JP2005314758A - ダイヤモンド状炭素膜を被覆した金属部材及び被覆形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイヤモンドライクカーボン膜の強固な付着が困難なステンレス鋼材をはじめとする金型、切削工具、機械部品等の金属部材へのより付着強度の強いカーボン硬質膜のコーティングを実現すること。
【構成】ダイヤモンド状炭素(DLC)膜を被覆された金属部材において、アモルファス鉄
シリサイドを金属部材側に、Si若しくは酸化珪素又はB-C-N系化合物若しくは該化合物とSiとの化合物をDLC膜側に中間層として介在させたことを特徴とするダイヤモンド状炭素膜を被覆した金属部材。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ダイヤモンドに次ぐ硬度を有するダイヤモンド状炭素(DLC)膜を被覆した
金属部材及び該被覆の形成方法に関する。
金属部材及び該被覆の形成方法に関する。
硬質膜コーティングは金型や切削工具等に広く利用され、半導体や機械ロボットの製造にとって極めて重要な要素技術である。硬質膜コーティング材料には主にTiN、CrN,TiCNのような金属窒化物、水素化DLC,水素フリーDLCのようなものがあるが、高硬度と低摩擦係数を兼ね備えた水素化DLCが近年市場規模を急伸させている。さらに高性能なコーティ
ング材として水素フリーDLCがある。これは、物理気相成長法、なかでもアーク式イオン
プレーティング法(AIP)を用いることで、付着強度の強い最高品質の膜が成長すること
が知られている。この水素フリーDLCを用いれば、切削工具・金型の寿命を、現在最も一
般的に使われているTiNの10倍、水素化DLCの2〜4倍に延ばすことが出来る。さらに、環境汚染源となっている切削油を必要としない、ドライ切削用コーティング材としても最高のポテンシャルを有する。
ング材として水素フリーDLCがある。これは、物理気相成長法、なかでもアーク式イオン
プレーティング法(AIP)を用いることで、付着強度の強い最高品質の膜が成長すること
が知られている。この水素フリーDLCを用いれば、切削工具・金型の寿命を、現在最も一
般的に使われているTiNの10倍、水素化DLCの2〜4倍に延ばすことが出来る。さらに、環境汚染源となっている切削油を必要としない、ドライ切削用コーティング材としても最高のポテンシャルを有する。
しかしながら、DLC膜はステンレス鋼をはじめとする金属部材へ堆積した際、剥離が起
こり、寿命が短い、又は膜形成が不可能であるなどの問題があった。すなわち、ガラス、シリコンウェハー基板上には基板への付着強度の強いDLC膜が形成可能であるが、応用範
囲の広いステンレス鋼材をはじめとする各種金属部材への形成は困難な場合が多かった。
こり、寿命が短い、又は膜形成が不可能であるなどの問題があった。すなわち、ガラス、シリコンウェハー基板上には基板への付着強度の強いDLC膜が形成可能であるが、応用範
囲の広いステンレス鋼材をはじめとする各種金属部材への形成は困難な場合が多かった。
それを改善するために、従来、金属部材とDLC膜との間に(Ti又はCr)/(Si又はGe)の2層の中間層を介在させることが提案された(特許文献1)。しかし、中間層として2層
を真空に保ったまた連続で堆積しなければならないこと、部材の温度を150℃まで上昇さ
せなければならないこと、Ti、Crより安価な材料が量産には望ましい等の問題があった。また、超硬合金や工具鋼などの金属部材とDLC膜との間に耐火金属の珪化物や珪炭化物層
を形成することが知られている(特許文献2、3)。また、アルミナと炭化チタンを主成分とする基板上にSiを主成分として少なくともNi,Fe,Co元素の一つを含む中間層を形成し、その表面にDLC保護層を形成した薄膜磁気ヘッドが知られている(特許文献4)。
を真空に保ったまた連続で堆積しなければならないこと、部材の温度を150℃まで上昇さ
せなければならないこと、Ti、Crより安価な材料が量産には望ましい等の問題があった。また、超硬合金や工具鋼などの金属部材とDLC膜との間に耐火金属の珪化物や珪炭化物層
を形成することが知られている(特許文献2、3)。また、アルミナと炭化チタンを主成分とする基板上にSiを主成分として少なくともNi,Fe,Co元素の一つを含む中間層を形成し、その表面にDLC保護層を形成した薄膜磁気ヘッドが知られている(特許文献4)。
本発明の目的は、DLC膜の強固な付着が困難なステンレス鋼材をはじめとする金型、切
削工具、機械部品等の金属部材へのより付着強度の強いカーボン硬質膜のコーティングを実現することである。
削工具、機械部品等の金属部材へのより付着強度の強いカーボン硬質膜のコーティングを実現することである。
本発明は、金属部材へのカーボン硬質膜のコーティングを、アモルファス鉄シリサイド中間層を金属部材側に、Si、酸化珪素、B-C-N系化合物、又はB-C-N系化合物とSiとの化合物をDLC膜側に、中間層として介在させることで実現する。
すなわち、本発明は、(1)ダイヤモンド状炭素(DLC)膜を被覆された金属部材にお
いて、アモルファス鉄シリサイドを金属部材側に、Si又は酸化珪素をDLC膜側に中間層と
して介在させたことを特徴とするダイヤモンド状炭素膜を被覆した金属部材、である。
いて、アモルファス鉄シリサイドを金属部材側に、Si又は酸化珪素をDLC膜側に中間層と
して介在させたことを特徴とするダイヤモンド状炭素膜を被覆した金属部材、である。
また、本発明は、(2)ダイヤモンド状炭素(DLC)膜を被覆された金属部材において
、アモルファス鉄シリサイドを金属部材側に、B-C-N系化合物又は該化合物とSiとの化合
物をDLC膜側に中間層として介在させたことを特徴とするダイヤモンド状炭素膜を被覆し
た金属部材、である。
、アモルファス鉄シリサイドを金属部材側に、B-C-N系化合物又は該化合物とSiとの化合
物をDLC膜側に中間層として介在させたことを特徴とするダイヤモンド状炭素膜を被覆し
た金属部材、である。
また、本発明は、(3)アモルファス鉄シリサイドを金属部材側からFe3Si、FeSi、FeSi2の順に2層以上で組み合わせて介在させたことを特徴とする上記(1)又は(2)の金
属部材、である。
属部材、である。
さらに、本発明は、(4)金属部材へのダイヤモンド状炭素(DLC)膜の被覆形成方法
において、金属部材表面に対向ターゲット式スパッタリング法又はレーザーアブレーション法によってアモルファス鉄シリサイド層を成膜し、次いで、Si、酸化珪素、B-C-N系化
合物、又はB-C-N系化合物とSiとの化合物を成膜し、さらにDLC膜を成膜することを特徴とする上記(1)の金属部材へのダイヤモンド状炭素膜の被覆形成方法、である。
また、本発明は、(5)アモルファス鉄シリサイドをFe3Si、FeSi、FeSi2の順に2層以
上順次成膜することを特徴とする上記(4)の金属部材へのダイヤモンド状炭素膜の被覆形成方法、である。
において、金属部材表面に対向ターゲット式スパッタリング法又はレーザーアブレーション法によってアモルファス鉄シリサイド層を成膜し、次いで、Si、酸化珪素、B-C-N系化
合物、又はB-C-N系化合物とSiとの化合物を成膜し、さらにDLC膜を成膜することを特徴とする上記(1)の金属部材へのダイヤモンド状炭素膜の被覆形成方法、である。
また、本発明は、(5)アモルファス鉄シリサイドをFe3Si、FeSi、FeSi2の順に2層以
上順次成膜することを特徴とする上記(4)の金属部材へのダイヤモンド状炭素膜の被覆形成方法、である。
金属結合からなる金属部材と共有結合からなるDLCは全く性質が異なるために、密着性
よく積層することが困難である。そこで、本発明では、金属結合性のFeと共有結合性のSiの組み合わせで、多くの安定相を有するFe-Si系を中間層として用いる。Fe3SiとFeSiは金属的でFe上に膜形成しやすく、一方、FiSi2は半導体的でSiと積層しやすい。鉄シリサイ
ド同士は組成比が違うだけなので、積層は容易である。究極的には金属部材\Fe3Si\FeSi\FeSi2\Si\DLCの積層膜が最も望ましいが、付着強度を強く要求されない場合はFe3Si\FeSi\FeSi2の部分はこのうちの一層のみでも構わない。
よく積層することが困難である。そこで、本発明では、金属結合性のFeと共有結合性のSiの組み合わせで、多くの安定相を有するFe-Si系を中間層として用いる。Fe3SiとFeSiは金属的でFe上に膜形成しやすく、一方、FiSi2は半導体的でSiと積層しやすい。鉄シリサイ
ド同士は組成比が違うだけなので、積層は容易である。究極的には金属部材\Fe3Si\FeSi\FeSi2\Si\DLCの積層膜が最も望ましいが、付着強度を強く要求されない場合はFe3Si\FeSi\FeSi2の部分はこのうちの一層のみでも構わない。
アモルファス鉄シリサイドは高硬度でかつ極平坦膜を室温で金属部材上にCVD法によっ
て成長可能であり、従来技術に比べて、手間がかからず同等、又はそれ以上の付着強度の強いDLC膜を被覆可能である。しかも、FeとSiは環境に低負荷で、安価である。さらに、
鉄シリサイドは、Si、Geの金属単相に比べて硬いので、積層膜の硬度も増加する。
て成長可能であり、従来技術に比べて、手間がかからず同等、又はそれ以上の付着強度の強いDLC膜を被覆可能である。しかも、FeとSiは環境に低負荷で、安価である。さらに、
鉄シリサイドは、Si、Geの金属単相に比べて硬いので、積層膜の硬度も増加する。
本発明は、図1に示すように、DLC膜11と金属部材10との間に両者の密着性を著し
く改善するアモルファス鉄シリサイド中間層12とSi、酸化珪素、B-C-N系化合物、又はB-C-N系化合物とSiとの化合物からなる中間層13を介在した積層構造にすることによってDLC膜11の強固なコーティングを可能にするものである。
く改善するアモルファス鉄シリサイド中間層12とSi、酸化珪素、B-C-N系化合物、又はB-C-N系化合物とSiとの化合物からなる中間層13を介在した積層構造にすることによってDLC膜11の強固なコーティングを可能にするものである。
中間層12のアモルファス鉄シリサイドは単層の場合、FeとSiの組成比が1:2付近が望ましい。これ以上Feの割合が高くなればSiによる中間層13との付着作用が低下しDLC膜
11と金属部材10との付着強度が低下し、またSiの割合が高くなれば中間層13との付着力は高くなるものの金属部材10とSiとの反応が進み金属部材10と中間層12との付着強度が低下してしまう。
11と金属部材10との付着強度が低下し、またSiの割合が高くなれば中間層13との付着力は高くなるものの金属部材10とSiとの反応が進み金属部材10と中間層12との付着強度が低下してしまう。
なお、アモルファス鉄シリサイドの“アモルファス”は広義の意味で用いており、ナノレベルの微結晶膜を含む。アモルファス鉄シリサイドは、対向ターゲット式スパッタリング法(例えば、特開2003-188100号公報)、レーザーアブレーション法(例えば、特開200
3-49262号公報)などの公知の高エネルギーな膜堆積法で形成可能である。アモルファス
鉄シリサイドの中間層厚は、100nm以上で十分な効果を発揮できる。厚みは5μm以下が望
ましく、それ以上になるとDLCよりも中間層の強度が問題となってくる。
3-49262号公報)などの公知の高エネルギーな膜堆積法で形成可能である。アモルファス
鉄シリサイドの中間層厚は、100nm以上で十分な効果を発揮できる。厚みは5μm以下が望
ましく、それ以上になるとDLCよりも中間層の強度が問題となってくる。
Fe-Si系にはFe3Si、FeSi、FeSi2の安定相が存在するので、中間層のアモルファス(微
結晶)又は多結晶鉄シリサイドを、金属部材側からFe含有量が多くSi含有量が少ない順に、Fe3Si、FeSi、FeSi2を2層以上で組み合わせて積層すると、金属部材とDLCとの付着強度がより安定する。例えば、3層の中間層の場合は、図2に示すとおり、金属部材側20か
らFe3Si中間層下層22、FeSi中間層中層23、FeSi2中間層上層24を組み合わせて積層し、その上にDLC膜21を成膜する。これらの組成比で堆積すれば、これらのアモルファ
ス(微結晶)膜又は多結晶膜が生成し、温度上昇によっても相分離し難く安定である。
結晶)又は多結晶鉄シリサイドを、金属部材側からFe含有量が多くSi含有量が少ない順に、Fe3Si、FeSi、FeSi2を2層以上で組み合わせて積層すると、金属部材とDLCとの付着強度がより安定する。例えば、3層の中間層の場合は、図2に示すとおり、金属部材側20か
らFe3Si中間層下層22、FeSi中間層中層23、FeSi2中間層上層24を組み合わせて積層し、その上にDLC膜21を成膜する。これらの組成比で堆積すれば、これらのアモルファ
ス(微結晶)膜又は多結晶膜が生成し、温度上昇によっても相分離し難く安定である。
金属部材としては、ステンレス鋼、工具鋼、超硬合金やその他の耐熱合金、非鉄合金を対象とすることができるが、特に、ステンレス鋼はFeを約70重量%含むので、75重量%の鉄を含んでいるFe3Siは堆積しやすく、付着強度も強くなる。Fe3Si、FeSi、FeSi2のうちの
異種組成の鉄シリサイドを傾斜的に積層すれば、金属部材・中間層間及び中間層・DLC膜
間ともに、強い膜を維持できる。
異種組成の鉄シリサイドを傾斜的に積層すれば、金属部材・中間層間及び中間層・DLC膜
間ともに、強い膜を維持できる。
Fe-Si系にはFe3Si、FeSi、FeSi2の各安定相が存在するので、400℃以下、好ましくは常温の低温基板上にプラズマCVD法等の化学気相成長法、又はレーザーアブレーション法、
スパッタリング法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法などの物理気相成長法によって膜作製を行えば、それらの相のナノ微結晶層がそれぞれ生成して熱的に安定である。
スパッタリング法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法などの物理気相成長法によって膜作製を行えば、それらの相のナノ微結晶層がそれぞれ生成して熱的に安定である。
単層の中間層の場合は極めて単純で手間がかからず、産業利用に極めて有効である。多層の中間層の場合は、この組み合わせを変えることで様々な金属部材に対応できる。2層
以上のアモルファス鉄シリサイドの上に、さらに、Si又は酸化珪素を堆積して中間層として用いることにより、DLC膜の付着強度はさらに安定し強くなる。
以上のアモルファス鉄シリサイドの上に、さらに、Si又は酸化珪素を堆積して中間層として用いることにより、DLC膜の付着強度はさらに安定し強くなる。
Si膜はスパッタリング法、レーザーアブレーション法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法などの物理気相成長(PVD)法と各種化学気相成長(CVD)法で形成できる。PVD法では、Siターゲットを用いて室温以上400℃以下でアモルファスSi薄膜を形成可能である。一方、CVD法の中で最も代表的なプラズマCVD法でも、グロー放電により原料ガスのシラン(SiH4)あるいはシランジシラン(SiH6)を分解し、基板温度400℃以下でアモルフ
ァスSi薄膜を成長できる。
ァスSi薄膜を成長できる。
SiO2などの酸化珪素はスパッタリング法、レーザーアブレーション法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法によりSiターゲットを用いて酸素雰囲気中で
成膜できる。CVD法でも容易に作製可能である。酸化珪素は、前述したアモルファスシリ
コン膜の作製において、作製中の雰囲気ガスに酸素を添加することで得られる。PVD法で
もCVD法でも400℃以下で成長可能である。
成膜できる。CVD法でも容易に作製可能である。酸化珪素は、前述したアモルファスシリ
コン膜の作製において、作製中の雰囲気ガスに酸素を添加することで得られる。PVD法で
もCVD法でも400℃以下で成長可能である。
スパッタリング法、レーザーアブレーション法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法では、B、C、Siをターゲットから、Nを雰囲気ガスから、基板上に
供給することでB-C-N系化合物、又はB-C-N系化合物とSiとの化合物は得られる。アモルファスであるので400℃以下で成長する。CVD法では、B、C、N、Siの所望する元素を含む原
料ガスを用いることで、こちらも400℃以下で成長可能である。
供給することでB-C-N系化合物、又はB-C-N系化合物とSiとの化合物は得られる。アモルファスであるので400℃以下で成長する。CVD法では、B、C、N、Siの所望する元素を含む原
料ガスを用いることで、こちらも400℃以下で成長可能である。
DLC膜は基板温度300℃以下、好ましくは常温で、プラズマCVD法等の化学気相成長法、
又はレーザーアブレーション法、スパッタリング法、イオンビーム蒸着法、イオンプレー
ティング法などの物理気相成長法によって形成される。DLC膜は高エネルギー粒子を基板
上で急冷しないと生成せず、低温ほどDLCの膜質は向上する。
又はレーザーアブレーション法、スパッタリング法、イオンビーム蒸着法、イオンプレー
ティング法などの物理気相成長法によって形成される。DLC膜は高エネルギー粒子を基板
上で急冷しないと生成せず、低温ほどDLCの膜質は向上する。
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図3に示すような対向ターゲット式スパッタリング装置によりステンレス鋼基板に室温で膜厚100nmのアモルファス鉄シリサイド薄膜とその上に100nm のSiを中間層として作製
した。ターゲットにはFe:Siの組成比1:2の焼結体3とSi2を使用した。チャンバー4内はターボ分子ポンプ5を用いて10-4Pa以下まで排気し、成膜時は15.0sccmのArガスを流入してガス圧を1.33×10-1Paとし、印加電圧、電流をそれぞれ950mV、6.0mAとした。堆積速度は1.0nm/minであった。
図3に示すような対向ターゲット式スパッタリング装置によりステンレス鋼基板に室温で膜厚100nmのアモルファス鉄シリサイド薄膜とその上に100nm のSiを中間層として作製
した。ターゲットにはFe:Siの組成比1:2の焼結体3とSi2を使用した。チャンバー4内はターボ分子ポンプ5を用いて10-4Pa以下まで排気し、成膜時は15.0sccmのArガスを流入してガス圧を1.33×10-1Paとし、印加電圧、電流をそれぞれ950mV、6.0mAとした。堆積速度は1.0nm/minであった。
その後、アモルファスFeSi2\Si上にレーザーアブレーション法により膜厚1μmのDLC膜を堆積した。図4に、成膜装置の概念図を示す。ターボ分子ポンプにより排気された5×10-7Torr以下の真空チャンバー6内において、ArFエキシマレーザー光(波長193nm、FWHM=20ns)7を集光レンズ8を介してグラファイトターゲット9に集光して入射角45°で照射し、85mm離れて対向する前記の中間層が堆積されたステンレス鋼基板10上に膜堆積を行った。ターゲット9と基板10はそれぞれ回転軸11、12で回転させた。レーザーパルスのフルーエンスFは4J/cm2、くり返し周波数は10Hz、基板温度は室温とした。
作製したDLC膜は、表面形状を走査型電子顕微鏡(SEM)、結晶構造をラマン分光、硬度をビッカース硬度計、摩擦係数を摩擦係数測定器により調べた。図5に、生成した膜の膜表面SEM像を示す。極平坦のDLC膜が得られていることがわかる。図6に、生成膜に対して測定したラマンスペクトルを示す。硬質なDLC膜の典型的なスペクトルが得られた。生成
膜のビッカース硬度は4000以上、摩擦係数は0.10で、良好な結果が得られた。DLC膜のス
テンレス鋼基板への付着は強固なものであった。
膜のビッカース硬度は4000以上、摩擦係数は0.10で、良好な結果が得られた。DLC膜のス
テンレス鋼基板への付着は強固なものであった。
実施例1と同じ対向ターゲット式スパッタリング装置を用いてステンレス鋼基板に室温で膜厚50 nmのアモルファスFe3Si、FeSi2、Si膜をそれぞれ膜厚100nmで順に積層した。ターゲットには組成比3:1の焼結体1、1:2の焼結体3とSiをそれぞれ使用した。チャンバー内はターボ分子ポンプを用いて10-4Pa以下まで排気し、成膜時は15.0sccmのArガスを流入してガス圧を1.33×10-1Paとし、真空を開放しないで連続で3層膜を堆積した。印加電
圧、電流をそれぞれ950mV、6.0mAとした。堆積速度はどのターゲットの場合も約1.0nm/minであった。
圧、電流をそれぞれ950mV、6.0mAとした。堆積速度はどのターゲットの場合も約1.0nm/minであった。
DLCの堆積及び膜の評価方法は実施例1と同様である。生成したDLCは、実施例1と同様に、極平坦な膜表面が得られ、また、DLCに典型的なラマンスペクトルが得られた。ビッ
カース硬度及び摩擦係数にもほとんど違いはみられなかった。
カース硬度及び摩擦係数にもほとんど違いはみられなかった。
以上の説明で明らかなように、本発明によればステンレス鋼材や工具鋼をはじめとする各種金属部材上への付着強度の強い硬質DLC膜の形成を可能にし、各種機械・切削工具部
品への硬質膜コーティング、電子部品の一般的保護膜又は放熱部材、装飾品等としての応用が可能となる。
品への硬質膜コーティング、電子部品の一般的保護膜又は放熱部材、装飾品等としての応用が可能となる。
10・・・金属部材
11・・・DLC膜
12・・・アモルファス鉄シリサイド中間層
13・・・Si等の中間層上層
20・・・金属部材
21・・・DLC膜
22・・・Fe3Si中間層下層
23・・・FeSi2中間層中層
24・・・Si等の中間層上層
11・・・DLC膜
12・・・アモルファス鉄シリサイド中間層
13・・・Si等の中間層上層
20・・・金属部材
21・・・DLC膜
22・・・Fe3Si中間層下層
23・・・FeSi2中間層中層
24・・・Si等の中間層上層
Claims (5)
- ダイヤモンド状炭素(DLC)膜を被覆された金属部材において、アモルファス鉄シリサイ
ドを金属部材側に、Si又は酸化珪素をDLC膜側に中間層として介在させたことを特徴とす
るダイヤモンド状炭素膜を被覆した金属部材。 - ダイヤモンド状炭素(DLC)膜を被覆された金属部材において、アモルファス鉄シリサイ
ドを金属部材側に、B-C-N系化合物又は該化合物とSiとの化合物をDLC膜側に中間層として介在させたことを特徴とするダイヤモンド状炭素膜を被覆した金属部材。 - アモルファス鉄シリサイドを金属部材側からFe3Si、FeSi、FeSi2の順に2層以上で組み合
わせて介在させたことを特徴とする請求項1又は2記載の金属部材。 - 金属部材へのダイヤモンド状炭素(DLC)膜の被覆形成方法において、金属部材表面に対
向ターゲット式スパッタリング法又はレーザーアブレーション法によってアモルファス鉄シリサイド層を成膜し、次いで、Si、酸化珪素、B-C-N系化合物、又はB-C-N系化合物とSiとの化合物を成膜し、さらにDLC膜を成膜することを特徴とする請求項1記載の金属部材
へのダイヤモンド状炭素膜の被覆形成方法。 - アモルファス鉄シリサイドをFe3Si、FeSi、FeSi2の順に2層以上順次成膜することを特徴
とする請求項4記載の金属部材へのダイヤモンド状炭素膜の被覆形成方法。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008081650A1 (ja) * | 2006-12-28 | 2008-07-10 | Jtekt Corporation | 高耐食性部材およびその製造方法 |
JP2011174905A (ja) * | 2009-04-06 | 2011-09-08 | Seiko Epson Corp | 時計輪列、および時計 |
EP2602353A1 (en) * | 2011-12-05 | 2013-06-12 | Keio University | Diamond film coated member and manufacturing method of the same |
-
2004
- 2004-04-30 JP JP2004135137A patent/JP2005314758A/ja active Pending
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