JP6322487B2 - 炭素触媒およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素触媒およびその製造方法に関する。更に詳しくは、固体高分子形燃料電池用の電極における酸素還元触媒として好適な炭素触媒およびその製造方法に関する。
高効率、無公害の燃料電池自動車(FCV)や定置用電熱併供システム(CG−FC)に用いられる固体高分子型燃料電池の実用化は、地球温暖化および環境汚染問題に対する重要な解決策の一つとして注目されている。しかし、燃料電池においては、そのカソードで起こる酸素還元反応を促進するために、資源量が少なく極めて高価な白金を触媒として多量に使用する必要があり、このことが燃料電池の実用化の大きな障壁になっている。そこで白金等の高価な貴金属を必要としない、有機物を焼成した炭素触媒が提案されている。
例えば特許文献1には、炭素材料の原料となる有機物として熱硬化性樹脂を用いて、貴金属以外の遷移金属および窒素が添加された炭素触媒が開示されている。
また特許文献2には、全芳香族ポリイミドおよび金属フタロシアニンを含有する全芳香族ポリイミド組成物を、不活性ガス雰囲気下、500℃〜1,500℃において焼成して得られる炭素触媒が開示されている。
また特許文献3には、20nm以上1μm以下の粒子径を有する粒子が体積分率の45%以上を占め、窒素原子の含有量が炭素原子に対して0.1原子%以上10原子%以下である粒子状の炭素触媒が開示されている。
しかし特許文献1〜3に記載の炭素触媒は、従来のものに比べて優れた性能を有しているが、触媒活性についてさらなる改良の余地がある。
特開2007−26746号公報 特開2010−275116号公報 国際公開第2012/161335号パンフレット
本発明の目的は、燃料電池用電極触媒に好適な炭素触媒を提供することにある。また本発明の目的は、粒子径が小さく、かつBET比表面積が大きく、触媒活性の高い粒子状の炭素触媒を提供することにある。
本発明は、芳香族ポリイミド(f)を炭素化して炭素触媒を製造する際に、芳香族ポリイミド(f)の前駆体である芳香族ポリアミド酸(e)を製造する工程の芳香族カルボン酸無水物(a)と芳香族アミン(b)との反応時に、界面活性剤(d)を存在させ、かつ芳香族カルボン酸無水物(a)および芳香族アミン(b)の少なくとも一方には、官能基の数が3以上のものを用いると、粒子径が小さく、かつBET比表面積が大きく、触媒活性の高い粒子状の炭素触媒が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、炭素化した芳香族ポリイミド(f)からなる粒子状の炭素触媒であって、芳香族ポリイミド(f)は、ピロメリット酸二無水物(a)と1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン(b)とから得られる芳香族ポリイミドであり、
(1)平均粒子径が10〜80nmの範囲にあり、
(2)BET比表面積が1,300〜2,000m/gの範囲にあり、
(3)SEM写真の中で確認できる最表層の粒子について、下記式で定義される球形度Tの平均値が0.65以上であり、酸素還元触媒である炭素触媒である。
球形度T= 4πS/L
但し、上記式において、Lは画像上の粒子の周長であり、Sは画像上の粒子の面積であり、πは円周率である。また、平均粒子径、粒子の周長(L)、粒子の面積(S)は以下の方法により測定する。炭素触媒を、走査型電子顕微鏡により10万倍にて写真撮影を行い、写真の中で確認できる20個の、他の粒子にて隠れていない最表層の粒子を抽出し、画像解析ソフトを用いて各粒子の、平均粒子径、周囲長(L)、面積(S)を求める。ここで周囲長(L)および面積(S)は、9.5nm以下での表面凹凸は無視する。
また本発明は、(1)ピロメリット酸二無水物(a)と1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン(b)とを、遷移金属塩(c)および界面活性剤(d)の存在下、溶媒中で反応させ、芳香族ポリアミド酸(e)粒子を得る工程(1)、ここで溶媒は、ピロメリット酸二無水物(a)、1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン(b)、遷移金属塩(c)、界面活性剤(d)が可溶であり、生成した芳香族ポリアミド酸(e)粒子が不溶である、
(2)得られた芳香族ポリアミド酸(e)粒子を200℃以上に加熱して脱水および環化し芳香族ポリイミド(f)粒子を得る工程(2)、並びに
(3)得られた芳香族ポリイミド(f)を不活性ガス雰囲気中で400〜1,500℃に加熱して炭素化する工程(3)、
を含む上記炭素触媒の製造方法である。

本発明の炭素触媒は、粒子径が小さく、かつBET比表面積が大きく、触媒活性が高い。本発明の製造方法によれば、粒子径が小さく、かつBET比表面積が大きく、触媒活性が高い炭素触媒が得られる。
比較例1の炭素触媒前駆体のSEM写真(倍率10万倍)である。 比較例2の炭素触媒前駆体のSEM写真(倍率10万倍)である。 実施例1の炭素触媒前駆体のSEM写真(倍率10万倍)である。 比較例1で得られた炭素触媒のSEM写真(倍率10万倍)である。 比較例2で得られた炭素触媒のSEM写真(倍率10万倍)である。 実施例1で得られた炭素触媒のSEM写真(倍率10万倍)である。 実施例1と比較例1で得られた炭素触媒の酸素還元ボルタモグラムである。
以下、本発明を実施するための形態について述べる。
<炭素触媒>
本発明の炭素触媒は、炭素化した芳香族ポリイミド(f)からなる粒子状の炭素触媒であって、(1)平均粒子径が10〜100nmの範囲にあり、(2)BET比表面積が800〜2,000m/gの範囲にあり、(3)SEM写真の中で確認できる最表層の粒子について測定した球形度Tの平均値が0.65以上である。
(平均粒子径)
炭素触媒は、平均粒子径が10〜100nmの範囲にある。好ましくは、15〜90nm、さらに好ましくは20〜80nmである。
(BET比表面積)
炭素触媒は、BET比表面積が800〜2,000m/gの範囲にある。BET比表面積の下限は好ましくは900m/g、より好ましくは1,000m/gである。BET比表面積の上限は、実際の到達レベルに限界があり、好ましくは1,800m/gである。
(球形度T)
炭素触媒は、その粒子の形状が球状であることが好ましい。球状とすることにより、嵩密度の大きな炭素触媒となり、電極作製時に触媒分散液とする場合などの取り扱いがより好ましいものとなる。
球状の尺度としては、以下の式で表される球形度の平均値を好適に使用することができる。粒子の立体での形状を正確に測定することは困難であるため、走査型電子顕微鏡(SEM)などによって観察される粒子の平面の画像から、画像処理などにより測定できる粒子の長さ、周長、面積などを使用して粒子の形状を代表させるなどして、球形度Tを求めることができる。
球形度T=4πS/L
(上記式において、Lは画像上の粒子の周長であり、Sは画像上の粒子の面積であり、πは円周率である。)
球形度の平均値を算出するための試料は10万倍で撮影したSEM写真の中で確認できる最表層の粒子である。試料数は20個である。
本発明の炭素触媒の球形度は、0.65以上である。球形度は0.70以上であるとより好ましく、0.75以上であると更に好ましい。球形度が0.65より小さな場合、嵩密度が大きくなりすぎて、電極作製時の分散域の流動性が悪くなる可能性がある。本発明の炭素触媒における球形度の上限は、当然1であるが、調製のし易さから言うと0.75程度が好ましい。
(窒素原子の炭素原子に対する比率:N/C)
炭素触媒の窒素原子の炭素原子に対する比率(N/C)は、好ましくは0.001〜0.1である。炭素触媒はその触媒作用を発現させるために、窒素原子を含有する。触媒作用には窒素原子の存在が必須であるためである。
窒素原子の含有量は、通常の元素分析法によって測定される元素比率である。N/Cの下限は、好ましくは0.002、より好ましくは0.005である。N/Cの上限は、好ましくは0.09、より好ましくは0.08である。
(金属原子の存在量)
本発明の炭素触媒は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、スズ、マンガン、および亜鉛よりなる群から選ばれる少なくとも一種の遷移金属(c)を含有する場合がある。遷移金属(c)の含有量は好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.3〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
(酸素還元開始電位)
本発明の炭素触媒の酸素還元開始電位は、好ましくは0.7V以上、より好ましくは0.8〜1.0Vである。そのため、本発明の炭素触媒は、燃料電池用電極触媒として好適に使用することができるほか、各種化学反応、例えば酸化物の還元反応等の触媒として好適に用いることができる。
<炭素触媒の製造方法>
本発明の炭素触媒は以下の工程(1)〜(3)により製造することができる。工程(3)の後に、工程(4)、(5)、(6)を行っても良い。
(工程(1))
工程(1)は、芳香族カルボン酸無水物(a)と芳香族アミン(b)とを、遷移金属塩(c)および界面活性剤(d)の存在下、溶媒中で反応させ、芳香族ポリアミド酸(e)粒子を得る工程である。
(芳香族カルボン酸無水物(a))
芳香族カルボン酸無水物(a)は、官能基−CO−O−CO−を2以上有する芳香族化合物である。
芳香族カルボン酸無水物(a)は、好ましくは下記式(a)で表される。
Arは、炭素数4〜45の4価、6価または8価の芳香族基である。芳香族ポリアミド酸(e)中に存在する複数個のArはそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよい。mは2、3または4である。
(2官能の芳香族カルボン酸無水物(a2))
2官能の芳香族カルボン酸無水物(a2)は、下記式(a2)で表される
式(a2)におけるAra2は、炭素数4〜45の4価の芳香族基である。芳香族ポリアミド酸(e)中に存在する複数個のAra2はそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよい。式(a2)におけるAra2として以下の基が挙げられる。
として以下の基が挙げられる。
式(a2)におけるAra2としては、炭素数5〜20の4価の芳香族基であることが好ましく、特に
よりなる群から選択される一種以上の4価の芳香族基であることが好ましい。
Ara2は、その芳香環上の水素原子のうちの1つまたは複数が、それぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基で置換されていてもよい。
2官能の芳香族カルボン酸無水物(a2)の具体例として、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンー1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6,3,5−二無水物(TCAAH)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(CHDA)、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(BuDA)、4−フェニルエチニルフタル酸無水物(PEPA)、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物(NTDA)、ビス(1,3−ジオキソー1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)1,4−フェニレン(TAHQ)、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸2,3:6,7−二無水物、2,2’−ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA)等を例示することができる。
(3官能の芳香族カルボン酸無水物(a3))
3官能の芳香族カルボン酸無水物(a3)は、下記式(a3)で表される。
式(a3)におけるAra3は、炭素数4〜45の6価の芳香族基である。芳香族ポリアミド酸(e)中に存在する複数個のAra3はそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよい。式(a3)におけるAra3として下記の基が挙げられる。
3官能の芳香族カルボン酸無水物(a3)の具体例として、ベンゼンヘキサカルボン酸1,2:3,4:5,6−三無水物を例示することができる。
(芳香族アミン(b))
芳香族アミン(b)は好ましくは下記式(b)で表される。
式(b)におけるArは、炭素数4〜30の2〜6価の芳香族基である。芳香族ポリアミド酸中に存在する複数個のArはそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよい。式(b)におけるArとして、以下の基よりなる群から選択される2〜6価の芳香族基を挙げることができる。mは2〜6の整数である。
(2官能の芳香族アミン(b2))
2官能の芳香族アミン(b2)は下記式(b2)で表される。
N−Arb2−NH (b2)
式(b2)におけるArb2は、炭素数4〜30の2価の芳香族基である。芳香族ポリアミド酸(e)中に存在する複数個のArb2はそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよい。式(b2)におけるArb2として、以下の基よりなる群から選択される2価の芳香族基を挙げることができる。
式(b2)におけるArb2としては、炭素数6〜20の2価の芳香族基であることが好ましく、更に好ましくは
よりなる群から選択される一種以上の2価の芳香族基であることが好ましい。
Arb2は、その芳香環上の水素原子のうちの1つまたは複数が、それぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基で置換されていてもよい。
2官能の芳香族アミン(b2)の具体例として、1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、1,3−ジアミノベンゼン(MPD)、2,4−トルエンジアミン(2,4−TDA)、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−DPE)、3,3’―ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(TB)、2,2’―ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド(TSN)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド(ASD)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(ASN)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(DABA)、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(DAnMG)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(DANPG)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(DA3EG)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン(PIDN)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB−M)、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS−M)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MBAA)、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン(DADHB)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(HAB)、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(6FAP)、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(TAB)、1,6−ジアミノヘキサン(HMD)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(DAIP)、4,4’−メチレンビス(4−シクロヘキシルアミン)(DCHM)、1,4−ジアミノシクロヘキサン(DACH)、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンビス(メチルアミン)(NBDA)、トリシクロ[3,3,1,13,7]デカン1,3−ジアミン(13AD)、4−アミノ安息香酸−4−アミノフェニルエステル(APAB)、2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾール(5ABO)、9,9−ビス[(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン(BAOFL)、2,2’−ビス(3−スルホプロポキシ)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−BSPB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸(pBAPBDS)等を例示することができる。
(3官能の芳香族アミン(b3))
3官能の芳香族アミン(b3)は下記式(b3)で表される。
式(b3)におけるArb3は、炭素数4〜30の3価の芳香族基である。芳香族ポリアミド酸(e)中に存在する複数個のArb3はそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよい。式(b3)におけるArb3として、以下の基よりなる群から選択される3価の芳香族基を挙げることができる。
3官能の芳香族アミン(b3)の具体例として、1,3,5−トリアミノベンゼン、トリス(3−アミノフェニル)アミン、トリス(4−アミノフェニル)アミン、トリス(3−アミノフェニル)ベンゼン、トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン(TAPB)、トリス(3,5−ジアミノフェニル)ベンゼン、トリス(3,5−ジアミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TAPOB)、1,3,5−トリス(4−アミノフェノキシ)トリアジン、等を例示することができる。
(4官能の芳香族アミン(b4))
4官能の芳香族アミン(b4)は下記式(b4)で表される。
式(b4)におけるArb4は、炭素数4〜30の4価の芳香族基である。芳香族ポリアミド酸(e)中に存在する複数個のArb4はそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよい。式(b4)におけるArb4として、下記の4価の芳香族基を挙げることができる。
4官能の芳香族アミン(b4)の具体例として、テトラキス(4‐アミノフェニルメタン(TAPM)、ピリミジン−2,4,5,6−テトラアミン、2,3,5,6−ピリジンテトラアミン等を例示することができる。
(官能基の数)
本発明は、工程(1)において、(A)芳香族カルボン酸無水物(a)の官能基−CO−O−CO−の数、および芳香族アミン(b)の官能基−NHの数はそれぞれ2以上であり、かつ(B)芳香族カルボン酸無水物(a)および芳香族アミン(b)の少なくとも一方は、官能基の数が3以上のもの(3官能以上のモノマー)を含むことを特徴とする。芳香族カルボン酸無水物(a)と芳香族アミン(b)の少なくとも一方に3官能以上のものを用いることにより、芳香族ポリアミド酸(e)中に架橋構造が形成されるため、耐熱性が向上し、融着現象の発生しにくい粒子となる。
芳香族カルボン酸無水物(a)の官能基の数が2の場合、芳香族アミン(b)は官能基の数が3以上のものを含む。この場合、芳香族アミン(b)は3官能、4官能またはこれらの混合物であっても良いし、2官能アミンと3官能アミンまたは4官能アミンとの混合物であっても良い。
芳香族アミン(b)の官能基の数が2の場合、芳香族カルボン酸無水物(a)は官能基の数が3以上のものを含む。この場合、芳香族カルボン酸無水物は3官能、4官能、5官能またはこれらの混合物であっても良いし、2官能カルボン酸無水物と3〜5官能カルボン酸無水物との混合物であっても良い。
3官能以上のモノマーの含有量は、芳香族カルボン酸無水物(a)および芳香族アミン(b)の官能基の数の当量数100に対して、好ましくは10〜90、より好ましくは30〜70、さらに好ましくは40〜60である。芳香族カルボン酸無水物(a)および芳香族アミン(b)の一方が3官能以上のモノマーのみであっても良い。
(遷移金属塩(c))
遷移金属化合物としては、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、銅化合物、スズ化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。金属化合物の具体的な種類としては、金属フタロシアニン、金属ポルフィリン、フェロセン等のような金属の配位化合物、塩化物、臭化物、ヨウ化物のような金属ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、有機酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。これらの金属化合物の内、ポリアミド酸の重合反応に使用される溶媒に可溶なものを選択するのが好ましい。
遷移金属化合物の添加量は、焼成後の触媒粒子中の遷移金属の量が0.1質量%〜20質量%となるように配合することが好ましい。
(界面活性剤(d))
本発明は、工程(1)において界面活性剤(d)の存在下で、芳香族カルボン酸無水物(a)と芳香族アミン(b)とを反応させることを特徴の一つとする。
界面活性剤(d)を存在させることにより、得られる芳香族アミド酸(e)の粒子径を小さくすることができ、その結果、得られる芳香族ポリイミド(f)粒子の形状は球形に近く、粒子で粒子径分布も狭く、均一な形態の粒子を比較的容易に得ることができる。
界面活性剤(d)は、ノニオン系界面活性剤あることが好ましい。界面活性剤(d)は、ポリアミド酸の重合に使用される溶媒に可溶であるものが望ましい。ノニオン系界面活性剤は、脂肪族アミン、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型、アルキルグリコシド型および高級アルコール型からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、下記式(s1)、(s2)および(s3)からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
式中R,R’,R’ ’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基である。炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状、分枝状、環状のアルキル基が挙げられる。直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等を例示することができる。分枝状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、ジヘキシル基、ジヘプチル基、ジオクチル基、メチルドデシル基、ジメチルドデシル基等を例示することができる。環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基シクロヘプチル基、シクロオクチル基およびcis−3−メチルシクロヘキシル基等を例示することができる。
具体的には、式(s1)で表される界面活性剤として、オレイルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ステアリルアミン等を例示することができる。
式(s2)で表される界面活性剤として、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、N−メチルドデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン等を例示することができる。
式(s3)で表される界面活性剤として、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクチルアミン、N,N−ジメチル−2−エチルヘキシルアミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、等を例示することができる。
エステル型界面活性剤としては、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を例示することができる。エーテル型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ノノキシノール、ノノキシノール−9、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等を例示することができる。エステルエーテル型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコール等を例示することができる。アルカノールアミド型界面活性剤としては、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドDEA等を例示することができる。アルキルグリコシド型界面活性剤としては、オクチルグルコシド、デシルグルコシド等を例示することができる。高級アルコールとしては、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等を例示することができる。
界面活性剤の配合量は、反応に使用する溶媒に対し、0.05質量%〜1.0質量%が好ましく、0.1質量%〜0.5質量%がさらに好ましい。界面活性剤の配合量が0.05質量%未満であれば、生成されるポリアミド酸粒子の粒径が大きく、焼成しても比表面積の高い触媒粒子を得ることができない。また、界面活性剤の配合量が1.0質量%を超えると、生成したポリアミド酸粒子に対し、可塑剤として作用し、焼成時に融着現象を引き起こす恐れがあり好ましくない。
(溶媒)
溶媒は、芳香族カルボン酸無水物(a)、芳香族アミン(b)、遷移金属塩(c)、界面活性剤(d)が可溶であり、かつ生成した芳香族ポリアミド酸(e)が不溶であることが必要である。
溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、酢酸メチル、酢酸エチル等を使用することができる。溶媒の使用割合は、種々の条件に応じて適宜に設定されるべきであるが、芳香族カルボン酸無水物(a)溶液および芳香族ジアミン(b)溶液の濃度はそれぞれ、0.5〜10質量%となる割合とすることが好ましい。
(反応条件)
芳香族カルボン酸無水物(a)および芳香族アミン(b)の使用割合としては、芳香族カルボン酸無水物(a)の官能基の当量数と芳香族アミン(b)の官能基の当量数の比が、0.90〜1.10が好ましく、0.95〜1.05がより好ましい。
反応温度は、60℃以下に設定することが好ましく、特に好ましくは−20〜60℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜24時間であり、より好ましくは1〜10時間である。
(工程(2))
工程(2)は、芳香族ポリアミド酸(e)粒子を200℃以上に加熱して脱水および環化し芳香族ポリイミド(f)粒子を得る工程である。
芳香族ポリアミド酸(e)を炭素化する工程で、芳香族ポリアミド酸(e)が溶融する場合があるため、予め不融化しておくことが好ましい。加熱は、徐々に昇温していくことが望ましいが、一定の昇温速度で加熱することが難しい場合があるため、例えば80〜150℃で3分〜3時間加熱し、更に200℃以上500℃未満で1分〜3時間加熱する等のように段階的に加熱する方法も好ましく採用することができる。加熱処理における温度の段階の数の上限は特にはないが、操作が煩雑にならないように2〜5段階程度とすることが好ましい。80℃以上500℃未満で加熱する時間の合計は、1〜24時間とすることが好ましい。この加熱は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下または減圧条件下で行うことが好ましい。
(工程(3))
工程(3)は、得られた芳香族ポリイミド(f)粒子を不活性ガス雰囲気中で400〜1,500℃に加熱して炭素化する工程である。
加熱温度は、好ましくは600〜1,200℃、より好ましくは600〜1,000℃である。焼成時間は、好ましくは1時間〜6時間、より好ましくは2時間〜5時間、さらに好ましくは3時間〜5時間である。
加熱は、不活性ガス雰囲気下において行われる。ここで、好ましい不活性ガスとして窒素、アルゴン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。不活性ガスは、その酸素濃度が体積基準で好ましくは100ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
(工程(4))
工程(4)は、工程(3)で得られた炭素触媒を酸で洗浄して金属原子を除去する工程である。
金属原子は炭素触媒の表層あるいは、触媒中に取り込まれていると考えられるが、表層に出ていないかぎり、実質的に不具合は生じない。本発明では、炭素化(工程(3))の後、更に、炭素触媒を洗浄することにより残留する金属原子の量を、前述のように、炭素原子に対する質量比で0.1以下にすると好ましく、0.001以上0.1以下の量にできるとより好ましい。
金属成分を除去するための洗浄方法としては塩酸、硫酸、硝酸およびこれらの水溶液などの酸性溶液、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物等からなる塩基性溶液などからなる群より選ばれる少なくとも1種の、鉄、コバルト、ニッケル等の添加する金属化合物を溶解させる溶液を使用して洗浄することが好ましい。使用する溶液の濃度としては、0.01mol/L以上好ましくは0.1mol/L以上の酸、またはアルカリを用いることが好ましい。酸または塩基が0.01mol/L以下の場合には、金属成分を効率よく除去することが困難な場合があり好ましくない。
洗浄処理の時間としては、先述のように洗浄後の金属濃度として、炭素触媒中の金属原子の存在比率が炭素原子に対して質量比で0.1以下となるのであれば特に制限はないが、1分から24時間、さらには0.5時間から20時間、さらには1時間から15時間が好ましく、洗浄処理の際、攪拌処理や超音波処理、加熱処理を伴ってもよい。
なお、上記の洗浄などによる金属原子の除去処理は、複数回行われてもよく、また、2回目以降の当該処理は、下記の賦活処理後に行われるようにしてもよく、金属原子の除去処理と賦活処理の組み合わせを複数回行われてもよい。
(工程(5))
工程(5)は、工程(3)または工程(4)で得られた炭素触媒を、アンモニア、水素、水蒸気および二酸化炭素よりなる群から選ばれる少なくとも一種のガスの雰囲気下、600〜1500℃で加熱し賦活する工程である。
加熱温度の下限は、好ましくは600℃、より好ましくは700℃である。加熱温度の上限は、好ましくは1,200℃、より好ましくは1,100℃である。
賦活処理の時間としては、0.1時間から10時間が好ましく、さらには0.5時間から6時間が好ましい。賦活処理時間が0.1時間未満の場合には、触媒の賦活が十分に進行しない恐れがあり、賦活処理時間が10時間を超過する場合には、窒素原子の脱離が顕著に起こり、触媒活性の低い炭素触媒となる恐れがあり好ましくない。
このような賦活処理は、複数回行われてもよく、工程(3)または工程(4)の後に複数回、行ってもよい。
(工程(6))
工程(6)は、炭素触媒を、分散処理する工程である。
分散処理とは、炭素触媒のうち凝集体となっているものが、その凝集がほどけ、触媒粒子にまで分散されるよう、ただし球状の粒子が半球状に割れるなどの大きな形態変化をしない程度に、該炭素触媒を超音波装置やボールミルなどにより処理することをいう。
分散処理(工程(6))は、炭素化(工程(3))の後、または炭素触媒の賦活(工程(5))後に行うことが好ましい。また、分散処理は、例えば、不融化の後と炭素化の後にそれぞれ、または、賦活処理を複数回行う場合の各賦活処理後などのように、複数回行っても良い。
工程(5)または工程(6)を経て最終的に得られた、芳香族ポリイミド(f)からなる粒子状の炭素触媒の平均粒子径は、10〜100nmであり、好ましくは15〜90nm、さらに好ましくは20〜80nmである。触媒粒子の平均粒子径が10nm未満であると、触媒粒子の凝集が起きやすく、触媒層の物質移動や触媒塗料の流動性等点で問題が発生しやすく、好ましくない。また、芳香族ポリイミド(f)粒子の平均粒子径が100nmを越すと、比表面積が小さくなって触媒の効率が低下するため好ましくない。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
(1)酸素還元開始電位および電流密度の測定
酸素還元触媒の活性度の指標として、回転リング・ディスク電極法によるリニアスイープボルタンメトリーを行って、酸素還元開始電位(オンセットポテンシャルまたはOSPと略記する場合がある。)および0.6Vでの電流密度を測定した。これらの測定は、日厚計測社製回転リング・ディスク電極装置(RDE−1)を用いて行った。
ガラス製バイアルに、炭素化等により得られた粒子状炭素触媒5mgをとり、ガラスビーズをスパチュラ2杯、Sigma−Aldrich社製ナフィオン(登録商標)5質量%溶液50μL、蒸留水とエタノールをそれぞれ150μL加え、20分間超音波をあてた。
このスラリーを4μLとり、回転ディスク電極のガラス状炭素上に塗付し、空気下で乾燥させた。
乾燥させた回転ディスク電極を作用極に、可逆水素電極(RHE)を参照極、炭素繊維を対極にし、掃引速度5mV/s、回転速度1,500rpmで、1.1Vから0Vまで、窒素飽和状態の0.5mol/L硫酸水溶液中、および酸素飽和状態の0.5mol/L硫酸水溶液中でそれぞれ測定を行った。酸素飽和状態での測定により得られたボルタモグラムから、窒素飽和状態での測定で得られたボルタモグラムの値を差し引くことで得られたボルタモグラムより、−10μA/cmでの電位を酸素還元開始電位(OSP)として求め、さらに0.6Vにおける電流密度を求めた。
(2)粒子状炭素触媒の電子顕微鏡による観察
日立ハイテクノロジー社製走査型電子顕微鏡(SEM)SU5500により、10万倍で粒子状炭素触媒前駆体および炭素触媒の観察を行った。
(3)粒子状炭素触媒の平均粒子径、および球形度の決定
日立ハイテクノロジー社製走査型電子顕微鏡(SEM)SU5500により、10万倍で粒子状炭素触媒の写真撮影を行い、写真の中で確認できる20個の粒子について、旭化成エンジニアリング社製画像解析ソフト、A像くん(A−zoh−kun、登録商標)にて他の粒子にて隠れていない最表層の粒子を手動にて抽出し、各粒子の面積(S)、周囲長(L)、水平フェレ径を求めた。ここで周長および面積は、9.5nm以下での表面凹凸は無視した。
抽出した粒子の水平フェレ径の平均値を平均粒子径とした。
面積(S)などを求めた各粒子1つ1つについて、下記式にて球形度Tを算出し、その平均値を炭素触媒の球形度とした。
球形度T=4πS/L
(上記式において、Lは画像上の粒子の周囲長であり、Sは粒子の面積であり、πは円周率である。)
(4)粒子状炭素触媒の比表面積測定
日本ベル(株)製、「Belsorp−mini II」を用い、炭素触媒50mgを装置内に入れ、350℃で1時間加熱脱気を行った後、−196℃における窒素吸着法(BET法)により炭素触媒のBET比表面積を求めた。
(5)粒子状炭素触媒の元素分析
Perkin Elmer社製 PE 2400 Series II CHNS/O analyzerを用いて測定を行った。試料として粒子状炭素触媒を2mg秤取し、試料を完全燃焼させ、試料中の炭素、水素、および窒素CO、HO、およびNO、NOは更に還元しNとして、これら炭素、水素、窒素の元素の組成を求め、窒素原子の炭素原子に対する比率(窒素/炭素原子比率、またはN/C比と略記する場合がある)を百分率にて算出した。
(6)粒子状炭素触媒中の遷移金属の分析
JEOL社製 JXA−8100 電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を使用して測定を行った。粒子状炭素触媒の粉末をバインダーを用いずにペレット状に加工し、触媒中に含有される金属元素量を測定した。EPMAの元素分析結果から金属原子の炭素原子に対する質量比を求めた。
[比較例1]二官能ポリアミンを使用した炭素触媒
(工程(1))
ナスフラスコ中でアセトン50mLにピロメリット酸二無水物(PMDA、東京化成工業社製)1.308g、アセチルアセトン鉄(III)(Fe(acac))(同仁化学研究所製)332.2mgを溶解させ、PMDAとFe(acac)のアセトン溶液を得た。また、別のナスフラスコ中でアセトン45mLに4,4’−ジオキシジアニリン(ODA、和光純薬工業社製)1.201gを溶解させODAのアセトン溶液を得た。PMDAとFe(acac)のアセトン溶液中に、攪拌しながら、ODAのアセトン溶液を加え反応を開始させた。1時間後、反応の進行に伴い淡黄色のポリアミド酸樹脂粒子が沈殿してきたので、ナスフラスコをエバポレーターに接続して溶剤を除去し、真空乾燥した。
(工程(2))
その後、さらに240℃で終夜乾燥することにより、脱水・環化(イミド化)反応を進めるとともに不融化処理を行い、ポリイミド樹脂からなる触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体を冷却後、乳鉢ですりつぶし、得られた触媒前駆体をSEMで観察した。結果を図1に示す。図1から粒子径が100nm程度の球状粒子が生成していることを確認した。
(工程(3))
得られたポリイミド樹脂前駆体を、窒素ガス雰囲気下600℃で5時間熱処理(炭素化)した。
(工程(4)〜(5))
その後、37%濃塩酸で洗浄することにより金属を除去し粒子状炭素触媒を得た。得られた粒子状炭素触媒をボールミルによる分散処理を行った後、さらに800℃で1時間アンモニア気流下、熱処理(賦活処理)を行い、引き続き濃塩酸で洗浄した後、1,000℃で1時間アンモニア気流下、熱処理(賦活処理)を行い、粒子状炭素触媒を得た。
得られた粒子状炭素触媒のSEM写真を図4に示す。また、平均粒子径、球形度、BET比表面積の測定結果を表1に示す。
[比較例2] 界面活性剤を配合した二官能ポリアミンを使用した炭素触媒
(工程(1)〜(2))
比較例1の粒子状触媒より更に微粒子で、BET比表面積の大きな粒子を作成するため、溶媒中に界面活性剤を配合してポリイミド樹脂粒子を作成した。
比較例1において、PMDAとFe(acac)のアセトン溶液に、ジメチルドデシルアミン(東京化成工業社製)を0.3ml溶解して、界面活性剤を配合したPMDAとFe(acac)のアセトン溶液を使用する以外は、比較例1と同様にして、界面活性剤を配合して作成した触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体のSEM観察結果を図2に示す。図2から粒子状炭素触媒の粒子径は比較例1の粒子径より小さくなっており、界面活性剤の効果により、粒子の触媒前駆体が得られたことが明らかとなった。
(工程(3)〜(5))
得られたポリイミド樹脂前駆体を、窒素ガス雰囲気下600℃で5時間熱処理(炭素化)した後、37%濃塩酸で洗浄することにより金属を除去し粒子状炭素触媒を得た。得られた粒子状炭素触媒をボールミルによる分散処理を行った後、さらに800℃で1時間アンモニア気流下、熱処理(賦活処理)を行い、引き続き濃塩酸で洗浄した後、1,000℃で1時間アンモニア気流下、熱処理(賦活処理)を行いの粒子状炭素触媒を得た。
得られた粒子状炭素触媒のSEM写真を図5に示す。また、平均粒子径、球形度、BET比表面積の測定結果を表1に示す。
酸素還元開始電位および電流密度の測定方法に基づいて、酸素還元特性を測定した。ボルタムグラム曲線を図7に、酸素還元開始電位(OSP)および0.6Vにおける電流密度を表3に示した。
[実施例1]界面活性剤を配合し、三官能ポリアミンを使用した炭素触媒
(工程(1))
ナスフラスコ中でアセトン50mLにピロメリット酸二無水物(PMDA)1.308g、Fe(acac)276.8mgを溶解させ、PMDAとFe(acac)のアセトン溶液を得た。PMDAとFe(acac)のアセトン溶液に、ジメチルドデシルアミンを0.3mL溶解して、界面活性剤を含有するPMDAとFe(acac)のアセトン溶液を得た。
また、別のナスフラスコ中でアセトン45mLに1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン(TAPB、東京化成工業社製)1.406gを溶解させTAPBのアセトン溶液を得た。界面活性剤を配合した、PMDA、Fe(acac)のアセトン溶液中に、攪拌しながら、TAPBのアセトン溶液を加え反応を開始させた。1時間後、反応の進行に伴い淡黄色のポリアミド酸樹脂粒子が沈殿してきたので、ナスフラスコをエバポレーターに接続して溶剤を除去し、真空乾燥した。
(工程(2))
さらに240℃で終夜乾燥することにより、脱水・環化(イミド化)反応を進めるとともに不融化処理を行い、ポリイミド樹脂からなる触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体を冷却後、乳鉢ですりつぶし、得られた触媒前駆体をSEMで観察した。結果を図3に示す。図3から、実施例1のポリイミド触媒前駆体の粒子径は比較例2の粒子径よりさらに小さい粒子状触媒前駆体が得られたことが明らかとなった。
(工程(3))
得られたポリイミド樹脂前駆体を、窒素ガス雰囲気下600℃で5時間熱処理(炭素化)した。
(工程(4)〜(5))
その後、37%濃塩酸で洗浄することにより金属を除去し粒子状炭素触媒を得た。得られた粒子状炭素触媒をボールミルによる分散処理を行った後、さらに800℃で1時間アンモニア気流下、熱処理(賦活処理)を行った。引き続き濃塩酸で洗浄した後、1,000℃で1時間アンモニア気流下、熱処理(賦活処理)を行い粒子状炭素触媒を得た。
得られた粒子状炭素触媒のSEM写真を図6に示す。また、平均粒子径、球形度、BET比表面積の測定結果を表1に示す。粒子状炭素触媒の元素分析結果および鉄原子の炭素触媒に対する比率を表2に示す。実施例1のポリイミド粒子状炭素触媒のN/Cは0.03であり、鉄原子の炭素触媒に対する比率は2.0質量%であった。粒子状炭素触媒について、酸素還元開始電位および電流密度の測定方法に基づいて、酸素還元特性を測定した。ボルタムグラム曲線を図7に、酸素還元開始電位(OSP)および0.6Vにおける電流密度を表3に示した。実施例1の粒子状炭素触媒は、比較例2の粒子状炭素触媒に比べ、OSPがやや高く、電流密度は明らかに向上しており、酸素還元触媒として優れたものであった。
また図1と図4の比較から、二官能ポリアミンからなる炭素触媒は、前駆体と同程度の粒子状態を保持しているのに対し、界面活性剤を配合した、二官能ポリアミンからなる炭素触媒は、図2と図5の比較から粒子径が増大しており、BET比表面積も減少していた。このことから、粒子状炭素触媒に融着現象が発生していると考えられる。また、図3と図6の比較から、界面活性剤を配合した、三官能ポリアミンからなる炭素触媒は、依然として粒子径は小さく、BET比表面積も大きいため、融着現象は発生していないと考えられる。即ち、界面活性剤による微粒子化の効果と、三官能ポリアミンを含有することによる耐熱性が向上したポリイミド樹脂からなる粒子状炭素触媒が得られた。
本発明の粒子状炭素触媒は、固体高分子形燃料電池の電極用触媒として好適である。

Claims (9)

  1. 炭素化した芳香族ポリイミド(f)からなる粒子状の炭素触媒であって、芳香族ポリイミド(f)は、ピロメリット酸二無水物(a)と1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン(b)とから得られる芳香族ポリイミドであり、
    (1)平均粒子径が10〜80nmの範囲にあり、
    (2)BET比表面積が1,300〜2,000m/gの範囲にあり、
    (3)SEM写真の中で確認できる最表層の粒子について、下記式で定義される球形度Tの平均値が0.65以上であり、酸素還元触媒である炭素触媒。
    球形度T= 4πS/L
    但し、上記式において、Lは画像上の粒子の周長であり、Sは画像上の粒子の面積であり、πは円周率である。また、平均粒子径、粒子の周長(L)、粒子の面積(S)は以下の方法により測定する。炭素触媒を、走査型電子顕微鏡により10万倍にて写真撮影を行い、写真の中で確認できる20個の、他の粒子にて隠れていない最表層の粒子を抽出し、画像解析ソフトを用いて各粒子の、平均粒子径、周囲長(L)、面積(S)を求める。ここで周囲長(L)および面積(S)は、9.5nm以下での表面凹凸は無視する。
  2. 窒素原子の炭素原子に対する比率(N/C)が0.001〜0.1である請求項1記載の炭素触媒。
  3. 0.1〜20質量%の、鉄、コバルト、ニッケル、銅、スズ、マンガン、および亜鉛よりなる群から選ばれる少なくとも一種の遷移金属(c)を含む請求項1または2記載の炭素触媒。
  4. (1)ピロメリット酸二無水物(a)と1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン(b)とを、遷移金属塩(c)および界面活性剤(d)の存在下、溶媒中で反応させ、芳香族ポリアミド酸(e)粒子を得る工程(1)、ここで溶媒は、ピロメリット酸二無水物(a)、1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン(b)、遷移金属塩(c)、界面活性剤(d)が可溶であり、生成した芳香族ポリアミド酸(e)粒子が不溶である、
    (2)得られた芳香族ポリアミド酸(e)粒子を200℃以上に加熱して脱水および環化し芳香族ポリイミド(f)粒子を得る工程(2)、並びに
    (3)得られた芳香族ポリイミド(f)を不活性ガス雰囲気中で400〜1,500℃に加熱して炭素化する工程(3)、
    を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素触媒の製造方法。
  5. 工程(3)の後、炭素触媒を酸で洗浄して金属原子を除去する工程(4)含む請求項記載の製造方法。
  6. 工程(3)または工程(4)の後、炭素触媒を、アンモニア、水素、水蒸気および二酸化炭素よりなる群から選ばれる少なくとも一種のガスの雰囲気下、650〜1500℃で加熱し賦活する工程(5)含む請求項または記載の製造方法。
  7. 界面活性剤(d)は、ノニオン系界面活性剤である請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. ノニオン系界面活性剤は、脂肪族アミン、エステル基を含む界面活性剤、エーテル基を含む界面活性剤、エステル基およびエーテル基を含む界面活性剤、アルコール基およびアミド基を含む界面活性剤、アルキル基とグリコシド基を含む界面活性剤、セタノール、ステアリルアルコール並びにオレイルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項記載の製造方法。
  9. 脂肪族アミンは、下記式(s1)、(s2)および(s3)からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項記載の製造方法。
    (式中R、R’、R’ ’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基である)
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