JPH0718414A - 膜被着物およびその製造方法 - Google Patents

膜被着物およびその製造方法

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JPH0718414A
JPH0718414A JP19171793A JP19171793A JPH0718414A JP H0718414 A JPH0718414 A JP H0718414A JP 19171793 A JP19171793 A JP 19171793A JP 19171793 A JP19171793 A JP 19171793A JP H0718414 A JPH0718414 A JP H0718414A
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film
boron
nitride
chromium
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JP19171793A
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English (en)
Inventor
Satoru Nishiyama
哲 西山
Akinori Ebe
明憲 江部
Naoto Kuratani
直人 鞍谷
Kiyoshi Ogata
潔 緒方
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Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 硬度および靱性の両方に優れた膜を基体の表
面に形成した膜被着物およびその製造方法を提供する。 【構成】 この膜被着物は、基体2の表面に、クロム、
ホウ素および窒素より成る窒化物膜6であってその中に
立方晶系閃亜鉛鉱型構造の窒化ホウ素および六方晶系ウ
ルツ鉱型構造の窒化ホウ素の少なくとも一方が含有され
ているものを形成し、かつ当該窒化物膜6と基体2との
界面付近に、両者6、2の構成元素より成る混合層4を
形成して成る。このような膜被着物は、真空容器内で基
体に対して、クロムを含む物質の蒸着と、ホウ素を含む
物質の蒸着と、窒素イオンを含むイオンの照射とを行う
ことによって製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば切削工具、掘
削ビット等の工具、摺動部品等に用いられる膜被着物お
よびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、工具母材等の基体の耐摩耗性
および摺動性を向上させるために、高い硬度を持つ膜を
基体の表面に形成(被着)することが行われて来た。
【0003】そのような膜を構成する物質の代表的なも
のに、クロムの窒化物である窒化クロム(Crxy
x、yは組成比)が挙げられる。窒化クロムは優れた硬
度を有し、イオンプレーティング等の手段によって膜合
成され、各種耐摩耗性分野に広く応用されている。
【0004】また、ホウ素の窒化物である窒化ホウ素
(BN)もまた、耐摩耗性分野での応用が注目されてい
る物質である。
【0005】この窒化ホウ素は、結晶構造によって立方
晶系閃亜鉛鉱型のもの(c−BN)、六方晶系のグラフ
ァイトと類似した構造のもの(h−BN)、あるいは六
方晶系ウルツ鉱型のもの(w−BN)等に大別される。
【0006】中でもc−BNはダイヤモンドに次ぐ高硬
度を有しており、熱的・化学的安定性にも優れているこ
とから、切削工具のような耐摩耗性を必要とする分野に
応用されており、また、電気絶縁性や高熱伝導率を有す
る特徴を活かしてヒートシンク用の材料としても利用さ
れている。w−BNもc−BNより硬度は劣るものの、
他の窒化物より優れた硬度、熱伝導性を有していること
により、c−BNと同様の分野に応用することが期待さ
れている。
【0007】これらのc−BNやw−BNは通常は高温
・高圧下で合成され得るものであり、これまでその膜合
成を低温下で行うことは困難であった。しかし近年、真
空蒸着とイオン照射とを併用し、蒸着原子とイオンの衝
突によって蒸着原子を励起し、非熱平衡過程によって低
温下でもc−BN膜を合成できる手法が盛んに試みられ
るようになった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、c−B
N、w−BNは高硬度である反面、靱性に欠けるため脆
く、c−BNやw−BNから成る膜を被着した基体を例
えば工具や摺動部品として用いた場合、膜内にクラック
が入り、基体を保護する役割が果たせなくなる。
【0009】また、窒化クロムは比較的靱性に優れてい
るものの、硬度はc−BN、w−BNに比較すれば劣る
ため、アブレシブ摩耗の厳しい条件下では、その耐摩耗
性はc−BN、w−BNより劣る。
【0010】このように、従来より耐摩耗性分野にてよ
く用いられてきた膜で、硬度および靱性の両方に優れた
膜は未だ見出されていないのが実情である。
【0011】そこでこの発明は、硬度および靱性の両方
に優れた膜を基体の表面に形成した膜被着物およびその
製造方法を提供することを主たる目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明の膜被着物は、基体の表面に、クロム、ホ
ウ素および窒素より成る窒化物膜であってその中に立方
晶系閃亜鉛鉱型構造の窒化ホウ素および六方晶系ウルツ
鉱型構造の窒化ホウ素の少なくとも一方が含有されてい
るものを形成し、かつ当該窒化物膜と基体との界面付近
に両者の構成元素より成る混合層を形成して成ることを
特徴とする。
【0013】また、この発明の製造方法は、真空容器内
で基体に対して、クロムを含む物質の蒸着と、ホウ素を
含む物質の蒸着と、窒素イオンを含むイオンの照射とを
行うことによって、前記基体の表面に、クロム、ホウ素
および窒素より成る窒化物膜であってその中に立方晶系
閃亜鉛鉱型構造の窒化ホウ素および六方晶系ウルツ鉱型
構造の窒化ホウ素の少なくとも一方が含有されているも
のを形成することを特徴とする。
【0014】
【作用】上記膜被着物を構成している窒化物膜は、その
中に立方晶系閃亜鉛鉱型構造の窒化ホウ素および六方晶
系ウルツ鉱型構造の窒化ホウ素の少なくとも一方が含有
されており、これらはいずれも高硬度物質であるので、
硬度に優れたものとなる。しかも、クロムは各種基体と
の馴染みが良く、それによって膜内の応力が緩和される
ので、そのようなクロムの窒化物を含む上記窒化物膜は
靱性にも優れたものとなる。
【0015】従って、上記膜被着物を構成している窒化
物膜は、硬度および靱性の両方に優れたものとなる。し
かもこのような窒化物膜と基体との界面付近に形成され
た上記のような混合層は、あたかも楔のような作用をす
るので、基体に対する窒化物膜の密着性も優れたものと
なる。
【0016】また、上記製造方法によれば、基体の表面
近傍で、照射イオンと蒸着原子との衝突によって蒸着原
子が励起されるので、基体の表面に、クロム、ホウ素お
よび窒素より成る窒化物膜であってその中に立方晶系閃
亜鉛鉱型構造の窒化ホウ素および六方晶系ウルツ鉱型構
造の窒化ホウ素の少なくとも一方が含有されているもの
を、基体を高温に加熱することなく低温下で形成するこ
とができる。しかも、照射イオンと蒸着原子との衝突に
よって、蒸着原子が基体の表面に押し込まれるので、上
記窒化物膜の形成と併せて、当該窒化物膜と基体との界
面付近に上記のような混合層を低温で形成することがで
きるので、低温下での成膜でも、窒化物膜の基体に対す
る密着性を向上させることができる。
【0017】
【実施例】図1は、この発明に係る膜被着物の一例を示
す概略断面図である。この膜被着物は、基体2の表面
に、クロム、ホウ素および窒素より成る窒化物膜6であ
ってその中に立方晶系閃亜鉛鉱型構造の窒化ホウ素(c
−BN)および六方晶系ウルツ鉱型構造の窒化ホウ素
(w−BN)の少なくとも一方が含有されているものを
形成し、かつ当該窒化物膜6と基体2との界面付近に、
両者6、2の構成元素より成る混合層4を形成して成
る。
【0018】基体2の種類は特定のものに限定されるも
のではなく、例えば高速度工具鋼、超硬合金、あるいは
他の金属、セラミックス、樹脂、更にはその他のもので
も良い。またその形状も特定のものに限定されない。
【0019】上記膜被着物を構成している窒化物膜6
は、その中にc−BNおよびw−BNの少なくとも一方
が含有されており、これらはいずれも高硬度物質である
ので、硬度に優れたものとなる。しかも、クロムは各種
基体との馴染みが良く、それによって膜内の応力が緩和
されるので、そのようなクロムを含む上記窒化物膜6は
靱性にも優れたものとなる。また、クロムの窒化物は、
c−BNやw−BNには劣るけれども、比較的高い硬度
を有している。
【0020】従って、上記膜被着物を構成している窒化
物膜6は、硬度および靱性の両方に優れたものとなる。
即ち、硬くてしかもクラックの入りにくい膜となる。そ
の結果、上記膜被着物は、クロムの窒化物またはホウ素
の窒化物だけより成る窒化物膜を被着したものよりも、
良好な耐摩耗性および摺動性を有するようになる。しか
も、このような窒化物膜6と基体2との界面付近に形成
された上記のような混合層4は、あたかも楔のような作
用をするので、基体2に対する窒化物膜6の密着性も優
れたものとなる。
【0021】次に、上記のような膜被着物の製造方法の
例を図2を参照しながら説明する。
【0022】図示しない真空排気装置によって真空排気
される真空容器10内に、前述したような基体2を保持
するホルダ12が設けられており、それに向けてこの例
では二つの蒸発源14、16およびイオン源22が配置
されている。
【0023】また、ホルダ12の近傍には、この例で
は、基体2上に形成される膜厚を測定したり、基体2に
到達する蒸発物質の原子数を測定する膜厚モニタ26お
よび基体2に照射されるイオンの個数を測定するイオン
電流モニタ28が配置されている。この膜厚モニタ26
には例えば水晶振動子を用いたものが、イオン電流モニ
タ28には例えばファラデーカップがそれぞれ使用され
るが、いずれも特定のものに限定されない。
【0024】一方の蒸発源14は、クロムを含む物質1
8(例えばCr の単体、またはその窒化物もしくは酸化
物)を蒸発させてそれを基体2の表面に蒸着させること
ができる。他方の蒸発源16は、ホウ素を含む物質20
(例えばBの単体、またはその窒化物もしくは酸化物)
を蒸発させてそれを基体2の表面に蒸着させることがで
きる。これらの蒸発源14、16の方式は、例えば蒸発
材料を電子ビーム加熱、高周波加熱あるいは抵抗加熱す
るものであるが、特定の方式に限定されない。
【0025】また、クロムを含む物質の蒸着およびホウ
素を含む物質の蒸着は、上記のような真空蒸着によるも
のの他に、ターゲットをスパッタさせるスパッタ蒸着に
よって行っても良い。
【0026】また、真空蒸着、スパッタ蒸着いずれの場
合も、一つの蒸発源からクロムとホウ素の両方を含む混
合物を加熱あるいはスパッタによって蒸着させるように
しても良い。もっともその場合は、両元素より成る物質
の気化する温度が異なることによって、基体2上に蒸着
される膜の組成比の調整が困難になる場合が多く、その
場合は、スパッタ蒸着の方を採用するのが好ましい。
【0027】イオン源22は、そこから窒素イオンを含
むイオン24(例えば窒素イオン単体、または窒素イオ
ンと不活性ガスイオンとの混合イオン)を加速して引き
出すことができるものであれば、その方式は問わない。
例えば、多極磁場型のいわゆるバケット型イオン源が大
面積大電流の点で好ましいが、勿論それ以外のイオン源
でも良い。
【0028】図1に示したような膜被着物の製造に際し
ては、まず所望の基体2をホルダ12に取り付けた後、
真空容器10内を真空排気して所定の真空度に保持す
る。その後、蒸発源14および16から前述したような
クロムを含む物質18およびホウ素を含む物質20をそ
れぞれ蒸発させ、これを基体2の表面に蒸着させる。こ
のとき、膜厚モニタ26を用いて、基体2に到達する物
質18、20の量を計測・調整することができる。ま
た、この物質18、20の蒸着と併せて、即ち蒸着と同
時、交互または蒸着後に、イオン源22から前述したよ
うなイオン24を加速して引き出してこれを基体2に向
けて照射する。このときのイオン24の照射量は、イオ
ン電流モニタ28で計測・調整することができる。
【0029】これによって、基体2の表面に、クロム、
ホウ素および窒素より成る窒化物膜6を形成することが
できる。
【0030】窒化物膜6を形成する際の照射イオン24
のエネルギーは、特定のものに限定されるものではな
く、例えば基体2の種類、特にその耐熱性や成膜膜厚等
に応じて決めれば良い。例えば、金属等の耐熱性の高い
基体の場合は、イオン24のエネルギーを2KeV以上
にし、樹脂のような耐熱性の低いものはイオン24のエ
ネルギーを2KeV未満にすれば良い。
【0031】また、形成される窒化物膜6内のクロム原
子の数と窒素原子との数との比(Cr /N組成比)およ
びホウ素原子の数と窒素原子の数との比(B/N組成
比)も特に限定されないが、例えば、基体2が樹脂のよ
うなもので、照射するイオン24のエネルギーとして小
さいものしか用いることができず、従って窒化物膜6と
基体2との界面付近に形成される混合層の厚みが大きく
取れない場合は、次のようにしても良い。即ち、窒化物
膜6と基体2の界面付近でクロムの原子数が多くなるよ
うにして、それの化学的活性度の高さを利用して窒化物
膜6の密着強度を上げ、一方窒化物膜6の表面近傍では
窒化物膜6の化学的安定性を良くするために、クロムの
窒化物とホウ素の窒化物とがそれぞれ化学量論的(St
oichiometric)になるようにすれば良い。
【0032】上記のような製造方法によれば、基体2の
表面近傍で、照射イオン24と蒸着原子との衝突によっ
て蒸着原子が励起されるので、基体2の表面に、クロ
ム、ホウ素および窒素より成る窒化物膜6であって、そ
の中に、高温・高圧相である立方晶系閃亜鉛鉱型構造の
窒化ホウ素や六方晶系ウルツ鉱型構造の窒化ホウ素が含
有されているものを、CVD法のように基体2を高温に
加熱することなく例えば室温のような低温下で形成する
ことができる。従って、基体2の種類が限定されなくな
る。
【0033】その場合、照射イオン24に窒素イオンと
不活性ガスイオンとの混合イオンを用いれば、不活性ガ
スイオンのエネルギーを利用することによって、窒化物
膜6の結晶成長を促進したり、c−BNをより形成しや
すくしたりする効果が得られる場合があるので、特に高
硬度の窒化物膜6を形成したい場合には、このような混
合イオンを用いるのが好ましい。
【0034】また上記方法によれば、照射イオン24と
蒸着原子との衝突によって、蒸着原子が基体2の表面に
押し込まれるので、上記のような窒化物膜6の形成と併
せて、当該窒化物膜6と基体2との界面付近に、両者
6、2の構成元素より成る混合層4を同じく低温下で簡
単に形成することができる。
【0035】次に、この発明に従ったより具体的な実施
例と、従来例相当の比較例とについて説明する。
【0036】(実施例1)基体2として、高速度工具鋼
(SKH51)を用い、これをホルダ12に設置した
後、真空容器10内を1×10-6Torr以下の真空度
に保った。その後、電子ビームを用いた二つの蒸発源1
6、14より、それぞれホウ素(純度99.5%)とク
ロム(純度99.99%)を加熱、蒸気化して前記基体
2上に蒸着させた。それと同時に、イオン源22内に窒
素ガス(純度99.999%)を導入してイオン化させ
てイオン24として窒素イオンを引き出し、これを前記
基体に加速エネルギー10KeVにて照射した。
【0037】なお、このとき、形成される膜内に含まれ
るホウ素原子と窒素原子の比(B/N組成比)と、同じ
く形成される膜内に含まれるクロム原子と窒素原子の比
(Cr /N組成比)がそれぞれ1になるように、それぞ
れの元素の蒸発量と窒素イオンの照射量を調整した。
【0038】このようにして、基体の表面に、B−Cr
−N元素より成る窒化物膜を1μm形成した。
【0039】(実施例2)実施例1と同じ基体を用い、
真空容器10内を1×10-6Torr以下の真空度に保
った後、電子ビームを用いた二つの蒸発源16、14よ
りそれぞれホウ素(純度99.5%)とクロム(純度9
9.99%)を加熱、蒸気化して当該基体上に蒸着させ
た。それと同時に、イオン源22から実施例1と同様に
して窒素イオンを引き出し、これを基体に加速エネルギ
ー10KeVにて照射した。
【0040】なお、このとき、形成される膜内に含まれ
るホウ素原子と窒素原子の比(B/N組成比)と、同じ
く形成される膜内に含まれるクロム原子と窒素原子の比
(Cr /N組成比)がそれぞれ2になるように、それぞ
れの元素の蒸発量と窒素イオンの照射量を調整した。
【0041】このようにして、基体の表面に、B−Cr
−N元素より成る窒化物膜を1μm形成した。
【0042】(実施例3)実施例1と同じ基体を用い、
真空容器10内を1×10-6Torr以下の真空度に保
った後、電子ビームを用いた二つの蒸発源16、14よ
り、それぞれホウ素(純度99.5%)とクロム(純度
99.99%)を加熱、蒸気化して当該基体上に蒸着さ
せた。それと同時に、イオン源22から実施例1と同様
にして窒素イオンを引き出し、これを基体に加速エネル
ギー10KeVにて照射した。
【0043】なお、このとき、形成される膜内に含まれ
るホウ素原子と窒素原子の比(B/N組成比)が3に、
同じく形成される膜内に含まれるクロム原子と窒素原子
の比(Cr /N組成比)が1になるように、それぞれの
元素の蒸発量と窒素イオンの照射量を調整した。
【0044】このようにして、基体の表面に、B−Cr
−N元素より成る窒化物膜を1μm形成した。
【0045】(比較例1)実施例1と同じ基体を用い
て、真空容器10内を、1×10-6Torr以下の真空
度に保った後、電子ビームを用いた二つの蒸発源16、
14より、それぞれホウ素(純度99.5%)とクロム
(純度99.99%)を加熱、蒸気化して当該基体上に
蒸着させた。それと同時に、真空容器10内に窒素ガス
(純度99.999%)を導入し、高周波放電による窒
素プラズマを真空容器10内に発生させ、前記蒸発原子
を窒化させた。
【0046】なお、このとき、形成される膜内に含まれ
るホウ素原子と窒素原子の比(B/N組成比)と、同じ
く形成される膜内に含まれるクロム原子と窒素原子の比
(Cr /N組成比)がそれぞれ1になるように、それぞ
れの元素の蒸発量と窒素プラズマの照射量を調整した。
【0047】このようにして、基体の表面に、B−Cr
−N元素より成る窒化物膜を1μm形成した。
【0048】(比較例2)実施例1と同じ基体を用い、
真空容器10内を1×10-6Torr以下の真空度に保
った後、電子ビームを用いた蒸発源16より、ホウ素
(純度99.5%)を加熱、蒸気化して基体上に蒸着さ
せた。それと同時に、イオン源22から実施例1と同様
にして窒素イオンを引き出し、これを基体に加速エネル
ギー10KeVにて照射した。
【0049】なお、このとき、形成される膜内に含まれ
るホウ素原子と窒素原子の比(B/N組成比)が1にな
るように、ホウ素の蒸発量と窒素イオンの照射量を調整
した。
【0050】このようにして、基体の表面に、B−N元
素より成る窒化物膜を1μm形成した。
【0051】(比較例3)実施例1と同じ基体を用い、
真空容器10内を1×10-6Torr以下の真空度に保
った後、電子ビームを用いた蒸発源14より、クロム
(純度99.99%)を加熱、蒸気化して当該基体上に
蒸着させた。それと同時に、イオン源22から実施例1
と同様にして窒素イオンを引き出し、これを基体に加速
エネルギー10KeVにて照射した。
【0052】なお、このとき、形成される膜内に含まれ
るクロム原子と窒素原子の比(Cr/N組成比)が1と
なるように、クロムの蒸発量と窒素イオンの照射量を調
整した。
【0053】このようにして、基体の表面に、Cr −N
元素より成る窒化物膜を1μm形成した。
【0054】(評価)上記実施例1〜3および比較例1
〜3のようにして基体上に窒化物膜を形成した膜被着物
について、10g荷重ビッカース硬度によりその窒化物
膜の硬度を測定した。また、AE(アコースティックエ
ミッション)センサ付きスクラッチ試験機によって、窒
化物膜の密着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】実施例1〜3のものはいずれも、優れた硬
度と密着性を有していたが、比較例1のものは硬度およ
び密着性のいずれも劣っていた。比較例1のものの硬度
および密着性が劣っていたのは、膜形成時にイオン照射
を用いなかったため、実施例1のように窒化物膜内のB
N結合が硬質のc−BNやw−BNにならず、軟質の六
方晶系のグラファイトに類似した構造(h−BN)にな
っており、また膜と基体との界面付近に混合層の形成が
成されなかったためと考えられる。
【0057】また、比較例2のものは実施例1と同じよ
うな硬度と密着性を有していたが、ビッカース硬度を測
定時の圧痕のクラックの生成状態を比較してみると、実
施例1〜3のものには、圧痕の先端にクラックの生成が
認められなかったのに対し、比較例2のものは、圧痕の
先端にクラックが生じているのが明確に認められた。比
較例2のものにクラックが生じたのは、膜内にCr が含
まれていないため、膜の靱性が劣っていたからである。
【0058】更に、比較例3のものは、Bを含有してお
らず膜内に高硬度のc−BNやw−BNが含まれないた
め、実施例1〜3に比べて硬度が劣る結果になった。
【0059】
【発明の効果】以上のようにこの発明の膜被着物を構成
する窒化物膜は、いずれも高硬度の立方晶系閃亜鉛鉱型
構造の窒化ホウ素および六方晶系ウルツ鉱型構造の窒化
ホウ素の少なくとも一方と、靱性に優れしかも硬度も比
較的高いクロムの窒化物とを含有しているので、硬度お
よび靱性の両方に優れている。従ってこの発明の膜被着
物は、良好な耐摩耗性および摺動性を有する。しかもこ
のような窒化物膜と基体との界面付近に混合層を形成し
ているので、基体に対する窒化物膜の密着性にも優れて
いる。
【0060】また、この発明の製造方法によれば、基体
の表面近傍で、照射イオンと蒸着原子との衝突によって
蒸着原子が励起されるので、基体の表面に、クロム、ホ
ウ素および窒素より成る窒化物膜であってその中に立方
晶系閃亜鉛鉱型構造の窒化ホウ素および六方晶系ウルツ
鉱型構造の窒化ホウ素の少なくとも一方が含有されてい
るものを、基体を高温に加熱することなく低温下で形成
することができる。しかも、照射イオンと蒸着原子との
衝突によって、蒸着原子が基体の表面に押し込まれるの
で、上記窒化物膜の形成と併せて、当該窒化物膜と基体
との界面付近に、両者の構成元素より成る上記のような
混合層を同じく低温下で簡単に形成することができる。
その結果、上記のように硬度および靱性の両方に優れて
いる窒化物膜を、低温下で基体の種類に限定されること
なく、しかも密着性良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る膜被着物の一例を示す概略断面
図である。
【図2】この発明に係る製造方法を実施する装置の一例
を示す概略断面図である。
【符号の説明】
2 基体 4 混合層 6 窒化物膜 10 真空容器 14,16 蒸発源 18 クロムを含む物質 20 ホウ素を含む物質 22 イオン源 24 窒素イオンを含むイオン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 緒方 潔 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体の表面に、クロム、ホウ素および窒
    素より成る窒化物膜であってその中に立方晶系閃亜鉛鉱
    型構造の窒化ホウ素および六方晶系ウルツ鉱型構造の窒
    化ホウ素の少なくとも一方が含有されているものを形成
    し、かつ当該窒化物膜と基体との界面付近に両者の構成
    元素より成る混合層を形成して成ることを特徴とする膜
    被着物。
  2. 【請求項2】 真空容器内で基体に対して、クロムを含
    む物質の蒸着と、ホウ素を含む物質の蒸着と、窒素イオ
    ンを含むイオンの照射とを行うことによって、前記基体
    の表面に、クロム、ホウ素および窒素より成る窒化物膜
    であってその中に立方晶系閃亜鉛鉱型構造の窒化ホウ素
    および六方晶系ウルツ鉱型構造の窒化ホウ素の少なくと
    も一方が含有されているものを形成することを特徴とす
    る膜被着物の製造方法。
JP19171793A 1993-07-05 1993-07-05 膜被着物およびその製造方法 Pending JPH0718414A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6494461B1 (en) * 1998-08-24 2002-12-17 Nippon Piston Ring Co., Ltd. Sliding member
JP2016078137A (ja) * 2014-10-10 2016-05-16 新日鐵住金株式会社 超硬工具

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6494461B1 (en) * 1998-08-24 2002-12-17 Nippon Piston Ring Co., Ltd. Sliding member
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