JP2518424B2 - 磁気ヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

磁気ヘッドおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、磁気記録媒体に信号を記録したり、磁気
記録媒体より信号を再生するための磁気ヘッドの製造方
法に関するものである。
〔従来の技術〕
第3図は磁気ヘッドの基本構造を示す概念図である。
第3図に示すように、磁気ヘッド13は所定の形状に加工
された高透磁率の磁性体にコイル14を巻いた対のヘッド
コア15間に、ギヤップ16を形成し、その後のシールドケ
ース(図示せず)に接着剤等で固定される。なおヘッド
コア15と磁気テープなどの磁気記録媒体との摺動面17
は、研磨されて用いられる。
このような磁気ヘッド13は、通常、磁気記録媒体に摺
動させて用いるため、この摺動面17に摩耗が生じる。し
たがってこの摩耗量によって磁気ヘッド13の寿命が決定
される傾向がある。
近年、磁気ヘッドが用いられるビデオテープレコーダ
等の性能を高めるために、磁気記録媒体である磁気テー
プの走行速度を速くする手法がとられているが、これに
伴い磁気ヘッドの摩耗も激しくなり、磁気ヘッドの寿命
が短くなるという問題があった。
そこでこのような磁気ヘッドの摩耗を防ぐ方法とし
て、ヘッドコアの材質を硬質なものに変化させる方法が
ある。この方法は、例えば特公昭55−12652号公報に開
示されているような、研磨されたヘッドコアと磁気記録
媒体である磁気テープとの接触面である摺動面にイオン
注入法により金属硬化原子のイオンを注入して、このヘ
ッドコアの表面を硬化させる方法が提案されている。
しかしながらこの方法によれば注入した金属硬化原子
がヘッドコアに強度の格子欠陥を生じさせ、またヘッド
コアの格子を歪ませたりしてヘッドコアの磁気特性に悪
影響を与える。さらに磁気ヘッドのヘッドコアの耐摩耗
性を充分なものとするためには、ヘッドコアを硬質に変
化させる層を充分な厚みとすることが必要であり、その
ため磁気特性が変化してしまう層の厚みも大きくなるた
め、磁気ヘッドとしての性能の劣化は避けられない。
また、磁気ヘッドの摩耗を防ぐ方法として、磁気ヘッ
ドの摺動面を硬質の耐摩耗膜で被覆する方法がある。
この方法は、窒化チタン(TiN),炭化チタン(TiC)
等の薄膜を真空蒸着法,スパッタリング法,イオンプレ
ーティング法などの物理蒸着法(PVD法)または化学的
蒸着法(CVD法)によって形成する方法である。このよ
うな方法には、例えば特開昭51−126383号公報に開示さ
れているような、金属蒸気によるクラスタイオンビーム
蒸着法によりホウ素化合物を磁気ヘッドの摺動面に蒸着
させる方法がある。
しかしながら、このクラスタイオンビーム蒸着法を含
め上記真空蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーテ
ィング法では、磁気ヘッドのヘッドコアとその表面に形
成される耐摩耗膜との密着性が充分でなく、磁気テープ
との摺動によって、ヘッドコアの表面に形成した耐摩耗
膜が剥離するという問題が生じる。またCVD法では、耐
摩耗膜を形成すべき基体(この場合、磁気ヘッドのヘッ
ドコア)をある温度、例えば1000℃近くまでに加熱する
必要があり、そのため、この熱によりヘッドコアの特性
劣化を生じさせることがある。
また特開昭62−275308号公報に開示されているよう
な、磁気ヘッドのヘッドコアの摺動面に耐摩耗膜として
窒化ホウ素膜を形成することが提案されている。
窒化ホウ素膜は、主に立方晶系閃亜鉛鉱型(以下「c
−BN」という。),六方晶系グラファイト型(以下「h
−BN」という。),六方晶系ウルツ鉱型(以下「w−B
N」という。)などの結晶構造のものがある。そのなか
でもc−BN,w−BNは、硬度が高く、機械的摩耗性に優
れ、従来より耐摩耗材としてよく用いられる窒化チタン
や炭化チタン,炭化ケイ素などを遥かに凌ぐ高硬度を有
している。さらに窒化ホウ素膜は、化学的安定性,熱的
安定性に優れかつ鉄系材料との親和性も見られないた
め、この磁気ヘッドの耐摩耗材としては最適である。
またh−BNは、滑潤性に優れ、低摩擦係数を有する摺
動性に優れた物質である。したがってこのようなc−B
N,w−BNおよびh−BNなどの結晶構造を適宜有した窒化
ホウ素膜は、耐摩耗性および摺動性に優れた被覆材であ
る。
なおこの被覆材として窒化ホウ素膜より高硬度を有す
るダイヤモンドを磁気ヘッドの耐摩耗膜として採用した
場合、機械的耐摩耗性という見地からは、c−BNおよび
w−BNよる優れることは考えられるが、このダイヤモン
ドは磁気テープなどの鉄系の材料との親和性が高く、熱
的な安定性が劣る性質を有するため、磁気テープとの摺
動によるダイヤモンド薄膜の熱的摩耗および劣化は避け
ることができない。
このような見地から考えても窒化ホウ素膜は、磁気ヘ
ッドの耐摩耗膜として最適である。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら上記マグネトロンスパッタ法や真空蒸着
法では、磁気ヘッドの摺動面とその表面に形成される窒
化ホウ素膜との密着性が充分なものが得ることができな
い。特に硬質のc−BNやw−BNは、高温,高圧という特
殊な条件下でしか形成することができず、薄膜化して基
体表面を被覆させることは困難である。さらに磁気ヘッ
ドを構成する各部分に悪影響を与えない低温下で、密着
性の優れた硬質の窒化ホウ素膜を磁気ヘッドに被覆させ
た例は皆無である。
この発明の目的は上記問題に鑑み、耐摩耗性に優れか
つ摺動性に優れた窒化ホウ素膜を常温下で被覆した磁気
ヘッドの製造方法を提供するものである。
〔課題を解決するための手段〕
請求項(1)記載の磁気ヘッドは、立方晶系閃亜鉛鉱
型(c−BN)と六方晶系グラファイト型(h−BN)の両
方の結晶構造を有する窒化ホウ素膜を磁気記録媒体との
摺動面に被覆したものである。
請求項(2)記載の磁気ヘッドの摺動面に、ホウ素蒸
着と同時または交互に0.2KeV以上2KeV以下の加速エネル
ギーで窒素イオンを含むイオンの照射を行なうことによ
り、立方晶系閃亜鉛鉱型(c−BN)と六方晶系グラファ
イト型(h−BN)の両方の結晶構成を有する窒化ホウ素
膜を磁気記録媒体との摺動面に被覆させることを特徴と
するものである。
請求項(3)記載の磁気ヘッドの製造方法は、磁気ヘ
ッドの摺動面に、窒化ホウ素蒸着と同時または交互に、
0.2KeV以上2KeV以下の加速エネルギーで不活性ガスイオ
ンまたは水素イオンのイオン照射を行なうことにより、
立方晶系閃亜鉛鉱型(c−BN)と六方晶系グラファイト
型(h−BN)の両方の結晶構成を有する窒化ホウ素膜を
磁気記録媒体との摺動面に被覆させることを特徴とする
ものである。
第1図はこの発明な実施のために用いられる薄膜形成
装置を示す概念図である。第1図に示すように窒化ホウ
素膜を形成すべき磁気ヘッドのヘッドコア材1はホルダ
2に固定される。ヘッドコア材1の摺動面3に対向した
位置には、蒸発源4およびイオン源5が配置される。ま
た6はヘッドコア材1の摺動面3に形成される窒化ホウ
素膜の膜厚を測定する膜厚モニタ6である。ヘッドコア
材1,蒸発源4,イオン源5などは図示しない真空容器内に
収納され、成膜に適した真空度に保たれる。
このような薄膜形成装置は、蒸発源4により蒸発材7
のホウ素をヘッドコア材1の摺動面3に蒸着させること
と同時または交互にイオン源5によりヘッドコア材1の
摺動面3に向けて窒素イオンを照射する。
なお蒸発源4は電子ビーム蒸発源であり、電子ビーム
によってホウ素を加熱蒸気化してヘッドコア材1の摺動
面3にホウ素を蒸着させるものであるが、他の手法、例
えば抵抗加熱方式を用いても良い。また蒸発材7として
窒化ホウ素を用いても良い。また窒化ホウ素をターゲッ
トとして、不活性ガスイオンを含むイオンの照射やマグ
ネトロン放電によってスパッタさせ、窒化ホウ素を摺動
面3に蒸着させても良い。すなわちホウ素または窒化ホ
ウ素を摺動面3に蒸着できる方法ならば特に限定される
ものではない。
またイオン源5例えば、プラズマ閉じ込め用に多極磁
場を用いるバケット型イオン源であり、イオン源5に供
給されたガスをイオン化して均一で大面積のイオンビー
ムをヘッドコア材1の摺動面3に向けて照射するしくみ
になっているものである。
なおイオン源5はその他の方式のものを用いても良
く、その方法は特に限定されるものではない。
またイオン源5による照射イオンの照射角度(摺動面
3に対する垂線と照射イオンとがなす角)は、0゜〜80
゜の範囲内で適宜選べばよい。
なおイオン源5によって照射されるイオン種は、ヘッ
ドコアの表面に蒸着されるホウ素または窒化ホウ素とし
て、c−BNやw−BNを形成するものであれば、特に限定
されないが、例えは窒素イオン,不活性ガスイオン,水
素イオンなどのうち少なくとも1種以上を混合したもの
を用いることもできる。
不活性ガスイオンや水素イオンは、ホウ素原子の励起
を充分に高めて、c−BN,w−BNの生成を促進させるよう
に作用し、かつ窒化ホウ素膜の結晶性を高めるように作
用する。
なおイオン源5による窒素イオン,不活性ガスイオ
ン,水素イオンまたはこれらのうち少なくとも1種以上
を含むイオン種の加速エネルギーは、200eV以上〜40keV
以下であることが好ましい。これはイオン種の加速エネ
ルギーが200eV未満では、ホウ素または窒化ホウ素とイ
オン種とのミキシング層の厚みが充分でないために密着
性が充分なものが得ることができず、またイオン種の加
速エネルギーが40keVを越えると必要以上の深さまでイ
オン種がヘッドコア材1中に侵入してしまうために、磁
気ヘッドの磁気特性に悪影響を与えるためで、より好ま
しくは500eV以上〜20keV以下の範囲で選ぶことが望まし
い。
またヘッドコア材1に到達する蒸発原子とイオン種に
含まれるホウ素と窒素との原子比(B/N比)は0.5以上〜
30以下の範囲であることが好ましい。この範囲を逸脱す
ると形成された窒化ホウ素膜中に含まれる硬質なc−BN
やw−BNの生成量が少なくなり、その結果、窒化ホウ素
膜を耐摩耗性が充分に発揮されない。
またホウ素を蒸着させたヘッドコア材1の表面に窒素
イオンを照射する場合、この窒素イオンに不活性ガスイ
オンや水素イオンを適宜混合しても良い。
このような製造方法で窒化ホウ素膜を形成することに
よって、窒化ホウ素膜中に常温下で硬質なc−BN,w−BN
を形成することが可能となり、しかも単に硬質であるだ
けでなく、イオンの照射エネルギー,B/N比またはイオン
/BN比を適宜調整することによって、形成された窒化ホ
ウ素膜中のc−BN,w−BN,h−BNの生成量を制御すること
ができる。すなわち被覆する窒化ホウ素膜の耐摩耗性お
よび潤滑性を用途に応じて容易に変化させることができ
る。
例えば第1図に示す薄膜形成装置において、ヘッドコ
ア材1の表面へのホウ素の蒸着と窒素イオンの照射とを
同時または交互に行うことによって窒化ホウ素膜を形成
する場合、窒素イオンの照射エネルギーを2keV以下,B/N
比を0.5以上〜1以下とすると、形成された窒化ホウ素
膜は潤滑性に優れたh−BNが主体の膜となる。また窒素
イオンの照射エネルギーを2keV以下,B/N比を2以上〜8
以下とすると、形成された窒化ホウ素膜は耐摩耗性に優
れたc−BNが主体の膜となる。
第2図はこの発明を適用した磁気ヘッドを構造を示す
概念図である。第2図に示すように、磁気ヘッド8は、
高透磁率の磁性体であるヘッドコア9のコイル10を巻
き、さらにギャップ11が形成される。ヘッドコア9と磁
気テープなどの磁気記録媒体との摺動面3には、耐摩耗
性に優れかつ摺動性に優れた窒化ホウ素膜12が形成され
る。
なおヘッドコア9の材質としては、Mn−Znフェライ
ト,パーマロイ,センダストなどの任意の材質を用いて
よい。またヘッドコアの形状および寸法は特に限定され
るものではない。すなわち第2図に示す磁気ヘッドは、
基本構造の概念図を示したものであり、最終的に得られ
る磁気ヘッドは、磁気記録媒体との摺動面に窒化ホウ素
膜が形成されていること以外、特に限定されるものでな
い。
なお磁気ヘッド8の製造工程上、特に磁気ヘッド8を
シールドケース(図示せず)および磁気ヘッド支持体
(図示せず)に接着剤および樹脂等で固定した後にヘッ
ドコア9の摺動面3に窒化ホウ素膜を形成する場合、必
要に応じてヘッドコア9を冷却した低温下の条件でも、
上記方法によれば窒化ホウ素膜の膜質および密着性に優
れたものを得ることができる。
〔作用〕
この発明の磁気ヘッドの製造方法によれば、磁気ヘッ
ドの摺動面にホウ素蒸着と同時または交互に窒素イオン
を含むイオンの照射を行うか、または窒化ホウ素蒸着と
同時または交互に不活性ガスイオンまたは水素イオンの
照射を行うことによって窒化ホウ素膜を形成するため、
このようなイオン種の照射により常温下で窒化ホウ素膜
中に硬質なc−BNの生成を促進することができ、しかも
単に硬質であるだけでなく、イオンの照射エネルギーと
B/N比またはイオン/BN比を適宜調整することによって、
形成された窒化ホウ素膜のc−BN,h−BNの生成比を制御
することができる。さらに加速されたイオンの照射によ
って、蒸着物質がイオンとの衝突,反跳によって被覆面
の内部まで侵入し、窒化ホウ素と被覆面とのミキシング
層が形成されて密着性の優れた窒化ホウ素膜を得ること
ができる。
〔実施例〕
実施例1 第1図に示す薄膜形成装置を用いて、真空容器内(図
示せず)を1×10-5Torr以下の高真空状態に維持し、基
板としてMn−Znフェライト単結晶板(縦5mm×横5mm×1m
m厚)に電子ビーム蒸発源により純度99%のホウ素蒸発
材を加熱し、この基体にホウ素蒸着することと同時にイ
オン源に純度5Nの窒素ガスを供給し、加速エネルギー2k
eVの窒素イオンを照射して、膜厚2000Åの窒化ホウ素膜
を形成した。
なお基体の表面に到達するホウ素と窒素イオンの割合
(B/N比)は1とした。またイオン源によるイオンビー
ムは基体表面に垂直に入射された。
実施例2 B/N比=4とし、他の条件は実施例1と同様にして窒
化ホウ素膜を形成した。
実施例3 窒素イオンの加速エネルギーを500eVとし、他の条件
は実施例1と同様にして窒化ホウ素膜を形成した。
実施例4 B/N比=10、窒素イオンの加速エネルギーを10keVと
し、他の条件は実施例1と同様にして窒化ホウ素膜を形
成した。
実施例5 実施例1と同様の基体上に実施例1と同様にして窒化
ホウ素膜を形成することと同時に、さらに5N純度のArガ
スをイオン源に供給し、2keVの加速エネルギーでArイオ
ンを照射して窒化ホウ素膜を形成した。なおArイオン/B
N比は0.2とした。
比較例1 第1図の薄膜形成装置を用いて、純度99.9%のh−BN
を電子ビーム蒸発源により実施例1と同様の基体上に蒸
着させ、窒化ホウ素膜を形成した。なお窒化ほう素膜の
膜厚は2000Åとした。
比較例2 マグネトロンスパッタリング装置(図示せず)を用い
て、純度99.9%のh−BNのスパッタターゲットを窒素イ
オンによってスパッタさせ、膜厚2000Åを窒化ホウ素膜
を形成した。
上記実施例1〜実施例5および比較例1,比較例2の試
料の窒化ホウ素膜の膜質を赤外分光分析により分析し、
また膜の硬度を5gf微小ビッカース硬度計により測定し
た結果を以下に示す。
なお基体としたMn−Znフェライト単結晶板のビッカー
ス硬度は600であった。
上記窒化ホウ素膜の膜質の赤外分光分析による吸収ピ
ークが波数1380cm-1,780cm-1付近にみられるのはh−BN
によるものであり、吸収ピークが波数1080cm-1付近に見
られるのはc−BNによるものである。
上記結果より比較例1,比較例2に比べて実施例1〜実
施例5の各試料の窒化ホウ素膜の膜質は明らかに高硬度
であることがわかる。また実施例1〜実施例5の各試料
を窒化ホウ素膜は、耐摩耗性の優れたc−BNおよび摺動
性に優れたh−BNを共に有していることがわかる。
さらに#6000ラッピングテープを用いて、上記各試料
を研磨して各試料の膜の密着性を評価したところ、比較
例1,比較例2の試料は、窒化ホウ素膜の剥離が認められ
たが、実施例1〜実施例5の各試料は膜の剥離が生じな
かった。
したがって実施例1〜実施例5の各試料は、基体との
密着性に優れ、かつ高硬度を有しているといえる。
なおこの実施例では成膜された窒化ホウ素膜の構造を
赤外分光分析装置で分析する必要上、膜厚2000Åの窒化
ホウ素膜を形成したが、実際に磁気ヘッドを摺動面に窒
化ホウ素膜を形成する際には、磁気記録媒体との空隙長
が大きくなることによる感度(S/N比)等の磁気特性の
劣化を考慮し、適宜膜厚を調整する。またこの発明によ
れば膜厚が例えば数百Å程度の薄いものとなっても、窒
化ホウ素膜の構造ならびに窒化ホウ素膜の有する特性が
変化することはない。
また磁気ヘッドと摺動させる磁気記録媒体への影響、
例えば磁気ヘッドの摺動面に形成される窒化ホウ素膜の
硬度が高すぎることによる磁気記録媒体への損傷が危惧
される場合は、照射するイオンの加速エネルギーとB/N
比等を調整することによって、窒化ホウ素膜中の耐摩耗
性に優れたc−BN,w−BNおよび摺動性に優れたh−BNの
生成量を適宜調整すれば良い。
〔発明の効果〕
この発明の磁気ヘッドによれば、c−BNとh−BNの両
方の結晶構造を有する窒化ホウ素膜を磁気記録媒体との
摺動面に被覆したため、耐摩耗性および摺動性に優れる
という効果がある。
また磁気ヘッドの製造方法によれば、磁気ヘッドを摺
動面にホウ素蒸着と同時または交互に窒素イオンを含む
イオンの照射を行うか、または窒化ホウ素蒸着と同時ま
たは交互に不活性イオンまたは水素イオンの照射を行う
ことによってc−BNとh−BNの両方の結晶構造を有する
窒化ホウ素膜を形成するため、このようなイオン種の照
射により常温下で窒化ホウ素膜中に硬質なc−BNの生成
を促進することができ、磁気ヘッドの摺動面と窒化ホウ
素膜との密着性を十分なものとすることができる。また
単に硬質であるだけでなく、イオンの照射エネルギーを
0.2KeV以上2KeV以下に制御することにより窒化ホウ素膜
の密着性き確保とともに磁気ヘッドの特性への悪影響を
防止でき、またB/N比またはイオン/BN比を適宜調整する
ことによって、摺動性に優れたh−BNの生成を制御する
ことができる。その結果、硬質なc−BNおよびh−BNを
生成することによって、磁気ヘッドの耐摩耗性を向上さ
せ寿命を著しく向上させることができ、またh−BNを適
度に生成することによって磁気記録媒体との摺動性にお
いても優れた磁気ヘッドを構造することができる。また
イオンの照射により常温下で窒化ホウ素膜中にc−BNを
形成することができることにより、例えばビデオテープ
レコーダーに用いられるビデオヘッドにおいて、トラッ
ク幅を規制するためヘッドの溝に充填されるガラスを溶
融させたり、シールドケースにヘッドを固定させる接着
剤に悪影響を及ぼしたりすることなく窒化ホウ素膜を形
成することができるため、このような成膜工程を、磁気
ヘッドの組立の最終工程に取り入れることができ、作業
効率の良い工業利用性の極めて高いものとすることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の実施のために用いられる薄膜形成装
置を示す概念図、第2図はこの発明を適用した磁気ヘッ
ドの構造を示す概念図、第3図は従来の磁気ヘッドの基
本構造を示す概念図である。 1……ヘッドコア材、3……摺動面、4……蒸発源、5
……イオン源、8……磁気ヘッド
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−209709(JP,A) 特開 昭60−169559(JP,A) 特開 平1−311408(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】立方晶系閃亜鉛鉱型と六方晶系グラファイ
    ト型の両方の結晶構造を有する窒化ホウ素膜を磁気記録
    媒体との摺動面に被覆した磁気ヘッド。
  2. 【請求項2】磁気ヘッドの摺動面に、ホウ素蒸着と同時
    または交互に、0.2KeV以上2KeV以下の加速エネルギーで
    窒素イオンを含むイオンの照射を行なうことにより、立
    方晶系閃亜鉛鉱型と六方晶系グラファイト型の両方の結
    晶構造を有する窒化ホウ素膜を磁気記録媒体との摺動面
    に被覆させることを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
  3. 【請求項3】磁気ヘッドの摺動面に、窒化ホウ素蒸着と
    同時または交互に、0.2KeV以上2KeV以下の加速エネルギ
    ーで不活性ガスイオンまたは水素イオンのイオン照射を
    行なうことにより、立方晶系閃亜鉛鉱型と六方晶系グラ
    ファイト型の両方の結晶構造を有する窒化ホウ素膜を磁
    気記録媒体との摺動面に被覆させることを特徴とする磁
    気ヘッドの製造方法。
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