JP6260037B2 - コンクリート用多機能混和剤 - Google Patents

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Description

本発明はコンクリート用多機能混和剤に関し、より詳しくは単位セメント量が比較的少ない配合のコンクリートに有用な多機能混和剤に関する。
一般に、単位セメント量の少ないコンクリート、特に高炉セメントを用いて調製した単位セメント量の少ないコンクリートは、1)調製後の経時的な流動保持性がよくない、2)骨材の沈降による材料分離が起こり易く、ブリーディング水の発生量が多い、3)中長期材齢の強度増進性が小さい、4)調製後のコンクリートを充填する際の振動締め固めによって、得られる硬化体の表面にボイドが数多く発生し、外観がよくない、等の問題が存在することが指摘されている。結合材として高炉スラグ微粉末を多く含有するセメントを用いた環境性能の高いコンクリートが、近年クローズアップされるようになってきているが、使用するセメントの種類によってもかかる問題がより顕著になる傾向がある。このような問題を解決するためのコンクリート用混和剤については、種々の技術が過去に提案されている。例えば、材料分離の防止やブリーディング水量の抑制を図るコンクリート用混和剤が提案されており(例えば特許文献1〜6参照)、また高炉スラグ微粉末を多く含有するコンクリート用の混和剤も提案されている(例えば特許文献7〜8参照)。しかしながら、これら従来のコンクリート用混和剤では、依然として、前記した複数の問題を同時に且つ充分に解決できるまでには到っていない。
特開平8−52730号公報 特開平10−167784号公報 特開平11−1355号公報 特開2001−89212号公報 特表2006−525938号公報 特開2010−111537号公報 特開2013−203635号公報 特開2013−203636号公報
本発明が解決しようとする課題は、単位セメント量の少ないコンクリートの調製において、特に高炉セメントを用いた単位セメント量の少ないコンクリートの調製において、1)調製後の経時的な流動保持性がよくない、2)骨材の沈降による材料分離が起こり易く、ブリーディング水の発生量が多い、3)中長期材齢の強度増進性が小さい、4)調製後のコンクリートを充填する際の振動締め固めによって、得られる硬化体の表面にボイドが数多く発生し、外観がよくない、以上の四つの課題を同時に且つ充分に解決することができるコンクリート用多機能混和剤を提供する処にある。
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定の四つの成分を特定割合で含有するコンクリート用多機能混和剤であって、結合材に対し特定割合で用いるようにしたコンクリート用多機能混和剤が正しく好適であることを見出した。
すなわち本発明は、下記のA成分、下記のB成分、下記のC成分及び下記のD成分の4成分からなり、且つA成分を25〜92質量%、B成分を2〜40質量%、C成分を0.5〜35質量%及びD成分を0.01〜5質量%(合計100質量%)の割合で含有していて、結合材100質量部当たり0.1〜2質量部の割合で用いるようにして成ることを特徴とするコンクリート用多機能混和剤に係る。
A成分:分子中に下記の構成単位Eを35〜85モル%、下記の構成単位Fを15〜65モル%及び下記の構成単位Gを0〜5モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量5000〜80000の水溶性ビニル共重合体。
構成単位E:メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上。
構成単位F:分子中に7〜90個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位
構成単位G:(メタ)アリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びメチル
(メタ)アクリレートから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上。
B成分:質量平均分子量800〜20000のアクリル酸単独重合体のアルカリ金属塩。
C成分:スクロース、トレハロース、ラクトース及びマルトースから選ばれる一つ又は二つ以上。
D成分:下記の化1で示される脂肪族ポリエーテル
Figure 0006260037
化1において、
:炭素数16〜20の脂肪族炭化水素基
:分子中に合計25〜70個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成され且つ該オキシエチレン単位と該オキシプロピレン単位とがブロック状に付加したポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
本発明に係るコンクリート用多機能混和剤(以下、本発明の混和剤という)は、A成分とB成分とC成分とD成分の4成分からなる混合物である。A成分は分散剤としての役割を担い、分子中に構成単位Eを35〜85モル%、構成単位Fを15〜65モル%及び構成単位Gを0〜5モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量5000〜80000の水溶性ビニル共重合体であり、好ましくは構成単位Eを40〜80モル%、構成単位Fを20〜60モル%及び構成単位Gを0〜3モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量10000〜60000の水溶性ビニル共重合体である。本発明において、A成分の水溶性ビニル共重合体の質量平均分子量はGPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法、以下同じ)で測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量である。
構成単位Eはメタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上である。具体的には、1)メタクリル酸から形成された構成単位、2)メタクリル酸塩から形成された構成単位、3)メタクリル酸から形成された構成単位とメタクリル酸塩から形成された構成単位の双方が挙げられる。ここで、メタクリル酸塩から形成された構成単位としては、イ)メタクリル酸のリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩から形成された構成単位、ロ)メタクリル酸のジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩から形成された構成単位等が挙げられるが、なかでもメタクリル酸のアルカリ金属塩から形成された構成単位が好ましく、メタクリル酸のナトリウム塩から形成された構成単位がより好ましい。
構成単位Fは分子中に7〜90個のオキシエチレン単位、好ましくは15〜80個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位である。
構成単位Gは(メタ)アリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びメチル(メタ)アクリレートから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上である。(メタ)アリルスルホン酸塩の種類については構成単位Dのメタクリル酸塩について前記したことと同様であるが、なかでもメタリルスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
以上説明したA成分の水溶性ビニル共重合体自体は公知の方法で合成できる。これには例えば、特開昭58−74552号公報や特開平1−226757号公報等に記載されている方法が挙げられる。
B成分は、ブリーディング水の発生量を抑える役割と骨材の沈降よる材料分離を抑える役割を担い、質量平均分子量800〜20000のアクリル酸単独重合体のアルカリ金属塩、好ましくは質量平均分子量1000〜10000のアクリル酸単独重合体のアルカリ金属塩である。ここで、アルカリ金属塩というのは部分中和したアルカリ金属塩又は完全中和したアルカリ金属塩のいずれであってもよい。分子量がかかる範囲より大きいものは、A成分と混合した際に粘度が大きく上昇して一液混合品が製造できない。逆に分子量がかかる範囲より小さいものは、前記した本発明が目的とする材料分離防止の効果が発揮されない。アルカリ金属塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられるが、ナトリウム塩が好ましく、多機能混和剤としての一液混合品の安定液を製造する上で、水酸化ナトリウムを用いて部分中和したナトリウム塩が好ましい。
以上説明したB成分のアクリル酸単独重合体のアルカリ金属塩自体は公知の方法で合成できる。これには例えば、特開2003−160364号公報に記載されている方法が挙げられる。
C成分はスランプロスを抑える役割と夏場の練り混ぜ温度が高い(例えば30℃付近)ときの遅延性付与及び中長期材齢の強度増進の役割を担い、スクロース、トレハロース、ラクトース及びマルトースの中から選ばれる一つ又は二つ以上、好ましくはスクロース又はトレハロースである。これらのC成分は、結合材が硬化する過程の初期段階で、凝結が開始する付近の水和反応速度をコントロールして、中長期材齢におけるポルトランドセメントや高炉スラグ微粉末の水和反応率を上昇させ、結果として中長期材齢(例えば、材齢28日、91日以降)の強度発現を増進させる。
D成分は調製後のコンクリートを型枠内に充填する際の振動締め固めによる脱泡によって、得られる硬化体の上層表面にボイドが数多く発生するのを抑える役割を担い、化1で示される脂肪族ポリエーテル系の抑泡剤である。化1中のRとしては、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の炭素数16〜20の飽和脂肪族炭化水素基、8−ヘキサデセニル基、9−オクタデセニル基、11−エイコセニル基等の炭素数16〜20の不飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられるが、なかでも他の成分との混合性がよいことやコンクリートを調製する際の連行空気の脱泡抑制効果が良好であること等の観点から、9−オクタデセニル基が好ましい。
また化1中のAは、分子中にオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成され且つ該オキシエチレン単位と該オキシプロピレン単位とがブロック状に付加したポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である。Aのポリオキシアルキレン基を構成するオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位の繰り返し数は合計で25〜70とするが、28〜65とするのが好ましい。以上説明した化1で示されるポリエーテル系抑泡剤は、炭素数16〜20の脂肪族アルコール1モルに対してエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを合計25〜70モルの割合でブロック状に付加させる公知の方法で合成できる。
本発明の混和剤は、以上説明したA成分、B成分、C成分及びD成分の4成分からなり、且つA成分を25〜92質量%、B成分を2〜40質量%、C成分を0.5〜35質量%及びD成分を0.01〜5質量%(合計100質量%)の割合で含有してなるものであるが、好ましくはA成分を30〜90質量%、B成分を5〜35質量%、C成分を1〜32質量%及びD成分を0.1〜3質量%(合計100質量%)の割合で含有してなる一液型の混和剤である。A成分、B成分、C成分及びD成分の割合がかかる範囲から外れたものを用いると、コンクリートを調製する際にスランプロスが大きくなって作業性が低下したり、また調製後のコンクリートを型枠内に充填する際に振動締め固めをすると、骨材の沈降による材料分離が起こり易くなってブリーディング水が多く発生したり、更には得られる硬化体の表面にボイドが数多く発生して美観が失われたりする。また調製時の練り混ぜ温度が高い夏期(例えば30℃になるような夏期)においては、中長期材齢の強度増進性が小さくなる。
本発明の混和剤は、結合材100質量部当たり、0.1〜2質量部の割合となるよう用いるようにしたものであるが、好ましくは0.15〜0.8質量部の割合となるよう用いるようにしたものである。本発明の混和剤の使用量がかかる範囲から外れると、前記したような本発明の効果が充分に得られなくなる。
本発明の混和剤を用いるコンクリートの結合材としては、その種類が特に制限されるものではなく、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント等が挙げられ、また高炉スラグ微粉末を含有する高炉セメント、フライアッシュ微粉末を含有するフライアッシュセメント、シリカフューム微分末を含有するシリカフュームセメント等の混合セメントが挙げられるが、前記したように使用する骨材の種類によっても本発明の効果の発現程度が異なり、特に骨材の材料分離防止効果やブリーディング水発生量の抑制効果については、その効果が顕著に発揮される観点から、結合材として高炉スラグ微粉末を含有する高炉セメントを使用する場合に有用である。
一般に、高炉セメントとしてはJIS規格を満足する高炉セメントが流通しており、高炉スラグ微粉末の分量によって、高炉セメントA種(5質量%超〜30質量%)、高炉セメントB種(30質量%超〜60質量%)及び高炉セメントC種(60質量%超〜70質量%)の3種類に分類されている。本発明の混和剤は、いずれの種類の高炉セメントを使用する場合において前記した効果を発現するが、炭酸ガス排出量が少ない環境性能の優れたコンクリートを調製することができる観点から、高炉スラグ微粉末の分量が多い高炉セメントB種及び高炉セメントC種を使用する場合に有用である。
本発明の混和剤を用いてコンクリートを調製するとき、本発明の混和剤や結合材のほかに、練り混ぜ水、細骨材及び粗骨材を用いる。練り混ぜ水としては水道水を使用でき、細骨材としては、公知の川砂、砕砂、山砂等を使用でき、粗骨材としては、公知の川砂利、砕石、軽量骨材等を使用できる。
本発明の混和剤は、結合材の単位量が280〜500kg/m、好ましくは300〜450kg/m、且つ水/結合材の質量比が35〜65%、好ましくは40〜60%のコンクリートに対して特に有用である。調製したコンクリートの経時的な流動保持性をよい状態で保ちつつ、材料分離を抑え、またブリーディング水の発生量を抑えて、圧縮強度の低下を抑えることができるからである。
本発明の混和剤を用いてコンクリートを調製するに際しては、本発明の効果を損なわない範囲内で、AE(空気連行)剤、消泡剤、防水剤、防腐剤、防錆剤等の他の混和剤を併用することができる。
以上説明した本発明の混和剤、結合材、水、細骨材及び粗骨材等を公知の方法で練り混ぜることにより所期の通りのコンクリートを調製することができる。具体的には、結合材としての高炉セメント、水の一部、細骨材及び粗骨材をミキサーで混練する一方で、本発明の混和剤と必要に応じてAE調節剤等を水の残部で希釈し、しかる後に双方を練り混ぜる方法で所期の通りのコンクリートを調製することができる。コンクリートを調製するに際して、本発明の混和剤は、予め固形濃度(A成分、B成分、C成分及びD成分の合計濃度)が10〜50質量%の水溶液の形態に調整しておくのが取扱い上の簡便性及び練り混ぜの均一性を図る点で好ましく、特に生コンクリートプラントにおいて混和剤の貯蔵や計量が効率的に行なえる上で好ましい。
以上説明した本発明には、単位セメント量の少ないコンクリートの調製において、特に高炉セメントを用いた単位セメント量の少ないコンクリートの調製において、1)調製後の経時的な流動保持性がよくない、2)骨材の沈降による材料分離が起こり易く、ブリーディング水の発生量が多い、3)中長期材齢の強度増進性が小さい、4)調製後のコンクリートを充填する際の振動締め固めによって、得られる硬化体の表面にボイドが数多く発生して外観がよくない、という以上の四つの問題を同時に且つ充分に解決できるという効果がある。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
試験区分1(A成分としての水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(a−1)の合成
メタクリル酸59g、メトキシポリ(オキシエチレン単位が23個、以下n=23とする)エチレングリコールメタクリレート304g、メタリルスルホン酸ナトリウム3g、3−メルカプトプロピオン酸3g及び水490gを反応容器に仕込んだ後、48%水酸化ナトリウム水溶液56gを加え、攪拌しながら部分中和して均一に溶解した。反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、過硫酸ナトリウムの20%水溶液25gを加えてラジカル重合反応を開始し、5時間反応を継続して反応を終了した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液20gを加えて反応物を中和し、水溶性ビニル共重合体(a−1)の40%水溶液を得た。水溶性ビニル共重合体(a−1)を分析したところ、メタクリル酸ナトリウムから形成された構成単位/メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位/メタリルスルホン酸ナトリウムから形成された構成単位=68/30/2(モル%)の割合で有する質量平均分子量31600(GPC法、ポリエチレングリコール換算)の水溶性ビニル共重合体であった。
水溶性ビニル共重合体(a−2)、(a−3)及び(ar−1)〜(ar−3)の合成
水溶性ビニル共重合体(a−1)と同様な方法で、水溶性ビニル共重合体(a−2)、(a−3)及び(ar−1)〜(ar−3)を合成した。
以上で合成した水溶性ビニル共重合体の内容を表1にまとめて示した。
Figure 0006260037
表1において、
質量平均分子量:GPC法、ポリエチレングリコール換算
E−1:メタクリル酸ナトリウム
E−2:メタクリル酸
F−1:メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレート
F−2:メトキシポリ(n=70)エチレングリコールメタクリレート
G−1:メタリルスルホン酸ナトリウム
G−2:アリルスルホン酸ナトリウム
G−3:メチルアクリレート
試験区分2(B成分としてのアクリル酸単独重合体のアルカリ金属塩の合成)
・アクリル酸単独重合体のナトリウム塩(b−1)の合成
反応容器にアクリル酸ナトリウムの20%水溶液470g、3−メルカプトプロピオン酸6g及び水150gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。窒素雰囲気下に反応系の温度を温水浴にて65℃に保ち、過硫酸ナトリウムの20%水溶液10gを滴下して重合を開始し、5時間重合反応を継続して重合を完結した。質量平均分子量4600(GPC法、ポリエチレングリコール換算)のアクリル酸単独重合体のナトリウム塩の15%水溶液を調製した。
同様にして、質量平均分子量1500のアクリル酸単独重合体のナトリウム塩(b−2)及び質量平均分子量8700のアクリル酸単独重合体のナトリウム塩(b−3)を合成した。更に比較のため、質量平均分子量36000のアクリル酸単独重合体のナトリウム塩(br−1)を合成した。
試験区分3(多機能混和剤の調製及び評価)
・実施例1{多機能混和剤(P−1)の調製}
A成分として水溶性ビニル共重合体(a−1)の40%水溶液162部、B成分として質量平均分子量4600のアクリル酸単独重合体のナトリウム塩の15%水溶液(b−1)100質量部、C成分としてスクロース19質量部、D成分としてα−オクタデセニル−ω−ヒドロキシ−ポリ(7モル)オキシエチレンポリ(48モル)オキシプロピレン(d−1)1質量部及び水37質量部を1リットルのフラスコ容器に投入して混合し、A成分、B成分、C成分及びD成分の4成分からなる多機能混和剤(P−1)の30%水溶液を調製した。
・実施例2〜14及び比較例1〜13{多機能混和剤(P−2)〜(P−14)及び(R−1)〜(R−13)の調製}
実施例1の多機能混和剤(P−1)の調製と同様にして、実施例2〜14の多機能混和剤(P−2)〜(P−14)の30%水溶液及び比較例1〜13の多機能混和剤(R−1)〜(R−13)の30%水溶液を調製した。調製した各多機能混和剤の内容を表2にまとめて示した。
・多機能混和剤の水溶液の安定性の評価
調製した多機能混和剤(P−1)〜(P−14)及び(R−1)〜(R−13)の各30%水溶液を、100m容量のメスシリンダーに入れ、室温で1週間静置した後に目視判定し、下記の基準で評価した。結果を表2にまとめて示した。
評価基準
○:透明均一であるか又は僅かに濁りがあるが、分離せずに均一である。
×:明らかに分離している。































Figure 0006260037
表2において、
a−1〜a−3,ar−1〜ar−3:試験区分1で合成した表1の水溶性ビニル共重合体
b−1〜b−3及びbr−1:試験区分2で合成したポリアクリル酸単独重合体のアルカリ金属塩
c−1:スクロース (ショ糖)
c−2:トレハロース
c−3:ラクトース(乳糖)
c−4:マルトース(麦芽糖)
d−1:α−オクタデセニル−ω−ヒドロキシ−ポリ(7モル)オキシエチレンポリ(48モル)オキシプロピレン
d−2:α−ヘキサデシル−ω−ヒドロキシ−ポリ(7モル)オキシエチレンポリ(48モル)オキシプロピレン
dr−1:α−ラウリル−ω−ヒドロキシ−ポリ(7モル)オキシエチレンポリ(48モル)オキシプロピレン
試験区分4(コンクリートの調製及び評価)
試験例1〜14
試験区分3で調製した表2に記載の多機能混和剤を用いて、表3に記載の配合番号1の条件で、50リットルのパン型強制練りミキサーに、結合材(高炉セメントC種相当、密度=3.01g/cm)、細骨材(大井川水系砂、密度=2.58g/cm)、練り混ぜ水(水道水)、多機能混和剤(p−1)及び空気量調整剤(竹本油脂社製のAE剤、商品名AE300)の各所定量を順次投入してスラリーが均一となるまで練り混ぜた。多機能混和剤の使用量は表4に記載した。次に、粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)を投入し30秒間練り混ぜ、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±0.5%の実施例1のコンクリートを調製した。また、同様な方法により、試験例2〜14のコンクリートを調製した。いずれの場合も練り混ぜ温度は30℃であった。
試験例15〜42
試験例1〜14と同様にして、表3に記載の配合番号2の条件で、試験例15〜28のコンクリートを、また表3に記載の配合番号3の条件で試験例29〜42のコンクリートを調製した。練り混ぜ温度はいずれの場合も30℃であった。練り混ぜ後のコンクリートの試験結果を表4に、また硬化体の試験結果を表5にまとめて示した。
試験例43〜81
試験区分3で調製した表2に記載の比較例の多機能混和剤を用いて、表3に記載の配合番号の条件で、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±0.5%の試験例43〜81のコンクリートを調製した。練り混ぜ温度はいずれの場合も30℃であった。練り混ぜ後のコンクリートの試験結果を表6に、また硬化体の試験結果を表7にまとめて示した。
Figure 0006260037
表3において、
*1:高炉セメントB種(密度=3.04g/cm
*2:高炉セメントC種(密度=3.01g/cm
*3:普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm
細骨材:大井川水系砂(密度=2.58g/cm
粗骨材:岡崎産砕石(密度=2.68g/cm
・コンクリートの物性評価
調製した各例のコンクリートについて、練り混ぜ直後のスランプ及び空気量、練り混ぜ直後から60分後のスランプ及び空気量、ブリーディング率、圧縮強度、外観を下記のように求め、また評価し、結果を表4〜表7にまとめて示した。
・スランプ(cm):練り混ぜ直後及びそれから60分間練り舟に静置したコンクリートについて、JIS−A1101に準拠して測定した。
・空気量(容量%):練り混ぜ直後及びそれから60分間練り舟に静置したコンクリートについて、JIS−A1128に準拠して測定した。
・スランプ残存率(%):(60分間静置後のスランプ値/練り混ぜ直後のスランプ値)×100で求めた。
・ブリーディング率(%):JIS−A1123に準拠して測定した。
数値が小さい方が上表面の沈下が小さく、均質であることを示す。
・圧縮強度(N/mm):材齢28日及び91日の硬化体について、JIS−A1108に準拠して測定した。
・外観評価:練り混ぜた直後のコンクリートを縦×横×高さが0.15m×1m×1mの木製化粧型枠に流し込み、棒状バイブレータを用いて締め固め、材齢3日後に脱枠した。得られた硬化体の型枠剥離面(合計2面で2m)に存在する気泡径が3mm以上の気泡数を数え、これを0.3m×0.3m=0.09m中に存在する気泡数に換算して示すと共に、型枠剥離面におけるボイドの有無を目視観察した。
Figure 0006260037
Figure 0006260037










Figure 0006260037













Figure 0006260037
表4〜表7において、
配合番号:表3に記載の配合番号
多機能混和剤の種類:表2に記載の多機能混和剤の種類
多機能混和剤の使用量:セメント100質量部に対する多機能混和剤(固形分として)の添加質量部
*4:多機能混和剤の水溶液が完全に沈殿又は相分離していたので使用せず、測定しなかった。
*5:目標とする流動性のコンクリートが得られなかったので測定しなかった。
表4〜表7の結果からも明らかなように、本発明の混和剤によると、比較的単位セメント量の少ない配合のコンクリートの調製に用いた場合に、練り混ぜ後の経時的な流動性の低下や空気量の低下が抑えられ、且つ調製したコンクリートのブリーディング水の発生量が少なく抑えられ、しかも中長期(材齢28日及び91日)の圧縮強度が増進し、硬化体表面にボイドの発生がなく、表面が平滑で外観がよい。

Claims (8)

  1. 下記のA成分、下記のB成分、下記のC成分及び下記のD成分の4成分からなり、且つA成分を25〜92質量%、B成分を2〜40質量%、C成分を0.5〜35質量%及びD成分を0.01〜5質量%(合計100質量%)の割合で含有していて、結合材100質量部当たり0.1〜2質量部の割合で用いるようにして成ることを特徴とするコンクリート用多機能混和剤。
    A成分:分子中に下記の構成単位Eを35〜85モル%、下記の構成単位Fを15〜65モル%及び下記の構成単位Gを0〜5モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量5000〜80000の水溶性ビニル共重合体。
    構成単位E:メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上。
    構成単位F:分子中に7〜90個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位
    構成単位G:(メタ)アリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びメチル(メタ)アクリレートから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上。
    B成分:質量平均分子量800〜20000のアクリル酸単独重合体のアルカリ金属塩。
    C成分:スクロース、トレハロース、ラクトース及びマルトースから選ばれる一つ又は二つ以上。
    D成分:下記の化1で示される脂肪族ポリエーテル
    Figure 0006260037
    (化1において、
    :炭素数16〜20の脂肪族炭化水素基
    :分子中に合計25〜70個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成され且つ該オキシエチレン単位と該オキシプロピレン単位とがブロック状に付加したポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基)
  2. B成分が、質量平均分子量1000〜10000のアクリル酸単独重合体のナトリウム塩である請求項1記載のコンクリート用多機能混和剤。
  3. C成分が、スクロースである請求項1又は2記載のコンクリート用多機能混和剤。
  4. C成分が、トレハロースである請求項1又は2記載のコンクリート用多機能混和剤。
  5. D成分が、化1中のRが、9−オクタデセニル基である場合のものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載のコンクリート用多機能混和剤。
  6. A成分を30〜90質量%、B成分を5〜35質量%、C成分を1〜32質量%及びD成分を0.1〜3質量%(合計100質量%)の割合で含有するものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載のコンクリート用多機能混和剤。
  7. 結合材として高炉セメントを用い、水/結合材の質量比を40〜60%に調製するコンクリート用のものである請求項1〜6のいずれか一つの項記載のコンクリート用多機能混和剤。
  8. 結合材として高炉セメントB種又は高炉セメントC種を用いて調製するコンクリート用のものである請求項1〜7のいずれか一つの項記載のコンクリート用多機能混和剤。
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