本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2016年11月23日出願の米国仮特許出願第62/425,681号および2017年6月26日出願の米国仮特許出願第62/524,806号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
その例が添付の図面に示されている、ガラス成形装置のための成形本体の実施形態について、これより詳細に述べる。可能な場合はいつでも、同一または類似した部分についての言及には、図面全体を通して同じ参照番号が用いられる。ガラス成形装置の一実施形態が、図7に概略的に示されている。ガラス成形装置は、上部、並びに該上部から延びてルートで収束する第1の成形面および第2の成形面を有する成形本体を備えることができる。溶融ガラスを受け入れるためのトラフは、上部に含まれ、入口端、遠位圧縮端、第1の堰、該第1の堰とは反対側に間隔を置いて配置された第2の堰、および第1の堰と第2の堰との間に延びる基部によって画成される。成形本体は、上部パネルと一対の側面パネルとを有する筺体内に位置付けられる。上部パネルは、成形本体の長さに沿って、第1および第2の堰の上面の上方に位置付けられ、それらに対して実質的に平行にかつ横断して延在している。少なくとも1つの熱素子は、筺体の上方の支持プレートから懸架される。例えば、熱素子のアレイは、筺体の上方の支持プレートから懸架されており、該熱素子のアレイは、トラフ内の溶融ガラスを局所的に加熱または冷却し、それによって、溶融ガラスの温度および粘度をトラフの長さに沿って操作するように動作可能である。支持プレートは、均一なサイズ(すなわち、長さ)の熱素子を成形本体の長さに沿って使用することができるように、筺体の上部パネルの上方に位置付けられ、それに対して実質的に平行にかつ横断して延在している。少なくとも1つの熱素子を用いてトラフの長さに沿って溶融ガラスの温度および粘度を操作することにより、ガラスリボンの成形活動中の成形本体の物理的寸法変化を補償することができる。ガラス成形装置のさまざまな実施形態は、添付の図面を特に参照して、本明細書でさらに詳細に説明される。
本明細書で使用される方向用語(例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部)は、描かれた図を参照してのみ作られており、絶対的な方向を意味することは意図していない。
特に明記しない限り、本明細書に記載されるいずれの方法も、その工程が特定の順序で実行されることを必要とする、若しくは、装置には特定の向きが必要であると解釈されることは、決して意図していない。したがって、方法クレームが、その工程が従うべき順序を実際には記載していない場合、若しくは装置クレームが個々の構成要素に対する順序または向きを実際に記載していない場合、あるいは、工程が特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲または明細書に別段に明確に述べられていない場合、若しくは装置の構成要素に対する特定の順序または向きが記載されていない場合には、いかなる意味においても、順序または方向が推測されることは決して意図していない。これには、次のような解釈のためのあらゆる非明示的根拠が当てはまる:工程の配置、動作フロー、構成要素の順序、または構成要素の方向に関する論理的事項;文法上の編成または句読点から派生した平明な意味;および、本明細書に記載される実施形態の数またはタイプ。
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「ある1つの(a)」構成要素への言及は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
これより図1を参照すると、ガラスリボン12などのガラス物品を製造するためのガラス成形装置10が概略的に描かれている。ガラス成形装置10は、概して、貯蔵ビン18からバッチ材料16を受け入れるように構成された溶融容器15を含みうる。バッチ材料16は、モーター22によって駆動されるバッチ送達装置20によって溶融容器15へと導入することができる。任意選択的な制御装置24を設けてモーター22を作動させてもよく、また、溶融ガラスレベルプローブ28を使用してスタンドパイプ30内のガラス溶融レベルを測定し、測定された情報を制御装置24に通信することができる。
ガラス成形装置10はまた、第1の接続管36を介して溶融容器15に接続された清澄管などの清澄容器38も含みうる。混合容器42は、第2の接続管40を用いて清澄容器38に接続されている。送達容器46は、送達導管44で混合容器42に接続されている。下降管48は、ガラス溶融物を送達容器46から成形本体60の入口端50へと送給するように位置付けられている。本明細書に示され説明される実施形態では、成形本体60は、アイソパイプとも称されうる、溶融成形容器である。
溶融容器15は、典型的には、耐火性(例えば、セラミック)ブリックなどの耐火材料でできている。ガラス成形装置10は、典型的には、例えば、白金、または白金-ロジウム、白金-イリジウムなどの白金含有金属、およびそれらの組合せなど、導電性の耐火金属から作られる構成要素をさらに含むことができる。このような耐火金属はまた、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、ルテニウム、オスミウム、ジルコニウム、およびそれらの合金、および/または二酸化ジルコニウムを含みうる。導電性耐火金属を含有する構成要素としては、第1の接続管36、清澄容器38、第2の接続管40、スタンドパイプ30、混合容器42、送達導管44、送達容器46、下降管48、および入口端50のうちの1つ以上を挙げることができる。
これより図1~2Bを参照すると、成形本体60は、入口端52と、該入口端52とは反対側の遠位端58とを有するトラフ61を備えている。本明細書で用いられる場合、成形本体60の要素の「遠位」端とは、(該要素の上流または「入口」端に対して)要素の下流端を指すことを意図している。トラフ61は、成形本体60の上部65に位置しており、上面67aと外側垂直面110とを有する第1の堰67と、上面68aと外側垂直面112とを有する第2の堰68と、基部69とを備えている。上面67aおよび上面68aは、成形本体60の長さLに沿って延在し、単一平面内に存在しうる。実施形態では、上面67a、68aは水平面内にある、すなわち、上面67a、68aは、図に示すX-Y平面内にある。他の実施形態では、上面67a、68aは水平ではない平面内にある、すなわち、上面67a、68aは、図に示されるX-Y平面内にはない。トラフ61は、成形本体に沿った長さの関数としての深さが異なっていてもよい。成形本体60は、第1の成形面62と第2の成形面64とをさらに備えることができる。第1の成形面62および第2の成形面64は、成形本体60の上部65から鉛直下向きの方向(すなわち、図に示される座標軸の-Z方向)に延び、互いの方向へと収束し、ルート70とも称されうる成形本体60の下側(底部)端で結合する。したがって、第1の成形面62および第2の成形面64は、成形本体60の上部65から延びる逆二等辺三角形(または正三角形)を形成し、ルート70は、下流方向に三角形の最下部の頂点を形成することが理解されるべきである。延伸面72は、図に示されている座標軸の±Y方向にルート70を概ね二等分し、垂直下向き方向(-Z方向)に延びる。
図1~2Bをさらに参照すると、動作中、バッチ材料16、具体的にはガラスを形成するためのバッチ材料は、バッチ送達装置20を用いて貯蔵ビン18から溶融容器15内へと供給される。バッチ材料16は、溶融容器15内で溶融ガラスへと溶融される。溶融ガラスは、溶融容器15から第1の接続管36を通って清澄容器38内へと入る。ガラス欠陥を生じさせる可能性がある溶存ガスは、清澄容器38内で溶融ガラスから除去される。次に、溶融ガラスは、清澄容器38から第2の接続管40を通って混合容器42内へと入る。混合容器42は、例えば攪拌によって溶融ガラスを均質化し、均質化された溶融ガラスは、送達導管44を通って送達容器46へと移動する。送達容器46は、均質化された溶融ガラスを、下降管48を通じて成形本体60の入口端50へと排出し、これは次に、均質化された溶融ガラスをトラフ61の遠位端58の方に向かって成形本体60のトラフ61に通過させる。
均質化された溶融ガラスは成形本体60のトラフ61を満たし、最終的には溢れ出て、長さLの少なくとも一部に沿って、成形本体60の上部65の第1の堰67および第2の堰68を越えて流れ、次いで垂直下方(-Z方向)に流れる。均質化された溶融ガラスは、成形本体60の上部65から第1の成形面62および第2の成形面64上へと流れる。第1の成形面62および第2の成形面64上を流れる均質化された溶融ガラスの流れは、ルート70で合流して融合し、引張ロール(図示せず)によって延伸面72において下流方向に延伸されるガラスリボン12を形成する。厚さ測定装置25は、ガラスリボン12の幅(±X方向)に沿ってガラスリボン12の厚さを測定する。その幅に沿ったガラスリボン12の厚さ測定値は、制御装置27に送信することができ、該制御装置27は、本明細書でより詳細に説明されるように、第1の堰67および第2の堰68を越えて流れる溶融ガラスの局所化された加熱または冷却を調整することができる。ガラスリボン12は、該ガラスリボン12を個別のガラスシートへとセグメント化すること、ガラスリボン12をそれ自体の上に圧延すること、および/またはガラスリボン12に1つ以上のコーティングを施すことなどによって、成形本体60の下流でさらに処理することができる。
成形本体60は、典型的には、溶融ガラスと化学的に相容性があり、かつ溶融成形プロセスに関連する高温に耐えることができる、耐火セラミック材料から形成される。成形本体が形成される典型的な材料としては、限定はしないが、ジルコン(例えば、ジルコニア)、炭化ケイ素、ゼノタイム、および/またはアルミナベースの耐火セラミックが挙げられる。成形本体60のトラフ61に流れ込む溶融ガラスの塊は、第1および第2の堰67、68に外向きの圧力をかける。この圧力は、成形本体60を構成する耐火セラミック材料の高温クリープと併せて、数年間に及びうるガラス延伸運動の間に、第1および第2の堰67、68を徐々に外側に(すなわち、図2Bに示される座標軸の第1の堰67に対して-Y方向に、かつ第2の堰68に対して+Y方向に)湾曲させうる。成形本体60の長さLに沿って不均一でありうる、第1および第2の堰67、68の外側への湾曲並びに成形本体60のたるみは、例えば、湾曲が最も顕著な場合には第1および第2の堰67、68を越えるガラス流を減少させ、湾曲がそれほど顕著ではない場合には第1および第2の堰67、68を越えるガラス流を増加させることによって、トラフ61内のガラス分布を著しく変化させる可能性がある。変化したガラス分布は、結果として得られるガラスリボン12に望ましくない厚さおよび幅の変動を生じさせる可能性があり、ひいては、規格外のガラスリボンは廃棄されることから、プロセスの非効率性につながる可能性がある。第1および第2の堰67、68の湾曲または成形本体60のたるみが経時的に進行するにつれて、成形本体60の使用を中断して、ガラス成形装置を再構築しなければならなくなる。
第1および第2の堰67、68の外側への湾曲に加えて、成形本体60は、材料のクリープに起因して、その長さLに沿って下流方向(-Z方向)にたるむ傾向がありうる。このたるみは、成形本体60の長さLの支持されていない中間点において最も顕著になりうる。成形本体60のたるみは、成形面62、64上を流れる均質化された溶融ガラスを再分配させ、成形面62、64上に溶融ガラスの不均一な流れを生じさせ、その結果、結果的に得られるガラスリボン12の寸法属性に変化を生じさせる。例えば、ガラスリボン12の厚さは、たるみのせいで、ガラスリボンの中心付近で増加する可能性がある。加えて、たるみのせいで長さLに沿って成形面62、64の中心に向かって溶融ガラス流が再分配されると、成形本体60の端部付近のガラス流が減少し、その結果、図に示されている座標軸の±X方向に沿って、ガラスリボン12の寸法は不均一になる。
本明細書に記載されるガラス成形装置10の実施形態は、第1および第2の堰67、68における外向きの湾曲および成形本体60のたるみを補償し、それによって成形本体60の寿命を延長し、該装置から形成されるガラスリボン12の寸法特性を安定させる。
これより図3A~3Dを参照すると、本明細書に記載されるガラス成形装置の実施形態は、成形本体60上に位置付けられた少なくとも1つの熱素子を含む。熱素子は、成形本体のトラフの長さに沿って溶融ガラスの温度を調節し、それによって溶融ガラスの粘度、ひいては成形本体の堰を越える溶融ガラスの流れを制御するために用いられる。例えば、一実施形態では、熱素子のアレイ200は、図3Aに示されるように、成形本体60の長さLの少なくとも一部または全長に沿って延びる。熱素子のアレイ200は、支持体90から懸架され、該支持体90から成形本体60のトラフ61の上方の位置まで延びる、複数の熱素子210を含むことができる。熱素子のアレイ200はまた、図3Cに示されるように、成形本体60の幅Wに沿って延在することができる。実施形態では、成形本体60は、上部パネル82と、該上部パネル82から下流方向(-Z方向)に第1の堰67に隣接し且つ実質的に平行に延びる第1の側面パネル84、並びに、上部パネル82から下流方向に第2の堰68に隣接し且つ実質的に平行に延びる第2の側面パネル86とを含む筺体80内に位置付けることができる。このような実施形態では、複数の熱素子210を筺体80の上に位置付けることができる。筺体80は、熱素子210のふくれまたはスケーリングに由来する破片など、熱素子のアレイに由来する破片がトラフ61内の溶融ガラスに落下すること、および/または、外側垂直面110、112を流下する溶融ガラスに付着することを防ぐということが理解される。したがって、筺体80は、溶融ガラスの汚染の低減に役立ち、上部パネル82は、熱素子210と溶融ガラスとの間に熱拡散をもたらし、それによって溶融ガラス内の離散的な温度差および粘度差が回避される。筺体80を形成するのに適した材料は、高い熱伝導率、高い放射率、および高い耐熱性を有する材料であり、限定するものではないが、例としてSiCおよびSiNが挙げられる。
幾つかの実施形態では、複数の熱素子210は、図3A~3Bに示されるような加熱素子212であるが、他の実施形態では、熱素子のアレイ210は、図5に示されるような冷却素子216である。さらに他の実施形態では、複数の熱素子210は、加熱素子212と冷却素子216との組合せを含む。加熱素子は、図3Bに示されるように、底部214を含みうる。実施形態では、底部214は、加熱素子212の弓形の底部から延びる加熱素子212の一対の実質的に平行な線形セクションを伴ったU字形を有しうる。図3Bに示されるような加熱素子212を通って流れる電流iは、加熱素子212の抵抗加熱をもたらす。冷却素子216(図5)は、冷却流体がそこを通って流れる、内側のU字管217を有しうる。冷却流体は、窒素または空気などの気体、水などの液体冷却剤などを含みうるが、これらに限定されない。内側のU字管217は、閉じた底面219を有する外側の管218内に位置付けることができる。内側のU字管217を通って流れる冷却流体は、冷却素子216の対流冷却を生じさせる。成形本体60の長さLに沿って位置付けられた加熱素子212の抵抗加熱または冷却素子216の対流冷却は、成形本体60の長さLに沿って、トラフ61内の溶融ガラスに対し、それぞれ、熱を提供するか、または熱を除去する。加熱素子212の抵抗加熱または冷却素子216の対流冷却はまた、それぞれ、成形本体60の長さLに沿って、上部65の第1の堰67および第2の堰68を越えて流れる溶融ガラスに対し、熱を提供するか、または熱を除去する。
図3A~3Dに示される実施形態では、加熱素子212の底部214は、筺体80の上部パネル82、トラフ61、および該トラフ61内の溶融ガラスの上(+Z方向)に位置付けられる。実施形態では、複数の加熱素子212は、加熱素子212の底部214のみを示す図3Dに示されるように、成形本体60の長さLに沿って延びる1列以上で配置することができる。加熱素子212の各列は、成形本体60の幅(すなわち、±Y方向)に亘って溶融ガラスに均一な加熱を提供するために、上部パネル82の中心軸5に関して対称にすることができる。実施形態では、加熱素子212の隣接する列は、成形本体60の長さLに沿って互いにオフセットされているか、または互い違いになっている。すなわち、1つの列の加熱素子212内の個々の加熱素子212は、加熱素子212の隣接する列内の個々の加熱素子212に対して、長さ方向(+X方向)にオフセットされている。他の実施形態では、加熱素子212の隣接する列は、成形本体60の長さLに沿って、互いにオフセットされていない、または互い違いになっていない。すなわち、1列の加熱素子212内の個々の加熱素子212は、加熱素子212の隣接する列内の個々の加熱素子212に対して、長さ方向(+X方向)にオフセットされていない。
本明細書に記載される実施形態では、複数の熱素子210(加熱素子212および/または冷却素子216)の各々を独立して制御し、それによって、成形本体60の長さLおよび幅Wに沿って、トラフ61内の溶融ガラスを局所的に加熱または冷却することができる。当然のことながら、複数の熱素子210を独立して制御することにより、トラフ61内の溶融ガラスの温度および粘度を局所的に制御して、第1および第2の堰67、68を越えて流れる溶融ガラスの温度および粘度を局所的に制御することを可能にし、それにより、成形本体60の第1および第2の堰67、68を越える溶融ガラスの質量流量を局所的に制御することを可能にする。
これより図3A~3Dおよび4を参照すると、実施形態では、熱素子のアレイは、筺体80の側面に沿って垂直方向(±Z方向)に延びる熱素子をさらに含みうる。特に、概ね垂直方向(±Z方向)を有する側面熱素子213は、図4に示されるように、第1の側面パネル84、第2の側面パネル86、または第1の側面パネル84と第2の側面パネル86の両方に沿って延在しうる。実施形態では、筺体80は、側面熱素子213と成形本体60との間に位置付けられる。筺体80は、側面熱素子213に由来するふくれまたはスケーリングに由来する破片など、側面熱素子213由来の破片が、外側垂直面110、112を流下(-Z方向)する溶融ガラスを汚染するのを防ぐのに役立つことが理解される。また、側面パネル84、86は、側面熱素子213と溶融ガラスとの間に熱拡散をもたらし、それによって溶融ガラス内の離散的な温度差および粘度差が回避される。1つ以上の側面熱素子213は、第1の側面パネル84および第1の堰67に隣接して実質的に平行に位置付けることができ、および/または、1つ以上の側面熱素子213は、第2の側面パネル86および第2の堰68に隣接して実質的に平行に位置付けることができる。第1の側面パネル84、第2の側面パネル86、または第1の側面パネル84および第2の側面パネル86の両方に隣接して実質的に平行に位置付けられた1つ以上の側面熱素子213は、独立して制御することができ、それによって、それぞれ、第1の堰67、第2の堰68、または第1の堰67および第2の堰68の両方を越えて流下する溶融ガラスの局所加熱を可能にする。したがって、1つ以上の側面熱素子を使用して、第1の堰67および第2の堰68を越えて流れる溶融ガラスの温度および粘度、ひいては成形本体60の長さLに沿った溶融ガラスの質量流量を調節することができることが理解されるべきである。上述した複数の熱素子210と同様に、実施形態において、側面熱素子213は、例えば図3Bに示される加熱素子212などの加熱素子であるが、他の実施形態では、側面熱素子213は、例えば図5に示される冷却素子216などの冷却素子である。さらに他の実施形態では、側面熱素子213は、加熱素子212と冷却素子216の組合せを含む。成形本体60の長さLに沿った側面熱素子213の抵抗加熱または対流冷却は、第1および第2の堰67、68を越えて流れる溶融ガラスおよび/または外側垂直面110、11を流下する溶融ガラスに対し、それぞれ熱を供給するか、または熱を除去する。当然のことながら、図4は、第1の側面パネル84および第2の側面パネル86に沿って延びる側面熱素子213のみを示しているが、熱素子210は、上部パネル82の上など、図3Aに示されるような筺体80の上に位置付けることもできる。
実施形態では、複数の熱素子210および側面熱素子213は交換可能である。例えば、熱素子210または側面熱素子213がガラスリボン運動中に故障した場合、故障した熱素子210または故障した側面熱素子213を取り外して、適切に機能する加熱素子212と交換することができ、または適切に機能する冷却素子216と交換することができる。当然のことながら、複数の熱素子210および側面熱素子213は、トラフ61内の溶融ガラスの温度および粘度の制御の向上、並びに第1および第2の堰67、68を越える溶融ガラスの質量流量の操作の向上をもたらす。溶融ガラスの温度をこのように制御することにより、例えば、ガラスリボン成形運動中の成形本体60のたるみ、または第1および第2の堰67、68の拡張などによる成形本体の物理的寸法の変化を補償することができる。
これより図6を参照すると、熱素子のアレイ(例えば、加熱および/または冷却素子)および熱遮蔽体のアレイを有する成形本体60の実施形態が概略的に示されている。特に、この実施形態では、熱素子のアレイ200は、隣接する熱素子210間に位置付けられた熱遮蔽体240を備えている。熱遮蔽体240は、放射熱制御と、隣接する熱素子210によって提供される加熱および/または冷却の局所化の向上とをもたらす。実施形態では、熱遮蔽体240は、側面熱素子213が含まれる場合には、側面熱素子213間に位置付けることもできる(図6には示されていない)。熱遮蔽体240は、成形本体60の長さL(±X方向)に沿って隣接する熱素子210間、成形本体60の幅W(±Y方向)に沿って隣接する熱素子210間、または成形本体60の長さLおよび幅Wの両方に沿って隣接する熱素子210間に位置付けることができる。当然のことながら、熱遮蔽体240は、トラフ61内の溶融ガラスの温度および粘度の制御の向上、並びに第1および第2の堰67、68を越える溶融ガラスの質量流量の操作の向上をもたらしうる。溶融ガラスの温度をこのように制御することにより、例えば、ガラスリボン成形運動中の成形本体60のたるみ、または堰の拡張などの成形本体の物理的寸法の変化を補償することができる。
これより図7~9を参照すると、熱素子(例えば、加熱および/または冷却素子)のアレイ、熱遮蔽体のアレイ、および成形本体60の堰に対して実質的に平行に延在する支持体を有する成形本体60の実施形態が概略的に示されている。特に、この実施形態では、熱素子のアレイ200を懸架する支持体は、トラフ61のそれぞれ第1および第2の堰67、68の上面67a、68aの上方(+Z方向)に位置付けられ、それらと実質的に平行にかつそれを横断して延在する、支持プレート92の形態でありうる。上面67aおよび上面68aは、成形本体60の長さLに沿って延在し、一平面内に存在しうる。実施形態では、上面67a、68aは、一水平面(すなわち、図7および9に示すX-Y平面)内にある。他の実施形態では、上面67a、68aは一水平面内にない。したがって、支持プレート92が、成形本体60の長さLに沿って、それぞれ堰67、68の上面67a、68aに対して実質的に平行に延在している限り、支持プレート92は、図7および9に示すX-Y平面に対して実質的に平行に延在することができ、あるいは代替的に、支持プレート92は、図7および9に示すX-Y平面に対して実質的に平行に延在しない場合もある。
実施形態では、上部パネル82は、上面67a、68aを横切ってそれらと実質的に平行に延在する、すなわち、上部パネルは、上面67a、68aが存在する平面に対して実質的に平行な平面内にあり、支持プレート92は、成形本体60の長さLに沿って上部パネル82から等距離にある。したがって、それぞれ、第1および第2の堰67、68の支持プレート92、上部パネル82、および上面67a、68aは、成形本体60の長さLに沿って互いに対して実質的に平行である。
第1の堰67および第2の堰68は、図7に示すように、トラフ61の入口端52から、水平(X軸)に対して傾斜して延在することができることが理解されるべきである。本明細書で用いられる場合、用語「傾斜」とは、ゼロに等しくない角度を指す。例えば、限定はしないが、第1の堰67および第2の堰68は、水平に対して2度以上の角度でトラフ61の入口端52から延在することができる。実施形態では、第1の堰67および第2の堰68は、図7および9に示されるように、水平に対して負の傾斜(例えば、-2度以下)でトラフ61の入口端52から延在することができる。
特に図7を参照すると、上部パネル82の上方に位置付けられ、かつ、それらに対して実質的に平行に横断して延在する支持プレート92とともに成形本体60の長さLに沿って位置付けられた複数の熱素子210は、均一なサイズ、すなわち、長さ(Z方向)に均一であってよく、底部214は、成形本体60の長さLに沿って上部パネル82から等距離の距離h1に位置付けられている。実施形態では、熱遮蔽体240は、隣接する熱素子210間に位置付けられうる。具体的には、熱遮蔽体240は、成形本体60の長さLに沿った隣接する熱素子210間、成形本体60の幅Wに沿った隣接する熱素子210間、または成形本体60の長さLおよび幅Wの両方に沿った隣接する熱素子210の間に位置付けることができる。熱遮蔽体240は、放射熱制御と、隣接する熱素子210によって提供される加熱および/または冷却の局所化の向上とをもたらす。実施形態では、熱遮蔽体240は、側面熱素子213が含まれる場合には、側面熱素子213間に位置付けることもできる(図4)。均一サイズのものである図7に示される複数の熱素子210と同様に、熱遮蔽体240は、均一サイズ(すなわち、均一な長さ)のものであってよく、成形本体60の長さLに沿って上部パネル82から等距離に離間していてもよい。図7に示される複数の熱素子210および熱遮蔽体240の均一サイズは、図3Aおよび6に示される複数の熱素子210および熱遮蔽体240とは対照的であり、支持体90が筺体80の上部パネル82の上方に、それに対して非平行に延在する。
特に図7および8を参照すると、支持プレート92は、成形本体60の入口端50の上面51と実質的に平行にかつそれを横切って延びる第1の部分94と、第1の部分94に対して非線形である第2の部分96とを有することができる、すなわち、第1の部分94は第1の平面、例えば図7に示されるX-Y平面内にあり、第2の部分96は第1の平面とは非平行な第2の平面内にある。第2の平面内にある第2の部分96は、それぞれ、堰67、68の上面67a、68aを横切って、それらに対して実質的に平行に延在しうる。同様に、筺体80の上部パネル82は、図7に示されるX-Y平面内にある第1のセクション83aと、図7に示されるX-Y平面内になく、それに対して非平行な第2のセクション83bとを有しうる。上部パネル82の第1のセクション83aは、成形本体60の入口端50の上面51に対して実質的に平行に延在していてもよく、第2のセクション83bは、成形本体60の長さLに沿って、それぞれ、堰67、68の上面67a、68aに対して実質的に平行に延在することができる。したがって、実施形態では、支持プレート92の第1の部分94、上部パネル82の第1のセクション83a、および成形本体60の入口端50の上面51は、成形本体の長さLに沿って互いに実質的に平行に延在することができ、支持プレート92の第2の部分96、上部パネル82の第2のセクション83b、および堰67、68の上面67a、68aは、それぞれ、成形本体60の長さLに沿って互いに実質的に平行に延在することができる。
実施形態では、支持プレート92は、単一の材料片(例えば単一のプレート片)から形成され、一方、他の実施形態では、支持プレート92は、少なくとも2つの材料片から形成される。例えば、第1の部分94は第1のプレート片から形成することができ、第2の部分96は第2のプレート片から形成することができる。支持プレート92が第1のプレート片および第2のプレート片から形成される実施形態では、第1の部分94は、締結具、溶接などを用いて第2の部分96に結合することができる。代替的に、第1の部分94および第2の部分96は、一緒に結合されていなくてもよく、それぞれ、成形本体60の入口端50および筺体80の上部パネル82の上に、それらに対して実質的に平行に、個別に位置付けられていてもよい。支持プレート92は、図8に示されるように複数の開口部98を備えていてもよい。複数の開口部98は、支持プレート92の長さ(X方向)に沿って互い違いにすることができる。複数の開口部98の各々は、フック、カラーなど(図示せず)を使用して、加熱素子212または冷却素子216が支持プレート92を通って延び、かつ、支持プレート92から懸架されることを可能にする。
特に図8および9を参照すると、幾つかの実施形態では、開口部98のうちの1つ以上は、その中に位置付けられた冷却素子216を有することができる。代替的に、開口部98のうちの1つ以上は、加熱素子212または冷却素子216がその中に位置付けられていない可能性がある、すなわち、開口部98のうちの1つ以上は、空であり、かつ、蓋99で覆われていてもよい。蓋99は、その中に加熱素子212または冷却素子216が位置付けられてない開口部98を通じた熱損失を防止または低減することができる。図9に示されるように、成形本体60の長さLおよび/または幅Wの両方に沿って位置付けられた熱遮蔽体240は、複数の中空カラム215を形成する。図面を明確にするために、1つの中空カラム215のみが図9に表示されている。しかしながら、加熱素子212および冷却素子216の各々は、成形本体60の長さLおよび幅Wに沿って、支持92プレートから懸架された複数の熱遮蔽体240によって形成された中空カラム215内に位置付けられることが理解されるべきである。
筺体80の上部パネル82に対して実質的に平行にかつ横断して延在する支持プレート92を伴った、成形本体60の長さLに沿って延びる中空カラム215は、均一な断面サイズおよび容積のものである。すなわち、図6に示されるように、成形本体60の長さLに沿った距離の増加に伴う支持体90と上部パネル82との間の中空カラムの容積変化が排除される。中空カラム215の均一な断面サイズおよび容積は、トラフ61内の溶融ガラスを加熱および冷却する際の均一性および一貫性の向上をもたらす。
図7に示される上部パネルと支持プレートの構成は、上部パネル82に対して実質的に平行にかつ横断して延在し、それによって、それぞれ、第1および第2の堰67、68の上面67a、68aに対して実質的に平行にかつ横断して延在する支持プレート92に起因して、成形本体60のトラフ61内の溶融ガラスを加熱および冷却するためのよりコンパクトなシステムを提供する。これは、ひいては、図6の支持体90によって示されるようにトラフ61の長さLに沿って水平方向(X軸)に延在する支持プレート92を有するシステムと比較した場合に、システムの重量が低下し、かつ、熱素子210の熱設定の変化に対する応答時間も減少する。よりコンパクトなシステムはまた、トラフ61の上方の加熱および冷却のための容積が少なく、ガラスリボン成形作業中に加熱素子212を交換する場合に、成形本体60における熱損失および熱応力を少なくすることができる。図7に示される支持プレート92はまた、トラフ61の長さに沿った均一または一定の「熱素子の溶融ガラスに対する」距離をもたらすと同時に、成形本体60の長さLに沿った均一サイズの加熱素子212および/または冷却素子216の使用を可能にする。したがって、加熱素子212および/または冷却素子216は標準的な寸法を有することができ、それによって成形本体60の長さLに沿って用いられる異なるサイズを有する複数の加熱素子および/または冷却素子と比較して、コストを削減することができる。熱素子210の均一なサイズ、並びに中空カラム215の均一な断面サイズおよび容積により、熱素子210の熱制御が向上し、トラフ61内の溶融ガラスのより一貫した温度制御をもたらすことができる。
図7および9は、支持プレート92から懸架された複数の熱素子210および複数の熱遮蔽体240を示しているが、当然のことながら、支持プレート92は複数の熱遮蔽体240を伴わずに使用することもできる。すなわち、隣接する熱素子210間に熱遮蔽体240を位置付けることなく、筺体80の上部パネル82に対して実質的に平行にかつ横断して延在する支持プレート92から複数の熱素子210を懸架することができる。ガラスリボン形成作業中にトラフ61から発生する熱から支持プレート92を保護または遮蔽するために、支持プレート92の下面(-Z方向)に断熱材(図示せず)を取り付けることができることもまた理解されるべきである。
本明細書に記載される実施形態では、支持体90および支持プレート92は、典型的には、金属材料から形成される。支持体90および支持プレート92を形成することができる適切な材料には、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケルをベースとした合金等が含まれうる。しかしながら、支持体90および支持プレート92は、成形本体60の上方で熱素子および熱遮蔽体を支持するのに適した他の材料から作られてもよいことが理解されるべきである。
本明細書に記載される実施形態では、加熱素子212は、典型的には、電気抵抗加熱素子材料から形成される。加熱素子212を形成することができる典型的な材料としては、クロム酸ランタン(LaCrO3)、二ケイ化モリブデン(MoSi2)等が挙げられうるが、これらに限定されない。しかしながら、加熱素子212は、電気抵抗加熱に適した他の材料から作ることもできる。
本明細書に記載される実施形態では、冷却素子216、すなわち、内側のU字管217および外側の管218は、典型的には、限定することなく、310ステンレス鋼、Inconel(登録商標)600等を例示的に含む、ガラスリボンの製造中に遭遇する高温に耐えることができる材料から作られる。しかしながら、冷却素子216は、高温に耐えるのに適した他の材料から作ることができることが理解されるべきである。
本明細書に記載される実施形態では、熱遮蔽体240は、典型的には、耐火セラミック材料から形成される。熱遮蔽体240を形成することができる適切な材料には、低熱伝導率および高耐熱性を有する材料が含まれ、限定するものではないが、SALIボードを例示的に含む。しかしながら、熱遮蔽体240は、高温断熱材としての使用に適した他の材料から作られてもよい。
これより図1および3A~3Dを参照すると、熱素子210(加熱素子212および冷却素子216)は、成形本体60の第1および第2の堰67、68を越えて流れる溶融ガラスの温度および粘度を局所的に制御または調節するために使用することができ、したがって、第1および第2の堰67、68を越えて流れる溶融ガラスの質量流量を制御または調節することができる。特に、厚さの変化がガラスリボン12の幅に沿って厚さ測定装置25によって検出される場合(図1)、制御装置27は、厚さの変化の位置に近接して位置する熱素子210への電流を調整して、熱要素に近接したガラスの温度および粘度を変化させ、ひいては第1および第2の堰67、68を越える溶融ガラスの質量流量を調整し、それによって、寸法変動を緩和し、堰の広がりの影響を相殺する。例えば、第1および第2の堰67、68の外側への湾曲、すなわち、第1の堰67の+X方向への湾曲および第2の堰の-X方向への湾曲は、堰が外側に湾曲している場合には、溶融ガラスの質量流量の低下をもたらし、したがってこの領域でのガラスリボン12の厚さが変化する。熱素子210を使用して外側に湾曲している領域の温度を局所的に上昇させ、溶融ガラスの粘度を下げることによって、外側に湾曲している領域の第1および第2の堰67、68を越える溶融ガラスの質量流量の増加が生じ、それによって、第1および第2の堰67、68の外側への湾曲の影響を相殺する。
前述の例は制御された局所的な加熱を参照しているが、制御された局所的な冷却(または加熱と冷却の組合せ)もまた、第1および第2の堰67、68の外側への湾曲の影響を打ち消すために使用することができることが理解されるべきである。例えば、厚さの変化がガラスリボン12の幅に沿って厚さ測定装置25によって検出される場合(図1)、制御装置27は、厚さの変化の位置に近接した位置にある熱素子210への冷却流体の流れを調整して、熱要素に近接したガラスの温度および粘度を変化させ、ひいては第1および第2の堰67、68を越える溶融ガラスの質量流量を調整し、それによって寸法変動を緩和し、堰の広がりの影響を相殺する。具体的には、第1および第2の堰67、68の外側への湾曲、すなわち、第1の堰67の+X方向への湾曲および第2の堰の-X方向への湾曲は、堰が外側に曲がっている位置から離れると溶融ガラスの質量流量が増加し、それによってこの領域のガラスリボン12の厚さの変化を生じる。熱素子210を使用して湾曲から離れた領域で溶融ガラスの温度を局所的に下げ、粘度を増加させることによって、第1および第2の堰67、68を越える溶融ガラスの質量流量が、外側への湾曲をもたらす領域から離れた領域で低下し、それによって、第1および第2の堰67、68の外側への湾曲の影響が相殺される。
これより図1、2A、2Bおよび10A~10Dを参照すると、成形本体のトラフ61内の溶融ガラスの温度および粘度を制御するための代替的な実施形態が示されている。特に、本明細書に記載されるガラス成形装置は、代替的に、成形本体60の上方に概ね水平に、またはその側面に沿って位置付けられた1つ以上の熱ゾーンを有する加熱素子の形態をした熱素子を含むことができる。特に、例えば全長など、成形本体60の長さLの少なくとも一部に沿って延びる加熱素子300が図10Aに示されている。加熱素子300は、長さLgを有する概ね直線状の加熱素子である。実施形態では、少なくとも1つの加熱素子300は、概して入口端52から遠位端58までトラフ61の第1および第2の堰67、68の一方の上に、または外側垂直面110、112の一方に沿って、隣接して延びる。実施形態では、加熱素子300は、成形本体60のルート70に対して実質的に平行に位置付けられる。代替的にまたは加えて、加熱素子300は、トラフ61の上に延在する筺体80の上部パネル82に対して実質的に平行に位置付けることができる。
実施形態では、加熱素子300は、その長さに沿って延在する1つ以上の加熱ゾーンを伴って構築される。すなわち、加熱素子300の幾何学的形状、寸法、および/または材料は、加熱素子300の電気抵抗がその長さに沿って変化し、したがって加熱素子300の抵抗率がその長さに沿って変化し、加熱素子300の長さに沿った離散的な加熱ゾーンをもたらすように選択することができる。例えば、図10B~10Dは、成形本体のトラフ61の上に概ね水平に位置付けられた加熱素子300のための3つの別々の実施形態を示している。特に、単一の熱ゾーンを有する加熱素子は、図10Bの加熱素子300Aによって示され、2つの熱ゾーンを有する加熱素子は、図10Cの加熱素子300Bによって示され、3つの熱ゾーンを有する加熱素子は、図10Dの加熱素子300Cによって示されている。加熱素子300A、300B、300Cのいずれか、または加熱素子300A、300B、300Cのいずれかの組合せを、図10Aの加熱素子300によって示されるように、筺体80の上に位置付けることができる。実施形態では、加熱素子300A、300B、300Cのうちの1つ以上を、図10Aに示される成形本体60のルート70に対して実質的に平行な成形本体60上に位置付けることができ、若しくは、代替としてまたは加えて、加熱素子300A、300B、300Cのうちの1つ以上を、トラフ61の上に延在する筺体80の上部パネル82に対して実質的に平行に位置付けることができる。
実施形態では、加熱素子300は、図10Bに示すように単一の熱ゾーンZA1を有する加熱素子300Aの形態でありうる。単一の熱ゾーンZA1は、長さLZA1を有し、トラフ61の入口端52の上(+Z方向)に位置付けられた入口端301からトラフ61の遠位端58の上に位置付けられた遠位端302まで延在する。単一の熱ゾーンZA1は、長さLZA1に沿って、単位長さあたりほぼ均一な電気抵抗を有する。この実施形態では、熱ゾーンZA1は、加熱素子300Aの長さLZA1に沿って、ほぼ均一な温度プロファイルをもたらす。
他の実施形態では、加熱素子300は、図10Cに示される第1の熱ゾーンZB1および第2の熱ゾーンZB2を有する加熱素子300Bの形態でありうる。加熱素子300Bの第1の熱ゾーンZB1は、概ね入口端52の上方に位置付けられた入口端303からトラフ61の上(+Z方向)に位置付けられた遠位端304まで延在する第1の長さLZB1を有する。加熱素子300Bの第2の熱ゾーンZB2は、第1の熱ゾーンZB1の遠位端304に隣接して位置付けられた入口端305から、概ねトラフ61の遠位端58の上に位置付けられた遠位端306まで延在する第2の長さLZB2を有する。第1の熱ゾーンZB1は、第1の長さLZB1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗を有し、第2の熱ゾーンZB2は、単位長さあたりの第1の電気抵抗とは異なる第2の長さLZB2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗を有する。この実施形態では、第1の熱ゾーンZB1は、加熱素子300Bの長さLZB1に沿った第1の温度プロファイルをもたらし、第2の熱ゾーンZB2は、加熱素子300Bの長さLZB2に沿った、第1の温度プロファイルとは異なる第2の温度プロファイルをもたらす。実施形態では、第1の長さLZB1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZB2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より大きく、第1の熱ゾーンZB1は、第2の熱ゾーンZB2より高い平均温度を有する。他の実施形態では、第1の長さLZB1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZB2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より小さく、第1の熱ゾーンZB1は、第2の熱ゾーンZB2よりも低い平均温度を有する。
さらに他の実施形態では、加熱素子300は、図10Dに示される第1の熱ゾーンZC1、第2の熱ゾーンZC2、および第3の熱ゾーンZC3を有する加熱素子300Cの形態でありうる。加熱素子300Cの第1の熱ゾーンZC1は、概ね入口端52の上(+Z方向)に位置付けられた入口端307からトラフ61の上(+Z方向)に位置付けられた遠位端308まで延在する第1の長さLZC1を有する。第2の熱ゾーンZC2は、第1の熱ゾーンZC1の遠位端308に隣接して位置付けられた入口端309からトラフ61の上(+Z方向)に位置付けられた遠位端310まで延在する第2の長さLZC2を有する。第3の熱ゾーンZC3は、第2の熱ゾーンZC2の遠位端310に隣接して位置付けられた入口端311から、概ねトラフ61の遠位端58の上の上に位置付けられた遠位端312まで延在する第3の長さLZC3を有する。第1の熱ゾーンZC1は、第1の長さLZC1に沿って、単位長さあたりの第1の電気抵抗を有し、第2の熱ゾーンZC2は、第2の長さLZC2に沿って、単位長さあたりの第1の電気抵抗とは異なる単位長さあたりの第2の電気抵抗を有し、第3の熱ゾーンZC3は、第3の長さLZC3に沿って、単位長さあたりの第2の電気抵抗とは異なる単位長さあたりの第3の電気抵抗を有する。単位長さあたりの第3の電気抵抗は、単位長さあたりの第1の電気抵抗に概ね等しいか、それより小さいか、またはそれより大きくなりうる。実施形態では、第1の熱ゾーンZC1は、加熱素子300Cの長さLZC1に沿って第1の温度プロファイルをもたらし、第2の熱ゾーンZC2は、加熱素子300Cの長さLZC2に沿って第1の温度プロファイルとは異なる第2の温度プロファイルをもたらし、第3の熱ゾーンZC3は、加熱素子300Cの長さLZC3に沿って第1の温度プロファイルおよび第2の温度プロファイルとは異なる第3の温度プロファイルをもたらす。他の実施形態では、第1の熱ゾーンZC1は、加熱素子300Cの長さLZC1に沿った第1の温度プロファイルをもたらすことができ、第2の熱ゾーンZC2は、加熱素子300Cの長さLZC2に沿った、第1の温度プロファイルとは異なる第2の温度プロファイルをもたらすことができ、第3の熱ゾーンZC3は、加熱素子300Cの長さLZC3に沿った、第1の温度プロファイルとは概ね同じであり、第2の温度プロファイルとは異なる、第3の温度範囲をもたらすことができる。
実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZC2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より大きい。このような実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第3の長さLZC3に沿った単位長さあたりの第3の電気抵抗より大きいか、それより小さいか、または概ね等しくなりうる。例えば、実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZC2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より大きく、かつ、第3の長さLZC3に沿った単位長さあたりの第3の電気抵抗より大きい。このような実施形態では、第1の熱ゾーンZC1は、加熱素子300Cが1つの連続した回路であり、電圧が加熱素子300Cの外端または最先端に印加される場合に、第2の熱ゾーンZC2より高い平均温度および第3の熱ゾーンZC3より高い平均温度を有する。他の実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZC2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より大きく、第3の長さLZC3に沿った単位長さあたりの第3の電気抵抗より小さい。このような実施形態では、第1の熱ゾーンZC1は、加熱素子300Cに電流が流れる場合に、第2の熱ゾーンZC2より高い平均温度および第3の熱ゾーンZC3より低い平均温度を有する。さらに他の実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZC2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より大きく、第3の長さLZC3に沿った単位長さあたりの第3の電気抵抗に概ね等しい。このような実施形態では、第1の熱ゾーンZC1は、加熱素子300Cが1つの隣接する回路であり、かつ電圧が加熱素子300Cの外端または最先端に印加される場合に、加熱素子300Cに電流が流れるときに、第2の熱ゾーンZC2より高い平均温度および第3の熱ゾーンZC3とほぼ等しい平均温度を有する。
実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZC2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より小さい。このような実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第3の長さLZC3に沿った単位長さあたりの第3の電気抵抗より大きいか、それより小さいか、または概ね等しくなりうる。例えば、実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZC2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より小さく、第3の長さLZC3に沿った単位長さあたりの第3の電気抵抗より大きい。このような実施形態では、第1の熱ゾーンZC1は、加熱素子300Cに電流が流れる場合に、第2の熱ゾーンZC2よりも低い平均温度および第3の熱ゾーンZC3よりも高い平均温度を有する。他の実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZC2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より小さく、かつ、第3の長さLZC3に沿った単位長さあたりの第3の電気抵抗より小さい。このような実施形態では、第1の熱ゾーンZC1は、加熱素子300Cに電流が流れる場合に、第2の熱ゾーンZC2よりも低い平均温度および第3の熱ゾーンZC3よりも低い平均温度を有する。さらに他の実施形態では、第1の長さLZC1に沿った単位長さあたりの第1の電気抵抗は、第2の長さLZC2に沿った単位長さあたりの第2の電気抵抗より小さく、かつ、第3の長さLZC3に沿った単位長さあたりの第3の電気抵抗にほぼ等しい。このような実施形態では、第1の熱ゾーンZC1は、加熱素子300Cに電流が流れる場合に、第2の熱ゾーンZC2よりも低い平均温度および第3の熱ゾーンZC3とほぼ等しい平均温度を有する。隣接する熱ゾーンと比較してより高い平均温度を有する加熱素子の熱ゾーンが成形本体トラフの長さに沿った特定の位置または領域において望ましい場合があることが理解される。例えば、成形本体の堰の外側への湾曲は、成形本体トラフの入口端に近接する領域において、より顕著になりうる。したがって、粘度を低下させ、それによってこのような領域に沿った溶融ガラスの質量流量を増加させるために、より高い平均温度を有する加熱素子の熱ゾーンが入口端の近くでは好ましい場合がある。
図10Aに示される加熱素子300は、図11Aに示される成形本体60の入口端52内に位置付けられた熱素子と併用することができる。特に、加熱素子300は、図10Aに関して示され説明されるように、成形本体60の長さLに沿ってトラフ61の上方に延び、熱素子314は、図11Aに示されるように、成形本体60の入口端52付近に形成されたチャネル315内に位置付けられる。実施形態では、熱素子314は、入口端52に近接して成形本体60内に延びるスリーブ316内に位置付けることができる。他の実施形態では、熱素子314は、スリーブ316内に位置付けられ、入口端52を通って成形本体60内に入り、トラフ61内の溶融ガラス内へと延びる。熱素子314は、トラフ61内の溶融ガラス、特に入口端52に近接した溶融ガラスのさらなる温度制御源を提供する。実施形態では、熱素子314は、加熱素子、例えば、本明細書で論じる加熱素子212または加熱素子300と同様または同一の加熱素子である。他の実施形態では、熱素子314は、冷却素子、例えば、本明細書で論じられている冷却素子216と類似または同一の冷却素子である。
加熱素子300および熱素子314(加熱素子の形態の場合)は、典型的には、既知の高温電気抵抗加熱素子材料から形成される。加熱素子300および熱素子314(加熱素子の形態の場合)を形成するのに適した材料には、耐熱性の高い材料が含まれ、限定ではなく例示として、クロム酸ランタン(LaCrO3)、二ケイ化モリブデン(MoSi2)、炭化ケイ素(SiC)などが挙げられる。しかしながら、加熱素子300および熱素子314は、電気抵抗加熱に適した他の材料から作ることができる。
熱素子314が冷却素子の形態の場合、該熱素子314は、典型的には、ガラスリボンの製造中に遭遇する高温に耐えることができる材料から形成される。成形本体を形成する典型的な材料としては、310ステンレス鋼、Inconel(登録商標)600等が挙げられうるが、これらに限定されない。しかしながら、冷却素子の形態をした熱素子314は、ガラスリボンの製造中に遭遇する高温に耐えるのに適した他の高温耐性材料から作ることもできる。
これより図10A~11Dを参照すると、加熱素子300を使用して、成形本体60の第1および第2の堰67、68を越えて流れる溶融ガラスの温度および粘度を局所的に制御または調節し、したがって、第1および第2の堰67、68を越えて流れる溶融ガラスの質量流量を局所的に調節または制御することができる。特に、ガラスリボン12の幅に沿った厚さの変化を厚さ測定装置25によって検出する場合、制御装置27は、加熱素子300への電流を調整する。調整された電流は、加熱素子300の個々の加熱ゾーンによってもたらされる熱を増減して、第1および第2の堰67、68を越える溶融ガラスの質量流量を局所的に変化させ、それによって寸法変動を緩和し、堰の拡張の影響を打ち消す。例えば、外側への湾曲(例えば、第1の堰67では+X方向への外側への湾曲、第2の堰68では-X方向への外側への湾曲)は、結果として、溶融ガラスの質量流量の減少をもたらし、これが今度は、ガラスリボン12の厚さの変動を引き起こしうる。加熱素子300を使用して外側に湾曲している領域の溶融ガラスの温度を局所的に上昇させ、粘度を下げることによって、外側に湾曲している領域の第1および第2の堰67、68を越える溶融ガラスの質量流量の増加がもたらされ、それによって、第1および第2の堰67、68の外側への湾曲が打ち消される。
加熱素子300の実施形態は独立型の実施形態として示されているが、加熱素子300は、図3A~4、6および7に示される、複数の熱素子210、側面熱素子213、または複数の熱素子210と側面熱素子213の両方と併用することができることが理解されるべきである。
本明細書に記載される実施形態は、以下の実施例によってさらに明確になるであろう
実施例1
図1~7および12A~13Cを参照すると、成形本体60のトラフ61の上方に位置付けられた加熱素子212のアレイについて、数学モデルを開発した。特に、図12Aは、上部パネル82の上方に位置付けられた加熱素子212の複数の底部214を有する、筺体80の上部パネル82の長さ(±X方向)に沿った、中心軸5(図3D)に対する対称断面を概略的に示している。上部パネル82は、トラフ61内の溶融ガラスMGの上方(+Z方向)にある(図2B)。溶融ガラスMGは、第1および第2の堰67、68(図2B)を越えて流れ、第1の成形面62および第2の成形面64(図2B)を流下し、ルート70(図2B)で合流して融合し、ガラスリボン12を形成する(図1)。上部パネル82は、成形本体60の長さLに沿って8つのパネル(P0、P1、P2、…P8)を有する。加熱素子212の底部214は、所与のパネルに対して位置決めされている(図12A)。説明のために、各加熱素子212には、4桁の英数字『Pxyz』の形態の固有の識別子(表示)が割り当てられており、ここで、『x』は、加熱素子212がその上に位置付けられるパネルを識別し、『y』は、加熱素子212が筺体80の中心軸5に近接して(『C』)、または第2の堰68(『W』)に近接して位置付けられ、『z』は、加熱素子212がトラフ61の入口端52(『a』)または遠位端58(『b』)に近接して位置付けられているかどうかに対応する。例えば、4つの加熱素子212が、図12BのパネルP1の上に位置付けられている。堰に近接して位置付けられた2つの加熱素子212は『P1W』として識別され、『P1Wa』として識別される入口端52に近接して位置付けられた加熱素子212と、『P1Wb』として識別される遠位端58に近接して位置付けられた加熱素子212とを有する。中心軸5に近接して位置付けられた2つの加熱素子212は『P1C』として識別され、『P1Ca』として識別される入口端52に近接して位置付けられた加熱素子212と、『P1Cb』として識別される遠位端58に近接して位置付けられた加熱素子212とを有する。パネルP0は、中心軸5に近接して位置付けられた、『POC』として識別される1つの加熱素子212のみを有する。パネルP8は2つの加熱素子212のみを有し、1つは堰に近接して位置付けられ、『P8W』として識別され、1つは中心軸5に近接して位置付けられ、『P8C』として識別される。残りのパネル、すなわち、パネルP2、P3、P4…P7は、それらの上に位置付けられた4つの加熱素子212を有しており、各パネルの上に位置付けられた4つの加熱素子212は、パネルP1について上述したものと同じ規則で識別される。
図13A~13Cを参照すると、図12A~12Bに示されるトラフ61の長さ(図面には「正規化位置」と表示)に沿った熱素子210によってもたらされる3つの温度プロファイルが図13Aに示されており、図13Aに示される3つの温度プロファイルに対応する第2の堰68を越える溶融ガラスの正規化質量流量分布が図13Bに示されており、図13Aに示される等温温度プロファイルについての正規化質量流量分布に対する質量流量分布の正規化した変化が図13Cに示されている。正規化位置『0』はトラフ61の入口端52に対応し、正規化位置1.0はトラフ61の遠位端58に対応している。
図13Aは、トラフ61の全長に沿った溶融ガラスの温度が基準温度『TLOW』より約4℃高い等温プロファイル(『等温』と表示);入口端52の温度がTlowより約7℃高く、遠位端58の温度がTlowより約1℃高い、直線的に低下するプロファイル(『L低』と表示);および、入口端52の温度がTlowより約1℃高く、遠位端58の温度がTlowより約7℃高い、直線的に増加するプロファイル(『L増』と標示)をグラフで示したものである。
図13Bは、図13Aに示される3つの温度プロファイルについての第2の堰68を越えて流れる溶融ガラスMGのトラフ61の長さに沿った正規化位置の関数としての正規化質量流量分布をグラフで示したものである。図13Aに示される等温温度プロファイルに対応する正規化質量流量分布(『等温』と表示)は、約0.8の正規化質量流量分布で、トラフ61の長さに沿った約0.2~約0.9の正規化位置において概ね均一である。正規化質量流量分布は、トラフ61の入口端52および遠位端58の近くで0.8に対して低下する。図13Aに示されるL低の温度プロファイルに対応する正規化質量流量分布(『L低』と表示)は、等温の正規化質量流量分布と比較して、入口端52付近の質量流量分布の低下、約0.2~約0.8の正規化位置間の質量流量分布の増加、およびトラフ61の遠位端58付近の質量流量分布の低下を有する。図13Aに示されるL増の温度プロファイルに対応する正規化質量流量分布(『L増』と表示)は、等温の正規化質量流量分布と比較して、入口端52付近の質量流量分布の増加、約0.2~約0.8の正規化位置間の質量流量分布の低下、およびトラフ61の遠位端58付近の質量流量分布の増加を有する。
図13Cは、図13Bにおける等温の正規化質量流量分布と比較した、L低の正規化質量流量分布およびL増の正規化質量流量分布の変化をグラフで示したものである。特に、等温の正規化質量流量分布と比較して、L低の正規化された質量流量分布は、約0.0~約0.2の正規化位置についての質量流量分布の増加(約0.05において約-0.75の最大差)、約0.2~約0.8の質量流量分布の低下(約0.5において約+0.3の最大差)、および約0.8~約1.0の質量流量分布の増加(約0.95において約-0.25の最大差)を有する。等温の正規化質量流量分布と比較して、L増の正規化質量流量分布は、約0.0~約0.2の正規化位置についての質量流量分布の増加(約0.05において約+0.7の最大差)、約0.2~約0.8の質量流量分布の低下(約0.5において約-0.3の最大差)、および約0.8~約1.0の質量流量の増加(約0.95において約+0.5の最大差)を有する。したがって、図13A~13Cは、トラフ61の長さに沿った異なる温度プロファイルが、成形本体60の長さLに沿った(第2の堰68を越える)異なる質量流量分布をもたらすことを実証している。当然のことながら、第1の堰67を越える質量流量分布は、第2の堰68を越える質量流量分布を反映するであろう。
実施例2
これより図1~7、12A~12Bおよび14A~14Cを参照すると、溶融ガラスMGの質量流量分布に対するトラフ61の長さに沿った溶融ガラス温度の変化の影響が示されている。特に、図14Aは、4つの溶融ガラスMGの温度プロファイル(図14Aにおいて、1、2、3、4で表示)をグラフで示している。溶融ガラスMGについての4つの温度プロファイル1、2、3、4は、4つの異なる入口端温度、並びに、図12Aに示される第2の側面パネル86に沿って位置付けられた加熱素子212の形態の3つの側面熱素子213(図4)を使用する、トラフ61の正規化された長さに沿った加熱についてのものである。3つの側面熱素子213は、成形本体60の入口端50付近にパネルP1、P2、P3に隣接して位置付けられ、SU1、SU2、SU3(表1)として識別されており、側面加熱素子SU1はパネルP1に隣接して位置付けられ、側面加熱素子SU2はパネルP2に隣接して位置付けられ、側面加熱素子SU3はパネルP3に隣接して位置付けられている。3つの側面加熱素子SU1、SU2、SU3についてのモデル化された電力設定、および4つの温度プロファイル1、2、3、4についての基準温度『TLOW』より高い入口端温度(『T-in』と表示)が表1に示されている。
図14Aを参照すると、第1の温度プロファイル『1』についての入口端温度は、図面に示される基準温度『TLOW』より約24℃高く、溶融ガラスMGの温度は、入口端52から約0.95の正規化位置におけるTLOWより約4℃高い温度まで着実に低下している。第2の温度プロファイル『2』の入口端温度はTLOWより約30℃高く、溶融ガラスMGの温度プロファイルは、入口端52から約0.95の正規化位置におけるTLOWより約6℃高い温度まで着実に低下している。第3の温度プロファイル『3』の入口端温度はTLOWより約18℃高く、溶融ガラスMGの温度プロファイルは、入口端52から約0.95の距離におけるTLOWより約35℃高い温度まで着実に増加している。第4の温度プロファイル『4』の入口端温度はTLOWより約15℃高く、溶融ガラスMGの温度プロファイルは、入口端52から約0.95の距離における約34℃の温度まで着実に増加している。
4つの温度プロファイル(1、2、3、4)に対応する正規化質量流量分布は図14Aに示されており、図13Aに示される3つの温度プロファイル(等温、L低、L増)は図14Bに示されている。温度プロファイル『1』および『2』の正規化質量流量分布は、約0.05~約0.2の正規化位置では温度プロファイル等温、L低、およびL増の正規化質量流量分布よりも概ね小さい。温度プロファイル『3』および『4』の正規化質量流量分布は、約0.8~約0.95の温度プロファイル等温、L低、およびL増の正規化質量流量分布よりも概ね大きい。等温の温度プロファイルと比較して、温度プロファイル『1』および『2』は、概ね、第1および第2の堰67、68の中間に溶融ガラス質量流量の増加をもたらし、温度プロファイル『3』および『4』は、一般に第1および第2の堰67、68の端部における溶融ガラスの質量流量の増加をもたらす。したがって、図14Bは、トラフ61内の溶融ガラスの温度プロファイルを制御して、第1および第2の堰67、68の上方の位置の関数としての溶融ガラスの質量流量を変化させることを例証している。成形本体の堰の上方の位置の関数としての温度プロファイルおよび溶融ガラスの質量流量を制御することにより、例えば成形本体の堰の外側への湾曲の補償、ガラスリボン運動中の異なるガラスの異なる質量流量特性の補償など、寸法変化の補償をもたらすことができる。
図14Cは、図13Aに示される等温温度プロファイルを有する溶融ガラスから形成されたガラスリボン12の正規化された幅に沿った厚さと比較して、図13Aおよび14Aに示される温度プロファイルL低、L増、『1』、『2』、『3』および『4』を有する溶融ガラスから形成されたガラスリボン12の正規化された幅に沿ったガラスリボンの厚さの対応する変化をグラフで示している。図14Cに示される正規化された幅の関数としての厚さの値は、成形本体60のルート70の下方の一定距離(-Z方向)におけるガラスリボン12の厚さについてのものである。図14Bに示される等温の質量流量に対応するガラスリボンの厚さと比較して、温度プロファイルL増および『4』は、結果的に、約0.0~約0.2の正規化位置ではガラスリボン12の厚さの増加、約0.2~約0.7の正規化位置では厚さの低下、および約0.7より大きい正規化位置では厚さの増加をもたらす。温度プロファイルL低、『1』および『2』は、結果的に、約0.0~0.2の正規化位置ではガラスリボン12の厚さの低下、約0.2~約0.8の正規化位置ではガラスリボンの厚さの増加、および約0.8より大きい正規化位置ではガラスリボンの厚さの低下をもたらす。温度プロファイル『3』は、結果的に、約0.0~約0.6の正規化位置ではガラスリボン12の厚さの低下をもたらし、約0.6より大きい正規化位置ではガラスリボン12の厚さの増加をもたらす。したがって、図14A~14Cは、側面熱素子213を使用するトラフ61の長さに沿った温度制御が、ガラスリボンの幅に沿ったガラスリボンの厚さの制御をもたらすことを実証している。
実施例3
図1~7、12A~12Bおよび15A~15Bを参照すると、溶融ガラスの質量流量に影響を及ぼすトラフ61の長さに沿った温度変化の別の例が示されている。特に、図15Aは、入口端52のトラフ61内の溶融ガラスMGの上部の約30℃の局所冷却(『上部冷却』と表示)、および入口端50のトラフ61内の溶融ガラスMGの底部の約30℃の局所冷却(『底部冷却』と表示)に対応する質量流量分布をグラフで示している。実施形態では、入口端52における溶融ガラスMGの上部は、1つ以上の冷却素子216で冷却され、入口端52における溶融ガラスMGの底部は、冷却素子216の形態の熱素子314で冷却される。入口端50における溶融ガラスMGの上部の約30℃の局所冷却(上部冷却)は、結果的に、入口端50における正規化された質量流量の低下をもたらし(約0.05において約-0.7の最大低下)、入口端50における溶融ガラスMGの底部の約30℃の局所冷却(底部冷却)は、結果的に、入口端50における質量流量の増加をもたらす(約0.05において約+0.8の最大増加)。
図15Bは、トラフ61の入口端52および遠位端58における溶融ガラスMGの局所冷却および局所加熱についての正規化質量流量分布をグラフで示している。トラフ61の長さに沿った質量流量分布(「正規化位置」と表示)が、入口端50における溶融ガラスMGの約30℃の局所冷却(『入口冷却』と表示)、入口端50における溶融ガラスMGの約30℃の局所加熱(『入口加熱』と表示)、遠位端58における溶融ガラスMGの約30℃の局所冷却(『圧縮冷却』と表示)、入口端52における溶融ガラスMGの約75℃の局所冷却(『入口冷却2.5倍』と表示)、および遠位端58における溶融ガラスMGの約75℃の局所冷却(『圧縮冷却2.5倍』と表示)について示されている。図15Aに示される質量流量分布と同様に、入口端52における溶融ガラスMGの約30℃の局所冷却は、結果的に、入口端52における質量流量の低下(約0.05において約-0.7の最大低下)をもたらし、入口端52における約30℃の局所加熱は、結果的に、入口端52における質量流量の増加(約0.05において約+0.6の最大増加)をもたらす。入口端52における約75℃の局所冷却は、結果的に、2.5倍を超える入口端52における質量流量の低下(約0.05において約2.0の最大低下)をもたらす。遠位端58における約30℃の局所冷却は、結果的に、遠位端58における質量流量の低下(約0.9における約-0.4の最大低下)をもたらすが、遠位端58における質量流量の増加(約0.85における約+0.25の最大増加)ももたらす。同様に、遠位端58における約75℃の局所冷却は、結果的に、遠位端58における質量流量の低下(約0.9における約-1.2の最大低下)をもたらすが、遠位端58における質量流量の増加(約0.85における約+0.8の最大増加)ももたらす。したがって、図15A~15Bは、トラフ61の入口端52および遠位端58における加熱および冷却が、第1および第2の堰67、68を越えて流れる溶融ガラスMGの質量流量制御をもたらすことを実証している。
実施例4
図1~7、12A~12Bおよび16A~16Bを参照すると、トラフ61内の溶融ガラスMGの温度に影響を与える、図12Bに示す個々の加熱素子212の電力設定の変化の一例が、図16A~16Bに示されている。特に、図16Aは、表2に示される加熱素子212についての電力設定の変化から生じる、トラフ61の長さに沿った距離(「正規化位置」と表示)の関数としてのトラフ61内の表面、中央、および底部部分における溶融ガラスMGの温度応答をグラフで示している。図16Aに示される挿入図は、トラフ61内の溶融ガラスMGの表面、中央、および底部部分の相対的な向きを示している。図16Bは、表3に示される加熱素子212について示される電力設定の変化から生じる、トラフ61の長さに沿った距離(「正規化位置」と表示)の関数としてのトラフ61内の表面、中央、および底部部分における溶融ガラスMGの温度応答をグラフで示している。
表2および3に示される値は、すべての加熱素子212についての正の均一電力設定に対する電力設定の変化を表している。図16Aおよび表2に示されるように、トラフ61の入口端52の近くに位置付けられた加熱素子212の電力設定を増加させると、入口端52の近くに温度応答のピークが生じる。特に、図16Aに示される温度応答のピーク(0.15の正規化位置における表面部分の約+4.5℃の最大値)は、次の結果からもたらされた:加熱素子212のP1Ca、P1Cb、P1Wa、P1Wbには100ワットの電力増加の適用;加熱素子212のP2Ca、P2Cbには100ワットの電力低下の適用;および、加熱素子212のP2Wa、P2Wb、P3Ca、P3Cb、P3Wa、P3Wb、P4Cbには80ワットから10ワットの範囲の電力低下の適用。
図16Bおよび表3に示されるように、隣接する加熱素子212の電力設定の低下と組み合わせた、概ねトラフ61の中央に位置付けられた加熱素子212の電力設定の増加は、トラフ61の中央の溶融ガラスMGの表面に正の温度応答のピークをもたらす。特に、図16Bに示される温度応答のピーク(入口端52から0.6の正規化位置における表面部分では約+4.5℃の最大値、および入口端52から約0.7の正規化位置における中央および下方部分では約+3.2℃の最大値)は、次の結果からもたらされた:加熱素子212のP3Cb、P3Wa、P3Wb、P4Ca、P4Cb、P4Wa、P4Wb、P5Caには100ワットの電力増加の適用;加熱素子212のP3Ca、P2Cb、P2Wb、P2Ca、P2Wa、P1Cb、P1Wb、P1Wa(トラフ61の入口端50に近接して配置された加熱素子)には40ワット~10ワットの範囲の電力低下の適用;および、加熱素子212のP5Wa、P5Cb、P5Wb、P6Ca、P6Cb、P6Wa、P6Wb、P7Ca(トラフ61の遠位端58に近接して配置された加熱素子)には100ワット~20ワットの範囲の電力低下の適用。したがって、図16A~16Bおよび表2~3は、トラフ61の長さに沿った加熱素子212に対する電力設定の変更が、トラフ61内の溶融ガラスMGの温度制御をもたらし、これを今度は、成形本体の長さに沿ったガラスの質量流量特性の調整に使用することができることを実証している。
実施例5
図1、2、10Aおよび17を参照すると、成形本体60のトラフ61の上方に位置付けられた加熱素子300について、数学モデルを開発した。特に、図17は、表4に示されるゾーン長、ゾーン電気抵抗、ゾーン電力、およびゾーン電力密度を有する、図10Aに示される加熱素子300A、300B、300Cについての4つの異なる熱ゾーン構成に対するモデリングの結果をグラフで表している(列Aは加熱素子300Aを指し、列Bは加熱素子300Bを指し、列C1およびC2は加熱素子300Cを指す)。
図17の曲線『A』に対応する加熱素子300Aは、1Ωの電気抵抗、基準長さ『L』、および熱ゾーンZA1に印加される基準電力『P』を有する「ホットゾーン」の形態の単一の熱ゾーンZA1を有する。熱ゾーンZA1を通る電力密度は『PD』である。図17の曲線『B』に対応する加熱素子300Bは、1Ωの第1の電気抵抗および約0.7Lの長さを有する「ホットゾーン」の形態の第1の熱ゾーンZB1と、2Ωの第2の電気抵抗および約0.3Lの長さを有する「極ホットゾーン」の形態の第2の熱ゾーンZB2とを有する。第1の熱ゾーンZB1(ホットゾーン)には0.63Pの電力が印加され、第2の熱ゾーンZB2(極ホットゾーン)は0.37Pの電力が印加される。第1の熱ゾーンZB1(ホットゾーン)を通る電力密度は約0.84PDであり、第2の熱ゾーンZB2(極ホットゾーン)を通る電力密度は約1.50PDである。加熱素子300Cは、第1の電気抵抗を有する第1の熱ゾーンZC1、第1の電気抵抗とは異なる第2の熱抵抗を有する第2の熱ゾーンZC2、並びに、第1の電気抵抗とは異なる、第2の電気抵抗とは異なる、または第1の電気抵抗および第2の電気抵抗のいずれとも異なる第3の電気抵抗を有する第3の熱ゾーンZC3を有する。特に、図17に『C1』で示される曲線に対応する加熱素子300Cは、3Ωの第1の電気抵抗および約0.08Lの長さを有する「コールドゾーン」の形態の第1の熱ゾーンZC1、1Ωの第2の電気抵抗および約0.67Lの長さを有する「ホットゾーン」の形態の第2の熱ゾーンZC2、並びに2Ωの第3の電気抵抗および約0.25Lの長さを有する「極ホットゾーン」の形態の第3の熱ゾーンZC3を有する。第1の熱ゾーンZC1(コールドゾーン)には電力は印加されず、第2の熱ゾーンZC2(ホットゾーン)には0.60Pの電力が印加され、第3の熱ゾーンZC3(極ホットゾーン)には0.40Pの電力が印加される。第1の熱ゾーンZC1(ホットゾーン)を通る電力密度は約0.0PDであり、第2の熱ゾーンZC2(ホットゾーン)を通る熱密度は約0.89PDであり、第3の熱ゾーンZC3(極ホットゾーン)を通る熱密度は約1.50PDである。
図17の曲線『C2』に対応する加熱素子300Cは、2Ωの第1の電気抵抗および約0.25Lの長さを有する「極ホットゾーン」の形態をした第1の熱ゾーンZC1、1Ωの第2の電気抵抗および約0.5Lインチの長さを有する「ホットゾーン」の形態をした第2の熱ゾーンZC2、並びに2Ωの第1の電気抵抗および約0.25Lの長さを有する「極ホットゾーン」の形態をした第3の熱ゾーンZC3を有する。第1の熱ゾーンZC1および第3の熱ゾーンZC3(極ホットゾーン)には各々、0.50Pの電力が印加され、第2の熱ゾーンZC2(ホットゾーン)には0.54Pの電力が印加される。第1の熱ゾーンZC1および第3の熱ゾーンZC3(極ホットゾーン)の電力密度は約1.89PDであり、第2の熱ゾーンZC2(ホットゾーン)の熱密度は約1.05PDである。
図14を参照すると、単一の熱ゾーンZA1(ホットゾーン;曲線A)を有する曲線『A』に対応する加熱素子300Aは、基準温度『TLOW』より約12℃高い平均温度を有するトラフ61内の溶融ガラスMGをもたらす。溶融ガラスMGの温度は、入口端52におけるTLOWより約11℃高く、入口端52から約0.7の正規化位置におけるTLOWより約16℃高い温度まで上昇し、その後、入口端52から約1.0の正規化位置におけるTLOWより約10℃高い温度まで低下する。2つのゾーンZB1、ZB2(ホットゾーン、極ホットゾーン)を有する曲線『B』に対応する加熱素子300Bは、結果として、TLOWより約11℃高い平均温度を有するトラフ61内の溶融ガラスMGをもたらす。溶融ガラスMGの温度は、入口端52でTLOWより約10℃高く、入口端52から約0.2の正規化位置におけるTLOWより約8℃高い温度まで低下し、入口端52から約0.4の正規化位置までTLOWより約8℃高い温度を維持し、次いで入口端52から約1.0の正規化位置におけるTLOWより約28℃高い温度まで上昇する。3つのゾーンZC1(極ホットゾーン)、ZC2(ホットゾーン)、ZC3(極ホットゾーン)を有する曲線『C1』に対応する加熱素子300Cは、TLOWより約12℃高い平均温度を有するトラフ61内の溶融ガラスMGをもたらす。溶融ガラスMGの温度は、入口端52におけるTLOWより約11℃高く、入口端52から約0.8の正規化位置におけるTLOWより約15℃高い温度まで上昇し、その後、入口端52から約1.0の位置におけるTLOWより約12℃高い温度まで低下する。3つのゾーンZC1(コールドゾーン)、ZC2(ホットゾーン)、ZC3(極ホットゾーン)を有する曲線『C2』に対応する加熱素子300Cは、結果として、TLOWより約9℃高い平均温度を有するトラフ61内の溶融ガラスMGをもたらす。溶融ガラスMGの温度は、入口端52におけるTLOWより約8℃高く、入口端52から約0.3の正規化位置におけるTLOWより約1℃高い温度まで低下し、その後、入口端52から約1.0の位置におけるTLOWより約49℃高い温度まで上昇する。したがって、図17は、トラフ61内の溶融ガラスMGの温度が、異なる熱ゾーンを有する加熱素子を用いて制御することができ、したがって、異なる熱ゾーンを有する加熱素子を用いて、成形本体の長さに沿って、溶融ガラスの質量流量特性を調整することができることを例証している。
実施例6
図1、2、11および18を参照すると、成形本体60のトラフ61の上方に位置付けられた加熱素子300と、成形本体60の入口端52内に位置付けられた加熱素子の形態の熱素子314とについての数学モデルを開発した。特に、図18は、4つの異なる加熱素子300および熱素子314の構成についてのトラフ61の長さ(「正規化位置」と記されている)に沿った正規化粘度のモデル化の結果をグラフで示している。熱素子314の構成の各々についての加熱素子300には、合計電力Pが印加される。以下「コールドゾーン」と称されるゾーンは3Ωの電気抵抗を有し、以下「ホットゾーン」と称されるゾーンは1Ωの電気抵抗を有する。『E』で示されるデータ曲線は、トラフ61の長さに沿って延在する単一の熱ゾーンZA1(ホットゾーン)を有し、入口端52には熱素子314が存在しない、図11に示される加熱素子300Aに対応する。入口端52における溶融ガラスMGの正規化粘度は約0.8であり、入口端52から約1.0の正規化位置における約0.7まで徐々に低下する。『F』で示されるデータ曲線は、2つの熱ゾーンZB1、ZB2、および成形本体60の入口端52内の加熱素子の形態をした熱素子314を有する、図11に示された加熱素子300Bに対応する。特に、加熱素子300Bは、入口端52から約0.3の正規化位置へと延在する「コールドゾーン」の形態の第1の熱ゾーンZB1と、約0.3の正規化位置から入口端52から1.0の正規化位置まで延在する「ホットゾーン」の形態の第2の熱ゾーンZB2とを有する。入口端52における溶融ガラスMGの正規化粘度は約0.8であり、入口端52から約1.0の正規化位置における約0.6まで徐々に低下する。『G』で示されるデータ曲線は、2つの熱ゾーンZB1、ZB2、および成形本体60の入口端52内に位置付けられた加熱素子の形態の熱素子314を有する加熱素子300Bに対応する。特に、加熱素子300Bは、入口端52から約0.2の正規化位置まで延在する「コールドゾーン」の形態の第1の熱ゾーンZB1と、約0.2の正規化位置から第1の熱ゾーンZB1から1.0の正規化位置まで延在する第2の熱ゾーンZB2とを有する。入口端52における溶融ガラスMGの正規化粘度は約0.8であり、入口端52から約0.2の正規化位置では約0.83まで増加し、入口端52から約1.0の正規化位置では約0.4まで低下する。『H』で示されるデータ曲線は、単一の熱ゾーンZA1および成形本体60の入口端52内に位置付けられた熱素子314を有する加熱素子300Aに対応する。特に、加熱素子300Aは、入口端52から約1.0の正規化位置まで延在する「ホットゾーン」の形態の熱ゾーンZA1を有する。入口端52における溶融ガラスMGの正規化粘度は約0.8であり、入口端52から約0.3の正規化位置では約0.9まで増加し、入口端52から約1.0の正規化位置では約0.3まで低下する。したがって、図18は、成形本体60の入口端52内に位置付けられた熱素子314と組み合わせた異なる熱ゾーンを有する加熱素子300A、300B、300Cを、トラフ61内の溶融ガラスMGの温度および粘度のさらなる制御、ひいては成形本体の長さに沿ったガラスの質量流量のさらなる制御をもたらすために使用することができることを例証している。
1つの熱ゾーン、2つの熱ゾーン、および3つの熱ゾーンの熱ゾーン構成を有する加熱素子が本明細書に開示および説明されているが、当然のことながら、トラフ61内の溶融ガラスMGの温度および粘度のさらなる制御を提供するために、3つより多い熱ゾーンを有する加熱素子を使用することもできる。また、トラフ61内の溶融ガラスMGの温度および粘度のさらなる制御を提供するために、他の熱ゾーン構成を使用することができることから、本明細書で開示および説明された正確な熱ゾーン構成は、限定とみなされるべきではない。トラフ61内の溶融ガラスMGの温度および粘度のさらなる制御を提供するために、例えば、2つのコールドゾーンと1つのホットゾーン、または2つのコールドゾーンと1つの極ホットゾーンを有する加熱素子を使用することができる。
上記に基づいて、本明細書に記載のガラス成形装置および方法は、ガラス成形装置の成形本体の寸法変化を補償するために使用できることが理解されるべきである。その内部に溶融ガラスを有するトラフの側面の上方または側面に沿って位置付けられた熱素子のアレイ、若しくは、成形本体のトラフの上方に位置付けられた1つ以上の加熱素子を使用することにより、溶融ガラスの局所的な加熱および冷却をもたらし、それを用いてトラフから側面に沿ってルートまで流下する溶融ガラスの質量流量を操作することができる。成形本体の入口端内での加熱素子もまた、トラフから側面に沿ってルートまで流下する溶融ガラスの質量流量を操作するために使用することができる。質量流量の操作は、ガラスリボン形成運動の寸法変化の補償に使用することができる、ガラスシートの厚さの操作を可能にする。
特許請求の範囲に記載の主題の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態にさまざまな修正および変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本明細書は、このような修正および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入る限り、本明細書に記載されるさまざまな実施形態の修正および変更に及ぶことが意図されている。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
上部パネルと一対の側面パネルとを有する筐体;
前記筺体内に位置付けられた成形本体であって、該成形本体が、前記筺体の前記上部パネルの下方に位置付けられた、溶融ガラスを受け入れるためのトラフを備えており、該トラフは、入口端、遠位端、第1の堰、および前記第1の堰とは反対側に間隔を置いて配置された第2の堰、並びに前記成形本体の長さに沿って前記第1の堰と前記第2の堰との間に延びる基部によって画成され、ここで、前記第1の堰および前記第2の堰は、水平に対して傾斜して前記入口端から前記遠位端まで延在し、前記筺体の前記上部パネルは、前記成形本体の長さに沿って、前記第1の堰および前記第2の堰の上面の上方に位置付けられ、それらに対して実質的に平行にかつ横断して延在している、成形本体;
前記成形本体の長さに沿って、前記筺体の前記上部パネルの上方に位置付けられ、それに対して実質的に平行にかつ横断して延在している、支持プレート;並びに
前記成形本体の長さに沿って前記支持プレートから懸架された複数の熱素子;
を備えた、ガラス成形装置であって、
前記複数の熱素子が、前記トラフ内の溶融ガラスを局所的に加熱または冷却する、
ガラス成形装置。
実施形態2
前記複数の熱素子が均一な長さのものである、実施形態1に記載のガラス成形装置。
実施形態3
前記複数の熱素子が複数の加熱素子を含み、該複数の加熱素子が、各々、前記成形本体の長さに沿って前記筺体の前記上部パネルから概ね等距離に位置付けられた底部を備えている、実施形態2に記載のガラス成形装置。
実施形態4
前記複数の熱素子が、均一な長さの複数の加熱素子と、少なくとも1つの冷却素子とを含む、実施形態1に記載のガラス成形装置。
実施形態5
前記支持プレートから懸架され、該支持プレートの長さおよび幅に沿って延びる複数の熱遮蔽体をさらに含み、該複数の熱遮蔽体が複数の中空カラムを形成し、前記複数の熱素子が前記複数の中空カラム内に位置付けられている、実施形態1に記載のガラス成形装置。
実施形態6
前記複数の中空カラムが均一な断面サイズおよび容積のものである、実施形態5に記載のガラス成形装置。
実施形態7
前記支持プレートが複数の開口部を備えており、前記複数の熱素子が前記複数の開口部を通って延びている、実施形態1に記載のガラス成形装置。
実施形態8
前記第1の堰および前記第2の堰が、水平に対して負の傾斜で前記入口端から前記遠位端まで延在している、実施形態1に記載のガラス成形装置。
実施形態9
前記支持プレートが、前記成形本体の入口端に対して実質的に平行にかつ横断して延在する第1の部分と第2の非線形部分とを含み、前記第1の部分が、前記成形本体の長さに沿って、前記筺体の前記上部パネルに対して実質的に平行にかつ横断して延在している、実施形態1に記載のガラス成形装置。
実施形態10
前記筺体の前記一対の側面パネルの少なくとも一方に沿って延びる少なくとも1つの側面熱素子をさらに備えている、実施形態1に記載のガラス成形装置。
実施形態11
溶融ガラスを成形本体のトラフ内へと方向付ける工程であって、前記トラフは、入口端、遠位端、第1の堰、および前記第1の堰とは反対側に間隔を置いて配置された第2の堰、並びに前記成形本体の長さに沿って前記第1の堰と前記第2の堰との間に延びる基部によって画成され、前記成形本体は、上部パネルを有する筺体内に入れられており、ここで、前記第1の堰および前記第2の堰は、水平に対して傾斜して前記入口端から前記遠位端まで延在し、前記上部パネルは、前記成形本体の長さに沿って、前記第1の堰および前記第2の堰の上面の上方に位置付けられ、それらに対して実質的に平行にかつ横断して延在している、工程;
前記溶融ガラスを、前記第1の堰および前記第2の堰を越えて、それぞれ、前記第1の堰および前記第2の堰から延在する第1の成形面および第2の成形面に沿って流下させる工程であって、前記第1の成形面および前記第2の成形面がルートで収束し、前記溶融ガラスが、前記ルートにおいて収束する前記第1の成形面および前記第2の成形面を流下して前記ガラスリボンを形成する、工程;
前記成形本体の上方に位置付けられ、支持プレートから懸架されている複数の熱素子を用いて前記トラフ内の前記溶融ガラスを局所的に加熱または冷却する工程であって、前記支持プレートが、前記成形本体の長さに沿って、前記筺体の前記上部パネルの上方に位置付けられ、それに対して実質的に平行に延在している、工程;
を含む、ガラスリボンの成形方法であって、
前記トラフ内の前記溶融ガラスを局所的に加熱または冷却する工程が、前記トラフの長さに沿って、前記溶融ガラスの温度および粘度を操作する、
方法。
実施形態12
前記複数の熱素子が均一な長さのものである、実施形態11に記載の方法。
実施形態13
前記複数の熱素子が複数の加熱素子を含み、前記複数の加熱素子の各々が、前記成形本体の長さに沿って前記筺体の前記上部パネルから等距離にある底部を備えている、実施形態12に記載の方法。
実施形態14
前記複数の加熱素子の1つを冷却素と交換する工程をさらに含む、実施形態13に記載の方法。
実施形態15
前記支持プレートから懸架され、該支持プレートの長さおよび幅に沿って延びる複数の熱遮蔽体をさらに含み、該複数の熱遮蔽体が複数の中空カラムを形成し、前記複数の熱素子が前記複数の中空カラム内に位置付けられる、実施形態11に記載の方法。
実施形態16
前記複数の中空カラムが、同じ断面サイズおよび容積を含む、実施形態15に記載の方法。
実施形態17
前記支持プレートが複数の開口部を備えており、前記複数の熱素子が前記複数の開口部を通って延びている、実施形態11に記載の方法。
実施形態18
前記第1の堰および前記第2の堰が、水平に対して負の傾斜で前記入口端から前記遠位端まで延在している、実施形態11に記載の方法。
実施形態19
前記支持プレートが、前記成形本体の入口端に対して実質的に平行にかつ横断して延在する第1の部分と、第2の非線形部分とを含み、前記第1の部分が、前記成形本体の長さに沿って、前記筺体の前記上部パネルに対して実質的に平行にかつ横断して延在している、実施形態11に記載の方法。
実施形態20
前記成形本体の上方に位置付けられ、前記支持プレートから懸架されている前記複数の熱素子を用いて前記トラフ内の前記溶融ガラスを局所的に加熱または冷却する工程が、前記複数の熱素子の各々に対する電力または冷却流体を独立して制御する工程を含む、実施形態11に記載の方法。