JP6292119B2 - 研磨材再生方法 - Google Patents
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Description
その理由は、pHが10を超える範囲では被研磨物であるガラス成分の凝集性が高まり、添加剤の添加により研磨材成分よりも容易に凝集するためであると考えられる。
ケイ素が主成分である被研磨物を研磨した使用済みの研磨材を含む研磨材スラリーから、研磨材を再生する研磨材再生方法であって、当該研磨材が、酸化セリウムであり、かつ下記工程A〜Dを経て研磨材を再生することを特徴とする。
工程A:使用済みの研磨材を含む研磨材スラリーを回収するスラリー回収工程A
工程B:当該回収された研磨材スラリーの25℃換算におけるpHが7〜10となるようにpHを調整するpH調整工程B
工程C:当該pH調整された研磨材スラリーに対し、塩化マグネシウム又は硫酸マグネシウムを含有する水溶液を添加して研磨材を凝集させ、当該研磨材を母液より分離して濃縮する分離濃縮工程C
工程D:当該分離され、濃縮された研磨材を固液分離して回収する研磨材回収工程D
前記pH調整工程Bは、当該回収した研磨材スラリーの25℃換算におけるpHが7.8〜9.5となるようにpHを調整することを特徴とする。
前記研磨材回収工程Dにおける研磨材の回収方法が、自然沈降によるデカンテーション分離法であることを特徴とする。
工程E:前記研磨材回収工程Dの後に、前記回収された研磨材の粒子径を調整する粒子径制御工程Eを備えることを特徴とする。
一般に、光学ガラスや半導体基板等の研磨材としては、ベンガラ(αFe2O3)、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、コロイダルシリカ等の微粒子を水や油に分散させてスラリー状にしたものが用いられているが、本発明の研磨材再生方法では、半導体基板の表面やガラスの研磨加工において、高精度に平坦性を維持しつつ、十分な加工速度を得るために、物理的な作用と化学的な作用の両方で研磨を行う、化学機械研磨(CMP)への適用が可能な酸化セリウム、ダイヤモンド、窒化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ、アルミナジルコニア及び酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の研磨材の回収に適用することを特徴とする。
図1は、本発明の研磨材再生方法の基本的な工程フローの一例を示す模式図である。
本発明は、図1で示すスラリー回収工程Aの前に行われる研磨工程で使用された使用済み研磨材を、再生研磨材として再生する研磨材再生方法である。研磨材の再生方法を説明する前に、研磨材による研磨工程について説明する。
ガラス基板の研磨を例にとると、研磨工程では、研磨材スラリーの調製、研磨加工、研磨部の洗浄で一つの研磨工程を構成しているのが一般的である。
図1に示した研磨工程の全体の流れとしては、研磨機1は、不織布、合成樹脂発泡体、合成皮革などから構成される研磨布Kを貼付した研磨定盤2を有しており、この研磨定盤2は回転可能となっている。研磨作業時には、ケイ素を主成分とする被研磨物(例えば、光学ガラス、情報記録媒体用ガラス基板、シリコンウェハー等)3を、保持具Hを用いて、所定の押圧力Nで上記研磨定盤2に押し付けながら、研磨定盤2を回転させる。同時に、スラリーノズル5から、ポンプPを介して予め調製した研磨材液4(研磨材スラリー)を供給する。使用後の研磨材液4(使用済みの研磨材を含む研磨材スラリー)は、流路6を通じてスラリー槽T1に貯留され、研磨機1とスラリー槽T1との間を繰り返し循環する。
(1)研磨材スラリーの調製
研磨材の粉体を水等の溶媒に対して1〜40質量%の濃度範囲となるように添加、分散させて研磨材スラリーを調製する。この研磨材スラリーは、研磨機1に対して、図1で示したように循環供給して使用される。研磨材として使用される粒子は、平均粒子径が数十nmから数μmの大きさの粒子が使用される。
図1に示すように、研磨パット(研磨布K)と被研磨物3を接触させ、接触面に対して研磨材スラリーを供給しながら、加圧条件下でパットFと被研磨物3を相対運動させる。
研磨された直後の被研磨物3及び研磨機1には大量の研磨材が付着している。そのため、研磨した後に研磨材スラリーの代わりに水等を供給し、被研磨物3及び研磨機1に付着した研磨材の洗浄が行われる。この際に、研磨材を含む洗浄液10は系外9に排出される。
本発明でいう使用済み研磨材スラリーとは、洗浄液貯蔵槽T3に貯蔵される研磨材スラリー及び研磨機1、スラリー槽T1及び洗浄液貯蔵槽T3から構成される研磨工程の系外に排出される研磨材スラリーであって、主として以下の二種類がある。
ケイ素が主成分である被研磨物3を研磨した使用済みの研磨材を含む研磨材スラリーから高純度の研磨材を再生し、再生研磨材として再利用する本発明の研磨材再生方法は、図1に示すように、スラリー回収工程A、pH調整工程B、分離濃縮工程C、研磨材回収工程D、第2濃縮工程F及び粒子径制御工程Eの6つの工程を備える。なお、第2濃縮工程F及び粒子径制御工程Eは、再生研磨材として再利用する研磨材の種類、必要とされる濃度、純度等に応じて、どちらか一方又は両方の工程を適宜省略することができる。
スラリー回収工程Aは、ケイ素が主成分である被研磨物3を研磨した使用済みの研磨材を含む研磨材スラリーを回収する工程である。なお、回収された研磨材スラリーには、おおむね0.1〜40質量%の範囲で研磨材が含まれる。
pH調整工程Bは、スラリー回収工程Aにて回収された研磨材スラリーの25℃換算におけるpHが7〜10になるように、当該研磨材スラリーに対し酸又はアルカリを添加しpHを調整する工程である。pH調整工程BにおけるpHを調整する範囲は、7.8〜9.5になるように調整することがより好ましい。pHの範囲を7〜10に調整する理由は、当該pHの範囲外においては、添加剤の添加により被研磨物3由来のガラス成分が、研磨材成分とともに凝集し粗大粒子を作り、自然沈降による分離濃縮が困難になるためである。これは、当該pHの範囲外では被研磨物3であるガラス成分の凝集性が高まり、添加剤の添加により研磨材成分よりも容易に凝集するからであると考えられる。
pH調整工程BでpH調整剤として添加される酸又はアルカリは、特に限定されるものではなく、例えば、酸であれば、硫酸、塩酸、フッ化水素酸、硝酸等であってもよく、アルカリであれば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等であってもよい。
分離濃縮工程Cは、pH調整された研磨材スラリーに対し、無機塩としてアルカリ土類金属元素を含む金属塩を添加して研磨材を凝集させ、当該研磨材を母液より分離して濃縮する工程である。具体的には、分離濃縮工程Cは、pH調整工程BにてpH調整を行った研磨材スラリー(母液)に対して、無機塩として、例えば、塩化マグネシウムを添加し、研磨材のみを凝集させ、非研磨成分(ガラス成分)を凝集させない状態で、該研磨材を母液より分離させ、濃縮させる。これにより、分離濃縮工程Cは、研磨材成分のみを凝集沈殿させ、ガラス成分の大半を上澄みに存在させることができるため、研磨材成分とガラス成分との分離と、研磨材スラリーの濃縮を同時に行うことができる。
本発明に係るアルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩を挙げることができるが、更には、本発明においては、広義として周期律表の第2族に属する元素も、アルカリ土類金属であると定義する。したがって、ベリリウム塩、マグネシウム塩も本発明でいうアルカリ土類金属塩に属する。
研磨材回収工程Dは、分離濃縮工程Cにて分離され、濃縮された研磨材を固液分離して回収する工程である。
第2濃縮工程Fは、研磨材回収工程Dで回収した研磨材スラリーから使用済み研磨材を含む濃縮物を分離する。第2濃縮工程Fで用いられる分離方法には、不純物の混入を防止するため自然沈降法による分離を適用している。この濃縮物には、上澄み液の一部が分離・除去されていない状態で混入しているため、更に、第2濃縮工程Fとして、濾過処理により濃縮物に混入している上澄み液を除去して、回収された使用済み研磨材の純度をより一層高くする処理を施す。この濾過処理は、分離濃縮工程Cより前に実施することも可能ではあるが、回収スラリー中に存在するガラス成分による目詰まりを防ぐため、分離濃縮工程C及び研磨材回収工程Dにおいて一定量のガラス成分等を除去した後に、第2濃縮工程Fを適用することが、生産効率の観点から好ましい。また、第2濃縮工程Fは、より純度の高い再生研磨材を得るために、適用することが望ましい工程であるが、再生する研磨材の種類、必要とされる濃度等に応じて適宜省略することができる。
本発明の研磨材再生方法においては、上記各工程を経て回収した使用済みの研磨材を再利用するため、最終工程として、2次粒子状態で凝集している研磨材粒子を解膠して1次粒子状態の粒子径分布にする粒子径制御工程Eを備えてもよい。
上記粒子径制御工程Eを経て得られる最終的な回収研磨材は、98質量%以上の高純度の研磨材を含有し、粒度分布の経時変動が小さく、回収した時の濃度より高く、無機塩の含有量としては、0.0005〜0.08質量%の範囲であることが好ましい。
〔再生研磨材1の調製:比較例1〕
以下の製造工程に従って、研磨材として酸化セリウムを用いた再生研磨材1を調製した。なお、特に断りがない限りは、研磨材再生工程は、基本的には、25℃、55%RHの条件下で行った。このとき、溶液等の温度も25℃である。また、pH添加剤として、5%硫酸又は5%水酸化ナトリウムを使用した。
図1に記載の研磨工程で、研磨材として酸化セリウム(シーアイ化成社製)を用いてハードディスク用ガラス基板の研磨加工を行った後、洗浄水を含むリンススラリーを210リットル、使用済み研磨材を含むライフエンドスラリーを30リットル回収し、回収スラリー液として240リットルとした。この回収スラリー液は比重1.03であり、8.5kgの酸化セリウムが含まれている。
スラリー回収工程Aにて回収された使用済みの研磨材を含む研磨材スラリー(回収スラリー液)は、含まれる使用済み研磨材の平均粒子径が0.58μm、pHが9.5、Si濃度が1500mg/Lであった。この回収スラリー液に、pH調整剤として硫酸を500ml加えることにより、pHを5.0に調整した。
次いで、pH調整を行った回収スラリー液を酸化セリウムが沈降しない程度に撹拌しながら、無機塩として塩化マグネシウムの10質量%水溶液を2.0リットル、10分間かけて添加した。
上記の状態で30分撹拌を継続した後、45分間静置して、自然沈降法により、上澄み液と濃縮物とを沈降・分離した。45分後に、排水ポンプを用いて、上澄み液を排出して、濃縮物を固液分離して回収した。回収した濃縮物は60リットルであった。
第2濃縮工程Fは、図示しない濾過装置を用いる濾過処理により処理を行った。
分離した濃縮物に水12リットルを添加した。さらに、金属分離剤(高分子分散剤)としてポリティーA550(ライオン(株)製)を300g添加し、30分撹拌した後、超音波分散機(BRANSON社製)を用いて、濃縮物を分散して解きほぐした。
上記再生研磨材1の調製において、pH調整工程Bにおける硫酸の添加量を410mlに変更し、添加後のpH値を6.0に調整した以外は同様にして再生研磨材2を得た。
上記再生研磨材1の調製において、pH調整工程Bにおける硫酸の添加量を380mlに変更し、添加後のpH値を7.0に調整した以外は同様にして再生研磨材3を得た。
上記再生研磨材1の調製において、pH調整工程Bにおける硫酸の添加量を360mlに変更し、添加後のpH値を7.8に調整した以外は同様にして再生研磨材4を得た。
上記再生研磨材1の調製において、pH調整工程Bにおける硫酸の添加量を350mlに変更し、添加後のpH値を8.0に調整した以外は同様にして再生研磨材5を得た。
上記再生研磨材1の調製において、pH調整工程Bにおける硫酸の添加量を250mlに変更し、添加後のpH値を9.0に調整した以外は同様にして再生研磨材6を得た。
上記再生研磨材1の調製において、pH調整工程BにおけるpH調整剤を加えず、そのままのpHとした以外は同様にして再生研磨材7を得た。
上記再生研磨材1の調製において、pH調整工程BにおけるpH調整剤を水酸化ナトリウムに変更し、水酸化ナトリウムの添加量を260mlとし、添加後のpH値を10.0に調整した以外は同様にして再生研磨材8を得た。
上記再生研磨材1の調製において、pH調整工程BにおけるpH調整剤を水酸化ナトリウムに変更し、水酸化ナトリウムの添加量を720mlとし、添加後のpH値を11.0に調整した以外は同様にして再生研磨材9を得た。
上記再生研磨材1の調製において、pH調整工程BにおけるpH調整剤を水酸化ナトリウムに変更し、水酸化ナトリウムの添加量を1500mlとし、添加後のpH値を12.0に調整した以外は同様にして再生研磨材10を得た。
実施例1から6及び比較例1から4について、以下の方法に従って、純度の評価を行った。
〔添加剤添加後の研磨材粒子の平均粒子径〕
添加剤添加後の研磨材粒子の平均粒子径は、実施例1から6及び比較例1から4について、第2濃縮工程Fにより濾過処理された濃縮物に含まれる研磨材粒子100個のSEM像から平均粒子径を求めた。なお、ここでの研磨材粒子は、2次粒子の状態であるため、最終的に得られる再生研磨材よりも平均粒子径が大きくなる。
〔ICP発光分光プラズマによる成分分析〕
研磨材回収工程Dにおいて分離した上澄みに対して、ICPにより、ガラス成分(Si成分)の濃度を測定した。また、上澄みSi濃度/母液Si濃度の比率は、分離する前の母液に含まれるSi濃度を上澄みに含まれるSi濃度と同様に求め、比較により求めた。具体的には、下記の手順に従って行った。
(a)再生研磨材の10gを純水90mlで希釈した後、スターラーで撹拌しながら1ml採取した。
(b)原子吸光用フッ化水素酸を5ml加えた。
(c)超音波分散してシリカを溶出させた。
(d)室温で30分静置した。
(e)超純水で、総量を50mlに仕上げた。
以上の手順に従って調製した各検体液を、試料液Aと称する。
(a)試料液Aをメンブレンフィルター(親水性PTFE)で濾過した。
(b)濾液を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)で測定した。
(c)Siを標準添加法により定量した。
(a)試料液Aをよく分散し、5ml採取した。
(b)高純度硫酸を5ml加え、溶解させた。
(c)超純水で50mlに仕上げた。
(d)超純水で適宜希釈しICP−AESで測定した。
(e)マトリクスマッチングの検量線法により、各研磨材固有元素を定量した。
エスアイアイナノテクノロジー社製のICP−AESを使用した。
また、一定の期間連続運転を行うと、第2濃縮工程Fで用いられる濾過フィルターの表面には、研磨材粒子等が付着する。この付着した研磨材粒子等は、濾過フィルターの目詰まり等の濾過分離精度を損なう要因となるので、定期的に洗浄用に濾過フィルターの洗浄により排除することが好ましい。
2 研磨定盤
3 被研磨物
4 研磨材液
5 スラリーノズル
7 洗浄水
8 洗浄水噴射ノズル
10 研磨材を含む洗浄液
K 研磨布
T1 スラリー槽
T2 洗浄水貯蔵槽
T3 洗浄液貯蔵槽
Claims (4)
- ケイ素が主成分である被研磨物を研磨した使用済みの研磨材を含む研磨材スラリーから、研磨材を再生する研磨材再生方法であって、当該研磨材が、酸化セリウムであり、かつ下記工程A〜Dを経て研磨材を再生することを特徴とする研磨材再生方法。
工程A:使用済みの研磨材を含む研磨材スラリーを回収するスラリー回収工程A
工程B:当該回収された研磨材スラリーの25℃換算におけるpHが7〜10となるようにpHを調整するpH調整工程B
工程C:当該pH調整された研磨材スラリーに対し、塩化マグネシウム又は硫酸マグネシウムを含有する水溶液を添加して研磨材を凝集させ、当該研磨材を母液より分離して濃縮する分離濃縮工程C
工程D:当該分離され、濃縮された研磨材を固液分離して回収する研磨材回収工程D - 前記pH調整工程Bは、当該回収した研磨材スラリーの25℃換算におけるpHが7.8〜9.5となるようにpHを調整することを特徴とする請求項1に記載の研磨材再生方法。
- 前記研磨材回収工程Dにおける研磨材の回収方法が、自然沈降によるデカンテーション分離法であることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨材再生方法。
- 工程E:前記研磨材回収工程Dの後に、前記回収された研磨材の粒子径を調整する粒子径制御工程Eを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の研磨材再生方法。
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