JPH07258822A - 窒化ホウ素含有膜及びその製造方法 - Google Patents

窒化ホウ素含有膜及びその製造方法

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JPH07258822A
JPH07258822A JP5623994A JP5623994A JPH07258822A JP H07258822 A JPH07258822 A JP H07258822A JP 5623994 A JP5623994 A JP 5623994A JP 5623994 A JP5623994 A JP 5623994A JP H07258822 A JPH07258822 A JP H07258822A
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JP
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film
boron
substrate
boron nitride
nitrogen
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Application number
JP5623994A
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English (en)
Inventor
Satoru Nishiyama
哲 西山
Akinori Ebe
明憲 江部
Kiyoshi Ogata
潔 緒方
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Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 基体1上に窒化ホウ素含有膜2が形成されて
おり、窒化ホウ素含有膜2が、ホウ素と窒素との組成比
が2〜60である少なくとも1層の膜2aと、膜2a上
に形成されたホウ素と窒素との組成比が0.2〜2.0
である少なくとも1層の膜2bとからなる窒化ホウ素含
有膜10。 【効果】 基体1上に形成される膜においては、窒化ホ
ウ素含有膜2の内部応力を低減させるホウ素原子を比較
的多く含有する高硬度のc−BNやw−BNを主成分と
する膜2aとなり、基体1との密着性を向上させること
ができる。また、膜2a上に形成される膜2bは、B/
N組成比が1に近い膜となり、膜の化学的安定性をさら
に向上させることができる。従って、膜全体としての化
学的安定性を大きく改善することができ、硬度及び密着
性に優れ、耐摩耗性、耐食性等を必要とする工具、金
型、磁気ヘッド等の各種の用途に使用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、窒化ホウ素含有膜及び
その製造方法に関し、より詳細には、切削工具、金型、
磁気ヘッド又は各種の慴動部品等において、摩擦、摩
耗、潤滑性能等を向上させるための窒化ホウ素含有膜及
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】窒化ホウ素(BN)は、結晶構造によっ
て六方晶系のグラファイトと類似した構造のもの(h−
BN)、立方晶系閃亜鉛鉱型のもの(c−BN)、ある
いは六方晶系のウルツ鉱型のもの(w−BN)等に大別
される。c−BNはダイヤモンドに次ぐ高硬度、熱伝導
率を有し、さらに、熱的・化学的安定性はダイヤモンド
より優れていることから、切削工具といった耐摩耗性を
必要とする分野やヒートシンク用材料に応用されてい
る。
【0003】さらに、w−BNもまた、優れた化学的安
定性、熱衝撃性あるいは高硬度という特性を有している
ことにより、各種耐摩耗性が要求される分野に応用され
ている。しかし、c−BNやw−BNは、共に高温・高
圧下で合成され得るものであるため、その製造コストは
非常に高くなり、合成されるc−BNやw−BNの形態
が粉や粒といったものになり、その応用範囲が限られた
ものとなる。そこで、c−BNやw−BNを低温下で、
薄膜合成しようとする試みが、各種PVD法(Physical
Vapor Deposition)やCVD法(Chemical Vapor Depos
ition )によって盛んに行われている。
【0004】熱CVD法での研究の一例を述べると、こ
の方法では基体を反応室に入れ、ホウ素(B)を含有す
るガスや窒素(N)を含有する原料ガスを反応室に導入
した後、基体を1000℃近い温度に加熱することによ
って、前記原料ガスを熱分解させて基体の表面にBN膜
を形成しようとするものである。しかし、この方法では
基体に耐熱性が要求されるため、基体種が限定されてし
まうという欠点がある。例えば、高速度工具鋼(ハイス
鋼)のような約500℃以上の温度で硬度の劣化を生じ
る様なものや、高温下での変形による寸法精度のくるい
が許されない金型といったものを基体として用いること
ができない。さらに、CVD法ではh−BNの合成は容
易になされてきたものの、c−BNやw−BNの合成例
はまだ報告されておらず、研究段階にあるのが実状であ
る。
【0005】さらに、PVD法においても、例えばレー
ザーを照射することによって窒化ホウ素よりなるターゲ
ットをスパッタリングし、基体表面に窒化ホウ素含有膜
を形成しようとする方法が試みられたが、CVD法と同
じく、c−BNやw−BNの合成は不可能であった。近
年、イオンやプラズマを積極的に用いて、低温下でc−
BNやw−BNを合成しようとする試みが幾つも行わ
れ、例えば、特公平2−59862号公報には、真空蒸
着とイオン照射とを併用することによってc−BNやw
−BNを低温下で合成する方法も提案されている。これ
によると、従来困難であった、c−BNやw−BNの低
温下での薄膜合成が可能となり、BN膜の応用の拡大が
可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、特公平2−
59862号公報において述べられているように、この
ホウ素の真空蒸着と窒素イオンの照射とを併用する方法
においては、c−BNやw−BNを含有する高硬度の窒
化ホウ素(BN)膜を形成するためには、イオンの照射
エネルギーを5KeV〜100KeVとし、蒸着ホウ素
と照射される窒素イオンによるホウ素と窒素との組成比
(B/N組成比)を4〜25の範囲にする必要がある。
【0007】この成膜条件の中でB/N組成比が1より
も大、すなわち形成されたBN膜の組成が化学量論的組
成比である1よりも大きいことは、膜内に窒素原子と結
合していないホウ素原子が存在することとなる。この窒
素原子と結合していないホウ素原子は、膜の化学的安定
性、すなわち耐熱性、耐酸化性、耐薬品性等に悪影響を
及ぼす結果となるとともに、金型への膜として用いた場
合には、耐熱性、耐酸化性、耐薬品性等の劣化に伴って
離型性にも悪影響を及ぼすこととなる。
【0008】従って、特公平2−59862号公報にお
いては、高硬度を得るためB/N組成比を4以上にしな
ければならないが、一方、窒素原子と結合していないホ
ウ素原子を含有するため、化学的安定性に優れた窒化ホ
ウ素膜が得られていないのが現状であった。この発明は
上記記載の課題に鑑みなされたものであり、高硬度を有
するとともに、化学的安定性に優れ、基体との密着性が
良好な窒化ホウ素含有膜及びその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、基体上に窒化ホウ素含有膜が形成されて
おり、該窒化ホウ素含有膜が、ホウ素と窒素との組成比
が2〜60である少なくとも1層の膜と、該膜上に形成
されたホウ素と窒素との組成比が0.2〜2.0である
少なくとも1層の膜とからなる。
【0010】また、本発明の窒化ホウ素含有膜の製造方
法は、基体上にホウ素を含有する膜を形成すると同時、
交互又は形成後に、(i) 少なくとも窒素を含有するイオ
ンを0.2KeV〜40KeVの照射エネルギーで照射
して、形成される膜中のホウ素と窒素との組成比が2〜
60である膜を形成し、(ii)さらに、該膜上に少なくと
も窒素を含有するイオンを、0.2KeV〜40KeV
の照射エネルギーで照射して、形成される膜中のホウ素
と窒素との組成比を0.2〜2.0である膜を形成する
窒化ホウ素含有膜の製造方法である。
【0011】本発明の窒化ホウ素含有膜において、該膜
に被覆される基体としては、特に限定されるものではな
く、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタ
レート等のポリエチレン類、ポリイミド等の高分子より
なる基体、高速度工具鋼、超硬合金、炭素綱等の金属、
アルミナ、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックよりなる
材料を用いることができる。この基体上に、窒化ホウ素
含有膜が形成されている。
【0012】本発明におけるB/N組成比とは、膜中に
含有されるホウ素原子と窒素原子との組成比、すなわち
原子数の比を示す。本発明の窒化ホウ素含有膜は、主と
してc−BN及びw−BNの結晶構造を有する膜であ
り、この窒化ホウ素含有膜は、そのホウ素と窒素との組
成比(B/N組成比)が膜表面側において基体側よりも
減少して形成されているものである。具体的には、基体
側においては、そのB/N組成比が2〜60であり、膜
表面側においては0.2〜2.0である膜である。ま
た、膜の最表面のB/N組成比は、1.5以下であるこ
とが好ましい。つまり、膜の最表面では、c−BN、w
−BN又はh−BNを含有するB/N組成比が1に近い
膜が形成されている。
【0013】本発明の窒化ホウ素含有膜は、上記の組成
比、つまり、組成比が2〜60の膜が単層で形成され、
組成比が0.2〜2.0である膜が単層で形成された2
層の積層膜であってもよいが、2〜60の組成比及び
0.2〜2.0の組成比を有する膜がそれぞれ複数形成
された積層膜であってもよい。また、各膜のB/N組成
比が急激に変化しているものは、その組成変化に起因し
て膜間で剥離が生じやすいため、それら組成の異なる膜
の間に、それらの組成比の間の組成比を有する膜を1層
又は2層以上介在させることが好ましい。層構造が何層
になるかは特に限定されるものではないが、膜全体の膜
厚や要求される硬度や密着性等により適宜調整すること
ができる。例えば、金属基体に対して、大きな密着性と
硬度を要求する場合には、B/N組成比を、基体側で1
0〜60程度とし、膜表面側で1とするのが好ましい。
このような場合には、基体側と膜表面側とでは、その組
成比に10以上の差異が生じるので、各膜の間に、2〜
5程度の組成比の異なる膜を介在させることが好まし
い。
【0014】また、基体側から膜表面側にかけて組成比
が減少しているものが好ましい。組成比の減少は、段階
的に行われていてもよく、徐々に変化したものであって
もよい。このような窒化ホウ素含有膜の膜厚は特に限定
されるものではなく、使用目的等により適宜調整するこ
とができるが、B/N組成比が2〜60の膜は30〜3
000nm程度、組成比が0.2〜2.0である膜は7
0〜2000nm程度、全膜厚では100〜5000n
m程度が好ましい。
【0015】さらに、本発明の窒化ホウ素含有膜が形成
される基体は、例えば、基体として、基体表面に窒化ホ
ウ素含有膜を構成する窒素原子及びホウ素原子が注入さ
れた領域を有していてもよい。つまり、基体の表面に、
基体を構成する原子、窒化ホウ素含有膜を構成する窒素
原子及びホウ素原子が混在した領域が形成されていても
よい。このような領域は、例えば基体上に、ホウ素の真
空蒸着又はスパッタと窒素イオン照射とを併用して窒化
ホウ素含有膜を形成することにより、形成することがで
きる。
【0016】本発明の窒化ホウ素含有膜においては、c
−BN、w−BNあるいはh−BNの結晶構造の制御方
法は、特に限定されるものではない。例えば、照射イオ
ンの照射エネルギー、イオン種、電流密度及び基体上に
到達するホウ素原子と窒素イオンとの組成比等を単独で
変化させること、又は組み合わせて変化させることによ
って制御することができる。具体的には、イオンの照射
エネルギーを0.2KeV〜40KeVで一定に照射し
て、B/N組成比を連続的又は断続的に変化させて成膜
することができる。B/N組成比が2〜60である膜を
形成する場合には、0.2KeV〜40KeVの照射エ
ネルギーでイオン照射することが好ましく、B/N組成
比が0.2〜2.0である膜を形成する場合には、0.
2KeV〜40KeVが好ましく、さらに0.2KeV
〜10KeVでイオン照射することが好ましい。イオン
の照射エネルギーが40KeVを越えると、膜内に過大
な欠陥が生成され、該膜の硬度や化学的安定性が低下す
るので好ましくなく、0.2KeV未満であると膜の基
体への密着性が劣り好ましくない。
【0017】また、本発明において、膜を形成する際の
基体の温度は、約60〜約200℃が好ましく、約60
〜約150℃がより好ましい。これは基体ホルダーを冷
却することにより得られる。これによって、本発明の効
果が変化することはないが、熱的なダメージを避けなけ
ればならないような種々の材質の基体を用いることがで
きる。
【0018】本発明においては、例えば、イオン蒸着薄
膜形成法、イオンプレーティング法、各種スパッタリン
グ法を適宜用いて、基体上に膜を形成することができ
る。この際の膜を形成する装置としては特に限定される
ものではないが、窒化ホウ素含有膜中に高硬度のc−B
N構造を含有させることが容易な方法である真空蒸着又
はスパッタとイオン照射とを同時に行えるものが好まし
い。例えば、図2に示すような真空蒸着とイオン照射と
が同時に行える装置を用いることができる。この装置に
よれば、ホウ素の蒸発原子が照射イオンとの衝突によっ
て高励起化され、c−BN結晶が形成されやすい。ま
た、イオンが蒸発原子を基体中に押し込んだり、基体原
子をはじき出したりすることによって、膜の界面には膜
と基体との構成原子からなる中間層が形成され、膜の密
着性を向上させることができる。
【0019】図2において、1は基体であり、基体ホル
ダー8は、基体1を載置できるように構成されている。
また、基体1に対向する位置に蒸発源3、イオン源4が
それぞれ配設されており、これらはすべて真空容器5内
に納められている。真空容器5は排気装置(図示せず)
によって真空状態に保持される。さらに、基体ホルダー
8近傍には基体1への蒸着原子の蒸着量をモニターする
ことができる膜厚モニター6が、基体1へのイオンの照
射量をモニターすることができるイオン電流測定器7が
それぞれ配設されている。また、基体ホルダー8には、
基体1を冷却するための冷却管(図示せず)が内設され
ていてもよい。
【0020】このように構成される装置においては、真
空容器5は排気装置によって、所定の真空度に排気さ
れ、保持される。蒸発源3は電子ビーム、抵抗や高周波
によってホウ素含有物質を加熱させ蒸気化させるもので
ある。但し、ホウ素含有物質として昇華性の物質を用い
て加熱気化させる場合には、蒸発速度が安定しないこと
があるため、スパッタリング法を用いることができる。
また、イオン源4の方式も特に限定されず、カウフマン
型やバケット型等を適宜用いることができる。膜厚モニ
ター6及びイオン電流測定器7の方式は特に限定される
ものではなく、例えば、膜厚モニター6としては水晶振
動子を用いたもの、イオン電流測定器7としてはファラ
デーカップ等を適宜用いることができる。
【0021】本発明の膜を形成する場合には、基体を基
体ホルダーに設置することによって真空容器内に納め、
例えば、1×10-6torr以下の真空度に排気した後、基
体上にホウ素の堆積と窒素イオンのイオン照射とを行
い、窒化ホウ素含有膜を形成する。なお、基体表面に、
まず、窒素イオン等のイオン照射をしたのち、その基体
上に膜を形成してもよい。この際の基体へのイオンの照
射角度は特に限定されるものではない。
【0022】ホウ素含有物質を堆積させる方法として
は、蒸発源よりホウ素含有物質を加熱し、蒸気化させる
真空蒸着又はスパッタリング等が挙げられる。蒸発源か
らの蒸気化又はスパッタリングするホウ素含有物質とし
ては、ホウ素の単体、酸化物、窒化物、あるいは炭化物
等を用いることができる。そして、該物質の蒸着又は堆
積と同時、あるいは蒸着又は堆積後に、イオン源より少
なくとも窒素を含有するイオンを照射する。この際、照
射するイオンとしては、窒素イオンを用いるのが効果的
であるが、窒素イオンと不活性ガスイオンや水素イオン
とを含有するもの等を用いることができる。これらは、
例えば、イオン源に窒素ガスのみ、あるいは窒素ガスと
不活性ガスあるいは水素ガス等とを導入することによっ
て得ることができる。この場合には、不活性ガスイオン
や水素イオンによって、堆積したホウ素原子が、より一
層高励化状態になるので、膜の結晶化度が向上するとい
う利点がある。なお、B/Nの組成比は、図2における
膜厚モニター6によって、基体に到達するホウ素原子の
数を測定し、電流測定器7によって、基体に照射される
イオンの個数を計測することによって調整することがで
きる。
【0023】
【作用】本発明の窒化ホウ素含有膜によれば、基体上に
窒化ホウ素含有膜が形成されており、該窒化ホウ素含有
膜が、ホウ素と窒素との組成比が2〜60である少なく
とも1層の膜と、該膜上に形成されたホウ素と窒素との
組成比が0.2〜2.0である少なくとも1層の膜とか
らなるので、このような窒化ホウ素含有膜において、基
体側に形成される膜は、窒化ホウ素含有膜の内部応力を
低減させるホウ素原子を比較的多く含有する高硬度のc
−BNやw−BNを主成分とする膜となり、基体との密
着性が向上することとなる。また、このような膜の上に
形成されるホウ素原子と窒素原子との組成比が0.2〜
2.0である膜により、膜の化学的安定性が向上するこ
ととなり、硬度、密着性及び化学的安定性のすべてに優
れた膜が得られる。
【0024】また、窒化ホウ素含有膜の最表面のホウ素
と窒素との組成比が1.5以下であり、かつ前記窒化ホ
ウ素含有膜におけるホウ素と窒素との組成比が基体側か
ら膜表面側にかけて減少している場合には、c−BN及
びw−BNが所望の割合で含有され、かつB/N組成比
が1に近い膜となるので、膜の化学的安定性がさらに向
上する。
【0025】さらに、基体が、該基体表面に窒化ホウ素
含有膜を構成する窒素原子及びホウ素原子が注入された
領域を有する場合には、基体と膜との界面に、基体を構
成する原子、窒化ホウ素含有膜を構成する窒素原子及び
ホウ素原子が混在した領域が形成されることとなるの
で、基体と膜との間に生じる内部応力の緩和が図られる
こととなり、窒化ホウ素含有膜の基体への密着性が向上
することとなる。
【0026】また、本発明の窒化ホウ素含有膜の製造方
法によれば、基体上にホウ素を含有する膜を形成すると
同時、交互又は形成後に、(i) 少なくとも窒素を含有す
るイオンを0.2KeV〜40KeVの照射エネルギー
で照射して、形成される膜中のホウ素と窒素との組成比
が2〜60である膜を形成し、(ii)さらに、該膜上に少
なくとも窒素を含有するイオンを0.2KeV〜40K
eVの照射エネルギーで照射して、形成される膜中のホ
ウ素と窒素との組成比が0.2〜2.0である膜を形成
するので、基体上に、窒化ホウ素含有膜の内部応力を低
減させるホウ素原子を比較的多く含有するc−BNやw
−BNを主成分とする膜が形成されることとなり、該膜
と基体との密着性が向上することとなる。また、該膜上
にc−BN及びw−BNが所望の割合で含有され、かつ
B/N組成比が1に近い膜が形成されることとなり、膜
の化学的安定性がさらに向上する。さらに、基体と膜と
の界面に、基体を構成する原子、窒化ホウ素含有膜を構
成する窒素原子及びホウ素原子が混在した領域が形成さ
れることとなるので、基体と膜との間に生じる内部応力
の緩和が図られることとなり、窒化ホウ素含有膜の基体
への密着性が向上することとなる。
【0027】従って、膜全体として見た場合、基体との
密着性に優れ、硬度、靱性及び化学的安定性に優れた膜
が得られることとなる。
【0028】
【実施例】本発明に係る窒化ホウ素含有膜及びその製造
方法の実施例を以下に示す。 実施例1 まず、図1に示した高速度工具鋼(SKH−51)基体
(25×25×3t)1を、図2に示したイオン蒸着薄
膜形成装置の真空容器内に収納し、真空容器内を5×1
-7Torrの真空度に保持した。次いで、純度99.
7%のホウ素ペレットを電子ビーム蒸発源より気化さ
せ、基体1上に蒸着した。この蒸着と同時に、イオン源
に純度5Nの窒素ガスを、真空容器内が5×10-5To
rrになるまで導入し、イオン化させ、15KeVの照
射エネルギーで、基体に立てた法線に対して0°で基体
に照射した。なお、この際、ホウ素原子の窒素イオンに
よるスパッタ率等を考慮して、ホウ素原子の蒸発量及び
窒素イオンの照射量を調整し、膜厚は約500nm、組
成比はB/N比で20になる膜を形成した。また、イオ
ン源はカスプ磁場を用いたバケット型イオン源を用い
た。
【0029】続いて、基体1上に、15KeVの照射エ
ネルギーで窒素イオンを照射しながら、B/N比が10
となる膜を約500nm形成した。そして最後に、基体
1上に、15KeVの照射エネルギーで窒素イオンを照
射しながら、B/N比が1となる膜を約500nm形成
した。このようにして形成された窒化ホウ素含有膜被覆
基体10は、シリコン基板1の表面に、窒化ホウ素含有
膜を構成する窒素原子及びホウ素原子が注入された領域
として基体構成原子、窒化ホウ素含有膜を構成する窒素
原子及びホウ素原子が混在した領域1aが形成されてお
り、この領域1aの上に窒化ホウ素含有膜2a、2b及
び2cが形成されている。 実施例2 実施例1と同様の基体を用い、実施例1と同様の方法に
より、窒素イオンの照射エネルギー5KeV、B/N比
=10となるように、約500nmの窒化ホウ素含有膜
を形成した後、さらに、窒素イオンの照射エネルギー5
KeV、B/N比=5となるように、約500nmの窒
化ホウ素含有膜を形成した。そして最後に、15KeV
の照射エネルギー、B/N比が1となる膜を約500n
m形成した。 実施例3 実施例1と同様の基体を用い、実施例1と同様の方法に
より、窒素イオンの照射エネルギー5KeV、B/N比
=10となるように、約500nmの窒化ホウ素含有膜
を形成した後、さらに、窒素イオンの照射エネルギー
2.0KeV、B/N比=5となるように、約500n
mの窒化ホウ素含有膜を形成した。そして最後に、0.
2KeVの照射エネルギー、B/N比が1となる膜を約
500nm形成した。 比較例1 実施例1と同様の基体を用い、実施例1と同様の方法に
より、窒素イオンの照射エネルギー15KeV、B/N
比=20となるように、約1500nmの窒化ホウ素含
有膜を形成した。 比較例2 実施例1と同様の基体を用い、実施例1と同様の方法に
より、窒素イオンの照射エネルギー5KeV、B/N比
=10となるように、約1500nmの窒化ホウ素含有
膜を形成した。 比較例3 実施例1と同様の基体を用い、実施例1と同様の方法に
より、窒素イオンの照射エネルギー15KeV、B/N
比=1となるように、約500nmの窒化ホウ素含有膜
を形成した。
【0030】このようにして形成された膜の硬度と密着
性を測定した。なお、硬度は10g荷重のビッカース硬
度計により、密着力はAEセンサー付スクラッチ試験機
を用い、0Nから連続的に荷重を増加させながらダイヤ
モンド圧子で膜を引っかき、AEセンサーにてモニター
されるAE信号が急激に立ち上がる荷重を臨界荷重(L
c)として、その値の大きさで密着力を表した。その結
果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】表1から明らかなように、実施例及び比較
例3以外の比較例に示す膜は、いずれも硬度と密着性に
優れた膜であった。さらに、実施例及び比較例の膜を、
大気中において加熱し、膜の酸化開始温度を測定した。
その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】これらの結果から明らかなように、比較例
1及び2の膜に比較して、実施例の膜は、いづれも耐酸
化性に優れることがわかった。つまり、化学的安定性と
耐酸化性とを同時に要求される分野では、実施例の膜し
か使用できないことが分かった。
【0035】
【発明の効果】本発明の窒化ホウ素含有膜によれば、窒
化ホウ素含有膜で被覆された基体であって、前記窒化ホ
ウ素含有膜が、少なくとも基体上に形成されたホウ素と
窒素との組成比が2〜60である膜と、該膜上に形成さ
れたホウ素と窒素との組成比が0.2〜2.0である膜
とからなるので、基体上に形成される膜においては、窒
化ホウ素含有膜の内部応力を低減させるホウ素原子を比
較的多く含有する高硬度のc−BNやw−BNを主成分
とする膜となり、基体との密着性を向上させることがで
きる。
【0036】また、窒化ホウ素含有膜の最表面のホウ素
と窒素との組成比が1.5以下であり、かつ前記窒化ホ
ウ素含有膜におけるホウ素と窒素との組成比が基体側か
ら膜表面側にかけて減少している場合には、c−BN及
びw−BNを所望の割合で含有することができ、かつB
/N組成比が1に近い膜となるので、膜の化学的安定性
をさらに向上させることができる。
【0037】さらに、基体が、該基体表面に窒化ホウ素
含有膜を構成する窒素原子及びホウ素原子が注入された
領域を有する場合には、基体と膜との界面に、基体を構
成する原子、窒化ホウ素含有膜を構成する窒素原子及び
ホウ素原子が混在した領域が形成されることとなるの
で、基体と膜との間に生じる内部応力の緩和が図られる
こととなり、窒化ホウ素含有膜の基体への密着性を一
層、向上させることができる。
【0038】また、本発明の窒化ホウ素含有膜の製造方
法によれば、基体上にホウ素を含有する膜を形成すると
同時、交互又は形成後に、(i) 少なくとも窒素を含有す
るイオンを0.2KeV〜40KeVの照射エネルギー
で照射して、形成される膜中のホウ素と窒素との組成比
が2〜60である膜を形成し、(ii)さらに、該膜上に少
なくとも窒素を含有するイオンを0.2KeV〜40K
eVの照射エネルギーで照射して、形成される膜中のホ
ウ素と窒素との組成比が0.2〜2.0である膜を形成
するので、基体上に、窒化ホウ素含有膜の内部応力を低
減させるホウ素原子を比較的多く含有するc−BNやw
−BNを主成分とする膜を形成させることができ、該膜
と基体との密着性を向上させることができる。また、該
膜上にc−BN及びw−BNを所望の割合で含有するこ
とができし、かつB/N組成比が1に近い膜を形成する
ことができるので、膜の化学的安定性をさらに向上させ
ることができる。さらに、基体と膜との界面に、基体を
構成する原子、窒化ホウ素含有膜を構成する窒素原子及
びホウ素原子が混在した領域が形成されることとなるの
で、基体と膜との間に生じる内部応力の緩和を図ること
ができ、窒化ホウ素含有膜の基体への密着性を向上させ
ることができる。
【0039】従って、膜全体としての化学的安定性を大
きく改善することができるとともに、高い硬度で密着性
の優れた膜を得ることができるとともに、金型への膜と
して用いた場合には、耐食性、耐熱性等を向上させるこ
とにより離型性も良好となり、耐摩耗性、耐食性等を必
要とする工具、金型、磁気ヘッド等の各種の用途に使用
することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る窒化ホウ素含有膜が被覆された基
体の要部の概略断面図である。
【図2】本発明に係る窒化ホウ素含有膜の製造に用いる
膜形成装置の要部の概略断面図である。
【符号の説明】
1 基体 1a 基体構成原子、B、Nが混在した領域(B、N注
入領域) 2、2a、2b、2c 窒化ホウ素含有膜 3 蒸発源 4 イオン源 5 真空容器 6 膜厚モニタ 7 イオン電流モニタ 8 基体ホルダー 10 窒化ホウ素含有膜被覆基体

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に窒化ホウ素含有膜が形成されて
    おり、該窒化ホウ素含有膜が、ホウ素と窒素との組成比
    が2〜60である少なくとも1層の膜と、該膜上に形成
    されたホウ素と窒素との組成比が0.2〜2.0である
    少なくとも1層の膜とからなることを特徴とする窒化ホ
    ウ素含有膜。
  2. 【請求項2】 窒化ホウ素含有膜の最表面のホウ素と窒
    素との組成比が1.5以下であり、かつ前記窒化ホウ素
    含有膜におけるホウ素と窒素との組成比が基体側から膜
    表面側にかけて減少している請求項1記載の窒化ホウ素
    含有膜。
  3. 【請求項3】 基体が、該基体表面に窒化ホウ素含有膜
    を構成する窒素原子及びホウ素原子が注入された領域を
    有し、該基体上に形成される請求項1又は2のいずれか
    に記載の窒化ホウ素含有膜。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の窒化ホウ素含有膜を形成
    するに際し、基体上にホウ素を含有する膜を形成すると
    同時、交互又は形成後に、(i) 少なくとも窒素を含有す
    るイオンを0.2KeV〜40KeVの照射エネルギー
    で照射して、形成される膜中のホウ素と窒素との組成比
    が2〜60である膜を形成し、(ii)さらに、該膜上に少
    なくとも窒素を含有するイオンを0.2KeV〜40K
    eVの照射エネルギーで照射して、形成される膜中のホ
    ウ素と窒素との組成比が0.2〜2.0である膜を形成
    することを特徴とする窒化ホウ素含有膜の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US20100233633A1 (en) * 2007-06-19 2010-09-16 Applied Materials, Inc. Engineering boron-rich films for lithographic mask applications
KR20140088243A (ko) * 2012-12-28 2014-07-09 재단법인 포항산업과학연구원 고밀착력 박막을 포함하는 사출금형 및 그 제조방법

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US8337950B2 (en) * 2007-06-19 2012-12-25 Applied Materials, Inc. Method for depositing boron-rich films for lithographic mask applications
KR20140088243A (ko) * 2012-12-28 2014-07-09 재단법인 포항산업과학연구원 고밀착력 박막을 포함하는 사출금형 및 그 제조방법

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