JP2624561B2 - 非晶質硬質炭素膜被覆ダイヤモンド工具 - Google Patents

非晶質硬質炭素膜被覆ダイヤモンド工具

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JP2624561B2
JP2624561B2 JP2119680A JP11968090A JP2624561B2 JP 2624561 B2 JP2624561 B2 JP 2624561B2 JP 2119680 A JP2119680 A JP 2119680A JP 11968090 A JP11968090 A JP 11968090A JP 2624561 B2 JP2624561 B2 JP 2624561B2
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carbon film
cutting
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hard carbon
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明 小原
暢男 安永
茂樹 小椋
浩 滝川
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は金属材料、特に炭素鋼など鉄系材料の切削
に用いる非晶質硬質膜被覆ダイヤモンド工具に関するも
のである。
[従来の技術] 焼結ダイヤモンドあるいは単結晶ダイヤモンドはその
超硬質性を利用してアルミニウム、銅など各種金属材料
の切削工具として多用されている。また最近超硬合金な
どの基材上にCVD法でダイヤモンド膜を気相成長させた
ダイヤモンド膜被覆切削工具で開発され、やはり軟質金
属の切削に利用されつつある。しかし炭素鋼などの鉄系
材料に対してはこれらのダイヤモンド工具は不適とされ
ている。これは、ダイヤモンドが鉄と化学的に反応しや
すく、鉄系材料を切削するとダイヤモンドの摩耗が大き
く、工具寿命が短いためである(E.J.Duwell & W.J.Ma
cDonald:Wear,vol.4,No.5(1961)372参照)。
[発明が解決しようとする課題] 上記のように、従来のダイヤモンド工具あるいはダイ
ヤモンド膜被覆工具は鉄と化学的に反応しやすく、一般
に炭素鋼などの鉄系材料の切削には使用されていない。
本発明は、このような課題を解決するためになされた
もので、鉄系材料との化学的反応を生じにくく、かつ力
学的にも硬度が高く、摩耗しにくい皮膜を焼結ダイヤモ
ンド工具あるいは単結晶ダイヤモンド工具の表面に被覆
することにより、鉄系材料の切削に使用えきるダイヤモ
ンド工具を提供しようとするものである。
[課題を解決するための手段] この目的を達成するための本発明は、焼結ダイヤモン
ドあるいは単結晶ダイヤモンド工具の表面に0.2〜10μ
mの厚さの非晶質硬質炭素膜を被覆してなる、炭素鋼な
どの鉄系材料の切削に適した非晶質硬質炭素膜被覆ダイ
ヤモンド工具を要旨とするものである。
超硬質炭素であるダイヤモンドは、鉄とA1変態点(72
3℃)以上では急速に反応してセメンタイトFe3Cを生じ
ることが知られており、鉄系材料を切削するときにダイ
ヤモンド工具の摩耗が大きく寿命が短いのはこの反応し
やすさが主因と考えられる。一方、黒鉛(グラファイ
ト)や非晶質炭素はダイヤモンドに比してはるかに鉄と
反応しにくいので(安永ほか:精密機械、38巻、4号
(1972年)413〜415頁参照)、鉄系材料切削用の工具と
してはダイヤモンドよりも黒鉛あるいは非晶質炭素の方
がすぐれた特性を示すことが期待されるが、通常の黒鉛
や非晶質炭素は硬度が極めて低く工具としては使用でき
ないのが実状である。しかし最近ある種のPVD法あるい
はCVD法によりダイヤモンドライクカーボンあるいはi
−カーボンと呼ばれる高硬質の非晶質炭素皮膜が作成で
きるようになっており、本発明は、該非晶質硬質炭素膜
を焼結ダイヤモンド工具あるいは単結晶ダイヤモンド工
具の表面に被覆することにより、鉄系材料に対して大き
な耐摩耗性を示す切削工具を開発したものである。
ダイヤモンド工具の表面に被覆すべき非晶質硬質炭素
被膜の厚さは、0.2μm未満では薄すぎて耐摩耗効果が
少なく、また10μmを超えると皮膜の内部応力のために
皮膜がダイヤモンド工具表面から剥離しやすくなり、切
削工具としては利用できないので、0.2〜10μmの範囲
とする。望ましくは2〜7μmの皮膜厚さで、十分な工
具寿命での切削が可能となる。
ダイヤモンド単結晶製の円錐形スライダと該スライダ
表面に2μmの厚さの非晶質硬質炭素膜を被覆した本発
明のスライダとの耐摩耗性を比較すると、例えばS35C炭
素鋼に対して、真空中、荷重2.0kg、摩擦速度1130m/min
の条件で摩擦させた場合、ダイヤモンド単結晶スライダ
の摩耗量が13×10-4mm3/kmであるのに対して、非晶質硬
質炭素膜被覆スライダのそれは1.1×10-4mm3/kmであ
り、該非晶質炭素膜被覆スライダの方が約10倍以上も耐
摩耗性が優れていると言える。この理由として、ダイヤ
モンド単結晶と鋼との摩擦では接触点で高温が発生して
急速にダイヤモンドからの炭素拡散が生じ、Fe3Cを形成
することによってダイヤモンドの摩耗が大きくなるのに
対して、非晶質炭素膜被覆スライダの場合は、炭素拡散
が生じにくいために摩耗も生じ難いことが考えられる。
また前記摩擦条件で、前記単結晶ダイヤモンドスライ
ダと同形状の焼結ダイヤモンドで作製したスライダと該
焼結ダイヤモンドスライダ表面に非晶質硬質炭素膜を被
覆した本発明のスライダとの耐摩耗性を比較した場合、
焼結ダイヤモンドスライダの摩耗量が21×10-4mm3/kmで
あるのに対して非晶質硬質炭素膜被覆スライダのそれは
2.8×10-4mm3/kmであり、この場合もやはり非晶質硬質
炭素膜被覆スライダの方が8倍ほど耐摩耗性に優れてい
る。
なお、非晶質硬質炭素膜の形成法としては、レーザ誘
起放電PVD法(黒鉛ターゲットにCO2レーザ光を集光照射
し、該ターゲットに負電圧をかけて放電を誘起しながら
炭素粒子を蒸発させ、同時にHイオンを基板に加速・照
射して炭素膜を堆積させる方法)、イオンスパッタ法
(高エネルギArイオンを黒鉛ターゲットに照射して、ス
パッタされた炭素粒子を基板に堆積させる方法)、イオ
ンプレーティング法(黒鉛を電子ビーム照射により蒸発
させ、蒸発した炭素粒子をイオン化電極によってイオン
化・加速して基板に堆積させる方法)、プラズマCVD法
(メタン、エチレンなどの炭化水素ガスをマイクロ波や
高周波電力でプラズマ化し、分解生成した炭素原子を基
板に堆積させる方法)、プラズマインジェクションCVD
法(プラズマ化した炭化水素ガスを電極間電位差により
基板方向に加速し堆積させる方法)などが使用される。
本発明の場合は、成膜条件によっても異なるが、膜硬度
としてHv1000〜7000程度の非晶質炭素膜が形成されてい
る。
[作用] 本発明のダイヤモンド工具は、上記のように非晶質硬
質炭素膜を被覆したダイヤモンド工具であるので、該炭
素膜と鉄との化学反応が生じにくくなり、炭素膜を被覆
していないダイヤモンド工具よりも摩耗が少なく、また
切削面も滑らかで、鉄系材料の切削に十分な寿命と切削
性能を発揮する。
[実施例] (実施例1) 放電誘起レーザPVD法により焼結ダイヤモンドバイト
に厚さ4μmの非晶質炭素膜を蒸着した。荷重15gfでマ
イクロビッカース硬さHvを測定したところ、Hv約6000で
あった。この切削バイトを用いて75mmφの被削材S45C
を、切り込み1.5mm,送り0.25mm/rev.,切削速度200m/mi
n,乾式という条件で60分間切削したときの逃げ面摩耗は
0.02mmであった。これは非晶質炭素膜を被覆しない焼結
ダイヤモンドバイトを用いて同じ条件の切削試験を行っ
たときの逃げ面摩耗0.3mmに比較して15倍の耐摩耗性を
有することを示している。
(実施例2) 放電誘起レーザPVD法により単結晶ダイヤモンドバイ
トに厚さ3μmの非晶質炭素膜を蒸着した。荷重15gfで
マイクロビッカース硬さHvを測定したところ、Hv約6800
であった。この切削バイトを用いて75mmφの被削材S45C
を、切り込み0.5mm,送り0.10mm/rev.,切削速度400m/mi
n,乾式という条件で180分間切削したときの逃げ面摩耗
は0.01mmであった。これは非晶質炭素膜を被覆しない単
結晶ダイヤモンドバイトを用いて同じ条件の切削試験を
行ったときの逃げ面摩耗0.25mmに比較して25倍の耐摩耗
性を有することを示している。
[発明の効果] 本発明のダイヤモンド工具は、非晶質硬質炭素膜をダ
イヤモンド切削工具の表面に被覆した結果、鉄に対する
化学反応を生じにくく、ダイヤモンド工具が苦手とする
鉄系材料の切削に使用することができ、金属素材として
最も大きなマーケットを占める鉄系材料の切削加工の作
業性や品質向上に寄与するところ極めて大と期待され
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安永 暢男 神奈川県川崎市中原区井田1618番地 新 日本製鐵株式会社第1技術研究所内 (72)発明者 小椋 茂樹 福岡県北九州市戸畑区大字中原46―59 新日本製鐵株式会社機械・プラント事業 部内 (72)発明者 滝川 浩 福岡県北九州市戸畑区大字中原46―59 新日本製鐵株式会社機械・プラント事業 部内 審査官 佐伯 義文 (56)参考文献 特開 昭62−196371(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】焼結ダイヤモンドあるいは単結晶ダイヤモ
    ンド工具の表面に0.2〜10μmの厚さの非晶質硬質炭素
    膜を被覆してなる非晶質硬質炭素膜被覆ダイヤモンド工
    具。
JP2119680A 1990-05-11 1990-05-11 非晶質硬質炭素膜被覆ダイヤモンド工具 Expired - Lifetime JP2624561B2 (ja)

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