JP6320355B2 - 易吸収性カルシウム液、易吸収性カルシウム粉末、易吸収性カルシウム含有飲料 - Google Patents

易吸収性カルシウム液、易吸収性カルシウム粉末、易吸収性カルシウム含有飲料 Download PDF

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本発明は、生体内へのカルシウム吸収性の優れた易吸収性カルシウムが水に分散された状態の易吸収性カルシウム液、及び飲料用原料に調合することにより易吸収性カルシウム含有飲料を製造するための易吸収性カルシウム粉末に関する。
生体必須元素であるカルシウムは、人体で骨や歯を形成し、さらに体内の生理機能を調整するなど、人体には欠かせない物質である。カルシウムは牛乳やチーズなどの乳製品をはじめ、海藻や小魚、ごまなどに多く含まれており、人はこれらの食物からカルシウムを摂取している。しかしながら、厚生労働省の報告によると、成人が1日に摂取すべきカルシウム量は600mgから800mg程度であるのに対し、食生活の変化により日本人のカルシウム摂取量は1日平均531mgと摂取すべき量から大幅に不足している。人体からカルシウムが不足すると、神経過敏になったり、骨粗鬆症を引き起こしたりするなど、病気の引き金となる。
そこで、カルシウム不足を補うために、貝や甲殻類、卵殻、動物の骨、海藻類等の天然由来のカルシウム化合物や、化学的合成による人工由来のカルシウム化合物を利用したカルシウム製剤やカルシウム添加物が開発されているものの、味や風味に問題があるとともに、体内の吸収性があまりよくないことから、広く普及するものではなかった。
本発明者は、特許文献1において、ウニの外殻体を焼成して得られるカルシウム化合物が体内への吸収が良好でかつ摂取した際の味や風味も良好であることを発見した。また同文献において、得られたカルシウム化合物に対してスルホムコ多糖類に属するコンドロイチン硫酸を配合することにより、体内へのカルシウム吸収量が著しく増大することも報告している。さらに、特許文献2において、コンドロイチン硫酸の添加による体内へのカルシウム吸収量の促進が、ウニ由来のカルシウムのみならず有機カルボン酸のカルシウム塩についても同様に見られることを発見し、カルシウム吸収量はコンドロイチン硫酸の濃度に大きく依存することを見出した。
特許第2660906号公報 特許第3131385号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載の易吸収性カルシウム組成物は水に不溶であり、平均粒子径が60ミクロン程度、最大粒子径が数百ミクロン程度であったため、例えば固形もしくは半固形の食品に添加することはできるが、飲料に添加するとすぐに沈降してしまうという問題点があった。そこで本件発明は、生体内へのカルシウム吸収性の優れた易吸収性カルシウムが水に分散された状態の易吸収性カルシウム液を提供し、飲料にも易吸収性カルシウムを添加することを課題とする。
また、本件発明の副次的課題として、飲料用原料に調合することにより易吸収性カルシウム含有飲料を製造するための易吸収性カルシウム粉末を提供することを課題とする。易吸収性カルシウム液を噴霧乾燥により粉末化すると、保管コストや輸送コストを大きく減少させることができるため好適である。
上記課題を解決するために、本件発明の一態様として、平均粒子径が0.1ミクロン以上0.5ミクロン未満のクエン酸カルシウムと、クエン酸カルシウムに対して重量比で5〜20%の水溶性セルロース(メチルセルロースを除く)又は/及びシクロデキストリンと、クエン酸カルシウムに対して重量比で0.2〜2%のメチルセルロース又は/及びステアリン酸と、クエン酸カルシウムのカルシウム分に対して重量比で0.2〜5%のコンドロイチン硫酸と、を含みクエン酸カルシウムが水に分散された状態の易吸収性カルシウム液を提供する。なお、水溶性セルロースはイヌリンであっても良い。また、水に代えて極性溶媒としても良い。
また、本件発明の別態様として、上述した易吸収性カルシウム液を噴霧乾燥することにより得られる粉末であって、最大粒子径が100ミクロン以下である易吸収性カルシウム粉末を提供する。なお、粉末の水分含有率が重量比で1〜4%であることが好ましい。
また、本件発明の別態様として、上述した易吸収性カルシウム粉末を飲料用原料に調合することにより製造される易吸収性カルシウム含有飲料を提供する。なお、カルシウム濃度が100〜400mg/Lとなるように易吸収性カルシウム粉末が調合されても良い。また、飲料用原料はカテキン又は/及びタンニンを含まないことが好ましい。また、飲料用原料は飲料水に果汁、もしくは果肉と果汁を加えてなるものでも良い。また、飲料用原料には炭酸ガスが溶解していても良い。
本件発明により、生体内へのカルシウム吸収性の優れた易吸収性カルシウムが水に分散された状態の易吸収性カルシウム液を提供することができ、飲料にも易吸収性カルシウムを添加することが可能となる。また、易吸収性カルシウム液を噴霧乾燥して粉末化することにより、易吸収性カルシウムの保管コストや輸送コストを大きく減少させることができる。
以下、本件発明の各実施形態について図面と共に説明する。実施形態と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施形態1は主に請求項1から3などに対応する。実施形態2は主に請求項4から11などに対応する。なお、本件発明は実施形態の記載に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施しうる。
<<実施形態1>>
<概要>
本実施形態は、生体内へのカルシウム吸収性の優れた易吸収性カルシウムが水に分散された状態の易吸収性カルシウム液に関する。
<構成>
図1は、本実施形態の易吸収性カルシウム液の構成の一例を示す概要図である。本実施形態の易吸収性カルシウム液(0100)には、(b)に示すようにクエン酸カルシウム(0101)の表面に水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリン(0102)と、メチルセルロース又は/及びステアリン酸(0103)が付着した構造体(0110)が、(a)に示すように水(0104)に水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンが溶解した液体に分散された状態である。また、易吸収性カルシウム液にはコンドロイチン硫酸(図示せず)が添加されている。以下において、各構成について詳細に説明する。
(クエン酸カルシウム)
クエン酸カルシウムとは、クエン酸とカルシウムがキレート結合した物質であって、食品添加物として主に食品にカルシウムを添加する目的で広く使用されている。生体内においてカルシウムは、クエン酸とキレート結合を形成して小腸から吸収されることから、易吸収性カルシウム液のカルシウム源としてクエン酸カルシウムを用いると、他の有機カルボン酸の塩や無機塩と比較して生体内へのカルシウム吸収性を向上させることができる。
クエン酸カルシウムの平均粒子径は、0.1ミクロン以上0.5ミクロン未満とすることが好ましい。クエン酸カルシウムの平均粒子径を0.5ミクロン未満とすることにより、水中での沈降を抑えることが出来るだけでなく、後述する水溶性セルロース、シクロデキストリン、メチルセルロース又は/及びステアリン酸の作用も相まって、クエン酸カルシウムの水分散性が格段に向上することを本発明者は見出した。具体的には、本実施形態の易吸収性カルシウム液において一度クエン酸カルシウムが水に分散されると、長期間クエン酸カルシウム粒の沈降が見られず、クエン酸カルシウムは水に分散された状態を保つことができる。なお、クエン酸カルシウムの最大粒子径については、1ミクロン未満であることが好ましい。
(水溶性セルロース)
水溶性セルロースとは、水に可溶なセルロースである。例えば本件発明において水溶性セルロースとは、ペクチン、グアー酵素分解物、グルコマンナン、β‐グルカン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、フコイダン、ポルフィラン、ラミナラン等であっても良い。その中でも、血糖値の急激な上昇の防止やコレステロールの減少等の効果があると言われているイヌリンを用いることが好ましい。また、その効果は正確に検証されているものではないが、イヌリンはカルシウムと共に摂取すると生体内へのカルシウムの吸収を促進するとも言われており、その効果が正しいものであれば、水溶性セルロースとしてイヌリンを用いることにより、本件発明の易吸収性カルシウム液の生体内へのカルシウム吸収性を向上させることができる。
(シクロデキストリン)
シクロデキストリンとは、複数のグルコース分子がグルコシド結合により結合して環状構造を構成している環状オリゴ糖の一種であって、例えば6つのグルコース分子が結合したα‐シクロデキストリン、7つのグルコース分子が結合したβ‐シクロデキストリン、8つのグルコース分子が結合したγ‐シクロデキストリン等がよく知られている。
本実施形態の易吸収性カルシウム液において、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンは以下に示す作用を有する。一つ目の作用として、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンは水に溶解させることにより、水の粘度を増大させることができる。微粒子の流体中の沈降速度は流体の粘度が高いほど減少するため、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンを水に溶解させることにより、クエン酸カルシウムの沈降速度が減少し、すなわちクエン酸カルシウムの沈降を抑制することができる。
また、二つ目の作用として、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンは湿式粉砕時のクエン酸カルシウムの凝集を防止することができる。すなわち、本実施形態の易吸収性カルシウム液において、クエン酸カルシウムの平均粒子径を0.1ミクロン以上0.5ミクロン未満とするためには、クエン酸カルシウムを湿式粉砕する必要がある。その際、単に水にクエン酸カルシウムを混合した状態で湿式粉砕を行うと、クエン酸カルシウムが湿式粉砕中に凝集してしまい、クエン酸カルシウムを微細化させることができなかった。そこで、本件発明者は水に不溶又は難溶の微粒子を水に分散させるために使用される分散剤を、水とクエン酸カルシウムの混合液に添加した状態で湿式粉砕を行うことにより、湿式粉砕中のクエン酸カルシウムの凝集を防止しようと試みたところ、分散剤として知られている物質の中でも水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンの添加が最も効果が高いことを見出した。
本実施形態の易吸収性カルシウム液において、上述した水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンは、クエン酸カルシウムに対して重量比で5〜20%添加されることが好ましい。添加量が5%未満であると、湿式粉砕中のクエン酸カルシウムの凝集防止効果が弱く、湿式粉砕を行うことができない。一方、20%より多量の水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンを添加してしまうと、その添加により水の粘度が増大し湿式粉砕に必要な力が大きくなってしまうために効率が悪い。
(メチルセルロース)
メチルセルロースとは、セルロースの水酸基(‐OH)の少なくとも一部をメチル基(‐CH)で置き換えた物質であり、食品添加物として使用されている。通常セルロースは分子間の水酸基同士が強い水素結合を作ることにより結晶化し、水に不溶であるが、メチルセルロースは水酸基をメチル基に置き換えているため、水に可溶する。なお、本実施形態においてメチルセルロースとは、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであっても良い。
本実施形態の易吸収性カルシウム液においてメチルセルロースは、クエン酸カルシウム、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリン、水の混合液の粘度を低下させる作用を有しており、混合液の粘度を低下させることにより、本実施形態の易吸収性カルシウム液の噴霧乾燥時に粉末の粒子径の増大を抑制することができる(詳しくは実施形態2において説明する)。混合液の粘度の低下は、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンの添加量を減少させることによって調整することも可能であるが、その添加量の減少により、湿式粉砕時のクエン酸カルシウムの凝集防止効果も減少させてしまうこととなるため、メチルセルロースの添加により調整されることが好ましい。
本実施形態の易吸収性カルシウム液においてメチルセルロースは、クエン酸カルシウムに対して重量比で0.2〜2%添加されることが好ましい。メチルセルロースの添加量が0.2%未満であると、クエン酸カルシウム、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリン、水の混合液の粘度の低下が不十分となる。また、メチルセルロースの添加量が2%以上の場合、混合液の粘度の低下に対する作用が大きく変化しないため、2%以上のメチルセルロースを添加するのは経済的ではない。
(ステアリン酸)
なお、メチルセルロースに代えて、もしくは加えてステアリン酸が添加されていても良い。ステアリン酸(CH(CH16COOH)とは、動物性や植物性の脂肪に最も多く含まれる脂肪酸であり、メチルセルロースと同様に食品添加物として使用されている。また、カルシウムとはステアリン酸カルシウム(分子式Ca(C1735COO))として結合する。ステアリン酸は、易吸収性カルシウム液中でクエン酸カルシウムの分散剤(界面活性剤)として作用する。易吸収性カルシウム液にステアリン酸が添加されることにより、クエン酸カルシウムの水分散性を向上させることができるとともに、メチルセルロースと同様、易吸収性カルシウム液の粘度を低下させることができるため、易吸収性カルシウム液の噴霧乾燥時に粉末の粒子径の増大を抑制することができる。なお、ステアリン酸の易吸収性カルシウム液への添加量は、メチルセルロースの易吸収性カルシウム液への添加量との合計が、クエン酸カルシウムに対して重量比で0.2〜2%となるように調整されることが好ましい。
(コンドロイチン硫酸)
コンドロイチン硫酸とは、動物体内に見られるムコ多糖類の一種であり、D‐グルクロン酸がβ‐グリコシド結合した二糖類の反復結合体に硫酸がエステル結合したものである。本実施形態の易吸収性カルシウム液にコンドロイチン硫酸を添加する効果として、本発明者が特許文献2において明らかとしたように、有機カルボン酸のカルシウム塩にコンドロイチン硫酸を添加することにより、生体内へのカルシウム吸収量が著しく促進される。なお、同文献に記載されているように、コンドロイチン硫酸の添加量はクエン酸カルシウムのカルシウム分に対して重量比で0.2〜5%、好ましくは0.3〜2.5%とすると、生体内へのカルシウム吸収性が著しく向上するため好ましい。
<製造方法>
図2は、本実施形態の易吸収性カルシウム液の製造方法の処理の流れの一例を示す概要図である。例えば本実施形態の易吸収性カルシウム液の製造方法は、主に材料調合プロセス(S0201)と、湿式粉砕プロセス(S0202)と、からなる。
(材料調合プロセス)
材料調合プロセス(S0201)において、易吸収性カルシウム液の材料であるクエン酸カルシウム、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリン、メチルセルロース又は/及びステアリン酸、コンドロイチン硫酸、水を調合する。各材料が均一に混合されるために、調合は材料を攪拌した状態で行われることが好ましい。なお、上述したように、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンはクエン酸カルシウムに対して重量比で5〜20%、メチルセルロース又は/及びステアリン酸はクエン酸カルシウムに対して重量比で0.2〜2%、コンドロイチン硫酸はクエン酸カルシウムのカルシウム分に対して重量比で0.2〜5%添加されることが好ましい。また、水に代えて、又は加えてアルコール等の極性溶媒を用いても良い(以下においても同様である)。
材料調合プロセスは、上述した4種類の材料を調合することができればその方法について特に限定されないが、例えば次に示すような処理の流れで行われても良い。すなわち、消石灰スラリー化プロセス(S0211)と、クエン酸カルシウム合成プロセス(S0212)と、コンドロイチン硫酸添加プロセス(S0213)と、分散剤添加プロセス(S0214)と、によって材料の調合が行われても良い。各プロセスの詳細について、以下に説明する。
(消石灰スラリー化プロセス)
消石灰スラリー化プロセス(S0211)において、生石灰(CaO)と水を反応させて消石灰(Ca(OH))を製造し、消石灰をスラリー化する。すなわち、生石灰と水を混合することにより、生石灰が消石灰となってスラリー化する。なお、生石灰と水の配合比は、重量比で生石灰10〜20部に対し、水80〜90部とすることが好ましい。生石灰は人体に有毒な金属等の無機物を含んでいなければ、市販のものをそのまま利用することも可能であるが、本件発明の易吸収性カルシウム液は飲料に添加されて人体に摂取されるものであるから、天然のカルシウム源として例えばウニの外殻体、貝殻、卵殻等の焼成により得られる生石灰が好ましい。これらのカルシウム源は通常産業廃棄物として処理されるものであるから、経済的にも入手が容易である。
消石灰のスラリー化をより効率良く行うために、原料となる生石灰は乾式粉砕等を利用して微粒子化しておいても良い。すなわち、生石灰を微粒子化しておくことにより、水と反応させた際の反応時間を減少させることができる。また、生石灰を微粒子化しておくと、後述するカルシウム塩合成プロセスにおいて、消石灰とクエン酸の反応時間も減少させることができ、さらに湿式超微粉砕プロセスにおいて、クエン酸カルシウムの微細化時間も減少させることができる。
(クエン酸カルシウム合成プロセス)
クエン酸カルシウム合成プロセス(S0212)において、消石灰スラリー化プロセスにて得られた消石灰スラリーとクエン酸を反応させて、クエン酸カルシウムを合成する。すなわち、消石灰スラリーとクエン酸を混合することにより、クエン酸カルシウムを得ることができる。なお、クエン酸は水に溶解させた状態で消石灰スラリーと混合することとすると、より均一にクエン酸と消石灰スラリーを混合させることができるため好ましい。その際に、クエン酸と水の配合比は、重量比でクエン酸カルシウム25〜35部に対し、水65〜75部とすることが好ましい。
クエン酸カルシウム合成プロセスにおいて、クエン酸は消石灰スラリーに対して化学量論的に稍過剰量用いられることが好ましい。その理由は、クエン酸カルシウム合成プロセスにて消石灰スラリーがクエン酸と反応せずに遊離してしまうことを防ぐためである。本来、所定量の消石灰スラリーとクエン酸を反応させた場合の反応液のpHは一定であるべきである。しかし、消石灰スラリーやクエン酸等の材料の純度のばらつきや反応の進度によって、実際にはクエン酸カルシウム合成プロセス後の反応液のpHはばらついてしまい、消石灰スラリーの反応が進まずに反応液中に遊離してしまうという恐れが生じる。そこで、本プロセスにおいて反応液のpHを弱酸性とすることにより、消石灰スラリーとクエン酸を完全に反応させることができる。なお、反応液の具体的なpHが5〜6程度となるように、クエン酸が添加されることが好ましい。
(コンドロイチン硫酸添加プロセス)
コンドロイチン硫酸添加プロセス(S0213)において、クエン酸カルシウム合成プロセスにて得られたクエン酸カルシウムにコンドロイチン硫酸を添加する。コンドロイチン硫酸の添加量は反応液中のクエン酸カルシウムのカルシウム分に対して重量比で0.2〜5%、好ましくは0.3〜2.5%とする。
(分散剤添加プロセス)
分散剤添加プロセス(S0215)において、pH調整プロセスにてpHを調整された水、クエン酸カルシウム、コンドロイチン硫酸の混合液に水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンとメチルセルロース又は/及びステアリン酸を添加する。水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンとメチルセルロース又は/及びステアリン酸は、水に溶解させた状態で添加することとすると、混合液に対して均一に拡散させることができるため好ましい。なお、混合液中のクエン酸カルシウムに対して水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリンは重量比で5〜20%、メチルセルロース又は/及びステアリン酸は0.2〜2%添加されることが好ましい。
(湿式粉砕プロセス)
湿式粉砕プロセス(S0202)において、分散剤添加プロセスにて得られた液体中のクエン酸カルシウムを湿式粉砕する。具体的には、液体中のクエン酸カルシウムの平均粒子径が0.1ミクロン以上0.5ミクロン未満となるまで、クエン酸カルシウムの粒子径を微細化する。湿式粉砕の方法について特に限定するものではないが、例えば以下に説明するメディア式超微粉砕機を用いて行うことができる。
(メディア式超微粉砕機)
図3は、クエン酸カルシウムの湿式粉砕に用いるメディア式超微粉砕機の一例を示す概要図である。メディア式超微粉砕機(0310)の流入口(0301)に流入した混合液中のクエン酸カルシウムは、ロータ(0302)の高速回転により遠心力を受けてロータの動径方向に移動する。すると、クエン酸カルシウムはロータの側部に設けられた濾過口(0303)を通して超硬物質(例えばジルコニア)で構成されたメディア(0304)まで運ばれる。この時、メディアはロータの高速回転により同じくロータの同型方向に強く押し付けられており、同時にロータの回転に伴ってロータの回転方向にも移動していることから、メディア間の隙間には強烈なせん断力が発生している。すると、メディアまで運ばれたクエン酸カルシウムはメディアのせん断力により微細化され、最終的にセパレータ(0305)を通って流出口(0306)から放出される。なお、流出口から放出された混合液は、ポンプなどを介して再度流出口に流入させ、メディア式超微粉砕機を所定時間循環させることで、混合液中のクエン酸カルシウムの粒径を所望のサイズに微細化することができる。
<効果>
以上のような構成を採用することにより、生体内へのカルシウム吸収性の優れた易吸収性カルシウムが水に分散された状態の易吸収性カルシウム液を提供することができ、飲料にも易吸収性カルシウムを添加することが可能となる。
<<実施形態2>>
<概要>
本実施形態は、実施形態1の易吸収性カルシウム液を噴霧乾燥することにより得られる粉末であって、飲料用原料に調合することにより易吸収性カルシウム含有飲料を製造するための易吸収性カルシウム粉末、及び易吸収性カルシウム粉末が調合された易吸収性カルシウム含有飲料に関する。
<構成>
図4は、本実施形態の易吸収性カルシウム粉末の一例を示す概要図である。本実施形態の易吸収性カルシウム粉末(0400)は、実施形態1において説明した易吸収性カルシウム液を噴霧乾燥することにより得られる粉末であって、水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリン、及びメチルセルロース又は/及びステアリン酸がバインダー(0402)となって、クエン酸カルシウム(0401)を結合した結合体(0410)で構成される。
本実施形態の易吸収性カルシウム粉末を液体に混合すると、バインダーである水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリン、及びメチルセルロース又は/及びステアリン酸が水に溶解することにより、クエン酸カルシウムとバインダーの結合が解除され、クエン酸カルシウムが液体に分散される。すなわち、液体が水である場合には、本実施形態の易吸収性カルシウム粉末を液体に混合することにより、実施形態1で説明した易吸収性カルシウム液となる。
本実施形態の易吸収性カルシウム粉末は、実施形態1で説明した易吸収性カルシウム液と比較して輸送コストを大きく減少させることができる。その理由として、まず易吸収性カルシウム液は水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリン、メチルセルロース又は/及びステアリン酸を含有しているため、これらの物質が液体中で雑菌の栄養素となることから、易吸収性カルシウム液の輸送に際して滅菌処理と冷蔵保存が必要となるが、易吸収性カルシウム液を粉末化することによりその処理が不要となる。また、粉末化することによって、易吸収性カルシウムの容積を大きく減少させることができるため、輸送しやすい。
本実施形態の易吸収性カルシウム粉末の水分含有率は重量比で1〜4%であることが好ましい。水分含有率が小さいほど易吸収性カルシウム粉末の質量を減少させることができるため、輸送面で効率が良いものの、水分含有率を1%未満とすると、易吸収性カルシウム粉末を液体に混合した際にバインダーをうまく液体に溶解させることができず、その結果バインダーに結合されたままのクエン酸カルシウムが液体中にそのまま沈殿してしまうという事態が生じる。逆に、水分含有率が4%以上であると、粉末の保存性に問題が生じることとなる。
バインダーにより結合されたクエン酸カルシウムの結合体は、その粒径が100ミクロン以下であることが好ましい。粒径が100ミクロン以上であると、易吸収性カルシウム粉末を液体に混合した際に、結合体内部のバインダーを液体中に溶解させることができず、すなわちバインダーに結合されたクエン酸カルシウムが液体中にそのまま沈殿してしまうという自体が生じるため好ましくない。
<製造方法>
図5は、本実施形態の易吸収性カルシウム粉末の製造方法の処理の流れの一例を示す図である。本実施形態の易吸収性カルシウム粉末は、実施形態1において説明した易吸収性カルシウム液を噴霧乾燥することにより製造される。すなわち、本実施形態の易吸収性カルシウム粉末は、例えば消石灰スラリー化プロセス(S0511)、クエン酸カルシウム合成プロセス(S0512)、コンドロイチン硫酸添加プロセス(S0513)、水溶性セルロース添加プロセス(S0514)を有する材料調合プロセス(S0501)と、湿式超微粉砕プロセス(S0502)と、噴霧乾燥プロセス(S0503)とからなる。以下ではこれまでに説明していない噴霧乾燥プロセスについて説明する。
(噴霧乾燥プロセス)
噴霧乾燥プロセス(S0503)において、湿式超微粉砕プロセス後の易吸収性カルシウム液を噴霧乾燥して粉末化し、易吸収性カルシウム粉末を製造する。実施形態1において説明したように、易吸収性カルシウム液はメチルセルロース又は/及びステアリン酸が添加されることにより、その粘度が調整されている。例えば粘度があまりにも大きい場合、噴霧時の液滴が大きくなってしまうため、噴霧乾燥によって得られる粉末の粒径も大きいものとなってしまう。そこで、易吸収性カルシウム液の粘度がメチルセルロース又は/及びステアリン酸の添加により調整されていると、噴霧時の液滴を適度なサイズとすることができ、100ミクロン以下の粒径の粉末を得ることができる。
(噴霧乾燥機)
噴霧乾燥機には、液体の噴霧方式の違いによりディスクアトマイザー式、高圧ノズル式、二流体ノズル式等のいくつかの形式のものがあるが、噴霧乾燥プロセスに用いる形式としては特に限定されるものではなく、最大粒子径が100ミクロン以下の粒子が経済的に得られるものであればどの形式の噴霧乾燥機を利用しても良い。もっとも汎用性の高いディスクアトマイザー方式で噴霧乾燥する場合には、高速回転型のものを使用しないと100ミクロン以上の粒子が多く生成され、それを篩分けする等の後処理が必要になってくるので、より微細な乾燥粉末が得られる二流体ノズルを利用する方が好ましい。
<易吸収性カルシウム含有飲料>
上述した易吸収性カルシウム粉末を飲料用原料に調合することにより、易吸収性カルシウム含有飲料を製造することができる。本実施形態の易吸収性カルシウム粉末を飲料用原料に調合すると、バインダーが飲料用原料に溶解することによりクエン酸カルシウムが飲料用原料中に分散し、クエン酸カルシウムが飲料用原料中に長時間にわたり安定して分散する。
易吸収性カルシウム粉末が調合される飲料用原料は、カテキン又は/及びタンニンを含まないものであれば良い。飲料用原料にカテキン又は/及びタンニンを含んでいると、その理由は明確ではないが、易吸収性カルシウムが水に分散されることなく飲料用原料に沈殿してしまう事態が生じる。しかしながら、例えば飲料用原料として飲料水に果汁を加えたもの、飲料水に果肉と果汁を加えたもの、炭酸ガスが溶解しているものであっても、本実施形態の易吸収性カルシウム粉末を調合することにより、易吸収性カルシウムが長時間にわたり液体中に分散された状態の飲料を提供することができる。
なお、易吸収性カルシウム粉末の添加は、その添加により製造される易吸収性カルシウム含有飲料のカルシウム濃度が100〜400mg/Lとなるように調合されることが好ましい。成人が1日に摂取すべきカルシウム量は600mgから800mg程度であるから、例えば毎日500mLのペットボトル飲料を摂取する人の場合、そのペットボトル飲料に易吸収性カルシウム粉末が調合されていると、ペットボトル飲料の摂取により50〜200mgのカルシウムを摂取してカルシウム分を補うことができる。
<その他の応用>
また、本実施形態の易吸収性カルシウム粉末は、飲料に限らず食品にも添加することが可能である。例えば食品の製造プロセスにおいて、材料を液体中で混合する場合に、水分散性の良くない従来の易吸収性カルシウム粉末を添加しても、液体中に均一に分散させることは困難である。すると、製造された食品中の易吸収性カルシウムの添加量が製品ごとにばらついたり、凝集した易吸収性カルシウムが食品の食味を損ねてしまう場合があった。しかしながら、本実施形態の易吸収性カルシウム粉末は水分散性が良いため、食品の材料を液体中で混合する場合に易吸収性カルシウムを均一に分散させることができ、適切に食品に易吸収性カルシウムを添加することができる。食品としては、例えばプリンやゼリー等であっても良い。
<効果>
以上のような構成を採用することにより、易吸収性カルシウム液に対して輸送コストを大きく減少させることができ、飲料用原料に調合して易吸収性カルシウム含有飲料を製造することができる易吸収性カルシウム粉末を提供することができる。
<<実施例1>>
精製水840部を攪拌式反応容器(反応器1)に入れ、ウニ殻から得られた焼成カルシウム160部を徐々に添加して消石灰スラリーを得た。別の攪拌式反応容器(反応器2)にて精製水700部にクエン酸300部を徐々に添加してクエン酸溶解液を得て、反応器2に反応器1の消石灰スラリーを徐々に添加し、液体のpH値が5〜6の所定値となるまでクエン酸を添加して、クエン酸カルシウムスラリーを合成し、さらにコンドロイチン硫酸2部を添加し、平均粒子径が15ミクロンのウニ殻カルシウム由来の易吸収性カルシウム組成物を得た。
<<実施例2>>
実施例1において、ウニ殻から得られた焼成カルシウムに変えて、ホタテ貝殻から得られたカルシウムを用いることにより、ホタテ貝殻カルシウム由来の易吸収性カルシウム組成物を得た。
<<実施例3−9>>
実施例1又は実施例2で製造した易吸収性カルシウム組成物の固形分の濃度が10〜20重量%となるように所定量の精製水を加え、さらに易吸収性カルシウム組成物に対して分散剤としてシクロデキストリン(塩水港精糖株式会社製「デキシパールK−100」)、イヌリン(フジ日本精糖株式会社製「フラクトファイバー フジFF」)、メチルセルロース(信越化学工業株式会社製「メトローズ SE−50」)のうちいずれか一以上を所定量調合した。
調合された各スラリー20リットルを湿式メディアミル(日本コークス工業株式会社製「SCミル SC220/70−ZZ」)にて、直径が0.3又は0.5mmのジルコニアビーズを使用し、ロータ周速を10〜13m/秒にて1〜2時間湿式粉砕したところ、平均粒子径が0.1〜0.5μmで最大粒子径が1μm以下の易吸収性カルシウム液を得た。
<<比較例1−3>>
実施例3−9において、易吸収性カルシウム組成物に対して分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製「リョートーシュガーエステル O−1570」)、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製「ポエム J−0021」)のうちいずれか一以上を所定量調合し、実施例3−9と同一の条件で湿式粉砕を行い、平均粒子径が0.1〜0.5μmで最大粒子径が1μm以下の易吸収性カルシウム液を得た。
<<希釈分散試験>>
実施例3−9及び比較例1−3により得られた易吸収性カルシウム液を、固形分の重量が0.1g相当量となる分量だけ水100mLに加えてガラス容器に投入し、マグネチックスターラーで攪拌して易吸収性カルシウム液を水で希釈分散し、分散から24時間後の分散液における易吸収性カルシウム組成物の沈降状態を、目視にて3段階の分散安定性の評価を実施した。
図6に、本実施例における希釈分散試験の結果を示す。実施例3〜9では、希釈液の分散性は良好で、24時間後でも沈降物はほとんど認められないか(評価◎)、わずかに認められるが非常に軽微(評価○)であったが、比較例1〜3では24時間未満で沈降物が観察された(評価×)。特に、比較例1では攪拌を停止するとごく短時間で凝集対の沈降が認められた。
<<実施例10〜16>>
実施例3〜9により得られた易吸収性カルシウム液を、スプレードライヤー(ミクロバウテック株式会社製「セントリドライミル CDM10−550S」)にて、エアー圧0.2MPa、噴霧量15L/時で噴霧乾燥して、易吸収性カルシウム粉末を得た。得られた粉末は電子顕微鏡を用いて観察するとほぼ球状であり、実施例3〜9で得られた平均粒子径が0.1〜0.5μmの粒子が集って、分散剤として添加した成分がバインダーとなって、平均粒子径6〜23μmの顆粒化微粒子を形成していることが判明した。なお図7は易吸収性カルシウム粉末の電子顕微鏡写真であり、(a)は300倍、(b)は6000倍の拡大図である。
<<比較例4>>
比較例1により得られた易吸収性カルシウム液を、実施例10〜15と同様にスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、易吸収性カルシウム粉末を得た。
<<再分散試験>>
実施例10−15及び比較例4により得られた易吸収性カルシウム粉末0.1gを100mLの精製水に添加してガラス容器に投入し、マグネチックスターラーにて分散させて、実施例1と同様の評価を行った。すると、比較例4及び実施例13を除く全ての実施例において、易吸収性カルシウム粉末を水に再分散させることができた。
なお、実施例13の易吸収性カルシウム粉末を水に再分散させたところ、肉眼で確認できる少量の大きな粒子が認められた。そこで、当該粉末を目開きが100μmの篩にかけて、粒子径が100μm以下の粒子を水に再分散させたところ、全ての粒子を再分散させることができ、24時間後の分散液の状態も沈降物がなく良好であった。
ラット腸管内における試験対象物のカルシウム吸収能について、in situ小腸還流法により検討を行った。試験対象物として、
(1)ナノ分散カルシウム(Ca含有量17.0%:以下、N−CTM)
(2)CTM−KT(Ca含有量20.0%:以下、CTM)
(3)クエン酸カルシウム(Ca含有量21.0%:以下、C−Ca)
(4)炭酸カルシウム(Ca含有量39.8%:以下、CaCO
(5)乳酸カルシウム(Ca含有量13.2%:以下、L−Ca)
の5つのカルシウム組成物を用いて試験を行った。なお、「ナノ分散カルシウム」とは本発明の易吸収性カルシウム粉末であり、「CTM−KT」とは特許第3131385号公報に記載の易吸収性カルシウムのことである。
<試験方法>
(還流溶液の調整)
試験対象物中のカルシウム2mg相当量を、塩化ナトリウム2.0gに希塩酸24.0mLおよび蒸留水を加えて1000mLとした(pH:約1.2)人工胃液10mLに溶解させた。30分後にその全量を、0.2Mリン酸二水素カリウム溶液250mLに0.2N水酸化ナトリウム溶液118mLおよび蒸留水を加えて1000mLとした(pH:約6.8)人工腸液10mLに移し、pHを6.5に調整した後、その全量を正確に100mLにあわせて還流溶液とした。
(in situ小腸還流法による吸収試験)
24時間絶食させたラット(Wister、雄、生後7週間)を麻酔下で腹部正中切開し、幽門部より6cm(十二指腸部位)部を還流小腸域として用いた。腸内洗浄後、37℃に加温した還流溶液を幽門側より下部方向へ1.0mL/minの還流速度で循環させながら、一定時間ごとに還流溶液中のカルシウム濃度(カルシウム減少量)を測定した。測定は、Calcium Assay Kitを用いた比色法にて行った。なお、カルシウム濃度の採取は、還流開始後10、20、30、40、50、60分後にそれぞれ行い、採取量は100μLとした。また、各試験対象物に対して5匹のラットを用いて試験を行った。
<試験結果>
図8は、各試験対象物を用いた吸収試験におけるカルシウム吸収率の経時変化をまとめた表であり、図9は結果をグラフにまとめたものである。還流10分時以降より、N−CTM群、CTM群の2群間に有意差は認められないが、CaCO群、L−Ca群、C−Ca群に対して有意に高い推移を示した。すなわち、本発明の易吸収性カルシウム粉末は、特許第3131385号公報に記載の易吸収性カルシウムと同様に、生体吸収性に優れていることを示している。
また、図10は、各試験対象物を用いた吸収試験におけるカルシウムの平均吸収率(還流60分間)をまとめた表であり、図11は結果をグラフにまとめたものである。CaCO群<L−Ca群<C−Ca群<N−CTM群<CTM群の順に高い値を示し、N−CTM群、CTM群の2群間に有意な差は認められないが、他の3群に対しては有意に高値を示した。すなわち、図8、9に示す結果と同様に、本発明の易吸収性カルシウム粉末が、特許第3131385号公報に記載の易吸収性カルシウムと同様に、生体吸収性に優れていることを示している。
本実施例において、易吸収性カルシウム粉末の胃酸に対する溶解度について検討を行った。すなわち、試験対象物として
(1)ナノ分散カルシウム(Ca含有量17.0%:以下、N−CTM)
(2)CTM−KT(Ca含有量20.0%:以下、CTM)
の2種のカルシウム粉末において、胃酸に対する溶解度を後述する試験方法にて試験した。
<試験方法>
試験対象物200mgに対して、pH1.8に調整した人工胃液300mlを滴下し、人工胃液のpHの時間変化についてpHメーター(堀場製作所、F-72S)を用いて測定を行った。試験対象物によって人工胃液に対する溶解度が異なると考えられ、人工胃液に対する溶解度の違いを人工胃液のpHの変化と置き換えて測定を行った。なお、試験対象物のpHは2種とも約pH6であるので、人工胃液への溶解とともにpHは上昇していく。なお、pHの測定時には人工胃液をスターラー(Fine社、FS-05)を用いて撹拌しながら試験を行った。
<結果>
図12に、2種のカルシウム粉末に人工胃液を滴下した後の人工胃液のpHの時間変化を示す。pHが3.4を超える時間、すなわちカルシウム粉末のほぼすべてが溶解する時間を比較すると、本発明に基づくナノ分散カルシウム(N−CTM)は約103秒であるのに対し、従来製品であるCTM−KTは約233秒であった。本実験結果は、人工胃液に対する溶解度は、本発明の易吸収性カルシウム粉末の方が特許第3131385号公報に記載の易吸収性カルシウムよりも2倍以上早いことを示している。本発明の易吸収性カルシウム粉末は、粒径が小さく二次分散性に優れているため、人工胃液に容易に分散して溶解するものと考えられる。
易吸収性カルシウム液の構成の一例を示す概要図 易吸収性カルシウム液の製造方法の処理の流れの一例を示す概要図 易吸収性カルシウム液の製造に用いるメディア式超微粉砕機の一例を示す概要図 易吸収性カルシウム粉末の構成の一例を示す概要図 易吸収性カルシウム粉末の製造方法の処理の流れの一例を示す概要図 実施例の概要を示す図 実施例において製造された易吸収性カルシウム粉末の電子顕微鏡像 実施例2において各試験対象物を用いた吸収試験におけるカルシウム吸収率の経時変化をまとめた表 実施例2において各試験対象物を用いた吸収試験におけるカルシウム吸収率の経時変化をまとめたグラフ 実施例2において各試験対象物を用いた吸収試験におけるカルシウムの平均吸収率(還流60分間)をまとめた表 実施例2において各試験対象物を用いた吸収試験におけるカルシウムの平均吸収率(還流60分間)をまとめたグラフ 実施例3において2種のカルシウム粉末に人工胃液を滴下した後の人工胃液のpHの時間変化を示す図
0100:易吸収性カルシウム液、0101:クエン酸カルシウム、0102:水溶性セルロース又は/及びシクロデキストリン、0103:メチルセルロース又は/及びステアリン酸、0104:水、0110:構造体

Claims (11)

  1. 平均粒子径が0.1ミクロン以上0.5ミクロン未満のクエン酸カルシウムと、
    クエン酸カルシウムに対して重量比で5〜20%の水溶性セルロース(メチルセルロースを除く)又は/及びシクロデキストリンと、
    クエン酸カルシウムに対して重量比で0.2〜2%のメチルセルロース又は/及びステアリン酸と、
    クエン酸カルシウムのカルシウム分に対して重量比で0.2〜5%のコンドロイチン硫酸と、
    を含みクエン酸カルシウムが水に分散された状態の易吸収性カルシウム液。
  2. 水溶性セルロースはイヌリンである請求項1に記載の易吸収性カルシウム液。
  3. 前記水に代えて極性溶媒とした請求項1又は2に記載の易吸収性カルシウム液。
  4. 請求項1から3のいずれか一に記載の易吸収性カルシウム液を噴霧乾燥することにより得られる粉末であって、最大粒子径が100ミクロン以下である易吸収性カルシウム粉末。
  5. 水分含有率が重量比で1〜4%である請求項4に記載の易吸収性カルシウム粉末。
  6. 請求項4又は5に記載の易吸収性カルシウム粉末を飲料用原料に調合することにより製造される易吸収性カルシウム含有飲料。
  7. カルシウム濃度が100〜400mg/Lとなるように易吸収性カルシウム粉末が調合された請求項6に記載の易吸収性カルシウム含有飲料。
  8. 飲料用原料はカテキン又は/及びタンニンを含まない請求項6又は7に記載の易吸収性カルシウム含有飲料。
  9. 飲料用原料は飲料水に果汁を加えてなる請求項6から8のいずれか一に記載の易吸収性カルシウム含有飲料
  10. 飲料用原料は飲料水に果肉と果汁を加えてなる請求項6から9のいずれか一に記載の易吸収性カルシウム含有飲料。
  11. 飲料用原料には炭酸ガスが溶解している請求項6から10のいずれか一に記載の易吸収性カルシウム含有飲料。
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