JP4770387B2 - 高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬切削工具 - Google Patents

高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、硬質被覆層がすぐれた高温硬さ・耐熱性・高温強度を備えるとともに、すぐれた耐熱塑性変形性を示し、したがって、鋼や鋳鉄等を、高送り、高切り込みの高速重切削条件下で切削加工を行なった場合にも、工具刃先における熱塑性変形の発生を防止し、また、これを原因とする偏摩耗、チッピングの発生を抑制することによって、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、化学蒸着により硬質被覆層を形成してなる表面被覆超硬切削工具(以下、被覆超硬工具という)に関するものである。
被覆超硬工具として、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットからなる基体(以下、これらを総称して超硬基体と云う)の表面に、
(a)いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.5〜15μmの全体平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、
(b)化学蒸着で形成された、0.5〜13μmの平均層厚を有し、AlとCrの相互含有割合を示す組成式:(Al1−XCr)(ただし、原子比で、Xは0.05〜0.35を示す)を満足するAlとCrの複合酸化物[以下、(Al,Cr)で示す]層からなる上部層、
上記の下部層と上部層で構成された硬質被覆層を形成してなる、被覆超硬工具が知られている。
また、上記の従来被覆超硬工具の硬質被覆層を構成する上部層である(Al,Cr)層が、Alによる高温硬さおよび耐熱性と、Crによる高温強度を具備することから、かかる被覆超硬工具を各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いた場合にすぐれた切削性能を発揮することも知られている。
さらに、上記の従来被覆超硬工具が、例えば図1に概略縦断面図で示される通り、中央部にステンレス鋼製の反応ガス吹き出し管が立設され、前記反応ガス吹き出し管には、図2(a)に概略斜視図で、同(b)に概略平面図で例示される黒鉛製の超硬基体支持パレットが串刺し積層嵌着され、かつこれらがステンレス鋼製のカバーを介してヒーターで加熱される構造を有する化学蒸着装置を用い、超硬基体を前記超硬基体支持パレットの底面に形成された多数の反応ガス通過穴位置に図示される通りに載置した状態で前記化学蒸着装置に装入し、ヒータで装置内を、例えば850〜1050℃の範囲内の所定の温度に加熱した後、まず、硬質被覆層の下部層として、例えば表3に示される形成条件でTi化合物層を形成し、ついで、
(a)反応ガス組成:容量%で(以下、反応ガスの%は容量%を示す)、
AlCl3: 1.43〜2.09 %、
CrCl2: 0.11〜0.77 %、
CO2: 5〜6 %、
HCl: 2〜3 %、
H2:残り、
(b)反応雰囲気温度: 980〜1050 ℃、
(c)反応雰囲気圧力: 10〜20 kPa、
の条件で、上記の(Al,Cr)層からなる上部層を形成することにより製造されることも知られている。
また、一般に、上記の従来被覆超硬工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層や(Al,Cr)層が粒状結晶組織を有し、さらに、前記Ti化合物層を構成するTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとしてCHCNなどの有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
特開昭54−153758号公報 特開平6−8010号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は、通常の切削条件に加えて、より高速条件化での切削加工が要求される傾向にあるが、上記の従来被覆超硬工具においては、各種の鋼や鋳鉄を通常条件下で切削加工した場合に特段の問題は生じないが、これを切刃部への機械的負荷が大きなものとなる高送り、高切り込みの高速重切削条件下での切削加工に用いた場合には、高速切削加工による高い発熱により工具刃先に熱塑性変形が発生し、これにより偏摩耗が生じて、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に各種の鋼や鋳鉄等の高送り、高切り込みの高速重切削加工でも、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具を開発すべく、上記従来の被覆超硬工具を構成する硬質被覆層に着目し、研究を行った結果、
(1)下部層がTi化合物層、上部層が(Al,Cr)層からなる上記従来の硬質被覆層上に、例えば、
(a)反応ガス組成(容量%):
YCl: 3.0 %、
CO: 6.5 %、
HCl: 4 %、
: 残り、
(b)反応雰囲気温度:1000 ℃、
(c)反応雰囲気圧力: 7 kPa、
の条件で化学蒸着を行い、従来の硬質被覆層上に、0.1〜0.8μmの平均層厚を有するイットリウムの酸化物(以下、Yで示す)層の薄層を形成すると、該化学蒸着により形成された薄層のY層は熱伝導率が非常に小さいために熱遮断性を有すること。
(2)上記(1)で蒸着形成した平均層厚0.1〜0.8μmの薄層のY層(以下、「薄層A」という)の上に、従来の硬質被覆層の上部層を構成する層である(Al,Cr)層を、
例えば、
(a)反応ガス組成(容量%):
AlCl: 1.8 %、
CrCl: 0.5 %、
CO: 5.5 %、
HCl: 2.2 %、
: 残り、
(b)反応雰囲気温度: 1000 ℃、
(c)反応雰囲気圧力: 10 kPa、
の条件で化学蒸着し、0.1〜0.6μmの平均層厚を有する(Al,Cr)層の薄層(以下、「薄層B」という)を形成し、さらに、この(Al,Cr)層からなる薄層Bと、前記(1)の条件で蒸着形成したY層からなる薄層Aとを、交互に繰り返し積層して、その合計平均層厚が2〜10μmとなるように薄層Aと薄層Bとの交互積層構造からなる交互多重積層を形成すると、該交互多重積層は、(Al,Cr)層からなる薄層Bの有するすぐれた高温硬さ、耐熱性、高温強度を備えると同時に、薄膜Aの有する熱遮断性をも具備するようになること、
(3)前記交互多重積層は、薄層Bの有するすぐれた高温硬さ、耐熱性、高温強度を損なうことなく、薄層Aの有するすぐれた熱遮断効果をも備えることから、鋼、鋳鉄等の高速重切削加工における高い熱発生が生じた場合であっても、前記交互多重積層のすぐれた熱遮断作用によって超硬基体への熱の伝播は低減され、一方、切削時に発生した熱が切り屑により持ち去られる効果が促進され、そのため、工具刃先の熱塑性変形の発生が抑制されることになり、結果として、偏摩耗の発生を防止できるとともに、チッピングの発生を防止できること。
以上(1)〜(3)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、超硬基体の表面に、硬質被覆層を形成してなる被覆超硬工具(表面被覆超硬切削工具)において、
(a)前記硬質被覆層は、超硬基体の表面を被覆する下部層と、該下部層の表面を被覆する上部層からなり、
(b)上記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2種以上で構成され、かつ0.5〜15μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなり、
(c)上記下部層の表面を被覆する上部層は、上部内周層と、該上部内周層を被覆する上部外周層とからなり、
(d)上記上部内周層は、
組成式:(Al1−XCr)2O3(ただし、原子比で、Xは0.05〜0.35を示す)を満足し、かつ、0.5〜13μmの平均層厚を有するAlとCrの複合酸化物((Al,Cr))層からなり、
(e)上記上部内周層を被覆する上部外周層は、0.1〜0.8μmの平均層厚を有する薄層Aと、0.1〜0.6μmの平均層厚を有する薄層Bとを交互に積層して形成された、2〜10μmの合計平均層厚を有する交互多重積層からなり、
(f)上記薄層Aは、イットリウム(Y)の酸化物層からなり、
(g)上記薄層Bは、
組成式:(Al1−XCr(ただし、原子比で、Xは0.05〜0.35を示す)を満足するAlとCrの複合酸化物((Al,Cr))層からなり、
前記硬質被覆層を、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に化学蒸着により形成してなる、高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具(表面被覆超硬切削工具)に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆超硬工具において、これを構成する硬質被覆層の構成を上記の通りに限定した理由を説明する。
(1)下部層(Ti化合物層)
Ti化合物層は、基本的には上部層の上部内周層を構成する(Al,Cr)層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、超硬基体と上記上部内周層((Al,Cr)層)のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の超硬基体に対する密着性を向上させる作用を有するが、その合計平均層厚が0.5μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が15μmを越えると、切削時の発生熱によって偏摩耗の原因となる熱塑性変形を起し易くなることから、その合計平均層厚を0.5〜15μmと定めた。
(2)上部内周層((Al,Cr)層)
上記した通り上部内周層を構成する(Al,Cr)層(従来硬質被覆層における上部層に相当)におけるAl成分は高温硬さおよび耐熱性、同Cr成分は高温強度を向上させるが、AlとCr成分の相互含有割合を示す組成式:(Al1−XCr)で、X値が原子比で(以下同じ)0.35を越えると、相対的にAlの含有割合が低くなることから、層自体の高温硬さおよび耐熱性の低下は避けられず、これが摩耗促進の原因となり、一方、X値が0.05未満になると、層自体の高温強度の低下は避けられず、この結果チッピングなどが発生し易くなることから、X値を0.05〜0.35と定めた。
また、その平均層厚が0.5μm未満では、所望の耐摩耗性を長期に亘って確保することができず、一方その平均層厚が13μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜13μmと定めた。
(3)上部外周層(薄層Aと薄層Bとからなる交互多重積層)
(Al,Cr)層からなる上部内周層は、高温硬さ、耐熱性、高温強度にすぐれるものの、切刃部への機械的負荷が大きなものとなる鋼、鋳鉄等の高送り、高切り込みでの高速重切削加工において発生する高熱に対しては、熱塑性変形の発生を防止するのに十分な熱遮断性を確保することができないことから、上部内周層上に、熱遮断性にすぐれるY層からなる薄層Aと、(Al,Cr)層からなる薄層Bとの交互多重積層を設けることにより、上部内周層の備える高温硬さ、耐熱性、高温強度の諸特性を特段低下させることなく、耐熱塑性変形性の改善を図った。つまり、薄層Aと薄層Bの交互多重積層からなる上部外周層は、鋼、鋳鉄等の高送り、高切り込み条件下での高速重切削加工において、超硬基体への熱の伝播を防ぎ、切削時に発生した熱が切り屑によって持ち去られる効果を促進することにより、工具刃先の熱塑性変形の発生を抑制する。
薄層Aと薄層Bの交互多重積層(上部外周層)が、所定の熱遮断性、耐熱塑性変形性を備え、その結果として、所定の耐チッピング、耐摩耗性を発揮するためには、薄層Aは、少なくとも0.1μmの厚さが必要とされ、これ未満の厚さでは高速重切削加工において必要とされる熱遮断性、耐熱塑性変形性を発揮することができず、また、その厚みは0.8μm以下であれば、上部外周層の高温硬さ、耐熱性、高温強度の低下を招くことなく十分な熱遮断効果をもたらすことができることから、薄層Aの平均層厚を0.1〜0.8μmに定めた。また、薄層Bの平均層厚が0.1μm未満の場合には、上部外周層に最小限必要とされる高温硬さ、耐熱性、高温強度を維持することができず、一方、交互積層する薄層Bの平均層厚が0.6μmを超えるような場合には、上部外周層の全体層厚に占める薄層Bの割合が多いため、薄層Aによる熱遮断効果が十分に期待できなくなることから、薄層Bの平均層厚を0.1〜0.6μmに定めた。
そして、薄層Aと薄層Bを、それぞれ前記所定平均層厚の薄層として交互に積層することにより、薄層Aと薄層Bの交互多重積層からなる上部外周層は、すぐれた熱遮断性、耐熱塑性変形性を有し、かつ、所定の高温硬さ、耐熱性、高温強度を具備したあたかも一つの層であるかのように機能する。ただ、上部外周層(交互多重積層)の合計平均層厚が2μm未満では、自身のもつすぐれた熱遮断性、耐熱塑性変形性と所定の高温硬さ、耐熱性、高温強度を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その合計平均層厚が10μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その合計平均層厚を2〜10μmと定めた。
この発明の被覆超硬工具は、硬質被覆層を、超硬基体を覆う下部層、該下部層を覆う上部内周層、該上部内周層を覆う上部外周層で構成し、かつ、該上部外周層を薄層A(Y層)と薄層B((Al,Cr)層)との交互多重積層として構成することにより、硬質被覆層の下部層(Ti化合物層)および上部内周層((Al,Cr)層)の具備する高温硬さ、耐熱性、高温強度の諸特性を何ら損なうことなくこれを維持したままで、硬質被覆層がさらにすぐれた熱遮断性、耐熱塑性変形性をも保持することになるので、各種の鋼、鋳鉄等の通常条件の切削加工に用いることができるばかりか、特に、切刃部への機械的負荷が大きなものとなる鋼、鋳鉄等の高送り、高切り込み条件の高速重切削加工においても、下部層であるTi化合物層の具備するすぐれた層間密着性および高温強度と相俟って、工具刃先における熱塑性変形の発生防止が図られ、また、これを原因とする偏摩耗の発生が抑制されることによって、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのである。
つぎに、この発明の被覆超硬工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TiN粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体A1〜A10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、MoC粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN系サーメット製の超硬基体B1〜B6を形成した。
上記の超硬基体A1〜A10およびB1〜B6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した後、図1に示される化学蒸着装置内に、第2図に示される超硬基体支持パレットの位置決め穴に載置した状態で装入し、まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される通常の条件にて、表6に示される組み合わせおよび目標平均層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成した。
つぎに、表4に示される条件で、かつ同じく表6に示される目標平均層厚の(Al,Cr)層を硬質被覆層の上部内周層として蒸着形成した。
その後、表5に示される条件で、かつ同じく表6に示される目標平均層厚のY層を、硬質被覆層の上部外周層の薄層Aとして蒸着形成し、ついで、表4に示される条件で、かつ同じく表6に示される目標平均層厚の(Al,Cr)層を、硬質被覆層の上部外周層の薄層Bとして蒸着形成した。薄層Aと薄層Bの蒸着形成は、上部外周層の目標合計平均層厚に達するまで、交互に繰り返し行い、本発明表面被覆超硬切削工具である本発明表面被覆超硬スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、これら超硬基体A1〜A10およびB1〜B6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した後、同じくそれぞれ図1,2に示される通常の化学蒸着装置に装入し、表7に示されるTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成した(なお、表7に示される従来被覆超硬工具1〜16の下部層(Ti化合物層)は、本発明被覆超硬工具1〜16のそれぞれと同じにしてあるので、下部層の具体的な形成条件、目標平均層厚は、表3、表6に示されているとおりである)。
次に、表4に示される条件で、かつ同じく表7に示される目標平均層厚の(Al,Cr)層を硬質被覆層の上部層として下部層(Ti化合物層)の表面に蒸着形成し、従来表面被覆超硬切削工具としての従来表面被覆超硬スローアウエイチップ(以下、従来被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
つぎに、上記の各種の被覆超硬チップを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆超硬チップ1〜16および従来被覆超硬チップ1〜16について、
被削材:JIS・S25Cの丸棒、
切削速度: 550 m/min.、
切り込み: 5.0 mm、
送り: 0.3 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Aという)での炭素鋼の乾式連続高速高切り込み切削加工試験(通常の切削速度は250m/min.,通常の切り込み量は2.0mm)、
被削材:JIS・SCM415の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 450 m/min.、
切り込み: 4.5 mm、
送り: 0.3 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Bという)での合金鋼の乾式断続高速高切り込み切削加工試験(通常の切削速度は250m/min.,通常の切り込み量は1.5mm)、
被削材:JIS・FC200の丸棒、
切削速度: 550 m/min.、
切り込み: 2.5 mm、
送り: 0.7 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式連続高速高送り切削加工試験(通常の切削速度は300m/min.,通常の送りは0.3mm/rev.)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表8に示した。
Figure 0004770387
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この結果得られた本発明被覆超硬チップ1〜16および従来被覆超硬チップ1〜16の硬質被覆層を構成する各層について、その組成を、オージェ分光分析装置を用いて測定したところ、いずれのTi化合物層、(Al,Cr)層も目標組成と実質的に同じ組成を示し、各層の層厚も目標平均層厚と実質的に同じ値を示した。さらに、本発明被覆超硬チップ1〜16の硬質被覆層の上部外周層の薄層Aを構成するY層についても、目標平均層厚と実質的に同じ値を示すY層が形成されていることが確認された。
表8に示される結果から、硬質被覆層の上部層が、上部内周層((Al,Cr)層)と、薄層A(Y層)及び薄層B((Al,Cr)層)の交互多重積層からなる上部外周層とで構成されている本発明被覆超硬チップ1〜16は、いずれも鋼、鋳鉄などの切削加工を、切刃部への機械的負荷が大きなものとなる高切り込みや高送りなどの重切削条件で行なった場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐熱塑性変形性、耐チッピング性を発揮し、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するのに対して、硬質被覆層の上部層が、(Al,Cr)層のみからなる従来被覆超硬チップ1〜16においては、特に前記上部層の熱遮断性、耐熱塑性変形性不足が原因して、チッピングが発生し易く、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆超硬工具は、通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に鋼、鋳鉄などを、高切り込みや高送りなどの高速重切削条件で切削加工を行なった場合にも、すぐれた耐熱塑性変形性を呈し、偏摩耗を生じることなく良好な耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すものであるから、切削装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
被覆超硬工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いた化学蒸着装置を示す概略縦断面図である。 化学蒸着装置の構造部材である超硬基体支持パレットを示し、(a)が概略斜視図、(b)が概略平面図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、硬質被覆層を形成してなる表面被覆超硬切削工具において、
    (a)前記硬質被覆層は、超硬基体の表面を被覆する下部層と、該下部層の表面を被覆する上部層からなり、
    (b)上記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2種以上で構成され、かつ0.5〜15μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなり、
    (c)上記下部層の表面を被覆する上部層は、上部内周層と、該上部内周層を被覆する上部外周層とからなり、
    (d)上記上部内周層は、
    組成式:(Al1−XCr(ただし、原子比で、Xは0.05〜0.35を示す)を満足し、かつ、0.5〜13μmの平均層厚を有するAlとCrの複合酸化物層からなり、
    (e)上記上部内周層を被覆する上部外周層は、0.1〜0.8μmの平均層厚を有する薄層Aと、0.1〜0.6μmの平均層厚を有する薄層Bとを交互に積層して形成された、2〜10μmの合計平均層厚を有する交互多重積層からなり、
    (f)上記薄層Aは、イットリウム(Y)の酸化物層からなり、
    (g)上記薄層Bは、
    組成式:(Al1−XCr(ただし、原子比で、Xは0.05〜0.35を示す)を満足するAlとCrの複合酸化物層からなり、
    前記硬質被覆層を、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に化学蒸着により形成してなる、高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬切削工具。
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