JP2513338B2 - 窒化ホウ素薄膜被覆基体の形成方法 - Google Patents

窒化ホウ素薄膜被覆基体の形成方法

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JP2513338B2 JP2059657A JP5965790A JP2513338B2 JP 2513338 B2 JP2513338 B2 JP 2513338B2 JP 2059657 A JP2059657 A JP 2059657A JP 5965790 A JP5965790 A JP 5965790A JP 2513338 B2 JP2513338 B2 JP 2513338B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、窒化ホウ素薄膜被覆基体の形成方法に関
するものである。
〔従来の技術〕
窒化ホウ素(以下「BN」という。)には、その結晶構
造によって、立方晶系閃亜鉛鉱型(以下「c−BN」とい
う。),六方晶系グラファイト型(以下「h−BN」とい
う。)および六方晶系ウルツ鉱型(以下「w−BN)とい
う。)の3種類に大別される。
このなかでもc−BNは、ダイヤモンドに次ぐ高硬度を
有し、熱的および化学的安定性に優れているため、耐摩
耗性が必要とされる工具分野等に応用され、さらに絶縁
性および高熱伝導性を必要とされるヒートシンク用材料
等への応用にも期待されている。またw−BNも前述c−
BNと同様に優れた化学的安定性,熱衝撃性および高硬度
を有するため、耐摩耗性を必要とされる分野に応用され
ている。
現在、このc−BNおよびw−BN主体の薄膜を物理蒸着
法(PVD法)または化学蒸着法(CVD法)を用いて形成す
る方法が盛んに研究されている。
例えば、CVD法は、膜を形成すべき基体を反応室に収
納し、この反応室内に原料ガスとして、例えばジボラン
(B2H6)等のホウ素元素を含むガスおよび例えばアンモ
ニア(NH3)等の窒素元素を含むガスを導入し、この原
料ガスを約1000℃の高温に加熱した基体上で、熱分解
し、反応させることによって、基体上に窒化ホウ素薄膜
を形成する方法である。
しかし、このCVD法では、窒化ホウ素薄膜を形成でき
る基体の種類が限定されるという問題がある。すなわ
ち、CVD法では、基体を約1000℃の高温に加熱する必要
があるが、例えば、高速度鋼は約600℃の温度で劣化し
てしまう物質があるので、上記CVD法では、この高速度
鋼上に窒化ホウ素薄膜を形成することができない。
さらにCVD法によって、形成される窒化ホウ素薄膜
は、軟質なh−BN主体の膜になりやすく、c−BNおよび
w−BNの優れた特性が充分に活かされない傾向にある。
またPVD法には、ホウ素原子から構成されるターゲッ
トを窒素雰囲気中でスパッタすることによって、基体上
に窒化ホウ素薄膜を形成する反応性スパッタリング法等
があるが、この方法においても軟質なh−BN主体の膜し
か得ることができない。
このようにc−BNおよびw−BNの薄膜化は困難であ
り、現在のところ、それらは、高温および高圧下で人工
的に合成されるものに限られており、その結果製造コス
トが高くなり、さらに粉末または粒状のものしか合成す
ることができないため、現在その応用範囲も限定されて
いる。これらc−BNおよびw−BNを低温下で薄膜状に形
成することができれば、その応用範囲が一層拡大される
ことは明らかである。
そこで近年、イオンやプラズマを用いて、高温,高圧
下で安定な相を低温下で形成しようという試みが活発に
なってきている。
例えば特開60−63372号において、ホウ素の真空蒸着
と同時または交互に、窒素イオンを照射して、基体上に
窒化ホウ素薄膜を形成する方法が開示されている。
この方法によれば、基体を特に加熱することなく、c
−BNやw−BNを合成することができ、かつ照射するイオ
ンと蒸着原子との衝突および反翔により、イオンと蒸着
原子とが基体の内部に注入され、基体と、この基体上に
形成される窒化ホウ素薄膜との界面に新たな混合層を形
成することによって、基体と窒化ホウ素薄膜との密着性
を向上させることができる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、c−BNおよびw−BNは、特に金属との
濡れ性が悪いという性質があり、そのため、基体として
金属を用いた場合、実用上充分に耐えることのできる密
着性を得ることができないという問題があった。
さらにまた上述の方法で窒化ホウ素薄膜が被覆された
基体は、高温下にさらされた場合、基体と窒化ホウ素薄
膜との熱膨張係数の違いにより、膜の剥離が生じやす
く、さらにこの熱膨張係数の違いにより、膜内に生じる
内部応力が作用して膜の剥離を促進させる。また基体と
窒化ホウ素薄膜との格子定数の違いによりc−BNやw−
BNの成長を妨げたり、または膜内の内部応力が増加する
ことにより膜がさらに剥離し易くなったりするという問
題があった。
この発明の目的は、上記問題点に鑑み、基体に影響さ
れることなく、低温下で基体上にc−BNおよびw−BN主
体の窒化ホウ素薄膜を形成できる窒化ホウ素薄膜被覆基
体の形成方法を提供するものである。
〔課題を解決するための手段〕
請求項(1)記載の窒化ホウ素薄膜被覆基体の形成方
法は、基体上に、第III b族,第IV a族および第IV b族
元素のうちの少なくとも1種以上を含む物質の真空蒸着
と同時もしくは交互または蒸着後に、不活性ガスイオン
および窒素イオンのうちの少なくとも一方を含むイオン
を加速エネルギ1KeV以上40KeV以下の範囲で照射して、
前記第III b族,第IV a族および第IV b族元素のうちの
少なくとも1種以上を含んだ薄膜と前記基体との構成原
子よりなる混合層を形成し、前記薄膜の上に、ホウ素を
含む物質の真空蒸着と同時または交互に、窒素イオンを
少なくとも含むイオン40KeV以下の加速エネルギにより
照射することにより、前記第III b族,第IV a族および
第IV b族元素のうちの少なくとも1種以上を含む薄膜と
窒化ホウ素の構成原子よりなる混合層を形成し、その混
合層の上に窒化ホウ素膜を形成する窒化ホウ素薄膜被覆
基体の形成方法であって、 前記窒化ホウ素薄膜を形成する際、加速エネルギを一
定にしてあるいは随時変化させて、前記窒化ホウ素薄膜
中に含まれるホウ素原子と窒素原子との粒子数の割合
を、前記第III b族、第IV a族および第IV b族元素のう
ちの少なくとも1種以上を含んだ前記薄膜との界面で
は、4以上〜60以下の範囲とし、かつ前記窒化ホウ素薄
膜の表面では、前記窒化ホウ素薄膜中に含まれるホウ素
原子と窒素原子との粒子数の割合を1以上〜10以下の範
囲とすることで、前記窒化ホウ素薄膜中で、薄膜の表面
方向に向かってホウ素原子と窒素原子との粒子数の割合
を連続的または段階的に減少させることを特徴とするも
のである。
第1図はこの発明の窒化ホウ素薄膜被覆基体の形成方
法に用いられる薄膜形成装置の一例を示す概念図であ
る。
第1図に示すように、膜を形成すべき基体1を基体ホ
ルダ2に保持する。基体1に対向した位置には、蒸発源
3,蒸発源4およびイオン源5を配置する。また基体1の
近傍には、膜厚計6およびイオン電流測定器7に配置す
る。
なお基体1,基体ホルダ2,蒸発源3,蒸発源4,イオン源5,
膜厚計6およびイオン電流測定器7は図示しない真空装
置内に収容する。
蒸発源3,4は、蒸発物質9,10を例えば電子ビーム,レ
ーザ線または高周波等によって、蒸発させるものであ
り、特に限定されない。
またイオン源5は、例えばカウスマン型またはプラズ
マ閉じ込めにカプス磁場を用いたバケット型等であり、
特に限定されない。
また膜厚計6は、基体1上に蒸着する蒸発物質9,10の
膜厚および粒子数を計測するものであり、例えば水晶振
動子を使用した振動型膜厚計等を用いる。
またイオン電流測定器7は、基体1上に照射するイオ
ンの個数を計測するものであり、例えばファラデーカッ
プのような2次電子抑制電極をもつカップ型構造のもの
である。
また蒸発源3より蒸発させる蒸発物質9は、ホウ素元
素を含む物質であり、例えばホウ素単体,ホウ素酸化物
またはホウ素窒化物等である。
また蒸発源4より蒸発させる蒸発物質10は、第III b
族,第IV a族および第IV b族元素のうちの少なくとも1
種以上を含んだ物質であり、例えば各々の単体,酸化物
または窒化物、またはこれらの混合物,合金等である。
また第III b族元素としては、例えばB,Alであり、第IV
a族元素としては、例えばTi,Zr等であり、第IV b族元素
としては、例えばSi等である。
またイオン5′は、例えば窒素イオン,窒素イオンと
不活性ガスイオンまたは窒素イオンと不活性ガスと水素
イオンとからなるイオン種である。
このような薄膜形成装置に用いて、第2図に示すよう
に、基体1上に第III b族,第IV a族および第IV b族元
素のうちの少なくとも1種以上を含んだ薄膜(以下「中
間層11」という。)を形成し、この中間層11上に窒化ホ
ウ素薄膜12を形成する。
また基体1と中間層11との界面には、基体1と中間層
11との構成原子からなる混合層13,中間層11と窒化ホウ
素薄膜12との界面には、中間層11と窒化ホウ素膜12との
構成原子からなる混合層14を形成する。
以下この中間層11および窒化ホウ素薄膜12の形成方法
を説明する。
第1図に示す薄膜形成装置を用い、真空装置内を1×
10-5〔Torr〕以下に維持し、基体1上に、蒸発源4によ
る第III b族,第IV a族および第IV b族元素のうちの少
なくとも1種以上を含む蒸発物質10の蒸着と同時もしく
は交互または蒸着後に、イオン源5により、不活性ガス
イオンおよび窒素イオンのうちの少なくとも一方を含む
イオンを加速エネルギー1keV以上〜40keVの範囲で照射
して、厚み10Å〜5000Åの中間層11を形成する。
この際、基体1と中間層11との界面には、照射するイ
オンと蒸着原子との衝突および反翔により、イオンと蒸
着原子とが基体1の内部に侵入することによって、基体
1の構成原子と、中間層11の構成原子との混合層13が形
成される。
但し、蒸発物質10として、第III b族元素のホウ素単
体を用いた場合は、イオン源5により、不活性ガスイオ
ンのみを照射する。
この中間層11の形成により、基体1を構成する原子
と、後に中間層11の表面に形成する窒化ホウ素薄膜12と
の熱膨張係数の違いおよび格子定数の違いによって生じ
る基体1と窒化ホウ素薄膜12との密着性の悪化を防ぐこ
とができ、かつ窒化ホウ素薄膜12の形成時におけるc−
BN,w−BNの成長の妨げをなくすことができる。そしてさ
らに、基体1と中間層11との界面には、混合層13を形成
することにより、基体1と中間層11との密着性を向上さ
せることができる。
なお中間層11の厚みは、10Å〜5000Åの範囲が好まし
い。この範囲を逸脱して10Åより薄くなると、前述中間
層11の効果が明確に出現せず、5000Åより厚くなると、
基体1が高温下にさらされた場合、中間層11と、後に中
間層11上に形成する窒化ホウ素薄膜12との熱伝導率の違
いにより、膜内に熱勾配が生じ、膜が剥離しやすくな
る。
またイオン源5により、基体1上に照射する不活性ガ
スイオンおよび窒素イオンのうちの一方を含むイオンの
加速エネルギーは、1keV以上〜40keV以下の範囲が好ま
しい。この範囲を逸脱して、1keVより小さくすると、基
体1と中間層11との界面での混合層13の形成が不充分と
なり、40keVより大きくすると、中間層11に生じる欠陥
の数が多くなる。
次にこの中間層11上に、蒸発源4により、ホウ素を含
む蒸発物質7の蒸着と同時または交互に、イオン源5に
より、少なくとも窒素イオンを含むイオンを加速エネル
ギー40keV以下の範囲で照射して、窒化ホウ素薄膜12を
形成する。
この際、形成する窒化ホウ素薄膜12中に含まれるホウ
素原子と窒素原子との粒子数の割合(以下「B/N組成
比」という。)は1以上〜60以下の範囲とするが、窒化
ホウ素薄膜12中でのB/N組成比あるいはホウ素の原子密
度を、基体1から表面方向に段階的または連続的に減少
させている。とくに窒化ホウ素薄膜12の表面では、B/N
組成比を1以上〜10以下の範囲とし、中間層11と窒化ホ
ウ素薄膜12との界面では、B/N組成比を4以上〜60以下
の範囲とすることが好ましい。
窒化ホウ素薄膜12の表面でのB/N組成比が1以上〜10
以下の範囲を逸脱すると、膜表面でのc−BNまたはw−
BNの含有量が少なくなり、このc−BNおよびw−BNが有
する高硬度,化学的安定性等の優れた特性に悪影響を及
ぼし、また中間層11と窒化ホウ素薄膜12との界面でのB/
N組成比が4以上〜60以下の範囲を逸脱すると、中間層1
1による窒化ホウ素薄膜12と、基体1との熱膨張係数お
よび格子定数の違いを緩和する作用が不充分となる。
このように窒化ホウ素薄膜12中で、基体1から表面方
向にB/N組成比を段階的または連続的に減少させる場合
の窒化ホウ素薄膜12の形成方法は、中間層11の表面に到
達するホウ素原子と窒素原子との粒子数を抑制すること
により、中間層11と窒化ホウ素薄膜12との界面でのB/N
組成比を4以上〜60以下の範囲とし、その後堆積する窒
化ホウ素薄膜12のB/N組成比を減少させるように、膜に
到達するホウ素原子と窒素原子との粒子数を抑制し、最
終的に窒化ホウ素薄膜12の表面付近でのB/N組成比が1
以上〜10以下の範囲となるようにする。
またこの際に照射するイオンの加速エネルギーは、一
定であっても、随時変化させても良く、例えば、基体1
との密着性を向上させるため、基体1の表面付近は、比
較的高い加速エネルギー2keV以上〜40keV以下の範囲の
イオンを照射し、一定の膜厚を有する窒化ホウ素薄膜を
形成した後、膜の表面付近では、内部に欠陥等の少ない
窒化ホウ素薄膜を形成するために、照射するイオンの加
速エネルギー2keV以下に下げても良い。
なお基体1は、各種金属,セラミックス,ガラスまた
は高分子により構成される物質等の任意のものを用いる
ことができる。
〔作用〕
この発明の構成によれば、基体と窒化ホウ素薄膜との
間に第III b族,第IV a族および第IV b族のうちの少な
くとも1種以上を含んだ薄膜を形成し、基体と薄膜との
間および薄膜と窒化ホウ素薄膜との間にそれぞれ混合層
を形成し、さらに窒化ホウ素薄膜のB/Nの粒子比を薄膜
側で4以上60以下の範囲とし、B/N粒子比を連続的また
は段階的に基体から膜表面にかけて減少させて表面側で
1以上〜10以下とすることによって、基体と薄膜と窒化
ホウ素薄膜との熱膨張率の違いおよび格子定数の違いに
より生じる窒化ホウ素薄膜の密着性の悪化をなくすとと
もに窒化ホウ素薄膜の形成時のc−BN,w−BNの成長の妨
げ等をなくすことができ、しかも基体と窒化ホウ素薄膜
との密着性を向上させることができ、さらに膜の高硬度
および化学的安定性を確保することができる。その結
果、基体に影響されることなく、低温下でc−BNおよび
w−BN主体の窒化ホウ素薄膜を形成することができる。
〔実施例〕
第1図に示す薄膜形成装置を用いて、真空装置内の真
空度を1×10-6〔Torr〕以下に維持し、基体1上に、電
子ビームの蒸発源4により、蒸発物質10として、第IV b
族元素単体の純度99.999%のケイ素原子(Si)の蒸着と
同時に、イオン源5に窒素ガスを導入することにより、
窒素イオンを加速エネルギー2keVで照射することによっ
て、中間層11を形成した。また中間層11中のSi原子と窒
素原子との粒子数の割合(Si/N組成比)は3となるよう
に、基体1上に到達するSi原子と窒素原子との粒子数を
制御した。
またこの中間層11の厚みは、500Åとした。
次にこの中間層11の表面に、蒸発源3により、純度9
9.7%のホウ素原子(B)の蒸着と同時に、イオン源5
に窒素ガスを導入することにより、窒素イオンを加速エ
ネルギー2keVで照射し、窒化ホウ素薄膜12を形成した。
また窒化ホウ素薄膜12の膜厚は5000Åとした。
なお基体1として、高速度鋼(ハイス鋼:SKH10、寸法
20mm×20mm×1mmtである。)を用いた。
そして、基体1上に中間層11を形成した後、この中間
層11上に窒化ホウ素薄膜12を形成する際、窒化ホウ素薄
膜12の硬度および密着性を高めるため、窒素原子とホウ
素原子との粒子数を制御することにより、基体1から表
面方向にB/N組成比を段階的または連続的に減少させ(B
/N組成比を一定としない。)て窒化ホウ素薄膜12を形成
し、さらに中間層11の形成時の蒸発物質,照射イオン種
および照射イオンの加速エネルギー、また窒化ホウ素薄
膜12の形成時のB/N組成比,照射イオン種,照射イオン
の加速エネルギーおよびB/N組成比を変化させ、実施例
1〜6とした。
この実施例1〜6の諸条件を表1に示す。
なお表1において、 表1の項目eで示す窒化ホウ素薄膜中のB/N組成比に
おいて、上層は窒化ホウ素薄膜の表面および下層は中間
層と窒化ホウ素薄膜との界面付近のB/N組成比を示す。
また実施例6におけるArイオンと窒素イオンの混合比
は(Arイオンの個数比/窒素イオンの個数比)は30%で
ある。
次に中間層の形成時に、基体1上に照射するイオンの
加速エネルギーを1keV以上40keVの範囲から逸脱したイ
オンを照射し、他の条件および形成プロセスは、実施例
1と同様にして窒化ホウ素薄膜被覆基体を形成し、さら
に中間層の形成時の蒸発物質,照射イオン種および照射
イオンの加速エネルギー、また窒化ホウ素薄膜の形成時
のB/N組成比,照射イオン種,照射イオンの加速エネル
ギーおよびB/N組成比を変化させ、比較例1〜5とし、
また中間層を形成せず、基体上に直接窒化ホウ素薄膜を
形成したものを比較例6〜8とした。
この比較例1〜8の諸条件を表2に示す。
また表2において、 比較例8におけるArイオンと窒素イオンの組混合比は
(Arイオンの個数比/窒素イオンの個数比)は30%であ
る。
比較例9〜15 次に窒化ホウ素薄膜の形成時に、窒素原子とホウ素原
子との粒子数の割合(B/N組成比)を段階的または連続
的に変化させ、かつ請求項記載の範囲から逸脱し、他の
条件および形成プロセスは実施例1と同様にして、窒化
ホウ素薄膜被覆基体を形成し、さらに中間層の形成時の
蒸発物質,照射イオン種および照射イオンの加速エネル
ギー、また窒化ホウ素薄膜の形成時のB/N組成比,照射
イオン種,照射イオンの加速エネルギーおよびB/N組成
比を変化させ、比較例9〜13,15とし、また中間層を形
成せず、基体上に直接窒化ホウ素薄膜を形成したものを
比較例14とした。
この比較例9〜15の諸条件を表3に示す。
また表3において、 比較例13におけるArイオンと窒素イオンの混合比は
(Arイオンの個数比/窒素イオンの個数比)は30%であ
る。
以上実施例1〜6および比較例1〜15の膜の密着力と
硬度とを測定した結果を表4および表5に示す。
密着力は、AEセンサ付自動スクラッチ試験機を使用し
て、1〜50Nの連続荷重を一定速度かけて、スクラッチ
し、AE信号が急激に立ち上がる荷重を臨界荷重LCとし
て、その値の大きさによって、密着力を評価した。
また硬度は、微小ビッカース硬度計を用いて、10gf荷
重でダイヤモンド圧子を押しつけた時の圧痕の大きさよ
り求めた。
以上表4に示す実施例1〜6は、全ての実施例におい
て、臨界荷重LC(N)の値が25以上となり、これは実施
例の中間層11(第III b族,第IV a族および第IV b族の
うちの少なくとも1種以上を含む薄膜)の形成によっ
て、基体1と窒化ホウ素薄膜12との密着性に高いものが
得られていることがわかる。また硬度(Kg/cm2)におい
ては、全て4000Kg/cm2以上の値が得られており、中間層
11の形成によって、窒化ホウ素薄膜12は、基体1の影響
すなわち基体1との格子定数の違い等によって生じるc
−BN,w−BNの成長の妨げを受けなくなっていることがわ
かる。
一方、比較例1〜5は、硬度は4000〔Kg/cm2〕以上得
られているが、中間層を形成する際に照射するイオンの
加速エネルギーを40keVより大きくしたため、このイオ
ンの照射により、中間層中に生じる欠陥が多くなり、そ
の結果、臨界荷重LCの値が、実施例1〜6より、小さく
なり膜の密着性が劣ったと考えられる。
また比較例6〜8は、中間層を形成せず、基体上に直
接窒化ホウ素薄膜を形成したため、実施例1〜6より、
臨界荷重LCの値が小さくなり、c−BN成分が少なくなっ
たことにより硬度が小さくなったものと考えられる。
また比較例9〜13は、臨界荷重LCの値は25〔N〕以上
得られているが、窒化ホウ素薄膜中のB/N組成比が、請
求項記載の範囲を逸脱したため、実施例1〜6より硬度
が小さくなったものと考えられる。
また比較例14は、中間層を形成せず、基体上に直接窒
化ホウ素薄膜を形成したため、実施例1〜6より、臨界
荷重LCの値および硬度の値が小さくなり、密着性および
硬度ともに劣ったと考えられる。
また比較例15は、中間層の厚みが10Å〜5000Åの範囲
から逸脱したため、実施例1〜24より、臨界荷重LCの値
および硬度の値が小さくなり、密着性および硬度ともに
劣ったと考えられる。
〔発明の効果〕
この発明の構成によれば、基体と窒化ホウ素薄膜との
間に第III b族,第IV a族および第IV b族元素のうちの
少なくとも1種以上を含んだ薄膜を形成し、基体と薄膜
との間および薄膜と窒化ホウ素薄膜との間にそれぞれ混
合層を形成し、さらに窒化ホウ素薄膜のB/Nの粒子比を
薄膜側で4以上60以下の範囲とし、B/N粒子比を連続的
または段階的に基体から膜表面にかけて減少させて表面
側で1以上〜10以下とすることによって、基体と薄膜と
窒化ホウ素薄膜との熱膨張率の違いおよび格子定数の違
いにより生じる窒化ホウ素薄膜の密着性の悪化をなくす
とともに窒化ホウ素薄膜の形成時のc−BN,w−BNの成長
の妨げ等をなくすことができ、しかも基体と窒化ホウ素
薄膜との密着性を向上させることができ、さらに膜の高
硬度および化学的安定性を確保することができる。その
結果、基体に影響されることなく、低温下でc−BNおよ
びw−BN主体の窒化ホウ素薄膜を形成することができ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の窒化ホウ素薄膜被覆基体の形成方法
に用いられる薄膜形成装置の一例を示す概念図、第2図
はこの発明の窒化ホウ素薄膜被覆基体の一例を示す概念
図である。 1……基体、11……中間層(第III b族,第IV a族およ
び第IV b族元素のうちの少なくとも1種以上を含んだ薄
膜)、12……窒化ホウ素薄膜、13,14……混合層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 桑原 創 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日新電機株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−164869(JP,A) 特開 昭63−26350(JP,A) 特開 昭58−2022(JP,A) 特開 昭60−63372(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基体上に、第III b族,第IV a族および第I
    V b族元素のうちの少なくとも1種以上を含む物質の真
    空蒸着と同時もしくは交互または蒸着後に、不活性ガス
    イオンおよび窒素イオンのうちの少なくとも一方を含む
    イオンを加速エネルギ1KeV以上40KeV以下の範囲で照射
    して、前記第III b族,第IV a族および第IV b族元素の
    うちの少なくとも1種以上を含んだ薄膜と前記基体との
    構成原子よりなる混合層を形成し、前記薄膜の上に、ホ
    ウ素を含む物質の真空蒸着と同時または交互に、窒素イ
    オンを少なくとも含むイオンを40KeV以下の加速エネル
    ギにより照射することにより、前記第III b族,第IV a
    族および第IV b族元素のうちの少なくとも1種以上を含
    む薄膜と窒化ホウ素の構成原子よりなる混合層を形成
    し、その混合層の上に窒化ホウ素膜を形成する窒化ホウ
    素薄膜被覆基体の形成方法であって、 前記窒化ホウ素薄膜を形成する際、加速エネルギを一定
    にしてあるいは随時変化させて、前記窒化ホウ素薄膜中
    に含まれるホウ素原子と窒素原子との粒子数の割合を、
    前記第III b族、第IV a族および第IV b族元素のうちの
    少なくとも1種以上を含んだ前記薄膜との界面では、4
    以上〜60以下の範囲とし、かつ前記窒化ホウ素薄膜の表
    面では、前記窒化ホウ素薄膜中に含まれるホウ素原子と
    窒素原子との粒子数の割合を1以上〜10以下の範囲とす
    ることで、前記窒化ホウ素薄膜中で、薄膜の表面方向に
    向かってホウ素原子と窒素原子との粒子数の割合を連続
    的または段階的に減少させることを特徴とする窒化ホウ
    素薄膜被覆基体の形成方法。
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