JP5607597B2 - 再酸化防止高分子型燃料電池電極触媒 - Google Patents

再酸化防止高分子型燃料電池電極触媒 Download PDF

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Description

本発明は、高い活性を維持することができる電極触媒及びその製造方法に関する。特には、酸素雰囲気下で長期間使用した場合にも、電極触媒の触媒成分の高活性状態を維持することができる電極触媒及びその製造方法に関する。
従来から、高分子型燃料電池の電極触媒の触媒成分として、白金等の貴金属をカーボンブラックに担持した触媒が用いられてきた。しかしながら、従来の燃料電池においては、触媒成分として用いられる白金が長期間使用するうちに酸化や溶融等により性能が低下するため、白金を多く使用する必要があり、資源及びコストの面で問題があった。例えば自動車用燃料電池に関しては、自動車1台あたりの白金使用量が多く、将来の普及のためには白金の使用量を大幅に低減させる必要性があった。
特許文献1には、炭素粉末担体上に白金と1の補助金属とを特定の割合で合金化してなる触媒粒子が担持された電極触媒が記載されている。補助金属としては鉄又はコバルトが記載されおり、白金とこれらとを合金化することにより、電極触媒の高活性化及び高耐久化を両立できることが記載されている。
特許文献2には、白金又は白金合金からなる触媒成分と、任意成分として該触媒成分を担持する担体と、金属酸化物とを含む燃料電池用電極触媒が記載されている。特許文献2に記載の電極触媒においては、金属酸化物は触媒成分の被毒を緩和するために添加されており、これにより白金の質量活性を向上させ、白金の使用量を低減させることを目的としている。具体的には、金属酸化物としては、酸化タンタル及び/又は酸化ニオブが使用されている。しかしながら、特許文献2には、長期間使用した後の活性については記載されていない。
さらに、特許文献1及び2に記載されるような電極触媒は、酸素雰囲気下で長期間使用した場合、白金が酸化されることにより触媒反応が起こる機会が減り、反応効率が悪くなることが考えられる。
以上のように、従来技術においては、酸素雰囲気下で長期間使用した場合にも、初期の高い活性状態を維持できる白金/カーボン電極触媒は知られていない。
特開2003−142112号公報 特開2009−193956号公報
本発明は、高い活性を維持することができる電極触媒及びその製造方法を提供することを課題とする。特には、酸素雰囲気下で長期間使用した場合にも、電極触媒の触媒成分の高活性状態を維持することができる電極触媒及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は以下の発明を包含する。
(1)白金からなる触媒成分、該触媒成分を担持する担体及び酸性酸化物を含む電極触媒であって、
該触媒成分に還元処理を行うこと、及び
該酸性酸化物を添加することにより得られる、上記電極触媒。
(2)還元処理を行った後に酸性酸化物を添加して得られる、上記(1)に記載の電極触媒。
(3)酸性酸化物が二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素である、上記(1)又は(2)に記載の電極触媒。
(4)酸性酸化物の含有量が、電極触媒100質量部に対して1〜50質量部である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電極触媒。
(5)酸性酸化物が、(1)担体表面及び/又は内部に含まれる、(2)白金からなる触媒成分中に助触媒として含まれる、(3)電極触媒中に添加剤として含まれる、(4)担体として含まれる、から選択される、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電極触媒。
(6)担体が、活性炭、伝導性炭素、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びカーボンモレキュラーシーブからなる群から選択される少なくとも1種である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電極触媒。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の電極触媒を有する固体高分子型燃料電池。
(8)白金からなる触媒成分、該触媒成分を担持する担体及び酸性酸化物を含む電極触媒の製造方法であって、
該触媒成分に還元処理を行うこと、及び
該酸性酸化物を添加することを含む、上記方法。
(9)還元処理を行った後に酸性酸化物を添加する、上記(8)に記載の方法。
(10)酸性酸化物が二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素である、上記(8)又は(9)に記載の方法。
(11)酸性酸化物の含有量が、電極触媒100質量部に対して1〜50質量部である、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)酸性酸化物が、(1)担体表面及び/又は内部に含まれる、(2)白金からなる触媒成分中に助触媒として含まれる、(3)電極触媒中に添加剤として含まれる、(4)担体として含まれる、から選択される、上記(8)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)担体が、活性炭、伝導性炭素、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びカーボンモレキュラーシーブからなる群から選択される少なくとも1種である、上記(8)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14)酸性酸化物を添加した後に還元処理を行って得られる、上記(1)に記載の電極触媒。
(15)酸性酸化物が二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素である、上記(14)に記載の電極触媒。
(16)酸性酸化物の含有量が、電極触媒100質量部に対して5〜50質量部である、上記(14)又は(15)に記載の電極触媒。
(17)触媒成分/担体表面に酸性酸化物を溶液中で析出させることにより酸性酸化物を添加する、上記(14)〜(16)のいずれかに記載の電極触媒。
(18)アルコキシド加水分解により酸性酸化物を析出させる、上記(17)に記載の電極触媒。
(19)不活性ガス中380℃以上で加熱することにより還元処理を行う、上記(14)〜(18)のいずれかに記載の電極触媒。
(20)酸性酸化物の平均粒子径が、0.5〜30nmである、上記(14)〜(19)のいずれかに記載の電極触媒。
(21)上記(14)〜(20)のいずれかに記載の電極触媒を有する固体高分子型燃料電池。
(22)酸性酸化物を添加した後に還元処理を行う、上記(8)に記載の方法。
(23)触媒成分/担体表面に酸性酸化物を溶液中で析出させることにより酸性酸化物を添加する、上記(22)に記載の方法。
(24)アルコキシド加水分解により酸性酸化物を析出させる、上記(23)に記載の方法。
(25)不活性ガス中380℃以上で加熱することにより還元処理を行う、上記(22)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(26)不活性ガスがアルゴンである、上記(25)に記載の方法。
本発明の電極触媒は、酸素雰囲気下で長期間使用した場合にも、触媒成分の高活性状態を維持することができる。
図1は、実施例1(還元処理後二酸化チタン添加)、比較例1(無処理)及び比較例2(還元処理のみ)についての、初期、2週間後、4週間後及び7週間後の質量活性及びECSAを示す図である。 図2は、実施例2、3及び比較例3についての質量活性及びECSAを示す図である。 図3は、実施例4−9及び比較例4についての質量活性及びECSAを示す図である。 図4は、実施例4及び6についての、二酸化チタン析出後の結晶状態をXRDで測定した結果を示す図である。 図5は、実施例4、6及び比較例4についての、白金の状態をXPSにて解析した結果を示す図である。 図6は、実施例7、10−12及び比較例4についての質量活性及びECSAを示す図である。 図7は、実施例13及び比較例5についての質量活性及びECSAを示す図である。
本発明の電極触媒は、白金からなる触媒成分、該触媒成分を担持する担体及び酸性酸化物を含み、該触媒成分に還元処理を行う工程及び該酸性酸化物を添加する工程により得られることを特徴とする。電極触媒に酸性酸化物が添加されていない場合、還元処理により触媒表面の酸素濃度を下げることによって活性を向上させても時間の経過とともに活性が徐々に低下していく現象がみられる。しかしながら、本発明の電極触媒においては、酸性酸化物と白金との相互作用により、還元処理により得られる白金のメタルの状態(Pt)を長期間保つことができると考えられる。これにより、本発明の電極触媒は、長期間高活性を保つことができると考えられる。
本発明に用いる触媒成分は白金である。白金は高価な貴金属であるため、少ない担持量で十分な性能を発揮させることが好ましい。白金の含有量は、電極触媒100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることが特に好ましい。また、白金の含有量は、担体及び白金の合計を100質量部とした場合、10〜60質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることが特に好ましい。触媒成分は、当業界で慣用される様々な方法を用いて担体に担持することができる。
本発明に用いる担体は、触媒成分を担持するために電極触媒に加えられる。よって、触媒成分を担持できるとともに、それ自体が導電性を具備するものであれば特に限定されるものではない。例えば活性炭、伝導性炭素、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びカーボンモレキュラーシーブ等を使用することができる。触媒成分を担持する目的のために、導電性を具備し、かつ比表面積が大きい担体材料が好ましい。前記のような特徴を具備する担体を用いることにより、より広い触媒担持面積を確保することが可能となる。これによって、担持される触媒粒子の微小化を図ることができるため、結果として触媒活性を向上させることが可能となる。よって、これらの中では、Ketjen EC(ケッチェンブラックインターナショナル製)、アセチレンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル製)、バルカンXC−72R(Cabot製)、デンカブラック(DENKA製)のようなカーボン粉末が好ましい。担体の含有量は、電極触媒100質量部に対して、50〜90質量部であることが好ましく、60〜80質量部であることが特に好ましい。
本発明に用いる酸性酸化物は、pHが7未満である酸化物であれば特に限定されないが、pHが6以下である酸化物が好ましく、2〜5である酸化物が特に好ましい。本発明に用いる酸性酸化物としては、例えば二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化タングステン、酸化モリブデン、タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、これらの中では、酸であり、かつ溶融しにくいことから、二酸化チタン及び二酸化ケイ素が好ましい。これらの酸性酸化物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。尚、酸性化合物の代わりに酸化タンタルや酸化ニオブ等の塩基性酸化物を用いた場合には、白金との所望の相互作用が得られないため、本発明の効果は得られないと考えられる。
上記酸性酸化物の含有量は、電極触媒100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることが特に好ましい。
本発明の電極触媒は、触媒成分に還元処理を行うこと、及び酸性酸化物を添加することを含む方法により得られる。触媒成分の還元処理工程及び酸性酸化物の添加工程の順序は、触媒成分である白金がメタルの状態(Pt)に十分に還元される限り特に限定されないが、白金の還元状態を良好に保持し、触媒活性をより高める観点から、触媒成分の還元処理工程を酸性酸化物の添加工程の後に行うことが好ましく、簡便性の観点から、酸性酸化物の添加工程を触媒成分の還元処理工程の後に行うことが好ましい。
上記触媒成分の還元処理としては、触媒成分である白金がメタルの状態(Pt)に十分に還元される限り特に限定されないが、例えば湿式還元法、水素による加熱還元等の気相還元、光還元法が挙げられる。これらの中では簡便性の観点から、湿式還元法が好ましい。湿式還元法における還元剤としては、例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン等のボラン系化合物が挙げられ、還元力及び安定性の観点から、水素化ホウ素ナトリウムを用いることが好ましい。
上記酸性酸化物の添加工程に関し、添加の方法としては、簡便に粉末状の酸性酸化物と担体に担持された触媒成分とを物理混合することが挙げられる。また、物理混合の他に、還元析出法及びアルコキシド加水分解法等により酸性酸化物を添加してもよい。
上記酸性酸化物が配置される位置・場所には制限がなく、例えば(1)担体表面及び/又は内部に含まれる、(2)白金からなる触媒成分中に助触媒として含まれる、(3)電極触媒中に添加剤として含まれる、(4)担体として含まれる、から選択される。酸性酸化物は、白金との接触面積が大きくなるように含まれることが好ましい。
本発明の電極触媒の触媒粒子の平均粒子径は、電極触媒の活性を高める観点から、2.0〜6.0nmであることが好ましく、2.5〜4.0nmであることが特に好ましい。
本発明の電極触媒は、固体高分子型燃料電池に好ましく使用することができる。
本発明の好ましい一実施態様として、触媒成分の還元処理工程を酸性酸化物の添加工程の後に行う態様について以下に詳述する。
酸性酸化物としては、上記酸性酸化物のうち、二酸化チタンを用いることが好ましく、その結晶構造は特に限定されないが、アナターゼ型の二酸化チタンを用いることが特に好ましい。一般に、粒子径が小さな高活性触媒は、酸化が速いため、触媒製造後に活性が急速に低下する。しかしながら、アナターゼ型の二酸化チタンを用いた場合、白金との強い相互作用により、電極触媒の粒径が小さい場合であっても、白金のメタルの状態(Pt)を維持することができ、急速に活性が低下することを防ぐことができる。
上記酸性酸化物の含有量は、電極触媒100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることが特に好ましく、5〜30質量部であることがさらに特に好ましい。
上記酸性酸化物の添加工程は、触媒成分/担体の表面に酸性酸化物を高分散状態で析出させる観点から、アルコキシド加水分解法により行うことが好ましい。例えば、酸性酸化物として二酸化チタンを用いる場合、チタンのアルコキシドを溶媒で希釈し、これを触媒成分/担体と混練することにより吸着させ、イオン交換水を加えて加水分解させることにより、触媒成分/担体の表面に二酸化チタンを高分散状態で析出させることができる。
チタンのアルコキシドとしては、例えば、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、及びそれらの2〜6量体が挙げられ、更にはジエトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジプロポキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート等のキレート化合物を挙げることができる。
アルコキシドを溶解する溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、リグロイン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、ブタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、及びこれらの混合物が挙げられる。溶媒は、アルコキシドに対し、200〜2000質量%用いることが好ましく、400〜1000質量%用いることが特に好ましい。
加えるイオン交換水は、加水分解必要量の20〜3000倍モル量用いることが好ましい。また、イオン交換水は、アルコキシドに対し、40〜6000倍モル量用いることが好ましい。
上記還元処理は、不活性ガス及び/又は還元ガスによる加熱還元により行うことが好ましい。例えば、酸性酸化物を添加した触媒成分/担体を不活性ガス及び/又は還元ガス雰囲気中で白金のメタル化温度以上にすることにより焼成することができる。使用する不活性ガスとしては、例えば、希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン及びアルゴン等)、窒素等、及びこれらの混合気体が挙げられ、アルゴンが特に好ましい。使用する還元ガスとしては、例えば、水素、一酸化炭素等が挙げられる。加熱温度は、白金酸化物の熱分解の観点から、380℃以上が好ましく、380〜620℃が特に好ましく、480〜620℃がさらに特に好ましい。加熱時間は、白金酸化物が分解して生じた酸素をガス置換によりなくす観点から、10〜300分が好ましく、30〜120分が特に好ましい。
電極触媒の触媒粒子の平均粒子径は、電極触媒の活性を高める観点から、2〜6nmであることが好ましく、2.5〜4nmであることが特に好ましい。
酸性酸化物の平均粒子径は、白金との相互作用を高める観点から、0.5〜30nmであることが好ましく、0.5〜3nmであることが特に好ましい。
さらに本発明は、上記触媒成分が白金合金である電極触媒およびその製造方法にも関する。ここで、白金合金としては白金と、例えば、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、レニウム(Re)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及び金(Au)から選択される1種以上との合金が挙げられる。白金とコバルト、白金とマンガンとの合金が好ましく、白金とコバルトとの合金が特に好ましい。
上記白金合金の白金と上記金属との配合比(モル比)は2:1〜10:1であることが好ましく、3:1〜7:1であることが特に好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.酸性酸化物の添加による白金の高活性化状態の維持効果
[実施例1]
ケッチェンブラック[ケッチェンブラックインターナショナル製、(商品名)EC300J]に白金30質量部(カーボン及び白金の合計を100質量部とする)を担持した粒径4nmの粒子2gをイオン交換水250ml中で撹拌し、白金の2倍モル量の水素化ホウ素ナトリウムをイオン交換水250mlに溶解した溶液を添加して、30分撹拌することにより、液相にて還元反応を行い、これを濾過した。
これに、二酸化チタンTiO粉末30質量部(カーボン、白金及び二酸化チタンの合計を100質量部とする)を物理混合により添加し、電極触媒を得た。
[比較例1]
ケッチェンブラック[ケッチェンブラックインターナショナル製、(商品名)EC300J]に白金30質量部(カーボン及び白金の合計を100質量部とする)を担持させることにより、粒径4nmの電極触媒を得た。
[比較例2]
ケッチェンブラック[ケッチェンブラックインターナショナル製、(商品名)EC300J]に白金30質量部(カーボン及び白金の合計を100質量部とする)を担持した粒径4nmの粒子2gをイオン交換水250ml中で撹拌し、白金の2倍モル量の水素化ホウ素ナトリウムをイオン交換水250mlに溶解した溶液を添加して、30分撹拌することにより、液相にて還元反応を行った。これを濾過することにより、電極触媒を得た。
実施例1及び比較例1、2により得られた電極触媒について、以下の方法により、質量活性及び電気化学表面積(ECSA)を測定した。
<質量活性の測定>
燃料電池特性を評価するために、得られた電極触媒について、MEA(電解質膜−電極接合体)評価により質量活性を測定した。具体的には、質量活性は、13cm膜、電解質膜厚さ20μm、アイオノマー/カーボン比=1、Pt量0.1mg/cmのMEAについての、温度80℃、湿度100%における電流測定値のターフェルプロットにより算出した。結果を図1に示す。
<電気化学表面積(ECSA)の測定>
電気化学的特性を評価するために、得られた電極触媒について、質量活性の測定と同様にしてMEA(電解質膜−電極接合体)評価により、H吸着量から求めた電気化学表面積(ECSA)をそれぞれ求めた。具体的には、ECSA測定は、MEAセル温度40℃で水添加法にて、0.01〜0.6VサイクルでのH吸着量から算出した。結果を図1に示す。
図1より、初期において、還元処理のみを施した比較例2の電極触媒は、無処理の比較例1の電極触媒と比較して高い質量活性及びECSAを有することがわかる。そして、還元処理を施し、さらに二酸化チタンを添加した実施例1の電極触媒は、比較例2と同等の質量活性及びECSAを有することがわかる。
さらに、図1より、2週間、4週間及び7週間大気中に放置した後において、実施例1の電極触媒は高い質量活性及びECSAを維持していることがわかる。これに対し、還元処理のみを施した比較例2の電極触媒は、質量活性及びECSAが低下していることがわかる。
以上より、還元処理より得られた白金の高活性化状態が、酸性酸化物である二酸化チタンの添加により維持されていることがわかる。
2.アナターゼ型の二酸化チタンとルチル型の二酸化チタンとの比較
[実施例2]
ケッチェンブラック[ケッチェンブラックインターナショナル製、(商品名)EC300J]に白金30質量部(カーボン及び白金の合計を100質量部とする)を担持した粒径4.6nmの粒子1.0gに、平均粒子径30nmのアナターゼ型の二酸化チタンTiO粉末40質量部(カーボン、白金及び二酸化チタンの合計を100質量部とする)を物理混合により添加し、アルゴン雰囲気にて600℃で2時間焼成することにより還元して、電極触媒を得た。
[実施例3]
ケッチェンブラック[ケッチェンブラックインターナショナル製、(商品名)EC300J]に白金30質量部(カーボン及び白金の合計を100質量部とする)を担持した粒径4.6nmの粒子1.0gに、平均粒子径30nmのルチル型の二酸化チタンTiO粉末40質量部(カーボン、白金及び二酸化チタンの合計を100質量部とする)を物理混合により添加し、アルゴン雰囲気にて600℃で2時間焼成することにより還元して、電極触媒を得た。
[比較例3]
ケッチェンブラック[ケッチェンブラックインターナショナル製、(商品名)EC300J]に白金30質量部(カーボン及び白金の合計を100質量部とする)を担持させることにより、粒径4.6nmの電極触媒を得た。
実施例2、3及び比較例3により得られた電極触媒について、質量活性及び電気化学表面積(ECSA)を測定した。結果を図2に示す。
図2より、アナターゼ型の二酸化チタンを添加した電極触媒(実施例2)は、ルチル型の二酸化チタンを添加した電極触媒(実施例3)よりも高活性であることがわかる。また、二酸化チタン粉末の添加後に焼成により還元処理を行うことにより、活性が向上することがわかる。
3.物理混合による添加とアルコキシド加水分解による添加の比較
[実施例4]
[ケッチェンブラックインターナショナル製、(商品名)EC300J]に白金30質量部(カーボン及び白金の合計を100質量部とする)を担持した粒径2.5nmの粒子1.0gを得た。窒素で置換したグローブボックス内で、チタンテトラ−i−プロポキシド(C1228Ti)2.31gをエタノール2.5g(触媒重量の2.5倍)に加え、これを白金/カーボン粒子と混練して吸着させた。これにイオン交換水100mlを加えて濾過し、得られた残渣を真空乾燥した。
これにより、二酸化チタンTiO40質量部(カーボン、白金及び二酸化チタンの合計を100質量部とする)を粒子全体に析出させた。その後、アルゴン雰囲気にて200℃で2時間焼成して、電極触媒を得た。
[実施例5]
焼成温度を400℃とした以外は、実施例4と同様にして電極触媒を得た。
[実施例6]
焼成温度を500℃とした以外は、実施例4と同様にして電極触媒を得た。
[実施例7]
焼成温度を600℃とした以外は、実施例4と同様にして電極触媒を得た。
[実施例8]
白金/カーボン粒子の粒径が2.5nmである以外は、実施例2と同様にして電極触媒を得た。
[実施例9]
白金/カーボン粒子の粒径が2.5nmである以外は、実施例3と同様にして電極触媒を得た。
[比較例4]
白金/カーボン粒子の粒径が2.5nmである以外は、比較例3と同様にして電極触媒を得た。
実施例4−9及び比較例4により得られた電極触媒について、質量活性及び電気化学表面積(ECSA)を測定した。結果を図3に示す。
図3より、白金/カーボン粒子の粒径が2.5nmの場合、400℃以上で焼成を行った場合に、二酸化チタン粉末を物理混合するよりも、アルコキシド加水分解により析出させたほうが、メタル化維持効果が高く、高活性状態を保持できるこがわかる。
図4に、実施例4及び6について、二酸化チタン析出後の結晶状態をX線回折法(XRD:X-ray diffraction)で測定した結果を示す。図4より、析出した二酸化チタンはアナターゼ結晶であることがわかる。また、半価幅より、析出した二酸化チタンの粒径は、2.2nm(実施例4)及び6.6nm(実施例6)であり、物理混合に用いた二酸化チタンの粒子径(30nm)よりも遥かに小さいことがわかった。このために、二酸化チタンは高分散であり、白金と二酸化チタンとの強い相互作用が生じ、粒子径の小さい電極触媒においても、高いメタル化維持効果が得られ、高活性状態を保持できたものを考えられる。
図5に、最も活性が高かった実施例6の電極触媒(500℃焼成)の白金の状態をXPS(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)にて解析した結果を示す。X線光電子分光法の分析深さは約2nmであるので、図5の結果は白金最表面のみの酸化状態を示すものではないが、500℃焼成のものは、無処理(比較例4)やメタル化温度(約500℃)未満の200℃焼成(実施例4)と比較して白金メタルの割合が多いことがわかる。
4.二酸化チタンの添加量
[実施例10]
二酸化チタンTiO20質量部を析出させ、焼成温度を600℃とした以外は、実施例4と同様にして電極触媒を得た。
[実施例11]
二酸化チタンTiO10質量部を析出させ、焼成温度を600℃とした以外は、実施例4と同様にして電極触媒を得た。
[実施例12]
二酸化チタンTiO5質量部を析出させ、焼成温度を600℃とした以外は、実施例4と同様にして電極触媒を得た。
実施例7、10−12及び比較例4により得られた電極触媒について、質量活性及び電気化学表面積(ECSA)を測定した。結果を図6に示す。アルコキシド加水分解による析出後600℃焼成の条件下では、二酸化チタン添加量5質量部以上、特に10質量部以上においてメタル化維持効果が得られることがわかる。
5.触媒成分として白金合金を使用した電極触媒
[実施例13]
白金の代わりに白金コバルト合金(モル比7:1)を用い、粒径が4.5nmであり、焼成温度を600℃とした以外は、実施例4と同様にして電極触媒を得た。
[比較例5]
白金の代わりに白金コバルト合金(モル比7:1)を用い、粒径が4.5nmである以外は、比較例3と同様にして電極触媒を得た。
実施例13及び比較例5により得られた電極触媒について、質量活性及び電気化学表面積(ECSA)を測定した。
図7より、白金/コバルト合金を使用した場合にもメタル化維持効果が得られることがわかる。
本発明の電極触媒は、固体高分子型燃料電池に好ましく適用できる。

Claims (11)

  1. 白金からなる触媒成分、該触媒成分を担持する担体及び酸性酸化物を含む電極触媒であって、
    該触媒成分に還元処理を行った後に該酸性酸化物を添加する工程を含む方法により得られる、上記電極触媒。
  2. 酸性酸化物が二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素である、請求項に記載の電極触媒。
  3. 酸性酸化物の含有量が、電極触媒100質量部に対して1〜50質量部である、請求項1又は2に記載の電極触媒。
  4. 担体が、活性炭、伝導性炭素、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びカーボンモレキュラーシーブからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電極触媒。
  5. 白金からなる触媒成分が、白金とコバルト又はマンガンとの合金である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極触媒。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電極触媒を有する固体高分子型燃料電池。
  7. 白金からなる触媒成分、該触媒成分を担持する担体及び酸性酸化物を含む電極触媒の製造方法であって、
    該触媒成分に還元処理を行った後に該酸性酸化物を添加する工程を含む、上記方法。
  8. 酸性酸化物が二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素である、請求項に記載の方法。
  9. 酸性酸化物の含有量が、電極触媒100質量部に対して1〜50質量部である、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 担体が、活性炭、伝導性炭素、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びカーボンモレキュラーシーブからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項のいずれか1項に記載の方法。
  11. 白金からなる触媒成分が、白金とコバルト又はマンガンとの合金である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
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