JP6268373B2 - 残留応力測定方法、及び、残留応力測定装置 - Google Patents
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Description
図2(a)〜(e)は、本発明の一実施形態に係る残留応力測定方法の各工程を示した説明図である。本実施形態による残留応力評価方法では、図2(a)〜(e)に示すような5つの手順により、板厚内部の残留応力値を算出する。ここで、図中の符号1は、溶接構造物などの測定対象部材であり、符号2は測定対象部材1に元孔10を形成可能なドリルである。また、符号3は、測定対象部材1に形成された元孔10の内径を測定可能なエアプローブ(孔径測定部及び孔径再測定部)であり、符号4は、放電によって元孔10の周辺にくり抜き加工(トレパニング加工)を施してくり抜き孔11を形成可能な放電加工機である。符号5は、円筒部分12の軸方向の伸び量ΔZ及び倒れ量Δθのそれぞれを測定可能なタッチプローブである。ここで、本実施形態による残留応力測定装置は、少なくとも、エアプローブ3を備えると共に、前記くり抜き加工(トレパニング加工)の前後における元孔10の形状変化に基づき、測定対象部材1の表面および内部の残留応力値を算出する応力値算出部(不図示)を備えるものであって、応力値算出部は、残留応力値の算出において、元孔10の孔径、元孔10の長手方向の長さ変化(伸び量ΔZ)、及び、元孔10の軸の傾き(倒れ量Δθ)を考慮することを特徴とする。
次に、図1を参照しながら、トレパニング加工の前後における元孔10の長さ変化(伸び量ΔZ)の測定方法について説明する。図1(a)は、元孔10及びくり抜き孔11が形成された測定対象部材1を示した斜視図である。図1(b)は、測定対象部材1の上面視図である。図1(c)は、トレパニング加工後において円筒部分12の軸方向(Z方向)の長さが変化した状態を示す図である。なお、図1(b)中の黒い正方形で示した記号■は、トレパニング加工前における測定対象部材1の高さ方向(Z方向)の測定点を示し、黒い正三角形で示した記号▲は、トレパニング加工後における測定対象部材1の高さ方向(Z方向)の測定点を示す。本実施形態では、図1(b)に示すように、各測定点■、▲は、測定対象部材1の上面であって、元孔10の中心軸Oの周りに等角度(本実施形態では90°)おきであって、且つ、中心軸Oから等距離となる位置に4つずつ設けられている。本実施形態では、トレパニング加工の前後において各測定点■、▲で測定された測定値の平均値が、測定対象部材1の高さ変化(ΔZ)、つまり、円筒部分12の軸方向(Z方向)の伸び量(ΔZ)として測定され、その測定結果が応力値算出部(不図示)に入力される。これにより、応力値算出部は、トレパニング加工の前後における残留応力値の算出において、元孔10の長手方向の長さ変化(伸び量ΔZ)を考慮することが可能となる。なお、各測定点■、▲の点数は4点に限らず、2点以上であれば何点でも良い。
次に、図3を参照しながら、トレパニング加工の前後における元孔10の軸の傾き(倒れ量Δθ)の測定方法について説明する。図3(a),(b)は、トレパニング加工の前後における元孔10の軸の傾き(倒れ量Δθ)の測定方法を説明するための図である。図3(c)は、トレパニング加工後において円筒部分12が傾斜した状態の一例を示す図である。ここで、図3(b)は、測定対象部材1の高さ方向(Z方向)から見た元孔10の外形であって、紙面左側に太線で示す円形状は、トレパニング加工前における元孔10の外形を示し、紙面右側に破線で示す円形状は、トレパニング加工後における元孔10の外形を示す。また、図3(a)中の点a、bは、元孔10の内周面において測定対象部材1の上面から紙面下方向(Z軸方向)に深さhの箇所に位置する点であって、図3(b)中の線分abは、元孔10のX方向の直径を示し、線分cdは、元孔10のY方向の直径を示す。なお、深さh[mm]は、2.5mm程度に設定されることが好ましい。なお、図3(a)では図示を省略したが、点c、dも、点a、bと同様に、元孔10の内周面において測定対象部材1の上面から紙面下方向(Z軸方向)に深さhの箇所に位置している。また、図3(b)中の点O、O´は、トレパニング加工前後における元孔10の各中心を示す。中心O、O´の位置座標は、4点a〜dの位置座標を平均することによって取得可能である。本実施形態では、中心O、O´の位置座標に基づき、中心O、O´の位置ズレを見ることで、元孔10の軸の傾き(倒れ量Δθ)が測定される。
図4は、三種類の初期応力場の変化を示したグラフであって、(a)は、一様分布(Uniform distribution)時の初期応力場を示し、(b)は、曲げ応力(Bending distribution)時の初期応力場を示し、(c)は、二次関数分布(Quadric distribution)時の初期応力場を示す。図4(a)〜(c)の縦軸[mm]は、底面からの距離(Distance from bottom of surface)を示し、横軸[MPa]は、負荷応力(Applied stress)を示す。
図8は、面内及び面外における初期応力場の変化を示したグラフである。ここで、図8の縦軸Z´[mm]は、底面からの距離(Distance from bottom of specimen)を示し、横軸[MPa]は、残留応力(Residual stress)を示す。また、図8中の実線で示す曲線は、X方向における応力σxの分布を示し、一点鎖線で示す曲線は、Y方向における応力σyの分布を示し、破線で示す曲線は、Z方向における応力σzの分布を示す。
図10は、部分加熱による複雑な三次元残留応力場でのFEM実験例を説明するための図である。本発明者は、図10に示すように、図中に示す加熱領域(Heating region)を部分加熱することで複雑な三次元残留応力場を発生させることで、本発明に係る残留応力測定方法(MDHD technique)と、iDHD法による残留応力評価方法とを比較実験した。その実験結果を図11に示す。
図12(a)、(b)は、元孔10の軸の傾き(倒れ量Δθ)を測定する方法を説明するための図である。本実験では、図12(a)のパターン1に示すように、測定対象部材1の表面近傍の元孔10を2方向(XY方向)から4つの位置で計測し、その中心位置を割り出した。また、図12(b)のパターン2に示すように、測定対象部材1の表面に当金を装着しておき、元孔10の水平方向(XY方向)の変化量を変位計で読み取っても良い。トレパニング加工前における表面近傍の中心位置と底面の中心位置は同じものとして考えθ=0°とし、トレパニング加工後の底面の中心位置は変わらないものとし、表面近傍の中心位置の変位と深さから、元孔10の軸の傾き(倒れ量Δθ)を測定する。
上記構成によれば、くり抜き加工(トレパニング加工)の前後における元孔10の孔径に加えて、元孔10の長さ変化、及び、軸の傾きを考慮して、測定対象部材の表面および内部の残留応力値が算出されるので、元孔の長さ変化(伸び量(ΔZ))、及び、軸の傾き(倒れ量Δθ)の考慮により、本発明の残留応力測定方法では、(σx、σy、σz、σxy、σyz、σzx)の6成分からなる残留応力成分まで考慮した残留応力測定が可能となる。その結果、これまでの仮定条件では省略されていた三次元の残留応力成分を高精度に測定することができる。
2 ドリル
3 エアプローブ
4 放電加工機
5 タッチプローブ
10 元孔
11 くり抜き孔
12 円筒部分
Claims (6)
- 加工によって測定対象部材に形成された元孔の孔径を測定する工程と、
前記元孔の周辺にくり抜き加工を施した後、前記元孔の孔径を再測定する工程と、
前記くり抜き加工の前後における元孔の形状変化に基づき、前記測定対象部材の表面および内部の残留応力値を算出する工程と、を備えた残留応力測定方法であって、
前記残留応力値の算出工程において、前記元孔の孔径、長さ変化、及び、軸の傾きを考慮することを特徴とする残留応力測定方法。 - 前記元孔の中心軸の周りに等角度おきであって、且つ、前記中心軸から等距離となる位置に複数個設けられた各測定点の前記くり抜き加工の前後における測定結果の平均値に基づき、前記元孔の長さ変化を算出する工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の残留応力測定方法。
- 前記元孔の内周面において前記測定対象部材の上面から予め定められた深さだけ下方向の位置に設けられた点であって、前記元孔の中心軸の周りに等角度おきであって、且つ、前記中心軸から等距離となる位置に複数個設けられた各測定点の前記くり抜き加工の前後における測定結果の平均値に基づき、前記元孔の軸の傾きを算出する工程を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の残留応力測定方法。
- 加工によって測定対象部材に形成された元孔の孔径を測定する孔径測定部と、
前記元孔の周辺にくり抜き加工が施された後に、前記孔径を再測定する孔径再測定部と、
前記くり抜き加工の前後における孔の形状変化に基づき、前記測定対象部材の表面および内部の残留応力値を算出する応力値算出部と、を備えた残留応力測定装置であって、
前記応力値算出部が、前記残留応力値の算出において、前記元孔の孔径、長さ変化、及び、軸の傾きを考慮することを特徴とする残留応力測定装置。 - 前記元孔の中心軸の周りに等角度おきであって、且つ、前記中心軸から等距離となる位置に複数個設けられた各測定点の前記くり抜き加工の前後における測定結果の平均値に基づき、前記元孔の長さ変化を算出する長さ変化算出部を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の残留応力測定装置。
- 前記元孔の内周面において前記測定対象部材の上面から予め定められた深さだけ下方向の位置に設けられた点であって、前記元孔の中心軸の周りに等角度おきであって、且つ、前記中心軸から等距離となる位置に複数個設けられた各測定点の前記くり抜き加工の前後における測定結果の平均値に基づき、前記元孔の軸の傾きを算出する傾き算出部を更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の残留応力測定装置。
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