以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、以下で説明する実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。本実施形態において、タイヤ1の回転軸とY軸とが平行である。Y軸方向は、車幅方向又はタイヤ1の幅方向である。タイヤ1(タイヤ1の回転軸)の回転方向(θY方向に相当)を、周方向と称してもよい。X軸方向及びZ軸方向は、回転軸に対する放射方向である。回転軸に対する放射方向を、径方向と称してもよい。タイヤ1が転がる(走行する)地面は、XY平面とほぼ平行である。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を示す図である。図1は、タイヤ1の回転軸を通る子午断面を示す。タイヤ1は、カーカス2と、ベルト層3と、ベルトカバー4と、ビードコア5と、トレッドゴム6と、サイドウォールゴム7とを備えている。カーカス2、ベルト層3、及びベルトカバー4のそれぞれは、コードを含む。コードは、補強材である。コードを、ワイヤと称してもよい。カーカス2、ベルト層3、及びベルトカバー4などのコード(補強材)を含む層(部分)をそれぞれ、コード層と称してもよいし、補強材層と称してもよい。
カーカス2は、タイヤ1の骨格を形成する部材(強度部材)である。カーカス2は、コード(補強材)を含む。カーカス2のコードを、カーカスコードと称してもよい。カーカス2は、コードを含むコード層(補強材層)である。カーカス2は、タイヤ1に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカス2は、ビードコア5に支持される。ビードコア5は、Y軸方向に関してカーカス2の一側及び他側のそれぞれに配置される。カーカス2は、ビードコア5において折り返される。カーカス2は、有機繊維のコード(カーカスコード)と、そのコードを覆うゴムとを含む。コードを覆うゴムを、コートゴムと称してもよいし、トッピングゴムと称してもよい。なお、カーカス2は、ポリエステルのコードを含んでもよいし、脂肪族骨格を含むポリアミドのコードを含んでもよいし、芳香族骨格のみのポリアミドのコードを含んでもよいし、レーヨンのコードを含んでもよい。
ベルト層3は、タイヤ1の形状を保持する部材(強度部材)である。ベルト層3は、コード(補強材)を含む。ベルト層3のコードを、ベルトコードと称してもよい。ベルト層3は、コードを含むコード層(補強材層)である。ベルト層3は、カーカス2とトレッドゴム6との間に配置される。ベルト層3は、例えばスチールなどの金属繊維のコード(ベルトコード)と、そのコードを覆うゴム(コートゴム、トッピングゴム)とを含む。なお、ベルト層3は、有機繊維のコードを含んでもよい。本実施形態において、ベルト層3は、第1ベルトプライ3Aと、第2ベルトプライ3Bとを含む。第1ベルとプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、第1ベルトプライ3Aのコードと第2ベルトプライ3Bのコードとが交差するように積層される。
ベルトカバー4は、ベルト層3を保護し、補強する部材(強度部材)である。ベルトカバー4は、コード(補強材)を含む。ベルトカバー4のコードを、カバーコードと称してもよい。ベルトカバー4は、コードを含むコード層(補強材層)である。ベルトカバー4は、タイヤ1の回転軸に対してベルト層3の外側(接地面側)に配置される。ベルトカバー4は、例えばスチールなどの金属繊維のコード(カバーコード)と、そのコードを覆うゴム(コートゴム、トッピングゴム)とを含む。なお、ベルトカバー4は、有機繊維のコードを含んでもよい。
ビードコア5は、カーカス2の両端を固定する部材(強度部材)である。ビードコア5は、タイヤ1をリムに固定させる。ビードコア5は、スチールワイヤの束である。なお、ビードコア5が、炭素鋼の束でもよい。
トレッドゴム6は、カーカス2を保護する。トレッドゴム6は、地面と接触するトレッド部6Aと、溝部6Bとを有する。雨天時など、タイヤ1が濡れた地面を転がる際、溝6Bは、タイヤ1と地面との間から水を排除可能である。
サイドウォールゴム7は、カーカス2を保護する。サイドウォールゴム7は、Y軸方向に関してトレッドゴム6の一側及び他側のそれぞれに配置される。サイドウォールゴム7は、サイドウォール部7Aを有する。
図2は、本実施形態に係るタイヤ1の特性(性能、挙動)のシミュレーション(コンピュータ解析)、及び評価を行う処理装置50の一例を示す図である。処理装置50は、コンピュータ(コンピュータシステム)を含む。本実施形態においては、コンピュータを含む処理装置50を用いて、タイヤ1の特性(性能、挙動)のシミュレーション、及び評価が行われる。
処理装置50は、評価対象であるタイヤ1の解析モデル(タイヤモデル)を作成可能である。すなわち、処理装置50は、コンピュータが解析可能な解析モデルを作成可能である。処理装置50は、解析モデルとして、有限要素モデルを作成可能である。
処理装置50は、作成された解析モデルからタイヤ1の特性をシミュレーション(解析)可能である。処理装置50は、作成された解析モデルからタイヤ1の特性を解析可能であり、その解析結果からタイヤ1の特性を評価可能である。本実施形態において、処理装置50を、モデル作成装置50と称してもよいし、シミュレーション装置50と称してもよいし、解析装置50と称してもよいし、評価装置50と称してもよい。
本実施形態において、処理装置50は、処理部50pと、記憶部50mと、入出力部59とを含む。処理部50pと記憶部50mとは、入出力部59を介して接続される。
処理部50pは、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)と、RAM(Random Access Memory)等のメモリとを含む。処理部50pは、タイヤ1の解析モデルを作成可能なモデル作成部51と、タイヤ1の特性のシミュレーション(解析)、及びシミュレーション結果(解析結果)の評価を実行可能な解析部52とを含む。モデル作成部51及び解析部52はそれぞれ、入出力部59と接続される。モデル作成部51及び解析部52は、入出力部59を介して、相互にデータを通信可能である。
モデル作成部51は、タイヤ1の解析モデルを作成可能である。モデル作成部51は、タイヤ1の有限要素モデルを作成可能である。モデル作成部51は、評価対象であるタイヤ1を有限個の要素に分割して、そのタイヤ1の有限要素モデルを作成可能である。解析部52は、有限要素法を用いて、モデル作成部51で作成された解析モデル(有限要素モデル)からタイヤ1の特性をシミュレーションする。解析部52による解析結果から、タイヤ1の性能が評価される。
記憶部50mは、RAMのような揮発性のメモリ、不揮発性のメモリ、ハードディスク装置等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等のストレージ装置の少なくとも一つを含む。
記憶部50mには、解析モデルの作成のための第1情報、及びシミュレーション(解析)のための第2情報の少なくとも一部が記憶されている。解析モデルの作成のための第1情報は、例えばタイヤ1の構成部材(コード、ゴムなど)の材料特性(物性値、材料定数)に関する情報、及びタイヤ1の構成部材(コード、ゴムなど)の物理特性に関する情報の少なくとも一部を含む。タイヤ1の構成部材の材料特性(物性値、材料定数)は、ヤング率、ポアソン比、降伏応力、最大強度、比重、線膨張係数、及び熱伝導率の少なくとも一つを含む。タイヤ1の構成部材の物理特性は、断面積、厚さ、形状(外形)、及び外形の寸法の少なくとも一つを含む。シミュレーションのための第2情報は、例えば境界条件に関する情報を含む。境界条件は、解析モデルのシミュレーション(解析)において必要な条件であり、解析モデルに付与される各種の条件を含む。境界条件は、例えば、タイヤ1の走行条件を含む。境界条件は、タイヤ1の内圧(空気圧)、タイヤ1の回転速度、タイヤ1に対する荷重、及びタイヤ1と地面との間の摩擦力などの各種の条件を含む。
記憶部50mには、解析モデル(有限要素モデル)を作成するための第1プログラム(第1コンピュータプログラム)が記憶されている。記憶部50mには、タイヤ1の特性をシミュレーション(解析)するための第2プログラム(第2コンピュータプログラム)が記憶されている。記憶部50mには、タイヤ1の特性を評価するための第3プログラム(第3コンピュータプログラム)が記憶されている。第1プログラムは、本実施形態に係る解析モデル作成方法を処理装置(コンピュータ)50に実行させることができる。第2プログラムは、本実施形態に係るシミュレーション方法を処理装置(コンピュータ)50に実行させることができる。第3プログラムは、本実施形態に係る評価方法を処理装置(コンピュータ)50に実行させることができる。なお、第1プログラムを、解析モデル作成用プログラムと称してもよい。第2プログラムを、シミュレーション用プログラムと称してもよいし、解析用プログラムと称してもよい。第3プログラムを、評価用プログラムと称してもよい。なお、1つのプログラムが、解析モデルの作成、シミュレーション、及び評価を処理装置(コンピュータ)50に実行させてもよい。
モデル作成部51は、解析モデルを作成するための第1情報、及び第1プログラムに基づいて、タイヤ1の解析モデルを作成可能である。解析部52は、シミュレーション(解析)のための第2情報、及び第2プログラムに基づいて、タイヤ1の特性のシミュレーション(解析)を実行可能である。解析部52は、第3プログラムに基づいて、タイヤ1の評価を実行可能である。例えば、解析部52がタイヤ1のシミュレーションを実行する際、解析部52が有するメモリに、第2プログラム及び第2情報(タイヤ1の諸条件、境界条件等)が読み込まれる。解析部52は、その第2プログラム及び第2情報に基づいて、演算処理を行う。解析部52による演算途中の数値は適宜、解析部52が有するメモリ及び記憶部50mの少なくとも一方に格納される。格納された数値は適宜、解析部52が有するメモリ及び記憶部50mの少なくとも一方から取り出され、解析部52は、その取り出された数値を用いて演算処理を行う。
入出力部59は、端末装置60と接続される。端末装置60は、入力装置61及び出力装置62と接続される。入力装置61は、キーボード、マウス、及びマイクの少なくとも一つを含む。出力装置62は、ディスプレイなどの表示装置、及びプリンタの少なくとも一つを含む。
解析モデルの作成のための第1情報、及びシミュレーション(解析)のための第2情報の少なくとも一方が、入力装置61から入力されてもよい。本実施形態に係る解析モデル作成方法を実行可能な第1プログラム、シミュレーション方法を実行可能な第2プログラム、及び評価方法を実行可能な第3プログラムの少なくとも一つが、入力装置61から入力されてもよい。なお、解析モデルの作成、シミュレーション、及び評価を処理装置(コンピュータ)50に実行させることができる1つのプログラムが、入力装置61から入力されてもよい。
入力装置61から入力された情報(プログラム)が、端末装置60及び入出力部59を介して、処理部50p及び記憶部50mの少なくとも一方に送られてもよい。処理部50pは、入力装置61からの情報に基づいて、解析モデルの作成、シミュレーション、解析、及び評価の少なくとも一つを実行可能である。記憶部50mは、入力装置61からの情報を記憶可能である。
なお、本実施形態において、プログラムは、単一に構成されるものに限られない。本実施形態において、プログラムの機能は、コンピュータシステムに既に記憶されているプログラムとともに達成されてもよい。コンピュータシステムに既に記憶されているプログラムとは、例えばOS(Operating System)に代表される別個のプログラムを含む。
なお、処理部50pの機能(解析モデル作成機能、シミュレーション機能、及び評価機能の少なくとも一つ)を実現するためのプログラム(第1、第2、第3プログラムの少なくとも一つ)が、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、この記録媒体に記録されたプログラムがコンピュータシステムに読み込まれることによって、コンピュータシステムが、解析モデルの作成、シミュレーション(解析)、及び評価の少なくとも一つを実行してもよい。なお、コンピュータシステムは、処理装置50を含み、上述のOSや周辺機器などのハードウェアを含む。
なお、処理部50pは、記憶部50mからの情報(プログラム)と、入力装置61からの情報(プログラム)との両方を用いて、解析モデルの作成、シミュレーション(解析)、及び評価の少なくとも一つを実行してもよい。なお、処理部50pは、記憶部50mからの情報(プログラム)と、入力装置61からの情報(プログラム)と、記録媒体からの情報(プログラム)との少なくとも2つを用いて、解析モデルの作成、シミュレーション(解析)、及び評価の少なくとも一つを実行してもよい。
モデル作成部51で作成された解析モデル、及び解析部52の解析結果の少なくとも一方を含むデータは、入出力部59及び端末装置60を介して、処理部50pから出力装置62に送られる。出力装置62は、そのデータを出力可能である。出力装置62が表示装置を含む場合、その表示装置は、処理部50pからのデータを表示可能である。
なお、本実施形態において、記憶部50mは、処理部50pに内蔵されていてもよい。なお、記憶部が、評価装置50とは別の装置(例えばデータベースサーバ)に含まれていてもよい。なお、端末装置60が、有線及び無線の少なくとも一方の方法で処理装置50にアクセスしてもよい。
図3は、本実施形態に係るコード層(補強材層)Fの一例を示す図である。以下の説明においては、ベルト層3について主に説明する。なお、上述したように、コード層(補強材層)Fは、カーカス2でもよいし、ベルトカバー4でもよい。
図3に示すように、ベルト層3は、第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとを含む。図3に示す例では、第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、Z軸方向(タイヤ1の回転軸に対する放射方向)に関して異なる位置に配置される。図3に示す例では、第1ベルトプライ3Aが第2ベルトプライ3Bに対して+Z側に配置される。第1ベルトプライ3Aは、第2ベルトプライ3Bよりもトレッド部6A側に配置される。換言すれば、第1ベルトプライ3Aは、タイヤ1の回転軸に対して第2ベルトプライ3Bの外側(接地面側)に配置される。
第1ベルトプライ3A及び第2ベルトプライ3Bはそれぞれ、金属繊維又は有機繊維のコード11と、そのコード11を覆うゴム(コートゴム、トッピングゴム)12とを含む。コード11は、ゴム12の中に埋め込まれる。柔らかいゴム12の内部に、ゴム12よりも硬いコード11が配置される。第1ベルトプライ3A及び第2ベルトプライ3Bは、第1ベルトプライ3Aのコード11と第2ベルトプライ3Bのコード11とが交差するように積層される。
ゴム12は、コード11を包囲する。コード11の外面13とゴム12の内面14とは対向する。コード11の外面13とゴム12の内面14とは接触する。コード11の外面13は、コード11とゴム12との境界に面する。ゴム12の内面14は、コード11とゴム12との境界に面する。以下の説明において、コード11とゴム12との境界に面するコード11の外面13を適宜、境界面13と称し、コード11とゴム12との境界に面するゴム12の内面14を適宜、境界面14と称する。なお、境界面を、接触面と称してもよいし、対向面と称してもよい。
また、以下の説明において、第1ベルトプライ3Aのコード11を適宜、第1コード11Aと称し、第2ベルトプライ3Bのコード11を適宜、第2コード11Bと称する。また、第1ベルトプライ3Aのゴム12を適宜、第1ゴム12Aと称し、第2ベルトプライ3Bのゴム12を適宜、第2ゴム12Bと称する。
第1ベルトプライ3Aにおいて、第1コード11Aは、Y軸方向(タイヤ1の幅方向)に複数配置される。第2ベルトプライ3Bにおいて、第2コード11Bは、Y軸方向(タイヤ1の幅方向)に複数配置される。第1コード11Aと第2コード11Bとは、Z軸方向(タイヤ1の回転軸に対する放射方向)に関して異なる位置に配置される。図3に示す例では、第1コード11Aが第2コード11Bに対して+Z側に配置される。第1コード11Aは、第2コード11Bよりもトレッド部6A側に配置される。換言すれば、第1コード11Aは、タイヤ1の回転軸に対して第2コード11Bの外側(接地面側)に配置される。
第1ゴム12Aは、第1コード11Aを覆う。第2ゴム12Bは、第2コード11Bを覆う。第1ゴム12A及び第2ゴム12Bのそれぞれは、シート状である。第1ゴム12Aの−Z側の表面(タイヤ1の回転軸に対する放射方向に関して内側を向く面)15Aと、第2ゴム12Bの+Z側の表面(タイヤ1の回転軸に対する放射方向に関して外側を向く面)15Bとは、対向する。第1ゴム12Aの表面15Aと第2ゴム12Bの表面15Bとは、接触する。第1ゴム12Aの表面15Aは、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの境界に面する。第2ゴム12Bの表面15Bは、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの境界に面する。以下の説明において、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの境界に面する第1ゴム12Aの表面15Aを適宜、境界面15Aと称し、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの境界に面する第2ゴム12Bの表面15Bを適宜、境界面15Bと称する。なお、境界面を、接触面と称してもよいし、対向面と称してもよい。
本実施形態において、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとは、同じ種類のゴムである。すなわち、第1ゴム12Aの材料特性(物性値、材料定数)と第2ゴム12Bの材料特性(物性値、材料定数)とは等しい。なお、第1ゴム12Aの材料特性(種類)と第2ゴム12Bの材料特性(種類)とが異なってもよい。
ベルト層3において、ゴム12は、境界面14を含む第1部分121と、第1部分121とは異なる第2部分122とを含む。第1部分121は、コード11とゴム12との境界及びその近傍に配置されるゴム12の一部分である。第1部分121は、コード11と隣り合う部分である。第2部分122は、第1部分121よりもコード11とゴム12との境界(境界面14)から離れて配置されるゴム12の一部分である。第2部分122は、境界面14を含まない。第2部分122は、第1コード11Aと第2コード11Bとの中間位置に配置される。
第1部分121は、第1ゴム12A及び第2ゴム12Bのそれぞれに配置される。第1ゴム12Aの第1部分121は、第1ゴム12Aの境界面14を含み、第2ゴム12Bの境界面14を含まない。第2ゴム12Bの第1部分121は、第2ゴム12Bの境界面14を含み、第1ゴム12Aの境界面14を含まない。第1ゴム12Aの第1部分121及び第2ゴム12Bの第1部分121のそれぞれは、第1コード11Aと第2コード11Bとの間に配置される。第1ゴム12Aの第1部分121は、第2ゴム12Bの第1部分121よりも第1コード11Aに近い位置に配置される。第2ゴム12Bの第1部分121は、第1ゴム12Aの第1部分121よりも第2コード11Bに近い位置に配置される。
第2部分122は、第1ゴム12A及び第2ゴム12Bのそれぞれに配置される。第1ゴム12Aの第2部分122は、第1ゴム12Aの境界面14及び第2ゴム12Bの境界面14を含まないように配置される。第2ゴム12Bの第2部分122は、第1ゴム12Aの境界面14及び第2ゴム12Bの境界面14を含まないように配置される。第1ゴム12Aの第2部分122及び第2ゴム12Bの第2部分122のそれぞれは、第1コード11Aと第2コード11Bとの間に配置される。第1ゴム12Aの第2部分122は、第2ゴム12Bの第2部分122よりも第1コード11Aに近い位置に配置される。第2ゴム12Bの第2部分122は、第1ゴム12Aの第2部分122よりも第2コード11Bに近い位置に配置される。
次に、本実施形態に係るタイヤ1の評価方法の一例について説明する。本実施形態においては、図3に示したような、コード11及びそのコード11を覆うゴム12を含むタイヤ1について、解析モデルの作成、シミュレーション、及び評価が行われる。
図4は、本実施形態に係るタイヤ1の評価方法の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態に係る評価方法は、コンピュータで解析可能なタイヤ1の解析モデル(有限要素モデル)を作成する手順(ステップS1)と、解析モデル(有限要素モデル)を用いて、評価対象であるタイヤ1の特性(性能、挙動)をシミュレーションする手順(ステップS2)と、シミュレーションの結果を評価する手順(ステップS3)と、を含む。
解析モデルの作成のための第1情報が、モデル作成部51に入力される。上述のように、第1情報は、タイヤ1の構成部材の材料特性及び物理特性を含む。例えば、タイヤ1の設計案(タイヤ1の形状、構造、材料など)に関する情報が、モデル作成部51に入力される。例えば、タイヤ1についての3次元CAD(Computer Aided Design)データがモデル作成部51に入力されてもよい。
次に、処理装置50のモデル作成部51において、有限要素モデルが作成される。図5は、有限要素モデルの作成方法の手順を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、図4に示すフローチャートのステップS1の内容を示すサブシーケンスである。図6は、本実施形態に係るコード11及びゴム12の有限要素モデルを模式的に示す図である。図7は、図6の一部を模式的に示した図である。
図5に示すように、本実施形態に係る有限要素モデルの作成方法は、コード11の有限要素モデルを作成する手順(ステップS11)と、第1部分121及び第2部分122を要素分割する手順(ステップS12)と、要素分割された第1部分121の少なくとも一部に第1評価領域M1を設定するとともに、要素分割された第2部分122の少なくとも一部に第2評価領域M2を設定する手順(ステップS13)と、要素のそれぞれに材料定数を設定する手順(ステップS14)と、タイヤ1全体の有限要素モデルを作成する手順(ステップS15)と、を含む。
コード11の有限要素モデルの作成のために、コード11の要素分割が行われる(ステップS11)。コード11は、ソリッド要素で要素分割されてもよい。ソリッド要素は、立体要素、又は3次元体要素とも呼ばれる。コード11を要素分割するソリッド要素は、四面体でもよいし、五面体でもよいし、六面体でもよい。なお、コード11は、シェル要素で要素分割されてもよい。シェル要素は、板要素、面要素、又は平面応力要素とも呼ばれる。シェル要素においては、面方向にのみ力が作用する。コード11を要素分割するシェル要素は、三角形でもよいし、四角形でもよい。なお、コード11は、ソリッド要素及びシェル要素の両方で要素分割されてもよい。なお、特許第3363443号に開示されているように、Y軸方向に配置された複数のコード11が、1つのシェル要素(等価シェル要素)でモデル化されてもよい。本実施形態において、第1コード11Aは、ソリッド要素11AMで要素分割される。第2コード11Bは、ソリッド要素11BMで要素分割される。
ゴム12の有限要素モデルの作成のために、ゴム12の要素分割が行われる。少なくともゴム12の第1部分121の要素分割及び第2部分122の要素分割が行われる(ステップS12)。第1部分121は、境界面14を含む。第2部分122は、境界面14を含まない。本実施形態において、第1部分121は、ソリッド要素121Mで要素分割される。第2部分122は、ソリッド要素122Mで要素分割される。第1部分121を要素分割するソリッド要素121Mは、等方性(等方性ソリッド要素)である。第2部分122を要素分割するソリッド要素122Mは、等方性(等方性ソリッド要素)である。ソリッド要素121M及びソリッド要素122Mのそれぞれは、X軸方向とY軸方向とZ軸方向とで材料定数が等しい。ソリッド要素121M及びソリッド要素122Mのそれぞれは、X軸方向とY軸方向とZ軸方向とで応力とひずみとの関係が等しい。なお、第2部分122が、シェル要素で要素分割されてもよいし、ソリッド要素とシェル要素との両方で要素分割されてもよい。
本実施形態において、ソリッド要素121M及びソリッド要素122Mはそれぞれ、節点が4つの四面体でもよいし、節点が6つの五面体でもよいし、節点が8つの六面体でもよい。節点の数が多いほうが精度良いシミュレーションが可能である。本実施形態においては、ソリッド要素121M及びソリッド要素122Mはそれぞれ、節点が6つの五面体、又は節点が8つの六面体である。
なお、第1部分121を要素分割するソリッド要素121M、及び第2部分122を要素分割するソリッド要素122Mそれぞれのアスペクト比は、30以下に設定されてもよい。Y軸方向に関するソリッド要素121M(122M)の寸法がWy、Z軸方向に関するソリッド要素121M(122M)の寸法がHzであるとき、ソリッド要素121M(122M)のアスペクト比は、Wy/Hzである。
ソリッド要素121Mは、Y軸方向に複数配置される。ソリッド要素122Mは、Y軸方向に複数配置される。以下の説明において、Y軸方向に配置される複数のソリッド要素121Mのグループを適宜、ソリッド要素121Mの層L1と称する。Y軸方向に配置される複数のソリッド要素122Mのグループを適宜、ソリッド要素122Mの層L2と称する。第1コード11Aと第2コード11Bとの間において、層L1は2つ(2層)設けられる。第1コード11Aと第2コード11Bとの間において、層L2は少なくとも2つ(2層)設けられる。図6に示す例では、層L2は6つ(6層)設けられる。
要素分割された第1部分121の少なくとも一部に第1評価領域M1が設定される。また、要素分割された第2部分122の少なくとも一部に第2評価領域M2が設定される(ステップS13)。図7は、第1部分121を要素分割する複数のソリッド要素121Mのうち第1評価領域M1に設定されたソリッド要素121Mと、第2部分122を要素分割する複数のソリッド要素122Mのうち第2評価領域M2に設定されたソリッド要素122Mとを示す。
第1評価領域M1は、ゴム12の第1部分121についての物理量(応力、ひずみなど)に関する情報を取得するために設定された領域である。第1評価領域M1は、ゴム12の第1部分121の状態を評価するために設定された領域である。第2評価領域M2は、ゴム12の第2部分122についての物理量(応力、ひずみなど)に関する情報を取得するために設定された領域である。第2評価領域M2は、ゴム12の第2部分122の状態を評価するために設定された領域である。
本実施形態においては、第2評価領域M2は、第1ゴム12Aを要素分割する複数(3つ)の層L2のうち、1つの層L2について設定される。第2評価領域M2は、第2ゴム12Bを要素分割する複数(3つ)の層L2のうち、1つの層L2について設定される。すなわち、本実施形態において、第2評価領域M2は、第1コード11Aと第2コード11Bとの間に設けられた複数(6つ)の層L2のうち、2つの層L2について設定される。なお、第2評価領域M2が、複数(6つ)の層L2の全部について設定されてもよい。
ソリッド要素122Mの層L2が少なくとも2層設けられることによって、第2部分122における物理量(応力、ひずみなど)を精度良く求めることができる。なお、第2部分122がシェル要素で要素分割され、第2評価領域M2が複数のシェル要素を含む場合、第1コード11Aと第2コード11Bとの間において、第2評価領域M2(シェル要素が配置される層)は、少なくとも3つ(3層)設けられてもよい。シェル要素の層L2が少なくとも3層設けられることによって、第2部分122における物理量(応力、ひずみなど)を精度良く求めることができる。
なお、回転軸に対する放射方向(Z軸方向)に関する第1評価領域M1の寸法(厚さ)は、隣り合うコード11の直径dの1/5以上1/2以下に設定される。本実施形態において、第1評価領域M1の厚さと第2評価領域M2の厚さとは等しい。なお、第1評価領域M1の厚さと第2評価領域M2の厚さとが異なってもよい。第1評価領域M1及び第2評価領域M2の厚さが小さい(薄い)ほうが、物理量(応力、ひずみなど)を精度良くシミュレーションできる。例えば、複数の層L2の厚さが異なる場合、それら複数の層L2のうち、厚さが最も小さい(薄い)層L2について第2評価領域M2が設定されてもよい。
コード11の直径(YZ平面内におけるコード11の外形の寸法)をdとした場合、第1評価領域M1(ソリッド要素121M)は、コード11の中心からd/2だけ離れた位置に設定される。なお、図8に示すように、コード11が複数の線状部材の集合体である場合、そのコード11の直径(みかけの直径)dは、以下の(1)式となる。
(1)式において、Siは、線状部材の断面積である。nは、線状部材の数である。図8に示す例では、線状部材は3本であり、n=3である。(1)式に示す直径(みかけの直径)dに基づいて、そのコード11の中心と第1評価領域M1との距離がd/2になるように、コード11に対して第1評価領域M1の位置が設定されてもよい。
次に、ソリッド要素11AM、ソリッド要素121M、及びソリッド要素122Mのそれぞれに対して材料定数が指定(設定)される(ステップS14)。上述のように、材料定数(物性値)は、タイヤ1の構成部材(コード11、ゴム12)のヤング率、ポアソン比、降伏応力、最大強度、比重、線膨張係数、及び熱伝導率の少なくとも一つを含む。
また、コード11及びゴム12以外のタイヤ1の部分について要素分割が行われる。例えば、ビードコア5、トレッドゴム6、及びサイドウォールゴム7などが要素分割される。また、ベルト層3のみならず、他のコード層Fについても要素分割が行われる。例えば、カーカス2及びベルトカバー4についても要素分割が行われる。これら要素分割は、ソリッド要素で行われてもよいし、シェル要素で行われてもよい。要素分割に用いられた要素(ソリッド要素、シェル要素)に材料定数が設定される。以上により、タイヤ1全体についての有限要素モデルが作成される(ステップS15)。本実施形態において、タイヤ1についての有限要素モデルは、要素分割された第1部分121(第1評価領域M1)、及び第2部分122(第2評価領域M2)を含み、コンピュータで解析可能(シミュレーション可能)である。
本実施形態において、回転軸に対する放射方向に関する第1評価領域M1の寸法(厚さ)は、十分に小さい(薄い)。例えば、第1評価領域M1を要素分割するソリッド要素は、タイヤ1全体を要素分割する全ての要素において、最も薄くてもよい。
なお、有限要素モデルは、タイヤ1全体についての3次元モデルでもよいし、タイヤ1の子午断面をコンピュータで解析可能な2次元モデルでもよい。また、タイヤ1の子午断面の2次元モデルを作成し、その2次元モデルをタイヤ1の周方向に展開して、3次元モデルを作成してもよい。また、必ずしもタイヤ1の全周をモデル化する必要はなく、タイヤ1の一部をモデル化してもよい。
タイヤ1の有限要素モデルが作成された後、図4に示すように、その有限要素モデルを用いて、タイヤ1の特性(性能、挙動)についてシミュレーションが行われる(ステップS2)。解析部52に、シミュレーションのための第2情報が入力される。上述したように、第2情報は、例えば走行条件などの境界条件に関する情報を含む。解析部52は、タイヤ1の特性を有限要素法に基づいてシミュレーションするための第2プログラムを使って、モデル作成部51で作成された有限要素モデルからタイヤ1の特性をシミュレーションする。シミュレーションは、タイヤ1が転がる際のタイヤ1の挙動を模擬する走行シミュレーションを含む。また、シミュレーションは、タイヤ1に荷重が作用された際のタイヤ1の変形を模擬する変形シミュレーションを含む。なお、タイヤ1の特性についてのシミュレーションの項目は、空気充填の模擬、接地状態の模擬、転動状態の模擬、変形状態の模擬、耐久性の模擬、及び磨耗状態の模擬の少なくとも一つでもよい。また、シミュレーションにおいて、これら項目の少なくとも一つについて最適化が行われてもよい。なお、陽的解法を用いる場合、第1評価領域M1及び第2評価領域M2の要素(本実施形態においてはソリッド要素)の積分タイプとして全積分を使用してもよい。
処理装置50は、シミュレーションの結果を評価する(ステップS3)。その評価の結果は、設計に反映される。本実施形態においては、少なくともゴム12(第1部分121及び第2部分122)の状態についての評価が行われる。なお、処理装置50は、シミュレーションの結果及び評価の結果の少なくとも一方を、出力装置62に出力してもよい。出力装置62が表示装置を含む場合、シミュレーションの結果及び評価の結果の少なくとも一方が表示装置に表示されてもよい。その出力装置62に出力されたシミュレーションの結果及び評価の結果の少なくとも一方が、設計に反映されてもよい。
シミュレーションにおいては、有限要素モデル(タイヤモデル)についての各種の物理量が出力される。本実施形態においては、第1評価領域M1についてのシミュレーション(コンピュータ解析)により、ゴム12の第1部分121における物理量に関する情報が出力される。また、第2評価領域M2についてのシミュレーション(コンピュータ解析)により、ゴム12の第2部分122における物理量に関する情報が出力される。
ゴム12の第1部分121における物理量は、第1部分121に作用する応力、ひずみ、変位量、変位方向、ひずみエネルギー密度、主値、主方向、及びコード11と第1部分121と接着強度の少なくとも一つを含む。ゴム12の第2部分122における物理量は、第2部分122に作用する応力、せん断力、ひずみ、変位量、変位方向、ひずみエネルギー密度、主値、及び主方向の少なくとも一つを含む。本実施形態においては、ゴム12が第1ゴム12Aとその第1ゴム12Aに接続される第2ゴム12Bとを含む。ゴム12の第2部分122における物理量は、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの結合強度を含んでもよい。応力は、垂直応力及びせん断応力(せん断力)の一方又は両方を含む。ひずみは、垂直ひずみ及びせん断ひずみの一方又は両方を含む。物理量が、最大垂直ひずみ及び最大せん断ひずみの一方又は両方を含んでもよい。
また、シミュレーションにより、第1評価領域M1及び第2評価領域M2とは異なる有限要素モデル(タイヤモデル)の評価領域に作用する応力、ひずみなどの物理量が出力される。例えば、トレッドゴム6やサイドウォールゴム7における物理量が出力される。また、タイヤモデルに発生する振動が出力されてもよい。また、タイヤモデルの変形についてシミュレーションが行われ、その変形時の物理量が出力されてもよい。変形時の物理量として、例えばサイドウォール部7Aのたわみ量、トレッドゴム部6における接地形状、接地圧分布、タイヤ1の中心に作用する力、モーメントなどが出力されてもよい。
本実施形態においては、第1評価領域M1(第1部分121)及び第2評価領域M2(第2部分122)についてのシミュレーションの結果に基づいて、その第1評価領域M1(第1部分121)及び第2評価領域M2(第2部分122)の特性(性能、挙動)に関する情報が取得される。本実施形態において、第1評価領域M1は、ゴム12の第1部分121の状態を評価するために設定された領域である。第2評価領域M2は、ゴム12の第2部分122の状態を評価するために設定された領域である。シミュレーションの結果から、第1部分121及び第2部分122の状態に関する情報が取得され、その第1部分121及び第2部分122の状態を精度良く行うことができる。
ゴム12の第1部分121の状態は、変形状態及び損傷状態の一方又は両方を含む。すなわち、第1部分121に関する評価項目は、変形状態及び損傷状態の一方又は両方を含む。変形状態は、変形位置、変形量、及び変形方向の少なくとも一つを含む。損傷状態は、亀裂発生位置、亀裂量、破壊位置、破壊モード、コード11とゴム12との剥離位置、及び剥離量の少なくとも一つを含む。
ゴム12の第2部分122の状態は、変形状態及び損傷状態の一方又は両方を含む。すなわち、第2部分122に関する評価項目は、変形状態及び損傷状態の一方又は両方を含む。変形状態は、変形位置、変形量、及び変形方向の少なくとも一方を含む。損傷状態は、亀裂発生位置、亀裂量、破壊位置、及び破壊モードの少なくとも一つを含む。
このように、本実施形態においては、シミュレーションの結果に基づいて、例えば、コード11とゴム12(第1部分121)との間のせん断特性が取得可能である。また、シミュレーションの結果に基づいて、ゴム12(第2部分122)におけるせん断特性が取得可能である。また、第1評価領域M1についてのシミュレーションの結果に基づいて、例えば、コード11とゴム12との剥離部分(破壊部分)の位置が予測(評価)可能である。また、第2評価領域M2についてのシミュレーションの結果に基づいて、第1コード11Aと第2コード11Bとの間におけるゴム12の損傷部分の位置が予測(評価)可能である。また、ゴム12の損傷原因の解明にも寄与する。
以上説明したように、本実施形態によれば、コード11とゴム12との境界又はその近傍のゴム12の第1部分121を要素分割して、その要素分割された第1部分121の少なくとも一部に第1評価領域M1に設定して、その第1評価領域M1(第1部分121)について有限要素法に基づくシミュレーション(コンピュータ解析)を行うようにしたので、ゴム12の第1部分121の状態を精度良く評価することができる。
ゴム12の第1部分121(コード11との境界又はその近傍のゴム12)の状態を評価する場合、その第1部分121における物理量に関する情報の取得が必要である。本実施形態によれば、第1部分121を要素分割して、その要素分割された第1部分121の少なくとも一部に第1評価領域M1を設定して、その第1評価領域M1(第1部分121)についてシミュレーション(コンピュータ解析)を行うことにより、第1部分121における物理量(応力、ひずみなど)に関する情報を取得可能である。したがって、その取得した物理量に基づいて、ゴム12の第1部分121の状態を精度良く評価することができる。
また、本実施形態によれば、コード11とゴム12との境界から離れたゴム12の第2部分122を要素分割して、その要素分割された第2部分122の少なくとも一部に第2評価領域M2を設定して、その第2評価領域M2(第2部分122)について有限要素法に基づくシミュレーション(コンピュータ解析)を行うようにしたので、第1部分121のみならず、ゴム12の第2部分122の状態も精度良く評価することができる。ゴム12の第2部分122(コード11との境界から離れたゴム12)の状態を評価する場合においても、その第2部分122における物理量(応力、ひずみなど)に関する情報の取得が必要である。本実施形態によれば、第2部分122を要素分割して、その要素分割された第2部分122の少なくとも一部に第2評価領域M2を設定して、その第2評価領域M2(第2部分122)についてシミュレーション(コンピュータ解析)を行うことにより、第2部分122における物理量に関する情報を取得可能である。したがって、その取得した物理量に基づいて、ゴム12の第2部分122の状態を精度良く評価することができる。
すなわち、本実施形態によれば、処理装置50は、コード11とゴム12との境界近傍の物理量、及びゴム12の物理量を取得可能である。処理装置50は、取得された物理量に基づいて、例えば第1コード11Aと第2コード11Bとの間に存在するゴム12の変形挙動、せん断挙動、破壊発生位置、及びコード11とゴム12との剥離発生位置の少なくとも一つを評価可能である。本実施形態によれば、コード11とゴム12とのせん断特性(せん断力、せん断ひずみなど)や、剥離特性(剥離強度、剥離位置など)に関する情報を精度良く取得可能である。また、本実施形態によれば、第1コード11Aと第2コード11Bとの中間位置のゴム12の第2部分122におけるせん断特性(せん断力、ひずみなど)に関する情報なども精度良く取得可能である。これにより、タイヤの開発に適用可能なタイヤの特性(性能、挙動)のシミュレーションを精度良く行うことができ、解析精度及び評価精度の向上に寄与できる。
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施系態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図9は、本実施形態に係るコード11及びゴム12の有限要素モデルを模式的に示す図である。上述の実施形態と同様、コード11の有限要素モデルの作成のために、コード11が要素分割される(ステップS11)。本実施形態においては、特許第3363443号に開示されているように、Y軸方向に配置された複数のコード11が、1つのシェル要素(等価シェル要素)でモデル化される。すなわち、Y軸方向に配置される複数の第1コード11Aが、1つのシェル要素(等価シェル要素)11AMでモデル化される。Y軸方向に配置される複数の第2コード11Bが、1つのシェル要素(等価シェル要素)11BMでモデル化される。そのシェル要素11AMの厚さ及びシェル要素11BMの厚さとして、コード11の直径の値が指定(設定)されてもよい。なお、シェル要素11AM及びシェル要素11BMはそれぞれ、異方性(異方性シェル要素)である。シェル要素11AM及びシェル要素11BMはそれぞれ、例えばX軸方向とY軸方向とで材料定数が異なる。シェル要素11AM及び11BMはそれぞれ、例えばX軸方向とY軸方向とで応力とひずみとの関係が異なる。
ゴム12の有限要素モデルが作成される。少なくともゴム12の第1部分121の要素分割及び第2部分122の要素分割が行われる(ステップS12)。本実施形態において、第1部分121は、シェル要素121MCで要素分割される。第1部分121を要素分割するシェル要素121MCは、等方性(等方性シェル要素)である。シェル要素121MCは、X軸方向とY軸方向とで材料定数が等しい。シェル要素121MCは、X軸方向とY軸方向とで応力とひずみとの関係が等しい。シェル要素121MCは、節点が3つの三角形でもよいし、節点が4つの四角形でもよい。
第2部分122は、ソリッド要素で要素分割される。第1コード11Aと第2コード11Bとの間において、ソリッド要素を含む層L2が少なくとも2つ(2層)設けられる。第1コード11Aと第2コード11Bとの間において少なくとも2つの層L2が配置されることにより、シミュレーション精度(数値計算精度)の低下が抑制される。なお、第2部分122が、シェル要素で要素分割されてもよい。第1コード11Aと第2コード11Bとの間において、シェル要素を含む層L2が少なくとも3つ(3層)設けられてもよい。なお、第2部分122が、ソリッド要素とシェル要素との両方で要素分割されてもよい。なお、図9においては、第2部分122を要素分割する要素(ソリッド要素、シェル要素)の図示を省略する。第2部分122を要素分割するソリッド要素又はシェル要素も、等方性である。
次に、要素分割された第1部分121の少なくとも一部に第1評価領域M1が設定され、要素分割された第2部分122の少なくとも一部に第2評価領域M2が設定される(ステップS13)。
コード11の直径(YZ平面内におけるコード11の外形の寸法)をdとした場合、第1評価領域M1(シェル要素121MC)は、コード11の中心からd/2だけ離れた位置に設定される。図9に示す例において、等価シェル要素11AM及び等価シェル要素11BMはそれぞれ、コード11の中心を通る。等価シェル要素11AMとその等価シェル要素11AMに隣り合う第1評価領域M1(シェル要素121MC)との距離は、d/2である。等価シェル要素11BMとその等価シェル要素11BMに隣り合う第1評価領域M1(シェル要素121MC)との距離は、d/2である。
次に、第1部分121を要素分割するシェル要素121MC、及び第2部分122を要素分割するソリッド要素及びシェル要素の一方又は他方のそれぞれに対して材料定数が指定(設定)される(ステップS14)。
また、コード11及びゴム12以外のタイヤ1の部分について要素分割が行われる(ステップS15)。以上により、タイヤ1全体についての有限要素モデルが作成される。
タイヤ1の有限要素モデルが作成された後、その有限要素モデルを用いて、タイヤ1の特性(性能、挙動)についてシミュレーションが行われ(ステップS2)、そのシミュレーションの結果の評価が行われる (ステップS3)。
以上説明したように、本実施形態においても、コード11とゴム12との境界又はその近傍のゴム2の第1部分121を要素分割して、その要素分割された第1部分121の少なくとも一部に第1評価領域M1を設定して、有限要素法に基づくシミュレーション(コンピュータ解析)を行うようにしたので、ゴム12の第1部分121の状態を精度良く評価することができる。本実施形態においては、第1評価領域M1(第1部分121)がシェル要素121MCで要素分割される。一般に、シミュレーションに要する時間は、要素の節点数が少ないほど短くなる。したがって、本実施形態においては、シミュレーションに要する時間が短縮される。
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。図10は、本実施形態に係る有限要素モデルを模式的に示す図である。ゴム12は、第1コード11Aを覆う第1ゴム12Aと、第2コード11Bを覆う第2ゴム12Bとを含む。第1ゴム12Aの境界面(表面)15Aと第2ゴム12Bの境界面(表面)15Bとが接続される。第1ゴム12Aの境界面15A及び第2ゴム12Bの境界面15Bのそれぞれは、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの境界に面する。本実施形態においては、境界面15Aを含む第1ゴム12Aの第3部分123が要素分割され、その要素分割された第1ゴム12Aの第3部分123の少なくとも一部に第3評価領域M3が設定される。また、本実施形態においては、境界面15Bを含む第2ゴム12Bの第3部分123も要素分割され、その要素分割された第2ゴム12Bの第3部分123の少なくとも一部に第3評価領域M3が設定される。なお、第1ゴム12A及び第2ゴム12Bのいずれか一方の第3部分123のみが要素分割され、その要素分割された第3部分123の少なくとも一部に第3評価領域M3が設定されてもよい。
本実施形態において、第3部分123は、シェル要素123Mで要素分割される。シェル要素123Mは、節点が3つの三角形でもよいし、節点が4つの四角形でもよい。シェル要素123Mは、等方性(等方性シェル要素)である。なお、第3部分123が、ソリッド要素で要素分割されてもよいし、ソリッド要素及びシェル要素の両方で要素分割されてもよい。
第3部分123の要素分割とともに、上述の実施形態に従って、第1部分121の要素分割及び第2部分122の要素分割も行われる。また、要素分割された第3部分123の少なくとも一部に対する第3評価領域M3の設定とともに、上述の実施形態に従って、要素分割された第1部分121の少なくとも一部に対する第1評価領域M1の設定、及び要素分割された第2部分122の少なくとも一部に対する第2評価領域M2の設定も行われる。図10に示す例では、第1部分121は、シェル要素(等方性シェル要素)121MCで要素分割される。なお、第1部分121は、ソリッド要素(等方性ソリッド要素)で要素分割されてもよいし、ソリッド要素及びシェル要素の両方で要素分割されてもよい。第2部分122は、第1部分121と第3部分123との間に設定される。第2部分122は、ソリッド要素(等方性ソリッド要素)で要素分割されてもよいし、シェル要素(等方性シェル要素)で要素分割されてもよいし、ソリッド要素及びシェル要素の両方で要素分割されてもよい。
また、コード11及びゴム12以外のタイヤ1の部分についても要素分割が行われる。要素分割された第1部分121(第1評価領域M1)、第2部分122(第2評価領域M2)、及び第3部分123(第3評価領域M3)を含むタイヤ1の有限要素モデルを用いて、シミュレーションが行われる。そのシミュレーションの結果に基づいて、タイヤ1の特性が評価される。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの境界又はその近傍の第3部分123を要素分割して、その要素分割された第3部分123の少なくとも一部に第3評価領域M3を設定して、その第3評価領域M3(第3部分123)について有限要素法に基づくシミュレーション(コンピュータ解析)を行うようにしたので、ゴム12(第1ゴム12A及び第2ゴム12Bの一方又は両方)の第2部分123の状態を精度良く評価することができる。
本実施形態において、第3評価領域M3は、ゴム12(第1ゴム12A及び第2ゴム12Bの一方又は両方)の第3部分123についての物理量を取得するために設定された領域である。また、第3評価領域M3は、ゴム12(第1ゴム12A及び第2ゴム12Bの一方又は両方)の第3部分123の状態を評価するために設定された領域である。シミュレーションの結果から、第3部分123の状態に関する情報が取得され、その第3部分123の状態を精度良く行うことができる。
ゴム12の第3部分123の状態は、変形状態及び損傷状態の一方又は両方を含む。すなわち、第3部分123に関する評価項目は、変形状態及び損傷状態の一方又は両方を含む。変形状態は、変形位置、変形量、及び変形方向の少なくとも一つを含む。損傷状態は、亀裂発生位置、亀裂量、破壊位置、破壊モード、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの剥離位置、及び剥離量の少なくとも一つを含む。
ゴム12の第3部分123の状態を評価する場合、その第3部分123における物理量の取得が必要となる。本実施形態によれば、第3部分123を要素分割し、その要素分割された第3部分123の少なくとも一部に第3評価領域M3を設定して、その第3評価領域M3(第3部分123)についてシミュレーション(コンピュータ解析)を行うことにより、第3部分123における物理量(応力、ひずみなど)に関する情報を取得可能である。したがって、その取得した物理量に基づいて、ゴム12の第3部分123の状態を精度良く評価することができる。
ゴム12の第3部分123における物理量は、第3部分123に作用する応力、ひずみ、変位量、変位方向、ひずみエネルギー密度、主値、主方向、及び第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの結合強度の少なくとも一つを含む。応力は、垂直応力及びせん断応力(せん断力)の一方又は両方を含む。ひずみは、垂直ひずみ及びせん断ひずみの一方又は両方を含む。物理量が、最大垂直ひずみ及び最大せん断ひずみの一方又は両方を含んでもよい。
このように、本実施形態においては、シミュレーションの結果に基づいて、例えば、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの間のせん断特性が取得可能である。例えば、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの間の損傷部分(剥離部分、破壊部分)の位置が予測(評価)可能である。また、例えば第1ゴム12Aと第2ゴム12Mとの剥離原因の解明にも寄与する。
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。図11は、本実施形態に係る有限要素モデルを模式的に示す図である。図11に示すように、第1コード11Aと第2コード11Bとの間において、第2評価領域M2が1つだけ設定されてもよい。また、図11に示すように、第1コード11Aとの境界面14を含むゴム12の一部分が第1評価領域M1に設定され、第2コード11Bに隣り合う位置には第1評価領域M1が設定されなくてもよい。すなわち、本実施形態において、第1コード11Aと第2コード11Bとの間において、第1評価領域M1及び第2評価領域M2が1つずつ(1層ずつ)設定される。第1コード11Aと第2コード11Bとの間において、第2評価領域M2は、2つ(2層)設定されてもよいし、3つ(3層)設定されてもよいし、4つ(4層)以上の任意の数だけ設定されてもよい。また、本実施形態においては、第1コード11Aと第2コード11Bとは、同一のゴム12で覆われている。換言すれば、第1コード11Aと第2コード11Bとの間に、ゴム12の境界面(15A、15B)が存在しない。
<第5実施形態>
第5実施形態について説明する。図12は、本実施形態に係る有限要素モデルの作成方法の一例を示すフローチャートである。図13は、本実施形態に係るタイヤ1の有限要素モデルを模式的に示す図である。
図12に示すように、上述の実施形態に従って、コード11の有限要素モデルが作成される(ステップS11)。ゴム12の第1部分121及び第2部分122の要素分割が行われる(ステップS12)。要素分割された第1部分121(層L1)に第1評価領域M1が設定され、要素分割された第2部分122(層L2)に第2評価領域M2が設定される(ステップS13)。要素11AM、要素121M、及び要素122Mのそれぞれに対して材料定数が指定(設定)される(ステップS14)。
ステップS11からステップS14において作成される有限要素モデルは、タイヤ1の子午断面における2次元モデルである。図13に示すように、本実施形態においては、その2次元モデルがタイヤ1の周方向の一部に展開される。以下の説明においては、タイヤ1の子午断面における2次元モデルを適宜、子午断面モデルDMと称する。
子午断面モデルDMがタイヤ1の周方向の一部に展開されることによって、周方向に関するタイヤ1の一部分について有限要素モデルTM1が作成される(ステップS151)。有限要素モデルTM1は、3次元モデルである。以下の説明において、子午断面モデルDMがタイヤ1の周方向の一部に展開されることによって作成された有限要素モデル(3次元モデル)TM1を適宜、第1タイヤモデルTM1と称する。
また、周方向に関するタイヤ1の残りの部分について有限要素モデルTM2が作成される(ステップS152)。有限要素モデルTM2は、3次元モデルである。以下の説明において、タイヤ1の残りの部分について作成された有限要素モデル(3次元モデル)TM2を適宜、第2タイヤモデルTM2と称する。
以上により、図13に示すように、タイヤ1の周方向に関して、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2とが作成される。第1タイヤモデルTM1は、周方向に関してタイヤ1の一部分をモデル化した有限要素モデルである。第1タイヤモデルTM1は、タイヤ1の回転軸Jとタイヤ1のトレッド部(接地面)6Aの部分AP1とを結ぶラインKL1と、タイヤ1の回転軸Jとタイヤ1のトレッド部(接地面)6Aの部分AP2とを結ぶラインKL2との間の範囲(部分)を含む。部分AP1と部分AP2とは、タイヤ1の周方向に関して異なる部分である。本実施形態においては、タイヤ1の周方向に関する第1タイヤモデルTM1のトレッド部6Aの寸法(展開長)Rは、タイヤ1の接地長Eよりも長く、タイヤ1の周長よりも短い。展開長Rは、例えば、接地長Eの1.0倍以上2.0倍以下に定められる。本実施形態において、展開長Rは、接地長Eの1.5倍に定められる。
第2タイヤモデルTM2は、周方向に関してタイヤ1の残りの部分をモデル化した有限要素モデルである。第2タイヤモデルTM2の作成方法は、第1タイヤモデルTM1の作成方法とは異なる。第2タイヤモデルTM2の作成において、タイヤのコードとゴムとの境界(境界面14)は考慮されていない。シミュレーションにおいて、第2タイヤモデルTM2は、第1タイヤモデルTM1よりも短時間で解析(数値計算)可能なモデルである。第2タイヤモデルTM2を用いて第1部分121における物理量に関する情報を取得することは、第1タイヤモデルTM1を用いて第1部分121における物理量に関する情報を取得することよりも困難である。第2タイヤモデルTM2を用いて第1部分121の状態を評価することは、第1タイヤモデルTM1を用いて第1部分121の状態を評価することよりも困難である。
第2タイヤモデルTM2は、例えば特許第3363443号に開示されているような、タイヤの幅方向に配置された複数のコードを1つの異方性シェル要素(膜要素)でモデル化し、ゴムをソリッド要素でモデル化したものでもよい。第2タイヤモデルTM2は、例えば汎用ソフトABAQUSで採用されているような、ゴム及びそのゴムに埋め込まれているコードを含むベルトプライを1つの要素で簡略的にモデル化したものでもよい。第2タイヤモデルTM2は、コードを考慮せずに、ゴムのみをモデル化したものでもよい。
第1タイヤモデルTM1及び第2タイヤモデルTM2が作成された後、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2とが結合される。これにより、タイヤ1全体の有限要素モデルが作成される(ステップS153)。
第1タイヤモデルTM1及び第2タイヤモデルTM2の両方においてタイヤ1の径方向に関するコード11の位置は等しい。そのため、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2との結合により、第1タイヤモデルTM1においてモデル化されたコード11と第2タイヤモデルTM2においてモデル化されたコード11とは一体化されてもよい。
第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2との結合は、第1タイヤモデルTM1の要素の節点と第2タイヤモデルTM2の要素の節点との結合を含む。第1タイヤモデルTM1の要素の節点と第2タイヤモデルTM2の要素の節点とが結合されるように、その結合される要素のタイプが変更(修正)されてもよい。すなわち、第1タイヤモデルTM1の要素の節点と第2タイヤモデルTM2の要素の節点とが結合されるように、ラインAP1に隣接する第1タイヤモデルTM1の要素のタイプ、及びラインAP1に隣接する第2タイヤモデルTM2の要素のタイプの一方又は両方が変更(修正)されてもよい。第1タイヤモデルTM1の要素の節点と第2タイヤモデルTM2の要素の節点とが結合されるように、ラインAP2に隣接する第1タイヤモデルTM1の要素のタイプ、及びラインAP2に隣接する第2タイヤモデルTM2の要素のタイプの一方又は両方が変更(修正)されてもよい。例えば、結合される要素が六面体のソリッド要素又はシェル要素である場合、第1タイヤモデルTM1の要素の節点と第2タイヤモデルTM2の要素の節点とが結合されるように、その六面体のソリッド要素又はシェル要素が、四面体のソリッド要素又は五面体のソリッド要素に変更されてもよい。
タイヤ1全体の有限要素モデルが作成された後、図4を参照して説明したように、その有限要素モデルを用いて、タイヤ1の特性(性能、挙動)についてシミュレーションが行われ(ステップS2)、シミュレーションの結果が評価される(ステップS3)。
以上説明したように、本実施形態によれば、コード11とゴム12との境界が考慮された第1タイヤモデルTM1と、コード11とゴム12との境界が考慮されていない第2タイヤモデルTM2との両方を用いてタイヤ1全体の有限要素モデルが作成されるので、シミュレーションの負荷が低減され、解析時間(数値計算時間)が短縮される。すなわち、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2との両方を含むタイヤ1の有限要素モデルと、第1タイヤモデルTM1のみを含むタイヤ1の有限要素モデルとのそれぞれについてシミュレーションを行った場合、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2との両方を含むタイヤ1の有限要素モデルについての解析時間は、第1タイヤモデルTM1のみを含むタイヤ1の有限要素モデルについての解析時間よりも短い。第1タイヤモデルTM1のみを含むタイヤ1の有限要素モデルは、子午断面モデルDMがタイヤ1の周方向の全部に展開されることによって作成された3次元モデルである。
なお、上述の第1〜第5実施形態においては、コード層(補強材層)Fがベルト層3であることとした。上述したように、コード層Fは、カーカス2でもよい。カーカス2も、コードとそのコードを覆うゴムとを含む。カーカス2についても、上述の実施形態に従って、要素分割を行い、シミュレーションをすることにより、カーカス2の状態について精度良く評価を行うことができる。なお、上述したように、コード層Fは、ベルトカバー4でもよい。ベルトカバー4についても、上述の実施形態に従って、要素分割を行い、シミュレーションをすることにより、ベルトカバー4の状態について精度良く評価を行うことができる。以下で説明する実施形態においても同様である。
なお、上述の各実施形態においては、コードと、そのコードを覆うゴムとを含むコード層Fが評価対象(解析対象)であることとした。コードとゴムとを含むコード層Fのみならず、異なる部材(異種材料)を含む層(又は物体)が評価対象(解析対象)でもよい。すなわち、第1材料の第1部材と、その第1部材を覆い、第1材料よりも柔らかい第2材料の第2部材とを含む層(又は物体)が評価対象(解析対象)でもよい。その第2材料は、非線形弾性(粘弾性、超弾性)でもよい。その第2材料は、熱可塑性でもよいし、弾性でもよいし、高弾性でもよい。以下で説明する実施形態においても同様である。
<実施例1>
次に、本発明に係る実施例1について説明する。本発明者は、実際のタイヤについて負荷試験を行うとともに、上述の実施形態に従ってシミュレーションを行い、実際のタイヤを使用した試験結果とシミュレーション結果とを比較した。
試験に使用したラジアルタイヤは、LTR205/85R16であり、上述の実施形態で説明したような第1ベルトプライ3A及び第2ベルトプライ3Bを含むベルト層3を有する。実際の試験条件及びシミュレーション条件では、空気圧を600kPa、負荷荷重を12.6kNとした。シミュレーションにおいて横剛性解析を行った。横剛性解析時の摩擦係数を1.0とした。
シミュレーションに際し、図14−1、図14−2、及び図14−3に示す解析モデル(タイヤモデル)を作成した。図14−1、図14−2、及び図14−3に示すタイヤモデルにおいて、ゴムの位置a、位置b、位置c、位置d、及び位置eについての物理量をシミュレーションにより求めた。シミュレーションにより求めた物理量は、位置a、位置b、位置c、位置d、及び位置eのそれぞれにおける最大せん断ひずみである。
図14−1は、本発明に係るタイヤモデルを示す図である。図14−1に示す位置a、位置b、位置cについての最大せん断ひずみを、本発明に係るシミュレーション方法により求めた。位置aは、上述の実施形態で説明した第1部分121(第1評価領域M1)に相当する。位置b及び位置cは、上述の実施形態で説明した第2部分122(第2評価領域M2)に相当する。
図14−2は、比較例(従来例)1に係るタイヤモデルを示す図である。図14−2に示す位置dについての最大せん断ひずみを、比較例1に係るシミュレーション方法により求めた。比較例1に係るタイヤモデルは、特許第3363443号に開示されているような、タイヤの幅方向に配置された複数のコードを1つの異方性シェル要素(膜要素)でモデル化し、ゴムをソリッド要素でモデル化したものである。位置dは、一対の異方性シェル要素(コード)の間に配置されるゴムの中間位置である。
図14−3は、比較例(従来例)2に係るタイヤモデルを示す図である。図14−3に示す位置eについての最大せん断ひずみを、比較例2に係るシミュレーション方法により求めた。比較例2に係るタイヤモデルは、汎用ソフトABAQUSで採用されているような、ゴム及びそのゴムに埋め込まれているコードを含むベルトプライを1つの要素で簡略的にモデル化したものである。
実際の試験及びシミュレーションは、タイヤに空気を充填した状態(空気充填時)と、タイヤを接地した状態(接地時)とのそれぞれについて行った。図15に結果を示す。図15は、最大せん断ひずみに関するシミュレーション結果と実際に行った試験結果(実測値)との比較結果を示す。表中の数値は、実測値を指数としたシミュレーション値である。表中の数値が大きいほど、シミュレーションの精度が高い。図15に示すように、本発明に係るタイヤモデルを使用することにより、比較例1及び比較例2に対して高いシミュレーション精度が得られ、非常に有効であることが分かる。また、本発明に係るタイヤモデルを使用することにより、タイヤにおいて実際に損傷(亀裂)が生じた位置とシミュレーションにより得られた損傷位置とが一致することが確認できた。これにより、本発明に係るタイヤモデル及びシミュレーション方法の有効性が確認できた。
<実施例2>
次に、本発明に係る実施例2について説明する。本発明者は、実際のタイヤについて走行試験を行うとともに、上述の実施形態に従ってシミュレーションを行い、実際のタイヤを使用した試験結果とシミュレーション結果とを比較した。
試験に使用したラジアルタイヤは、LTR205/85R16であり、上述の実施形態で説明したような第1ベルトプライ3A(第1ゴム12A)及び第2ベルトプライ3A(第2ゴム12B)を含むベルト層3を有する。実際の試験条件及びシミュレーション条件は、空気圧を600kPa、負荷荷重を12.6kNとした。試験は、新品状態(未走行状態)のタイヤと、一定距離だけ走行した後の状態(走行後状態)のタイヤとのそれぞれについて、第1ゴム12Aと第2ゴム12Bとの結合強度の解析を行った。シミュレーションにおいては、走行後状態のタイヤ(ゴム)が、未走行状態のタイヤ(ゴム)に対して、モジュラスが60%低下することとした。モジュラスとは、対象物(ゴム)に一定のひずみを与えたときの応力のことをいう。
図16に示すように、ゴムを要素分割した。要素分割は、ベルト層3のゴム(ベルト層ゴム)と、ベルト層3のエッジの周囲のゴム(ベルトエッジ周囲ゴム)とのそれぞれについて行った。シミュレーションでは、未走行状態(新品状態)及び走行後状態それぞれについてのゴムの結合強度を求めた。図17は、シミュレーション結果を示す。ゴムをソリッド要素で要素分割した場合及びシェル要素で要素分割した場合のそれぞれについて同様の結果が得られた。図17に示すグラフにおいて、横軸は、Y軸方向(タイヤ1の幅方向)に関する要素の位置を示す。縦軸は、要素ごとの結合強度を示す。ラインC1は、新品状態(未走行状態)の結合強度を示す。ラインC2は、走行後状態の結合強度を示す。図17は、タイヤ1の幅方向(Y軸方向)に関して一側の端(エッジ位置)から中央位置までの結合強度を示す。エッジ位置は、ベルトエッジ周囲ゴムを含む。シミュレーションの結果、エッジ位置における結合強度が中央位置における結合強度よりも大きいことが分かる。シミュレーションの結果、要素ごとの結合強度のうち、新品状態(未走行状態)の結合強度の最大値は58、走行後状態の結合強度の最大値は75であった。なお、これらの数値は、無次元化した値である。
本発明に係るタイヤモデルを使用してシミュレーションすることにより、未走行状態及び走行状態のそれぞれにおいて、実際の結合強度とシミュレーションにより得られた結合強度とが一致することが確認できた。これにより、本発明に係るタイヤモデル及びシミュレーション方法の有効性が確認できた。
<実施例3>
次に、本発明に係る実施例3について説明する。本発明者は、第5実施形態において説明したような、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2との両方を含むタイヤ1の有限要素モデル、及び第1タイヤモデルTM1のみを含むタイヤ1の有限要素モデルを作成し、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2との両方を含むタイヤ1の有限要素モデルについてシミュレーションを行ったときの解析時間と、第1タイヤモデルTM1のみを含むタイヤ1の有限要素モデルについてシミュレーションを行ったときの解析時間とを比較した。
シミュレーションに使用したラジアルタイヤは、LTR205/85R16であり、シミュレーション条件は、空気圧を600kPa、負荷荷重を12.6kNとした。シミュレーションにおいて横剛性解析を行った。
第1コード11Aと第2コード11Bとの間に4つ(4層)のソリッド要素が配置されるように子午断面モデルDMを作成し、その子午断面モデルDMをタイヤ1の周方向に展開して第1タイヤモデルTM1を作成した。第1タイヤモデルTM1のみを含むタイヤ1の有限要素モデルについてシミュレーションを行ったときの解析時間を100(指数)としたとき、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2との両方を含むタイヤ1の有限要素モデルについてシミュレーションを行ったときの解析時間は62であった。また、第1コード11Aと第2コード11Bとの間に2つ(2層)のソリッド要素と2つ(2層)のシェル要素とが配置されるように子午断面モデルDMを作成し、その子午断面モデルDMをタイヤ1の周方向に展開して第1タイヤモデルTM1を作成した場合、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2との両方を含むタイヤ1の有限要素モデルについてシミュレーションを行ったときの解析時間は56であった。このように、第1タイヤモデルTM1と第2タイヤモデルTM2との両方を含むタイヤ1の有限要素モデルについての解析時間は、第1タイヤモデルTM1のみを含むタイヤ1の有限要素モデルについての解析時間よりも短いことが確認できた。