続高送り切削加工において、耐チッピング性を一段と向上させる。
そして、上記縦長TiCN層の平均層厚が2μm未満では、靭性向上、高温強度向上効果を十分に発揮することができず、また、平均層厚が20μmを超えるとチッピングを発生しやすくなることから、縦長TiCN層の平均層厚を2〜20μmと定めた。
(e)密着層(粒状Ti化合物層)
上部層である上記l−TiCN層と、最表面層であるAl層の間に、粒状結晶組織のTi化合物層(例えば、粒状結晶組織のTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、TiCNO層)を0.1〜3μmの合計層厚で蒸着形成し、密着層として介在させると、上記l−TiCN層と、最表面層であるAl層の密着性が向上するようになり、この結果、被覆工具は、高熱発生を伴い、かつ、切刃に対して大きな機械的・衝撃的負荷が作用する合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度被削材の高速断続高送り切削加工においても、硬質被覆層の層間剥離の発生およびチッピングの発生がなく、すぐれた切削性能を長期に亘って発揮する。
(f)最表面層(Al層)
Al層からなる上部層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が0.2μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.2〜15μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよい。これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層の中間層として形成した粒状TiCNO層と粒状WCNO層との複層が、すぐれた高温強度と高温硬さを有するとともに、縦長TiCN層の靭性、高温強度を向上させ、さらに、工具基体表面近傍に低Cr領域が形成されることを防止し、拡散により縦長TiCN層中にCrが拡散・含有されることを防止し、もって、高い発熱を伴い切刃に対して大きな機械的・衝撃的負荷がかかる鋼や鋳鉄などの高速断続高送り切削加工に用いた場合でも、被覆工具のすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性が長期の使用に亘って確保されるものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
つぎに、これらの工具基体A〜Fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、硬質被覆層の下部層として、粒状TiC層、粒状TiN層、粒状TiCN層のうちの少なくとも1層を表2に示される条件、かつ、表3に示される組み合わせ、目標層厚で蒸着形成し、
ついで、中間層としての粒状TiCNO層および粒状WCNO層を、それぞれ表2に示される条件にて、表3に示される目標層厚で複層を形成すべく蒸着形成し、
ついで、上部層としての縦長TiCN層を、表2に示される条件にて、表3に示される目標層厚で蒸着形成し、
ついで、密着層としての粒状Ti化合物層を、表2に示される条件にて、表3に示される組み合わせ、目標層厚で蒸着形成し、
さらに、最表面層としてのAl層を、表2に示される条件にて、表3に示される目標層厚で蒸着形成して本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、硬質被覆層の中間層として、縦長TiCNO層単層を表2に示される条件で、表4に示される目標層厚で蒸着形成した以外は、実施例と同様にして、表2に示される条件で、表4に示される下部層、中間層、上部層、密着層、最表面層を、表4に示される目標層厚で蒸着形成することにより比較被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
そして、上記の本発明被覆工具1〜13および従来被覆工具1〜13について、これの硬質被覆層の構成層を電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、いずれも目標組成と実質的に同じ組成を有することが確認された。
また、これらの被覆工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具1〜13および従来被覆工具1〜13について、
被削材:JIS・SUJ2(HRC60)の長さ方向等間隔4本縦溝入の丸棒、
切削速度:140 m/min、
切り込み:1.5 mm、
送り:0.15 mm/rev、
切削時間:5 分、
の条件(切削条件A)での軸受鋼の乾式高速断続高送り切削試験(通常の切削速度は、100m/min、送りは、0.10mm/rev)、
被削材:JIS・SKD11(HRC53)の長さ方向等間隔4本縦溝入の丸棒、
切削速度:170 m/min、
切り込み:1.5 mm、
送り:0.20 mm/rev、
切削時間:5 分、
の条件(切削条件B)での合金工具鋼の乾式高速断続高送り切削試験(通常の切削速度は、150m/min、送りは、0.15mm/rev)、
被削材:JIS・SKD11(HRC50)の長さ方向等間隔4本縦溝入の丸棒、
切削速度:150 m/min、
切り込み:1.0 mm、
送り:0.3 mm/rev、
切削時間:5 分、
の条件(切削条件C)での合金工具鋼の乾式高速断続高送り切削試験(通常の切削速度は、100m/min、送りは、0.15mm/rev)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
Figure 0005110377
Figure 0005110377
Figure 0005110377
Figure 0005110377
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表3〜5に示される結果から、本発明被覆工具1〜13は、硬質被覆層の中間層が粒状TiCNO層と粒状WCNO層の複層として構成されていることから、高い発熱を伴うとともに切刃に対して大きな機械的・衝撃的負荷がかかる高速断続高送り切削加工でも、前記粒状WCNO層が一段とすぐれた高温強度を備えるとともに、基体からのCr拡散抑制作用を有するので、基体の耐熱塑性変形性の低下はなく、また、粒状TiCNO層が粒状WCNO層の高温硬さの低下を補完し、さらに、縦長TiCN層においては靭性が向上し硬度の低下もないため、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の中間層が縦長TiCNO層の単層で構成されている比較被覆工具1〜13においては、硬質被覆層の高温強度が不十分であり、さらに、基体の表面にCr欠乏層が生じるため耐熱塑性変形性に劣り、加えて、縦長TiCN層の硬度低下も生じるため、高速断続高送り切削加工では特に耐チッピング性が低下し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、大きな発熱を伴い、かつ、切刃に対して大きな機械的・衝撃的負荷がかかる合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度被削材の高速断続高送り切削加工でもすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層が、0.1〜2μmの合計平均層厚を有する化学蒸着で形成された、粒状結晶組織のTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層のうちの少なくとも1層、
    (b)中間層が、0.5〜3μmの合計平均層厚を有する、化学蒸着で形成された粒状結晶組織のTiの炭窒酸化物層と、同じく化学蒸着で形成された粒状結晶組織のWの炭窒酸化物層の積層、
    (c)上部層が、2〜20μmの平均層厚を有する化学蒸着で形成された、縦長成長結晶組織のTiの炭窒化物層、
    (d)最表面層が、0.2〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着で形成された酸化アルミニウム層、
    以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具。
  2. 請求項1記載の表面被覆切削工具において、
    上記(c)の縦長成長結晶組織のTiの炭窒化物層と、上記(d)の酸化アルミニウム層との間に、0.1〜3μmの平均層厚を有する化学蒸着で形成された粒状結晶組織のTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、炭窒酸化物層のうちの少なくとも1層からなる密着層を介在してなる請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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