JP2008266792A - 熱延鋼板 - Google Patents

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Mitsuru Yoshida
充 吉田
Toshiro Tomita
俊郎 富田
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Abstract

【課題】高い延性と伸びフランジ性を兼備する熱延鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:2.0%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:0.2%以下、S:0.05%以下、Al:0.005〜0.5%およびN:0.01%以下を含有し、残部がFeと不純物からなり、体積率で40〜95%のベイナイト相とフェライト相とからなる組織を有し、上記フェライトの平均結晶粒径が1.2μm以上で4μm未満である熱延鋼板。上記の成分に加えてTi、Nb、V、B、Cu、Ni、Cr、Mo、Ca、REMおよびMgの中の1種以上を含んでもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車の足廻り部品等の延性およびバーリング加工性が求められる素材として好適な機械特性に優れる微細粒熱延鋼板に関する。
近年、地球環境保護の観点から、自動車のCO2排出量の低減などを目的に自動車車体の軽量化が進められている。軽量化手段の一つとして車体部材の薄肉化がある。そのために高強度鋼板の使用が増加し、その鋼板も更なる高強度化の傾向にある。
自動車用高強度鋼板としては、高強度であることに加えて、多様な部品形状に加工するために優れた成形性が要求される。即ち、車体軽量化の動きに伴い、車体部材に用いられる鋼板には高強度と高成形性が求められているのである。
鋼の強化方法には種々あるが、組織微細化は、環境保護の点から排除したい合金元素の添加を必要としない高強度化の手段として、昨今特に注目され始めている。しかし、結晶粒の微細化を進めていくと、降伏点が極端に高くなると共に、伸びが低減して、加工性が劣化するという問題がある。
高強度化に伴う加工性の劣化を抑える目的で、高強度鋼における組織の微細化および第二相組織を制御する手法が提案されている。例えば、高強度化と組織微細化を同時に得られる方法として、特許文献1(特開2000−328186号公報)などに提案されているNbやTiを含ませ制御圧延する方法がある。しかしながら、この方法で得られる析出強化型高強度鋼板は、高降伏比のものになるため、プレス成形などの加工後のスプリングバックが大きく形状凍結性に劣り、さらに機械的特性の異方性も大きいという問題がある。
第二相制御による加工性に優れる熱延鋼板としては、フェライト・マルテンサイト組織またはフェライト・ベイナイト組織からなる混合組織のもの、或いはベイナイトまたはフェライト主体のほぼ単相組織のものが広く知られている。
強度と延性が共に優れる鋼材としては、例えば特許文献2(特開昭55−44551号公報)に記載されているようなDP鋼(複合組織フェライト・マルテンサイト鋼)が知られているが、この鋼は、変形の初期からマルテンサイトの周囲にミクロボイドが発生して割れを生じるため、穴拡げ性に劣る問題があり、足廻り部品等の高い穴拡げ性が要求される用途には不向きである。
伸びフランジ性および穴拡げ性の改善に関して、特許文献3(特開平4−88125号公報)および特許文献4(特開平3−180426号公報)には、ベイナイトを主体とした組織を有する鋼板が開示されている。しかし、その鋼板は、ベイナイトを主体とした組織であるために、穴拡げ性は優れるものの、軟質なフェライト相が少ないので延性に劣る。
特許文献5(特開2000−109951号公報)には、ベイナイト単相にし、さらにその組織の微細化により、高延性と高伸びフランジ性を兼備させた熱延鋼板が開示されているが、その鋼板はTi、Nbの少なくとも一方の添加を必要としているため、降伏強度比の上昇が避けられず、形状凍結性に劣り、機械的特性の異方性も大きくなる。
特開2000−328186号公報 特開昭55−44551号公報 特開平4−88125号公報 特開平3−180426号公報 特開2000−109951号公報
本発明は、高い延性と伸びフランジ性を兼備するフェライトとベイナイトの複相組織の熱延鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋼の成分および製造条件について鋭意検討を重ねた結果、下記の知見を得た。
(A) フェライトとベイナイトの複相組織鋼板においては、フェライト粒の微細分散化により加工性が向上する。
(B) フェライトの微細分散化により加工時の割れの伝播を抑制することができ、伸びフランジ性が向上し、さらに、組織全体にわたってフェライト粒が一様に変形することにより高い延性が得られる。
(C) さらに、板厚方向のフェライトの粒径分布と表層の集合組織を積極的に活用することにより、更なる加工性の向上を得られる。
(D) 上記の微細組織をTi、Nbなどを添加せずに得る製造条件として、仕上げ圧延直後に、超急速冷却することが効果的である。また、最終圧延パスをAr3点以上の温度で終了し、その後0.6秒以内に640℃以下まで冷却することが有効である。
上記の知見を基礎とする本発明は、下記(1)〜(4)の熱延鋼板を要旨とする。
(1)質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:2.0%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:0.2%以下、S:0.05%以下、Al:0.005〜0.5%およびN:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、体積率で40〜95%のベイナイト相を含有して残部がフェライト相からなる組織を有し、上記フェライトの平均結晶粒径が1.2μm以上で4μm未満であることを特徴とする熱延鋼板。
(2)上記(1)の成分に加えて、次の第1群の成分の中から選んだ少なくとも1種の成分を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、体積率で40〜95%のベイナイト相を含有して残部がフェライト相からなる組織を有し、上記フェライトの平均結晶粒径が1.2μm以上で4μm未満であることを特徴とする熱延鋼板。
第1群の成分
Ti:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:1%以下、B:0.005%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Cr:1.0%以下およびMo:1.0%以下。
(3)上記(1)の成分に加えて、次の第2群の成分の中から選んだ少なくとも1種の成分を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、体積率で40〜95%のベイナイト相を含有して残部がフェライト相からなる組織を有し、上記フェライトの平均結晶粒径が1.2μm以上で4μm未満であることを特徴とする熱延鋼板。
第2群の成分
それぞれ、または2種以上の合計で0.005%以下のCa、REMおよびMg。
(4)上記(1)の成分に加えて、前記第1群の成分から選んだ少なくとも1種および上記第2群の成分の中から選んだ少なくとも1種の成分を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、体積率で40〜95%のベイナイト相を含有して残部がフェライト相からなる組織を有し、上記フェライトの平均結晶粒径が1.2μm以上で4μm未満であることを特徴とする熱延鋼板。
また、上記(1)〜(4)の本発明の熱延鋼板は、下記(a)および(b)の少なくとも一方の特徴を備えるのが望ましい。
(a) 鋼板の表面から板厚方向に1/8の厚さの位置におけるフェライトの平均粒径(ds)と板厚中心におけるフェライトの平均粒径(dc)との比率(ds/dc)が0.3〜0.7であること。
(b) 鋼板の表面から板厚方向に1/8の厚さの位置における{110}<111>、{110}<001>および{211}<111>の極密度の和が集合組織をもたないものの5倍以上であり、かつ、それぞれが1.5倍以上であること。
本発明の熱延鋼板は、延性、伸びフランジ性等の特性に優れ、自動車の足廻り部品等の延性およびバーリング加工性が求められる素材として好適な熱延鋼板である。この鋼板は、軽量化を目指す自動車の車体用等に特に好適である。
以下、本発明で定めた熱延鋼板の化学組成および組織の限定理由について説明する。以下の記載においては、含有量に関する「質量%」を単に「%」と記す。
1.熱延鋼板の化学組成
C:
Cは、ベイナイト生成による強度確保のために重要な元素であり、また、高温でのオーステナイトを安定化させることで熱延の仕上げ温度を低下させることができ、フェライト結晶粒の微細化を促進する。これらの効果を得るためには、0.02%以上の含有が必要であるが、過度に添加するとフェライトの析出不足や粗大な鉄炭化物の析出による加工性の劣化を招き、また溶接性も劣化する。従って、含有量の上限は0.25%とする。より好ましい含有量は、0.03〜0.2%である。
Si:
Siは、鋼の延性の低下を抑制して強度を向上させる場合に添加することが有効であるが、過度の添加はAr3点を上昇させ、フェライト粒微細化を困難にするばかりでなく、鋼板の表面性状および溶接性も劣化させるため上限を2.0%とする。Siは、積極的に添加しなくてもよいので、含有量の下限は不純物レベルでもよい。しかし、前記の効果を得たい場合には0.01%以上含有させるのが望ましい。
Mn:
Mnは、ベイナイト組織の生成による強度確保のために重要な元素であり、また、高温でのオーステナイトを安定化させるので、熱間圧延の仕上げ温度を低下させることができ、フェライト結晶粒の微細化を促進する。この効果を得るには0.3%以上の含有を必要とするが、過度の添加は非金属介在物の多量析出により伸びフランジ性を劣化させるため、含有量の上限を2.5%とする。より好ましい含有量は0.5〜2.0%である。
P:
Pは、固溶強化元素として働くので、高強度化のために添加してもよい。一方、偏析し易い元素でもあるため過度の添加は粒界偏析により加工性の低下を招く。従って、含有量の上限を0.2%とする。より好ましいのは0.1%以下、さらに好ましいのは0.05%以下である。なお、Pは積極的に添加しなくてもよいので、含有量の下限は不純物レベルでもよい。一般には、製鋼段階で0.005%程度は不可避に混入する。ただし、上記の高強度化の効果を得たいときには、0.01%以上含有させるのがよい。
S:
Sは、硫化物系介在物を形成して加工性を低下させる不純物元素であるため、その含有量は極力少なくするのが好ましい。含有量の許容上限を0.05%とするが、一段と優れた加工性を確保するには0.008%以下とするのが好ましく、さらに好ましいのは0.003%以下である。
Al:
Alは、鋼の脱酸元素として必要であり、0.005%以上の含有が必要である。一方、過度の添加はAr3点を上昇させ、フェライト粒微細化を困難にするばかりでなく、溶接性も劣化させるため含有量の上限は0.5%とする。
N:
Nは、鋼の加工性を低下させる不純物元素であり、その含有量は0.01%以下に抑えることが望ましい。より好ましいのは、0.006%以下である。
本発明の熱延鋼板の一つは、上記の成分のほか、残部がFeおよび不純物からなる。他の一つは、前記の第1群の成分の中の少なくとも1種を含むものである。この第1群に属する成分は、いずれも熱延鋼板の強度の向上に寄与する成分である。
Ti:
Tiは、Ti(C、N)として析出し鋼の強度を増加させる。また、この析出物がオーステナイトやフェライトの粗大化を抑制して、結晶粒の微細化を促進する。これらの効果を得たい場合には添加してもよい。しかし、過度に添加すると、熱延以前の加熱時に粗大なTi(C、N)が多量に発生して伸びフランジ性の劣化を招き、また、面内異方性も大きくなるため、上限を0.2%とする。好ましいのは0.15%以下である。なお、上記の効果を得るのには、0.005%以上含有させるのがよい。
Nb:
Nbは、Nb(C、N)として析出し、鋼の強度を増加させ、また、この析出物がオーステナイトやフェライトの粗大化を抑制して、結晶粒の微細化を促進する。これらの効果を得たい場合には添加してもよい。しかし、過度に添加すると、熱間圧延前の加熱時に粗大なNb(C、N)が多量に発生して伸びフランジ性の劣化を招き、また、面内異方性も大きくなる。従って、含有量の上限を0.1%とする。好ましいのは0.06%以下である。なお、上記の効果を得るのには、0.005%以上含有させるのがよい。
V:
Vは、析出強化により鋼の強度を増加させ、また、この析出物がフェライトの粗大化を抑制して、結晶粒の微細化を促進する。これらの効果を得たい場合には添加してもよい。ただし、TiおよびNbと同様の理由で、延性や加工性を阻害するので、含有量の上限を1%とする。好ましいのは0.5%以下、さらに好ましいのは0.3%以下である。なお、上記の効果を得るのには、0.01%以上含有させるのがよい。
B:
Bは、焼入れ性を向上させて高強度化に寄与する元素であるため、添加してもよいが、過度に添加するとその効果が飽和するだけでなく、延性が低下するので、その含有量の上限を0.005%とする。なお、上記の効果を得るのには、0.0005%以上含有させるのがよい。
Cu:
Cuは、固溶強化及び析出強化に有効な元素であるため添加してもよいが、過度に添加するとその効果が飽和するだけでなく、コストアップを招くので1.0%を含有量の上限とする。なお、上記の効果を得るのには、0.01%以上含有させるのがよい。
Ni:
Niは、焼入れ性を向上させて所望の組織を得るために有効な元素である。また、Cuを添加する場合はスラブの粒界脆化を防止する効果もある。これらの効果を得たいときには添加してもよい。その含有量はNi≧Cu/2の範囲であることが望ましいが、過度に添加するとコストアップになるので1.0%を上限とする。Cuと併用しない場合の望ましい含有量の下限は0.01%である。
Cr:
Crは、焼入れ性を向上させて所望の組織を得るために有効な元素であるため添加してもよいが、過度に添加しても効果が飽和し、また、鋼板の製造コストを上昇させることにもなるので、その含有量の上限を1.0%とする。なお、上記の効果を得るためには、0.01%以上の含有が望ましい。
Mo:
Moも焼入れ性を向上させて所望の組織を得るために有効な元素であるため添加してもよいが、過度に添加しても効果が飽和し、また、鋼板の製造方法コスト増加にもなるのでその上限を1.0%とする。好ましいのは0.5%以下であり、より好ましいのは0.3%以下である。なお、上記の効果を得るためには、0.005%以上の含有が望ましい。
本発明の熱延鋼板のさらに他の一つは、前記の第2群の成分の中の少なくとも1種を含むものである。この第2群に属する成分は、いずれも熱延鋼板の加工性の向上に寄与する成分である。なお、第2群の成分の少なくとも1種と、前記第1群の成分の少なくとも1種を併用してもよい。
Ca、Mg、REM:
これらの元素はMnSの形態を制御して鋼の加工性を改善する効果を有するので、この効果を得たいときには添加してもよい。しかし、これらの元素の含有量が増えるとその効果は飽和する傾向があり、また、いずれも高価な元素であるため、単独の含有量または合計の含有量で0.005%を上限とする。上記の加工性改善の効果を得るには、単独または合計で0.0002%以上の含有が望ましい。なお、REMとは、希土類元素の総称で、YおよびScも含む。
2.熱延鋼板の組織
熱延鋼板の伸びフランジ性向上の観点からは、金属組織が均質であることが好ましい。高強度と高伸びフランジ性を兼備させるためには、ベイナイト相分率の多いほうが好ましいが、硬質相であるベイナイトは延性に乏しく高延性が得られない。従って、延性向上の観点からはフェライトの体積率を増加させることが好ましいが、フェライトとベイナイトの界面の増加により、加工初期にき裂が発生する確率が高くなり伸びフランジ性が劣化する。従って、延性と伸びフランジ性との兼ね合いの観点から、ベイナイト相の最適量が決まる。
ベイナイトの体積率が40%未満では高強度が得られず、かつ伸びフランジ性に劣り、95%を超えると延性が劣る。好ましいベイナイトの体積率は50〜95%である。
さらに、本発明の熱延鋼板において特に重要なのは、フェライトの細粒化である。フェライト粒の微細分散によりフェライト相の変形が板厚全体にわたって一様になるために延性が向上する。また、穴拡げ加工時にはフェライト相とベイナイト相の界面にき裂が発生しても、そのき裂伝播を遅延させる効果により伸びフランジ性が向上する。
これらの効果を得るためには、鋼板全体のフェライトの平均粒径を1.2μmから4μmまでに制御する必要がある。1.2μm未満の場合は、フェライト粒の本来持つ延性を発揮できず、降伏強度比(降伏強度/最高強度)も高くなるために、延性劣化を招く。一方、4μmを超える場合には、穴拡げ加工時のき裂伝播遅延効果を得られず、伸びフランジ性が向上しない。好ましいのは1.5〜3.0μmである。
また、き裂の起点となる鋼板表面の組織の微細化は、き裂発生そのものを遅らせる効果を有し、鋼板表層の微細化は伸びフランジ性の向上に効果がある。しかし、過度の微細化は鋼板表層の降伏強度比を高くし、延性劣化を招き、鋼板自体の延性が劣化する。従って、好ましいのは、板厚方向の1/8の厚さ位置でのフェライト平均粒径(ds)の範囲が、板厚中心のフェライト平均粒径(dc)に対する比、即ち、「ds/dc」で、0.3≦ds/dc≦0.7を満たす範囲にあることである。
一方、表面から板厚方向の1/8の厚さ位置における{110}<111>、{110}<001>および{211}<111>の極密度の和が集合組織をもたないものの5倍以上であり、かつ、それぞれが1.5倍以上であることも好ましい。これらの方位が発達している場合に加工性の向上が得られるからである。加工性が向上する原因は明らかではないが、次のように推測される。即ち、粒界が粒界として機能するためには、隣接粒との角度差が15度以上である粒界(大傾角粒界)であることが好ましく、前述の極密度が発達すると大傾角粒界の割合が増加して、細粒化効果が効率良く発揮されるものと考えられる。より好ましいのは、前記極密度の和が、集合組織をもたないものの6倍以上であることである。
本発明の熱延鋼板の組織は、体積率で40〜95%のベイナイトと残部がフェライトからなるものである。
本発明におけるベイナイトの体積率とは、板厚方向に1/8、1/4および1/2の厚さ位置の任意の各5視野以上を、いわゆるメッシュ法にて測定した算術平均値である。フェライトの平均粒径とは、板厚方向に1/8、1/4および1/2の厚さ位置の任意の各5視野以上を切断法により測定して求めた算術平均値を、球相当直径となるように1.13倍したものであり、鋼板全体のフェライトの平均粒径とは、前記3箇所の板厚位置におけるフェライト粒径の算術平均値である。
3.製造方法
本発明の熱延鋼板は次に述べる方法で製造することができる。まず、これまでに述べた化学組成を有する鋼の鋼片(スラブ)または鋼板を素材とする。これらの素材は、連続鋳造や鋳造・分塊により得たスラブ、ストリップキャスティングにより得た鋼板などや、必要によってはそれらに熱間加工または冷間加工を加えたものである。それらが冷材であればAc3点以上の温度に再加熱して、圧延する。
熱間圧延の前の加熱温度はAc3点以上の温度であれば特に制限はない。一般的には900〜1350℃である。TiCやNbCなどの析出物をオーステナイト中に十分に溶解させる必要がない鋼種の場合は、この範囲の中でも比較的低い温度(1100℃以下)に再加熱することが好ましい。初期のオーステナイト結晶粒が微細化し、最終のフェライトおよびベイナイトの粒径も微細化し易くなるからである。
圧延は、レバースミルまたはタンデムミルを用いて、オーステナイト温度域で行う。工業的生産性の上からは、少なくとも最終の数段はタンデムミルを用いるのが好ましい。圧延温度は、圧延後にオーステナイトからフェライトへと変態させるためにAr3点以上の温度とする。圧延を終了する温度はAr3点に近いほど良い。これは、圧延によってオーステナイトに導入された加工歪みの蓄積効果が大きくなり、組織の微細化が促進されるからである。
圧下率は、細粒化の効果を得るためにAr3点から「Ar3点+100℃」までの温度範囲における圧下率(板厚減少率)で40%以上が必要である。より好ましいのは60%以上である。圧延は、1パスで行う必要はなく、連続した複数パスの圧延であっても良い。1パス当たりの圧下率は10〜60%の範囲で、1パス当たりの圧下率を大きくする方が、オーステナイトへの歪みの蓄積が増加して、変態によって生成するフェライトおよびベイナイトの微細化が進むので好ましい。しかし、1パス当りの圧下率が大きすぎると鋼板の板厚方向の組織差が著しくなり加工性の劣化を招く。従って、1パス当たりの好ましい圧下率は、15〜50%である。
圧延が終了した後は、オーステナイトに導入された加工歪みを解放することなく、これを駆動力としてオーステナイトから微細なフェライトとベイナイトの複相組織に変態させる。その条件は、下記のとおりである。
まず、圧延終了から640℃以下の温度まで0.6秒以内に冷却し、600℃を超えて640℃までの温度域での滞在時間を20秒以内とする。
圧延終了から640℃以下に冷却するのに要する時間は、上記のとおり0.6秒以内とするが、より好ましいのは0.4秒以内である。この冷却は水冷が望ましく、冷却速度を400℃/秒以上とするのが望ましい。
640℃以下の温度に冷却されるまでの時間(滞在時間)を規定する理由は、640℃以上の温度で冷却を停止したり、または640℃以下の温度になるまでの経過時間が長くなると、加工によって導入された歪みの解放や、歪みの存在形態の変化により、フェライトの核生成サイトとならずに組織が粗大化したり、フェライト変態が最も活発に起こる温度で冷却を停止させた場合はフェライトがごく短時間で急激に析出したりするため、ベイナイト体積率が不十分になるからである。
640℃以下の温度域は、フェライト変態が最も活発になる温度域を外れてはいるものの、600℃を超える温度域は、依然としてフェライト変態が進行する温度域である。この温度域での冷却中にフェライトが均一微細に析出する。しかし、焼入れ性の高い材料においてはフェライトの析出が不十分でベイナイト相が95%を超える場合があるため、640℃に達した後、冷却を一次停止するか、または冷却速度を低下させて、640℃以下で600℃を超える温度域での滞在時間を長めにするのがよい。ただし、滞在時間が25秒を超えるとフェライト体積率の過度の増加、フェライト粒の粗大化、およびパーライト析出などにより、「強度−伸びのバランス」および「強度−伸びフランジのバランス」の劣化が生じるので、25秒以内とするのが好ましい。
捲取り温度は350℃以上、600℃以下が好ましい。350℃未満ではマルテンサイトが生成するために延性、伸びフランジ性がともに劣化する。600℃を超える温度で巻き取るとフェライト粒の粗大化、組織中のセメンタイトの粗大化などにより強度、伸びフランジ性がともに劣化する。好ましい巻取り温度は400〜550℃である。
表1に示す化学組成を有する鋼を溶製し、熱間鍛造によって30mm厚さにした。その後、1100〜1300℃の温度域に再加熱した後、試験用小型タンデムミルにて圧延を実施し、2mmの板厚に仕上げた。全ての圧延において、圧延の仕上げ温度は、各鋼種のAr3点よりも高い温度とした。得られた鋼板の板厚断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察して組織を調べた。機械的性質については、引張特性および伸びフランジ加工性を以下の方法で調査した。
引張特性はJISの5号引張試験片にて行い、伸びフランジ加工性は、縦横が100mmの正方形の試験片を採取し、その中央にポンチにて直径10mmの打ち抜き穴(クリアランス:15%)をあけ、先端角60°の円錐ポンチでこの穴を拡げて、穴の縁にクラックが貫通したときの穴直径から計算される限界穴拡げ率で評価した。
表2に製造条件、表3に組織および機械特性の調査結果を示す。なお、表3の「ds/dc」、{110}<111>、{110}<001>および{211}<111>の極密度、ならびにそれらの和は、鋼板の表面から板厚方向に1/8の厚さの位置における、集合組織をもたないものに対する倍率である。本発明例は、優れた引張強度(TS)と伸び(EL)のバランス(TS×EL)および引張強度(TS)と穴拡げ率(HER)のバランス(TS×HER)を有している。一方、化学組成、ベイナイト体積率、およびフェライト粒径の少なくとも一つが本発明で定める範囲外である比較例は、いずれも機械特性に劣る。
Figure 2008266792
Figure 2008266792
Figure 2008266792
本発明の熱延鋼板は、延性、伸びフランジ性等の特性に優れるので、自動車の足廻り部品等の延性およびバーリング加工性が求められる素材として好適であり、自動車車体の軽量化やコストの低減などに寄与する。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:2.0%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:0.2%以下、S:0.05%以下、Al:0.005〜0.5%およびN:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、体積率で40〜95%のベイナイト相を含有して残部がフェライト相からなる組織を有し、上記フェライトの平均結晶粒径が1.2μm以上で4μm未満であることを特徴とする熱延鋼板。
  2. 質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:2.0%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:0.2%以下、S:0.05%以下、Al:0.005〜0.5%およびN:0.01%以下、ならびにTi:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:1%以下、B:0.005%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Cr:1.0%以下およびMo:1.0%以下の中から選んだ1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、体積率で40〜95%のベイナイト相を含有して残部がフェライト相からなる組織を有し、上記フェライトの平均結晶粒径が1.2μm以上で4μm未満であることを特徴とする熱延鋼板。
  3. 質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:2.0%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:0.2%以下、S:0.05%以下、Al:0.005〜0.5%およびN:0.01%以下、ならびにCa、REMおよびMgのうちの1種以上を合計で0.005%以下含有し、残部がFeおよび不純物からなり、体積率で40〜95%のベイナイト相を含有して残部がフェライト相からなる組織を有し、上記フェライトの平均結晶粒径が1.2μm以上で4μm未満であることを特徴とする熱延鋼板。
  4. 質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:2.0%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:0.2%以下、S:0.05%以下、Al:0.005〜0.5%およびN:0.01%以下、ならびにTi:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:1%以下、B:0.005%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Cr:1.0%以下およびMo:1.0%以下の中から選んだ1種以上、さらにCa、REMおよびMgのうちの1種以上を合計で0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、体積率で40〜95%のベイナイト相を含有して残部がフェライト相からなる組織を有し、上記フェライトの平均結晶粒径が1.2μm以上で4μm未満であることを特徴とする熱延鋼板。
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