以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車体上方向、矢印FRを車体前方向、矢印LHを車体左方向とする。また、以下の説明で、特記することなく前後、上下、左右の方向を記載した場合は、車体前後方向の前後、車体上下方向の上下、車体左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。更に、本実施形態に係る車両骨格構造10は、車両12の前部側及び後部側に適用することができるが、ここでは車両12の後部側を例に採って説明する。
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る車両骨格構造10について説明する。図1〜図3に示されるように、車両12の後部側には、車体後方側(車体前後方向外側)へ向かってストレートに延在するリアサイドメンバアッパ(以下「アッパメンバ」という)14が左右一対で配置されている。各アッパメンバ14は、一定断面とされたアルミニウム等の軽量金属材の押出成形によって矩形閉断面形状に形成されており、剛性及び強度の高い車両骨格部材となっている。
そして、各アッパメンバ14の前端部(車体前後方向内側端部)には、それぞれ平板状のフランジ部16が固着(溶接)されており、各フランジ部16が、リアパネル20の上部側における左右両側に、それぞれボルト締結によって取り付けられている。なお、リアパネル20は、車室(図示省略)の後壁を構成する剛性及び強度の高い車両骨格部材であり、例えば炭素繊維強化樹脂(CFRP)や金属で成形されている。
更に、各アッパメンバ14の長手方向中途部における下面には、それぞれサスペンション22(図2参照)のショックアブソーバ22A(図11参照)等を取り付けるためのサスペンション支持部としてのアッパブラケット18(図1参照)が設けられている。なお、各アッパメンバ14のアッパブラケット18が設けられている長手方向中途部を、車幅方向に延在するアッパクロスメンバ(図示省略)によって連結して補強するようにしてもよい。このアッパクロスメンバも、一定断面とされたアルミニウム等の軽量金属材の押出成形によって矩形閉断面形状に形成されている。
車幅方向から見た側面視で、車両12の後部側で、かつ各アッパメンバ14の車体下方側には、車体後方上側(車体前後方向外側上方)へ向かってストレートに延在するリアサイドメンバロア(以下「ロアメンバ」という)24が左右一対で配置されている。各ロアメンバ24は、一定断面とされたアルミニウム等の軽量金属材の押出成形によって矩形閉断面形状に形成されており、剛性及び強度の高い車両骨格部材となっている。
そして、各ロアメンバ24の前端部(車体前後方向内側端部)には、それぞれ略平板状のフランジ部26が固着(溶接)されており、各フランジ部26が、リアパネル20の下部側における左右両側に、それぞれボルト締結によって取り付けられている。なお、各ロアメンバ24の前端部は、リアパネル20との結合強度(剛性)を高めるために、後端部側よりも太く形成されていてもよく、リアパネル20に結合し易いように、側面視で車体前方側へ向かうように若干湾曲されていてもよい。
更に、各ロアメンバ24の前端部における下面には、それぞれサスペンション22のロアアーム23(図11参照)を取り付けるためのロアブラケット28(図1参照)が設けられている。なお、各ロアメンバ24のロアブラケット28が設けられている前端部を、車幅方向に延在するロアクロスメンバ64(図7参照)によって連結して補強するようにしてもよい。このロアクロスメンバ64も、一定断面とされたアルミニウム等の軽量金属材の押出成形によって矩形閉断面形状に形成されている。
また、各ロアメンバ24の断面積は、各アッパメンバ14の断面積よりも大きく形成されている。つまり、各ロアメンバ24は、各アッパメンバ14よりも太い矩形閉断面形状に形成されている。そして、各アッパメンバ14は、各ロアメンバ24よりも車幅方向外側に配置されている(図3参照)。なお、各アッパメンバ14は、例えば意匠的に、平面視で車体後方側が車幅方向内側へ向かってカーブするような曲率を有する形状とされていてもよい。
また、各アッパメンバ14の後端部(車体前後方向外側端部)と、各ロアメンバ24の後端部(車体前後方向外側端部)とが、それぞれ左右一対の結合部材30によって結合されている。各結合部材30は、アルミニウム等の軽量金属材により、車体前方側が開口された筐体状に形成されている。
詳細に説明すると、各結合部材30は、頂点を車体後方側へ向けた側面視略三角形状の外壁32及び内壁34と、外壁32と内壁34とを車幅方向で連結するとともに車体上方側及び車体後方側を閉塞する連結壁36と、で構成されており、車体前方側が開放されている。つまり、各結合部材30の車体前方側には、開口部38が形成されている。
したがって、アッパメンバ14の後端部及びロアメンバ24の後端部は、それぞれ車体前方側及び車体前方下側から結合部材30の開口部38内へ挿入され、その開口部38の縁部38Aにアーク溶接等によって接合されている。これにより、アッパメンバ14の後端部とロアメンバ24の後端部とが結合部材30を介して結合され、リアパネル20と各アッパメンバ14と各ロアメンバ24とで、側面視略三角形状(側面視で各ロアメンバ24を斜辺とする略直角三角形状)のトラス構造(トライアングルフレーム)が左右対称に形成されている。
また、左右の結合部材30同士が、車幅方向に延在するクロスメンバ40によって連結されている。クロスメンバ40は、一定断面とされたアルミニウム等の軽量金属材の押出成形によって閉断面形状に形成されており、例えば結合部材30の外壁32及び内壁34と、外形がほぼ相似形となる断面視略三角形状に形成されている。
そして、結合部材30の内壁34には、クロスメンバ40の左右両端部をそれぞれ挿入(嵌合)させる凹部34A(図1参照)が形成されている。したがって、クロスメンバ40は、その左右両端部が各凹部34Aに挿入(嵌合)されて各結合部材30にアーク溶接等によって接合されることで、各結合部材30の間を連結するようになっている。
また、ロアブラケット28よりも車体後方側における各ロアメンバ24の内壁24Aには、エンジンマウント部42を設けるためのパワーユニット支持部としての側面視円形状の開口部25が形成されている。なお、開口部25の周縁における内壁24Aの複数の位置(例えば4箇所)には、ボルト56を挿通させるための孔部24Bが形成されており、内壁24Aの内面には、各孔部24Bと同軸的にウエルドナット58が設けられている(図4参照)。
図4に示されるように、エンジンマウント部42は、エンジンを含むパワーユニット62(図2、図3参照)側から車幅方向外側へ延在された金属製で円柱状の支持体44と、その支持体44の車幅方向外側端部が中央部(中心部)に刺し通されて固定されたゴム製で円柱状の弾性体46と、その弾性体46を覆う有底円筒状で断面略ハット型形状のカバー体48と、を有している。
カバー体48の略矩形状とされたフランジ部48Aを除く外径は、開口部25の内径とほぼ同一とされており、カバー体48のフランジ部48Aにおける各コーナー部には、ボルト56を挿通させるための孔部48Bが形成されている。したがって、エンジンマウント部42は、カバー体48が開口部25に挿入されて、フランジ部48Aの各孔部48Bと、内壁24Aに形成された各孔部24Bとが連通され、各孔部48B、24Bにボルト56が挿通されてウエルドナット58に螺合されることにより、ロアメンバ24に固定されている。
また、図1〜図3に示されるように、各ロアメンバ24の開口部25が形成された部位の下面側には、支持部材としての左右一対のエクステンションメンバ50の前端部が、それぞれボルト締結によって取り付けられている。各エクステンションメンバ50は、一定断面とされたアルミニウム等の軽量金属材の押出成形によって矩形閉断面形状に形成されており、その前端部に形成されたフランジ部52、54がロアメンバ24にボルト締結されている。
詳細に説明すると、図4に示されるように、各エクステンションメンバ50の前端部における車幅方向内側には、カバー体48のフランジ部48Aにおける下部を車幅方向内側から覆うフランジ部52が一体に形成されている。フランジ部52は、開口部25にほぼ達する程度の高さに形成されるとともに、ロアメンバ24の長手方向に沿った長さが開口部25の直径以上の長さとされている。そして、そのフランジ部52には、ボルト56を挿通させるための孔部52Aが複数(例えば2個)形成されている。
したがって、各エクステンションメンバ50のフランジ部52は、その孔部52Aと、フランジ部48Aの孔部48Bと、内壁24Aに形成された孔部24Bとが連通され、各孔部52A、48B、24Bにボルト56が挿通されてウエルドナット58に螺合されることにより、ロアメンバ24に締結されている。
一方、各エクステンションメンバ50の前端部における車幅方向外側には、ロアメンバ24の外壁24Cを車幅方向外側から覆うフランジ部54が一体に形成されている。フランジ部54は、フランジ部52とほぼ同じ高さに形成されるとともに、ロアメンバ24の長手方向に沿った長さが開口部25の直径以上の長さとされている。そして、そのフランジ部54には、ボルト56を挿通させるための孔部54Aが複数(例えば2個)形成されている。
また、各ロアメンバ24の外壁24Cには、ボルト56を挿通させるための孔部24Dが複数(例えば2個)形成されており、各孔部24Dは、各孔部24Bと車幅方向で連通する位置(側面視で同一位置)に形成されている。そして、各ロアメンバ24の外壁24Cの内面には、各孔部24Dと同軸的にウエルドナット58が設けられている。
したがって、各エクステンションメンバ50のフランジ部54は、その孔部54Aと、外壁24Cに形成された孔部24Dとが連通され、各孔部54A、24Dにボルト56が挿通されてウエルドナット58に螺合されることにより、ロアメンバ24に締結されている。
以上により、各エクステンションメンバ50の前端部が各ロアメンバ24に固定され、各エクステンションメンバ50の前端部が、ロアメンバ24の開口部25が形成された部位を効率よく補強できる(強度低下を抑制できる)構成になっている。
また、図1〜図3に示されるように、各エクステンションメンバ50の後端部には、車幅方向に延在するリアバンパリインフォースメント60が架設されている。このリアバンパリインフォースメント60も、一定断面とされたアルミニウム等の軽量金属材の押出成形によって閉断面形状に形成されており、各エクステンションメンバ50の後端部にアーク溶接等によって接合されている。
また、アッパメンバ14の車幅方向外側を向く壁部としての外壁14Aには、アッパメンバ14の長手方向に沿って延在する溝部15が形成されている。アッパメンバ14の外壁14Aに溝部15を形成すると、例えばスライドドア(図示省略)を設ける場合に、アッパメンバ14をスライドレールとして活用することができるので、部品点数の低減を図ることができる。
なお、アッパメンバ14、ロアメンバ24、クロスメンバ40、エクステンションメンバ50、リアバンパリインフォースメント60は、それぞれ一定断面とされた軽量金属材の押出成形によって形成される構成に限定されるものではなく、例えば図示しないアウタパネルとインナパネルとを接合することで閉断面形状に形成される構成とされていてもよい。
特に、ロアブラケット28が設けられるロアメンバ24の前端部は、後端部側よりも太く、かつ側面視で車体前方側へ向かって若干湾曲されるように形成される場合があるので、アウタパネルとインナパネルとを接合することで閉断面形状に形成される構成とされていてもよい。また、リアバンパリインフォースメント60は、荷重の入力により発生する断面変形を抑制するために、閉断面内に1枚又は複数枚の隔壁(図示省略)が一体に形成された矩形閉断面形状とされていてもよい。
以上のような構成とされた第1実施形態に係る車両骨格構造10において、次にその作用について説明する。
図2に示されるように、アッパメンバ14には、サスペンション22のショックアブソーバ22A(図11参照)等により、車体上方側へ向かう荷重Fuが入力される。一方、ロアメンバ24には、パワーユニット62により、車体下方側へ向かう荷重Fdが入力される。
ここで、アッパメンバ14は、その前端部がリアパネル20に結合され、車体後方側へ向かって延在されている。そして、ロアメンバ24は、その前端部がリアパネル20に結合され、車体後方上側へ向かって延在されている。そして更に、アッパメンバ14の後端部とロアメンバ24の後端部とが結合部材30によって結合されている。
つまり、車両骨格部材であるリアパネル20とアッパメンバ14とロアメンバ24とで、側面視略三角形状(側面視でロアメンバ24を斜辺とする略直角三角形状)のトラス構造(トライアングルフレーム)が形成されている。したがって、アッパメンバ14及びロアメンバ24は、入力された荷重に対する剛性及び強度が高く、変形し難い。
よって、パワーユニット62によりロアメンバ24に入力された車体下方側へ向かう荷重Fdの少なくとも一部を、サスペンション22のショックアブソーバ22A等によりアッパメンバ14に入力された車体上方側へ向かう荷重Fuによって打ち消すことができる。これにより、パワーユニット62をロアメンバ24によって安定して支持することができる。
なお、サスペンション22のショックアブソーバ22A等によりアッパメンバ14に入力された車体上方側へ向かう荷重Fuの少なくとも一部を、パワーユニット62によりロアメンバ24に入力された車体下方側へ向かう荷重Fdによって打ち消すこともできる。つまり、アッパメンバ14及びロアメンバ24の何れか一方に入力される荷重の少なくとも一部を、アッパメンバ14及びロアメンバ24の何れか他方に入力される荷重によって打ち消すことができ、アッパメンバ14及びロアメンバ24の何れか一方に入力される荷重を軽減させることができる。
また、左右の結合部材30同士がクロスメンバ40によって連結されている。したがって、左右何れか一方のアッパメンバ14に入力された荷重や左右何れか一方のロアメンバ24に入力された荷重を、それぞれ左右何れか他方のアッパメンバ14や左右何れか他方のロアメンバ24にも伝達させて分散させることができる。よって、左右何れか一方のアッパメンバ14や左右何れか一方のロアメンバ24への荷重集中を軽減させることができる。
また、車両12が後面衝突することにより、リアバンパリインフォースメント60には、車体後方側から衝突荷重が入力される。すると、各エクステンションメンバ50が軸方向(車体前後方向)に効率よく圧壊し、その衝突荷重の一部を吸収する。つまり、各エクステンションメンバ50は、エネルギー吸収体(クラッシュボックス)としても機能するようになっている。そして、各エクステンションメンバ50で吸収し切れなかった衝突荷重が各ロアメンバ24に伝達される。
ここで、上記したように、リアパネル20とアッパメンバ14とロアメンバ24とで、側面視略三角形状(側面視でロアメンバ24を斜辺とする略直角三角形状)のトラス構造が形成されている。そして、アッパメンバ14の後端部とロアメンバ24の後端部とを結合する各結合部材30が、クロスメンバ40によって連結されている。更に、各エクステンションメンバ50の前端部が、各ロアメンバ24の開口部25が形成された部位に締結されている。
つまり、各ロアメンバ24が、各エクステンションメンバ50によって効率よく補強され、その強度(剛性)低下が抑制されている。そして、各ロアメンバ24は、各アッパメンバ14よりも太く(断面積が大きく)形成されている。したがって、各ロアメンバ24に衝突荷重が伝達されても、各ロアメンバ24は変形し難く(剛性及び強度が高く)、各ロアメンバ24が座屈(折曲変形)するのが抑制又は防止される。
よって、各ロアメンバ24に伝達された衝突荷重は、各アッパメンバ14やリアパネル20に効率よく伝達されて分散され、各ロアメンバ24、各アッパメンバ14及びリアパネル20によって効率よく吸収される。すなわち、各ロアメンバ24や各アッパメンバ14への荷重集中を軽減させることができ、ロアメンバ24やアッパメンバ14を鋼板よりも強度の低いアルミニウム等の軽量金属材で構成しても、車両12の衝突安全性能を確保することができる。
また、アッパメンバ14やロアメンバ24において、板厚の増加やリインフォースメントによる補強(部品点数の増加)などが不要となる(簡素な構造となる)ため、車両12の軽量化を実現することができる。そして、アッパメンバ14やロアメンバ24の製造工程を低減させることができるので、設備投資(製造コスト)を削減できるとともに、アッパメンバ14やロアメンバ24の生産性を向上させることができる。
また、サスペンション22のロアアーム23を取り付けるためのロアブラケット28は、各ロアメンバ24のロアクロスメンバ64が連結される部位に設けられ、サスペンション22のショックアブソーバ22A等を取り付けるためのアッパブラケット18は、各アッパメンバ14のアッパクロスメンバが連結される部位に設けられている。
したがって、ロアクロスメンバ64やアッパクロスメンバを設けることにより、ロアアーム23やショックアブソーバ22A等から入力される荷重に対するロアメンバ24及びアッパメンバ14の支持剛性(耐久強度)を向上させることができる。よって、車両12の操縦安定性能を向上させることができる。
なお、ロアメンバ24は、側面視で、車体後方上側へ向かってストレートに形成される構成に限定されるものではなく、サスペンション22やパワーユニット62の仕様により、例えば図5に示されるように、側面視で、車体後方上側へ向かってカーブするような湾曲形状に形成されていてもよい。また、ロアメンバ24は、例えば図6に示されるように、側面視で、車体後方側へ向かって延在する部位と車体後方上側へ向かって延在する部位とを有する屈曲形状に形成されていてもよい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る車両骨格構造10について説明する。なお、上記第1実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
図7に示されるように、第2実施形態に係る車両骨格構造10では、結合部材30及びクロスメンバ40の形状が、第1実施形態とは異なっている。すなわち、結合部材30は、平面視略扇型形状に形成されるとともに、車体前方側と車幅方向内側が開口された矩形閉断面形状に形成されており、その下壁31には、矩形状の凹部(図示省略)が形成されている。そして、クロスメンバ40は、断面矩形状に形成されている。
したがって、結合部材30の車体前方側へ開口する開口部37にアッパメンバ14の後端部が挿入されて接合され、結合部材30の下壁31に形成された凹部にロアメンバ24の上端部が挿入(嵌合)されて接合されることにより、リアパネル20と各アッパメンバ14と各ロアメンバ24とで、側面視略三角形状のトラス構造(トライアングルフレーム)が左右対称に形成されている。
そして、結合部材30の車幅方向内側へ開口する開口部39にクロスメンバ40の左右両端部がそれぞれ挿入されて接合されることにより、左右の結合部材30同士が、そのクロスメンバ40によって連結されている。このような構成とされた結合部材30及びクロスメンバ40を備えた第2実施形態に係る車両骨格構造10であっても、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、この第2実施形態に係る車両骨格構造10では、ロアメンバ24の車体後方側へ向かって延在する部位が、図6に示されたものよりも更に延長されている(以下、その部位を「前後ストレート部24F」という)。そして、図8に示されるように、各ロアメンバ24の前後ストレート部24Fにおける上壁24Eと、リアパネル20の車体上下方向中央部とが、それぞれ左右一対の連結メンバ68によって連結されている。
詳細に説明すると、各ロアメンバ24の前端部に固着されている各フランジ部26の上部が、車体上方側へ一体に延長された上側フランジ部27とされ、各上側フランジ部27が、各フランジ部16よりも車体下方側のリアパネル20に、それぞれボルト締結によって取り付けられている。そして、各上側フランジ部27に、それぞれ連結メンバ68の前端部が結合(溶接)されている。
各連結メンバ68は、アルミニウム等の軽量金属材の押出成形によって、前端側が後端側よりも断面が小さくなる矩形閉断面形状に形成されており、剛性及び強度の高い車両骨格部材となっている。そして、各前端部が上側フランジ部27を介してリアパネル20に結合された各連結メンバ68は、車体後方下側に向かって延在され、その各後端部が、それぞれ各ロアメンバ24の前後ストレート部24Fにおける上壁24Eに結合(溶接)されている。
したがって、各連結メンバ68により、リアパネル20と各ロアメンバ24とをより強固に結合することができ、各ロアメンバ24を含む車両骨格部材の剛性及び強度を更に向上させることができる。よって、車両12の後面衝突時において、ロアメンバ24の座屈(塑性変形)を抑制することができる。
また、図7〜図9に示されるように、各ロアメンバ24において、各連結メンバ68の後端部が結合された上壁24Eの直下における下壁24G同士が、車幅方向に延在する第1ロアクロスメンバとしてのロアクロスメンバ64によって連結されている。そして、各連結メンバ68の長手方向略中央部同士が、車幅方向に延在する第2ロアクロスメンバとしての連結クロスメンバ66によって連結されている。
連結クロスメンバ66も、ロアクロスメンバ64と同様に、一定断面とされたアルミニウム等の軽量金属材の押出成形によって矩形閉断面形状に形成されており、剛性及び強度の高い車両骨格部材となっている。したがって、車両12の後面衝突時において、ロアメンバ24及び連結メンバ68が車幅方向外側又は内側へ倒れ込むのを抑制することができる。なお、ロアクロスメンバ64の車幅方向中央部には、パワーユニット62の前端部を支持するロールロッド構造のマウントブラケット(図示省略)が設けられるようになっている。
また、図7〜図9に示されるように、ロアメンバ24及び連結メンバ68よりも車幅方向内側で、かつロアクロスメンバ64及び連結クロスメンバ66よりも車体前方側(ロアクロスメンバ64及び連結クロスメンバ66とリアパネル20との間)には、燃料タンク70が配置されている。
詳細に説明すると、燃料タンク70は、車幅方向が長手方向とされた略直方体形状に形成されており、ロアメンバ24及び連結メンバ68と、ロアクロスメンバ64及び連結クロスメンバ66と、リアパネル20とで囲まれた強固な領域に配置されている。したがって、車両12の後面衝突時において、燃料タンク70を保護することができる。
つまり、車両12の後面衝突時において、図10に示されるように、パワーユニット62が車体前方側(燃料タンク70側)へ移動してきても、そのパワーユニット62の車体前方側への移動を連結クロスメンバ66やロアクロスメンバ64によって阻止することができる。
よって、車両12の後面衝突時に、パワーユニット62が燃料タンク70に衝突するのを防止することができ、燃料タンク70が破損して燃料漏れなどの不具合が発生するのを防止することができる。そして、パワーユニット62や燃料タンク70がリアパネル20側、即ち車室側へ移動するのを防止することができるため、車両12の衝突安全性能を向上させることができる。
<第3実施形態>
最後に、第3実施形態に係る車両骨格構造10について説明する。なお、上記第1実施形態及び第2実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
図11に示されるように、第3実施形態に係る車両骨格構造10は、第2実施形態と同等の構成とされている。したがって、リアパネル20と各アッパメンバ14と各ロアメンバ24とで、側面視略三角形状のトラス構造(トライアングルフレーム)が左右対称に形成され、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
なお、図7〜図9では図示を省略したが、燃料タンク70の車幅方向外側端部(例えば左側端部)には、燃料タンク70へ燃料を給油するための給油配管72が車幅方向外側上方へ向けて延在するように設けられている。また、パワーユニット62には、排気管74が接続されている。排気管74は、その中途部に、排気ガス中の有害物質を酸化又は還元により浄化する触媒部76と、サイレンサーとも呼ばれるマフラー78と、を有しており、パワーユニット62の車体後方側に配置されている。
また、リアパネル20の上部側には、車体後方側へ突出し、かつ車幅方向に延在する荷室ボックス21が一体に形成されている。荷室ボックス21は、車室側が開口された中空状に形成されており、その左右の両側部が、それぞれ左右のアッパメンバ14の車幅方向内側を向く内壁に、ボルト締結によって固定されている。
また、図11、図12に示されるように、第3実施形態におけるロアメンバ24は、第2実施形態と同様に、側面視で、車体後方側へ向かって延在する部位(前後ストレート部24F)と、車体後方上側へ向かって延在する部位(以下、その部位を「上下ストレート部24H」という)と、を有する屈曲形状に形成されている。
そして、ロアメンバ24の前後ストレート部24Fと上下ストレート部24Hとの境界部分は、車体後方下側(車体前後方向外側下方)へ凸となる第1屈曲部29とされている。また、ロアメンバ24には、車体前方上側(車体前後方向内側上方)へ凸となる第2屈曲部86を有するアーチ状のマウントメンバ80が、第1屈曲部29と対向して結合されている。
詳細に説明すると、図12、図13に示されるように、マウントメンバ80の前端部(車体前後方向内側端部)は、第1屈曲部29よりも車体前方側(車体前後方向内側)で、かつ連結メンバ68よりも車体後方側における前後ストレート部24Fの上壁24Eと内壁24Aとに平面で接する正面視略「L」字状の前側接合部82とされており、その前側接合部82の辺縁部が上壁24E及び内壁24Aにアーク溶接によって接合されている。
一方、マウントメンバ80の後端部(車体前後方向外側端部)は、フランジ部52、54(第1屈曲部29)よりも車体上方側(車体前後方向外側)における上下ストレート部24Hの前壁24Jと内壁24Aとに平面で接する平面視略「L」字状の後側接合部84とされており、その後側接合部84の辺縁部が前壁24J及び内壁24Aにアーク溶接によって接合されている。
したがって、ロアメンバ24の第1屈曲部29における剛性及び強度をマウントメンバ80によって補強することができる。つまり、ロアメンバ24の第1屈曲部29とマウントメンバ80の第2屈曲部86とを略車体上下方向に対向させて配置することで、ロアメンバ24の第1屈曲部29に変形し難いフレーム構造を形成することができる。
また、図11に示されるように、マウントメンバ80の第2屈曲部86には、パワーユニット62の側部63がブラケット88等を介して間接的に取り付けられている。詳細に説明すると、図12、図13に示されるように、マウントメンバ80の第2屈曲部86(略中央部)には、車体上方側へ延在するブラケット88が一体的に設けられており、このブラケット88に、パワーユニット62の側部63に一体的に設けられたブラケット65(図11参照)が、ボルト締結等によって結合されている。
したがって、図12に示されるように、マウントメンバ80の第2屈曲部86(略中央部)には、パワーユニット62によって車体上方側から車体下方側へ向かって荷重Fpが入力される。ここで、マウントメンバ80は、その第2屈曲部86が車体前方上側へ向かって凸状とされているので、その荷重Fpに対するキャンセルモーメント(車体上方側へ向かう反力Fc)を発生させることができる。
すなわち、マウントメンバ80の第2屈曲部86に車体下方側へ向かう荷重Fpが入力されると、マウントメンバ80には、前側接合部82及び後側接合部84から第2屈曲部86(略中央部)へ向かう反力が生じる。これにより、マウントメンバ80に車体上方側へ向かう反力Fc(キャンセルモーメント)を生じさせることができ、マウントメンバ80のブラケット88が設けられている部位の局部剛性及び強度を向上させることができる。
したがって、このマウントメンバ80により、パワーユニット62を更に安定して支持することができる。なお、マウントメンバ80の第2屈曲部86に、パワーユニット62の側部63が、ブラケット65やブラケット88を介さずに直接的に取り付けられていてもよい。その場合も同様に、マウントメンバ80により、パワーユニット62を更に安定して支持することができる。
以上、本実施形態に係る車両骨格構造10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両骨格構造10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、アッパメンバ14の外壁14Aには、溝部15が形成されない構成とされていてもよい。
また、パワーユニット支持部は、ロアメンバ24の内壁24Aに形成された開口部25に限定されるものではなく、例えばロアメンバ24の上壁24Eに突設されたブラケット(図示省略)等で構成してもよい。この場合、エクステンションメンバ50の前端部は、ロアメンバ24のパワーユニット支持部が設けられた部位に取り付けられていなくてもよい。
また、アッパメンバ14にアッパクロスメンバが設けられたり、ロアメンバ24にロアクロスメンバ64が設けられたりしていれば、結合部材30同士を連結するクロスメンバ40が設けられていなくてもよい。更に、アッパメンバ14にサスペンション支持部が直接的に設けられていなくてもよく、ロアメンバ24にパワーユニット支持部が直接的に設けられていなくてもよい。
また、アッパメンバ14のフランジ部16及びロアメンバ24のフランジ部26は、それぞれボルト締結によってリアパネル20に結合される構成に限定されるものではなく、リアパネル20が金属製とされている場合には、例えばアーク溶接等によってリアパネル20に接合される構成とされていてもよい。
更に、結合部材30には、クロスメンバ40の左右両端部を挿入させる凹部34Aやロアメンバ24の上端部を挿入させる凹部ではなく、それらを挿入させる開口部(図示省略)を形成するようにしてもよい。また、アッパメンバ14、ロアメンバ24及びエクステンションメンバ50等は、断面矩形状に形成される構成に限定されるものではなく、例えば断面円形状等に形成される構成とされていてもよい。
また、エクステンションメンバ50は、ボルト締結によってロアメンバ24に結合される構成に限定されるものではなく、図示しないリベット等によってロアメンバ24に締結(結合)される構成とされていてもよい。また、エクステンションメンバ50は、アーク溶接等によってロアメンバ24に接合される構成とされていてもよい。
更に、リアパネル20とロアメンバ24とが強固に結合されていれば、連結メンバ68が設けられない構成とされていてもよい。また、車両12の後面衝突時において、ロアメンバ24及び連結メンバ68の車幅方向外側又は内側への倒れ込みが抑制されるようになっていれば、ロアクロスメンバ64や連結クロスメンバ66が設けられない構成とされていてもよい。
また、燃料タンク70は、ロアメンバ24及び連結メンバ68よりも車幅方向内側で、かつロアクロスメンバ64及び連結クロスメンバ66よりも車体前方側(ロアクロスメンバ64及び連結クロスメンバ66とリアパネル20との間)に配置される構成に限定されるものではない。
また、マウントメンバ80の第2屈曲部86は、図示の屈曲形状に限定されるものではなく、例えば図示のものよりも曲率の小さい湾曲形状とされていてもよい。つまり、本実施形態における「屈曲部」には、湾曲部も含まれる。