JP6260198B2 - 伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6260198B2
JP6260198B2 JP2013224349A JP2013224349A JP6260198B2 JP 6260198 B2 JP6260198 B2 JP 6260198B2 JP 2013224349 A JP2013224349 A JP 2013224349A JP 2013224349 A JP2013224349 A JP 2013224349A JP 6260198 B2 JP6260198 B2 JP 6260198B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
rolling
ferrite
martensite
cooling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013224349A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015086415A (ja
Inventor
武 豊田
武 豊田
力 岡本
力 岡本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2013224349A priority Critical patent/JP6260198B2/ja
Publication of JP2015086415A publication Critical patent/JP2015086415A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6260198B2 publication Critical patent/JP6260198B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

本発明は,伸びと穴拡げ性のバランスに優れた引張強度590MPa以上の高強度熱延鋼板及びその製造方法に関するものである。
近年,自動車の燃費および衝突安全性の向上を目的に,高強度鋼板適用による車体軽量化が盛んに取り組まれている。高強度鋼板の適用に際してはプレス成型性を確保することが重要となる。Dual Phase鋼板(以下DP鋼)は,軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相の複合組織で構成されており,著しく硬度の異なる両相の界面からボイドが発生して割れを生じるため穴拡げ性に劣る問題があり,足廻り部品等の高い穴拡げ性が要求される用途には不向きであった。
これに対し,穴拡げ性と延性を両立する技術として特許文献1ではフェライトとベイナイトの混合組織による鋼板が提案されている。特許文献2ではマルテンサイトの組織分率を3%以上,10%未満にし,その強度代替としてフェライトをTiとNbで析出強化させることで伸びと穴拡げ性のバランスに優れた熱延鋼板が提案されている。
特開平6−293910号公報 特開2011−184788公報
近年,自動車のさらなる軽量化指向,部品の複雑化等を背景に更に高い穴拡げ性と伸びを有する高強度熱延鋼板が求められている。
特許文献1に記載の発明は,穴拡げ性に優れたベイナイト主体の組織としているが,伸び特性を担保する組織がないために,伸び特性に劣っていた。そのため、高い穴拡げ性と伸びの両立が必要な部材には対応しきれていない。
特許文献2に記載の発明は,フェライトの析出強化のためにTiやNbを添加しているため熱間圧延時に集合組織が発達し,フェライトの塑性異方性が強いため穴拡げ性が十分でなく、高い穴拡げ性と伸びの両立が必要な部材には対応しきれていない。
本発明は,上記の要求に対して加工性を満足することが可能な伸びと穴拡げ性のバランスに優れた引張強度590MPa以上の高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
これまでもDP鋼の材質改善に向けてマルテンサイトとフェライトの界面に生じるボイドの発生を抑制するために様々な取り組みがなされている。本発明者らは,熱間仕上げ圧延後の冷却中に生成するフェライトの核生成サイトや粒成長挙動に着目し,鋭意検討した結果、マルテンサイト粒を被覆するフェライト粒の平均粒径とアスペクト比が材質改善に重要であることを見出した。具体的には,最終段の1つ前のスタンドでオーステナイト組織を再結晶させ,その後軽圧下による微量のひずみをオーステナイトの粒界に導入する。これにより,オーステナイトの粒界から核生成するフェライトの生成頻度が高まり,微細でポリゴナルなフェライトが生成する。その結果,仕上げ圧延終了後の強制冷却に引き続いて設ける自然放冷中に残留するオーステナイトの周囲には微細なフェライトが形成され,変態後のマルテンサイトを被覆することが可能なことを見出した。
このような組織による材質の改善理由は明らかではないが,マルテンサイトの周囲を微細なフェライトが覆うことで応力集中が緩和され,DP鋼の加工性を劣化させている原因の一つであるマルテンサイトとフェライトの界面に生じるボイドを抑制しているからだと考えられる。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり,本発明の要旨するところは以下の通りである。
(1)質量%で
C :0.02%以上,0.30%以下,
Si:2.0%以下,
Mn:0.5%以上,3.0%以下,
P :0.1%以下,
S :0.01%以下,
Al:0.01%以上,1.0%以下,
N :0.01%以下,
Ti:0.01%以上,0.20%以下
残部Feおよび不可避的不純物からなり、面積分率で、マルテンサイト相の組織分率20%以上,60%以下,フェライト相の組織分率40%以上の二相組織であり,フェライト粒によるマルテンサイト粒の被覆率が30%超で、上記フェライト粒のアスペクト比が0.5以上、1.0以下であり、上記フェライト粒の平均粒径が上記マルテンサイト粒の平均粒径以下であることを特徴とする伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板。
ここで、フェライト粒によるマルテンサイト粒の被覆率とは、全マルテンサイト粒界長さを100としたとき、フェライト粒によって占有されているマルテンサイト粒界部分の長さ比率を百分率で表示したものである。
(2)さらに,質量%で
Nb:0.01%以上,0.10%以下,
Ca:0.0005%以上,0.0030%以下
Mo:0.02%以上,0.5%以下,
Cr:0.02%以上,1.0%以下,
の1種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板。
(3)上記(1)又は(2)に記載の成分の連続鋳造スラブを1200℃以上に加熱し、仕上げ圧延で圧延を実施する最終スタンド前のスタンドでの圧延を960℃以上、1100℃以下で、圧延率20%以上で行い、スタンド間で強制冷却を施して最終スタンドでの圧延をAr3点以上、950℃以下で、且つ、圧延率5%以上、20%以下で行い,圧延終了後3秒以内に強制冷却を開始して30℃/秒以上の冷却速度で600℃以上、750℃以下まで冷却し,3秒以上、10秒以下の自然放冷を施したのち,30℃/秒以上の冷却速度で200℃以下まで冷却し,巻き取ることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば,伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板を提供することができるため,高い加工を要するプレス部品に適した高強度熱延鋼板を提供することができる。また,本発明の高強度熱延鋼板は自動車などの車体の軽量化,部品の一体成型化,加工工程の短縮が可能であり,燃費の向上,製造コストの低減を図ることができ,工業的価値が高いものである。
被覆率を説明するイメージ図
本発明は,熱間仕上げ圧延後の冷却中に生成するフェライトの核生成サイトや粒成長挙動に着目し,マルテンサイト粒を被覆するフェライト粒の平均粒径とアスペクト比を制御することで伸びと穴拡げ性のバランスに優れるものである。マルテンサイト相の組織分率20%以上,60%以下,フェライト相の組織分率40%以上の二相組織であり,フェライト粒によるマルテンサイト粒の被覆率が30%超で、上記フェライト粒のアスペクト比が0.5以上、1.0以下であり、上記フェライト粒の平均粒径が上記マルテンサイト粒の平均粒径以下であることを特徴とする。製法としては,高温で高い圧延率によってオーステナイト組織を再結晶させ,その後20%以下の軽圧延により微量のひずみをオーステナイト粒界に導入することによって、初析フェライトの形状と配列を制御することができる。
以下に本発明の個々の構成要件について詳細に説明する。まず,本発明の成分の限定理由について述べる。成分含有量についての%は質量%を意味する。
Cは本発明の強度を決める重要な元素である。目的の強度を得るためには0.02%以上含有する必要がある。好ましくは0.04%以上とする。しかし,0.30%超含有していると靭性を劣化させるため,上限を0.30%とする。
Siは固溶強化元素として強度上昇に有効であるが,靭性劣化を引き起こすため,2.0%以下とする。好ましくは1.0%以下である。Siは含有しなくてもよい。
Mnは焼入れ性及び固溶強化元素として強度上昇に有効である。目的の強度を得るためには0.5%以上必要である。過度に添加すると靭性の等方性に有害なMnSを生成するため,その上限を3.0%以下とする。
Pは低いほど望ましく,0.1%超含有すると加工性や溶接性に悪影響を及ぼすとともに,疲労特性も低下させるので,0.1%以下とする。
Sは低いほど望ましく,多すぎると靭性の等方性に有害なMnS等の介在物を生成させるため,0.01%以下とする必要がある。厳しい低温靭性が要求される場合には,0.006%以下とすることが好ましい。
Alは脱酸に必要な元素であり、通常0.01%以上添加される。しかし,過剰に添加すると,クラスタ状に析出したアルミナを生成し,靭性を劣化させるため,その上限は1.0%とする。
Nは高温にて粗大なTi窒化物を形成し,靭性を劣化させる。したがって0.01%以下とする。
Tiはフェライトを析出強化させるとともに,狙いのフェライト分率を得るために必要な元素である。優れた伸びと穴拡げ性のバランスを得るためには0.01%以上添加することが必要である。しかしながら,0.20%超添加するとTiNを起因とした介在物が生成し,穴拡げ性が劣化するため,Tiの含有量は0.01%以上,0.20%以下とする。
要求特性を満たすために必須ではないが,製造ばらつきを低減させたり,強度をより向上させるために下記の元素を添加することが好ましい。
Nbは熱延鋼板の結晶粒径を小さくすることと,NbCにより強度を高めることができる。Nbの含有量が0.01%以上でその効果が得られる。一方,0.10%超ではその効果は飽和するため,その上限を0.10%とする。
Caは溶鋼脱酸に微細な酸化物を多数分散させ,組織微細化のために好適な元素であるとともに,溶鋼の脱硫のために鋼中Sを球形のCaSとして固定し,MnSなどの延伸介在物の生成を抑制して穴拡げ性を向上させる元素である。これらの効果は添加量が0.0005%から得られるが,0.0030%で飽和するため,Caの含有量は0.0005%以上,0.0030%以下とする。
Moはフェライトの析出強化として有効な元素である。この効果を得るためには0.02%以上の添加が望ましい。ただし,多量の添加はスラブの割れ感受性が高まりスラブの取り扱いが困難になるため,その上限を0.5%とする。
Crは鋼板強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るためには0.02%以上の添加が必要である。ただし,多量の添加は延性が低下するため上限を1.0%とする。
次に,本発明の鋼板の結晶組織について説明する。
複合組織鋼は軟質で伸びに優れたフェライト中に,マルテンサイトなどの硬質組織を分散させた鋼板であり,高強度でありながら高い伸びを実現している。しかしながら,硬質組織近傍に高いひずみが集中し,亀裂伝搬速度が速くなるため穴拡げ性が低くなる欠点がある。そのため、フェライトとマルテンサイトの相分率やマルテンサイトのサイズに関わる検討は多くされているが、フェライト粒の形状やフェライト平均粒径とマルテンサイト平均粒径のサイズ比、フェライト粒の配列状態を積極的に利用して材質改善の可能性を検討した例は少ない。本発明はこれらの形状、サイズ比、配列を使って効率的に高強度で穴拡げ性と伸びのバランスを向上させるものである。組織分率としては、鋼板組織の面積分率でマルテンサイト相を20%以上、60%以下含有し、フェライト相を40%以上含有する必要がある。特に伸びと穴拡げ性のバランスが優れるマルテンサイト相の分率は30%以上、40%以下である。マルテンサイト相の分率が20%未満になると、穴拡げ加工時の歪がマルテンサイト粒に集中し、ボイドを形成しやすくなるため、穴拡げ性が低下する。マルテンサイト相の分率が60%超となると延性の乏しいマルテンサイト相主体となるため伸びが低下する。フェライト相の分率が40%未満ではフェライト粒による歪の緩和や加工性が確保できないため、伸びと穴拡げ性のバランスが低下する。
本発明において、もっとも重要な特徴のひとつがフェライトの配列である。本発明においてフェライトはマルテンサイト粒を取り囲む形に配列する。このとき、図1に示すようにマルテンサイト粒界のうち、フェライト粒によって占有されている部分の全マルテンサイト粒界長さに対する比率を被覆率と定義する。フェライト粒によるマルテンサイト粒の被覆率が30%を超えるとフェライトの連結性が高まり、加工時に生じるボイドの発生を抑制することができ、伸びと穴拡げ性のバランスが向上する。より厳しい加工を受ける成形性においては50%以上となることが望ましい。
さらに、フェライト粒のアスペクト比(短径/長径比)は0.5以上、1.0以下であることが必要である。アスペクト比が0.5未満だとマルテンサイト粒に沿った形状となり、割れを誘発し、加工性が劣化する。また、このフェライトの平均粒径はマルテンサイトの平均粒径以下であることが必要である。これは、フェライト平均粒径がマルテンサイト平均粒径よりも大きい場合、フェライトとマルテンサイト界面で歪によるボイドが生成しやすく、加工性が劣化するためである。
次に製造方法について説明する。
本発明の高強度熱延鋼板は、本発明の成分を有する連続鋳造スラブを1200℃以上に加熱し、仕上げ圧延で圧延を実施する最終スタンド前のスタンドでの圧延を960℃以上、1100℃以下で、圧延率20%以上で行い、スタンド間で強制冷却を施して最終スタンドでの圧延をAr3変態点以上、950℃以下で、且つ、圧延率5%以上、20%以下で行い、圧延終了後3秒以内に強制冷却を開始して30℃/秒以上の冷却速度で600℃以上、750℃以下まで冷却し,3秒以上、10秒以下の自然放冷を施したのち,30℃/秒以上の冷却速度で200℃以下まで冷却し,その温度で巻取り処理を行うことにより達成できる。
上記スラブは熱延の前に、均質化やTi炭窒化物の溶解の必要がある。これを行う際、連続鋳造のスラブを再加熱する。再加熱の温度が、1200℃未満では、均質化、溶解とも不十分となり、強度の低下や加工性の低下を起こす。一方で、1350℃を超えると、製造コスト、生産性が低下すること、また、初期のオーステナイト粒径が大きくなることで最終的に混粒になりやすくなる。そこで、1200℃以上とする必要があり、1350℃未満が望ましい。
最終スタンド前のスタンドでの圧延後、最終スタンドまでの間に再結晶率を高めることで被覆率を高めることができる。これを達成するためには最終スタンド前のスタンドにおける圧延を960℃以上で行う。圧延温度が高すぎるとオーステナイト粒径が粗大化し、フェライト変態が急激に遅延され、フェライト分率の確保が困難になるため、上限の圧延温度は1100℃とする。
最終スタンド前のスタンドでの圧延率は20%以上とする。これにより、再結晶率を上記温度で高めることができる。上限は特に設けないが、設備能力や形状の観点から50%以下であることが好ましい。
その後、最終スタンドで圧延を行う。最終スタンドでの圧延温度が高いと圧延によって導入するひずみが回復し、フェライトの配列制御が困難になる。そのため、最終スタンドでの圧延温度は950℃以下であることが重要となる。より好ましくは900℃以下である。最終スタンドの圧延温度を確保するため、スタンド間で強制冷却を施して目的の温度を確保する。ただし、最終スタンドの圧延温度がAr3点を下回ると加工フェライトが残ることで伸びが著しく低下するため、圧延温度の下限はAr3点とする。尚、前記最終スタンド前のスタンドは、例えば最終スタンドの前段スタンドであっても、最終スタンドの前々スタンドであってよく、上記最終スタンド前のスタンドを最終スタンドの前々段スタンドとした場合、最終スタンドの前段のスタンドで圧延を実施しないで前々段のスタンドでの圧延率を20%以上とし、2つのスタンド間または2つのスタンド間の何れか一方のスタンド間で強制冷却を施して最終スタンドの圧延温度を確保する。
最終スタンドの圧延率は5%以上、20%以下とする。この圧延率は再結晶したオーステナイトの粒界にひずみを与え、フェライト粒の形態制御と被覆率を高めるために有効である。5%未満ではオーステナイト粒界に与えるひずみが不十分であり、被覆率を高めることができず、穴拡げ性が低下する。一方、20%超ではフェライトのアスペクト比が低くなり、穴拡げ性が劣化する。また、最終スタンドでの圧延はフェライト粒の核生成サイトを分散させ、細かくする。最終スタンドの圧延率を5%以上とすることでフェライト粒径をマルテンサイト粒径以下に制御することができる。なお、フェライト粒径とマルテンサイト粒径の観点からは圧延率の上限は特にない。
圧延終了後はしかるべく速やかに強制冷却を行った方がよい。加工終了から強制冷却開始までの間はひずみが回復し、粒成長が起こることで変態によって生成するフェライト粒、オーステナイト粒とも粗大になりやすい。さらに、粒界に導入したひずみが減少するため、フェライト粒の被覆率が低下する。冷却開始までのひずみの回復量は圧延温度や圧延率によって変化するが、加工終了から強制冷却開始までの時間が3秒以内であれば完全に回復することを防ぐことができる。圧延によるひずみを効率的に利用するには1秒以内であることが好ましい。圧延終了後、一次冷却として冷却速度30℃/s以上にて600℃以上、750℃以下に冷却し、3秒以上、10秒以下の自然放冷(以下「中間空冷」と言う)を行う。この間にフェライト生成が起こり、Cの拡散により、オーステナイトへのC濃化が起こる。このフェライトの生成により延性が向上する上、オーステナイトへ濃化したCはその後の強制冷却によりマルテンサイトの強度に寄与するため重要である。冷却速度が30℃/s未満では、オーステナイトの粗大化を引き起こし、中間空冷時のフェライト変態が遅延され、目的のフェライト分率が得られなくなる。中間空冷開始温度が750℃を超えると、フェライト率が十分に取れなくなる上、粒が大きくなりすぎ、最終的なマルテンサイトも大きくなりやすい。中間空冷開始温度が600℃未満、または、中間空冷時間が3秒未満では所定のフェライト分率が得られず、マルテンサイト率も高くなる。一方で中間空冷時間が10秒を超えるとマルテンサイト率が低くなる。マルテンサイト分率を確保する観点では8秒以下とすることが望ましい。
Cの濃化したオーステナイトをマルテンサイト変態させるためには中間空冷後に二次冷却として200℃以下まで冷却し、巻き取る。このときの冷却速度は30℃/s以上必要である。巻取温度が200℃を超えると巻取り中にベイナイトやパーライト相が生成し伸びが低下する。冷却速度が30℃/s未満のときは冷却中にベイナイトやパーライト相が生成し、フェライトとマルテンサイトの複合組織が得られなくなる。
表1に示す成分を含有する鋼を転炉にて溶製し,連続鋳造にて厚み230mmのスラブとした。その後,スラブを1200℃〜1250℃の温度に加熱し,粗圧延,仕上圧延を行い,一次冷却、中間空冷、二次冷却後に巻取りを行い,熱延鋼板を製造した。
表2には,用いた鋼種記号と仕上圧延条件,鋼板の板厚を示す。表2において,「F5圧延率」は最終スタンド前の前段スタンドにおける圧延率,「FT5」は最終スタンド前の前段スタンドの圧延温度,「F6圧延率」は最終スタンドの圧延率,「FT6」は最終スタンドの圧延温度,「S冷却量」は最終スタンドの前段スタンドと最終スタンド間での冷却量、「冷却開始」は仕上圧延を終了してから一次冷却開始までの時間、「一次冷却」は仕上圧延を終了してから中間空冷開始温度までの平均冷却速度,「中間温度」は一次冷却後の中間空冷開始温度,「中間時間」は一次冷却後の中間空冷時間,「二次冷却」は中間空冷後から巻き取るまでの平均冷却速度,「巻取温度」は二次冷却終了後の温度である。
このようにして得られた鋼板について光学顕微鏡を用いてフェライト,マルテンサイトの組織分率、平均粒径とフェライト粒の形状測定,被覆率を調査した。
鋼板のフェライトの組織分率及び平均粒径については,ナイタール腐食後に光学顕微鏡を用いて500×500μmの視野で画像解析を用いて面積率及び平均粒径を求めた。マルテンサイトの組織分率及び平均粒径はレペラー腐食後に光学顕微鏡を用いて500×500μmの視野で画像解析を用いて面積率及び平均粒径を求めた。
フェライトのアスペクト比については、各フェライト粒の(短辺)/(長辺)の平均値を求めた。
鋼板の引張試験については,鋼板の圧延幅方向(C方向)にJIS5号試験片を採取し,降伏強度:YP(MPa),引張強度:TS(MPa),伸び:EL(%)を評価した。
穴拡げ率:λ(%)については,ISO16630で規定する方法によって評価を行った。
伸びと穴拡げ性のバランスとして、下記の式を満たすものをバランスに優れているものとした。
(TS×El×λ)>2000 GPa・%・%
表2に得られた組織と材質の評価結果を示す。表2において、「各組織の面積率」はフェライトとマルテンサイトの面積分率、「α粒径」「M粒径」はそれぞれフェライトとマルテンサイトの平均粒径、「α/M」はフェライト平均粒径/マルテンサイト平均粒径、「アスペクト比」はフェライト粒のアスペクト比(短径/長径比)、「被覆率」は全マルテンサイト粒界長さを100としたとき、フェライト粒によって占有されているマルテンサイト粒界部分の長さ比率を百分率で表示したものである。
表2に示すように本発明例は引張強度が590MPa以上で、フェライトの組織分率40%以上、かつマルテンサイトの組織分率が20%以上、60%以下であり、フェライト相によるマルテンサイト粒の被覆率が30%超であることを特徴とし、被覆しているフェライトのアスペクト比が0.5以上、1.0以下であり、平均粒径がマルテンサイト粒以下であり、伸びと穴拡げ性のバランスに優れている。
これに対して、比較例2は中間空冷温度が高く、フェライト変態が進まなかったためにフェライト相の組織分率が40%未満となっており、さらに粗大なフェライトが形成されたため、フェライト粒がマルテンサイト粒よりも大きくなっている。また、冷却開始時間が3秒超となったため、マルテンサイト粒の被覆率が30%以下となっている。
比較例5は最終スタンドの圧延率が5%未満のため、被覆率が低く、伸びと穴拡げ性のバランスが劣位である。
比較例8は最終スタンドの圧延温度が950℃超となっているため、オーステナイト組織の粗大化が進み、変態後のフェライト平均粒径が粗大化しているとともに、冷却開始時間が3秒超となったためにオーステナイト粒界の転位密度が十分に得られず、被覆率が低くなり、伸びと穴拡げ性のバランスが劣位である。
比較例12は中間空冷時間が3秒未満のため、フェライト変態が十分に進まなかったため、目的の組織分率が得られず、伸びと穴拡げ性のバランスが劣位である。
比較例16は中間空冷時間が10秒超のため、マルテンサイトの組織分率が十分に得られていない。さらに、フェライトの粗大化も進んだためにフェライト平均粒径がマルテンサイト平均粒径よりも大きくなり、伸びが劣位である。
比較例17は中間空冷温度が650℃未満のため、フェライトの組織分率が得られず、伸びと穴拡げ性のバランスが劣位である。
比較例20は最終スタンドの圧延率が20%超であり、フェライトのアスペクト比が0.5未満となったため、伸びと穴拡げ性のバランスが劣位である。
比較例24は最終スタンド前の圧延率が20%未満のため、オーステナイトの再結晶が十分でなかったために被覆率が低く、伸びと穴拡げ性のバランスが劣位である。
比較例29はMnが成分上限を超えており、MnS延伸介在物の生成により、熱延条件が発明範囲内であっても目的の組織分率が得られず、伸びと穴拡げ性のバランスが劣位である。
比較例30はTiが成分下限を下回っており、フェライト変態が速く、マルテンサイト分率を確保できなかったために目的の組織分率が得られず、伸びと穴拡げ性のバランスが劣位である。
尚、本実施例は最終スタンドと、最終スタンドの前段スタンドで圧延を行ったが、最終スタンドの前段スタンドで圧延を行うことなく前々段スタンドで圧延を行い、最終スタンドと前段スタンド、前段スタンドと前々段スタンドの2つのスタンド間またはいずれか一方のスタンド間で強制を施しても同様の結果を得ることができる。

Claims (3)

  1. 質量%で
    C :0.02%以上,0.30%以下,
    Si:2.0%以下,
    Mn:0.5%以上,3.0%以下,
    P :0.1%以下,
    S :0.01%以下,
    Al:0.01%以上,1.0%以下,
    N :0.01%以下,
    Ti:0.01%以上,0.20%以下、
    残部Feおよび不可避的不純物からなり、面積分率で、マルテンサイト相の組織分率20%以上、60%以下,フェライト相の組織分率40%以上の二相組織であり,フェライト粒によるマルテンサイト粒の被覆率が30%超で、上記フェライト粒のアスペクト比が0.5以上、1.0以下であり、上記フェライト粒の平均粒径が上記マルテンサイト粒の平均粒径以下であることを特徴とする伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板。
    ここで、フェライト粒によるマルテンサイト粒の被覆率とは、全マルテンサイト粒界長さを100としたとき、フェライト粒によって占有されているマルテンサイト粒界部分の長さ比率を百分率で表示したものである。
  2. 更に,質量%で
    Nb:0.01%以上,0.10%以下,
    Ca:0.0005%以上,0.0030%以下、
    Mo:0.02%以上,0.5%以下,
    Cr:0.02%以上,1.0%以下,
    の1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の成分の連続鋳造スラブを1200℃以上に加熱し、仕上げ圧延で圧延を実施する最終スタンド前のスタンドでの圧延を960℃以上、1100℃以下で、圧延率20%以上で行い、スタンド間で強制冷却を施して最終スタンドでの圧延をAr3変態点以上、950℃以下で、且つ、圧延率5%以上、20%以下で行い、圧延終了後3秒以内に強制冷却を開始して30℃/s以上の冷却速度で600℃以上、750℃以下まで冷却し、3秒以上、10秒以下の自然放冷を施したのち、30℃/s以上の冷却速度で200℃以下まで冷却し、巻き取ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
JP2013224349A 2013-10-29 2013-10-29 伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 Active JP6260198B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013224349A JP6260198B2 (ja) 2013-10-29 2013-10-29 伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013224349A JP6260198B2 (ja) 2013-10-29 2013-10-29 伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015086415A JP2015086415A (ja) 2015-05-07
JP6260198B2 true JP6260198B2 (ja) 2018-01-17

Family

ID=53049548

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013224349A Active JP6260198B2 (ja) 2013-10-29 2013-10-29 伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6260198B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110785507A (zh) * 2017-10-30 2020-02-11 日本制铁株式会社 热轧钢板及其制造方法
EP3584346A4 (en) * 2017-02-16 2020-08-05 Nippon Steel Corporation HOT ROLLED STEEL SHEET AND ITS MANUFACTURING PROCESS

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2687431C1 (ru) 2015-09-03 2019-05-13 Ниппон Стил Энд Сумитомо Метал Корпорейшн Способ расширения отверстия, формовочный инструмент и формованное изделие
JP6720504B2 (ja) * 2015-11-06 2020-07-08 日本製鉄株式会社 高強度鋼板及びその製造方法
MX2018006061A (es) * 2015-11-19 2018-09-21 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp Lamina de acero laminada en caliente de alta resistencia y metodo de fabricacion de la misma.
CN106119703B (zh) * 2016-06-21 2018-01-30 宝山钢铁股份有限公司 一种980MPa级热轧双相钢及其制造方法
CN109576581A (zh) * 2018-11-30 2019-04-05 宝山钢铁股份有限公司 一种高表面质量、低屈强比热轧高强度钢板及制造方法
WO2024128710A1 (ko) * 2022-12-12 2024-06-20 주식회사 포스코 강판 및 그 제조방법

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3551064B2 (ja) * 1999-02-24 2004-08-04 Jfeスチール株式会社 耐衝撃性に優れた超微細粒熱延鋼板およびその製造方法
JP4543471B2 (ja) * 2000-01-14 2010-09-15 Jfeスチール株式会社 板形状および加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法
JP4605100B2 (ja) * 2006-06-07 2011-01-05 住友金属工業株式会社 高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP5394709B2 (ja) * 2008-11-28 2014-01-22 株式会社神戸製鋼所 耐水素脆化特性および加工性に優れた超高強度鋼板
JP5884714B2 (ja) * 2012-01-31 2016-03-15 Jfeスチール株式会社 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP5761080B2 (ja) * 2012-03-01 2015-08-12 新日鐵住金株式会社 伸びと穴拡げ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3584346A4 (en) * 2017-02-16 2020-08-05 Nippon Steel Corporation HOT ROLLED STEEL SHEET AND ITS MANUFACTURING PROCESS
CN110785507A (zh) * 2017-10-30 2020-02-11 日本制铁株式会社 热轧钢板及其制造方法
CN110785507B (zh) * 2017-10-30 2021-07-30 日本制铁株式会社 热轧钢板及其制造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015086415A (ja) 2015-05-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6260198B2 (ja) 伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法
US10077486B2 (en) High-strength cold-rolled steel sheet and method of manufacturing the same
JP6354271B2 (ja) 低温靭性と均一伸びと穴拡げ性に優れた引張強度780MPa以上の高強度熱延鋼板及びその製造方法
KR101744429B1 (ko) 열연 강판 및 그 제조 방법
JP5821861B2 (ja) 外観に優れ、伸びと穴拡げ性のバランスに優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法
WO2012141263A1 (ja) 局部変形能に優れた高強度冷延鋼板とその製造方法
JP6212956B2 (ja) 曲げ加工性と耐摩耗性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法
JP4161935B2 (ja) 熱延鋼板およびその製造方法
JP5825189B2 (ja) 伸びと穴拡げ性と低温靭性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法
JP4304473B2 (ja) 超微細結晶粒熱延鋼板の製造方法
JP5825082B2 (ja) 伸び及び伸びフランジ性に優れた高降伏比高強度冷延鋼板とその製造方法
WO2016092733A1 (ja) 高強度冷延鋼板及びその製造方法
JP5521444B2 (ja) 加工性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP6460258B2 (ja) 高強度熱延鋼板及びその製造方法
JP6879378B2 (ja) 熱延鋼板及びその製造方法
US10513749B2 (en) Hot-rolled steel sheet and production method of therefor
JP5878829B2 (ja) 曲げ性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP5413276B2 (ja) 熱延鋼板およびその製造方法
JPWO2019216269A1 (ja) 熱延鋼板及びその製造方法
JP2008266792A (ja) 熱延鋼板
JP2011179050A (ja) 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板
JP2008138231A (ja) 穴広げ性に優れた熱延複合組織鋼板およびその製造方法
WO2018168618A1 (ja) 高強度冷延鋼板とその製造方法
JP6384703B1 (ja) 高強度冷延鋼板とその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160603

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170331

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170509

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170614

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171114

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171127

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6260198

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350