JPH07292456A - 膜被覆基体 - Google Patents

膜被覆基体

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JPH07292456A
JPH07292456A JP8459994A JP8459994A JPH07292456A JP H07292456 A JPH07292456 A JP H07292456A JP 8459994 A JP8459994 A JP 8459994A JP 8459994 A JP8459994 A JP 8459994A JP H07292456 A JPH07292456 A JP H07292456A
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JP
Japan
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film
substrate
crn
ion
hardness
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Withdrawn
Application number
JP8459994A
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English (en)
Inventor
Satoru Nishiyama
哲 西山
Kiyoshi Ogata
潔 緒方
Hiroshi Morino
弘 森野
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Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐摩耗性能が要求される分野に用いられる基
体を優れた硬度、靱性、密着性及び化学的安定性を有す
る膜で被覆した膜被覆基体を提供する。 【構成】 基体S上に窒化クロム膜S1が形成され、そ
の上に、窒化クロム及び窒化ホウ素からなる膜S2又は
窒化クロム、窒化ホウ素及びホウ化クロムからなる膜S
3が形成されている膜被覆基体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切削工具、金型、光学
素子成形用型、磁気ヘッド或いは各種の摺動部品といっ
た耐摩耗性能、潤滑性能、適度の摺動性、離型性及び化
学的安定性等の1又2以上が要求される基体上に、これ
らの性能を向上させることができるとともに該基体への
密着性良好な膜が被覆された基体に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に基体の耐摩耗性能、潤滑性能を向
上させる目的で、該基体上に例えば窒化ホウ素(BN)
(以下、「BN」という。)膜や窒化クロム(CrX
y 、x,yは変数)(以下、「CrN」という。)等の
高硬度膜が形成される。BNは、結晶構造によって立方
晶系閃亜鉛鉱型のもの(c−BN)、六方晶系のグラフ
ァイトと類似した構造のもの(h−BN)、或いは六方
晶系のウルツ鉱型のもの(w−BN)等に大別される。
【0003】h−BNは、その特性もグラファイトに類
似し、C軸方向に劈開性を有することから軟質ながらも
摺動性に優れ、また化学的安定性に優れ、現在では人工
的に合成された粉末状のものが固体潤滑剤として、各種
摺動部材の摩擦係数を下げるために広く用いられてい
る。また、c−BNはダイヤモンドに次ぐ高硬度を有し
ており、熱的・化学的安定性はダイヤモンドより優れて
いることから、切削工具といった耐摩耗性を必要とする
分野に応用されており、また、絶縁性や高熱伝導率を有
する特徴を活かしてヒートシンク用材料として利用され
ている。w−BNもc−BNより硬度は劣るものの、他
の窒化物より優れた硬度と熱伝導性を有し、また優れた
熱的・化学的安定性を有しているので、c−BNと同
様、工具を中心にした耐摩耗性が要求される分野に応用
されている。
【0004】CrNは靱性に優れ、また、c−BNやw
−BNに比べると硬度は低いものの相当の硬度を有して
おり、さらに、金属、セラミック、樹脂等との濡れ性が
良く、金属等の基体上に密着性良く形成されることか
ら、これも工具等の被覆膜として広く応用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
BNは何れも金属等との濡れ性が劣り、BN膜を金属等
の基体上へ密着性良く形成させることは困難である。ま
た、BN膜は該膜に含まれるホウ素(B)原子と窒素
(N)原子の個数比(B/N組成比)を化学量論的組成
比(=1)に近づけると化学的安定性が向上するが、こ
のとき形成されたBN膜内に過大な内部応力が発生し易
く、その結果、該BN膜で被覆された基体を摺動部品と
して用いると、該膜にクラックが生じ易い。その結果、
該膜の一部に剥離が生じることがある。
【0006】一方、CrNは、既述のとおり硬度及び靱
性に優れ、また、金属等との濡れ性に優れるためCrN
膜は金属等の基体上に密着性良く形成されるが、BNに
比べて酸化開始温度が低く、高温下での耐酸化性はBN
より劣る。このように、従来から耐摩耗性能が要求され
る分野でよく用いられてきた膜で、硬度、靱性、密着性
及び化学的安定性の全てに優れた膜はまだ見出されてい
ないのが実情である。
【0007】そこで本発明は、耐摩耗性能が要求される
分野に用いられる基体を優れた硬度、靱性、密着性及び
化学的安定性を有する膜で被覆した膜被覆基体を提供す
ることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記課題を解
決すべく研究を重ね、以下の事実を見出した。BNは化
学的に安定であり、CrNは硬度、靱性に優れるため、
該両者からなる膜で被覆することにより、基体は該両者
の長所を兼ね備え、硬度、靱性に優れ、且つ、化学的に
安定なものとなる。しかし該膜は金属等との濡れ性が劣
り、金属等の基体上に密着性良好に形成することが困難
である。そこで該膜と該基体との間に中間膜として金属
等との濡れ性に優れるCrN膜を形成することにより、
中間膜外側の前記膜(以下、「外膜」という。)と基体
との密着性を向上させることができる。これは、前記中
間膜が金属等の基体上に密着性良く形成され、また、前
記外膜が前記中間膜と同じCrNを含有することにより
外膜と中間膜の不整合が緩和され、その結果、前記外膜
に生じる内部応力が緩和されて外膜と中間膜との密着性
が良好なものとなることによる。
【0009】また、前記外膜にホウ化クロム(CrX
y 、x,yは変数)(以下、「CrB」という。)を加
えることにより、前記外膜の硬度が向上し、前記外膜に
含まれるBNの結晶構造がたとえh−BNであっても、
該外膜の硬度は優れたものとなる。以上の知見に基づき
本発明の第1の膜被覆基体は、基体上に窒化クロム膜が
形成され、その上に、窒化クロム及び窒化ホウ素からな
る膜が形成されていることを特徴とする。
【0010】前記第1の膜被覆基体におけるCrNから
なる中間膜並びにCrN及びBNが混在した外膜のCr
/N組成比は0.5〜20程度であることが望ましい。
0.5より小さいと膜全体の靱性が低下し、20より大
きいと、膜全体の硬度が低下するとともに化学量論的組
成比との差が大きくなり過ぎて化学的安定性が低下す
る。
【0011】前記第1の膜被覆基体における前記外膜の
BNの結晶構造はc−BN、w−BN、h−BN、或い
は非晶質のBNの何れであってもよいが、c−BN又は
w−BNであることが望ましく、このとき結晶構造がh
−BNであるより該外膜の硬度が高くなる。また、前記
外膜のB/N組成比は0.5〜20程度であることが望
ましい。0.5より小さいと該膜の靱性が極端に低下
し、20より大きいと化学量論的組成比との差が大きく
なり過ぎて化学的安定性が低下する。
【0012】また、前記知見に基づき本発明の第2の膜
被覆基体は、基体上に窒化クロム膜が形成され、その上
に、窒化クロム、窒化ホウ素及びホウ化クロムからなる
膜が形成されていることを特徴とする。前記第2の膜被
覆基体におけるCrNからなる中間膜及びCrN、BN
及びCrBが混在する外膜のCr/N組成比、並びに該
外膜のB/N組成比は前記第1の膜被覆基体と同様であ
る。
【0013】また、前記第2の膜被覆基体における前記
外膜のCr/B組成比は0.5〜20程度であることが
望ましい。0.5より小さいと該膜の靱性が低下し、2
0より大きいと化学量論的組成比との差が大きくなり過
ぎて化学的安定性が低下する。なお、前記基体の製法と
しては、例えば次のものが考えられる。
【0014】すなわち、基体を成膜用真空容器内のホル
ダに支持させ、該基体に対し、まずCr元素含有物質を
真空蒸着及び(又は)スパッタ蒸着法にて付与し、該付
与と同時、交互又は該付与の後にイオン源より少なくと
もN元素を含むイオンを照射して、CrN中間膜を前記
基体上に形成する。次いで、前記第1の膜被覆基体を形
成する場合には、前記の中間膜が形成された基体に対
し、Cr元素含有物質及びB元素含有物質を真空蒸着及
び(又は)スパッタ蒸着法にて付与し、該付与と同時、
交互又は該付与の後にイオン源より少なくともN元素を
含むイオンを照射してCrN及びBNが混在した外膜を
前記中間膜上に形成する。
【0015】また、前記第2の膜被覆基体を形成する場
合にも、前記の中間膜が形成された基体に対し、同様に
物質蒸着し、イオン照射してCrN、BN及びCrBが
混在した外膜を前記中間膜上に形成する。前記のCrN
中間膜上に形成する外膜をCrN及びBNからなる膜と
するか、CrN、BN及びCrBからなる膜とするか
は、基体上に到達するCr原子数とB原子数の比(Cr
/B輸送比)及び照射イオンの電流密度等を適宜組み合
わせることで定めることができる。
【0016】前記方法において用いるCr元素含有物質
としては、Cr単体の他、Cr化合物、例えばCrの窒
化物、Crのホウ化物等の中から一又は二以上が用いら
れる。前記方法において用いるB元素含有物質として
は、B単体の他、B化合物、例えば酸化ホウ素、窒化ホ
ウ素、炭化ホウ素、硫化ホウ素、ホウ化リン、ホウ化水
素及び各種金属ホウ化物等の中から一又は二以上が用い
られる。
【0017】前記方法において用いるイオン種は、Cr
N膜形成の場合、蒸発Cr原子に作用してCrN膜を形
成するものであればよく、CrN及びBNからなる膜を
形成する場合には、蒸発Cr原子及び蒸発B原子に作用
してCrN及びBNからなる膜を形成するものであれば
よい。このようなイオンとして例えば、N原子イオン、
N分子イオン、アンモニアイオン(NH3 + )等のよう
な窒素化合物イオンの中から一又は二以上が用いられ、
その他これらのN元素を含むイオン種にアルゴンイオン
(Ar+ )のような不活性ガスイオン、水素原子イオン
(H+ )、水素分子イオン(H2 + )のうち一又は二以
上を混合したもの等が用いられる。
【0018】CrN、BN及びCrBからなる膜を形成
する場合にも前記のCrN及びBNからなる膜を形成す
る場合と同様のイオン種が用いられる。前記第一及び第
二の膜被覆基体における外膜及び中間膜のCr/N組成
比(0.5〜20)の制御は、Cr/N輸送比、イオン
種及び照射イオンの加速エネルギ等の条件を適宜組み合
わせることにより行う。
【0019】前記第一及び第二の膜被覆基体における外
膜のBNの結晶構造及びB/N組成比(0.5〜20)
の制御は、B/N輸送比、イオン種及び照射イオンの加
速エネルギ等の条件を適宜組み合わせることにより行
う。また、前記第二の膜被覆基体における外膜のCr/
B組成比(0.5〜20)の制御はCr/B輸送比及び
照射イオンの加速エネルギ等の条件を適宜組み合わせる
ことにより行う。
【0020】B/N輸送比及びCr/N輸送比の制御
は、例えば水晶振動子式膜厚計等の膜厚モニタを用いて
基体への蒸着量をモニタし、例えばファラデーカップ等
のイオン電流測定器を用いて基体へのイオン照射量をモ
ニタすることで行える。イオン種として、これらN元素
を含むイオン種にアルゴンイオン(Ar+ )のような不
活性ガスイオン、水素原子イオン(H+ )等を混合した
ものを用いるときにはB原子を一層高励起化することが
でき、c−BN、w−BNの合成に有利になる。
【0021】Cr/B輸送比の制御は、例えば水晶振動
子式膜厚計等の膜厚をモニタを用いてCr原子とB原子
の各々の基体への蒸着量をモニタすることで行える。前
記第一及び第二の膜被覆基体における外膜及び中間膜を
形成するに当たり、照射イオンの加速エネルギは0.1
keV〜40keV程度であることが望ましい。0.1
keVより小さいと、照射イオンによる蒸発原子の励起
作用が不十分で、CrN、BN又はCrBが形成され
ず、40keVより大きいと、基体に対する熱的なダメ
ージが過大になる。
【0022】なお、基体へのイオン入射角度は特に限定
されず、基体を回転させながら成膜を行ってもよい。イ
オン源の方式も特に限定は無く、例えばカウフマン型、
バケット型等のものが考えられる。さらに、熱的なダメ
ージを充分に避けなければならない基体については基体
ホルダを水冷して基体を冷却させながら成膜を行うのが
好ましい。
【0023】前記基体の材質は特に限定されず、例えば
各種セラミックス、金属、又は高分子から成る材質等が
考えられる。なお、本発明の基体の製造に当たっては、
前述のイオン蒸着薄膜形成法の他、スパッタ法、イオン
プレーティング法、イオン照射とイオンビームスパッタ
とを組み合わせた方法等を採用することが考えられる。
【0024】
【作用】本発明の第1の膜被覆基体は、該膜が二層から
なり、そのうち基体に接する中間膜がCrNからなる膜
であり、外膜がCrNとBNからなる膜である。外膜に
含まれるBNは、金属等との濡れ性に劣るが、化学的安
定性に優れ、またCrNは高硬度で靱性に優れるため、
該両者からなる膜は金属等の基体上には密着性よく形成
し難いものの、高硬度で、靱性に優れ、且つ化学的に安
定なものとなる。一方、CrNは金属等との濡れ性に優
れるため、CrNからなる中間膜は金属等の基体上に密
着性良好に形成される。また、前記中間膜と前記外膜と
は同じCrNを含むため、各膜の構成元素の不整合が緩
和されて前記外膜に生じる内部応力が抑制され、前記外
膜と前記中間膜との密着性も良好なものとなる。その結
果、前記膜被覆基体は高硬度で、靱性及び化学的安定性
に優れた膜が基体上に密着性良く形成されたものとな
る。
【0025】本発明の第2の膜被覆基体は該膜が二層か
らなり、そのうち基体に接する中間膜がCrNからなる
膜であり、外膜がCrN、BN及びCrBからなる膜で
ある。外膜にCrBが含まれていることより、CrNと
BNのみからなる場合よりも該外膜の硬度が向上し、該
外膜に含まれるBNの結晶構造が、たとえ軟質のh−B
Nであっても該外膜は高硬度なものとなる。その結果、
前記膜被覆基体は極めて高硬度で靱性及び化学的安定性
に優れた膜が基体上に密着性良く形成されたものとな
る。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。図1は本発明の第1の膜被覆基体の1例の一部の
拡大断面図であり、図2は本発明の第2の膜被覆基体の
1例の一部の拡大断面図である。図3は図1及び図2に
示す基体の製造に用いる成膜装置の概略構成を示したも
のである。
【0027】図3において、Sは基体、3は基体Sを支
持するホルダ、4はCr元素を含有する物質を蒸発させ
る蒸発源、5はB元素を含有する物質を蒸発させる蒸発
源、6は少なくともN元素を含むイオンを照射させるた
めのイオン源、7は基体S上に蒸着されるCr原子の個
数及びその膜厚を計測するための膜厚モニタ、8は基体
S上に蒸着されるB原子の個数及びその膜厚を計測する
ための膜厚モニタ、9は基体Sに照射されるイオンの個
数を計測するためのイオン電流測定器である。これらは
真空容器1内に収容されている。容器1内は排気装置2
にて所望の真空度とされ得る。
【0028】本発明による基体を作成するに当たって
は、まず基体Sをホルダ3に支持させた後、真空容器1
内を所定の真空度にする。その後、基体Sに蒸発源4を
用いて、Cr元素含有物質4aを電子ビーム、抵抗、レ
ーザ、高周波等の手段で真空蒸着させる。なお、真空蒸
着に代えて、Cr元素含有物質4aをイオンビーム、マ
グネトロン、高周波等の手段でスパッタすることで基体
S上に膜形成してもよい。
【0029】このCr元素含有物質4aの真空蒸着(或
いはスパッタ蒸着)と同時、又は交互に、又は蒸着(或
いはスパッタ蒸着)後に、イオン源6より少なくともN
元素を含むイオン6aを当該蒸着面に照射してCrN中
間膜を形成する。次いで、前記膜形成と同様にして、但
し基体S上へのCr元素含有物質4aの真空蒸着(又は
スパッタ蒸着)に加えて、これと同時に蒸発源5を用い
てB元素含有物質5aの真空蒸着(又はスパッタ蒸着)
を行うようにする。そして、該蒸着と同時、交互、又は
該蒸着後にイオン源6より少なくともN元素を含むイオ
ン6aを照射してCrNとBNの混在した外膜を形成す
る。
【0030】以上に述べた成膜操作により、図1に示す
ように基体S表面にCrN膜S1が形成され、その外側
にCrNとBNからなる膜S2が形成され、或いは、図
2に示すように基体S表面にCrN膜S1が形成され、
その外側にCrN、BN及びCrBからなる膜S3が形
成される。各膜S1、S2及びS3のCr/N組成比の
制御は、Cr/N輸送比、イオン種及び照射イオンの加
速エネルギの条件を適宜組み合わせることにより行われ
る。
【0031】各膜S2、S3中に形成されるBNの結晶
構造、B/N組成比の制御はB/N輸送比、イオン種及
び照射イオンの加速エネルギの条件を適宜組み合わせる
ことにより行われる。膜S3のCr/B組成比の制御は
Cr/B輸送比、イオン種及び照射イオンの加速エネル
ギの条件を適宜組み合わせることにより行われる。
【0032】基体S上に形成されたCrN膜S1の外側
に、図1に示すようなCrNとBNからなる膜S2が形
成されるか、或いは図2に示すようなCrN、BN及び
CrBからなる膜が形成されるかは、Cr元素含有物質
4aとB元素含有物質5aの蒸着量の比及び照射イオン
6aの電流密度により定まる。膜S1、S2で被覆され
た基体Sにおいて、膜S2はBNを含むことにより化学
的に安定であり、CrNを含むことにより高硬度で、靱
性に優れたものとなる。膜S1は、金属等との濡れ性に
優れるCrNからなるため金属等の基体Sとの密着性が
良く、また、膜S2にもCrNが含まれていて膜S1、
S2間の不整合が緩いため膜S2との密着性も良い。従
って基体Sは高硬度で、靱性及び化学的安定性に優れ、
しかも基体に対する密着性良好な膜S1、S2で被覆さ
れたものとなる。また、膜S1、S3で被覆された基体
Sにおいて、膜S3はBNを含むことにより化学的に安
定であり、CrNを含むことにより高硬度で靱性に優れ
るが、さらにCrBを含むことにより一層高硬度なもの
となる。従って、基体Sは極めて高硬度で靱性及び化学
的安定性に優れ、しかも基体に対する密着性良好な膜S
1、S3で被覆されたものとなる。
【0033】なお、ここでは図3に示す装置を用い、イ
オン蒸着薄膜形成法にて膜形成を行っているが、この他
スパッタ法、イオンプレーティング法、イオン照射とイ
オンビームスパッタを組み合わせた方法等を用いてもよ
い。次に図3に示す装置による本発明の基体の製造方法
の具体例と、それによって得られる膜被覆基体について
説明する。 実験例1 図3に示す装置を用いて、高速度工具鋼(SKH51)
よりなる基体S(25mm×25mm×厚さ1mm)を
基体ホルダ3に設置し、真空容器1内を1×10-6To
rr以下の真空度とした。その後、純度約99%のCr
ペレット4aを電子ビーム蒸発源4を用いて蒸気化し、
基体S上に成膜した。それと同時にイオン源6に純度5
NのN2 ガスを真空容器1内が1×10-5Torrにな
るまで導入し、イオン化させ、該窒素イオン6aを10
keVの加速エネルギで、基体Sに立てた法線に対して
0°の角度で基体Sに照射した。なお、イオン源にはバ
ケット型イオン源を用いた。
【0034】以上の成膜操作により基体S上に膜厚約1
00nmのCrN膜S1を形成した。なお、前記成膜操
作においては、Cr/N組成比が3になるよう、窒素イ
オンによるCr原子のスパッタ効率等を考慮して、単位
面積当たりのCr原子の蒸着量及びイオン電流密度を設
定することで、Cr/N輸送比を設定した。
【0035】次いで、前記Crペレット4aを電子ビー
ム蒸発源4を用いて蒸気化するとともに純度約99%の
Bペレット5aを電子ビーム蒸発源5を用いて蒸気化
し、前記膜S1上に膜形成した。これと同時に窒素イオ
ン6aを加速エネルギを2keVとして照射した。この
ようにして膜S1上に膜厚約500nmのCrN及びB
Nの混在した膜S2を形成した。
【0036】なお、膜S2の成膜操作においては、Cr
/N組成比及びB/N組成比が共に1になるよう、単位
面積当たりのCr元素及びB元素の蒸着量並びにイオン
電流密度を設定することで、Cr/N輸送比及びB/N
輸送比を設定した。膜S2におけるBNの結晶構造をX
線回折法で分析したところ、c−BNとh−BNが混在
した状態であった。 実験例2 図3に示す装置を用いて、実験例1と同様にして高速度
工具鋼(SKH51)よりなる基体S上に膜厚約100
nmのCrN膜S1を形成した。
【0037】次いで実験例1における膜S2の形成と同
様にして、膜S1上に膜厚約500nmの膜S3を形成
した。膜S3はCrN、BN、CrBの混在した膜であ
った。また、膜S3の成膜操作においては、Cr/N組
成比及びB/N組成比が共に1となり、Cr/B組成比
が3になるよう、単位面積当たりのCr原子及びB原子
の蒸着量並びにイオン電流密度を設定することで、Cr
/N輸送比、B/N輸送比及びCr/B輸送比を設定し
た。
【0038】BNの結晶構造については実験例1の場合
と同様であった。 比較例1 図3に示す装置を用いて、実験例1と同様にして高速度
工具鋼(SKH51)よりなる基体S上に膜厚約100
nmのCrN膜S1を形成した。次いで実験例1と同様
にして、但し蒸発源4からのCr元素含有物質4aの蒸
着を行わず、蒸発源5からのB元素含有物質5aの蒸着
のみを行い、前記CrN膜S1上に膜厚500nmのB
N膜を形成した。
【0039】また前記BN膜形成においては、B/N組
成比が1になるよう、B/N輸送比を設定した。BNの
結晶構造は実験例1の膜S2におけるBNのそれと同様
であった。 比較例2 図3に示す装置を用いて、実験例1と同様にして高速度
工具鋼(SKH51)よりなる基体S上に膜厚約100
nmのCrN膜S1を形成した。
【0040】次いで実験例1と同様にして、但し蒸発源
5からのB元素含有物質5aの蒸着を行わず、蒸発源4
からのCr元素含有物質4aの蒸着のみを行い、前記C
rN膜S1上にひき続き膜厚500nmのCrN膜を形
成した。前記第二のCrN膜形成においては、Cr/N
組成比が1になるよう、Cr/N輸送比を設定した。 比較例3 図3に示す装置を用いて、高速度工具鋼(SKH51)
よりなる基体S上に実験例1の膜S2形成と同様にして
膜厚約500nmのCrN及びBNからなる膜を形成し
た。
【0041】BNの結晶構造は実験例1の膜S2におけ
るBNのそれと同様であった。次に実験例1、2及び比
較例1、2、3による膜被覆基体について、膜硬度、膜
の密着強度及び耐酸化性を評価した。硬度は10g荷重
ビッカース硬度を測定することで評価し、膜の密着強度
はAEセンサ付きスクラッチ試験機を用いて測定し、耐
酸化性は各膜被覆基体を大気中で加熱し、膜表面部分が
酸化する温度を測定することで評価した。
【0042】結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】比較例1による基体は硬度測定中にビッカ
ース圧痕周辺にクラックが生じ、硬度測定中、荷重18
Nの時点で膜が割れた。即ち、比較例1の膜は外膜にC
rNを含まないので靱性に難点が有る。比較例2の膜は
CrNのみからなり、BNを含まないので酸化開始温度
が低く、化学的安定性の点で劣っている。比較例3の膜
はCrN中間膜を有しないので、基体への密着性に難点
がある。
【0045】これに対し、実験例1、2の基体における
膜は硬度、靱性、密着強度及び化学的安定性の全てに優
れていることが判る。
【0046】
【発明の効果】本発明によると、耐摩耗性能が要求され
る分野に用いられる基体を優れた硬度、靱性、密着性及
び化学的安定性を有する膜で被覆した膜被覆基体を提供
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の基体の一例の一部の拡大断
面図である。
【図2】本発明に係る第2の基体の一例の一部の拡大断
面図である。
【図3】図1、2に示す基体の製造に用いる成膜装置の
概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1 真空容器 2 排気装置 3 基体ホルダ 4、5 蒸発源 4a、5a 蒸着物質 6 イオン源 6a イオン 7、8 膜厚モニタ 9 イオン電流測定器 S 基体 S1 CrN膜 S2 CrN及びBNからなる膜 S3 CrN、BN及びCrBからなる膜

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に窒化クロム膜が形成され、その
    上に、窒化クロム及び窒化ホウ素からなる膜が形成され
    ていることを特徴とする膜被覆基体。
  2. 【請求項2】 基体上に窒化クロム膜が形成され、その
    上に、窒化クロム、窒化ホウ素及びホウ化クロムからな
    る膜が形成されていることを特徴とする膜被覆基体。
JP8459994A 1994-04-22 1994-04-22 膜被覆基体 Withdrawn JPH07292456A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6494461B1 (en) * 1998-08-24 2002-12-17 Nippon Piston Ring Co., Ltd. Sliding member
JP2010185095A (ja) * 2009-02-10 2010-08-26 Shinko Seiki Co Ltd 高硬度被膜およびその形成方法

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