JP3034241B1 - 高硬度高密着性dlc膜の成膜方法 - Google Patents

高硬度高密着性dlc膜の成膜方法

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JP3034241B1 JP10326218A JP32621898A JP3034241B1 JP 3034241 B1 JP3034241 B1 JP 3034241B1 JP 10326218 A JP10326218 A JP 10326218A JP 32621898 A JP32621898 A JP 32621898A JP 3034241 B1 JP3034241 B1 JP 3034241B1
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Abstract

【要約】 【課題】 被コーティング物の表面に密着性の良い高硬
度膜を高速に形成する方法を提供する。 【解決手段】 被コーティング物を収容した真空容器に
炭素を含有する第1原料ガスとシリコンを含有する第2
原料ガスを導入し、電子ビームガンからの加速された電
子ビームを照射して電離解離することにより第1と第2
の原料ガスの電子ビーム励起プラズマを生成し、さらに
被コーティング物に負のバイアス電圧を印加することに
より、被コーティング物の表面にシリコン含有ダイヤモ
ンドライク炭素(DLC)膜を成膜する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被コーティング物
表面に高硬度高密着性のシリコン含有ダイヤモンドライ
ク炭素(DLC)膜を成膜するDLC成膜方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】優れたトライボロジー特性を有するダイ
ヤモンドライク炭素(DLC)膜を部材にコーティング
して摺動特性を向上させる方法が研究されてきた。DL
C膜の成膜は、主にプラズマやイオンビームを利用した
方法が用いられてきた。特に、工具、金型、ハードディ
スク、ビデオテープなど実製品へのDLCコーティング
は、高周波(RF)励起プラズマCVD、電子サイクロ
トロン共鳴(ECR)プラズマCVD、熱陰極放電イオ
ン源を用いた堆積法、イオンプレーティングなどが利用
されてきた。最近、DLCコーティングを過酷な摺動環
境下で使用する量産機械部品に施して利用しようとする
研究が行われてきている。DLCは、窒化チタンTi
N、炭化珪素SiC、アルミナAl23などのセラミック
系材料と同等かそれ以上の極めて高い硬度を有する材料
である。これらの高硬度材料の薄膜は内部応力が大きい
ため被コーティング物との密着性が悪いのが特徴であ
る。
【0003】たとえば、部材、特に鉄系部材に対する高
硬度低摩擦層の密着性を向上させる方法が特開平3−2
40957に開示されている。この文献に開示された方
法は、鉄系金属材料の表面に被膜化しにくい純粋なDL
C層を形成する代わりに、疑似ダイヤモンド炭素を含む
炭素を主成分とする非晶質炭素−水素−ケイ素薄膜から
なる硬質低摩擦表面層を形成するものである。
【0004】プラズマCVDにより炭素とケイ素を同時
に析出させると、4配位の結合状態を取るケイ素原子に
引かれて炭素原子も4配位のダイヤモンド結合状態にな
り易くなるものと考えられ、表面層中に含まれるDLC
や炭化珪素により硬度が高く摩擦係数の小さい部材を得
ることができる。なお、上記方法において、さらに密着
性を向上させるために鉄系部材の表面に予め炭素化合物
を積層しておいてから上記硬質層を形成する方法も開示
されている。
【0005】しかし、DLCの内部応力が数GPaに達
するため部材とDLCとの密着性が十分でなく、また別
の固体潤滑膜である窒化チタンTiNや窒化クロムCrN
などに比較して膜の成長速度が遅く量産時の生産コスト
が問題になる。特に、過酷な摺動環境下で使用される機
械部品に従来技術を適用しても、高い面圧負荷を受けた
ときに剥離しない十分な密着性を持つものを大量に製造
することは困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決
しようとする課題は、被コーティング物の表面に高硬度
高密着性膜を形成する方法を提供することであり、特に
高速成膜を可能とする高密着性の高硬度DLC表面層形
成方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の高硬度高密着性DLC膜の成膜方法は、電
子ビーム励起プラズマを利用するもので、被コーティン
グ物を収容した真空容器に炭素を含有する第1原料ガス
とシリコンを含有する第2原料ガスを導入し、電子ビー
ムガンにより加速した電子ビームを照射して第1と第2
の原料ガスを電離解離することにより電子ビーム励起プ
ラズマを生成し、さらに被コーティング物に負のバイア
ス電圧を印加することにより、被コーティング物の表面
にシリコン含有ダイヤモンドライク炭素(DLC)膜を
成膜する成膜工程を有し、その成膜工程中に、第1原料
ガスに対する第2原料ガスの流量比を当初で高く後に低
くなるように変化させることを特徴とする
【0008】電子ビーム励起プラズマCVDは、ガスの
衝突電離断面積が最大となる約60から100eVのエ
ネルギーに加速した大電流の電子ビームをプロセス室に
打ち込めるため、他のプラズマCVDと比較して原料ガ
スの励起解離効率に優れ、プロセス室内に低圧で高密度
の原料プラズマを生成することができる。本願発明で
は、プロセス室に被コーティング物をセットして真空に
し、炭素を含有する原料ガスとシリコンを含有する原料
ガスを導入して、この原料ガスに適度に加速した電子ビ
ームを照射し電子ビーム励起プラズマを生成させるの
で、炭素を含有する原料ガスとシリコンを含有する原料
ガスが効率よく電離解離し、被コーティング物表面に高
速積層することができる。さらに、被コーティング材料
に負のバイアス電圧を印加すると、バイアス電圧により
コーティングの密着性や硬度が変化するので、適当なバ
イアス電圧を選ぶことにより材料表面に強度な密着性を
有する硬度の高いコーティング層を形成することができ
る。
【0009】特に、成膜工程は原料ガス比率とバイアス
電圧の条件を工程中に変化させることにより、被コーテ
ィング物の表面に初めに密着性の高い膜を形成しその上
に硬度の高い膜を形成するようにすることが好ましい。
炭素含有原料ガスに対するシリコン原料ガスの比率が高
い領域で成膜すると、硬度は高くないが密着性がよい膜
が得られ、シリコン原料ガスの比率が比較的低い所定の
領域では密着性はそれほどでないが硬度が高い膜を得る
ことができる。成膜工程中に、第1原料ガスに対する第
2原料ガスの流量比を当初で高く後に低くなるように変
化させることが好ましく、さらに、第1原料ガスの炭素
に対する第2原料ガスのシリコンの流量比が成膜工程初
期に30%以上であり終期に30%以下とすることが好
ましい。また、バイアス電圧を高くしていくと低電圧領
域では効果がないがある程度以上になると密着性が向上
する。一方、バイアス電圧をある程度を超えて高くして
いくと硬度が低下し始める。そこで、成膜工程の初期に
は密着性が高い膜が生成する条件で成膜しておき、終盤
では硬度が高くなる条件で成膜を行うことにより、材料
に対する密着性がよく表面の硬度の高いコーティング処
理を行うことができる。
【0010】なお、負のバイアス電圧は200Vより大
きくすることが好ましく、さらに成膜工程の当初に40
0Vより高くし、終盤に200から400Vとすること
により、高密着性高硬度膜を形成することができる
【0011】なお、特に、第1原料ガスをベンゼン(C
66)ガスとし、第2原料ガスをシラン(SiH4)ガス
とすると、電子ビーム励起プラズマの密度が高くなり、
シリコン含有ダイヤモンドライク炭素膜をより高速に成
膜することができる。さらに、シリコン含有ダイヤモン
ドライク炭素膜を形成した後に、真空容器に炭素を含有
する第3原料ガスを導入し、電子ビームガンにより加速
した電子ビームを照射して電離解離することにより第3
原料ガスの電子ビーム励起プラズマを生成し、被コーテ
ィング物に負のバイアス電圧を印加することにより、炭
素と水素を主成分とするダイヤモンドライク炭素(DL
C)膜をシリコン含有ダイヤモンドライク炭素膜の上に
形成する第2の成膜工程をさらに有するようにしてもよ
い。なお、第3原料ガスはベンゼン(C66)ガスであ
ってもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について実施例に基
づき図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の高
硬度高密着性DLC膜の成膜方法を実施する電子ビーム
励起プラズマ装置の1例を表す概略構成図、図2から図
5は本発明の高硬度高密着性DLC膜の成膜方法の第1
の実施例における実施結果を表すグラフ、図6と図7は
本発明の成膜方法の第2の実施例における実施結果を表
すグラフである。
【0013】
【実施例1】本発明の高硬度高密着性DLC膜の成膜方
法を実施する電子ビーム励起プラズマCVD装置は、電
子ビームガン1とプラズマプロセス室3からなる。電子
ビームガン1はフィラメント11、中間電極12、放電
電極13と、プラズマプロセス室3内に設けられた加速
電極14とからなる。
【0014】フィラメント11には、加熱電源15から
加熱電流が供給され熱電子を放出する。フィラメント1
1と放電電極13の間には放電電源16からの放電電圧
が印加される。中間電極12は放電電極13と抵抗を介
して接続されている。放電電極13と加速電極14の間
には加速電源17からの加速電圧が印加される。放電電
極13には空芯コイル18が組み込まれている。プラズ
マプロセス室3は真空容器であって、側面に被コーティ
ング物を支持する基板ホルダー31が設けられ、基板ホ
ルダー31は高周波電源32に接続されていて高周波
(RF)により負のバイアス電圧を印加することができ
る。
【0015】電子ビームガン1にアルゴンなどの不活性
ガスを供給しながらフィラメント11を加熱し放電電圧
を印加すると、熱電子流に誘導されて成長した放電電流
が不活性ガスをプラズマ化し、プラズマがフィラメント
11と放電電極13の間に充満する。さらに、加速電極
14に印加された加速電圧により、不活性ガスのプラズ
マから大電流の電子ビームが放電電極13の開口から引
き出され加速してプラズマプロセス室3内に流入する。
空芯コイル18の働きにより電子ビームの形状を整えて
電極が損耗を受けないようになっている。
【0016】プラズマプロセス室3には原料ガスが供給
されていて、電子流により励起されプラズマ化して電子
ビーム励起プラズマが生成する。基板ホルダー31は、
放電電極13から加速電極14に流入する電子ビームに
対して平行の向きに設置されている。基板ホルダー31
にはRFにより負のバイアス電圧が印加されて、基板ホ
ルダー31上に保持された被コーティング物の表面にプ
ラズマ中のイオン成分が引き付けられて堆積し薄膜を生
成する。基板ホルダー31は冷却管33に冷却水を循環
して水冷することにより被コーティング物の昇温を防い
でいる。
【0017】浸炭された機械構造用材料(SCM42
0)の基板を基板ホルダー31上にセットし、プラズマ
プロセス室3内を10-4Pa以下まで排気し、アルゴン
プラズマを発生させて基板表面を洗浄した。次に、原料
ガスとしてメタン(CH4)ガスとシラン(SiH4)ガ
スをプラズマプロセス室3内に供給し、電子ビーム電流
を14A、電子の加速電圧を60Vとして電子ビーム励
起プラズマを生成した。プラズマ圧力は1.3Paとし
た。成膜中は基板ホルダー31を水冷した。また、基板
には、2MHzのRF電源32によるRFのセルフバイ
アスにより、負のバイアス電圧400Vを印加した。こ
のようにして、基板上にシリコン(Si)含有ダイヤモ
ンドライク炭素(DLC)膜を成膜させた。成膜時間が
45分のときに、成膜したSi含有DLC膜の厚さは1
μmあった。
【0018】CH4ガスとSiH4ガスの流量比を変えて
成膜を行った試料について、微小押込硬度計(エリオニ
クス製ENT−1100)によるダイナミック硬度測定
と超薄膜スクラッチ試験機(レスカ製CSR−02)に
よるスクラッチ臨界荷重の測定を行った。ダイナミック
硬度が高ければコーティング層の硬度が高く、スクラッ
チ臨界加重が大きければコーティング層の密着性が高い
ことになる。図2は、原料ガス中のSiH4ガスの流量比
を変えたときの、硬度と密着性の変化を測定した結果を
示す図面である。横軸にSiH4ガスのCH4ガスに対す
る流量比(%)をとり、□点を繋いだ曲線が右側縦軸に
ふったmN単位スケールに基づいてスクラッチ臨界荷重
を表し、○点を繋いだ曲線が右側縦軸にふったGPa単
位スケールに基づいてダイナミック硬度を表す。
【0019】図2を参照すると、ダイナミック硬度は、
SiH4ガス流量比がほぼ10%のところで約17GPa
のピーク値をもつ。また、スクラッチ臨界荷重は、Si
4ガス流量比の増加と共に徐々に増加し、約40%の
ところでピークを示し、それ以上では緩やかに減少す
る。図2に示した結果を参考にして、成膜の初期にはS
iH4ガス流量比を約40%とし、時間と共にCH4ガス
の流量を増加させSiH4ガス流量を減少させて、最終的
にSiH4ガス流量比を約10%として成膜を終了した。
このように、CH4ガスとSiH4ガスの流量比を制御し
て基板に近いほどシリコン含有率の高い傾斜組成を持た
せて高硬度性と高密着性を両立させたシリコン含有DL
C層を形成することにより、浸炭されたSCM420の
基板にSi含有DLC膜をコーティングした高硬度の機
械構造用材料を得た。
【0020】さらに、この成膜条件下で負のバイアス電
圧を変えて成膜し、同様にダイナミック硬度測定とスク
ラッチ臨界荷重の測定を行った。図3は、負のバイアス
電圧を横軸にとって、測定結果を表したグラフである。
□点を繋いだ曲線が右側縦軸によりスクラッチ臨界荷重
を表し、○点を繋いだ曲線が右側縦軸によりダイナミッ
ク硬度を表す。図3において、バイアス電圧が150V
の場合は大気に曝露した時に直ちに剥離して測定ができ
なかった。
【0021】スクラッチ臨界荷重は、バイアス電圧の増
加と共に増加し、400Vで75mNに達し、それ以上
ではほぼ横這いになって変化しなかった。また、ダイナ
ミック硬度は、バイアス電圧300Vと400Vで13
GPaという値が得られたがバイアス電圧の増加と共に
減少した。従って、負のバイアス電圧を400Vとした
ときに、硬度と密着性が両立した良質なコーティング層
が得られる。さらに、成膜工程初期に400V以上の負
のバイアス電圧を印加し、終盤で400V以下200V
程度までの負のバイアス電圧に下げるようにすると、よ
り密着性が高くより硬度が高い膜が得られる。
【0022】次に、負のバイアス電圧を400Vとして
作製した試料をボールオンディスク試験にかけた。本実
施例において行ったボールオンディスク試験は、ボール
オンディスク試験機を用い、通常空気雰囲気中、無潤滑
油条件下で、円盤状の試料を0.1m/sの速度で回転
させながら所定の荷重で直径5mmのSUJ2製ボール
を押し付けて摩擦係数を測定する試験である。荷重を
0.2kgfから3.2kgfまで徐々に増加して測定
した。グラフ中の○点における各荷重で5分間ずつ、距
離にして30mずつ摺動させて摩擦係数を測定し、膜の
剥離により摩擦係数が急に上昇した時の荷重から密着性
を評価する。
【0023】図4は、ボールオンディスク試験の結果を
示すグラフである。横軸は、ボールに印加する荷重に代
えて、ヘルツ式により算出したヘルツ面圧(kgf/m
2)をプロットした。縦軸は摩擦係数である。ヘルツ
面圧の増加とともに摩擦係数が減少する傾向があり、ヘ
ルツ面圧230kgf/mm2(荷重3.2kgf)を
印加したときに膜が剥離したが、膜が剥離する時点まで
0.03程度の非常に低い摩擦係数が得られた。図4か
ら、電子ビーム励起プラズマCVDを用いて被コーティ
ング物に負のバイアス電圧を400V印加しSiH4ガス
流量比を初期と終期で変化させて成膜した材料は、極め
て高い面圧においても低い摩擦係数を持ち良い密着性を
示すことが分かる。
【0024】図5は、ベンゼン(C66)ガスを使用し
てDLC膜を成膜したときの成膜速度およびダイナミッ
ク硬度を示すグラフである。横軸は、DLCを堆積する
基板と電子ビーム軸の距離を表す。縦軸は、右側が□点
を繋ぐ曲線に対する堆積速度(μm/hr)を表し、左
側が○点を繋ぐ曲線に対するダイナミック硬度(GP
a)を表す。ベンゼンガスを使用する場合は、基板が電
子ビームの中心軸に近いほど成膜速度が速くなり、しか
も硬度が高くなる傾向が見られる。この傾向は、電子ビ
ーム励起プラズマCVDの持つ高い分解能力により、電
子ビームの軸に近いほどプラズマ中のベンゼンの分解の
程度が高くなることと関係があると考えられる。基板と
電子ビーム軸の距離が145mmでは、12GPaの高
い硬度を有するDLC膜を約30μm/hrの高速で成
膜することができた。したがって、C66ガスとSiH4
ガスを使用することにより、高硬度高密着性Si含有D
LC膜の高速成膜を実現することができる。
【0025】
【実施例2】本実施例は、実施例1と同じ電子ビーム励
起プラズマCVD装置を用いて、被コーティング物の表
面に形成したSi含有DLC膜の上にさらにDLC膜を
堆積して、高硬度高密着性コーティングを行うものであ
る。プラズマプロセス室3内に浸炭したSCM420の
基板をセットし、10-4Pa以下まで排気した後、アル
ゴンプラズマで基板表面を洗浄した。原料ガスとしてC
4ガスとSiH4ガスを炭素に対するシリコンの流量比
36%でプラズマプロセス室3内に供給し、電子ビーム
電流を14A、電子の加速電圧を60Vとして圧力1.
3Paの電子ビーム励起プラズマを生成した。成膜中は
基板ホルダー31を水冷しながら、基板に2MHzのR
Fにより負のバイアス電圧400Vを印加した。成膜時
間を27分として、基板上に厚さ0.6μmのSi含有
DLC膜を成膜させた。
【0026】その後、原料ガスをCH4ガスとして、電
流10A、加速電圧60Vの電子ビームを照射して圧力
0.67Paの電子ビーム励起プラズマを生成した。基
板ホルダー31を水冷しながら、基板に2MHzのRF
により負のバイアス電圧400Vを印加して、Si含有
DLC膜上に炭素と水素を主成分とするDLC膜を成膜
した。成膜時間を63分としたとき、表面に形成された
DLC膜の厚さは1μmになった。
【0027】さらに、この成膜条件下で負のバイアス電
圧を変えて成膜した試料について、ダイナミック硬度測
定とスクラッチ臨界荷重の測定を行った。図6は、上記
測定の結果を示すグラフである。縦軸右側の臨界荷重の
数値が大きくなっていることを除き、横軸、縦軸の表す
変数は図3におけるものと同じである。なお、バイアス
電圧が150Vの場合は大気に曝露した時に剥離して測
定ができなかった。
【0028】図6から明らかなように、スクラッチ臨界
荷重は、負のバイアス電圧が200V程度から増加する
と共に増加し、バイアス電圧400V付近で極大値14
5mNを取り、それ以上のバイアス電圧をかけると減少
して、表面のDLC膜がない実施例1におけると同じよ
うな値になった。また、ダイナミック硬度は余り変化が
無く、バイアス電圧400V付近で14GPa程度の値
が得られた。この結果から、基板表面に成膜したSi含
有DLC膜の上にさらに炭素と水素からなるDLC膜を
成膜することにより、硬度を維持しながら密着性を向上
させることができること、および、負のバイアス電圧は
400V程度が適当であることが分かる。
【0029】図7に、上記試料についてボールオンディ
スク試験を行った結果を示す。図7は図4と同じ読み方
をすればよい。なお、図7には負のバイアス電圧を40
0Vとして成膜した試料についてのみ表示してある。図
7によると、摩擦係数はヘルツ面圧が増加するに従って
減少する傾向があり、多少のばらつきがあるが0.06
程度の値が得られた。試験機の測定限界である荷重3.
7kg、ヘルツ面圧240kgf/mm2を印加しても
膜の剥離は起こらず、基板表面に成膜したSi含有DL
C膜の上にDLC膜を成膜することにより、密着性が向
上したことが分かる。なお、本実施例においてもベンゼ
ンガスをプロセスガスとして利用することにより成膜速
度が一段と速まり製造コストを低下させることはいうま
でもない。
【0030】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明の高硬度高密
着性DLC膜の成膜方法は、密着性の良い硬度の高いD
LC膜を高速成膜させることが可能で、低コストな潤滑
性に優れたコーティングを構造用材料に施すことがで
き、エンジン等の機械部品への量産的適用が容易にな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高硬度高密着性DLC膜の成膜方法を
実施する電子ビーム励起プラズマ装置の1例を表す概略
構成図である。
【図2】本発明の成膜方法の第1の実施例においてシラ
ンガス流量比を変化させたときの性能測定結果を表すグ
ラフである。
【図3】本実施例において負のバイアス電圧を変化させ
たときの性能測定結果を表すグラフである。
【図4】本実施例により成膜されたコーティング膜の摩
擦係数測定結果を表すグラフである。
【図5】本実施例においてベンゼンガスを用いたときの
性能測定結果を表すグラフである。
【図6】本発明の成膜方法の第2の実施例において負の
バイアス電圧を変化させたときの性能測定結果を表すグ
ラフである。
【図7】本実施例により成膜されたコーティング膜の摩
擦係数測定結果を表すグラフである。
【符号の説明】
1 電子ビームガン 11 フィラメント 12 中間電極 13 放電電極 14 加速電極 15 加熱電源 16 放電電源 17 加速電源 18 空芯コイル 3 プラズマプロセス室 31 基板ホルダー 32 高周波電源 33 冷却管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森 幸隆 千葉県野田市二ツ塚118番地 川崎重工 業株式会社 野田工場内 (72)発明者 東海 正國 千葉県野田市二ツ塚118番地 川崎重工 業株式会社 野田工場内 (56)参考文献 特開 平10−265955(JP,A) 特開 平3−240957(JP,A) 特開 平10−291895(JP,A) 特開 平6−10135(JP,A) 特開 平5−124875(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 16/00 - 16/56 C01B 31/06 JICSTファイル(JOIS)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被コーティング物を収容した真空容器に
    炭素を含有する第1原料ガスとシリコンを含有する第2
    原料ガスを導入し、電子ビームガンにより加速した電子
    ビームを照射して前記第1と第2の原料ガスを電離解離
    することにより電子ビーム励起プラズマを生成し、前記
    被コーティング物に負のバイアス電圧を印加することに
    より、シリコン含有ダイヤモンドライク炭素(DLC)
    膜を前記被コーティング物の表面に成膜する成膜工程を
    有し、該成膜工程中に、前記第1原料ガスに対する第2
    原料ガスの流量比を当初で高く後に低くなるように変化
    させることを特徴とする高硬度高密着性DLC膜の成膜
    方法。
  2. 【請求項2】 前記第1原料ガスの炭素に対する第2原
    料ガスのシリコンの流量比が成膜工程初期に30%以上
    であり終期に30%以下とすることを特徴とする請求項
    1記載の高硬度高密着性DLC膜の成膜方法。
  3. 【請求項3】 前記成膜工程は被コーティング物の表面
    に初めに密着性の高い膜を形成しその上に硬度の高い膜
    を形成するように前記原料ガス比率とバイアス電圧の条
    件を工程中に変化させることを特徴とする請求項1また
    は2記載の高硬度高密着性DLC膜の成膜方法。
  4. 【請求項4】 前記負のバイアス電圧は200Vより大
    きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載
    の高硬度高密着性DLC膜の成膜方法。
  5. 【請求項5】 前記負のバイアス電圧は前記成膜工程の
    当初に400Vより高く終盤に200から400Vとす
    ることを特徴とする請求項4記載の高硬度高密着性DL
    C膜の成膜方法。
  6. 【請求項6】 前記第1原料ガスがベンゼン(C
    )ガスで前記第2原料ガスがシラン(SiH
    ガスであることを特徴とする請求項1からのいずれか
    に記載の高硬度高密着性DLC膜の成膜方法。
  7. 【請求項7】 前記成膜工程によりシリコン含有ダイヤ
    モンドライク炭素膜を形成した後に、前記真空容器に炭
    素を含有する第3原料ガスを導入し、電子ビームガンに
    より加速した電子ビームを照射して電離解離することに
    より第3原料ガスの電子ビーム励起プラズマを生成し、
    被コーティング物に負のバイアス電圧を印加することに
    より、炭素と水素を主成分とするダイヤモンドライク炭
    素(DLC)膜を形成する第2の成膜工程をさらに有す
    ることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の
    高硬度高密着性DLC膜の成膜方法。
  8. 【請求項8】 前記第3原料ガスがベンゼン(C
    )ガスであることを特徴とする請求項記載の高
    硬度高密着性DLC膜の成膜方法。
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