JP6281747B2 - ガラス物品の製造装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、横向き姿勢で内部に溶融ガラスを流通させる貴金属製の溶融ガラス移送管を備えたガラス物品の製造装置およびその製造方法の改良に関する。
一般に、例えば、薄板ガラスなどのガラス物品を連続的に成形するガラス物品の製造装置の場合、ガラス溶解室でガラス原料を加熱して溶融ガラスに溶解した後、その溶融ガラスが、清澄工程や撹拌工程などの各種工程を経て成型装置(成形体)へと連続的に供給される。この際、ガラス溶解室で溶解された溶融ガラスは、溶融ガラス移送管の内部を流通させることで、成型装置まで移送される(例えば、特許文献1を参照)。
特開2007−145668号公報
ところで、溶融ガラス移送管は白金又は白金合金などの貴金属で形成されるため、非常に高価である。そのため、溶融ガラス移送管の厚みは、貴金属の使用量を減らすために、できるだけ薄く形成されるのが通例である。
しかしながら、溶融ガラス移送管の内部を流通する溶融ガラスは非常に高温であるため、経年と共に、溶融ガラス移送管を形成する貴金属が酸化して強度が低下するおそれがある。そのため、溶融ガラス移送管のうち横向き姿勢で配置された部分において、溶融ガラス移送管の上部が自重によって下方に撓むように変形するという問題が生じ得る。この場合、溶融ガラス移送管の内部に形成される溶融ガラスの流路が不当に狭くなり、溶融ガラスの流れが乱れる原因となる。その結果、溶融ガラス中に泡が発生するなどして、最終的なガラス物品の品質に悪影響を与えてしまう。
ここで、貴金属の使用量を増やして溶融ガラス移送管の強度を向上させることも考えられるが、上述のように白金などの貴金属は高価であり、設備コストの大幅な高騰を招くことになるため、実用的な対策とはなり得ない。
以上の実情に鑑み、本発明は、設備コストの高騰を招くことなく、溶融ガラス移送管を確実に補強することを課題とする。
上記課題を解決するために創案された本発明は、横向き姿勢で内部に溶融ガラスを流通させる貴金属製の溶融ガラス移送管を備えたガラス物品の製造装置において、非貴金属製
の補強部材が、前記溶融ガラス移送管の外周面の上部領域のみに前記溶融ガラス移送管の
周方向に沿って取り付けられていることを特徴とする。また、上記課題を解決するために創案された本発明は、横向き姿勢で貴金属製の溶融ガラス移送管の内部に溶融ガラスを流通させるガラス物品の製造方法であって、非貴金属製の補強部材が、前記溶融ガラス移送管の外周面の上部領域のみに前記溶融ガラス移送管の周方向に沿って取り付けられていることを特徴とする。
このような構成によれば、貴金属製の溶融ガラス移送管の外周面の上部領域が、溶融ガラス移送管とは別体である非貴金属製の補強部材によって補強される。この補強部材は、溶融ガラス移送管の周方向に沿って取り付けられているため、溶融ガラス移送管の上部領域の形状を補強部材によって維持することができる。そして、非貴金属製の補強部材によって、貴金属製の溶融ガラス移送管が補強されることから、貴金属の使用量を最小限に抑えることができる。また、非貴金属製の補強部材は溶融ガラス移送管の上部領域のみに設けられているため、溶融ガラス移送管の全周に亘って設けた場合に比べて、補強部材を形成する非貴金属材料の使用量も抑えることができる。したがって、溶融ガラス移送管を補強しつつ、設備コストの低廉化を確実に図ることができる。
上記の構成において、前記補強部材が、前記溶融ガラス移送管の外周面の半周以下の領域に取り付けられていることが好ましい。
このようにすれば、補強部材を溶融ガラス移送管の軸方向から挿入しなくても、溶融ガラス移送管の側方(例えば、管軸方向と直交する方向)から溶融ガラス移送管の外周面に取り付けることができる。そのため、補強部材の取付作業が容易になる。
上記の構成において、前記溶融ガラス移送管の周方向における前記補強部材の両端部が、前記溶融ガラス移送管の周囲に配設された耐火物によって下方から支持されていることが好ましい。
このようにすれば、補強部材が耐火物間に架け渡された状態でアーチ状の姿勢を維持する。そのため、溶融ガラス移送管の上部領域は補強部材に吊り下げられた状態で支持されることになる。したがって、溶融ガラス移送管の上部領域の自重による変形をより確実に防止することができる。
上記の構成において、前記溶融ガラス移送管の外周面に周方向に沿って複数の係合部が一体的に設けられおり、前記係合部が、前記補強部材の外周面と係合する上部係合片を備えていることが好ましい。
このようにすれば、係合部の上部係合片によって、補強部材が溶融ガラス移送管の外周面から径方向外方に抜けるのを防止することができる。
上記の構成において、前記係合部が、前記溶融ガラス移送管の管軸方向における前記補強部材の両側面のそれぞれに係合する一対の側部係合片を備えていることが好ましい。
このようにすれば、係合部の一対の側部係合片によって、補強部材が溶融ガラス移送管の管軸方向に抜けるのを防止することができる。
上記の構成において、前記一対の側部係合片のうち、一方の前記側係合片が、前記溶融ガラス移送管の外周面に連続しており、他方の前記側係合片が、前記上部係合片に対して折り曲げ可能に設けられていることが好ましい。
このようにすれば、一方の側係合片と上部係合片によって補強部材を位置決めした後、他方の側係合片を補強部材の側面に係合するように折り曲げれば、補強部材を溶融ガラス移送管の外周面に簡単に固定することができる。
上記の構成において、前記補強部材は電鋳煉瓦で形成されていることが好ましい。
このようにすれば、設備コストの高騰を抑えつつ、補強部材の耐熱性や強度を容易に高めることができる。
以上のように本発明によれば、貴金属製の溶融ガラス移送管が、非貴金属製の補強部材によって補強されるため、設備コストの高騰を招くことなく、溶融ガラス移送管を確実に補強することができる。
本発明の一実施形態に係るガラス物品の製造装置の構成を示す図である。 図1の溶融ガラス移送管を示す斜視図である。 図1の溶融ガラス移送管の管軸方向と直交する断面図である。 図3に示すZ領域の拡大図である。 図1の係合部を示す管軸方向の断面図である。 溶融ガラス移送管の外周面に補強部材を取り付ける方法を説明するための図であって、(a)は取り付け作業の序盤の状態、(b)は取り付け作業の中盤の状態、(c)は取り付け作業の終盤の状態をそれぞれ示す。 係合部の変形例を示す管軸方向の断面図である。 溶融ガラス移送管の変形例を示す管軸方向と直交する断面図である。
以下、本発明の一実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るガラス物品の製造装置1は、溶融ガラスGからガラス物品としての板ガラスを製造するものである。この製造装置1は、上流端に配置された溶解室2の下流側に、清澄室3を介して撹拌槽4が通じており、この撹拌槽4に、その下流側で溶融ガラスGの粘度調整を主として行う容積部であるポット5が通じている。更に、ポット5の下部には、下方に移行するに連れて径が漸次縮小する流路面積絞り部6が形成され、この流路面積絞り部6の下流端に小径管7が接続されると共に、この小径管7の下流側には、途中に曲成部8を有する大径管9が通じている。そして、この大径管9の下流端部10から成形体11に溶融ガラスGが供給され、この成形体11にて溶融ガラスGが板状の形態とされる。
成形体11は、この実施形態では、断面が略くさび形をなし、オーバーフローダウンドロー法を実行するものであって、次のようにして溶融ガラスGを板状形態に成形する構成とされている。まず、成形体11の上部に形成されたオーバーフロー溝(図示省略)に溶融ガラスGを連続供給し、この溶融ガラスGをオーバーフロー溝から溢れさせて成形体11の両側の側壁面に沿って流下させる。そして、その流下させた溶融ガラスGをそれぞれ成形体11の下頂部で融合させて一枚の板状形態にする。その後、この形態の板状ガラス成形物が固化した段階で、これを引張りローラで挟持しつつ下方に引き抜くことにより、最終的に製品となるべき板ガラスが得られる。なお、このように製造された板ガラスは、例えば厚みが0.1〜1.0mmであって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。
そして、溶解室2と清澄室3の間、清澄室3と撹拌槽4の間、及び撹拌槽4とポット5の間が、横向き姿勢で配置された溶融ガラス移送管12,13,14によって連結されている。なお、横向き姿勢とは、例えば水平面に対して±50°の範囲内で傾斜した姿勢を含む。
これら溶融ガラス移送管12,13,14は、実質的に同一の構成を備えているので、以下では、溶解室2と清澄室3との間を接続する溶融ガラス移送管13を例にとって具体的な構成を説明する。
図2に示すように、溶融ガラス移送管13は白金又は白金合金からなる円筒管である。溶融ガラス移送管13の外周面13aの上部領域のみに、溶融ガラス移送管13とは別体で形成された半円状の補強部材15が管軸方向Xに間隔を置いて複数取り付けられている。各補強部材15は、溶融ガラス移送管13の外周面13aの上部領域において、溶融ガラス移送管13の周方向Yに連続している。
各補強部材15は、電鋳煉瓦で形成されている。電鋳煉瓦としては、融点が高く強度が強いZrO系電鋳煉瓦を用いることが好ましい。
各補強部材15は、溶融ガラス移送管13の外周面13aに一体的に設けられた係合部16によって、溶融ガラス移送管13の外周面13aに取り付けられている。係合部16は、各補強部材15の周方向に間隔を置いて複数設けられている。
図3に示すように、溶融ガラス移送管13の周囲には、焼成煉瓦又は電鋳煉瓦などからなる耐火物17,18が配設されている。詳細には、溶融ガラス移送管13の上部領域を包囲する耐火物17および溶融ガラス移送管13の下部領域を包囲する耐火物18には、それぞれ円筒面状の凹部17a,18aが形成されており、この凹部17a,18aの間の空間に溶融ガラス移送管13が収容される。
各補強部材15の周方向両端面15aは、図4に示すように、略水平面(例えば、水平面に対する傾斜角が±30°の範囲内)をなし、溶融ガラス移送管13の下半分を包囲する耐火物18と重なる載置領域Lを有する。そのため、各補強部材15の周方向両端面15aは、耐火物18の載置領域Lに対応する部分により下方から支持されている。すなわち、各補強部材15は、耐火物18間に架け渡され、アーチ状の姿勢で保持される。したがって、溶融ガラス移送管13の上部領域は、アーチ状の姿勢を保った補強部材15に吊り下げられた状態で支持される。
このようにすれば、溶融ガラス移送管13の上部領域が、自重によって下方に撓むように変形するのを確実に防止することができる。また、補強部材15は、非貴金属である電鋳煉瓦で形成されているため、貴金属で溶融ガラス移送管13を補強する場合に比べて、非常に安価である。さらに、補強部材15は溶融ガラス移送管13の上部領域のみに設けられているため、補強部材を溶融ガラス移送管13の全周に設ける場合に比べて、非貴金属である電鋳煉瓦の無駄を減らすこともできる。したがって、設備コストの低廉化を実現しつつ、溶融ガラス移送管13を補強し、経年による溶融ガラス移送管13の変形を抑制することができる。
ここで、この実施形態では、補強部材15によって補強される溶融ガラス移送管13の上部領域は、中心角αが180°の半円弧状の領域とされる。
図5に示すように、係合部16は、補強部材15の管軸方向に対向する両側面15b,15cのそれぞれに係合する一対の側部係合片16a,16bと、補強部材15の外周面15dと係合する上部係合片16cとを備えている。なお、係合部16は、溶融ガラス移送管13と同種の貴金属から形成される。
詳細には、第1の側部係合片16aが溶融ガラス移送管13の外周面13aに溶接などによって一体化されている。第2の側部係合片16bは、上部係合片16cに対して折り曲げ可能とされるとともに、上部係合片16cを介して一方の側部係合片16aに連続している。
補強部材15を溶融ガラス移送管13の外周面13aに取り付ける際には、まず、図6(a)に示すように、第2の側部係合片16bを折り曲げずに伸ばした状態で、補強部材15を溶融ガラス移送管13の外周面13aに矢印A方向から嵌め込む。次に、図6(b)に示すように、矢印B方向に補強部材15を移動させて、補強部材15の側面15bを第1の側部係合片16aに当接させる。その後、図6(c)に示すように、第2の側部係合片16bを矢印C方向に折り曲げて、補強部材15の側面15cに当接させる。これにより、係合部16に対応する補強部材15の周方向の一部領域が、係合部16によって包み込まれる。その結果、溶融ガラス移送管13の管軸方向の移動が第1の側部係合片16a及び第2の側部係合片16bによって規制されるとともに、溶融ガラス移送管13の径方向の移動が上部係合片16cによって規制され、溶融ガラス移送管13が係合部16によって溶融ガラス移送管13の外周面13aに確実に取り付けられる。なお、補強部材15と係合部16が互いに密着している場合を図示しているが、両者15,16の間に隙間が設けられていてもよい。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。
上記の実施形態では、係合部16が、第1の側部係合片16a、第2の側部係合片16b及び上部係合片16cで構成される場合を説明したが、図7に示すように、第2の側部係合片16bを省略し、係合部16を第1の側部係合片16aと上部係合片16cのみで構成してもよい。
上記の実施形態では、補強部材15を溶融ガラス移送管13の外周面の上半分に設ける場合を説明したが、図8に示すように、補強部材15によって補強される溶融ガラス移送管13の上部領域は、中心角αが180°未満の円弧状の領域としてもよい。また、この場合でも、補強部材15の周方向両端面15aは略水平面であることが好ましい。なお、補強部材15によって補強される溶融ガラス移送管13の上部領域の中心角αは、120〜180°の範囲であればよく、160〜180°の範囲であることが好ましい。
上記の実施形態では、補強部材15の周方向両端面15aが耐火物18によって下方から支持される場合を説明したが、補強部材15の周方向両端面15aは耐火物18で下方から支持しなくてもよい。この場合であっても、補強部材15によって溶融ガラス移送管13の剛性が増すため、補強効果は得られる。
1 ガラス物品(板ガラス)の製造装置
2 溶解室
3 清澄室
4 撹拌槽
5 ポット
11 成形体
12,13,14 溶融ガラス移送管
15 補強部材
16 係合部
16a 第1の側部係合片
16b 第2の側部係合片
16c 上部係合片
17,18 耐火物
G 溶融ガラス

Claims (9)

  1. 横向き姿勢で内部に溶融ガラスを流通させる貴金属製の溶融ガラス移送管を備えたガラス物品の製造装置において、
    非貴金属製の補強部材が、前記溶融ガラス移送管の外周面の上部領域のみに前記溶融ガラス移送管の周方向に沿って取り付けられており、
    前記溶融ガラス移送管の外周面に周方向に沿って複数の係合部が一体的に設けられると共に、前記係合部が、前記補強部材の外周面と係合する上部係合片を備えていることを特徴とするガラス物品の製造装置。
  2. 前記補強部材が、前記溶融ガラス移送管の外周面の半周以下の領域に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
  3. 前記溶融ガラス移送管の周方向における前記補強部材の両端部が、前記溶融ガラス移送管の周囲に配設された耐火物によって下方から支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス物品の製造装置。
  4. 前記係合部が、前記溶融ガラス移送管の管軸方向における前記補強部材の両側面のそれぞれに係合する一対の側部係合片を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス物品の製造装置。
  5. 前記一対の側部係合片のうち、一方の前記側部係合片が、前記溶融ガラス移送管の外周面に連続しており、他方の前記側部係合片が、前記上部係合片に対して折り曲げ可能に設けられていることを特徴とする請求項に記載のガラス物品の製造装置。
  6. 前記補強部材が、電鋳煉瓦で形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス物品の製造装置。
  7. 横向き姿勢で内部に溶融ガラスを流通させる貴金属製の溶融ガラス移送管を備えたガラス物品の製造装置において、
    非貴金属製の補強部材が、前記溶融ガラス移送管の外周面の上部領域のみに前記溶融ガラス移送管の周方向に沿って取り付けられると共に、前記溶融ガラス移送管の周方向における前記補強部材の両端部が、前記溶融ガラス移送管の周囲に配設された耐火物によって下方から支持されていることを特徴とするガラス物品の製造装置。
  8. 横向き姿勢で貴金属製の溶融ガラス移送管の内部に溶融ガラスを流通させるガラス物品の製造方法であって、
    非貴金属製の補強部材が、前記溶融ガラス移送管の外周面の上部領域のみに前記溶融ガラス移送管の周方向に沿って取り付けられており、
    前記溶融ガラス移送管の外周面に周方向に沿って複数の係合部が一体的に設けられると共に、前記係合部が、前記補強部材の外周面と係合する上部係合片を備えていることを特徴とするガラス物品の製造方法。
  9. 横向き姿勢で貴金属製の溶融ガラス移送管の内部に溶融ガラスを流通させるガラス物品の製造方法であって、
    非貴金属製の補強部材が、前記溶融ガラス移送管の外周面の上部領域のみに前記溶融ガラス移送管の周方向に沿って取り付けられると共に、前記溶融ガラス移送管の周方向における前記補強部材の両端部が、前記溶融ガラス移送管の周囲に配設された耐火物によって下方から支持されていることを特徴とするガラス物品の製造方法。
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