JP6295993B2 - 燃料電池用電極の製造方法 - Google Patents
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Description
このような試みの中で、燃料電池の電極触媒として、白金−金属酸化物複合粒子を導電性担体に担持してなる燃料電池用触媒が注目を集めている。例えば、特許文献1には、プロトンを透過する固体高分子電解質膜と、電極触媒を含む触媒層を有する燃料極および空気極とからなる膜電極接合体を有する固体高分子型燃料電池の空気極に用いる電極触媒であって、白金または白金を含む貴金属合金と、貴金属以外の金属酸化物からなる複合粒子からなることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極触媒が開示されている。
従来技術では、白金−金属酸化物複合粒子を導電性担体に担持させる工程で、導電性担体の表面性状が変化し、触媒インク中において、前記導電性担体表面と、アイオノマや溶媒との親和性を悪化させる場合があった。触媒インク中で各成分間の親和性が悪化すると、触媒層を形成する場合に、アイオノマによって白金−金属酸化物複合粒子や導電性担体を十分に被覆することができない。このように被覆が十分でない電極を使用した膜電極接合体では、発電性能を外部環境の変化に応じて安定して発揮することができないことが知られている。
一方、RDEによる電気化学測定では、電解液がプロトン伝導と酸素拡散を担うため外部環境の変化がなく、アイオノマの被覆率の影響が測定結果に表れることはない。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、外部環境条件が変化しても発電性能を安定して発揮させることができる白金、チタン酸化物、及び導電性カーボンを含む触媒複合体担持カーボンを含有する触媒層を備える燃料電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池用触媒の製造方法において、第2工程で用いる溶媒は、水、アルコール、及び酢酸の総量に対する水の含有量が3.4〜9.8質量%であることが好ましい。
本発明の燃料電池用電極の製造方法において、第1工程で使用する触媒複合体担持カーボンが酸処理されたものであることが好ましい。
以下、各工程について、順に説明する。
第1工程は、白金、チタン酸化物、及び導電性カーボンを含む触媒複合体担持カーボンを不活性ガス雰囲気下250℃以上で焼成することにより、該触媒複合体担持カーボン表面の酸性官能基量を減少させる工程である。
上述のように、従来技術では触媒複合体を導電性カーボンに担持させる際に、カーボン担体表面の酸性官能基量が増加する場合があった。特に触媒複合体担持カーボンを酸処理する場合には、酸性官能基量が顕著に増加する。
第1工程で白金、チタン酸化物、及び導電性カーボンを含む触媒複合体担持カーボンを不活性ガス雰囲気下で焼成することにより、触媒複合体担持カーボン表面の酸性官能基量を減少させることができる。当該焼成により酸性官能基量が減少するとカーボン担体表面がより疎水性になり、疎水性であるアイオノマと間の疎水性相互作用が強まるため、触媒複合体担持カーボンに対してアイオノマが吸着しやすくなると考えられる。
また、チタン酸化物表面を白金で被覆することで、高い触媒活性を維持しつつ白金使用量を削減することができることから好ましい。
不活性ガスは、触媒複合体担持カーボンに対して不活性なものであれば特に限定されないが、希ガスを使用することが好ましく、アルゴンガスであると更に好ましい。
焼成温度は250℃以上とすることで、触媒複合体担持カーボン表面の酸性官能基量を減少させることができる。触媒複合体担持カーボンの他の性質に影響を与えることなく、効率良く酸性官能基を減少させるため、通常、焼成温度は300℃以下とする。
焼成時間にも特に制限は無いが、効率良く酸性官能基を減少させるため、1時間以上焼成することが好ましい。また、通常、焼成時間は3時間以下とする。
焼成は、耐熱性容器に前記触媒複合体担持カーボンを入れて、温度調節可能な炉の中で行う。使用する炉は不活性ガスの雰囲気下で加熱可能なものであれば特に制限は無いが、通常、管状炉等を用いる。
触媒複合体担持カーボン表面の酸性官能基量は、触媒複合体担持カーボンの質量あたりのアンモニアガス吸着量(mol/g)を、前記触媒複合体担持カーボンが含有するカーボン担体の質量あたりのBET表面積(m2/g)で除した値(mol/m2)で示す。
触媒複合体担持カーボンが含有するカーボン担体の質量あたりのBET表面積(m2/g)は、以下のように算出する。まず、触媒複合体担持カーボンを容積が一定の測定セルに入れてN2を導入し、導入前後の圧力変動を、上記式(1)によって換算することで、触媒複合体担持カーボンの質量あたりの窒素ガスの吸着量(cm3/g)を算出する。上記式(1)によって算出された触媒複合体担持カーボンの質量あたりの窒素ガスの吸着量(cm3/g)を、下記式(2)によって換算することで、触媒複合体担持カーボンの質量あたりのBET表面積(m2/g)を算出する。
次に、触媒複合体担持カーボンが含有するカーボンの質量比率をNCH法(元素分析)によって算出する。ここで、触媒複合体表面の白金は窒素ガスを吸着しないとみなして、下記式(3)によって換算することで、触媒複合体担持カーボンが含有するカーボン担体の質量あたりのBET表面積(m2/g)を算出する。
式(3)
触媒複合体担持カーボンが含有するカーボン担体の質量あたりのBET表面積(m2/g)=触媒複合体担持カーボンの質量あたりのBET表面積(m2/g)/触媒担持カーボンが含有するカーボンの質量比率(mass/mass)
酸で触媒複合体担持カーボンを洗浄することにより、白金、導電性担体をほとんど溶解せずに、白金−チタン酸化物複合粒子の表面及び導電性担体上に存在するチタン酸化物を溶解することができるため、MEA性能低下の原因であるチタン酸化物のみを除去することができる。
また、白金−チタン酸化物複合粒子の表面からチタン酸化物を選択的に溶解することで白金−チタン酸化物複合粒子表面を白金で均一に被覆することができ、触媒活性を高めることができるため好ましい。
酸処理された触媒複合体担持カーボンでは、表面の酸性官能基量は増加する場合があるが、本発明の製造方法により、表面の酸性官能基量を減少させることができるので、電極材料として問題なく使用できるようになる。
酸の濃度は、チタン酸化物を溶解することができる濃度であれば特に限定されず、1〜46質量%、特に5〜46質量%であることが好ましい。
酸の温度は、特に限定されないが、15〜25℃であることが好ましい。
触媒複合体担持カーボンを酸で洗浄する時間は、特に限定されないが、1〜6時間であることが好ましい。
第2工程は、第1工程で得られた触媒複合体担持カーボン、アイオノマ、並びに、少なくとも水、アルコール、及び、酢酸を含む溶媒であって、水、アルコール、及び酢酸の総量に対する酢酸の含有量が29〜63質量%である溶媒を混合して触媒インクを製造する工程である。
アイオノマを溶解させることなく分散させるため、アイオノマの分散液として、一般的には、水とアルコールの混合液を用いる。触媒インクの溶媒も、通常、このアイオノマの分散液に準じるが、相対的に疎水性の表面を持つ触媒複合体担持カーボンの場合には、水とアルコールの混合液に酢酸を添加することで、触媒複合体担持カーボンと溶媒との親和性を高くして、触媒インク中の触媒複合体担持カーボンの分散性を高めることができる。
触媒複合体担持カーボンと溶媒との親和性は、湿潤熱によって表すことができる。
湿潤熱は、双子型伝導熱量計を用いて、アンプル内に導電性カーボン担体、試料セルに溶媒をセットし、アンプル管を破損させて導電性カーボン担体を溶媒に浸漬させ、その際の熱量を測定する等の方法により得ることができる。湿潤熱が高いほど、導電性カーボン担体と溶媒との親和性が高いといえる。
ここで、硝酸処理したCA250を上記第1工程の条件で焼成した相対的に疎水性のカーボン担体(表面酸性官能基量0.98μmol/m2)と硝酸処理したOSABを焼成せずに用いた相対的に親水性のカーボン担体(表面酸性官能基量2.80μmol/m2)の各種溶媒に対する湿潤熱(J/g)の関係を、以下に示す。
焼成カーボン担体:
酢酸(26.4)>プロパノール(21.9)>エタノール(21.7)>t−ブタノール(21.1)>水(4.9)
未焼成カーボン担体:
酢酸(81.7)>エタノール(71.7)>プロパノール(69.4)>t−ブタノール(54.2)>水(46.0)
未焼成カーボン担体では水と酢酸との湿潤熱の差が2倍程度であるが、焼成カーボン担体では水と酢酸との湿潤熱の差が5倍程度であり、疎水的な焼成カーボン担体では上記溶媒の種類の変更による影響が大きいことが分かる。
また、未焼成カーボン担体では親和性が最も低い水に浸漬した場合でも46.0J/gであるのに対し、焼成カーボン担体では親和性が最も高い酢酸に浸漬した場合でも26.4J/gであり、焼成カーボン担体は、疎水性が高いという長所はあるが、相対的に上記溶媒に対する親和性が低いという短所がある。よって、疎水的な焼成カーボン担体を使用する場合には、溶媒に対する親和性を高めるために、触媒インクの溶媒として酢酸を添加する必要があることが分かる。
また、疎水的な焼成カーボン担体では、プロパノール、エタノール及びt−ブタノールに対する親和性に違いは無く、アルコールであれば親和性に影響することなく触媒インクの溶媒として使用することができることが分かる。
ここで、触媒インクの溶媒として、水、アルコール、及び酢酸の総量に対する酢酸の含有量が29質量%未満である場合には、第1工程で得られた相対的に疎水性の表面である触媒複合体担持カーボンに対する親和性が不十分となり、触媒複合体担持カーボンに対するアイオノマの被覆率が低くなるため好ましくない。
一方、触媒インクの溶媒として、水、アルコール、及び酢酸の総量に対する酢酸の含有量が63質量%を超える場合には、アイオノマが触媒インクに溶解してしまい分散状態を維持できなくなり、触媒複合体担持カーボンに対するアイオノマの被覆率が低くなるため好ましくない。
水、アルコール、及び酢酸の総量に対する酢酸の含有量は29〜50質量%であることが好ましく、30〜45質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明において水、アルコール、及び酢酸の総量に対する水の含有量は、実用上3.4〜9.8質量%であることが好ましく、後述する第3工程で乾燥が容易になることから5.0〜7.0質量%であることがさらに好ましい。
触媒インクの分散方法としては、特に限定されないが、例えば、ホモジナイザー、ビーズミル、シェアミキサー、ロールミル等が挙げられる。
第3工程は、第2工程で得られた触媒インクを触媒層となるように形成する工程である。第3工程で形成した触媒層を備える燃料電池用電極は、酸化剤極又は燃料極に使用することができる。
触媒層の形成方法は、電解質膜に触媒層が積層した構造となるように形成することができる方法であれば、特に限定されない。また、触媒層の厚みも、特に限定されない。
触媒インクの塗布方法、乾燥方法等は適宜選択することができる。例えば、塗布方法としては、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法などが挙げられる。また、乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。減圧乾燥、加熱乾燥における具体的な条件に制限はなく、適宜設定すればよい。
電解質膜の厚みは、特に限定されないが、5〜30μmが好ましい。
ガス拡散層を形成するガス拡散層シートとしては、触媒層に効率良くガスを供給することができるガス拡散性、導電性、及びガス拡散層を構成する材料として要求される強度を有するもの、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の炭素質多孔質体や、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、ニッケル−クロム合金、銅及びその合金、銀、アルミ合金、亜鉛合金、鉛合金、チタン、ニオブ、タンタル、鉄、ステンレス、金、白金等の金属から構成される金属メッシュ又は金属多孔質体等の導電性多孔質体からなるもの等が挙げられる。導電性多孔質体の厚さは、50〜500μm程度であることが好ましい。
(製造例1)
容積1Lの4口フラスコに酢酸ナトリウム20.00gとジベンジリデンアセトン(dba)16.86gとエタノール430mLを投入した。
オイルバスの温度を50℃にセットし、アルゴンガスで1時間バブリングを行った。
一方、10.00gのK2PtCl4を86mLの超純水に溶解させ、アルゴンガスで1時間バブリングを行った。
1Lの4口フラスコ中のエタノール溶液にK2PtCl4水溶液を滴下した。
アルゴンガスをバブリングからフローに切り替え、オイルバスの温度を100℃に設定した。
12時間加熱還流させ、熱源を切った。
反応溶液の温度が室温まで下がってから吸引濾過を行った。
回収した試料に超純水150mLを加え、室温で15分間攪拌した。その後吸引濾過で試料を回収した。この作業を3回繰り返した。
回収した試料を48時間減圧乾燥し、Pt2(dba)3を得た。
導電性カーボン担体として130℃で12時間減圧乾燥させたCA250(商品名:電気化学工業株式会社製)を2.10g、500mLビーカーに投入した。溶媒として、脱酸素・脱水THFを210mL、前記ビーカーに投入した。スターラ―チップでTHF溶液を攪拌しながら、1分間ホモジナイズし、1分間停止するというサイクルを20分間繰り返した。その後、温度が上がったTHF溶液を冷却するために30分間攪拌し、導電性カーボン担体分散液を準備した。
チタン化合物として1.24gのTiCl4(THF)2を、溶媒として50mLの脱酸素・脱水THFに溶解させ、孔径5μmのフィルターに通し、チタン含有溶液を準備した。その後、チタン含有溶液を導電性担体分散液に滴下した。
白金化合物として2.02gのPt2(dba)3を、200mLの脱酸素・脱水THFに溶解させ、孔径5μmのフィルターに通し、白金含有溶液を準備した。その後、白金含有溶液を導電性カーボン担体分散液に滴下した。
そして、スターラーチップで混合溶液を攪拌しながら、5秒間ホモジナイズし、5秒間停止するというサイクルを20分間繰り返した。
温度が上がった混合溶液を冷却するために30分間攪拌し、白金イオン化合物及びチタンイオン化合物が導電性カーボン担体に担持してなる触媒前駆体を形成させた。
グローブボックス中にて、触媒前駆体1.20gを、石英製のボートに投入した。
ボートの穴をパラフィルムで塞ぎ、さらにチャック付きの袋に封じた。
ボートをチャック付き袋内に入れたままグローブボックスから取り出した。アルゴンガス(流速1000mL/分)を流しながら、ボートを管状炉内に設置した。
管状炉内を真空ポンプで減圧し、10分間保持後、アルゴンパージを行った。この操作を5回繰り返した。
100%水素を流速1000mL/分で流しながら、昇温速度が10℃/minとなるように15分ごとに炉の設定温度を100℃ずつ上げ、管状炉内を室温から500℃まで昇温させ、500℃で2時間保持した。その後、熱源を切り、自然放熱させた。
炉の温度が室温まで下がった後、流通させるガスを5%酸素/95%窒素の混合ガスに切り替えて3時間保持し、焼成体を得た。
回収した試料に超純水100mLを加え、室温で20分間攪拌した。攪拌後、吸引濾過し、濾液が中性になるまで超純水による洗浄を繰返した。
得られた触媒ケーキを12時間減圧乾燥させることにより、白金、チタン酸化物、及び導電性カーボンを含む触媒複合体担持カーボンを得た。
導電性カーボン担体としてCA250の代わりにOSAB(商品名:電気化学工業株式会社製)を使用したこと以外は、製造例1と同様にして触媒複合体担持カーボンを製造した。
(実施例1)
[第1工程]
製造例1で作製した触媒複合体担持カーボン4gを100%アルゴン雰囲気下、管状炉を用いて250℃で1時間焼成した。
[第2工程]
第1工程で焼成した触媒複合体担持カーボン1gをプラスチック製軟膏容器に分取し、ここに、t−ブタノール:17.48g、水:0.25g、Nafion系フッ化スルホン酸ポリマー分散液(組成:固形分10質量%、プロパノール45質量%、水45質量%):5.63g、酢酸:17.21gを添加した。当該プラスチック製軟膏容器にφ1mmのジルコニアビースを投入し、ビーズミルを用いて300rpmで6時間分散させ、脱泡機で公転脱泡した。脱泡後12μmのメンブレンフィルターで加圧ろ過した。
[第3工程]
第2工程で作製した触媒インクをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートにPt量が電極面積1cm2当り0.1mgになるようにキャストし、自然乾燥した。当該ポリテトラフルオロエチレンシートを1cm2角に裁断し電極触媒層とした。当該電極触媒層とNafion系フッ化スルホン酸ポリマー製の電解質膜とを重ね合わせて、3MPa、150℃で4分間プレスして接合し膜電極接合体(MEA)とした。
第2工程におけるt−ブタノールの添加量を23.08g、酢酸の添加量を11.61gにしたこと以外は、実施例1と同様にしてMEAを製造した。
第2工程におけるt−ブタノールの添加量を9.47g、酢酸の添加量を25.21gにしたこと以外は、実施例1と同様にしてMEAを製造した。
第1工程を行わなかったこと、第2工程においてt−ブタノールの添加量を4.47g、水の添加量を25.47gとしたこと、酢酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてMEAを製造した。
製造例2で作製した触媒複合体担持カーボンを1g使用したこと、第2工程においてt−ブタノールの添加量を6.89g、水の添加量を23.05gとしたこと以外は、比較例1と同様にしてMEAを製造した。
第2工程におけるt−ブタノールの添加量を26.00g、水の添加量を3.94gにしたこと以外は、比較例1と同様にしてMEAを製造した。
第2工程におけるt−ブタノールの添加量を14.97g、水の添加量を14.97gにしたこと以外は、比較例1と同様にしてMEAを製造した。
第2工程におけるt−ブタノールの添加量を26.35g、水の添加量を3.59gにしたこと以外は、比較例2と同様にしてMEAを製造した。
第1工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてMEAを製造した。
第2工程においてt−ブタノールの添加量を3.56g、水の添加量を26.38gとしたこと、酢酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてMEAを製造した。
第2工程におけるt−ブタノールの添加量を26.38g、水の添加量を3.56gにしたこと以外は、比較例7と同様にしてMEAを製造した。
第2工程におけるt−ブタノールの添加量を29.67g、水の添加量を0.27gにしたこと以外は、比較例7と同様にしてMEAを製造した。
第2工程におけるt−ブタノールの添加量を27.09g、水の添加量を5.05g、酢酸の添加量を2.80gにしたこと以外は、実施例1と同様にしてMEAを製造した。
第2工程におけるt−ブタノールの添加量を0.67g、水の添加量を0.68g、酢酸の添加量を33.59gにしたこと以外は、実施例1と同様にしてMEAを製造した。
前述のように触媒複合体担持カーボン表面の酸性官能基量(μmol/m2)は、触媒複合体担持カーボンの質量あたりのアンモニアガス吸着量(mol/g)を、触媒複合体担持カーボンが含有するカーボン担体の質量あたりのBET表面積(m2/g)で除して算出した。
具体的には、25℃で、第1工程で得られた触媒複合体担持カーボン又は製造例で得られたままの状態の触媒複合体担持カーボンを全自動ガス吸着量測定装置(AC−1−C/VP/TCD/MS:Quantachrome社製)の測定セルに入れ2時間脱気後、アンモニアガスを導入し、導入前後の圧力を測定した。アンモニアガス導入前後の圧力から前記式(1)を用いて触媒複合体担持カーボンの質量あたりのアンモニアガス吸着量(mol/g)を算出した。
次に、100℃で、触媒複合体担持カーボンを自動比表面積/細孔径分布測定装置(BELSORP−miniII:日本ベル株式会社製)の測定セルに入れ2時間脱気後、窒素ガスを導入し、導入前後の圧力を測定した。窒素ガス導入前後の圧力から前記式(1)を用いて触媒複合体担持カーボンの質量あたりの窒素ガス吸着量(mol/g)を算出し、算出した窒素ガス吸着量(mol/g)から前記式(2)を用いることによりに触媒複合体担持カーボンの質量あたりのBET表面積(m2/g)を算出した。また、NCH法による触媒担持カーボンが含有するカーボン質量比率は、全窒素・全炭素・全水素を測定できる元素分析計(スミグラフNCH−22)を用いて測定した。白金表面には窒素ガスは吸着しがたいことから、カーボン表面にのみ窒素ガスが吸着するとみなして、前記式(3)を用いて、触媒複合体担持カーボンが含有するカーボン担体の質量あたりのBET表面積(m2/g)を算出した。
実施例、比較例で得られた電極中の触媒複合体担持カーボンのアイオノマ被覆率の測定を行った。アイオノマ被覆率は、電極に対してフッ素溶媒下でサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行い算出した白金の電気化学表面積と水溶媒下でCV測定を行い算出した白金の電気化学表面積の値を用いて得た。
具体的には、フロリナートFC−3283(商品名:3M社製)下での白金の比表面積は、実施例、比較例で得られたMEAを組み込んだ燃料電池を用いて算出した。作製した燃料電池セルのカソードにフロリナートを供給し、カソードをフロリナートに浸した状態にした。また、加湿した水素ガスを供給流量0.5(NL/min)でアノードに供給した。この時、アノードやカソードの温度は、40℃であり、アノードの露点は40℃とした。
式(4)
アイオノマ被覆率=フッ素溶媒下での白金の電気化学表面積(m2/g−Pt)/水溶媒下での白金の電気化学表面積(m2/g−Pt)×100
実施例、比較例で得られたMEAの性能維持率の測定を行った。性能維持率は低加湿条件下(40%RH)で0.2A/cm2の電流密度値を示す電圧値の高加湿条件下(100%RH)で0.2A/cm2の電流密度値を示す電圧値に対する比率で表し、湿度条件に対するロバスト性を示す指標である。
まず、下記の高加湿条件下にて、実施例、比較例で得られたMEAを組み込んだ燃料電池を発電させ、電流密度値が0.2A/cm2における電圧値を算出した。
・アノードガス:相対湿度(RH)100%(バブラ露点80℃)の水素ガス
・カソードガス:相対湿度(RH)100%(バブラ露点80℃)の純酸素
・セル温度(冷却水温度):80℃
次に、下記の低加湿条件下にて、実施例、比較例で得られたMEAを組み込んだ燃料電池を発電させ、電流密度値が0.2A/cm2における電圧値を算出した。
・アノードガス:相対湿度(RH)40%(バブラ露点80℃)の水素ガス
・カソードガス:相対湿度(RH)40%(バブラ露点80℃)の純酸素
・セル温度(冷却水温度):80℃
性能維持率は下記の式(5)によって算出した。
式(5)
性能維持率=低加湿(40%RH)条件下(0.2A/cm2)における電圧値/高加湿(100%RH)条件下(0.2A/cm2)における電圧値×100
実施例及び比較例で作製した電極の製造条件、特性及び評価結果を表1に示す。
ここで、同一の製造条件で作製した触媒複合体担持カーボンの中でも酸性官能基量にばらつきがあるのは、現状1回で製造できる触媒複合体担持カーボンの量で、一つの燃料電池セルしか作製することができないため、実施例ごとに異なるロットのものを使用せざるを得ないためである。
数値にばらつきはあるものの、第1工程で焼成されることで触媒複合体担持カーボン表面の酸性官能基量は最大でも1.41μmol/m2にまで減少している。未焼成の触媒複合体担持カーボンでは、酸性官能基量は最小で1.77μmol/m2であることを考慮すると、焼成によって触媒複合体担持カーボン表面の酸性官能基量が減少していることは明らかである。
従って、本発明の製造方法の第1工程で焼成されることにより、触媒複合体担持カーボン表面が疎水化することが分かる。
第1工程で焼成された触媒複合体担持カーボンを使用しても、触媒インクの溶媒として酢酸を使用しない場合には、被覆率は最大で比較例8及び9の87%である。水とアルコールのみからなる溶媒と触媒複合体担持カーボンの親和性が低いためだと考えられる。ここで、比較例8の性能維持率は95.7%と比較的高いが、実用上、本試験において性能維持率が96%以上にならないと、加湿機を設けて常に高加湿のガスを燃料電池電極へ供給する必要があり、燃料電池システムの簡略化を達成することができないため、比較例8の被覆率では、不十分であるといえる。
また、第1工程で焼成された触媒複合体担持カーボンを使用し、触媒インクの溶媒に酢酸を使用した場合でも、水、アルコール、及び酢酸の総量に対する酢酸の含有量が29〜63質量%の範囲にある実施例1〜3の電極においてのみ、被覆率が90%以上であり、性能維持率を燃料電池システムを簡略化することができる96%以上にすることができる。
酢酸の含有量が29%未満(7%)である比較例10で被覆率と性能維持率が低い理由は、酢酸を含有しない場合と同様に、触媒インクの溶媒と触媒複合体担持カーボンの親和性が低いためであり、酢酸の含有量が63%を超える(84%)比較例11で被覆率と性能維持率が低い理由は、アイオノマが触媒インク中で分散状態を維持することができず溶解してしまっているためであると考えられる。
Claims (4)
- 白金、チタン酸化物、及び導電性カーボンを含む触媒複合体担持カーボンを含有する触媒層を備える燃料電池用電極の製造方法であって、
触媒複合体担持カーボンを不活性ガス雰囲気下250℃以上で焼成することにより、該触媒複合体担持カーボン表面の酸性官能基量を減少させる第1工程、
第1工程で得られた触媒複合体担持カーボン、アイオノマ、並びに、水、アルコール、及び、酢酸からなる溶媒であって、水、アルコール、及び酢酸の総量に対する酢酸の含有量が29〜63質量%である溶媒を混合して触媒インクを製造する第2工程、
第2工程で得られた触媒インクを用いて触媒層を形成する第3工程を含むことを特徴とする燃料電池用電極の製造方法。 - 第1工程で得られた触媒複合体担持カーボン表面の酸性官能基量が1.20μmol/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電極の製造方法。
- 第2工程で用いる溶媒は、水、アルコール、及び酢酸の総量に対する水の含有量が3.4〜9.8質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用電極の製造方法。
- 第1工程で使用する触媒複合体担持カーボンが酸処理されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用電極の製造方法。
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