JPH05247627A - 窒化ホウ素含有膜の製造方法 - Google Patents

窒化ホウ素含有膜の製造方法

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JPH05247627A
JPH05247627A JP4940592A JP4940592A JPH05247627A JP H05247627 A JPH05247627 A JP H05247627A JP 4940592 A JP4940592 A JP 4940592A JP 4940592 A JP4940592 A JP 4940592A JP H05247627 A JPH05247627 A JP H05247627A
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JP
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film
substrate
boron nitride
boron
ions
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JP4940592A
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Inventor
Satoru Nishiyama
哲 西山
Akinori Ebe
明憲 江部
Naoto Kuratani
直人 鞍谷
Taizo Okazaki
泰三 岡崎
Kiyoshi Ogata
潔 緒方
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Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 摺動部品の耐摩耗性能は勿論のこと、それだ
けではなく適度の摺動性能や潤滑性能も要求される基体
上に、これら性能を向上させることができるとともに該
基体への密着性良好な窒化ホウ素含有膜を形成する方法
を提供する。 【構成】 基体1に対し、ホウ素元素含有物質3aを真
空蒸着及び、または、スパッタ法にて付与し、該付与と
同時、交互、または該付与のあとにイオン源4よりイオ
ン4aを照射して窒化ホウ素含有膜を基体1上に形成す
るようにし、且つ、該成膜において基体1に到達するホ
ウ素原子と窒素イオンの比及び前記照射イオンの加速エ
ネルギを制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切削工具、金型、磁気
ヘッド或いは各種の摺動部品といった耐摩耗性能は勿論
のこと、それだけではなく適度の摺動性能や潤滑性能も
要求される基体上に、これら性能を向上させることがで
きるとともに該基体への密着性良好な窒化ホウ素含有膜
を形成するための窒化ホウ素含有膜の製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】窒化ホウ素(以下「BN」という。)
は、その結晶構造によって立方晶系閃亜鉛鉱型のもの
(以下「c−BN」という。)、六方晶系のグラファイ
トと類似した構造のもの(以下「h−BN」とい
う。)、或いは六方晶系のウルツ鉱型のもの(以下「w
−BN」という。)に大別される。
【0003】c−BNはダイヤモンドに次ぐ高硬度を有
しており、熱的、化学的安定性にも優れていることか
ら、切削工具のような耐摩耗性を必要とする分野に応用
されており、また、絶縁性や高熱伝導率を有する特徴を
活かしてヒートシンク用材料等として利用されている。
さらに、w−BNもまた優れた化学的安定性、耐熱衝撃
性、或いは高硬度という特性を有していることにより、
耐摩耗性が要求される各種分野に応用されている。
【0004】しかし、c−BNは、これまで高温度、高
圧力下で人工的に合成されるものであり、その製造コス
トは非常に高くなり、合成される形態が粉や粒といった
ものになるため、その応用範囲が限られていた。そこ
で、c−BNを低温度下で膜に合成させようとする試み
が、各種物理的蒸着(PVD)法や化学的蒸着(CV
D)法によって行われている。
【0005】CVD法の一例を述べると、基体を反応室
に入れて、1000℃近い温度に加熱した後、ホウ素元
素(B)を含有する原料ガスや窒素元素(N)を含有す
る原料ガスを反応室に導入し、熱分解反応させて基体の
表面にBN膜を形成する。しかし、このような方法で
は、依然として基体に耐熱性が要求され、基体種が限定
されてしまう。例えば、成膜すべき基体が高速度工具鋼
(ハイス鋼)のような約500℃以上の温度で硬度の劣
化を生じるようなものや、高温下での変形による寸法精
度の狂いが許されない金型といったものであると採用で
きない。さらに、h−BNの合成は容易にできるもの
の、c−BNは合成され難い。
【0006】また、PVD法においても、例えば窒素ガ
ス中でホウ素をスパッタリングし、基体表面にBN膜を
形成しようとする反応性スパッタ等が試みられたが、h
−BNの合成は可能であったが、c−BNの合成は不可
能であった。そのため、近年イオンやプラズマを用いて
低温下でc−BNを合成しようとする試みが幾つも行わ
れてきている。例えば、原料ガスをプラズマを用いるこ
とにより、分解、反応させるプラズマCVD法は、前記
熱的に原料ガスを分解、反応させるCVD法と比較して
低温下でBN膜を合成でき、基体に与えられる熱的なダ
メージが比較的少なく済むといった利点を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このようにプ
ラズマ、イオン等の利用によって、低温下でのBN膜の
合成への道はひらけたものの、実用化に当たっては基体
と膜の密着性が大きな問題となる。従来用いられていた
ような、基体に熱を加えて膜を合成する手法は、基体の
熱的なダメージが問題になりながらも、密着性に関して
は、低温下で成膜する手法に比べて優れるという傾向が
あった。一方、低温下で成膜する手法では、膜の密着性
が充分に得られないという傾向があった。従って、基体
への熱的なダメージ無しに膜を得ることと、密着性の良
い膜を得ることとを両立させ得る手法が未だに見出され
ていないのが実情である。
【0008】また、c−BNやw−BNの耐摩耗性をは
じめとする特性を充分に発揮させ、且つ、h−BNの混
在による適度の摺動性や潤滑性も発揮させるには、両者
の混在量を調整しなければならないが、c−BN、w−
BN及びh−BNの混在量を調整できる成膜手法も開発
されないまま現在に至っている。c−BNやw−BNの
みを合成すると、硬度の大きい、熱伝導率の優れた膜が
得られるものの、基体が摺動する相手材との硬度差が大
きい場合、相手材を傷つけたり、必要以上に摩耗させた
りする。
【0009】合成されるc−BNやw−BNの密度や結
晶化の違いによって、膜の硬度も様々な値となるが、同
一の成膜手法を用いることによってc−BNやw−BN
の硬度を調節しようとすると、密度の低下によって膜の
耐候性を損なったり、膜の結晶化が異なって表面粗度が
粗くなる等の不都合が生じる。そこで本発明は、切削工
具、金型、磁気ヘッド或いは各種の摺動部品といった耐
摩耗性能は勿論のこと、それだけではなく適度の摺動性
能や潤滑性能も要求される基体上に、これら性能を向上
させることができるとともに該基体への密着性良好な窒
化ホウ素含有膜を形成するための低温下における窒化ホ
ウ素含有膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は研究を重ねた
結果、基体上に合成されるBN含有膜におけるBNの結
晶構造を基体表面から該膜の表面に移行するに従って立
方晶閃亜鉛鉱型か六方晶ウルツ鉱型の少なくとも一方の
結晶構造のものから立方晶閃亜鉛鉱型か六方晶ウルツ鉱
型の少なくとも一方の結晶構造のものと六方晶のグラフ
ァイトに類似した結晶構造のものが混在したものに順次
変化させることによって、該膜に、その緻密性を損なわ
ず、表面粗度を悪くしないまま、硬度の調節を行って所
望の耐摩耗性は勿論のこと、所望の摺動性や潤滑性も併
せ持たせることができることを見出すとともに、そのよ
うなBN含有膜を基体へ密着性良好に低温度下で形成す
る方法を見出した。
【0011】すなわち本発明は、基体に対し、ホウ素元
素含有物質を真空蒸着及び(又は)スパッタ法にて付与
し、該付与と同時、交互又は該付与のあとにイオン源よ
りイオンを照射して窒化ホウ素含有膜を前記基体上に形
成するようにし、且つ、該成膜において前記基体に到達
するホウ素原子と窒素イオンの比及び前記照射イオンの
加速エネルギを制御することにより最終的に得られる全
膜中における窒化ホウ素を該基体の表面から該膜の表面
に移行するに従って立方晶閃亜鉛鉱型か六方晶ウルツ鉱
型の少なくとも一方の結晶構造のものから立方晶閃亜鉛
鉱型か六方晶ウルツ鉱型の少なくとも一方の結晶構造の
ものと六方晶のグラファイトに類似した結晶構造のもの
が混在したものに順次変化させることを特徴とする窒化
ホウ素含有膜の製造方法を提供するものである。
【0012】前記基体に到達するホウ素原子と窒素イオ
ンの比及び前記照射イオンの加速エネルギの制御にあた
っては、例えば、前記照射イオンの加速エネルギを40
KeV以下、前記基体に到達するホウ素原子と窒素イオ
ンの比を0.5以上30以下になる条件を少なくとも2
種以上組み合わせることが考えられ、これによって最終
的に得られる全膜中における窒化ホウ素を前記基体の表
面から該膜の表面に移行するに従って立方晶閃亜鉛鉱型
か六方晶ウルツ鉱型の少なくとも一方の結晶構造のもの
から立方晶閃亜鉛鉱型か六方晶ウルツ鉱型の少なくとも
一方の結晶構造のものと六方晶のグラファイトに類似し
た結晶構造のものが混在したものに順次変化させること
ができる。
【0013】この場合、照射イオンの加速エネルギが4
0KeVより大きいと、照射イオンによって膜が受ける
ダメージが大きくなり、膜の緻密性が悪くなり、その結
果、膜の耐候性や硬度に悪影響がでる。なお、照射イオ
ン加速エネルギの下限値は実際のイオン源の構造等を考
慮すると100eV程度になると考えられる。また、前
記基体に到達するホウ素原子と窒素イオンの比(B/N
輸送比)は0.5より小さいとスパッタによって膜厚が
設定のものより少ないものになる恐れがあり、30より
大きいと膜中に含まれるBNの量が少なくなりすぎ、B
Nの特性が充分得られない恐れがある。
【0014】前記方法において用いるホウ素元素含有物
質としては、ホウ素単体、ホウ素の酸化物、ホウ素の窒
化物、ホウ素の炭化物等が考えられる。また、蒸発源の
方式は特に限定されるものではなく、例えば電子ビーム
(EB)、抵抗、レーザ、高周波等の手段を用いるもの
を適宜採用できる。また、ホウ素元素含有物質は、スパ
ッタによって基体上に膜形成されてもよい。この場合、
スパッタさせる手法も特に限定されず、イオンビーム、
マグネトロン、高周波等の手段によりスパッタできる。
【0015】また、前記方法において用いるイオンとし
ては、窒素イオンの他、これに不活性ガスイオンや水素
イオンを混合したもの等が考えられる。不活性ガスイオ
ンや水素イオンを用いると、蒸発ホウ素原子を一層高励
起化することができ、c−BNの形成に有利になる。な
お、基体へのイオン入射角度は特に限定されない。イオ
ン源の方式も特に限定はなく、例えば、カウフマン型、
バケット型等のものが考えられる。
【0016】基体に到達するホウ素原子と窒素イオンの
到達比(B/N輸送比)の調整は、例えば膜厚モニター
を用いて基体へのホウ素原子の蒸着量をモニターし、イ
オン電流測定器を用いて基体へのイオンの照射量をモニ
ターすることで行える。膜厚モニターは例えば水晶振動
式膜厚計でよく、イオン電流測定器は例えば2次電子抑
制電極を備えたファラデーカップ等でよいが、特に限定
はない。これらにより膜を任意の膜厚に形成できる。
【0017】さらに、熱的なダメージを十分に避けなけ
ればならない基体については前記基体ホルダを水冷して
基体を冷却させながら成膜を行うのが好ましい。
【0018】
【作用】本発明方法によると、基体に対し、ホウ素元素
含有物質が真空蒸着法及び(又は)スパッタ法にて付与
され、該付与と同時、交互又は該付与のあとにイオン源
よりイオンが照射されて該基体上に窒化ホウ素含有膜が
形成され、且つ、該成膜において該基体に到達するホウ
素原子と窒素イオンの比及び前記照射イオンの加速エネ
ルギが制御されることで、最終的に得られる全膜中にお
ける窒化ホウ素が該基体の表面から該膜の表面に移行す
るに従って立方晶閃亜鉛鉱型か六方晶ウルツ鉱型の少な
くとも一方の結晶構造のものから立方晶閃亜鉛鉱型か六
方晶ウルツ鉱型の少なくとも一方の結晶構造のものと六
方晶のグラファイトに類似した結晶構造のものが混在し
たものに順次変化する。
【0019】また、この成膜方法では、照射されるイオ
ンと蒸発原子とが衝突することにより、基体内に蒸発原
子が押し込まれ、基体内で反跳し、基体と膜の界面にて
両者の構成原子よりなる混合層が形成されることにより
膜の密着性が向上し、また、蒸発原子とイオンとの衝突
により蒸発原子が励起され、その結果、c−BNやw−
BNが膜内に形成される。よって、低温下で密着性に優
れたBN膜を得ることができ、基体の選択の自由度も大
きく広がる。
【0020】このように基体の選択の自由度が大きく広
がり、さらに膜と基体との密着性に優れた、硬度の高
い、且つ、化学的安定性、摺動性、潤滑性等に優れたB
N含有膜を作成することができる。本発明方法により得
られる基体によると、それを被覆する窒化ホウ素含有膜
は、該膜中の窒化ホウ素が該基体の表面から該膜の表面
に移行するに従って立方晶閃亜鉛鉱型か六方晶ウルツ鉱
型の少なくとも一方の結晶構造のものから立方晶閃亜鉛
鉱型か六方晶ウルツ鉱型の少なくとも一方の結晶構造の
ものと六方晶のグラファイトに類似した結晶構造のもの
が混在したものに順次変化していることで、所望の耐摩
耗性のみならず、所望の摺動性や潤滑性も併せ備え、従
って基体自身の摩耗が少なく、且つ、摺動する相手材を
必要以上に傷つけたり、摩耗させたりする恐れも少な
い。
【0021】さらに説明すると、前記膜は、c−BNや
w−BNが下地層として存在することにより膜の硬度が
高いものとなる一方、膜の表面にh−BNとc−BNや
w−BNが混在することによりc−BNやw−BNのも
つ硬度とh−BNのもつ潤滑性及び摺動性を兼ね合わせ
た特性を示し、基体自身が摩耗しにくいうえ、摺動する
相手材を傷つける恐れが少ない。そのため、基体が例え
ば磁気記録装置の磁気ヘッドであるときにこの膜をヘッ
ド表面に形成して磁気テープと摺動させても、ヘッドの
摩耗が少なく、且つ、磁気テープを傷つける恐れが少な
い。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例につき図面を参照して
説明する。図1は本発明方法を実施するために用いられ
る成膜装置の1例の概略構成を示したものであり、図1
において、1は基体、2は基体1を支持するホルダ、3
はホウ素元素を含有する物質を蒸発させる蒸発源、4は
イオンを照射させるためのイオン源、5は基体1上に蒸
着されるホウ素の個数並びにその膜厚を計測するための
膜厚モニター、6は基体1に照射されるイオンの個数を
計測するためのイオン電流測定器である。これらは真空
容器7内に収容されている。容器7内は排気装置8にて
所望の真空度とされ得る。
【0023】本発明方法を実施するにあたっては、まず
基体1をホルダ2に支持させた後、真空容器7内を所定
の真空度に排気する。その後、基体1に、蒸発源3を用
いて、ホウ素元素を含有する物質3aを真空蒸着させ
る。なお、真空蒸着に代えて、ホウ素元素含有物質をス
パッタすることで基体1上に膜形成してもよい。
【0024】このホウ素元素を含有する物質の真空蒸着
(或いはスパッタ)と同時、又は交互に、又は蒸着後
に、イオン源4より窒素イオンを含有するイオン4a
を、当該蒸着面に照射する。この際、基体1に到達する
ホウ素原子と窒素イオンの到達比(B/N輸送比)の調
整は、膜厚モニター5を用いて基体1へのホウ素原子の
蒸着量をモニターし、イオン電流測定器6を用いて基体
1へのイオンの照射量をモニターして行う。
【0025】また、前記成膜においては、形成される膜
中の窒化ホウ素を基体1の表面から該膜の表面に移行す
るに従って立方晶閃亜鉛鉱型か六方晶ウルツ鉱型の少な
くとも一方の結晶構造のものから立方晶閃亜鉛鉱型か六
方晶ウルツ鉱型の少なくとも一方の結晶構造のものと六
方晶のグラファイトに類似した結晶構造のものが混在し
たものに順次変化させるためにつぎのような制御を行
う。すなわち、イオン4aの照射エネルギを一定にして
B/N輸送比を連続的に又は断続的に変化させたり、同
じB/N輸送比でイオン4aの加速エネルギを連続的又
は断続的に変化させたり、或いは、イオンの照射エネル
ギ、B/N輸送比を共に連続的に又は断続的に変化させ
る。
【0026】但し、照射イオンの加速エネルギは40K
eV以下とし、その下限値は実際のイオン源の構造等を
考慮すると100eV程度になる。また、B/N輸送比
は0.5以上30以下とする。以上に述べた成膜操作に
より、図2に示すように、基体1表面に窒化ホウ素(B
N)を含有する膜11が形成される。該膜は、c−BN
やw−BNが下地層11aとして存在することにより膜
の硬度が高いものとなる一方、膜の表面11bにh−B
Nとc−BNやw−BNが混在することによりc−BN
やw−BNのもつ硬度とh−BNやw−BNのもつ潤滑
性及び摺動性を兼ね合わせた特性を示す。
【0027】また、前記成膜方法では、照射されるイオ
ン4aと蒸発原子とが衝突することにより、基体1内に
蒸発原子が押し込まれ、基体内で反跳し、基体1とそれ
に形成される膜の界面にて両者の構成原子よりなる混合
層が形成されることにより膜の密着性が向上し、また、
蒸発原子とイオン4aとの衝突により蒸発原子が励起さ
れ、その結果、c−BNやw−BNが容易に形成され、
低温下で密着性に優れたBN膜が形成される。
【0028】次に図1示す成膜装置による本発明方法の
具体例とそれによって得られる窒化ホウ素含有膜被覆の
基体について説明する。 実施例1 図1に示す装置を用いてパーマロイ合金よりなる基体1
(25mm×25mm×厚さ3mm)を基体ホルダ2に
設置し、真空容器7内を5×10-7Torrの真空度に
保持した。その後、純度99.7%のホウ素ペレット3
aを電子ビーム蒸発源3を用いて蒸気化し、基体1上に
成膜した。それと同時に、イオン源4に純度5N(9
9.999%)の窒素ガスを真空容器内が5×10-5
orrになるまで導入し、イオン化させ、該イオン4a
を10KeVの加速エネルギで、基体1に立てた法線に
対して0°の角度で基体1に照射した。なお、イオン源
4にはカスプ磁場を用いたバケット型イオン源を用い
た。
【0029】また、前記成膜操作においては、B/Nの
輸送比が15になるよう、ホウ素原子の窒素イオンによ
るスパッタ率等を考慮してホウ素原子の蒸発量と窒素イ
オンの照射量を調整し、約500nmの膜厚で成膜し
た。なお、この膜のみを形成して赤外吸収(IR)によ
ってその構造を調べたところ、該膜はc−BNよりなる
ものであった。
【0030】その後、イオン4aの加速エネルギ2Ke
V、B/N輸送比=2の条件でさらに約500nm成膜
した。なお、この膜のみを形成して赤外吸収(IR)に
よってその構造を調べたところ、該膜はh−BNとc−
BNよりなるものであった。 実施例2 実施例1と同じ基体を用い、イオンの加速エネルギ10
KeV、B/N輸送比=15の条件で約500nm成膜
し、その後、イオンの加速エネルギ200eV、B/N
輸送比=1の条件で約500nm成膜した。その他の条
件は実施例1と同じであった。なお、この膜における上
地膜(表面膜)のみを形成して赤外吸収(IR)によっ
てその構造を調べたところ、該膜はh−BNとc−BN
よりなるものであった。
【0031】実施例3 実施例1と同じ基体を用い、イオンの加速エネルギ10
KeV、B/N輸送比=15の条件で約250nm成膜
し、その後、イオンの加速エネルギ2KeV、B/N輸
送比=8の条件で約250nm成膜し、さらにイオンの
加速エネルギ200eV、B/N輸送比=1の条件で約
500nm成膜した。その他の条件は実施例1と同じで
あった。なお、最表層の膜及びその下の膜のそれぞれを
それのみ形成して赤外吸収(IR)によって膜構造を調
べたところ、各膜はh−BNとc−BNよりなるもので
あった。
【0032】比較例1 実施例1と同じ基体を用い、イオンの加速エネルギ10
KeV、B/N輸送比=15の条件で約1μm成膜し
た。その他の条件は実施例1と同じであった。 比較例2 実施例1と同じ基体を用い、イオンの加速エネルギ20
0eV、B/N輸送比=1の条件で約1μm成膜した。
その他の条件は実施例1と同じであった。
【0033】比較例3 実施例1と同じ基体を用い、イオンの加速エネルギ10
KeV、B/N輸送比=35の条件で約500nm成膜
し、その後、イオンの加速エネルギ200eV、B/N
輸送比=1の条件で約500nm成膜した。その他の条
件は実施例1と同じであった。なお、最初に形成した膜
につき赤外吸収(IR)によって構造を調べたところ、
c−BNがほんのわずか検出された。また上地膜のみを
形成して赤外吸収(IR)によってその構造を調べたと
ころ、該膜はh−BNとc−BNよりなるものであっ
た。
【0034】前記条件下で成膜した基体の表面硬度を測
定したところ以下の結果が得られた。なお、硬度は10
g微小ビッカース硬度計で測定した。 以上測定結果から分かるように、実施例1〜3のもので
は、いずれも高硬度を有する膜が合成されている。一
方、比較例2、3のものは、硬度が実施例のものより劣
る。
【0035】次に、実施例1〜3による基体と比較例1
による基体を用いて、#8000ラッピングフィルムを
用いた摺動実験を行ったところ、実施例1〜3のものは
ラッピングフィルムに傷が発生せず、また膜の摩耗も認
められなかった。一方、比較例1のものはラッピングフ
ィムルに傷がついた。
【0036】
【発明の効果】本発明によると、切削工具、金型、磁気
ヘッド或いは各種の摺動部品といった耐摩耗性能は勿論
のこと、それだけではなく適度の摺動性能や潤滑性能も
要求される基体上に、これら性能を向上させることがで
きるとともに該基体への密着性良好な窒化ホウ素含有膜
を形成するための低温下における窒化ホウ素含有膜の製
造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施に用いる成膜装置の1例の概
略構成を示す図である。
【図2】窒化ホウ素含有膜を被覆した基体例の一部の拡
大断面図である。
【符号の説明】
1 基体 11 窒化ホウ素含有膜 11a 膜11中の下地層 11b 膜11の表面 2 基体ホルダ 3 蒸発源 3a ホウ素含有物質 4 イオン源 4a イオン 5 膜厚モニター 6 イオン電流測定器 7 真空容器 8 排気装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡崎 泰三 京都市右京区梅津高畝町47番地 日新電機 株式会社内 (72)発明者 緒方 潔 京都市右京区梅津高畝町47番地 日新電機 株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体に対し、ホウ素元素含有物質を真空
    蒸着及び(又は)スパッタ法にて付与し、該付与と同
    時、交互又は該付与のあとにイオン源よりイオンを照射
    して窒化ホウ素含有膜を前記基体上に形成するように
    し、且つ、該成膜において前記基体に到達するホウ素原
    子と窒素イオンの比及び前記照射イオンの加速エネルギ
    を制御することにより最終的に得られる全膜中における
    窒化ホウ素を該基体の表面から該膜の表面に移行するに
    従って立方晶閃亜鉛鉱型か六方晶ウルツ鉱型の少なくと
    も一方の結晶構造のものから立方晶閃亜鉛鉱型か六方晶
    ウルツ鉱型の少なくとも一方の結晶構造のものと六方晶
    のグラファイトに類似した結晶構造のものが混在したも
    のに順次変化させることを特徴とする窒化ホウ素含有膜
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記照射イオンの加速エネルギを40K
    eV以下、前記基体に到達するホウ素原子と窒素イオン
    の比を0.5以上30以下になる条件を少なくとも2種
    以上組み合わせることによって、最終的に得られる全膜
    中における窒化ホウ素を前記基体の表面から該膜の表面
    に移行するに従って立方晶閃亜鉛鉱型か六方晶ウルツ鉱
    型の少なくとも一方の結晶構造のものから立方晶閃亜鉛
    鉱型か六方晶ウルツ鉱型の少なくとも一方の結晶構造の
    ものと六方晶のグラファイトに類似した結晶構造のもの
    が混在したものに順次変化させる請求項1記載の窒化ホ
    ウ素含有膜の製造方法。
JP4940592A 1992-03-06 1992-03-06 窒化ホウ素含有膜の製造方法 Withdrawn JPH05247627A (ja)

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