JP2011179050A - 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 - Google Patents
伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2011179050A JP2011179050A JP2010042914A JP2010042914A JP2011179050A JP 2011179050 A JP2011179050 A JP 2011179050A JP 2010042914 A JP2010042914 A JP 2010042914A JP 2010042914 A JP2010042914 A JP 2010042914A JP 2011179050 A JP2011179050 A JP 2011179050A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ferrite
- less
- phase
- hard
- elongation
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Abstract
【解決手段】成分組成が、質量%で、C:0.05〜0.30%、Si:3.0%以下、Mn:0.1〜5.0%、P:0.1%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.10%、V:0.10〜0.50%、残部:主として鉄からなり、組織が面積率で、α:10〜80%、残留γ+M:5%未満、残部:硬質第2相からなり、α粒径が2μm以下であり、かつ、αと界面を接する硬質第2相中に存在する0.1μm以上のθ粒子は3個/μm2以下であり、α中のV含有析出物のうち、8nm以上20nm未満の粒子が、V含有析出物の全数に対して、個数ベースで60%以上を占め、かつ、αおよび硬質第2相中のV含有析出物のうち、20nm以上の粒子が、1μm2当たり3個以下である冷延鋼板。
【選択図】なし
Description
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.05〜0.30%、
Si:3.0%以下(0%を含む)、
Mn:0.1〜5.0%、
P:0.1%以下(0%を含む)、
S:0.010%以下(0%を含む)、
Al:0.001〜0.10%、
V:0.10〜0.50%
を満足するように含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
軟質第1相であるフェライトを面積率で10〜80%含むとともに、残留オーステナイト、マルテンサイト、および残留オーステナイトとマルテンサイトの混合組織を、面積率の合計で5%未満(0%を含む)含み、残部が硬質第2相である、焼き戻しマルテンサイトおよび/または焼き戻しベイナイトからなる組織を有し、
前記フェライトの平均粒径が円相当直径で2μm以下であり、
前記フェライトと界面を接する前記硬質第2相中に存在する析出物の分布状態が、
円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子は、前記硬質第2相1μm2当たり3個以下で、
前記フェライト中に析出物の形で存在するVを含む粒子のうち、円相当直径8nm以上20nm未満の粒子が、Vを含む粒子の全数に対して、個数ベースで60%以上を占め、
かつ、前記フェライトおよび硬質第2相中に析出物の形で存在するVを含む粒子のうち、円相当直径20nm以上の粒子が、1μm2当たり3個以下である
ことを特徴とする伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板である。
成分組成がさらに、Tiおよび/またはNbを、下記式1〜3を同時に満足するように含み、
かつ、前記フェライト中に析出物の形で存在するV、TiおよびNbの1種または2種以上を含む粒子のうち、円相当直径8nm以上20nm未満の粒子が、前記V、TiおよびNbの1種または2種以上を含む粒子の全数に対して、個数ベースで60%以上を占め、
かつ、前記フェライトおよび前記硬質第2相中に析出物の形で存在するV、TiおよびNbの1種または2種以上を含む粒子のうち、円相当直径20nm以上の粒子が、1μm2当たり3個以下である、
請求項1に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板である。
式1:log([%Ti]×[%C])<−1.6
式2:log([%Nb]×[%C])<−2.0
式3:([%V]/51+[%Ti]/48+[%Nb]/93)×51≦0.50%
ここに、[%X]は元素Xの含有量(質量%)を意味する。
成分組成がさらに、
Cr:0.01〜1.0%
を含むものである請求項1または2に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板である。
成分組成がさらに、
Mo:0.02〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%の1種または2種以上
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板である。
成分組成がさらに、
Ca:0.0005〜0.01%、および/または、
Mg:0.0005〜0.01%
を含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板である。
上述したとおり、本発明鋼板は、上記特許文献2〜5に開示された鋼板と近似の複相組織をベースとするものであるが、特に、フェライトおよび硬質第2相中に存在するMX型化合物の存在状態が制御されている点で、上記特許文献2〜5に開示された鋼板とは相違している。
フェライト−焼戻しマルテンサイト等の複相組織鋼では、変形は主として変形能の高いフェライトが受け持つ。そのため、フェライト−焼戻しマルテンサイト等の複相組織鋼の伸びは主としてフェライトの面積率で決定される。
強度を確保しつつ脆化を防止するには、フェライトを除く領域を、主としてマルテンサイトおよび/またはベイナイトが焼戻しされた組織(焼戻しマルテンサイトおよび/または焼戻しベイナイトからなる組織)にすることが有効である。その際、残留オーステナイトや焼戻しされていないマルテンサイト(以下、単に「マルテンサイト」の表記は、焼戻しされていないマルテンサイトを意味するものとする。)が存在すると、その周囲に応力が集中し、破壊に至りやすくなるので、残留オーステナイト、マルテンサイトおよびそれらの混合組織をできるだけ少なくすることで伸びフランジ性の劣化を防止できる。
フェライトを微細化させることにより、フェライトと硬質第2相の界面が増加し、応力が分散されるため、伸びフランジ性が改善される。
フェライトと界面を接する硬質第2相中に析出したセメンタイトは、破壊の起点になり得る。セメンタイト粒子が粗大になると変形時の応力集中が過大となり伸びフランジ性が確保できなくなるため、伸びフランジ性を確保するためには、セメンタイト粒子のサイズと存在密度を制御する必要がある。
Vを含む析出物のサイズ制御は、本発明の効果を発揮する上で最も重要な要件である。軟質相であるフェライト中にVを含む析出物を微細に分散させることにより、フェライトを析出強化させることができる。析出強化量は、下記式4で表される。析出粒子の体積率が大きいほど、また、析出粒子のサイズが小さいほど析出強化量は増加する。フェライトが強化されることにより、複相鋼全体の強度が上昇し、また、フェライトと硬質第2相の強度差が低減され、フェライト−硬質第2相界面での破壊が抑制されることにより伸びフランジ性が改善される。ただし、析出物サイズがある臨界値を下回ると、転位により析出物がせん断されるため、析出強化量は飽和する上、析出粒子のせん断が起こった特定のすべり面を転位が移動しやすくなり、不均一な変形に起因した延性の低下が起こる。
VCなどのVを含む析出物は、母相に比べて剛性および臨界せん断応力が非常に高いため、析出物の周囲が変形しても析出物自体は変形しにくいため、20nm以上のサイズになると母相と析出物の界面に大きな歪が生じ、破壊が発生するようになる。このため、20nm以上のVを含む粗大な析出物が多量に存在すると伸びフランジ性が劣化する。したがって、Vを含む粗大な析出物の存在密度を制限することで、伸びフランジ性を改善できる。
まず、各相の面積率については、各供試鋼板を鏡面研磨し、3%ナイタール液で腐食して金属組織を顕出させた後、概略40μm×30μm領域5視野について倍率2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察し、点算法で1視野につき100点の測定を行ってフェライトの面積を求めた。また、画像解析によってセメンタイトを含む領域を硬質第2相とし、残りの領域を、残留オーステナイト、マルテンサイト、および、残留オーステナイトとマルテンサイトの混合組織とした。各領域の面積比率より各相の面積率を算出した。
上記面積率の測定の際に測定した各フェライト粒の面積から、円相当直径を算出して求めた。
セメンタイトのサイズおよびその存在密度については、各供試鋼板の抽出レプリカサンプルを作成し、2.4μm×1.6μmの領域3視野について倍率50000倍の透過型電子顕微鏡(TEM)像を観察した。
各供試鋼板を鏡面に研磨し、3%ナイタール液で腐食して金属組織を顕出させた後、80μm×60μm領域10視野中に、それぞれ50μmの線分を20本引き、それらの線分と交わるフェライト粒界の数Nαおよびフェライト−硬質第2相界面の数Nα−TMを測定する。そして、フェライトの存在形態の評価指標として、粒界および界面に占めるフェライト粒界の割合Nα/(Nα+Nα−TM)を求める。Nα/(Nα+Nα−TM)の値が小さいということは、フェライト粒子とフェライト粒子が連続している領域が少ないこと、つまり、フェライト粒子が連続せず、硬質第2相に囲まれていることを示している。
C:0.05〜0.30%
Cは、硬質第2相の面積率および該硬質第2相中に析出するセメンタイト量に影響し、強度、伸びおよび伸びフランジ性に影響する重要な元素である。0.05%未満では強度が確保できなくなる。一方、0.30%超では焼入れ時に歪が多量に入ることに加え、セメンタイトの量が多くなり、転位が回復しにくくなるため、伸びおよび伸びフランジ性が低下する。また、溶接性の確保という観点からも、C量は低いほうが望ましいため、0.30%を上限とする。
Siは、焼戻し時におけるセメンタイト粒子の粗大化を抑制する効果を有し、伸びと伸びフランジ性の両立に寄与する有用な元素である。また、固溶強化により、鋼の強化に寄与するため、要望される強度を得るために有用な元素である。3.0%超ではフェライトが脆くなり、TS×Elが低下する。Si含有量の範囲は、好ましくは0.50〜2.5%、さらに好ましくは1.0〜2.2%である。
Mnは、上記Siと同様、焼戻し時におけるセメンタイトの粗大化を抑制する効果を有し、固溶強化に寄与することに加え、硬質第2相の変形能を高めることで、伸びと伸びフランジ性の両立に寄与する。また、焼入れ性を高めることで、硬質第2相が得られる製造条件の範囲を広げる効果もある。0.1%未満では上記効果が十分に発揮されないため、伸びと伸びフランジ性を両立できず、一方、5.0%超とすると逆変態温度が低くなりすぎ、再結晶ができなくなるため、強度と伸びのバランスが確保できなくなる。Mn含有量の範囲は、好ましくは0.5〜2.5%、さらに好ましくは1.2〜2.2%である。
Pは不純物元素として不可避的に存在し、固溶強化により強度の上昇に寄与するが、旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させることで伸びフランジ性を劣化させるので、0.1%以下とする。好ましくは0.05%、さらに好ましくは0.03%以下である。
Sも不純物元素として不可避的に存在し、MnS介在物を形成し、穴拡げ時に亀裂の起点となることで伸びフランジ性を低下させるので、0.005%以下とする。より好ましくは0.003%以下である。
Nも不純物として不可避的に存在し、歪時効により伸びと伸びフランジ性を低下させるので、低いほうが好ましく、0.01%以下とする。
Alは脱酸元素として添加され、介在物を微細化する効果を有する。また、Nと結合してAlNを形成し、歪時効の発生に寄与する固溶Nを低減させることで伸びや伸びフランジ性の劣化を防止する。0.001%未満では鋼中の固溶Nが残存するため、歪時効が起こり、伸びと伸びフランジ性を確保できず、一方、0.1%超では加熱時におけるオーステナイトの形成を阻害するため、硬質第2相の面積率を確保できず、伸びフランジ性を確保できなくなる。
Vは、微細なMX型化合物(炭化物、窒化物、および炭窒化物の総称)を形成し、この微細なMX型化合物が焼鈍の際の加熱時にオーステナイトの成長をピン止めする粒子として作用することで、フェライト粒の微細化に寄与し、熱間圧延後の組織を微細化することにより、伸びフランジ性を高める。V含有量が上記上限値を超えると、粗大なMX型化合物が析出しやすくなり、前述のとおり、穴拡げ時に破壊の起点となるため、伸びフランジ性を劣化させる。また、これらの元素は再結晶を強く抑制する作用を有するため、添加量が上記上限値を超えると、熱間圧延時に加工された組織を焼鈍時に再結晶させることができず、強度と伸びのバランスが確保できなくなる。一方、V含有量が上記下限値を下回ると、上記フェライト粒の微細化効果が十分に得られず、また、前述の析出強化効果が十分に得られないため、強度と伸びのバランスが確保できなくなる。
再掲式1:log([%Ti]×[%C])<−1.6
再掲式2:log([%Nb]×[%C])<−2.0
再掲式3:([%V]/51+[%Ti]/48+[%Nb]/93)×51≦0.50%
ここに、[%X]は元素Xの含有量(質量%)を意味する。
TiおよびNbは、Vと同様、微細なMX型化合物を形成し、この微細なMX型化合物が焼鈍の際の加熱時にオーステナイトの成長をピン止めする粒子として作用することで、フェライト粒の微細化に寄与し、熱間圧延後の組織を微細化することにより、伸びフランジ性を高める。TiおよびNbと炭素との溶解度積が1200℃加熱時(後記[本発明鋼板の好ましい製造方法]の[熱間圧延条件]を参照)における平衡溶解度積より小さくなければ(すなわち、上記式1および2を満たさなければ)、熱間圧延前のスラブの加熱時点で未固溶のTi、Nbが粗大な炭化物として残るため、前述のとおり、穴拡げ時に破壊の起点となり、伸びフランジ性を劣化させる。また、TiおよびNb添加によるV換算合計含有量が上記式3の上限値を超えると、粗大なMX型化合物が析出しやすくなり、伸びフランジ性を劣化させる。また、これらの元素は再結晶を強く抑制する作用を有するため、添加量が上記上限値を超えると、熱間圧延時に加工された組織を焼鈍時に再結晶させることができず、強度と伸びのバランスが確保できなくなる。
Crは、セメンタイトの成長を抑制することで、伸びフランジ性を改善できる有用な元素である。0.01%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮できず、一方、1.0%を超える添加では、粗大なCr7C3が形成されるようになり、伸びフランジ性が劣化してしまう。
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%の1種または2種以上
これらの元素は、固溶強化により成形性を劣化させずに強度を改善するのに有用な元素である。各元素とも0.05%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも1.0%を超える添加ではコストが高くなりすぎる。
これらの元素は、介在物を微細化し、破壊の起点を減少させることによって伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。各元素とも0.0005%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも0.01%を超える添加では逆に介在物が粗大化し、伸びフランジ性が低下する。
上記のような冷延鋼板を製造するには、まず、上記成分組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によりスラブとしてから熱間圧延を行う。
熱間圧延条件としては、スラブを1200℃以上で1200s以上保持し、仕上げ圧延終了温度:900℃以上、好ましくは1000℃以上にて熱間圧延したのち、巻取温度まで70℃/s以上で急冷を行い、マルテンサイトまたはベイナイトまたはこれらの混合物である低温変態相を形成させ、巻取温度:450℃以下で巻き取る。
熱間圧延中にMX型化合物の析出が起こらないようにしたうえで、その後の焼鈍の際の加熱過程でMX型化合物を微細に析出させることで、析出強化により強度を上昇させると同時に、MX型化合物が破壊の起点となることなく組織を微細化することができ、伸びフランジ性を改善できる。
圧延前に高温に保持しなければ、MX型化合物が未固溶のまま析出物として残り、該析出物が破壊の起点となり、伸びフランジ性が劣化する。
仕上げ圧延終了温度が900℃未満では、熱間圧延中にMX型化合物が析出し、その後の焼鈍の際の加熱過程で該析出物が成長して粗大化し、析出強化に寄与する微細析出物の体積率が減少すると同時に、粗大化した該析出物が破壊の起点となり、伸びフランジ性が劣化する。
仕上げ圧延終了後、巻取温度までの冷却速度が70℃/s未満となると、冷却中にフェライト変態が起こり、形成されたフェライト中に析出物が形成され、その後の焼鈍の際の加熱過程で該析出物が粗大化し、析出強化に寄与する微細析出物の体積率が減少すると同時に、粗大化した該析出物が破壊の起点となり、伸びフランジ性が劣化する。
巻取温度が450℃超となると、巻取中に析出物が形成ないし粗大化し、析出強化に寄与する微細析出物の体積率が減少すると同時に、粗大化した該析出物が破壊の起点となり、伸びフランジ性が劣化する。
焼鈍条件としては、550〜600℃の温度域にて60s以上300s以下保持し、600℃〜Ac1の温度域を5℃/s以上、30℃/s以下の速度で昇温し、焼鈍加熱温度:[(8×Ac1+2×Ac3)/10]〜Ac3にて、焼鈍保持時間:300s以下保持した後、焼鈍加熱温度からMs点以下の温度まで50℃/s以上の冷却速度で急冷する。
フェライトの再結晶前にMX型化合物を均一・微細に析出させ、後の再結晶時にフェライト粒を微細化させるためである。滞在時間が60s以下では微細析出が十分に起こらず、再結晶時のフェライト粒微細化が得られない。また、滞在時間が300sを超えると、析出物の粗大化が進行し、所望の強度、伸びフランジ性が得られない。
逆変態前にフェライトの回復・再結晶を促進させ、フェライト中の歪を開放させるためである。5℃/s未満の昇温速度では、MX型化合物の粗大化が進行し、所望の強度、伸びフランジ性が得られない。また、30℃/s超の昇温速度では十分にフェライトの回復・再結晶が進行せず、所望の伸びが得られない。
焼鈍加熱時に面積率20%以上の領域をオーステナイトに変態させることにより、その後の冷却時に十分な量の硬質第2相を変態生成させるためである。
冷却中にオーステナイトからフェライトが形成されることを抑制し、硬質第2相を得るためである。
焼戻し条件としては、上記焼鈍冷却後の温度から焼戻し加熱温度:420℃以上670℃未満までの間を5℃/s超の加熱速度で加熱し、[焼戻し加熱温度−10℃]〜焼戻し加熱温度の間の温度領域に存在する時間(焼戻し保持時間):20s以下とした後、5℃/s超の冷却速度で冷却すればよい。
加熱速度が5℃/s以下の場合、加熱中にセメンタイトの核生成・成長が起こり、粗大なセメンタイトが形成され、伸びフランジ性が確保できなくなる。
焼戻し加熱温度が420℃未満では、フェライトないし硬質第2相中の歪が十分に開放されず、伸びおよび伸びフランジ性が確保できなくなる。一方、焼戻し加熱温度が670℃以上、あるいは、焼戻し保持時間が20sを超えると、硬質第2相の強度が不足するとともに、セメンタイト、MX型化合物が粗大化し、強度および伸びフランジ性が確保できなくなる。
焼戻し加熱温度の好ましい範囲は450℃以上650℃未満、さらに好ましい範囲は450℃以上600℃未満であり、焼戻し保持時間の好ましい範囲は10s以下、さらに好ましくは5s以下である。
Claims (5)
- 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.05〜0.30%、
Si:3.0%以下(0%を含む)、
Mn:0.1〜5.0%、
P:0.1%以下(0%を含む)、
S:0.010%以下(0%を含む)、
Al:0.001〜0.10%、
V:0.10〜0.50%
を満足するように含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
軟質第1相であるフェライトを面積率で10〜80%含むとともに、残留オーステナイト、マルテンサイト、および残留オーステナイトとマルテンサイトの混合組織を、面積率の合計で5%未満(0%を含む)含み、残部が硬質第2相である、焼き戻しマルテンサイトおよび/または焼き戻しベイナイトからなる組織を有し、
前記フェライトの平均粒径が円相当直径で2μm以下であり、
前記フェライトと界面を接する前記硬質第2相中に存在する析出物の分布状態が、
円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子は、前記硬質第2相1μm2当たり3個以下で、
前記フェライト中に析出物の形で存在するVを含む粒子のうち、円相当直径8nm以上20nm未満の粒子が、Vを含む粒子の全数に対して、個数ベースで60%以上を占め、
かつ、前記フェライトおよび硬質第2相中に析出物の形で存在するVを含む粒子のうち、円相当直径20nm以上の粒子が、1μm2当たり3個以下である
ことを特徴とする伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成がさらに、Tiおよび/またはNbを、下記式1〜3を同時に満足するように含み、
かつ、前記フェライト中に析出物の形で存在するV、TiおよびNbの1種または2種以上を含む粒子のうち、円相当直径8nm以上20nm未満の粒子が、前記V、TiおよびNbの1種または2種以上を含む粒子の全数に対して、個数ベースで60%以上を占め、
かつ、前記フェライトおよび前記硬質第2相中に析出物の形で存在するV、TiおよびNbの1種または2種以上を含む粒子のうち、円相当直径20nm以上の粒子が、1μm2当たり3個以下である、
請求項1に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板。
式1:log([%Ti]×[%C])<−1.6
式2:log([%Nb]×[%C])<−2.0
式3:([%V]/51+[%Ti]/48+[%Nb]/93)×51≦0.50%
ここに、[%X]は元素Xの含有量(質量%)を意味する。 - 成分組成がさらに、
Cr:0.01〜1.0%
を含むものである請求項1または2に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成がさらに、
Mo:0.02〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%の1種または2種以上
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成がさらに、
Ca:0.0005〜0.01%、および/または、
Mg:0.0005〜0.01%
を含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010042914A JP5483562B2 (ja) | 2010-02-26 | 2010-02-26 | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010042914A JP5483562B2 (ja) | 2010-02-26 | 2010-02-26 | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011179050A true JP2011179050A (ja) | 2011-09-15 |
JP5483562B2 JP5483562B2 (ja) | 2014-05-07 |
Family
ID=44690878
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010042914A Expired - Fee Related JP5483562B2 (ja) | 2010-02-26 | 2010-02-26 | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5483562B2 (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013099235A1 (ja) * | 2011-12-26 | 2013-07-04 | Jfeスチール株式会社 | 高強度薄鋼板およびその製造方法 |
WO2014136851A1 (ja) * | 2013-03-07 | 2014-09-12 | 株式会社神戸製鋼所 | 成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 |
JP2014185359A (ja) * | 2013-03-22 | 2014-10-02 | Jfe Steel Corp | 高強度鋼板 |
WO2020110795A1 (ja) * | 2018-11-29 | 2020-06-04 | Jfeスチール株式会社 | 高強度鋼板およびその製造方法 |
WO2023162190A1 (ja) * | 2022-02-28 | 2023-08-31 | Jfeスチール株式会社 | 鋼板、部材、それらの製造方法、冷延鋼板用熱延鋼板の製造方法及び冷延鋼板の製造方法 |
Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004232022A (ja) * | 2003-01-30 | 2004-08-19 | Jfe Steel Kk | 伸びおよび伸びフランジ性に優れた二相型高張力鋼板およびその製造方法 |
JP2009102714A (ja) * | 2007-10-25 | 2009-05-14 | Jfe Steel Corp | 加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 |
JP2009242816A (ja) * | 2008-03-28 | 2009-10-22 | Jfe Steel Corp | 高強度鋼板とその製造方法 |
JP2010037652A (ja) * | 2008-07-11 | 2010-02-18 | Kobe Steel Ltd | 耐水素脆化特性および加工性に優れた高強度冷延鋼板 |
WO2010114131A1 (ja) * | 2009-04-03 | 2010-10-07 | 株式会社神戸製鋼所 | 冷延鋼板およびその製造方法 |
-
2010
- 2010-02-26 JP JP2010042914A patent/JP5483562B2/ja not_active Expired - Fee Related
Patent Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004232022A (ja) * | 2003-01-30 | 2004-08-19 | Jfe Steel Kk | 伸びおよび伸びフランジ性に優れた二相型高張力鋼板およびその製造方法 |
JP2009102714A (ja) * | 2007-10-25 | 2009-05-14 | Jfe Steel Corp | 加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 |
JP2009242816A (ja) * | 2008-03-28 | 2009-10-22 | Jfe Steel Corp | 高強度鋼板とその製造方法 |
JP2010037652A (ja) * | 2008-07-11 | 2010-02-18 | Kobe Steel Ltd | 耐水素脆化特性および加工性に優れた高強度冷延鋼板 |
WO2010114131A1 (ja) * | 2009-04-03 | 2010-10-07 | 株式会社神戸製鋼所 | 冷延鋼板およびその製造方法 |
Cited By (11)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013099235A1 (ja) * | 2011-12-26 | 2013-07-04 | Jfeスチール株式会社 | 高強度薄鋼板およびその製造方法 |
JP5413546B2 (ja) * | 2011-12-26 | 2014-02-12 | Jfeスチール株式会社 | 高強度薄鋼板およびその製造方法 |
CN104011242A (zh) * | 2011-12-26 | 2014-08-27 | 杰富意钢铁株式会社 | 高强度薄钢板及其制造方法 |
TWI510641B (zh) * | 2011-12-26 | 2015-12-01 | Jfe Steel Corp | High strength steel sheet and manufacturing method thereof |
CN104011242B (zh) * | 2011-12-26 | 2016-03-30 | 杰富意钢铁株式会社 | 高强度薄钢板及其制造方法 |
WO2014136851A1 (ja) * | 2013-03-07 | 2014-09-12 | 株式会社神戸製鋼所 | 成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 |
JP2014173111A (ja) * | 2013-03-07 | 2014-09-22 | Kobe Steel Ltd | 成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 |
JP2014185359A (ja) * | 2013-03-22 | 2014-10-02 | Jfe Steel Corp | 高強度鋼板 |
WO2020110795A1 (ja) * | 2018-11-29 | 2020-06-04 | Jfeスチール株式会社 | 高強度鋼板およびその製造方法 |
JP6780804B1 (ja) * | 2018-11-29 | 2020-11-04 | Jfeスチール株式会社 | 高強度鋼板およびその製造方法 |
WO2023162190A1 (ja) * | 2022-02-28 | 2023-08-31 | Jfeスチール株式会社 | 鋼板、部材、それらの製造方法、冷延鋼板用熱延鋼板の製造方法及び冷延鋼板の製造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP5483562B2 (ja) | 2014-05-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101744429B1 (ko) | 열연 강판 및 그 제조 방법 | |
JP4977185B2 (ja) | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP5858174B2 (ja) | 低降伏比高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
WO2010114131A1 (ja) | 冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP5400484B2 (ja) | 伸び、伸びフランジ性および溶接性を兼備した高強度冷延鋼板 | |
JP4161935B2 (ja) | 熱延鋼板およびその製造方法 | |
WO2012036309A1 (ja) | 曲げ加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP5363922B2 (ja) | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 | |
JP5466552B2 (ja) | 伸び、伸びフランジ性および溶接性を兼備した高強度冷延鋼板 | |
JP4304473B2 (ja) | 超微細結晶粒熱延鋼板の製造方法 | |
TWI499676B (zh) | 高降伏比高強度冷軋鋼板及其製造方法 | |
WO2014061270A1 (ja) | 高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP5829977B2 (ja) | 降伏強度と成形性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
KR20170107057A (ko) | 고강도 냉연 강판 및 그의 제조 방법 | |
JP6047983B2 (ja) | 伸びおよび伸びフランジ性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法 | |
JP2005290547A (ja) | 延性および伸びフランジ性に優れた高炭素熱延鋼板およびその製造方法 | |
CN111406124A (zh) | 高强度冷轧钢板及其制造方法 | |
JP5302840B2 (ja) | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 | |
JP5483562B2 (ja) | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 | |
JP4712842B2 (ja) | 伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板 | |
JP5530209B2 (ja) | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
WO2020080339A1 (ja) | 薄鋼板およびその製造方法 | |
JP2008266792A (ja) | 熱延鋼板 | |
JP2008013812A (ja) | 高靭性高張力厚鋼板およびその製造方法 | |
JP2016211047A (ja) | 熱延鋼板およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20120828 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20131219 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20140114 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140121 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20140212 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20140214 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5483562 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |