以下、本発明について詳細に説明する。
<電子写真感光体の構成>
(電子写真感光体の層構成)
本発明の電子写真感光体は、負帯電型の電子写真感光体であり、導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に感光層が積層されてなるものである。
本発明の電子写真感光体においては、感光層は、露光によって電荷を発生させる機能と、発生させた電荷(正孔)を感光体表面に輸送する機能とを有する。感光層は、電荷発生機能と、電荷輸送機能とを同一の層で行う単層構造を有していてもよく、電荷発生機能と電荷輸送機能とを異なる層で行う積層構造を有していてもよい。しかし、繰り返し使用による残留電位の増加を抑制するためには、電荷発生層と電荷輸送層との積層構造を有することが好ましい。また、本発明の電子写真感光体は、感光層上にさらに保護層が形成されていてもよい。
本発明の電子写真感光体の層構成は、特に限定されるものではないが、具体的な例としては、下記(1)および(2)の層構成が挙げられる。すなわち、(1)導電性支持体上に、中間層を有し、この中間層上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層がこの順に積層された積層構造の感光層が積層され、前記電荷輸送層が最表面層となる層構成、(2)導電性支持体上に、中間層を有し、この中間層上に、電荷発生物質および電荷輸送物質を含有する単層構造の感光層が積層され、前記感光層(単層)が最表面層となる層構成、である。
本発明において、電子写真感光体は、電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能および電荷輸送機能の少なくとも一方の機能が有機化合物により発揮されて構成されるものが好ましい。本発明の電子写真感光体には、公知の有機電荷発生物質または有機電荷輸送物質から構成される感光層を有する感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とが高分子錯体により構成される感光層を有する感光体など公知の電子写真感光体全てが含まれる。
以下、本発明の電子写真感光体が上記(1)の好ましい層構成である場合について説明する。上記(1)の層構成の電子写真感光体では、導電性支持体上に、中間層を介して電荷発生層および電荷輸送層がこの順に積層されてなる感光層が形成されている。この電子写真感光体の表面が負に帯電された後、露光されると、電荷発生層において電荷が発生する。電荷発生層で発生した電荷のうち、負電荷(電子)は中間層を経て導電性支持体に移動し、正孔は電荷輸送層を経て電子写真感光体表面に移動して電子写真感光体表面の負電荷を打ち消すことにより、電子写真感光体表面に静電潜像が形成される。本発明においては、中間層に有機ケイ素化合物により疎水化処理された後100〜300℃の温度で熱処理された金属酸化物粒子の少なくとも1種と、バインダー樹脂とが含まれていることが特徴である。既存の電子写真感光体にあっては、中間層に用いる金属酸化物(例えば、酸化チタン)粒子表面の過剰な水酸基と溶剤の水酸基との作用で、凝集チックな現象が生じて、中間層形成用塗布液の塗布性が乱れ、形成される中間層の表面平滑性に影響していた。さらに、この中間層に生じた表面起伏(凹凸)をトレースした状態で感光層も形成されてしまうことになる。その結果、電子写真感光体の表面平滑性にも影響し、画像ムラになっていた。本発明によれば、金属酸化物(酸化チタン等)粒子を熱処理することで余分な水酸基を除くことで、中間層形成用塗布液の塗布性を良好にすることができ、その結果、画像欠陥がなく良好な電子写真感光体を提供することができるものである。また、金属酸化物(酸化チタン等)粒子表面の過剰な水酸基を除くことで、水分を抱き込み難くなり、環境変動下時(湿度変化が異なる環境下で)の感度変動(画像変動)が小さく、環境下感度安定性、更には電気的安定性に優れた電子写真感光体を提供することもできる。
次に、本発明の電子写真感光体を構成する導電性支持体、中間層、電荷発生層および電荷輸送層を備える感光層について、それぞれの層を構成する部材について説明する。
<導電性支持体>
本発明の電子写真感光体を構成する導電性支持体としては、円筒状、またはシート状のものであって、導電性を有していればいずれのものでもよく、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属をドラムまたはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙などが挙げられる。
<中間層>
本発明の電子写真感光体では、導電性支持体と感光層の間に、有機ケイ素化合物により疎水化処理された後100〜300℃の温度で熱処理された金属酸化物粒子の少なくとも1種と、バインダー樹脂と、を含有する中間層を設ける。
本発明の電子写真感光体が、温湿度条件が異なる環境下での画像変動が小さく、電気的安定性に優れ、画像欠陥等がなく、また感光体の生産においても塗布性に優れ、画像欠陥の抑制に大いに寄与し得る理由としては、詳細は不明であるが、以下のように推測される。中間層に、有機ケイ素化合物により疎水化処理された後100〜300℃の温度で熱処理された金属酸化物粒子の少なくとも1種と、バインダー樹脂とを含有させることを特徴とする。これは、既存の電子写真感光体にあっては、中間層に用いる金属酸化物粒子表面の過剰な水酸基と溶媒の水酸基との作用で凝集チックな現象が生じて、中間層形成用塗布液の塗布性が乱れ、形成される中間層の表面平滑性に影響していた。さらに、この中間層に生じた表面起伏(凹凸)をトレースした状態で感光層も形成されてしまうことになる。その結果、電子写真感光体の表面平滑性にも影響し、画像ムラになっていた。本発明によれば、金属酸化物(酸化チタン等)粒子を熱処理することで余分な水酸基を除くことで、中間層形成用塗布液の塗布性を良好にすることができ、その結果、画像欠陥がなく良好な電子写真感光体の提供に大いに寄与し得るものである。また、金属酸化物(酸化チタン等)粒子表面の過剰な水酸基を除くことで、水分を抱き込み難くなり、環境変動下時(温湿度条件が異なる環境下で)の感度変動(画像変動)が小さく、環境下感度安定性、更には電気的安定性に優れた電子写真感光体の提供の提供に大いに寄与し得るものといえる。しかしながら、上記のメカニズムは推測であり、本発明を限定するものではない。
上記金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの微粒子を用いることができる。これら金属酸化物粒子を1種類もしくは2種類以上混合して用いることができる。なかでも、電位安定性の観点から、2種類以上混合して用いるのが好ましく、このうち、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化スズよりなる群から選ばれてなるものがより好ましく、これらの群から2種以上混合して用いるのが好ましい。なかでも酸化チタンがさらに好ましく、特にルチル型酸化チタンがより好ましく、上記の群から酸化チタン、特にルチル型酸化チタンを含む2種以上混合して用いるのが好ましい。
金属酸化物粒子は、数平均一次粒子径が5〜100nmのものが好ましく、より好ましくは10〜50nmである。金属酸化物粒子の数平均一次粒子径が上記の範囲内であると、電子輸送性が好適であり、分散性が損なわれることがないため、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を十分に抑制でき、かつ、濃度ムラの発生を十分に抑制できる。
本発明において、金属酸化物粒子の数平均一次粒子径は、以下のように測定されるものである。すなわち、金属酸化物粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)画像を倍率100000倍で観察し、100個の粒子を一次粒子としてランダムに選択する。これらの一次粒子のフェレ方向平均径を画像解析により測定し、それらの平均値を「数平均一次粒子径」として求めるものとする。
金属酸化物粒子を疎水化処理するためには、金属酸化物粒子を有機ケイ素化合物(表面処理剤)によって疎水化(表面)処理することができる。その際、金属酸化物粒子の種類、有機ケイ素化合物(表面処理剤)の種類、有機ケイ素化合物(表面処理剤)の使用量、表面(疎水化)処理の条件等によって、金属酸化物粒子の疎水化度を変化させることができる。典型的には、有機ケイ素化合物(表面処理剤)および有機ケイ素化合物(表面処理剤)の使用量を適当に選択することにより、疎水化度を比較的大きく変化させることができ、表面(疎水化)処理条件を調整することによりさらに所望の疎水化度に近づけることができる。本発明の金属酸化物粒子の疎水化(表面)処理では、有機系化合物である有機ケイ素化合物(表面処理剤)を用いた疎水化(表面)処理を施すことが好ましい。さらに、本発明では、予め有機ケイ素化合物以外の無機系化合物の表面処理剤を用いた表面処理をした後に、有機系化合物である有機ケイ素化合物(表面処理剤)を用いた疎水化(表面)処理を施すことがより好ましい。即ち、金属酸化物粒子は、有機ケイ素化合物(表面処理剤)による疎水化(表面)処理のほかに、さらに他の表面処理が施されていていてもよい。他の表面処理としては、無機系化合物(無機酸化物)の表面処理剤による無機処理、および有機ケイ素化合物以外の有機系化合物の表面処理剤による有機処理がある。これらに用いられる表面処理剤としては、有機ケイ素化合物、有機ケイ素化合物以外の有機系化合物、無機系化合物(無機酸化物)が挙げられる。有機ケイ素化合物以外の有機系化合物としては、有機チタン化合物などが挙げられる。
本発明の疎水化処理に用いる有機ケイ素化合物は、バインダー樹脂との分散性に極めて優れることから、特に制限はないが、下記一般式(1)で表されるシラン化合物、または、シラザン化合物、もしくはポリシロキサン化合物であることが好ましい。
一般式(1)中、Rは、炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル基、または、炭素数6〜13の置換もしくは非置換のアリール基を表し、Xは、炭素数1〜4のアルコキシ基、または、ハロゲン原子を表す。
Rに含まれる置換基としては、ビニル基、メタクリロキシ基およびアクリロキシ基が挙げられる。
より具体的には、有機ケイ素化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、ペンチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、メトキシメチルジクロロシラン、エトキシメチルジクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、ジメトキシエチルクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、などのアルコキシシラン;ヘキサメチルジシラザン、およびメチルハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。このうち、金属酸化物粒子の疎水化(疎水化度)を制御しやすいことから、特に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。これらは、有機ケイ素化合物として、単独でも、二種以上を用いてもよい。
このうち、メチルハイドロジェンポリシロキサンは、メチルハイドロジェンシロキサン単位−(HSi(CH3)O)−の構造単位を含むポリシロキサンであり、これ以外の他のシロキサン構造単位との共重合体が好ましい。他のシロキサン単位としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジエチルシロキサン単位等が挙げられ、2種以上が含まれていてもよい。
このうち、本発明の所期の効果をより達成しやすいことから、有機ケイ素化合物は、特にn−ヘキシルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、メチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。また、2種以上を用いる場合の有機ケイ素化合物の組み合わせとしては、シラン化合物同士の組み合わせ、シラン化合物およびシロキサン化合物の組み合わせがより好ましい。より具体的には、n−ヘキシルトリメトキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの組み合わせ、n−ヘキシルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびp−スチリルトリメトキシシランの一種並びにメチルハイドロジェンポリシロキサンの組み合わせが好ましい。
有機ケイ素化合物以外の有機系化合物による表面処理としては、有機チタン化合物による表面処理が挙げられる。有機チタン化合物としては、例えば、アルコキシチタン(即ち、チタンアルコキシド)、チタンポリマー、チタンアシレート、チタンキレート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等を使用できる。このうち、特にチタンアシレート及び、チタンキレートが好ましい。上記有機チタン化合物は、単独でも、二種以上を用いてもよい。
表面処理剤となる無機系化合物(無機酸化物)としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニアやそれらの水和物、などの無機酸化物が挙げられる。このうち、本発明の所期の効果をより達成しやすいことから、特にアルミナ、シリカ、アルミナおよびシリカの組み合わせが好ましい。これらは、単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記有機ケイ素化合物等の表面処理剤(疎水化処理剤)による金属酸化物粒子の疎水化(表面)処理は、公知の方法により行うことができ、特に限定されず、湿式処理または乾式処理を採用することができる。乾式処理としては、金属酸化物粒子を撹拌等によりクラウド状に分散させたものに、アルコール等で溶解した有機ケイ素化合物等の表面処理剤(疎水化処理剤)溶液を噴霧するか或いは気化した有機ケイ素化合物等の表面処理剤(疎水化処理剤)を接触させて付着させることができる。また、湿式処理による疎水化(表面)処理方法としては、例えば、有機ケイ素化合物等の表面処理剤(疎水化処理剤)を有機溶媒(または水)に溶解または分散させた有機ケイ素化合物等の表面処理剤(疎水化処理剤)溶液に、金属酸化物粒子を添加して混合・撹拌する、または、金属酸化物粒子を溶液中に分散させ、その中に有機ケイ素化合物等の表面処理剤(疎水化処理剤)を滴下して付着させ、ビーズミル等によって湿式解砕処理を行うことができる。その後、得られた溶液から溶媒を減圧蒸留等により除去し(または得られた溶液をろ過、乾燥し)、得られた金属酸化物粒子をアニール処理(焼き付け)することにより疎水化(表面)処理を施すことができる。このうち、製造工程がより簡便であることから、湿式処理が好ましい。
上記有機ケイ素化合物等の表面処理剤(疎水化処理剤)溶液を調製するための溶媒としては、有機溶媒が好ましく、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。
上記の混合・撹拌は、金属酸化物粒子が十分に分散されるまで適宜行えばよい。湿式処理の際の混合・撹拌時の温度は、30〜150℃程度であることが好ましく、40〜60℃がより好ましい。混合・撹拌時間は、0.5〜10時間であることが好ましく、1〜5時間がより好ましい。上記ビーズミル等の湿式解砕処理の際の温度は、15〜100℃程度であることが好ましく、20〜50℃がより好ましく、より好ましくは30〜40℃である。湿式解砕処理の際の時間は、10分〜10時間であることが好ましく、10分〜5時間がより好ましく、さらに好ましくは10〜120分が好ましく、特に好ましくは30〜70分である。アニール処理(焼き付け)温度は、例えば100〜220℃、好ましくは110〜150℃とすることができる。アニール処理(焼き付け)時間は0.5〜10時間が好ましく、より好ましくは1〜5時間である。しかしながら、これらの条件は一例であり、処理装置によって変動する場合があるため、必ずしも上記の範囲で実施しなくともよい。
湿式の疎水化(表面)処理方法においては、上記有機ケイ素化合物を含む表面処理剤(疎水化処理剤)の使用量は、目的とする疎水化度および表面処理剤(疎水化処理剤)の種類によって異なるため一概に規定することはできず、適宜選択して疎水化(表面)処理することが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物による疎水化処理の場合には、未処理金属酸化物粒子100質量部に対して有機ケイ素化合物0.1〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部を使用することができる。有機ケイ素化合物以外の有機チタン化合物を併用する場合には、未処理金属酸化物粒子100質量部に対して有機ケイ素化合物等を0.1〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部使用することができる。溶媒の添加量は、未処理金属酸化物粒子100質量部に対して100〜600質量部、より好ましくは200〜500質量部であることが好ましい。
上記有機ケイ素化合物(等)である表面処理剤(疎水化処理剤)の使用量がそれぞれ上記の下限値以上であれば、未処理金属酸化物粒子に対して十分な疎水化(表面)処理を行えるため、中間層の正孔ブロッキング性を維持することができ、電気的安定性を維持できるとともに、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を十分に抑制することができる。一方、上記有機ケイ素化合物(等)の使用量がそれぞれ上記の上限値以下であれば、有機ケイ素化合物(等)同士が反応することにより、金属酸化物粒子の表面に均一な被膜が付着されず、リークが発生しやすくなることを防止できる。
また、金属酸化物粒子は、上記有機ケイ素化合物(等)を用いた疎水化処理(有機処理)の前に、無機系化合物(無機酸化物)による無機処理が施されていることが好ましい。無機処理をするには、以下のような方法を用いることができる。すなわち、金属酸化物粒子を水などの溶媒に分散させ、撹拌および懸濁させる。分散液の濃度は、粒子表面全体が無機処理(表面処理)できれば特に制限はないが、金属酸化物粒子の濃度を0.1〜20質量%とすることが好ましい。この懸濁液に、水酸化ナトリウム等を添加してpHを好ましくは8.0以上とする。次いで、シリカ処理の場合はケイ酸塩溶液等、アルミナ処理の場合はアルミン酸溶液等の前駆体溶液を分散液に添加し、好ましくは60〜100℃に昇温する。無機表面処理剤である無機系化合物(無機酸化物)の添加量としては、金属酸化物粒子に対して無機系化合物(無機酸化物)が1〜20質量%が好ましい。その後、pHが酸性となるように酸を0.5〜5時間かけて滴下して中和し、得られた表面処理済み金属酸化物粒子を濾過し、洗浄し、乾燥して完成させることができる。しかしながら、上記の処理方法は一例であり、必ずしもこれらの条件を使用しなくてもよい。
無機系化合物(無機酸化物)による表面処理を施した金属酸化物粒子は、シリカ、アルミナ処理を施した酸化チタン粒子などの市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、T−805(日本アエロジル社製)、STT−30A、STT−65S−S(チタン工業社製)、TAF−500T、TAF−1500T(富士チタン工業社製)、MT−100S、MT−100T、MT−100SA、MT−500SA(テイカ社製)、IT−S(石原産業社製)などが挙げられる。
疎水化処理後の金属酸化物粒子の疎水化度は45%〜95%であることが好ましく、より好ましくは50〜75%である。45%以上であると、キャリアのブロッキング性が確実となり、カブリなどの画像欠陥を効果的に抑制できる。一方、95%以下であると、金属酸化物粒子の表面処理量が少なくて済むため電子輸送性が確保でき、濃度ムラを効果的に防止できる。
上記疎水化度は、メタノールに対する濡れ性の尺度(%)を表し、以下の式で求められる。下記式中、a(ml)は、50mlの蒸留水に添加した0.2gの粒子を完全に濡らすために必要なメタノールの量を表す。
本発明では、上記したように、無機処理をした金属酸化物粒子に、さらに有機ケイ素化合物(更に他の有機系化合物(疎水化処理剤)を含んでいてもよい)で疎水化処理したものを用いることが好ましい。金属酸化物粒子を疎水化処理することにより、金属酸化物粒子の表面にある活性水酸基が被覆され不要な活性を抑えることができるが、表面の活性水酸基は、特に無機処理に加えて有機ケイ素化合物により有機処理(疎水化処理)することにより、より確実に被覆でき、これを大きく減らすことができるためである。とりわけ、シリカおよび/またはアルミナ処理した後にシラン化合物による表面処理を施す組み合わせが好ましい。
中間層に含まれる金属酸化物粒子が疎水化(表面)処理されているかどうかは、製造工程の確認、または中間層に含まれる金属酸化物粒子の表面の無機分析を、透過型、エネルギー分散型X線分析法(TEM−EDX)や、波長分散型蛍光X線分析(WDX)によって行い確認することができる。
本発明では、中間層に含まれる金属酸化物粒子は、上記有機ケイ素化合物による疎水化処理された後、100〜300℃の温度で熱処理された金属酸化物粒子を少なくとも1種含むものである。このような疎水化処理を施した金属酸化物粒子を、100〜300℃の温度で熱処理することで、金属酸化物粒子の過剰な水酸基と溶剤の水酸基との作用で、凝集チックな現象が生じて塗布性が乱れ、画像ムラになるのを防止し、余分な水酸基を除去することができ、塗布性を良好にし、画像欠陥をなくすことができるためである。また過剰な水酸基を除くことで、水分を抱き込み難くなり、環境変動下時の感度変動を小さくすることができ、画質の安定化、更には電気的安定性を図ることができるなど、本発明の所期の効果を達成し得るものである。
上記疎水化処理された金属酸化物粒子を熱処理する際の温度としては、100〜300℃、好ましくは110〜290℃、より好ましくは150〜280℃の範囲である。かかる熱処理温度が100℃未満の場合には、本発明の効果が得られず、湿度変化間での感度変動、画像欠陥、塗布性、電気的安定性(表面電位変化)が良好でない。詳しくは、上記疎水化処理された金属酸化物粒子表面に存在する過剰な水酸基と溶媒の水酸基との作用で、凝集チックな現象が生じて塗布性が乱れ、画像ムラになるのを十分に防止することができない。また、上記疎水化処理された金属酸化物粒子表面に存在する過剰な水酸基を十分に除くことができないため、水分を抱き込みやすくなり、環境変動下時の感度変動が大きくなり、画質の安定化、電気的安定性が困難となるなど、本発明の所期の効果を達成し得ない点で好ましくない(表2の比較例2参照)。また、熱処理温度が300℃を超える場合には、疎水化(表面)処理した有機ケイ素化合物の脱落等が発生するためか、同様に湿度変化間での感度変動、画像欠陥、塗布性、電気的安定性(表面電位変化)が良好でないなど、本発明の所期の効果を達成し得ない点で好ましくない(表2の比較例3参照)。
上記疎水化処理された金属酸化物粒子を熱処理する際の時間としては、好ましくは0.5時間〜8.5時間、より好ましくは1〜8時間の範囲である。かかる熱処理温度が0.5時間以上であれば、画像欠陥、塗布性に関し、実害ないレベルであり、わずかに欠陥が見られる程度の良好な結果が得られる。更に熱処理温度が1時間以上であれば、上記疎水化処理された金属酸化物粒子表面に存在する過剰な水酸基と溶剤の水酸基との作用で、凝集チックな現象が生じて塗布性が乱れ、画像ムラになるのを防止し、余分な水酸基を除去することができ、塗布性を良好にし、画像欠陥をなくすことができるためである。また上記疎水化処理された金属酸化物粒子表面に存在する過剰な水酸基を除くことで、水分を抱き込み難くなり、環境変動下時の感度変動を小さくすることができ、画質の安定化、更には電気的安定性を図ることができるためである(表2の実施例8と実施例9とを対比参照のこと)。同様に、上記熱処理温度が8.5時間以下であれば、画像欠陥、塗布性に関し、実害ないレベルであり、わずかに欠陥が見られる程度の良好な結果が得られる。更に熱処理温度が8時間以下であれば、上記疎水化処理された金属酸化物粒子表面に存在する過剰な水酸基と溶剤の水酸基との作用で、凝集チックな現象が生じて塗布性が乱れ、画像ムラになるのを防止し、余分な水酸基を除去することができ、塗布性を良好にし、画像欠陥をなくすことができるためである。また上記疎水化処理された金属酸化物粒子表面に存在する過剰な水酸基を除くことで、水分を抱き込み難くなり、環境変動下時の感度変動を小さくすることができ、画質の安定化、更には電気的安定性を図ることができるためである(表2の実施例10と実施例11とを対比参照のこと)。
上記疎水化処理された金属酸化物粒子を熱処理する際の雰囲気としては、特に制限されるものではなく、大気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、酸化ガス雰囲気下などで行うことができるが、好ましくは、経済性の観点から大気雰囲気下で行うのが望ましい。
上記疎水化処理された金属酸化物粒子を熱処理する際の圧力としては、特に制限されるものではなく、大気圧下、加圧下、減圧(真空)下のいずれでもよいが、好ましくは、経済性の観点から大気圧下で行うのが望ましい。
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子を熱処理する方法(手段ないし装置)としては、特に制限されるものではなく、バットになるべく平らな状態で入れ、上記した熱処理温度及び時間、オーブンで放置して、熱処理すればよいが、かかる熱処理方法(手段ないし装置)に何ら制限されるものではなく、金属酸化物粒子表面全体を均一に熱を加えることができる(局所的な加熱ムラがない状態で加熱することができる)ものであればよい。
なお、上記熱処理を行うことなく、上記疎水化処理された金属酸化物粒子のみを、中間層に用いた場合にも、金属酸化物粒子の過剰な水酸基と溶剤の水酸基との作用で、凝集チックな現象が生じて塗布性が乱れ、画像ムラになるのを十分に防止することができない。また過剰な水酸基を十分に除くことができないため、水分を抱き込みやすくなり、環境変動下時の感度変動が大きくなり、画質の安定化、更には電気的安定性(表面電位変化)を図るのが困難となるなど好ましくない(表2の比較例1参照)。
但し、上記熱処理した金属酸化物粒子を含有してさえいれば、上記熱処理した金属酸化物粒子と上記疎水化処理された金属酸化物粒子とを併用してもよい(表2の実施例5〜11、13〜20、22、25、27〜28参照)。かかる組合せにおいても、塗布性を良好にし、画像欠陥をなくすことができ、更に水分を抱き込み難くなり、環境変動下時の感度変動を小さくすることができ、画質の安定化、更には電気的安定性(表面電位変化)を図ることができるためである。
好ましくは、中間層に、上記疎水化処理された後100〜300℃の温度で熱処理した金属酸化物粒子を2種以上含有することが、湿度変化間での感度変動、画像欠陥、塗布性、電気的安定性(表面電位変化)が極めて良好であり、本発明の所期の効果を有効に実現し得る観点から望ましい。
また、好ましくは、中間層に含有される前記金属酸化物粒子が、前記疎水化処理及び前記熱処理された酸化チタン粒子であるのが、湿度変化間での感度変動、画像欠陥、塗布性、電気的安定性(表面電位変化)が極めて良好であり、本発明の所期の効果を有効に実現し得る観点から望ましい。特に、同じ条件比較の感光体サンプル9、10(実施例6、7)で比べると、酸化チタン粒子の方が、他の金属酸化物粒子(酸化錫粒子)に比して、湿度変化間での感度変動が良好である点で優れている。
また、本発明の電子写真感光体は、上記の疎水化処理及び前記熱処理された金属酸化物粒子の少なくとも1種と、バインダー樹脂とが中間層に含まれていればよく、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲内であれば、中間層にその他の金属酸化物粒子が含まれていてもよい。他の金属酸化物粒子は特に制限はなく、上記の疎水化処理及び前記熱処理された金属酸化物粒子とは異なる表面処理をした金属酸化物粒子がさらに含まれていてもよい。このような他の金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の金属酸化物粒子、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの微粒子を用いることができる。これら金属酸化物粒子は単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
中間層に含有される前記金属酸化物粒子の含有量は、40〜95質量%、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは50〜85質量%の範囲である。中間層に含有される前記金属酸化物粒子の含有量が40質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上であれば、カブリ耐性の点で好ましい。中間層に含有される前記金属酸化物粒子の含有量が95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下であれば、分散性の点で好ましい。
(バインダー樹脂)
中間層を構成するバインダー樹脂(以下、中間層用バインダー樹脂とも称する)としては、例えば、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体及びゼラチンなどが挙げられる。中でも、後述する電荷発生層を形成するための塗布液を中間層上に塗布する際に、当該中間層が溶解することを抑制する観点などから、ポリアミド樹脂が好ましい。また、上記の有機ケイ素化合物により疎水化処理された後100〜300℃の温度で熱処理された金属酸化物(酸化チタン等)粒子はアルコール系溶媒に分散させることが好適であるため、メトキシメチロール化ポリアミド樹脂などのアルコール可溶性ポリアミド樹脂がより好ましい。
バインダー樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はないが、10000〜150000であることが好ましく、さらに好ましくは15000〜100000である。
中間層に含有されるバインダー樹脂の含有量は、5〜60質量%、好ましくは10〜55質量%、より好ましくは15〜50質量%の範囲である。中間層に含有されるバインダー樹脂の含有量が5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であれば、分散性の点で好ましい。中間層に含有されるバインダー樹脂の含有量が60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下であれば、カブリ耐性の点で好ましい。
中間層の膜厚は、0.5〜15μmであることが好ましく、1〜7μmであることがより好ましい。中間層の膜厚が0.5μm以上であれば、導電性支持体表面全体を確実に被覆することができ、導電性支持体からの正孔の注入を十分にブロックすることができ、黒ポチやカブリなど画像欠陥の発生を十分に抑制することができる。一方、中間層の膜厚が15μm以下であれば、電気的抵抗が小さく、十分な電子輸送性が得られることにより、電気的安定性を維持できると共に濃度ムラの発生を十分に抑制することができる。
<感光層>
本発明の電子写真感光体を構成する感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に付与した単層構造の他に、電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に感光層の機能を分離させた層構成のものがより好ましい。この様に、機能分離型の層構成とすることにより、繰り返し使用に伴う残留電位の上昇を小さく制御できる他、各種の電子写真特性を目的に合わせて制御し易いメリットがある。負帯電性感光体は中間層の上に電荷発生層、その上に電荷輸送層を設ける構成をとり、正帯電性感光体は中間層の上に電荷輸送層、その上に電荷発生層を設ける構成をとる。好ましい感光層の層構成は前記機能分離構造を有する負帯電性感光体である。
以下に、感光層の好ましい具体例として機能分離型の負帯電性感光体の感光層、すなわち電荷発生層および電荷輸送層を積層した感光層について説明する。
(電荷発生層)
本発明で形成される電荷発生層は、電荷発生物質と電荷発生層用バインダー樹脂を含有するものが好ましい。さらに、電荷発生物質をバインダー樹脂溶液中に分散させてなる塗布液を塗布して形成されたものが好ましい。
(電荷発生物質)
電荷発生物質は、スーダンレッドやダイアンブルー等のアゾ原料、ピレンキノンやアントアントロン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴ等のインジゴ顔料、フタロシアニン顔料等があり、これらに限定されるものではない。好ましくは、チタニルフタロシアニン顔料である。これらの電荷発生物質は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
電荷発生物質は、上記の中から露光光源の発振波長に対する感度に応じて選択されればよいが、デジタル複写機における露光光源の発振波長に対する感度を高めるためには、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料としては、露光光源の発振波長、例えば波長780nmに対する感度を高めるためには、Y型チタニルフタロシアニン顔料、または、チタニルフタロシアニン顔料およびブタンジオール付加チタニルフタロシアニン顔料、特に2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニン顔料の混合物を用いることが好ましい。
(電荷発生層用バインダー樹脂)
電荷発生層用バインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)及びポリ−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ポリビニルブチラール樹脂である。
電荷発生層用バインダー樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はないが、繰り返し使用に十分耐え得る耐久性などの観点から、10000〜150000であることが好ましく、さらに好ましくは15000〜100000である。
電荷発生層用バインダー樹脂に対する電荷発生物質の混合割合は、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質20〜600質量部が好ましく、50〜500質量部がより好ましい。電荷発生物質の含有量が上記の範囲内であると、露光により十分な電荷を発生させることができ、感光層(電荷発生層)の十分な感度が確保でき、かつ、繰り返し使用に伴う残留電位の増加を防止できる。
電荷発生層の膜厚は、電荷発生物質の特性、電荷発生層用バインダー樹脂の特性及び混合割合等により異なるが0.01〜5μmが好ましく、0.05〜3μmがより好ましい。
(電荷輸送層)
本発明で形成される電荷輸送層は、電荷(正孔)輸送物質と電荷輸送層用バインダー樹脂とを含有して構成されることが好ましい。電荷輸送層は、電荷輸送物質をバインダー樹脂溶液中に溶解させ、塗布して形成されたものが好ましい。
電荷輸送物質は、公知の化合物を用いることが可能で、たとえば、以下の様なものが挙げられる。すなわち、トリアリールアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン及びポリ−9−ビニルアントラセン等である。これらの化合物を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。このうち、好ましくはトリアリールアミン誘導体である。
また、電荷輸送層用バインダー樹脂は公知の樹脂を用いることが可能で、たとえば、以下の様なものがある。すなわちポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂等が挙げられる。これらは、単独でも、二種以上を用いてもよい。なかでも、吸水率が低く、電荷輸送物質を良好に分散させることができることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
電荷輸送層は、必要に応じて例えば酸化防止剤などの他の成分が含有されていてもよい。
電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。電荷輸送物質の含有量が上記の範囲内であると、電荷輸送性が十分確保できるため、電荷発生層で発生した電荷を電子写真感光体表面まで十分に輸送でき、かつ、繰り返し使用に伴う残留電位の増加が防止できる。
電荷輸送層の厚さは、電荷輸送物質や電荷輸送層用バインダー樹脂の特性、及び、これらの混合比等により異なるが、10〜40μmが好ましい。
〔保護層〕
本発明の電子写真感光体は、上記感光層上にさらに保護層を有していてもよい。保護層は、電子写真感光体を外部環境や衝撃から保護する役割を担っている。保護層が形成される場合には、当該保護層は、無機粒子およびバインダー樹脂(以下、「保護層用バインダー樹脂」という。)より構成されることが好ましく、必要に応じて酸化防止剤や滑剤などの他の成分が含有されていてもよい。
保護層に含まれる無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等の粒子を好ましく用いることができる。特に表面を疎水化した疎水性シリカや疎水性アルミナ、疎水性ジルコニア、微粉末焼結シリカなどが好ましい。
無機粒子は、数平均一次粒子径が1〜300nmのものが好ましく、5〜100nmのものが特に好ましい。
無機粒子の数平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出して得られた値とされる。
保護層用バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
保護層に含有される滑剤としては、例えば、樹脂微粉末(例えば、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等)、金属酸化物微粉末(例えば、酸化チタン、酸化アルミ、酸化スズ等)、固体潤滑剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、シリコーンオイル(例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等)、フッ素系樹脂粉体(例えば、四フッ化エチレン樹脂粉体、三フッ化塩化エチレン樹脂粉体、六フッ化エチレンプロピレン樹脂粉体、フッ化ビニル樹脂粉体、フッ化ビニリデン樹脂粉体、フッ化二塩化エチレン樹脂粉体及びそれらの共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂粉体(例えば、ポリエチレン樹脂粉体、ポリプロピレン樹脂粉体、ポリブテン樹脂粉体、ポリヘキセン樹脂粉体などのホモポリマー樹脂粉体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などのコポリマー樹脂粉体、これらとヘキセンなどの三元共重合体、更にこれらの熱変成物のようなポリオレフィン系樹脂粉体等)などが挙げられる。
上記滑剤として用いられる樹脂の分子量や粉体の粒径は、適宜選択される。樹脂の粒径は、特に0.1μm〜10μmであることが好ましい。これらの滑剤を均一に分散するため、分散剤を保護層用バインダー樹脂にさらに添加してもよい。
<電子写真感光体の製造方法>
本発明の電子写真感光体の製造方法としては、上記したように、中間層の形成に、有機ケイ素化合物により疎水化処理後100〜300℃の温度で熱処理した金属酸化物粒子を用いること以外は、特に制限はなく、導電性支持体上に、中間層、電荷発生層および電荷輸送層、または単層の感光層、必要に応じて保護層の各層を形成しうる塗布液を調製し、塗布液を順に公知の塗布方法により塗布し、乾燥させて各層を順に形成することができる。塗布方法としては、具体的には、浸漬塗布法、スプレー塗布法、スピンコート法、ビードコート法、ブレードコート法、ビームコート法、円形量規制型塗布法(スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法)等が挙げられる。円形量規制型塗布法は、例えば特開昭58−189061号公報などに詳細に記載されている。
(中間層の形成)
中間層を形成するには、上記したように、有機ケイ素化合物により疎水化処理後100〜300℃の温度で熱処理した金属酸化物粒子を用いること以外は、特に制限はないが、例えば以下のような方法を用いることができる。まずバインダー樹脂を溶媒中に溶解または分散させ、次いで、この分散液に上記した有機ケイ素化合物により疎水化処理後100〜300℃の温度で(好ましくは1〜8時間)熱処理した金属酸化物粒子を添加し、均一になるまで分散させ、分散液を調製する。その後、この分散液を一昼夜程度静置し、濾過して、中間層形成用塗布液(好ましくは沸点100℃以下の炭素数4以下の1価アルコールを50体積%以上含有する中間層形成用塗布液)を調製する。次いで、この塗布液を上記の方法で導電性支持体上に塗布し、乾燥させることで中間層を形成する。
塗布液形成時のバインダー樹脂濃度は、中間層の膜厚や塗布方式に合わせて適宜選択することができる。好ましくは、バインダー樹脂100質量部に対して、溶媒(助溶媒を含む)100〜3000質量部、より好ましくは500〜2000質量部である。前記有機ケイ素化合物により疎水化処理後100〜300℃の温度で熱処理した金属酸化物粒子濃度は、バインダー樹脂100質量部に対して、合計で200〜600質量部が好ましく、より好ましくは200〜500質量部である。なお、この塗布液中の成分比が、最終的に完成された中間層中の成分比となる。本発明の所期の効果をより確実に発揮するためには、中間層の成分を体積比によって制御することも好適である。すなわち、前記有機ケイ素化合物により疎水化処理後100〜300℃の温度で熱処理した金属酸化物(酸化チタン等)粒子とバインダー樹脂との体積比は、前記疎水化処理後に熱処理した金属酸化物粒子/バインダー樹脂=5/10〜11/10であることが好ましい。更に、好ましくは沸点100℃以下の炭素数4以下の1価アルコール(溶媒(助溶媒を含む))を50体積%以上含有する中間層形成用塗布液を用いるのが好ましい。
中間層の形成に使用可能な溶媒としては、熱処理で余分な水酸基が除かれた金属酸化物粒子を溶媒の水酸基との作用で、凝集チックな現象を生じさせることなく良好に分散させ、ポリアミド樹脂をはじめとするバインダー樹脂を溶解するものが好ましい。具体的には、エタノール(EtOH)、n−プロピルアルコール(nPrOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、n−ブタノール((i)BuOH)、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が、バインダー樹脂として好ましいとされるポリアミド樹脂に対して良好な溶解性と塗布性能を発現させることから好ましい。中でも、沸点100℃以下、好ましくは沸点60〜100℃の範囲の炭素数4以下の1価アルコールが好ましい。これはバインダー樹脂溶解の観点から、アルコール系溶媒リッチが好ましく、塗布性の観点から、沸点が100℃以下であることが好ましいためである。沸点100℃以下の炭素数4以下の1価アルコールの具体例としては、例えば、メタノール(65℃)、エタノール(78℃)、n−プロパノール(97℃)、i−プロパノール(82℃)、s−ブタノール(99℃)、t−ブタノール(82℃)などが挙げられる。ここで括弧内の数値は沸点を示す。更に本発明の中間層形成用塗布液では、当該沸点100℃以下の炭素数4以下の1価アルコールを50体積%以上、好ましくは55体積%以上、より好ましくは60体積%以上の範囲で含有するのが、塗布性、バインダー溶解性の観点から望ましい(この点については、表2の感光体16、30、31(実施例13、27、28)を対比参照のこと)。また、保存性や無機微粒子の分散性を向上させるために、前記溶媒に対して以下の様な助溶剤を併用することができる。好ましい効果が得られる助溶媒としては、たとえば、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる(尚、上記溶媒に付した略記号は、実施例の表2において使用する。)。
導電性微粒子や金属酸化物粒子等の分散手段は、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、サンドグラインダー、及び、ホモミキサー等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、中間層用の塗布液は塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。
中間層用塗布液の塗布膜の乾燥方法は、溶媒の種類や形成する膜厚に応じて公知の乾燥方法を適宜選択することができ、特に熱乾燥が好ましい。乾燥条件は、例えば100〜150℃で10〜60分熱乾燥することができる。
(疎水化処理後100〜300℃の温度で熱処理した金属酸化物粒子の形成)
中間層の形成に用いる金属酸化物粒子は、有機ケイ素化合物により疎水化処理後100〜300℃の温度で熱処理したものを用いる。これは、通常、金属酸化物(酸化チタン等)粒子表面には、上記疎水化処理後にも多くの水酸基が存在する。そのため、こうした通常の金属酸化物粒子を用いた場合、金属酸化物の粒子表面に存在する過剰な水酸基と上記溶媒の水酸基との作用で、凝集チックな現象が生じて塗布性が乱れ、該中間層を持つ電子写真感光体を用いて画像形成した場合に、画像ムラになる恐れがあった。本発明では、金属酸化物(酸化チタン等)粒子を、有機ケイ素化合物により疎水化処理後100〜300℃の温度で熱処理することで、粒子表面の余分な水酸基を除くことで、上記溶媒の水酸基との作用で凝集チックな現象が生じるのを防止することができ、塗布性を良好にすることができる。その結果、該中間層を有する電子写真感光体を用いて電子写真画像を形成した場合に、画像欠陥のない良好な画像を得ることができる。また金属酸化物粒子表面の過剰な水酸基を除くことで、水分を抱き込み難くなり、環境変動下時(温湿度条件が異なる環境下で)の感度変動(画像変動)が小さく、環境下感度安定性に優れた電子写真感光体を提供することもできる。
金属酸化物粒子としては、上記電子写真感光体の中間層の項目で説明した通りであるので、重複説明を避けるため、ここでの説明は省略する。
金属酸化物粒子の疎水化処理に関しても、上記電子写真感光体の中間層の項目で説明した通りであるので、重複説明を避けるため、ここでの説明は省略する。
金属酸化物粒子の熱処理に関しても、上記電子写真感光体の中間層の項目で説明した通りであるので、重複説明を避けるため、ここでの説明は省略する。
(電荷発生層の形成)
電荷発生層を形成するには、電荷発生層用バインダー樹脂を溶媒で溶解した溶液中に、電荷発生物質を添加し、分散機等を使用して分散させて塗布液を調製する。次いで、塗布液を上記した塗布方法で一定の膜厚に塗布し、塗布膜を乾燥して電荷発生層を作製することが好ましい。また、電荷発生物質および電荷輸送物質を含む単層の感光層を形成する場合にも、電荷発生層の形成と同様の方法で感光層を形成することができる。
電荷発生層塗布液中の電荷発生層用バインダー樹脂濃度は、塗布に適した粘度となるように適宜選択できるが、好ましくは、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して、溶媒が100〜5000質量部である。電荷発生物質濃度は、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは80〜400質量部である。
電荷発生層に使用する電荷発生層用バインダー樹脂を溶解し塗布するための溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンピリジン及びジエチルアミン等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。より好ましくは、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンである。
また、電荷発生層用の塗布液は塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。塗布方法も、上記した中間層での方法を採用することができる。
(電荷輸送層の形成)
電荷輸送層を形成するには、電荷輸送層用バインダー樹脂を溶媒で溶解した溶液中に、電荷輸送物質を溶解して塗布液を調製する。次いで、塗布液を上記した塗布方法で一定の膜厚に塗布し、塗布膜を乾燥して電荷輸送層を作製することが好ましい。
電荷輸送層塗布液中の電荷輸送層用バインダー樹脂濃度は、上記の塗布方法に適した粘度となるように適宜選択できるが、好ましくは、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して、溶媒が100〜1000質量部、より好ましくは400〜800質量部である。電荷輸送物質濃度は、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは30〜150質量部、より好ましくは60〜90質量部である。
また、電荷輸送層用の塗布液は塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。塗布方法も、上記した中間層と同様の方法を採用することができる。
(保護層の形成)
保護層の形成方法も、上記中間層の形成方法等と同様の方法を採用できる。保護層を形成する成分を溶媒中に分散または溶解させて塗布液を調製し、上記の塗布方法で所望の厚さになるように塗布液を塗布し、乾燥させて保護層を形成することができる。
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、少なくとも本発明の電子写真感光体を有するものである。
図1は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す概略断面図である。この画像形成装置100は、タンデム型のカラー画像形成装置であって、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット130と、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。画像形成装置100の本体の上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、鉛直方向に並べて配置されている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、第1の像担持体である電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkと、その周囲にドラムの回転方向に順次配置された、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、117Bkと、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkとを有する。そして、電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)のトナー画像をそれぞれ形成できるようになっている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkに形成するトナー画像の色が異なる以外は同様に構成されるため、以下、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
電子写真感光体111Yは、本発明に係る電子写真感光体であって、当該電子写真感光体を構成する中間層には、有機ケイ素化合物により疎水化処理された後100〜300℃の温度で熱処理された金属酸化物粒子の少なくとも1種と、バインダー樹脂が含有されている。
帯電手段113Yは、電子写真感光体111Yに対して一様な電位を与える手段である。本実施の形態においては、帯電手段113Yとしてコロナ放電型の帯電器が好ましく用いられる。
露光手段115Yは、帯電手段113Yによって一様な電位を与えられた電子写真感光体111Y上に、画像信号(イエローの画像信号)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する機能を有する。露光手段115Yは、電子写真感光体111Yの軸方向にアレイ状に発光素子が配列されたLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいはレーザー光学系などでありうる。
露光光源は、発振波長が使用する電荷発生物質の最大吸光度の5割以上の範囲の半導体レーザーまたは発光ダイオードであることが好ましい。例えば、電荷発生物質として、2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンと非付加のチタニルフタロシアニンとの混合物を用いる場合には、650〜800nmであることが好ましい。これらの露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、電子写真感光体上にデジタル露光を行うことで、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)〜2400dpiあるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像を形成しうる。
露光ドット径とは、露光ビームの強度がピーク強度の1/e2以上の領域の、主走査方向の露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を示す。
現像手段117Yは、電子写真感光体111Yにトナーを供給し、電子写真感光体111Yの表面に形成された静電潜像を現像可能に構成されている。
クリーニング手段119Yは、電子写真感光体111Yの表面に圧接するローラや、ブレードを有しうる。
無端ベルト状中間転写体ユニット130は、電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkと当接可能に設けられている。無端ベルト状中間転写体ユニット130は、第2の像担持体である無端ベルト状中間転写体131と、当該無端ベルト状中間転写体131と当接して配置された一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと、当該無端ベルト状中間転写体131のクリーニング手段135とを有する。
無端ベルト状中間転写体131は、複数のローラ137A、137B、137C、137Dにより巻回され、回動可能に支持されている。
この画像形成装置100において、前述の電子写真感光体111Y、現像手段117Y、およびクリーニング手段119Y等は、一体的に結合され、装置本体に着脱自在に構成されたプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)であってもよい。あるいは、帯電手段113Y、露光手段115Y、現像手段117Y、一次転写ローラ133Yおよびクリーニング手段119Yからなる群から選ばれる一以上の部材と、電子写真感光体111Yとを一体的に構成したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)としてもよい。
プロセスカートリッジ200は、筐体201と、それに収容された電子写真感光体111Y、帯電手段113Y、現像手段117Yおよびクリーニング手段119Yと、無端ベルト状中間転写体ユニット130とを有する。また、装置本体には、プロセスカートリッジ200を装置本体内にガイドする手段として支持レール203L、203Rが設けられている。それにより、プロセスカートリッジ200を装置本体に着脱可能となっている。これらのプロセスカートリッジ200は、装置本体に着脱自在に構成された単一の画像形成ユニットとなりうる。
給紙搬送手段150は、給紙カセット211内の転写材Pを、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213Dおよびレジストローラ215を経て、二次転写ローラ217に搬送可能に設けられている。
定着手段170は、二次転写ローラ217により転写されたカラー画像を定着処理する。排紙ローラ219は、定着処理された転写材Pを挟持して、画像形成装置外部に設けられた排紙トレイ221上に載置可能に設けられている。
このように構成された画像形成装置100では、画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkにより画像を形成する。具体的には、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面にコロナ放電して負に帯電させる。次いで、露光手段115Y、115M、115C、115Bkで、電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段117Y、117M、117C、117Bkで、電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面にトナーを付与し、現像する。
次いで、一次転写ローラ(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkを、回動する無端ベルト状中間転写体131と当接させる。それにより、電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bk上にそれぞれ形成した各色の画像を、回動する無端ベルト状中間転写体131上に逐次転写させて、カラー画像を転写する(一次転写する)。画像形成処理中、一次転写ローラ133Bkは、常時、電子写真感光体111Bkに当接する。一方、他の一次転写ローラ133Y、133M、133Cは、カラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する電子写真感光体111Y、111M、111Cに当接する。
そして、一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと無端ベルト状中間転写体131とを分離させた後、電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に残留するトナーを、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkで除去する。そして、次回の画像形成に備えて、必要に応じて電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を除電手段(不図示)によって除電した後、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより負に帯電させる。
一方、給紙カセット211内に収容された転写材P(例えば普通紙、透明シート等の最終画像を担持する支持体)を、給紙搬送手段150で給紙し、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213D、レジストローラ215を経て二次転写ローラ(二次転写手段)217に搬送する。そして、二次転写ローラ217を回動する無端ベルト状中間転写体131と当接させて、転写材P上にカラー画像を一括して転写する(二次転写する)。二次転写ローラ217は、転写材P上に二次転写を行うときのみ、無端ベルト状中間転写体131と当接する。その後、カラー画像が一括転写された転写材Pを、無端ベルト状中間転写体131の曲率が高い部位で分離する。
このようにしてカラー画像が一括して転写された転写材Pを、定着手段170で定着処理した後、排紙ローラ219で挟持して装置外の排紙トレイ221上に載置する。また、カラー画像が一括転写された転写材Pを無端ベルト状中間転写体131から分離した後、クリーニング手段135で無端ベルト状中間転写体131上の残留トナーを除去する。
前述したように、本実施の形態の画像形成装置100に含まれる電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkの中間層は、有機ケイ素化合物により疎水化処理された後100〜300℃の温度で熱処理された金属酸化物粒子の少なくとも1種と、バインダー樹脂を含有しているため、余分な水酸基が除かれた金属酸化物粒子により中間層形成用塗布液の塗布性を良好にすることができ、その結果、画像欠陥が少なく良好な電子写真画像を提供することができる。また、金属酸化物粒子表面の過剰な水酸基を除くことで、水分を抱き込み難くなり、環境変動下時(湿度変化が異なる環境下で)の感度変動(画像変動)が小さく、環境下感度安定性に優れた電子写真画像を提供することもできる。また、電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkの中間層は、十分な電子輸送性を有し、感光体表面の残存電位の増加を抑制でき、画像の濃度ムラを少なくすることもできる。さらに、電子写真感光体111Y、111M、111C、111Bkの中間層は、高い正孔ブロッキング性を有するため、導電性支持体からの不要な正孔の注入や電荷発生層からの不要な熱励起キャリアの移動を少なくすることができ、黒ポチやカブリなどの画像欠陥を抑制することができる。
以下、本発明を実施例および比較例を通して具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定はされない。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、下記実施例および比較例中に記載の「部」は「質量部」を表すものである。
(疎水化処理金属酸化物粒子の作製)
以下に、金属酸化物粒子を有機ケイ素化合物により疎水化処理して疎水化処理金属酸化物粒子の12種類のサンプルを作製した。
〈疎水化処理酸化チタン粒子1の作製〉
数平均一次粒子径35nmのルチル型酸化チタンにシリカ、アルミナ処理を施した無機処理酸化チタン(MT−500SA;テイカ(株)製)500質量部と、メチルハイドロジェンポリシロキサン(MHPS;(KF9901信越化学工業(株)製))13質量部、トルエン1500部とを撹拌混合した後、ビーズミルによりミル滞留待問25分、温度35℃で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得られたスラリーから、減庄蒸留によりトルエンを分離除去した。得られた乾燥物に、120℃で2時間、MHPSの焼き付けを行った。その後、ピンミルにより粉砕し、疎水化処理酸化チタン粒子1を得た。
〈疎水化処理酸化チタン粒子2の作製)
疎水化処理酸化チタン粒子1の作製において、MHPS13質量部をヘキシルトリメトキシシラン54質量部に変更した以外は、疎水化処理酸化チタン粒子1と同様にして、疎水化処理酸化チタン粒子2を得た。
〈疎水化処理酸化錫粒子3の作製〉
疎水化処理酸化チタン粒子1の作製において、酸化チタンではなく、酸化錫(CIKナノテック社製の下記特性を有する酸化錫)を用いた以外は同じ方法で疎水化処理した疎水化処理酸化錫粒子3を得た。ここで、上記酸化錫には、数平均一次粒子径20nm、体積抵抗率1.05×105(Ω・cm)の特性を有するものを用いた。
〈疎水化処理酸化チタン粒子4の作製〉
数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタンにシリカ、アルミナ処理を施した無機処理酸化チタン(MT−100SA;テイカ(株)製)500質量部と、MHPS30質量部と、トルエン1300質量部とを撹拌混合した後、ビーズミルによりミル滞留時間40分、温度35℃の条件で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得られたスラリーから、減圧蒸留によりトルエンを分離除去した。得られた乾燥物に、120℃で2時間、MHPSの焼き付けを行った。その後、ピンミルにより粉砕し、疎水化処理酸化チタン粒子4を得た。
〈疎水化処理酸化チタン粒子5の作製〉
疎水化処理酸化チタン粒子4の作製において、MHPS30質量部を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503;信越化学工業(株)製)95質量部に変更した以外は、疎水化処理酸化チタン粒子4と同様にして、疎水化処理酸化チタン粒子5を得た。
〈疎水化処理酸化チタン粒子6の作製〉
数平均一次粒子径35nmのルチル型酸化チタン500質量部をトルエン2000質量部と撹拌混合し、MHPS13質量部を添加し、50℃で3時間撹拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、130℃で3時間、MHPSの焼き付けを行った。その後、ピンミルにより粉砕し、疎水化処理酸化チタン粒子6を得た。
〈疎水化処理酸化チタン粒子7の作製〉
数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン500質量部と、MHPS30質量部と、トルエン1300質量部とを撹拌混合した後、ビーズミルによりミル滞留時間40分、温度35℃の条件で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得られたスラリーから、減圧蒸留によりトルエンを分離徐去した。得られた乾燥物に、120℃で2時間、MHPSの焼き付けを行った。その後、ピンミルにより粉砕し、疎水化処理酸化チタン粒子7を得た。
〈疎水化処理酸化チタン粒子8の作製〉
疎水化処理酸化チタン粒子7の作製において、MHPS30質量部を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503;信越化学工業(株)製)100質量部に変更した以外は、疎水化処理酸化チタン粒子7と同様にして、疎水化処理酸化チタン粒子8を得た。
〈疎水化処理酸化チタン粒子9の作製〉
疎水化処理酸化チタン粒子7の作製において、MHPS30質量部をp−スチリルトリメトキシシラン100質量部に変更した以外は、疎水化処理酸化チタン粒子7と同様にして、疎水化処理酸化チタン粒子9を得た。
〈疎水化処理酸化チタン粒子10の作製〉
疎水化処浬酸化チタン粒子7の作製において、MHPS30質量部を3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン90質量部に変更した以外は、疎水化処理酸化チタン粒子7と同様にして、疎水化処理酸化チタン粒子10を得た。
〈疎水化処理酸化チタン粒子11の作製〉
数平均一次粒子径35nmのルチル型酸化チタン粒子(テイカ社製MT−500B)70質量部を、水1000質量部に分散させ、撹拌および懸濁させた。得られた酸化チタン粒子の水性懸濁液5Lに、苛性ソーダを添加してpH9.0以上とした。次いで、200g/lのケイ酸ソーダ水溶液を175ml(SiO2が酸化チタン粒子に対して10質量%となる量)添加して、80℃まで昇温した後、硫酸を3時間かけて滴下し、pH6.5となるように中和した。得られた溶液をろ過した後、洗浄、250℃にて2時間乾燥し、シリカ処理酸化チタン粒子11を得た。次いでシリカ処理酸化チタン粒子500質量部とメチルハイド口ジェンポリシロキサン(MHPS;(KF9901信越化学工業(株)製))13質量部、トルエン1500質量部とを撹拌混合した後、ビーズミルによりミル滞留時間25分、温度35℃で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得られたスラリーから、減圧蒸留によりトルエンを分離除去した。得られた乾燥物に、120℃で2時間、MHPSの焼き付けを行った。その後、ピンミルにより粉砕し、疎水化処理酸化チタン粒子11を完成させた。
〈疎水化処理酸化チタン粒子12の作製〉
数平均一次粒子径30nmのアナタース(アナターゼ)型酸化チタン500質量部と、MHPS15質量部と、トルエン1800質量部とを撹拌混合した後、ビーズミルによりミル滞留時間60分、温度35℃の条件で、湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得られたスラリーから、減圧蒸留によりトルエンを分離除去した。得られた乾燥物に、120℃で2時間、MHPSの焼き付けを行った。その後、ピンミルにより粉砕し、疎水化処理酸化チタン粒子12を得た。
上記のように得られた疎水化処理酸化チタン粒子1、2、4〜12及び疎水化処理酸化錫粒子3について、下記表1にまとめる。なお、粒子比重については気相置換法を用いて測定した。
(熱処理金属酸化物粒子の作製)
上記のように得られた疎水化処理酸化チタン粒子1、2、4〜12及び疎水化処理酸化錫粒子3を、下記表2に記載の熱処理条件で熱処理する際に、各疎水化処理金属酸化物粒子(疎水化処理酸化チタン粒子1、2、4〜12ないし疎水化処理酸化錫粒子3)をそれぞれバットになるべく平らな状態で入れ、以下に記載の所定の温度、時間にて、オーブンで熱処理を行い、各熱処理金属酸化物粒子を作製した。
〈サンプル1(比較例1)に用いる金属酸化物粒子1の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を熱処理することなく、そのまま、金属酸化物粒子1として用いた。
〈サンプル2(比較例2)に用いる金属酸化物粒子2の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、95℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子1を作製し、金属酸化物粒子2として用いた。
〈サンプル3(比較例3)に用いる金属酸化物粒子3の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、305℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子2を作製し、金属酸化物粒子3として用いた。
〈サンプル4(実施例1)に用いる金属酸化物粒子4の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、100℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子3を作製し、金属酸化物粒子4として用いた。
〈サンプル5(実施例2)に用いる金属酸化物粒子5の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、300℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子4を作製し、金属酸化物粒子5として用いた。
〈サンプル6(実施例3)に用いる金属酸化物粒子6の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、110℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子5を作製し、金属酸化物粒子6として用いた。
〈サンプル7(実施例4)に用いる金属酸化物粒子7の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、290℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子6を作製し、金属酸化物粒子7として用いた。
〈サンプル8(実施例5)に用いる金属酸化物粒子8の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、160℃で5時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子7を作製し、金属酸化物粒子8として用いた。
〈サンプル9(実施例6)に用いる金属酸化物粒子9の作製〉
上記で得られた熱処理酸化チタン粒子7と、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子1を、体積比で6/4となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子9として用いた。
〈サンプル10(実施例7)に用いる金属酸化物粒子10の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化錫粒子3を、バットになるべく平らな状態で入れ、160℃で5時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化錫粒子8を作製した。この熱処理酸化錫粒子8と、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子1を、体積比で6/4となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子10として用いた。
〈サンプル11(実施例8)に用いる金属酸化物粒子11の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、160℃で0.5時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子9を作製した。この熱処理酸化チタン粒子9と、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子1を、体積比で6/4となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子11として用いた。
〈サンプル12(実施例9)に用いる金属酸化物粒子12の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、160℃で1時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子10を作製した。この熱処理酸化チタン粒子10と、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子1を、体積比で6/4となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子12として用いた。
〈サンプル13(実施例10)に用いる金属酸化物粒子13の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、160℃で8時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子11を作製した。この熱処理酸化チタン粒子11と、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子1を、体積比で6/4となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子13として用いた。
〈サンプル14(実施例11)に用いる金属酸化物粒子14の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、160℃で8.5時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子12を作製した。この熱処理酸化チタン粒子12と、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子1を、体積比で6/4となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子14として用いた。
〈サンプル15(実施例12)に用いる金属酸化物粒子15の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子1を、バットになるべく平らな状態で入れ、160℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子13を作製した。次に、上記で得られた熱処理酸化チタン粒子7と、上記で得られた熱処理酸化チタン粒子13を、体積比で6/4となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子15として用いた。
〈サンプル16(実施例13)〜サンプル22(実施例19)及びサンプル30(実施例27)〜サンプル31(実施例28)に用いる金属酸化物粒子について〉
サンプル16(実施例13)〜サンプル22(実施例19)及びサンプル30(実施例27)〜サンプル31(実施例28)に用いる金属酸化物粒子には、いずれも上記で得られた金属酸化物粒子9を用いた。
〈サンプル23(実施例20)に用いる金属酸化物粒子23の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子4を、バットになるべく平らな状態で入れ、270℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子14を作製した。この熱処理酸化チタン粒子14と、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、体積比で7/3となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子23として用いた。
〈サンプル24(実施例21)に用いる金属酸化物粒子24の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子5を、バットになるべく平らな状態で入れ、200℃で7時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子15を作製した。同様に、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子1を、バットになるべく平らな状態で入れ、220℃で6時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子16を作製した。これらの熱処理酸化チタン粒子15と熱処理酸化チタン粒子16を、体積比で2/8となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子24として用いた。
〈サンプル25(実施例22)に用いる金属酸化物粒子25の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子6を、バットになるべく平らな状態で入れ、230℃で4時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子17を作製した。この熱処理酸化チタン粒子17と、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子5を、体積比で4/6となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子25として用いた。
〈サンプル26(実施例23)に用いる金属酸化物粒子26の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子2を、バットになるべく平らな状態で入れ、170℃で6時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子18を作製した。同様に、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子8を、バットになるべく平らな状態で入れ、140℃で2時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子19を作製した。これらの熱処理酸化チタン粒子18と熱処理酸化チタン粒子19を、体積比で6/4となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子26として用いた。
〈サンプル27(実施例24)に用いる金属酸化物粒子27の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子9を、バットになるべく平らな状態で入れ、230℃で4時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子20を作製した。同様に、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子7を、バットになるべく平らな状態で入れ、240℃で4時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子21を作製した。これらの熱処理酸化チタン粒子20と熱処理酸化チタン粒子21を、体積比で3/7となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子27として用いた。
〈サンプル28(実施例25)に用いる金属酸化物粒子28の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子10を、バットになるべく平らな状態で入れ、200℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子22を作製した。この熱処理酸化チタン粒子22と、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子6を、体積比で6/4となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子28として用いた。
〈サンプル29(実施例26)に用いる金属酸化物粒子29の作製〉
上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子11を、バットになるべく平らな状態で入れ、160℃で5時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子23を作製した。同様に、上記で得られた疎水化処理酸化チタン粒子12を、バットになるべく平らな状態で入れ、160℃で3時間、オーブンで熱処理を行い、熱処理酸化チタン粒子24を作製した。これらの熱処理酸化チタン粒子23と熱処理酸化チタン粒子24を、体積比で5/5となるようにバットの中で混合した。得られた混合物を金属酸化物粒子29として用いた。
[比較例1](感光体1)
以下の手順により、導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成してなる積層構造を有する「感光体1」を作製した。
〈導電性支持体の作製〉
長さ362mmのアルミニウム合金製素管をNC施盤に装着し、ダイヤモンド焼結バイトにて、外径59.95mm、表面のRzjisが1.2μmになるように切削加工を行った。
〈感光体1(比較例1)の作製〉
〈中間層の形成〉
バインダー樹脂としての下記ポリアミド樹脂(N−1)100質量部を、エタノール(EtOH)/n−プロピルアルコール(nPrOH)/テトラヒドロフラン(THF)(体積比6/2/2)の混合溶媒1700質量部に加えて、20℃で攪拌混合した。この溶液に、上記で得られた金属酸化物粒子1を185質量部添加し、ビーズミルにより、ミル滞留時間5時間として分散させた(金属酸化物粒子1/バインダー樹脂の体積は80/100)。そして、この溶液を一昼夜静置した後、ろ過することにより、中間層用塗布液を得た。ろ過は、ろ過フィルタとして、公称ろ過精度が5μmのリジメッシュフィルタ(日本ポール社製)を用いて、50kPaの圧力下で行った。このようにして得られた中間層塗布液を、前記導電性支持体(Al製パイプ)を洗浄した後の外周に浸漬塗布法で塗布し、120℃で30分乾燥して乾燥膜厚2μmの「中間層」を形成した。
〈電荷発生層の作製〉
(CG−1の合成)
1,3−ジイミノイソインドリンとチタニウムテトラ−n−ブトキシドとから粗チタニルフタロシアニンを合成した。得られた粗チタニルフタロシアニンを硫酸に溶解させた溶液を、水に注入して結晶を析出させた。この溶液を濾過した後、得られた結晶を水で十分に洗浄して、ウエットペースト品を得た。次いで、ウエットペースト品を冷凍庫にて凍結させ、再度解凍した後、濾過および乾燥して、無定型チタニルフタロシアニンを得た。
得られた無定型チタニルフタロシアニンと、(2R,3R)−2,3−ブタンジオールとを、無定型チタニルフタロシアニンに対する(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの当量比が0.6となるように、オルトジクロロベンゼン(ODB)中にて混合した。得られた混合物を、60〜70℃で6時間加熱撹拌した。得られた溶液を一夜静置した後、メタノールをさらに添加して結晶を析出させた。この溶液を濾過した後、得られた結晶をメタノールで洗浄して、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含む電荷発生物質CG−1を得た。
電荷発生物質CG−1のX線回折スペクトルを測定した結果、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°にピークが確認された。得られた電荷発生物質CG−1は、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と、チタニルフタロシアニン(非付加体)との混合物であると推定した。
(電荷発生層用塗布液の調製および電荷発生層の形成)
下記成分を混合し、循環式超音波ホモジナイザーRUS−600TCVP(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz,600W)にて循環流量40L/Hで0.5時間分散して電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、中間層と同様の浸漬塗布法により中間層上に塗布した後、乾燥させて、厚さ0.5μmの電荷発生層を形成した。
電荷発生物質:CG−1 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 400部。
〈電荷輸送層の作製〉
下記成分を混合して電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、中間層と同様の浸漬塗布法により電荷発生層上に塗布した後、乾燥させて、厚さ25μmの電荷輸送層を形成した。これにより電子写真感光体(感光体4;サンプル4)を得た。
下記電荷輸送物質 225.0部
ポリカーボネート「Z300(三菱ガス化学社製)」 300.0部
酸化防止剤「Irganox1010(BASFジャパン社製)」 6.0部
テトラヒドロフラン/トルエン混合液(体積比;3/1) 2000.0部
シリコーンオイル「KF−54(信越化学社製)」 1.0部。
電荷輸送物質は以下の化合物を使用した。
[比較例2〜3および実施例1〜28](感光体2〜31)
〈感光体2〜31の作製〉
感光体1の中間層に含まれる金属酸化物粒子1を、下記表2の様に、上記で作製した金属酸化物粒子2〜29に、それぞれ変更し、中間層の形成に使用した中間層用塗布液に含まれる溶媒の種類(EtOH/nPrOH/THF)と混合比(EtOH/nPrOH/THF=体積比6/2/2)を、下記表2の様に、それぞれ変更した混合溶媒を用いた以外は比較例1と同様にして、比較例2〜3および実施例1〜28の電子写真感光体(感光体2〜31)をそれぞれ作製した。なお、表2には、熱処理に適用した疎水化処理酸化チタン粒子や疎水化処理酸化錫粒子の熱処理温度とその熱処理時間と、2種の熱処理酸化チタン粒子の混合比、或いは熱処理酸化チタン粒子ないし熱処理酸化錫粒子と疎水化処理酸化チタン粒子の混合比も併せて表2に示している。また中間層の形成に使用した中間層用塗布液に含まれる溶媒の種類と比率(体積比)も併せて表2に示している。
<性能評価>
実施例1〜28および比較例1〜3で得た電子写真感光体(感光体1〜31)をそれぞれ搭載した、コニカミノルタビジネステクノジーズ社(購入時)製bizhub PRO C6501(レーザー露光780nm、反転現像、中間転写体のタンデムカラー複合機)を用いて、評価した。
「評価1」(温湿度依存性の評価)
高温高湿環境(温度30℃、湿度80%RH)にて、上機の改造機(上機の現像手段を外し、その位置に、表面電位計を設置し、感光体表面の電位を測定可能なように改造した。)を用い、感光体の表面電位を−700Vになるように帯電し、露光して、表面電位が−350Vまで減衰するのに必要な光量を測定し、感度(E1/2:μJ/cm2)を求めた。同様に低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での感度も求め、その差(低温低湿環境の感度−高温高湿環境の感度)を求めた。その差が小さい方が良好である。得られた結果を表2に示す。
「評価2」(画像欠陥の評価)
上機にて、全画面の20%、60%を被覆する600dpiの網状スクリーン画像を作製し、以下の評価基準により評価した。評価環境は、30℃80%RHの条件で、YMCBk各色印字率2.5%のA4画像を中性紙のA4紙に5万枚等の画出し耐刷試験を行い、その直後にべた白画像を画出しして、画像欠陥の発生の有無を下記評価基準により評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:斑点状の画像欠陥の発生がみられず問題なし
○:斑点状の画像欠陥の発生がA4紙中に5個以下で、斑点の大きさも0.2mmΦ
以下であり、実用上問題ないレベル
△:斑点状の画像欠陥の発生がA4紙中に6個以上10個以下で、斑点の大きさも
0.2mmΦ以下であり、実用上問題ないレベル
×:斑点状の画像欠陥の発生がA4紙中に11個以上、或いは、斑点の大きさが0.
2mmΦより大きく、実用上問題となるレベル。
「評価3」(塗布性の評価)
上記において、実施例1〜28および比較例1〜3の電子写真感光体(感光体1〜31)の製造段階で、それぞれの中間層用塗布液を導電性支持体外周に塗布した各サンプルを目視にて、以下の判定をした。得られた結果を表2に示す。
◎:1000lxの蛍光灯下で塗布面を観察し良好。ムラ、異物が全くない
○:1000lxの蛍光灯下で塗布面を観察すると、僅かにムラが見られるが、50
0lxの室内下では見えない。また何れの照度でも異物はない。実質問題なし
△:1000lxの蛍光灯下で塗布面を観察すると、僅かにムラと異物が見られる
が、500lxの室内下では何れも見えない。実質問題なし
×:1000lxの蛍光灯下と500lxの室内下で布面を観察すると、ムラと異物
がはっきり見られる。実害あり。
「評価4」(電子写真感光体の耐刷前後(1枚目と30万枚目プリント後)の表面電位(ΔVi)の評価)
実施例1〜28および比較例1〜3で得た電子写真感光体(感光体1〜31)をそれぞれ搭載した、コニカミノルタビジネステクノジーズ社(購入時)製bizhub PRO C6501(レーザー露光780nm、反転現像、中間転写体のタンデムカラー複合機)を用いて、30万枚のプリントを行った。
上機にて、30万枚印刷出力(耐刷)前後において、得られた電子写真感光体表面の、10℃、15%RH環境下における初期(0秒後)の電位と30秒後の電位との差(電位変動ΔVi)を、それぞれ電気特性測定装置により測定した。表面電位変動の測定は、実施例1〜28および比較例1〜3の電子写真感光体(感光体1〜31)をそれぞれ130rpmで回転させながら、グリッド電圧−800V、露光量0.5μJ/cm2の条件で、帯電と露光を繰り返して行った。ΔViの評価は、耐刷前後の数値の大きい方について、以下の基準に基づいて行い、A〜Cランクを合格とした。
A:ΔViは、耐刷前後とも20V以下であり、画像上、全く影響なし
B:ΔViは、耐刷前は20V以下、耐刷後は20V超30V以下であり、画像上では影響なし
C:ΔViは、耐刷前は20V超30V以下、または、耐刷前は20V以下かつ耐刷後は30V超で制御装置にて画像形成に影響を及ぼさないレベル
D:ΔViは、耐刷前から30V超であり、画像上濃度変化が避けられないレベル。
上記表2中、金属酸化物粒子の丸数字1、2の欄の数字は、疎水化処理酸化チタン粒子1、2、4〜12ないし疎水化処理酸化錫粒子3の数字を表す。例えば、感光体4のときは、丸数字1の欄は8となり疎水化処理酸化チタン粒子8を用いたことを表し、その右隣の欄の熱処理温度時間(100℃/3時間=100℃で3時間)を施したことを表している。
上記表2に示されるように、中間層に、前記疎水化処理及び前記熱処理された金属酸化物粒子を少なくとも1種とバインダー樹脂を用いた実施例1〜28の電子写真感光体(感光体4〜31)は、温湿度変化下での感度変動、画像欠陥、塗布性、電気的安定性(表面電位変化)が良好であることが確認された。一方、比較例1〜3の通り、中間層に含まれる金属酸化物粒子が、熱処理されていなかったり(比較例1)、熱処理温度が100〜300℃の範囲を外れている場合(比較例2、3)では、電子写真感光体の温湿度変化下での感度変動、画像欠陥、塗布性が良好でなく、更に電気的安定性が十分に維持できないことが確認された。