本発明のシートベルト用リトラクタ(以下、リトラクタという)の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のリトラクタは、シートベルトのウエビングを巻き取るウエビング巻取装置であり、車両用のシートベルト装置に設けられる。リトラクタを備えたシートベルト装置は、車両に搭載され、シートに座った乗員をウエビング(シートベルト)により保護する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のリトラクタ1の斜視図である。図2は、分解されたリトラクタ1を図1のW1方向からみて示す斜視図であり、複数のユニットに分解されたリトラクタ1を示している。図1、図2では、帯状のウエビング2を点線で示している。
図示のように、リトラクタ1は、ハウジングユニット3と、巻取ドラム10を有する巻取ドラムユニット4と、巻取バネユニット5と、メカニズムカバーユニット6と、ウエビング2の端部に固定された抜け止めピン7を備えている。
巻取ドラム10がハウジングユニット3内に配置された状態で、巻取バネユニット5とメカニズムカバーユニット6がハウジングユニット3の側面に固定される。巻取バネユニット5とメカニズムカバーユニット6は、ハウジングユニット3の外側で巻取ドラムユニット4の軸方向の両端部を覆い、巻取ドラムユニット4を回転可能に支持する。また、ウエビング2が巻取ドラム10の挿入部11に挿入され、抜け止めピン7により、ウエビング2が挿入部11から抜けるのが防止される。これにより、ウエビング2の端部が巻取ドラム10に取り付けられる。
巻取バネユニット5は、ウエビング2を巻取ドラム10に巻き取る巻取手段であり、巻取ドラム10をウエビング2の巻取時における回転方向(巻取方向という)Mに回転する。ウエビング2は、回転する巻取ドラム10に巻き取られてリトラクタ1内に収納される。その状態から、ウエビング2は、巻取ドラム10をウエビング2の引出時における回転方向(引出方向という)Pに回転しながらリトラクタ1から引き出される。
巻取ドラムユニット4は、クラッチユニット8を有し、リトラクタ1内で巻取方向Mと引出方向Pに回転する。巻取ドラム10は、通常時においてはクラッチユニット8とともに回転し、緊急時等においてはクラッチユニット8から独立して回転する。メカニズムカバーユニット6は、巻取ドラムユニット4のクラッチユニット8を覆い、クラッチユニット8とともに巻取ドラム10の回転を止めるロック機構9を構成する。ロック機構9は、引出方向Pに回転する巻取ドラム10をロックするロック手段である。ウエビング2の急激な引き出しや車両の速度の急激な変化に反応して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転がロック機構9により止められる。このロック機構9の作動により、ウエビング2の引き出しが停止する。
図3、図4は、完全に分解されたリトラクタ1の斜視図であり、互いに異なる方向からみたリトラクタ1を示している。図3は、リトラクタ1を図1と同じ方向からみて示し、図4は、リトラクタ1を図1のW2方向からみて示している。
図示のように、複数の部品を組み合わせることで、リトラクタ1の各ユニット3〜6が組み立てられる。また、複数のユニット3〜6を合体することで、リトラクタ1が製造される。以下、これらリトラクタ1の各部について、順に詳しく説明する。
ハウジングユニット3は、巻取ドラム10を収納するハウジング20と、合成樹脂で形成されたプロテクタ3Aを有する。ハウジング20は、車体に固定される背板部21と、背板部21の両側縁部から突出する一対の側壁部22、23(第1側壁部22、第2側壁部23)と、一対の側壁部22、23に固定された固定板24からなる。プロテクタ3Aは、ウエビング2の通過孔3Bを有し、背板部21の上縁部に取り付けられる。ウエビング2は、プロテクタ3Aの通過孔3Bに通され、巻き取り及び引き出し時に通過孔3Bを通過する。
ハウジング20は、第1側壁部22に形成された円形状の第1開口部25と、第1開口部25の内側に突出する複数のロック歯26と、第2側壁部23に形成された第2開口部27を有する。複数のロック歯26は、三角形状をなし、第1開口部25の内周全体に形成されている。巻取ドラムユニット4の可動パウル4Aがロック歯26に係合することで、巻取ドラム10がロックされて、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が停止する。第2開口部27は、第1開口部25よりも大きく形成され、第1開口部25に対向する。
巻取ドラム10は、第1開口部25に挿入されてハウジング20内に収容される。また、巻取ドラム10の両端部は、それぞれ第1開口部25と第2開口部27内に配置され、クラッチユニット8は、第1側壁部22の側方に配置される。その状態で、メカニズムカバーユニット6が第1側壁部22に取り付けられ、巻取バネユニット5が第2側壁部23に取り付けられる。
図5は、図1のX1−X1線を矢印方向にみたリトラクタ1の断面図であり、図6は、図1のX2−X2線を矢印方向にみたリトラクタ1の断面図である。
図示のように、巻取ドラム10の軸線が第1開口部25の中心に一致する状態で、巻取ドラム10は、ハウジング20、第1開口部25、及び、第2開口部27内で回転する。また、巻取ドラム10は、軸線に沿って側方に突出する一対のシャフト12、13(第1シャフト12、第2シャフト13)を有する。メカニズムカバーユニット6は、クラッチユニット8に組み合わされて、第1シャフト12を回転可能に支持する。巻取バネユニット5は、第2シャフト13に連結されて、第2シャフト13を回転可能に支持する。
巻取バネユニット5(図3、図4参照)は、渦巻バネ5Aと、渦巻バネ5Aを収容するバネケース5Bと、ハウジング20の第2側壁部23に接するバネシート5Cと、バネシャフト5Dを有する。渦巻バネ5Aの外端K1は、バネケース5Bに固定され、渦巻バネ5Bの内端K2は、バネシャフト5Dに固定される。バネシート5Cは、バネケース5Bに取り付けられて、バネケース5B内の渦巻バネ5Aを覆う。その状態で、バネシャフト5Dは、バネケース5Bとバネシート5Cに回転可能に取り付けられる。巻取ドラム10の第2シャフト13は、支持孔5Eに挿入されてバネシート5Cにより回転可能に支持されるとともに、バネシャフト5Dに固定される。
バネシャフト5Dは、巻取ドラムユニット4の巻取ドラム10と一体に回転し、かつ、渦巻バネ5Aの付勢力を巻取ドラム10に伝達する。巻取バネユニット5は、渦巻バネ5Aにより、巻取ドラム10をウエビング2の巻取方向Mに常に付勢する。また、ウエビング2の引出時には、巻取ドラム10の回転により渦巻バネ5Aが巻かれる。ウエビング2の巻取時には、渦巻バネ5Aの付勢により、巻取ドラムユニット4及び巻取ドラム10が巻取方向Mに回転して、ウエビング2が巻取ドラム10に巻き取られる。
図7は、分解された巻取ドラムユニット4の斜視図であり、巻取ドラム10とクラッチユニット8を図2と同じ方向からみて示している。図8は、分解されたクラッチユニット8の斜視図であり、図3のクラッチユニット8を拡大した図である。
図示のように、巻取ドラムユニット4は、ウエビング2の巻取方向Mと引出方向Pに回転可能な巻取ドラム10と、ハウジング20のロック歯26に係合する可動パウル4Aと、クラッチユニット8と、キャップ17を有する。可動パウル4Aは、ロック歯26に係合する係合爪4Bと、側方に突出する連動ピン4Cを有する。巻取ドラム10の端部に形成されたパウル収容部14に可動パウル4Aが収容されたときに、連動ピン4Cは、パウル収容部14の誘導部(貫通部)14Aからクラッチユニット8に向かって突出する。
図9は、可動パウル4Aを収容した巻取ドラム10の正面図であり、図10は、図9のW3方向からみた巻取ドラム10の側面図である。図10には、ハウジング20のロック歯26を点線で示している。
図示のように、可動パウル4Aは、パウル収容部14内に移動可能に収容され、パウル収容部14の内外方向に移動する。その際、連動ピン4Cが、誘導部14Aを摺動して、誘導部14Aに沿って移動する。
また、可動パウル4Aは、係合爪4Bがロック歯26に係合しない非ロック位置(図10Aに示す位置)と、係合爪4Bがロック歯26に係合するロック位置(図10Bに示す位置)との間で移動する。可動パウル4Aがロック位置に移動することで、係合爪4Bがロック歯26に係合し、可動パウル4Aの移動が阻止される。この可動パウル4Aにより、引出方向Pに回転する巻取ドラム10が押さえられて、巻取ドラム10がロックされ、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められる。従って、可動パウル4Aは、クラッチユニット8とともに、ロック機構9の一部をなす。
クラッチユニット8(図7、図8参照)は、円形状のロッキングクラッチ30と、ロッキングクラッチ30に変位可能に連結されたロックアーム40と、リターンスプリング8Aと、センサースプリング8Bを有する。ロッキングクラッチ30は、巻取ドラム10とともに回転し、かつ、巻取ドラム10に対して相対的に回転可能な回転体である。巻取ドラム10の第1シャフト12が、ロッキングクラッチ30の中心孔31に挿入され、キャップ17が、中心孔31から突出する第1シャフト12の先端に固定される。これにより、ロッキングクラッチ30が、巻取ドラム10に相対的に回転可能に連結される。
ロッキングクラッチ30は、巻取ドラム10側に形成されたバネホルダー32を有し、リターンスプリング8Aは、バネホルダー32に取り付けられる。第1シャフト12を中心孔31に挿入する際に、リターンスプリング8Aを縮めた状態で、リターンスプリング8Aとバネホルダー32が巻取ドラム10の凹部15内に配置される。また、可動パウル4Aの連動ピン4Cは、ロッキングクラッチ30の誘導溝33に挿入され、巻取ドラム10の円柱状の突起16(図3参照)は、ロッキングクラッチ30の貫通溝34に挿入される。突起16は、巻取ドラム10の側面に形成され、貫通溝34内を巻取ドラム10の回転方向に移動する。
ロッキングクラッチ30(図7、図8参照)は、リターンスプリング8Aによりウエビング2の引出方向Pに付勢されており、通常時には、巻取ドラム10とともに回転する。その際、可動パウル4Aは、パウル収容部14内で非ロック位置に維持される。緊急時等には、ロッキングクラッチ30がロックされた状態で、停止したロッキングクラッチ30に対して、巻取ドラム10が可動パウル4Aとともに引出方向Pに回転する。これに伴い、可動パウル4Aの連動ピン4Cが、ロッキングクラッチ30により押されて、誘導溝33内を移動する。連動ピン4Cは、誘導溝33により誘導されて、誘導溝33に沿ってロッキングクラッチ30の半径方向外側に移動する。この連動ピン4Cの移動により、可動パウル4Aがロック位置に移動して、可動パウル4Aの係合爪4Bがロック歯26に係合する(図10参照)。なお、各部材(又は、各部材の一部)の半径方向とは、各部材の軸線を中心として、軸線に直交する直線の方向である。
係合爪4Bとロック歯26の係合時には、係合爪4Bがロック歯26に接触して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、係合爪4Bがロッキングクラッチ30の半径方向外側に移動する。これにより、係合爪4Bは、ロック歯26に沿って、ロック歯26の底部に向かって移動する。係合爪4Bがロック歯26の底部に到達したときに、係合爪4Bがロック歯26に完全に係合して、可動パウル4A(係合爪4B)とロック歯26の係合が完了する。係合爪4Bとロック歯26は、このようにして互いに係合する形状に形成されている。
ロック機構9は、巻取ドラム10が引出方向Pに所定量だけ回転する間に、以上のように可動パウル4Aを移動させて、可動パウル4Aをロック歯26に係合する。このロック機構9により、巻取ドラム10がロックされて、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められる。ロッキングクラッチ30のロックが解除された後、リターンスプリング8Aの付勢により(図7、図8参照)、巻取ドラム10に対して、ロッキングクラッチ30が引出方向Pに相対的に回転する。これに伴い、連動ピン4Cが、ロッキングクラッチ30により押されて、誘導溝33内を移動する。連動ピン4Cは、誘導溝33により誘導されて、誘導溝33に沿ってロッキングクラッチ30の半径方向内側に移動する。可動パウル4Aは、連動ピン4Cの移動によりロック歯26から離れて非ロック位置に復帰する。これにより、ロック機構9による巻取ドラム10のロックが解除される。
ロッキングクラッチ30は、複数の歯35を有するラチェットホイール36と、ロックアーム40を回転可能に支持するアーム支持部37と、センサースプリング8Bを支持する支持ピン38を備えている。ラチェットホイール36は、ロッキングクラッチ30の外周に形成された環状部材からなり、巻取ドラム10とともに回転可能になっている。複数の歯35は、ラチェットホイール36の引出方向Pの回転のみを止めるように傾けられており、ラチェットホイール36の外周全体に形成されている。
ロックアーム40は、長手方向の一端部(係合端部)41と他端部(自由端部)42の間に形成された貫通孔43を有し、湾曲形状に形成されている。アーム支持部37を貫通孔43に挿入することで、ロックアーム40が、アーム支持部37に取り付けられて、ロッキングクラッチ30に回転可能に連結される。ロックアーム40は、ラチェットホイール36の内側に配置され、アーム支持部37を中心に回転する。センサースプリング8Bは、ロックアーム40の他端部42と支持ピン38の間に配置されて、他端部42を引出方向Pに付勢する。この付勢により、ロックアーム40の他端部42は、ロッキングクラッチ30の第1ストッパー39Aに接触する。
ロックアーム40は、巻取ドラム10とともに回転可能になっており、巻取ドラム10及びロッキングクラッチ30とともに引出方向Pと巻取方向Mに回転する。通常時には、センサースプリング8Bの付勢により、ロックアーム40の他端部42は、ロッキングクラッチ30の第1ストッパー39Aに接触する状態に維持される。一方、ウエビング2の引き出しの加速度が所定の加速度を超えたときに(即ち、引出方向Pに回転する巻取ドラム10の引出方向Pの加速度(回転の加速度)が所定の加速度を超えたときに)、回転するロッキングクラッチ30に対して、慣性による遅れがロックアーム40に生じる。その結果、ロックアーム40がセンサースプリング8Bを圧縮しつつ回転して、ロックアーム40の一端部41がロッキングクラッチ30の半径方向外側に変位する。これに伴い、後述するように、リトラクタ1のロック機構9が作動する。
このように、ロックアーム40は、巻取ドラム10の引出方向Pの加速度に応じてロック作動方向に変位可能な変位部材であり、加速度に反応して所定のロック作動方向に変位する。ロック作動方向は、ロック機構9を作動するための方向であり、ここでは、ロックアーム40の一端部41がロッキングクラッチ30の半径方向外側に変位する方向である。ロック機構9は、ロック作動方向に変位したロックアーム40により作動する。なお、ロックアーム40がロック作動方向に変位する際には、ロックアーム40が変位してもよく、ロックアーム40が巻取ドラム10及びロッキングクラッチ30に対して相対的に変位してもよい。或いは、ロックアーム40が、変位しつつ巻取ドラム10及びロッキングクラッチ30に対して相対的に変位してもよい。従って、ロックアーム40の変位には、このような各態様での変位を含む。
ロックアーム40は、ロック作動方向に変位可能にロッキングクラッチ30に連結されてロッキングクラッチ30とともに回転する。また、アーム支持部37は、変位部材用支持部であり、回転によりロックアーム40をロック作動方向へ変位させる。ロックアーム40は、ロック作動方向とロック作動方向の反対方向に回転することで、両方向に変位する。センサースプリング8Bの付勢により、ロックアーム40がロック作動方向の反対方向に変位(回転)し、ロックアーム40の一端部41がロッキングクラッチ30の半径方向内側に変位する。
ロック機構9(図2参照)は、ロックアーム40のロック作動方向への変位により作動し、巻取ドラム10の引出方向Pの回転を止める。加えて、ロック機構9は、ラチェットホイール36の引出方向Pの回転停止により作動して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転を止める。
具体的には、リトラクタ1は、メカニズムカバーユニット6内に、ロック作動方向へ変位したロックアーム40を停止する手段(ロックアーム停止手段)と、ラチェットホイール36の回転を停止する手段(ラチェットホイール停止手段)を備えている。ロックアーム40の停止、又は、ラチェットホイール36の回転停止に伴い、ロッキングクラッチ30が停止する。その状態で、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、ロック機構9の可動パウル4Aがロック位置に移動して、巻取ドラム10がロックされる。以下、各停止手段を有するメカニズムカバーユニット6について、詳しく説明する。
メカニズムカバーユニット6(図3、図4参照)は、車両の加速度を検知する加速度センサー50と、クラッチユニット8を収容するメカニズムカバー6Aと、ロックアーム40の変位を規制する規制部材56と、リトラクタ1の状態を切り替える切替手段60を有する。加速度センサー50は、ラチェットホイール停止手段であり、かつ、車両の緊急時にロック機構9を作動する緊急ロック作動装置である。また、加速度センサー50は、センサーホルダー51と、慣性質量体52と、センサーレバー53を有する。慣性質量体52は、金属製の球体からなり、センサーホルダー51の凹部に移動可能に配置される。センサーレバー53は、慣性質量体52を上方から覆い、センサーホルダー51に上下方向に移動可能に取り付けられる。
図11は、加速度センサー50、メカニズムカバー6A、及び、規制部材56の斜視図である。
図示のように、メカニズムカバー6Aは、ロッキングクラッチ30を収容する円筒状のクラッチ収容部6Bと、加速度センサー50を収容するセンサー収容部6Cと、センサー収容部6C内の加速度センサー50を覆うセンサーカバー6Dを有する。加速度センサー50がセンサー収容部6Cに取り付けられた状態で、センサーレバー53のロック爪54が、上方に突出し、クラッチ収容部6Bの開口6Eに配置される。
図12は、図11のW4方向からみたメカニズムカバーユニット6の断面図であり、クラッチ収容部6B内に収容されたロッキングクラッチ30も示している。
図示のように、慣性質量体52は、センサーホルダー51とセンサーレバー53の間に移動可能に保持される。車両の緊急事態(例えば、衝突、急ブレーキ)により、車両の加速度が所定の加速度を超えたときに、慣性質量体52は、慣性力によりセンサーホルダー51の上で移動して、センサーレバー53を上方へ押す。これにより、センサーレバー53のロック爪54が、クラッチ収容部6B内に移動して、ラチェットホイール36の歯35に噛み合う。
ラチェットホイール36の歯35は、ラチェットホイール36が引出方向Pに回転するときのみ、センサーレバー53のロック爪54と噛み合う。ロック爪54により、ラチェットホイール36(ロッキングクラッチ30)がロックされて、ラチェットホイール36の引出方向Pの回転が停止する。これに伴い、ロック機構9が作動して可動パウル4Aにより巻取ドラム10をロックする。ロック機構9により、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2の引き出しが停止する。従って、加速度センサー50とロック機構9は、車両の速度の急激な変化に反応してウエビング2の引き出しを停止する車体感応式ロック機構を構成する。
車両の加速度が所定の加速度以下になったときに、慣性質量体52は、重力により元の位置に移動する。その後、巻取ドラム10が、ウエビング2の負荷から解放されて、巻取方向Mに回転可能になる。巻取ドラム10とロッキングクラッチ30が巻取方向Mに回転することで、ロック爪54が、ラチェットホイール36の歯35から外れて、クラッチ収容部6B外に移動する。同時に、ラチェットホイール36(ロッキングクラッチ30)のロックが解除される。また、ロック機構9による巻取ドラム10のロックが解除され、ウエビング2の引き出しと巻き取りが可能になる。
メカニズムカバー6A(図11参照)は、クラッチ収容部6B内に形成された環状壁6Fと、環状壁6Fの内周に形成された停止部6Gと、環状壁6Fの中心に位置する中心支持部6Hと、中心支持部6Hを貫通する挿入孔6Iを有する。第1シャフト12に固定されたキャップ17(図7参照)が挿入孔6Iに挿入されて、巻取ドラム10の第1シャフト12が中心支持部6Hにより回転可能に支持される。その状態で、ロッキングクラッチ30、ラチェットホイール36、及び、ロックアーム40が、クラッチ収容部6B内に収容される(図11、図12参照)。また、ラチェットホイール36が、クラッチ収容部6Bの内周と環状壁6Fの外周の間に配置され、ロックアーム40が、環状壁6Fの内側に配置される。
中心支持部6Hは、規制部材56を回転可能に支持する規制部材用支持部でもあり、クラッチ収容部6B内に突出する環状凸部からなる。規制部材56は、ロックアーム40を押さえる押さえ部57と、中心支持部6Hに取り付けられる取付部58を有する。第1実施形態のリトラクタ1では、ワイヤを折り曲げることで規制部材56が所定形状に形成され、取付部58が中心支持部6Hに填められるクリップになっている。規制部材56の回転時に、取付部58と中心支持部6Hとの間に摩擦(摩擦力)が生じて、規制部材56に回転に対する抵抗が加えられる。
規制部材56の押さえ部57は、直線状をなし、中心支持部6H(取付部58)からロッキングクラッチ30の半径方向外側に向かって配置されている。押さえ部57の先端部は、ロックアーム40に向かって屈曲し、ロックアーム40は、押さえ部57の屈曲した部分(接触部59)に接触する。規制部材56は、環状壁6Fの内側でロックアーム40に隣接し、中心支持部6Hを中心に巻取方向Mと引出方向Pに回転する。巻取ドラム10の通常の回転時には、規制部材56は、ロッキングクラッチ30とロックアーム40の回転に連動して回転する。
停止部6Gは、ロックアーム停止手段であり、環状壁6Fの内周全体に形成された複数の係合歯6Jを有する。係合歯6Jは、ロック作動方向に変位したロックアーム40と係合する停止部6Gの係合部であり、ロックアーム40の一端部41と係合する。また、複数の係合歯6Jは、ロックアーム40に向かって突出するとともに、ロックアーム40及びロッキングクラッチ30の引出方向Pの回転のみを止めるように傾く。ロッキングクラッチ30が引出方向Pに回転するときのみ、ロックアーム40の一端部41が、停止部6Gの係合歯6Jに引っ掛かるようにして係合する。
図13は、ウエビング2の引出時におけるロックアーム40の動作を示す図であり、停止部6Gの一部とクラッチユニット8を示している。また、図13Aには、ロックアーム40のロック作動方向Lを矢印で示している。ロックアーム40が回転によりロック作動方向Lに変位する際には、ロックアーム40の一端部41が停止部6Gに向かって変位し、ロックアーム40の他端部42が規制部材56の押さえ部57に向かって変位する。
ウエビング2の通常の引出時には(図13A参照)、巻取ドラム10とともに、ロッキングクラッチ30及びロックアーム40が、引出方向Pに一体に回転する。その際、ロックアーム40の一端部41は、停止部6G(係合歯6J)から離れた位置に配置され、ロックアーム40は、停止部6Gに係合しない状態に維持される。
規制部材56の押さえ部57は、巻取ドラム10の引出方向Pの回転によりロックアーム40の他端部42から離れて、ロッキングクラッチ30の第2ストッパー39Bに接触する。第2ストッパー39Bにより押さえ部57が引出方向Pに押されて、規制部材56がロッキングクラッチ30とともに引出方向Pに回転する。また、押さえ部57は、巻取ドラム10の引出方向Pの回転中は、ロックアーム40から離れた状態(ロックアーム40のロック作動方向Lへの変位を規制しない状態)に維持され、ロックアーム40のロック作動方向Lへの変位を許容する。
ウエビング2の急激な引き出しにより、巻取ドラム10の引出方向Pの加速度が所定の加速度を超えたときに、ロックアーム40が、巻取ドラム10の引出方向Pの加速度に応じてロック作動方向Lに変位する(図13B参照)。これに伴い、ロックアーム40が、回転により変位してロッキングクラッチ30の第3ストッパー39Cに接触する。また、ロックアーム40の一端部41が、停止部6Gに接近して係合歯6Jに係合する。停止部6Gは、ロック作動方向Lに変位したロックアーム40と係合して、ロックアーム40を停止する。
ロックアーム40が停止部6G(係合歯6J)に係合することで、停止部6Gがロック作動方向Lに変位したロックアーム40を保持し、巻取ドラム10とともに回転するロックアーム40及びロッキングクラッチ30の回転が停止する。また、ロックアーム40が停止部6Gで停止した状態に維持され、その状態で、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、ロック機構9が作動を開始する。
具体的には、ロックアーム40により、ロッキングクラッチ30がロックされて、ロッキングクラッチ30の引出方向Pの回転が停止する。これに伴い、ロック機構9が作動して可動パウル4Aにより巻取ドラム10をロックする。ロック機構9により、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2の引き出しが停止する。従って、ロックアーム40の停止部6Gは、ロック機構9の一部を構成する。また、停止部6Gとロック機構9は、ウエビング2の急激な引き出しに反応してウエビング2の引き出しを停止するウエビング感応式ロック機構を構成する。
ロックアーム40の一端部41が係合歯6Jから外れると、ロッキングクラッチ30のロックが解除される。ロックアーム40は、停止部6Gから解放されてロック作動方向Lの反対方向に変位する。その後、巻取ドラム10が、ウエビング2の負荷から解放され、ウエビング2の巻き取りに応じて巻取方向Mに回転する。これに伴い、ロッキングクラッチ30が巻取ドラム10に対して引出方向Pに相対的に回転して、ロック機構9による巻取ドラム10のロックが解除される。以降、ウエビング2の引き出しと巻き取りが可能になる。
図14は、ウエビング2の巻取時におけるロックアーム40の動作を示す図であり、停止部6Gの一部とクラッチユニット8を示している。
ウエビング2の通常の巻取時には(図14A参照)、巻取ドラム10とともに、ロッキングクラッチ30及びロックアーム40が巻取方向Mに一体に回転する。その際、規制部材56の押さえ部57は、ロックアーム40の他端部42に接触して、他端部42により巻取方向Mに押される。これにより、規制部材56は、ロックアーム40とともに巻取方向Mに回転する。
ここで、ウエビング2の巻取終了に伴い(図14B参照)、巻取ドラム10の回転停止の反動により、ロック機構9が誤って作動する虞がある。即ち、回転を停止したロッキングクラッチ30に対して、ロックアーム40が慣性力によりロック作動方向L(ここでは巻取方向M)に変位して、ロック機構9が作動する。ロック機構9が作動すると、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2が巻取ドラム10から引き出せなくなる。同時に、ウエビング2の全体が巻き取られているため、ウエビング2の巻き取りもできず、リトラクタ1にエンドロックが発生する。これに対し、第1実施形態のリトラクタ1では、規制部材56が、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転停止の反動によるロックアーム40のロック作動方向Lへの変位を規制して、ロック機構9の作動を防止する。
図15は、ロックアーム40の変位を規制する規制部材56を示す図である。図15Aは、図14Bの一部を拡大した図、図15Bは図15AのY1部を拡大した図である。
規制部材56の押さえ部57(接触部59)は、上記したように、巻取ドラム10の引出方向Pの回転時にロックアーム40から離れる。巻取ドラム10の巻取方向Mの回転時には、図示のように、押さえ部57が、ロックアーム40に接触してロック作動方向Lへ変位するロックアーム40を押さえる。即ち、押さえ部57は、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転によりロックアーム40の他端部42に接触し、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転中は、ロックアーム40に接触した状態に維持される。また、押さえ部57は、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転停止の反動によりロック作動方向Lへ変位するロックアーム40を押さえる。
ロックアーム40は、ロック作動方向Lへの変位時に、規制部材56の押さえ部57に係合する係合部44を有する。係合部44は、ロックアーム40の他端部42に形成された凸部からなり、ロック作動方向L側に突出する。巻取ドラム10の巻取方向Mの回転時には、まず、規制部材56の押さえ部57は、ロックアーム40の係合部44から離れた位置(摺動部45)に接触する。ロックアーム40の摺動部45は、ロックアーム40の係合部44に近接する部分である。押さえ部57は、摺動部45を摺動して、係合部44に近づき、又は、係合部44から離れる。その状態では、係合部44は、押さえ部57に係合せず、規制部材56は、摺動部45を摺動しつつロックアーム40とともに巻取方向Mに回転する。
ロックアーム40のロック作動方向Lへの変位が開始したときに、押さえ部57と係合部44が接近し、係合部44が押さえ部57に係合する。その際、押さえ部57が、平面又は曲面からなる摺動部45を係合部44に向かって摺動して、係合部44に接触する。また、凸部からなる係合部44が、押さえ部57の接触部59に接触して引っ掛かり、押さえ部57の移動を止めて、押さえ部57に係合する。係合部44は、規制部材56の押さえ部57を拘束して、押さえ部57の移動(摺動、及び、回転を含む)を阻止する。係合部44により、押さえ部57の移動が阻止されて、規制部材56が停止する。
ロックアーム40の係合部44により、規制部材56は、押さえ部57によりロックアーム40を押さえてロックアーム40の変位を規制する状態(規制状態)に維持される。また、押さえ部57は、係合部44に係合することで、ロックアーム40を押さえる状態に維持されて、ロックアーム40のロック作動方向Lの変位を止める。規制部材56は、ロックアーム40とともに変位する係合部44を押さえ部57により押さえて、ロックアーム40のロック作動方向Lへの変位を規制する。
第1実施形態のリトラクタ1では、ロックアーム40の係合部44は、規制部材56の押さえ部57に接触する係合面46を有し、係合面46で押さえ部57に係合する。係合面46は、平面又は曲面からなり、押さえ部57を移動させる方向の力を押さえ部57に加えないように形成されている。また、規制部材用支持部である中心支持部6Hにより、規制部材56の回転中心N1がロックアーム40の回転中心N2と異なる位置に配置されている。加えて、係合部44の回転半径R2は、押さえ部57の回転半径R1よりも大きく設定されている。係合部44の回転半径R2は、ロックアーム40の回転中心N2から係合部44と押さえ部57の接点までの距離であり、押さえ部57の回転半径R1は、規制部材56の回転中心N1から係合部44と押さえ部57の接点までの距離である。
係合部44の回転による変位方向(回転軌跡)S2は、押さえ部57(接触部59)の回転方向(回転軌跡)S1に交差する方向に設定されている。その結果、ロックアーム40のロック作動方方向Lへの変位開始に伴い、係合部44は、ロックアーム40とともに規制部材56の押さえ部57を押さえ付ける方向に変位して、変位方向S2の前方に位置する押さえ部57に係合する。続いて、係合部44が、押さえ部57に押し付けられて、押さえ部57の移動を阻止する方向の力を押さえ部57に加える。係合部44と押さえ部57の接点において、係合面46の法線Tは、規制部材56の回転中心N1を通過する。そのため、係合部44により、押さえ部57が中心支持部6Hに押さえ付けられて、回転中心N1へ向かう力のみが押さえ部57に加えられる。
この係合部44から加えられる力により、押さえ部57の移動が阻止されて、規制部材56が規制状態に維持される。また、ロックアーム40の変位によるロック機構9の作動が防止されて、リトラクタ1にエンドロックが発生するのが抑制される。ロックアーム40をロック作動方向Lに変位させる慣性力がロックアーム40に作用しなくなったときに、センサースプリング8Bの付勢により、係合部44が、変位方向S2の反対方向に変位して、押さえ部57から円滑に離れる。これにより、係合部44と押さえ部57の係合が解除される。
なお、ロックアーム40と規制部材56に関して、押さえ部57の係合部44に接触する面は、曲面に形成してもよく、平面、又は、角部を有する形状に形成してもよい。押さえ部57は、係合部44と線で接触してもよく、係合部44と点、又は、面で接触してもよい。係合面46の法線Tが規制部材56の回転中心N1からずれるように、係合部44を形成してもよい。例えば、係合面46の法線Tをロックアーム40の回転中心N2側にずらすことで、係合部44から押さえ部57に回転方向S1の反対側の力が加えられる。また、押さえ部57の回転に干渉する部分(フック状部等)を、係合部44に形成してもよい。このようにすることで、係合部44が、押さえ部57をより確実に拘束するとともに、規制部材56が、押さえ部57によりロックアーム40を押さえた状態に安定して維持される。
これに対し、押さえ部57と係合部44の静止摩擦力により、押さえ部57を係合部44に保持して、係合部44を押さえ部57に係合するようにしてもよい。係合部44と押さえ部57の静止摩擦係数をμとしたとき、摩擦角θは、μとθの関係式(μ=tanθ)より算出される。また、係合部44と押さえ部57の接点を規制部材56の回転中心N1と結んで、接点と回転中心N1に仮想線を引く。この仮想線と係合面46の法線Tのなす角度(法線角度)が摩擦角θ以下であるときに、押さえ部57が静止摩擦力により係合部44に保持される。
例えば、係合部44(ポリアセタール樹脂)と押さえ部57(ステンレス鋼)の静止摩擦係数μが0.15である場合には、摩擦角θは約8.5度となる。従って、法線角度が8.5度以下であれば、係合面46の法線Tの方向にかかわらず、係合部44が押さえ部57に係合した状態に維持される。この場合には、法線Tを、規制部材56の回転中心N1から押さえ部57の回転方向S1に向けてずらしてもよい。また、法線角度が摩擦角θ以下であるとの条件を満すように、法線Tの方向を変更してもよい。法線角度が摩擦角θ以下であるとの条件を満たす限り、法線角度に誤差が生じていてもよい。
ここで、規制部材56によりロックアーム40の変位を規制しても、巻取ドラム10の巻取方向Mの速度やウエビング2の停止の仕方等によっては、ロック機構9が作動して、リトラクタ1にエンドロックが発生する虞がある。エンドロックが発生したときには(図13参照)、ロックアーム40の一端部41が停止部6Gの係合歯6Jに係合することで、ロックアーム40が停止部6Gに係合する。
これに対し、第1実施形態のリトラクタ1は(図3参照)、ロック機構9が作動する間に、ロックアーム40と停止部6Gの係合を解除する解除手段18を備えている。仮に、リトラクタ1にエンドロックが発生したとしても、解除手段18により、ロックアーム40と停止部6Gの係合を解除して、リトラクタ1のエンドロックを解除する。解除手段18は、巻取ドラム10に形成された突起16と、ロッキングクラッチ30に形成された貫通溝34を有する。突起16は、巻取ドラム10からロックアーム40に向かって突出し、貫通溝34内を巻取ドラム10の回転方向に移動する。また、突起16は、貫通溝34を貫通して、ロックアーム40に接触する。
図16、図17は、エンドロック時のリトラクタ1の動作を示す図であり、リトラクタ1の要部を図12と同様に示している。また、図16、図17は、停止部6Gの一部とクラッチユニット8を示すとともに、ロックアーム40の断面を示している。ロッキングクラッチ30の一部を透視することで、可動パウル4Aとロック歯26の一部も図16、図17に示している。
図示のように、突起16は、ロックアーム40に形成された凹部47内に配置され、凹部47内で移動してロックアーム40に接触する。
エンドロック時には(図16A、図16B参照)、ロックアーム40がロック作動方向Lに変位し、停止部6Gがロックアーム40と係合してロックアーム40を停止する。このロックアーム40により、ロッキングクラッチ30がロックされて停止する。その状態で、ウエビング2をリトラクタ1から引き出すことで、巻取ドラム10が引出方向Pに回転する。また、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、ロック機構9の作動が開始して、ロック機構9が巻取ドラム10の回転を止める。その際、巻取ドラム10がロッキングクラッチ30に対して相対的に回転することで、突起16が、引出方向Pに移動してロックアーム40に接触する(図16C参照)。従って、突起16は、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い移動してロックアーム40に接触する接触部材である。
巻取ドラム10が引出方向Pに回転する間に、突起16が、ロックアーム40の一端部41側の部分を引出方向Pに押す(図16D参照)。従って、突起16は、ロックアーム40を直接押して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転をロックアーム40に伝達する回転伝達部材でもある。解除手段18は、突起16により巻取ドラム10の回転をロックアーム40に伝達する伝達機構19を有する。伝達機構19により、ロックアーム40を停止部6Gから外して、リトラクタ1のエンドロックを解除する。
具体的には、ロック機構9の作動開始から、ロック機構9により巻取ドラム10の引出方向Pの回転が完全に止まるまでの間に、伝達機構19が、巻取ドラム10の引出方向Pの回転(回転の力)をロックアーム40に伝達する。この伝達機構19は、上記したように、突起16からなる回転伝達部材を有する。突起16が、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴いロックアーム40に接触してロックアーム40を押す。続いて、伝達機構19(突起16)は、ロックアーム40に力を加えて、ロックアーム40を停止部6Gとの係合を解除する方向(解除方向)に変位させる。解除手段18の伝達機構19により、ロックアーム40が停止部6Gから外れて、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される(図17A参照)。
可動パウル4Aが非ロック位置からロック位置に移動する間に、解除手段18は、ロックアーム40と停止部6Gの係合を解除する。その際、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い可動パウル4Aがロック歯26に係合する状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される。ここでは、可動パウル4Aの係合爪4Bがロック歯26に接触した状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される。続いて、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、係合爪4Bがロック歯26に沿って移動してロック歯26の底部に到達し、可動パウル4Aとロック歯26の係合が完了する。
これに対し、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い係合爪4Bがロック歯26に接触可能な状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除されるようにしてもよい。この場合には、係合爪4Bがロック歯26に接触しない状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される。続いて、リターンスプリング8Aの付勢により、ロッキングクラッチ30が巻取ドラム10に対して引出方向Pに相対的に回転し、可動パウル4Aが非ロック位置に向かって移動する。ただし、係合爪4Bは、ロック歯26に接触可能な位置にあり、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴いロック歯26に接触する。その後、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、可動パウル4Aとロック歯26の係合が完了する。
図18は、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される過程を示す図であり、ロックアーム40と停止部6Gを拡大して示している。
図示のように、解除手段18は、伝達機構19によりロックアーム40を押して、ロックアーム40を停止部6Gに沿って移動させつつ解除方向に変位させる。その際、まず、伝達機構19の突起16が、ロックアーム40の一端部41を停止部6Gの係合歯6Jに向かって押す(矢印Q1)。これに伴い、ロックアーム40の一端部41が、係合歯6Jの係合面に沿って移動し始めて、係合歯6Jの先端に向かって移動する(矢印Q2)。
ロックアーム40の一端部41の移動に連動して、ロックアーム40がアーム支持部37を中心に回転するとともに、ロックアーム40のアーム支持部37が移動する(矢印Q3)。また、アーム支持部37が移動し始めた後、ロッキングクラッチ30がアーム支持部37により巻取方向Mに押される。その結果、ロックアーム40がロッキングクラッチ30とともに巻取方向Mに回転しつつ、ロックアーム40の一端部41が係合歯6Jの先端に向かって移動する。同時に、ロックアーム40が回転中心N2(アーム支持部37)回りにロック作動方向Lの反対方向(解除方向)に回転し、ロックアーム40の全体が係合歯6Jから離れる方向に変位する。
ロックアーム40の変位時に、伝達機構19の突起16は、ロックアーム40の凹部47内で、ロックアーム40の接触面(接触部)47Aに接触する。凹部47は、ロックアーム40の巻取ドラム10側に形成され、接触面47Aは、凹部47の平滑な内面からなる。突起16は、凹部47内で、接触面47Aに沿って摺動して、ロックアーム40の一端部41側に円滑に移動する。この移動に伴い、突起16は、ロックアーム40の動きを妨げることなく、ロックアーム40の一端部41を停止部6Gの係合歯6Jに向かって押す。突起16と停止部6Gの係合歯6Jにより、ロックアーム40とロッキングクラッチ30が回転して、ロックアーム40が変位する。
解除手段18は、停止部6Gからロックアーム40が受ける力により、ロックアーム40をロッキングクラッチ30とともに停止部6Gから離れる方向(ここでは巻取方向M)に回転させつつ、ロックアーム40を解除方向に変位させる。その際、ロックアーム40は、係合歯6Jに係合した状態で、係合歯6Jの先端に向かって移動する。係合歯6Jは、解除方向に変位するロックアーム40を移動させつつ、ロックアーム40に力を加えて、ロックアーム40とロッキングクラッチ30を回転させる。また、ロックアーム40は、係合歯6Jに沿った移動に伴い、回転中心N2回りに回転する。このように、係合歯6Jは、ロックアーム40と係合した状態で、解除方向に変位するロックアーム40を先端に向かって移動させつつ回転させ、かつ、ロックアーム40に、ロッキングクラッチ30とともに回転する力を加える。
ロックアーム40の変位により、ロックアーム40の一端部41が停止部6Gの係合歯6Jから外れたときに、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除されて、ロックアーム40が停止部6Gから解放される。これに伴い、ロックアーム40は、ロック作動方向Lの反対方向に変位して元の位置に復帰する(図17A、図17B参照)。また、ロッキングクラッチ30のロックが解除される。ロック機構9は、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除された後に、巻取ドラム10の引出方向Pの回転を止める。従って、解除手段18は、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴いロック機構9が作動する状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合を解除する。
その後、ウエビング2を巻き取ることで、巻取ドラム10が巻取方向Mに回転し、ロッキングクラッチ30が巻取ドラム10に対して引出方向Pに相対的に回転する(図17C参照)。ウエビング2の巻取前にロッキングクラッチ30のロックが解除されているため、巻取ドラム10が巻取方向Mに回転した後、ロッキングクラッチ30の引出方向Pの回転が早期に開始する。また、可動パウル4Aの連動ピン4Cが誘導溝33により誘導されて、可動パウル4Aの係合爪4Bがロック歯26から外れる位置まで移動する。このように可動パウル4Aが移動すると、ロッキングクラッチ30が急速に引出方向Pに相対的に回転して、可動パウル4Aが非ロック位置に移動する(図17D参照)。これに伴い、ロック機構9による巻取ドラム10のロックが解除され、以降、ウエビング2の引き出しと巻き取りが可能になる。
なお、エンドロックの発生と同時に、車両の振動等により加速度センサー50が作動して、センサーレバー53のロック爪54がラチェットホイール36の歯35に噛み合う虞がある。この場合には、解除手段18によるロッキングクラッチ30の巻取方向Mの回転を利用して、ロック爪54を歯35から外すようにしてもよい。これにより、加速度センサー50によるラチェットホイール36の停止が解除される。
解除手段18と伝達機構19に関して、巻取ドラム10の突起16をロックアーム40の外面に接触させて、ロックアーム40を押すようにしてもよい。ロックアーム40に形成した突起(回転伝達部材)を巻取ドラム10の側面部に接触させることで、巻取ドラム10の回転をロックアーム40に伝達してもよい。巻取ドラム10の回転は、ロックアーム40に直接伝達せずに、回転伝達部材を介して、ロックアーム40に間接的に伝達するようにしてもよい。
また、可動パウル4Aの連動ピン4Cを回転伝達部材として利用してもよい。この場合には、例えば、ロックアーム40の他端部42を部分的に誘導溝33に向かって形成し、連動ピン4Cをロックアーム40の他端部42に向かって形成する。このように、ロックアーム40の他端部42と連動ピン4Cを接触可能な形状に形成し、誘導溝33内を移動する連動ピン4Cにより、ロックアーム40の他端部42を押す。これにより、巻取ドラム10の回転をロックアーム40に伝達して、ロックアーム40を解除方向に変位させる。
伝達機構19によるロックアーム40の変位と同時に、誘導溝33内を移動する可動パウル4Aの連動ピン4Cにより、ロッキングクラッチ30を巻取方向Mに押すようにしてもよい。この場合には、係合爪4Bがロック歯26に沿って移動してロック歯26の底部に到達する際に、連動ピン4Cが誘導溝33内を移動しつつロッキングクラッチ30を巻取方向Mに押す。また、ロッキングクラッチ30が巻取方向Mに回転することで、ロックアーム40が停止部6Gから離れる方向に変位する。その結果、ロックアーム40と停止部6Gの係合の解除が補助される。ロックアーム40やロッキングクラッチ30にガタツキがあるときには、ガタツキによっても、ロックアーム40が解除方向に変位する。
次に、リトラクタ1の状態を切り替える切替手段60について説明する(図3、図4参照)。切替手段60により、リトラクタ1の状態が、使用目的に対応して、自動ロック状態(ALR)と緊急ロック状態(ELR)とに切り替えられる。自動ロック状態は、ロック機構9が常に作動する状態であり、緊急ロック状態は、車両の緊急時に、ロック機構9が作動する状態である。自動ロック状態では、ウエビング2が引き出せなくなり、ウエビング2の巻き取りのみが可能になる。例えば、チャイルドシートや荷物をシートに固定するときに、リトラクタ1が自動ロック状態に切り替えられる。これに対し、緊急ロック状態では、ウエビング2の巻き取り及び引き出しが可能である。ただし、車両の緊急時には、ロック機構9が作動して、ロック機構9により巻取ドラム10がロックされる。その結果、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2の引き出しが停止する。
切替手段60は、ロック機構9の状態を切り替える切替機構であり、ロック機構9の状態を切り替えて、リトラクタ1の状態を切り替える。切替手段60により、ロック機構9は、作動状態と待機状態とに切り替えられる。作動状態は、ロック機構9が作動する状態であり、作動状態のロック機構9は、巻取ドラム10をロックして、巻取ドラム10の引出方向Pの回転を止める。この作動状態では、ロック機構9は、巻取ドラム10の引出方向Pの回転のみを止めて、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転を許容する。待機状態は、ロック機構9が作動まで待機する状態であり、待機状態のロック機構9は、車両の緊急時に作動する。待機状態では、切替手段60がロック機構9を作動することはなく、ロック機構9は、巻取ドラム10の引出方向Pと巻取方向Mの回転を許容する。この待機状態中に、ロック機構9は、切替手段60から独立して作動可能であり、車両の緊急時に、ウエビング感応式ロック機構と車体感応式ロック機構として作動する。
リトラクタ1の状態を切り替える際に、切替手段60は、ロック機構9の作動を制御して、ロック機構9の状態を切り替える。具体的には、切替手段60により、ロック機構9が待機状態から作動状態に切り替えられて、リトラクタ1が緊急ロック状態から自動ロック状態に切り替えられる。また、切替手段60により、ロック機構9が作動状態から待機状態に切り替えられて、リトラクタ1が自動ロック状態から緊急ロック状態に切り替えられる。
切替手段60は、ロック機構9を作動する作動部材61と、作動部材61を所定位置に配置するアーム状の配置部材62と、配置部材62を移動する円盤状の移動部材70と、配置部材用付勢手段である第1付勢手段63と、作動部材用付勢手段である第2付勢手段64と、減速機構80を備えている。また、減速機構80は、駆動歯車81、中間歯車82、及び、従動歯車83を有し、組み合わされた複数の歯車81、82、83により、巻取ドラム10と移動部材70に連結される。
作動部材61と配置部材62は、メカニズムカバー6A(図3参照)に形成された円柱状の回転軸(回転用の軸)6Kに回転可能に取り付けられる。第1付勢手段63は、弾性変形可能な付勢部材(ばね、ゴム、弾性部材等)(ここでは、引張コイルばね)からなり、配置部材62とメカニズムカバー6Aに取り付けられる。第2付勢手段64は、弾性変形可能な付勢部材(ばね、ゴム、弾性部材等)(ここでは、ねじりばね)からなり、作動部材61とメカニズムカバー6Aに取り付けられる。移動部材70の中心孔71は、メカニズムカバー6Aの環状支持部6Lに回転可能に取り付けられ、移動部材70は、環状支持部6Lを中心に回転する。
第1シャフト12に固定されたキャップ17は、挿入孔6Iに挿入されて、環状支持部6L内に配置される。駆動歯車81は、環状支持部6L内でキャップ17に固定され、移動部材70の中心で、巻取ドラム10の第1シャフト12及びキャップ17と一体に回転する。従動歯車83は、移動部材70の内側凸部72に形成された内歯車であり、駆動歯車81及び中間歯車82よりも大きな歯車になっている。中間歯車82は、駆動歯車81よりも大きい第1歯車82Aと、第1歯車82Aよりも小さい第2歯車82B(図4参照)を有し、外面カバー6Vに回転可能に取り付けられる。第1歯車82Aは駆動歯車81に噛み合い、第2歯車82Bは従動歯車83に噛み合う。外面カバー6Vは、メカニズムカバー6Aに取り付けられて、切替手段60を覆う。
図19は、図4のW5方向からみたリトラクタ1の側面図であり、外面カバー6Vを取り外したメカニズムカバーユニット6を示している。また、図19は、メカニズムカバー6A(クラッチ収容部6B)内に収容されたロッキングクラッチ30のラチェットホイール36も示している。ラチェットホイール36は、クラッチ収容部6Bの開口6Mにおいて露出する。なお、図19は、実線で示す位置から移動した作動部材61の一部と配置部材62の一部を点線で示している。
図示のように、巻取ドラム10が回転すると、駆動歯車81がキャップ17と一体に回転する。駆動歯車81の回転により、第1歯車82Aが回転して、中間歯車82が駆動歯車81の回転速度よりも遅い回転速度で回転する。中間歯車82の第2歯車82Bの回転により、従動歯車83が中間歯車82の回転速度よりも遅い回転速度で回転し、移動部材70が巻取ドラム10の回転に連動して回転する。減速機構80は、巻取ドラム10の回転を減速して移動部材70に伝達し、移動部材70を巻取ドラム10の回転速度よりも遅い回転速度で回転する。ここでは、ウエビング2の全体が引き出される間に、移動部材70が360°以下の所定角度だけ回転する。また、移動部材70は、巻取ドラム10の回転方向の反対方向に回転する。
作動部材61と配置部材62は、回転軸6Kの軸方向に重なるように1つの回転軸6Kに回転可能に取り付けられ、連動して回転可能に組み合わされる。その状態で、作動部材61が、移動部材70に対してラチェットホイール36側に配置され、配置部材62が、移動部材70の内側凸部72側の面に沿って配置される。移動部材70は、回転により配置部材62を移動するカム部材であり、かつ、配置部材62により作動部材61の位置を制御する制御部材である。切替手段60は、制御部材である移動部材70によりロック機構9の作動を制御して、ロック機構9を作動状態と待機状態とに切り替える。切替手段60により、ロック機構9の状態は、ウエビング2の引出量(引出長さ)と巻取量(巻取長さ)に応じて制御されて切り替えられる。また、切替手段60は、移動部材70により配置部材62と作動部材61の位置を制御して、ロック機構9の状態を切り替える。
配置部材62は、移動部材70に従動するカムフォロアであり、かつ、リトラクタ1の状態を切り替える切替レバーである。この配置部材62により、ロック機構9の状態が切り替えられる。作動部材61は、配置部材62に連動する連動部材であり、かつ、ロック機構9の作動と非作動を切り替える作動スイッチ(切替スイッチ)である。ロック機構9は、作動部材61により作動して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転のみを止めて、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転を許容する。ここでは、作動部材61は、メカニズムカバー6A内でラチェットホイール36の歯35に噛み合う噛合部材であり、歯35への噛合により、ラチェットホイール36の引出方向Pの回転を止める。ロック機構9は、作動部材61と歯35の噛み合いによるラチェットホイール36の引出方向Pの回転停止に伴い作動する。従って、作動部材61を備えた切替手段60は、ラチェットホイール停止手段でもある。
作動部材61と配置部材62は、回転軸6Kを中心に回転して、同じ回転方向に移動する。即ち、リトラクタ1は、作動部材61と配置部材62を回転により移動させる回転手段65を備えており、回転手段65は、1つの回転軸6Kを有する。配置部材62は、回転手段65により、作動部材61とともに回転により移動(図19の矢印H)する。また、配置部材62の移動(回転)に連動して、作動部材61は、ロック機構9を作動しない非作動位置E1(図19に実線で示す位置)と、ロック機構9を作動する作動位置E2(図19に点線で示す位置)に移動(回転)する。
作動部材61の非作動位置E1は、作動部材61がラチェットホイール36の歯35に噛み合わない位置(非噛合位置)である。非作動位置E1の作動部材61により、ロック機構9は待機状態に維持される。作動部材61の作動位置E2は、作動部材61がラチェットホイール36の歯35に噛み合う位置(噛合位置)である。配置部材62により、作動部材61は、非作動位置E1(非噛合位置)から作動位置E2(噛合位置)に移動してロック機構9を作動する。作動位置E2の作動部材61により、ロック機構9は作動状態に維持される。
具体的には、配置部材62の移動に伴い、作動部材61は、ラチェットホイール36に近づき、又は、ラチェットホイール36から離れる。また、加速度センサー50のロック爪54と同様に、作動部材61は、開口6Mにおいて、クラッチ収容部6B内のラチェットホイール36の歯35に噛み合う。これにより、ラチェットホイール36の回転が停止して、ロック機構9が作動する。
第2付勢手段64は、作動部材61を作動位置E2に向かって常に付勢する。作動部材61は、ラチェットホイール36に接触したときに、第2付勢手段64によりラチェットホイール36に押し付けられる。これに対し、配置部材62は、第1付勢手段63により、作動部材61を非作動位置E1に移動する方向(作動部材61をラチェットホイール36から離す方向)(ここでは、移動部材70の半径方向内側)に常に付勢されている。図19では、作動部材61は、第2付勢手段64により反時計回りに回転するように付勢され、配置部材62は、第1付勢手段63により時計回りに回転するように付勢されている。
第1付勢手段63の付勢力と第2付勢手段64の付勢力とが釣り合った状態(図19に示す状態)で、配置部材62は、移動部材70の半径方向内側に位置し、内側凸部72近傍の第1位置F1(図19に実線で示す位置)に配置される。配置部材62の第1位置F1は、作動部材61が非作動位置E1に配置される位置であり、作動部材61は、配置部材62により非作動位置E1に配置される。その状態から、配置部材62は、作動部材61を作動位置E2に移動する方向(作動部材61をラチェットホイール36に近づける方向)(ここでは、移動部材70の半径方向外側)に移動して、第1位置F1の外側の第2位置F2(図19に点線で示す位置)に配置される。第2位置F2は、作動部材61が作動位置E2に配置される位置であり、作動部材61は、配置部材62により作動位置E2に配置される。
このように、配置部材62は、回転手段65の回転により、第1位置F1と第2位置F2とに配置される。同時に、配置部材62は、作動部材61とともに移動して、作動部材61を非作動位置E1と作動位置E2に配置する。また、第1付勢手段63は、配置部材62を第1位置F1に向かって付勢している。配置部材62が第2位置F2に配置された状態では、第1付勢手段63の付勢力が第2付勢手段64の付勢力よりも大きいため、配置部材62が第1付勢手段63の付勢により第1位置F1に移動して、作動部材61が非作動位置E1に移動する。
図20は、作動部材61と配置部材62の斜視図であり、図21は、図19のY2部の断面図である。
図示のように、配置部材62は、回転軸6Kに取り付けられる円筒状の取付部62Aと、取付部62Aから突出するアーム部62Bと、アーム部62Bの先端に形成された突起からなる接触部62Cを有する。接触部62Cが移動部材70に接触して移動することで、アーム部62Bが取付部62Aを中心に回転し、配置部材62が移動する。
作動部材61は、回転軸6Kに取り付けられる円筒状の取付部61Aと、取付部61Aから突出するアーム部61Bと、アーム部61Bの先端に形成された噛合パウル61Cを有する。噛合パウル61Cは、作動部材61に形成された噛合部(噛合爪)であり、作動部材61と一体に移動する。取付部61Aを中心にアーム部61Bが回転することで、作動部材61が移動し、噛合パウル61Cがラチェットホイール36の歯35に噛み合う。
噛合パウル61Cとラチェットホイール36の歯35は、ラチェットホイール36が引出方向Pに回転するときのみ噛み合うように形成されている。噛合パウル61Cは、ロック機構9の一部を構成しており、ロック機構9は、ラチェットホイール36と噛合パウル61Cとを備えている。作動部材61は、作動位置E2への移動により噛合パウル61Cを歯35に噛み合う位置に配置し、非作動位置E1への移動により噛合パウル61Cを歯35に噛み合わない位置に配置する。ロック機構9は、歯35と噛合パウル61Cの噛み合いに伴い作動する。ラチェットホイール36が巻取方向Mに回転するときには、噛合パウル61Cは、歯35の外面を相対的に摺動し、歯35の先端において歯35を乗り越える。
作動部材61の取付部61Aと配置部材62の取付部62Aを回転軸6Kに取り付けたときに、取付部61A、62Aの円弧部61D、62Dが組み合わされる。その際、第2付勢手段64の付勢(図21の矢印G)により、円弧部61D、62Dの一端部が接触するとともに、円弧部61D、62Dの他端部の間に隙間66が形成される。配置部材62(図21では、円弧部62Dの断面のみ示す)が第1位置F1に移動するときには、作動部材61は、配置部材62により押されて回転し、隙間66を維持しつつ非作動位置E1に移動する。また、配置部材62が第2位置F2に移動するときには、配置部材62の移動に伴い、作動部材61が、第2付勢手段64の付勢により、隙間66を維持しつつ作動位置E2まで移動する。
作動部材61の噛合パウル61Cは、引出方向Pに回転するラチェットホイール36の歯35のみに噛み合う。その状態で、ラチェットホイール36が巻取方向Mに回転すると、噛合パウル61Cが歯35により押される。これにより、配置部材62が停止した状態で、作動部材61が、隙間66を狭くしつつ歯35に沿って変位して、複数の歯35を順に乗り越える。
従って、リトラクタ1は、以上のように構成される作動部材61の変位機構67を備える。配置部材62が第2位置F2に維持された状態で、変位機構67により、作動部材61の噛合パウル61Cは、巻取ドラム10とともに巻取方向Mに回転するラチェットホイール36の歯35に沿って変位する。これにより、ラチェットホイール36の巻取方向Mの回転中に、噛合パウル61Cが複数の歯35に噛合可能な状態に確実に維持される。ラチェットホイール36が引出方向Pに回転すると、噛合パウル61Cが再び歯35に噛み合う。
配置部材62(図19参照)は、作動部材61とともに移動して、作動部材61を非作動位置E1と作動位置E2とに移動させる。この移動により、作動部材61と配置部材62は、ラチェットホイール36の回転可能方向を制御するとともに、リトラクタ1の状態を切り替える。配置部材62により作動部材61が非作動位置E1に移動すると、ラチェットホイール36が巻取方向M及び引出方向Pに回転可能になり、リトラクタ1の状態が緊急ロック状態に切り替えられる。配置部材62により作動部材61が作動位置E2に移動すると、ラチェットホイール36が巻取方向Mのみに回転可能になり、リトラクタ1の状態が自動ロック状態に切り替えられる。その際、作動部材61の移動により、作動部材61と配置部材62は、ロック機構9の状態を切り替えて、リトラクタ1の状態を切り替える。作動部材61が非作動位置E1に移動すると、ロック機構9の状態が待機状態に切り替えられて、リトラクタ1の状態が緊急ロック状態に切り替えられる。また、作動部材61が作動位置E2に移動すると、ロック機構9の状態が作動状態に切り替えられて、リトラクタ1の状態が自動ロック状態に切り替えられる。
移動部材70により、配置部材62は、第1位置F1と第2位置F2に配置されて、作動部材61を非作動位置E1と作動位置E2に配置する。移動部材70は、巻取ドラム10の回転に連動して回転し、回転に伴い、配置部材62を第1位置F1と第2位置F2とに移動させる。また、移動部材70は、内側凸部72と、内側凸部72を囲む外側凸部73と、配置部材62を第1位置F1に維持する第1維持部74と、変更部75と、配置部材62を移動する移動部76と、配置部材62を第2位置F2に維持する第2維持部77と、解放部78を有する。
内側凸部72は、移動部材70の半径方向の内側に形成された環状凸部である。外側凸部73は、移動部材70の半径方向の外側に形成された環状凸部であり、移動部材70の一方の面で内側凸部72の外側に形成されている。内側凸部72の中心と外側凸部73の中心は移動部材70の軸線(回転中心)に一致し、外側凸部73は内側凸部72の直径よりも大きい直径に形成されている。第1維持部74は、内側凸部72と外側凸部73(第2維持部77)の間の環状経路からなる。第1維持部74において、配置部材62(接触部62C)は、内側凸部72に接触せずに内側凸部72の近傍に配置され、内側凸部72に沿って相対的に移動する。
図22〜図24は、移動部材70の回転に伴う配置部材62の動作を示す図であり、リトラクタ1を図19と同様に示している。また、図22Cは、図22BのX3−X3線を矢印方向にみたリトラクタ1の断面図であり、図23Bは、図23AのX4−X4線を矢印方向にみたリトラクタ1の断面図である。
図示のように、ウエビング2の引き出し又は巻き取りにより巻取ドラム10が引出方向P又は巻取方向Mに回転すると、減速機構80により、移動部材70が巻取ドラム10の回転方向の反対方向に回転する。また、移動部材70の回転に伴い、配置部材62は、移動部材70の円周方向に相対的に移動するとともに、移動部材70の各部74〜77に沿って相対的に移動する。
ウエビング2を巻取ドラム10に完全に巻き取ったときには、配置部材62の接触部62Cは、第1維持部74に配置される(図22A参照)。これにより、配置部材62が第1位置F1に維持されて、作動部材61が非作動位置E1に維持される。その状態で、ウエビング2の引き出しにより移動部材70が回転すると、配置部材62(接触部62C)が第1維持部74に沿って相対的に移動する。また、ウエビング2の引き出しと巻き取りに伴い、配置部材62は、第1維持部74において、移動部材70の円周方向に相対的に移動する。巻取ドラム10からウエビング2が所定長さ(所定の引出長さ)引き出されるまで、接触部62Cが第1維持部74に配置されて、配置部材62が第1維持部74により第1位置F1に維持される。その結果、ロック機構9の状態が待機状態に維持され、リトラクタ1の状態が緊急ロック状態に維持される。
巻取ドラム10からウエビング2が所定長さ引き出されるときに(図22B、図22C参照)、配置部材62が変更部75に沿って相対的に変位し、変更部75により、配置部材62の位置が第1維持部74から移動部76による移動位置に変更される。移動部76による移動位置は、配置部材62が移動部76により移動可能になる位置である。配置部材62は、移動位置まで移動した後、移動部76により移動する。ここでは、変更部75は、第1維持部74から移動部76の先端に向かって傾斜する斜面であり、第1維持部74の終端部に形成されている。
ウエビング2の引き出しによる移動部材70の回転に伴い、配置部材62の接触部62Cが、変更部75に接触し、移動部76に向かって相対的に移動する。これにより、配置部材62が、弾性変形し、変更部75に沿って移動部材70から離れる方向に変位する。続いて(図23A、図23B参照)、配置部材62が移動部76を乗り越えて元の形状に復帰し、接触部62Cが移動部76に接触可能な位置に配置される。このように、変更部75は、配置部材62を弾性変形させて、配置部材62の位置を第1維持部74から移動部76による移動位置に変更する。また、配置部材62の位置が移動位置に移動したときに、配置部材62は、元の形状に復帰する。ここでは、ウエビング2が巻取ドラム10から完全に引き出されるときに、変更部75により、配置部材62の位置が、第1維持部74から移動部76による移動位置に変更される。従って、ウエビング2が巻取ドラム10から完全に引き出されるまで、配置部材62は、第1維持部74により第1位置F1に維持される。
所定長さ引き出されたウエビング2を巻取ドラム10に巻き取るときに、移動部材70の移動部76が、移動部材70の回転に伴い、配置部材62を第1位置F1から第2位置F2に移動させる(図23C参照)。移動部76は、第2維持部77に向かって傾斜する傾斜部からなり、内側凸部72から外側凸部73(第2維持部77)まで形成されている。ウエビング2の巻き取りによる移動部材70の回転に伴い、配置部材62は、移動部76に接触し、移動部76に沿って次第に移動して、移動部76により第1位置F1から第2位置F2に誘導される。従って、移動部76は、配置部材62を第1位置F1から第2位置F2に誘導する誘導部でもある。
ここでは、移動部76は、移動部材70の回転方向に対して、移動部76による移動位置から第2維持部77に向かって傾斜する傾斜凸部からなり、第2維持部77の前端部に繋がる。また、巻取ドラム10から完全に引き出されたウエビング2を巻取ドラム10に巻き取るときに、配置部材62が移動部76により移動する。その際、配置部材62の接触部62Cが、第1付勢手段63の付勢により移動部76に押し付けられた状態で、移動部76により誘導されて、第2維持部77に向かって移動する。これにより、配置部材62が、移動部材70の半径方向外側に向かって移動して、第1位置F1から第2位置F2に移動する(図24A参照)。同時に、作動部材61が非作動位置E1から作動位置E2に移動して、リトラクタ1の状態が緊急ロック状態から自動ロック状態に切り替えられる。作動部材61の移動により、ロック機構9の状態が待機状態から作動状態に切り替えられて、リトラクタ1の状態が自動ロック状態に切り替えられる。
第2維持部77は、第1維持部74の半径方向外側に巻取ドラム10の軸線を中心とした円弧状に形成された円弧部からなり、第1維持部74の一部を囲む。所定長さ引き出されたウエビング2の巻取ドラム10への巻取中に、配置部材62は、第2維持部77に接触して、第2維持部77により第2位置F2に維持される。ここでは、第2維持部77は、外側凸部73の一部を構成する円弧状凸部からなり、移動部材70の円周方向に沿って所定長さに形成されている。移動部76と第2維持部77が繋がる箇所では、外側凸部73が部分的にないため、配置部材62の接触部62Cは、移動部76から第2維持部77まで円滑に移動する。また、接触部62Cは、第2維持部77に接触し、第1付勢手段63の付勢により第2維持部77に押し付けられる。接触部62Cが第2維持部77により押さえられることで、配置部材62が、第2維持部77により保持される。これにより、完全に引き出されたウエビング2の巻取中に、配置部材62が第2位置F2に維持される。
配置部材62が第2位置F2に維持されることで、作動部材61が作動位置E2に維持される。その結果、リトラクタ1の状態が自動ロック状態に維持され、ロック機構9により、巻取ドラム10の引出方向Pの回転のみが止められる。ロック機構9の状態は、作動状態に維持される。ウエビング2の巻き取りによる移動部材70の回転に伴い、配置部材62(接触部62C)は、第2維持部77に沿って相対的に移動するとともに、第2維持部77の終端部79及び移動部材70の解放部78に向かって相対的に移動する(図24B参照)。第2維持部77により、配置部材62は、ウエビング2が巻取ドラム10に所定長さ(所定の巻取長さ)巻き取られるまで第2位置F2に維持される。また、ウエビング2が巻取ドラム10に所定長さ巻き取られたときに、配置部材62は、第2維持部77の終端部79から外れて、解放部78により第1維持部74に向かって解放される。配置部材62は、ウエビング2が巻取ドラム10に完全に巻き取られる前に、終端部79から外れる。
第2維持部77の終端部79では、外側凸部73が部分的にないため、配置部材62の接触部62Cは、終端部79に達した後、第2維持部77から外れる。これにより、接触部62Cが第2維持部77により押さえられた状態から解放されて、配置部材62が第2維持部77から解放される。移動部材70の解放部78は、終端部79に続く部分であり、第2維持部77から第1維持部74まで形成された解放領域からなる。解放部78において、配置部材62は、移動部材70に接触することなく、移動部材70の半径方向内側に向かって、第2維持部77から第1維持部74まで移動する。
ウエビング2が巻取ドラム10に所定長さ巻き取られて、配置部材62が第2維持部77の終端部79から外れたときに、解放部78は、配置部材62を第2維持部77から第1維持部74に向かって解放する(図19参照)。この解放に伴い、配置部材62は、第1付勢手段63の付勢により、第2維持部77(第2位置F2)から第1維持部74(第1位置F1)に直ちに移動する。同時に、作動部材61が作動位置E2から非作動位置E1に移動して、リトラクタ1の状態が自動ロック状態から緊急ロック状態に切り替えられる。その際、作動部材61の移動により、ロック機構9の状態が作動状態から待機状態に切り替えられて、リトラクタ1の状態が緊急ロック状態に切り替えられる。その後、ウエビング2は、巻取ドラム10に巻き取られ、又は、巻取ドラム10から引き出される。
以上説明したように、第1実施形態のリトラクタ1では、解放部78で解放された配置部材62により、作動部材61を作動位置E2から非作動位置E1に直ちに移動することができる。これに伴い、リトラクタ1の状態を、ウエビング2の巻き取りのみが可能な状態(自動ロック状態)からウエビング2の巻き取り及び引き出しが可能な状態(緊急ロック状態)に直ちに切り替えることができる。
この状態の切替時に、リトラクタ1が不確かな状態になるのを防止することができる。また、状態の切替中にウエビング2の巻き取りが不要であるため、自動ロック状態から緊急ロック状態への切り替えを敏速に行うことができる。
移動部材70の変更部75により、配置部材62の位置の変更を正確に行うことができる。また、移動部材70の回転に対応して、配置部材62を移動部76による移動位置に確実に配置することができる。傾斜部からなる移動部76により配置部材62を誘導するため、配置部材62を第1位置F1から第2位置F2に円滑に移動することができる。
減速機構80により移動部材70を巻取ドラム10の回転速度よりも遅い回転速度で回転することで、移動部材70と配置部材62の動作を単純にすることができる。また、配置部材62の移動の仕方やリトラクタ1の状態を切り替えるタイミングに対応して、移動部材70を回転することができる。
第2付勢手段64により、ロック機構9(ここでは、ラチェットホイール36)に対する作動部材61の位置を調整しつつ、作動部材61を作動位置E2に確実に維持することができる。作動部材61と配置部材62を1つの回転軸6Kに取り付けたため、作動部材61と配置部材62の回転軸の数、及び、回転軸を配置するためのスペースを削減することができる。
なお、リトラクタ1の状態を切り替える切替手段60(図19参照)に関して、配置部材62が第1位置F1に維持された状態で、第1付勢手段63の付勢力が第2付勢手段64の付勢力よりも大きくなるようにしてもよい。この場合には、配置部材62の接触部62Cが、第1維持部74において内側凸部72に接触し、内側凸部72により押さえられる。配置部材62の全体は弾性変形可能な材料(例えば、合成樹脂)により形成されており、配置部材62の一部であるアーム部62Bは変更部75により弾性変形する。これに対し、アーム部62Bのみを、配置部材62の他の部分とは別の部品にしてもよい。この場合には、アーム部62Bを、弾性変形可能な材料(例えば、合成樹脂、又は、ステンレス鋼の板)により形成して、配置部材62に固定する。また、配置部材62が変更部75に沿って相対的に変位するときに、配置部材62が弾性変形せずに、移動部材70が弾性変形するようにしてもよい。
作動部材61は、弾性変形可能な部材であってもよい。この場合には、例えば、作動部材61は、作動位置E2に移動したときに、ラチェットホイール36の歯35に押されて弾性変形する。その際、作動部材61は、弾性力により作動位置E2に向かって付勢される。従って、作動部材61自体が付勢手段になるため、第2付勢手段64を別途設ける必要がなく、部品数が削減される。また、作動部材61と配置部材62を一体に形成して、部品数を削減するようにしてもよい。この場合にも、作動部材61は、弾性変形することで、作動位置E2に向かって付勢される。
巻取ドラム10からウエビング2が所定長さ引き出されるまで、移動部材70の第1維持部74により、配置部材62が第1位置F1に維持される。このウエビング2の所定長さは、任意の長さに設定される。従って、所定長さは、ウエビング2の全長であってもよく、全長よりも短い長さであってもよい。
減速機構80は、第1実施形態の例に限定されず、周知の減速機構を使用できる。また、噛合パウル61Cを作動部材61に形成せずに、噛合パウル61Cを作動部材61とは別の部品にしてもよい。この場合には、作動部材61が、噛合パウル61Cを非噛合位置と噛合位置に移動する。作動部材61と配置部材62は、異なる回転軸に取り付けて、連動して回転するようにしてもよい。このようにすることで、回転軸の軸方向における作動部材61と配置部材62の配置スペースを削減することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のリトラクタについて説明する。第2実施形態のリトラクタに関して、第1実施形態のリトラクタ1が備える構成に相当する構成には、リトラクタ1の構成と同じ名称を用いる。
図25は、第2実施形態のリトラクタ101の斜視図である。図26、図27は、複数のユニットに分解されたリトラクタ101の斜視図であり、互いに異なる方向からみたリトラクタ101を示している。図26は、リトラクタ101を図25と同じ方向からみて示し、図27は、リトラクタ101を図25のW6方向からみて示している。図25〜図27では、帯状のウエビング2を点線で示している。
図示のように、リトラクタ101は、ハウジングユニット103と、巻取ドラム110を有する巻取ドラムユニット104と、プリテンショナユニット105と、メカニズムカバーユニット106と、巻取バネユニット107を備えている。ウエビング2の端部が巻取ドラム110に取り付けられて、ウエビング2が巻取ドラム110の外周に巻き取られる。巻取ドラム110は、アルミニウム合金等により形成されている。
巻取ドラム110がハウジングユニット103内に配置された状態で、プリテンショナユニット105とメカニズムカバーユニット106は、巻取ドラム110のドラム軸方向外側に配置されて、ハウジングユニット103の側面に固定される。ドラム軸方向は、巻取ドラム110の軸線U1の方向であり、ドラム軸方向外側は、巻取ドラム110を基準にしたドラム軸方向における外側である。プリテンショナユニット105とメカニズムカバーユニット106は、ハウジングユニット103の外側で、巻取ドラムユニット104のドラム軸方向の両端部を覆い、巻取ドラムユニット104を回転可能に支持する。巻取バネユニット107は、メカニズムカバーユニット106に固定されて、メカニズムカバーユニット106のドラム軸方向外側の端面を覆う。
リトラクタ101は、ハウジングユニット103、プリテンショナユニット105、及び、メカニズムカバーユニット106から構成される支持体101Aを備えている。支持体101Aは、車両に取り付けられて、巻取ドラム110をウエビング2の巻取方向Mと引出方向Pに回転可能に支持する。巻取方向Mは、ウエビング2の巻取時における巻取ドラム110の回転方向であり、引出方向Pは、ウエビング2の引出時における巻取ドラム110の回転方向である。
ウエビング2の巻き取りと引き出しに伴い、巻取ドラム110は、支持体101Aにより支持された状態で、軸線U1回りに巻取方向Mと引出方向Pに回転する。巻取ドラムユニット104は、スチール又は亜鉛合金により形成されたラチェットギヤ120を有し、通常時には、巻取ドラム110と一体に回転する。巻取バネユニット107は、巻取ドラム110(巻取ドラムユニット104)を巻取方向Mに付勢する付勢機構であり、かつ、ウエビング2を巻取ドラム110に巻き取る巻取手段である。巻取バネユニット107により、巻取ドラム110は、巻取方向Mに回転する。ウエビング2は、回転する巻取ドラム110に巻き取られてリトラクタ101内に収納される。その状態から、ウエビング2は、巻取ドラム110を引出方向Pに回転しながらリトラクタ101から引き出される。
メカニズムカバーユニット106は、巻取ドラムユニット104のラチェットギヤ120に隣接し、ラチェットギヤ120とともに巻取ドラム110の回転を止めるロック機構109を構成する。ロック機構109は、引出方向Pに回転する巻取ドラム110をロックするロック手段である。ウエビング2の急激な引き出しや車両の速度の急激な変化に反応して、ロック機構109が作動する。ロック機構109により、巻取ドラム110の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2の引き出しが停止する。その際、ラチェットギヤ120の歯(ラチェット歯)121により、ラチェットギヤ120の回転が止められて、巻取ドラムユニット104及び巻取ドラム110の回転が止められる。
プリテンショナユニット105は、車両の緊急時(例えば、衝突時)に、巻取ドラム110を巻取方向Mに回転する。これにより、ウエビング2が巻取ドラム110に巻き取られて、ウエビング2の弛みが除かれる。プリテンショナユニット105は、複数のネジ105Aによりハウジングユニット103に固定されるとともに、一対のストッパーピン105Bとプッシュナット105Cによりハウジングユニット103に固定される。
図28は、完全に分解されたリトラクタ101の斜視図であり、リトラクタ101を図25の反対側(W7方向)からみて示している。
図示のように、複数の部品を組み合わせることで、リトラクタ101の各ユニット103〜107が組み立てられる。また、複数のユニット103〜107を合体することで、リトラクタ101が製造される。以下、これらリトラクタ101の各部について、順に詳しく説明する。
図29は、分解されたハウジングユニット103の斜視図であり、ハウジングユニット103を図28と同じ方向からみて示している。
図示のように、ハウジングユニット103は、巻取ドラム110を収容するハウジング130と、プロテクタ103Aと、加速度センサー140と、加速度センサー140を覆うセンサーカバー141と、ラチェットギヤ120のラチェット歯121に係合する可動パウル150と、パウルリベット151と、リターンスプリング152を有する。ハウジング130と可動パウル150は、スチール等により形成され、プロテクタ103Aは、合成樹脂により形成されている。加速度センサー140は、車両の加速度を検知する第1の加速度検知機構(車両の加速度検知機構)101Bである。
ハウジング130は、車体に固定される背板部131と、背板部131の両側縁部から突出する一対の側壁部132、133(第1側壁部132、第2側壁部133)と、一対の側壁部132、133に固定された2つの固定板134と、背板部131に取り付けられたブラケット135からなる。ブラケット135は、スチール等により形成されている。プロテクタ103Aは、ウエビング2の通過孔103Bを有し、ブラケット135の取付孔135Aに取り付けられる。ウエビング2は、プロテクタ103Aの通過孔103Bに通され、巻き取り及び引き出し時に通過孔103Bを通過する。
ハウジング130は、第1側壁部132に形成された第1開口部136と、第1開口部136に繋がるパウル収容部137と、第2側壁部133に形成された第2開口部138を有する。巻取ドラム110がハウジング130内に収容されたときに、ラチェットギヤ120が第1開口部136に配置され、巻取ドラム110の一端部が第2開口部138に配置される。その状態で、メカニズムカバーユニット106が第1側壁部132に取り付けられ、プリテンショナユニット105が第2側壁部133に取り付けられる。
加速度センサー140は、車両の緊急時に、車両の加速度を検知してロック機構109を作動させる緊急ロック作動装置であり、センサーホルダー142と、慣性質量体143と、センサーレバー144を有する。センサーホルダー142とセンサーレバー144は、合成樹脂により形成されている。慣性質量体143は、金属製の球体からなり、センサーホルダー142の凹部に配置されて、センサーホルダー142とセンサーレバー144の間に移動可能に保持される。センサーレバー144は、慣性質量体143を上方から覆い、センサーホルダー142に上下方向に移動可能に取り付けられる。
加速度センサー140がセンサーカバー141内に挿入されて、センサーホルダー142がセンサーカバー141に取り付けられる。センサーカバー141は、第1側壁部132の取付孔139に挿入されて、第1側壁部132に取り付けられる。その状態で、センサーレバー144のロック爪145は、上方に突出し、センサーカバー141外に位置する。車両の緊急事態(例えば、衝突、急ブレーキ)により、車両の加速度が所定の加速度を超えたときに、慣性質量体143は、慣性力によりセンサーホルダー142の上で移動して、センサーレバー144を上方へ押す。加速度センサー140は、慣性質量体143の移動により、車両の加速度を検知する。センサーレバー144のロック爪145は、慣性質量体143により押されて、上方に移動する。
可動パウル150は、ラチェット歯121に係合する係合爪153と、可動パウル150の一端部に形成された連動ピン154と、可動パウル150の他端部に形成された円筒状のボス155を有する。ボス155は、ハウジング130の内側から第1側壁部132の取付孔139Aに挿入され、パウルリベット151により、第1側壁部132に回転可能に取り付けられる。リターンスプリング152は、ねじりコイルバネからなり、パウルリベット151の頭部を囲むように配置される。リターンスプリング152の一端部は、連動ピン154に取り付けられ、リターンスプリング152の他端部は、第1側壁部132の取付孔139Bに取り付けられる。リターンスプリング152により、可動パウル150は、パウル収容部137に向かって付勢されて、パウル収容部137内に収容される。連動ピン154は、可動パウル150からハウジング130の外側まで突出する。
ロック機構109は、連動ピン154に連結され、連動ピン154により可動パウル150を移動させる。これにより、可動パウル150が、ボス155を中心に回転して、パウル収容部137の内外方向に移動する。回転移動により、可動パウル150は、ラチェットギヤ120(図27参照)から離れ、或いは、ラチェットギヤ120に接近する。また、可動パウル150は、係合爪153がラチェット歯121に係合しない非ロック位置(パウル収容部137内の位置)と、係合爪153がラチェット歯121に係合するロック位置(パウル収容部137外の位置)との間で移動する。可動パウル150がロック位置に移動することで、係合爪153がラチェットギヤ120のラチェット歯121に係合する。
図30は、可動パウル150とラチェットギヤ120を模式的に示す側面図である。また、図30は、ロック位置に移動した可動パウル150を実線で示し、非ロック位置に移動した可動パウル150を点線で示している。
図示のように、係合爪153とラチェット歯121の係合時には、可動パウル150がロック位置に向かって移動して、係合爪153がラチェット歯121に係合する。これにより、可動パウル150がラチェットギヤ120に係合する。可動パウル150により、ラチェットギヤ120の引出方向Pの回転が止められて、ラチェットギヤ120と巻取ドラム110がロックされる。従って、可動パウル150は、ロック機構109の一部をなし、巻取ドラム110の引出方向Pの回転を止める。
可動パウル150とラチェットギヤ120は、巻取ドラム110が引出方向Pに回転するときのみ係合するようになっており、ラチェット歯121と係合爪153は、ラチェットギヤ120の引出方向Pの回転のみを止めるように傾けられている。係合爪153がラチェット歯121から外れたときに、可動パウル150とラチェットギヤ120の係合が解除される。可動パウル150は、リターンスプリング152により、パウル収容部137内の非ロック位置に向かって常に付勢されている。そのため、係合の解除に伴い、可動パウル150は、ラチェットギヤ120から離れて、非ロック位置に移動し、パウル収容部137内に収容される。同時に、ラチェットギヤ120と巻取ドラム110のロックが解除されて、ウエビング2の引き出しと巻き取りが可能になる。
図31は、分解された巻取ドラムユニット104の斜視図であり、図28の一部を示している。図32は、巻取ドラムユニット104の断面図であり、軸線U1を含む面で切断した巻取ドラムユニット104を示している。
図示のように、巻取ドラムユニット104は、円盤状のラチェットギヤ120と、ウエビング2の巻取方向Mと引出方向Pに回転可能な巻取ドラム110と、円柱状のトーションバー160と、ワイヤ163を有する。ラチェットギヤ120は、外周全体に形成された複数のラチェット歯121と、巻取ドラム110側に形成された環状凹部122と、中央部から突出する軸部(ラチェット軸部)123を有する。
巻取ドラム110は、一端部に形成された内歯車111と、軸線U1に沿って形成された軸孔部112と、円筒状のボス113と、他端部に形成された環状部114と、環状部114に形成された固定部115を有する。内歯車111の複数の歯116は、内歯車111の内周全体に形成されて、内歯車111の内側に突出する。軸孔部112は、巻取ドラム110の一端部で閉じ、巻取ドラム110の他端部に開口する。ボス113は、巻取ドラム110の一端部の中央に形成されている。ラチェット軸部123とボス113は、巻取ドラム110の軸線U1に位置し、巻取ドラムユニット104は、ラチェット軸部123とボス113により回転可能に支持される。環状部114は、巻取ドラム110の他の部分よりも細い小径部である。ワイヤ163の一端部164は、環状部114の固定部115に嵌め込まれて、固定部115に固定される。その状態で、ワイヤ163は、環状部114の周囲に配置される。
トーションバー160は、巻取ドラム110の軸孔部112に挿入されて、軸孔部112内に配置される。また、トーションバー160は、例えばスチールからなり、スプライン161、162を有する。一方のスプライン161は、トーションバー160の一端部に形成されて、軸孔部112内で巻取ドラム110の一端部に固定される。他方のスプライン162は、トーションバー160の他端部に形成されて、ラチェットギヤ120の中央部に固定される。ラチェットギヤ120は、トーションバー160に固定されて、巻取ドラム110に装着される。巻取ドラム110の環状部114は、ラチェットギヤ120の環状凹部122に収容される。ワイヤ163は、線材(例えば、スチール製の線材)であり、環状部114とともに環状凹部122に収容されて、ラチェットギヤ120内に配置される。
図33は、図32のX5−X5線を矢印方向にみた巻取ドラムユニット104の断面図である。
図示のように、ワイヤ163の一端部164が固定部115に固定され、ワイヤ163が屈曲路124と摺動路125に配置される。屈曲路124はラチェットギヤ120に形成され、摺動路125はラチェットギヤ120と環状部114の間に形成されている。
ロック機構109(可動パウル150)によりラチェットギヤ120(図31、図32参照)の回転が止められた状態で、乗員が車両の前方に移動すると、ウエビング2に大きな力(引出力)が作用する。この引出力が所定値を超えてウエビング2が引き出されたときに、巻取ドラム110に引出方向Pの回転トルクが作用し、巻取ドラム110が引出方向Pに回転する。これにより、トーションバー160のスプライン161が回転して、トーションバー160が捻じれ変形する。トーションバー160は、第1のエネルギー吸収機構であり、捻じれ変形により、衝撃エネルギーを吸収する。同時に、巻取ドラム110がラチェットギヤ120に対して引出方向Pに回転して、ワイヤ163が屈曲路124と円弧状の摺動路125内で摺動する(図33参照)。これに伴い、ワイヤ163は、屈曲路124でしごかれて順に屈曲し、巻取ドラム110の環状部114に巻き取られる。ワイヤ163は、第2のエネルギー吸収機構であり、摺動抵抗と屈曲抵抗により、衝撃エネルギーを吸収する。
図34は、プリテンショナユニット105の内部構造を示す断面図である。
図34及び図28に示すように、プリテンショナユニット105は、ガス発生部105Dと、パイプシリンダ105Eと、ピストン105Fと、ピニオンギヤ105Gと、クラッチ機構105Hを有する。パイプシリンダ105E、ピストン105F、及び、ピニオンギヤ105Gは、スチール等により形成されている。ガス発生部105Dは、車両の制御部から受信した作動信号に応じて、パイプシリンダ105Eの一端部内でガスを発生する。パイプシリンダ105Eは、ベースプレート105I、カバープレート105J、及び、ベースブロック105Kの間に配置されて、ハウジング130の第2側壁部133に固定される。ピストン105Fは、ゴム等により形成されたシールプレート105L有し、ガス発生部105Dから供給されるガスにより、パイプシリンダ105E内で移動する。ピニオンギヤ105Gは、パイプシリンダ105Eの開口部105Mに配置され、ベースプレート105Iの支持孔105N内で回転する。ピストン105Fの移動時に、ピニオンギヤ105Gは、ピストン105Fのラック105Pと噛み合い、巻取方向Mに回転する。
クラッチ機構105Hは、支持孔105Nを貫通したピニオンギヤ105Gの外周に取り付けられる。また、クラッチ機構105Hは、パウルガイド105Qと、複数のクラッチパウル105Rと、ピニオンギヤ105Gに固定されたパウルベース105Sと、環状のベアリング105Tを有する。クラッチパウル105Rとパウルベース105Sは、スチール等により形成され、パウルガイド105Qとベアリング105Tは、合成樹脂により形成されている。ベアリング105Tがパウルガイド105Qに固定されて、クラッチパウル105Rとパウルベース105Sがベアリング105Tとパウルガイド105Qの間に挟まれる。パウルベース105Sがピニオンギヤ105Gとともに回転したときに、パウルベース105Sは、パウルガイド105Qに対して相対的に回転して、複数のクラッチパウル105Rを押す。これに伴い、複数のクラッチパウル105Rは、パウルガイド105Qにガイドされてクラッチ機構105Hから突出し、ピニオンギヤ105Gとともに回転する。
巻取ドラム110のボス113は、ベアリング105Tの内周に挿入され、ベアリング105Tにより回転可能に支持される(図32参照)。巻取ドラム110の内歯車111は、クラッチ機構105Hの外側に配置される。通常時には、巻取ドラム110は、ピニオンギヤ105Gに対して自由に回転する。これに対し、車両の緊急時には、プリテンショナユニット105が作動して、ピニオンギヤ105Gが巻取方向Mに回転し、クラッチパウル105Rがクラッチ機構105Hから突出する。続いて、クラッチパウル105Rが内歯車111(歯116)に係合し、ピニオンギヤ105Gの回転が巻取ドラム110に伝達される。巻取ドラム110は、巻取方向Mに回転して、ウエビング2を巻き取る。これにより、ウエビング2の弛みが除かれて、乗員が座席にしっかりと拘束される。プリテンショナユニット105の作動後に、ロック機構109により、巻取ドラム110の引出方向Pの回転が止められて、第1と第2のエネルギー吸収機構により、衝撃エネルギーが吸収される。
図35は、図25の矢印W8方向からみたリトラクタ101の側面図である。図36は、図35のX6−X6線を矢印方向にみたリトラクタ101の断面図である。
図示のように、メカニズムカバーユニット106は、巻取ドラムユニット104のラチェットギヤ120に連結されて、ラチェット軸部123を回転可能に支持する。巻取バネユニット107は、メカニズムカバーユニット106により、ラチェットギヤ120に連結される。
図37、図38は、分解されたメカニズムカバーユニット106と巻取バネユニット107の斜視図であり、巻取ドラムユニット104のラチェットギヤ120も示している。図37は、メカニズムカバーユニット106と巻取バネユニット107を図28と同じ方向からみて示し、図38は、メカニズムカバーユニット106と巻取バネユニット107を図37の反対側からみて示している。
図示のように、ラチェットギヤ120は、メカニズムカバーユニット106のロッキングギヤ170に連結される。ロッキングギヤ170は、合成樹脂により形成され、ラチェット軸部123が挿入される軸孔171と、4つの嵌合突起170Aと、中央部から突出する軸部(ギヤ軸部)172を有する。4つの嵌合突起170Aは、ラチェットギヤ120に形成された4つの嵌合凹部120Aに嵌合する。ロッキングギヤ170は、ラチェットギヤ120に取り付けられて、巻取ドラムユニット104(巻取ドラム110)と一体に回転する。ギヤ軸部172は、メカニズムカバーユニット106を貫通して、巻取バネユニット107に取り付けられる。
巻取バネユニット107(付勢機構)は、渦巻バネ107Aと、バネケース107Bと、メカニズムカバーユニット106に接するバネシート107Cと、バネシャフト107Dを有する。バネケース107B、バネシート107C、及び、バネシャフト107Dは、合成樹脂により形成されている。渦巻バネ107Aの外端K3は、バネケース107Bに固定され、渦巻バネ107Aの内端K4は、バネシャフト107Dに固定される。バネケース107Bは、渦巻バネ107Aとバネシャフト107Dを収容する。バネシート107Cは、バネケース107Bに取り付けられるシート部材であり、かつ、バネケース107B内の渦巻バネ107Aとバネシャフト107Dを覆うカバー部である。バネシャフト107Dは、バネケース107Bに回転可能に取り付けられる。ギヤ軸部172は、支持孔107Eに挿入されてバネシート107Cにより回転可能に支持され、バネシャフト107Dに固定される。バネシャフト107Dは、ロッキングギヤ170とラチェットギヤ120を介して、巻取ドラムユニット104に連結される。
バネシャフト107Dは、巻取ドラムユニット104の巻取ドラム110と一体に回転し、かつ、渦巻バネ107Aの付勢力を巻取ドラム110に伝達する。巻取バネユニット107は、渦巻バネ107Aにより、巻取ドラム110をウエビング2の巻取方向Mに常に付勢する。また、ウエビング2の引出時には、巻取ドラム110の回転により渦巻バネ107Aが巻かれる。ウエビング2の巻取時には、渦巻バネ107Aの付勢により、巻取ドラム110が巻取方向Mに回転して、ウエビング2が巻取ドラム110に巻き取られる。
メカニズムカバーユニット106は、円形状のロッキングギヤ170と、ロックアーム180と、センサースプリング185と、クラッチ190と、噛合パウル165と、メカニズムカバー200と、リトラクタ101の状態を切り替える切替手段220を有する。ロックアーム180、クラッチ190、噛合パウル165、及び、メカニズムカバー200は、合成樹脂により形成されている。また、メカニズムカバー200は、ロック機構109を収容する収容部材であり、ロック機構109は、メカニズムカバー200のドラム軸方向内側(巻取ドラム110が位置する側)に配置される。メカニズムカバー200は、巻取ドラム110とロック機構109のドラム軸方向外側に配置されて、巻取ドラム110が位置するドラム軸方向内側にロック機構109を収容する。
メカニズムカバー200は、ロック機構109を収容する第1収容部201と、加速度センサー140を収容する第2収容部202と、巻取ドラム110の軸部を支持する支持部(ドラム支持部)203と、ドラム支持部203を貫通する挿入孔204を有する。第1収容部201は、ロック機構109の一部であるロッキングギヤ170、ロックアーム180、及び、クラッチ190を収容する。加速度センサー140は、第2収容部202に挿入されて、第2収容部202に取り付けられる。その状態で、センサーレバー144のロック爪145は、第2収容部202の開口205に配置され、開口205を通って第1収容部201内に移動する。
巻取ドラム110の軸部は、巻取ドラム110の回転時に、巻取ドラム110の回転運動の中心となる部分であり、巻取ドラム110とともに回転する。ここでは、ロッキングギヤ170のギヤ軸部172が、巻取ドラム110の軸部であり、ドラム支持部203に形成された挿入孔204に挿入されて、メカニズムカバー200を貫通する。ドラム支持部203は、挿入孔204に挿入されたギヤ軸部172を回転可能に支持する。ギヤ軸部172は、ドラム支持部203により支持されて回転する。
ロックアーム180は、ロッキングギヤ170に変位可能に連結され、変位によりロック機構109を作動する。これに伴い、ロック機構109の一部であるロッキングギヤ170、ロックアーム180、及び、クラッチ190により、可動パウル150が、非ロック位置からロック位置に移動する。可動パウル150は、巻取ドラム110をロックして、巻取ドラム110の引出方向Pの回転を止める。
図39は、ロッキングギヤ170とロックアーム180の斜視図であり、図37の一部を示している。図40は、メカニズムカバーユニット106の断面図であり、組み立てられたメカニズムカバーユニット106の一部を示している。
図示のように、ロッキングギヤ170は、複数の歯173を有するラチェットホイール174と、円柱状のアーム支持部175と、センサースプリング185を支持する支持ピン176を備えている。ラチェットホイール174は、ロッキングギヤ170の外周に形成された環状部材からなり、巻取ドラム110とともに回転可能になっている。複数の歯173は、ラチェットホイール174の引出方向Pの回転のみを止めるように傾けられており、ラチェットホイール174の外周全体に形成されている。
ロックアーム180は、長手方向の一端部(係合端部)181と他端部(自由端部)182の間に形成された貫通孔183を有し、湾曲形状に形成されている。アーム支持部175を貫通孔183に挿入することで、ロックアーム180が、アーム支持部175に取り付けられる。アーム支持部175は、ロックアーム180を回転可能に支持し、ロックアーム180は、アーム支持部175によりロッキングギヤ170に回転可能に連結される。ロックアーム180は、ラチェットホイール174の内側に配置され、アーム支持部175を中心に回転する。センサースプリング185は、ロックアーム180と支持ピン176の間に配置されて、ロックアーム180の他端部182を引出方向Pに付勢する。この付勢により、ロックアーム180の他端部182は、ロッキングギヤ170のストッパー177に接触する。
ロックアーム180は、巻取ドラム110及びロッキングギヤ170とともに引出方向Pと巻取方向Mに回転する。通常時には、センサースプリング185の付勢により、ロックアーム180の他端部182は、ロッキングギヤ170のストッパー177に接触する状態に維持される。これに対し、車両の緊急時には、ロックアーム180の他端部182がストッパー177から離れて、ロックアーム180が変位する。
具体的には、ウエビング2の引き出しの加速度が所定の加速度を超えたときに(即ち、引出方向Pに回転する巻取ドラム110の引出方向Pの加速度が所定の加速度を超えたときに)、回転するロッキングギヤ170に対して、慣性による遅れがロックアーム180に生じる。その結果、ロックアーム180がセンサースプリング185を圧縮しつつ回転して、ロックアーム180の一端部181がロッキングギヤ170の半径方向外側に変位する。これに伴い、後述するように、リトラクタ101のロック機構109が作動する。
このように、ロックアーム180とセンサースプリング185は、巻取ドラム110から引き出されるウエビング2の引き出しの加速度(巻取ドラム110の引出方向Pの加速度)を検知する第2の加速度検知機構(ウエビング2の加速度検知機構)101Cの一部を構成する。この第2の加速度検知機構101Cは、車両の緊急時に、ウエビング2の引き出しの加速度を検知して、ロック機構109を作動させる。また、ロックアーム180は、巻取ドラム110の引出方向Pの加速度に応じてロック作動方向L(図40参照)に変位可能な変位部材であり、加速度に反応して所定のロック作動方向Lに変位する。ロック作動方向Lは、ロック機構109を作動するための方向であり、ここでは、ロックアーム180の一端部181がロッキングギヤ170の半径方向外側に変位する方向である。ロック機構109は、ロック作動方向Lに変位したロックアーム180により作動する。
なお、ロックアーム180がロック作動方向Lに変位する際には、ロックアーム180が変位してもよく、ロックアーム180が巻取ドラム110及びロッキングギヤ170に対して相対的に変位してもよい。或いは、ロックアーム180が、変位しつつ巻取ドラム110及びロッキングギヤ170に対して相対的に変位してもよい。従って、ロックアーム180の変位には、このような各態様での変位を含む。
ロックアーム180は、ロック作動方向Lに変位可能にロッキングギヤ170に連結されてロッキングギヤ170とともに回転する。また、アーム支持部175は、変位部材用支持部であり、回転によりロックアーム180をロック作動方向Lへ変位させる。ロックアーム180は、ロック作動方向Lとロック作動方向Lの反対方向に回転することで、両方向に変位する。センサースプリング185の付勢により、ロックアーム180がロック作動方向Lの反対方向に変位(回転)し、ロックアーム180の一端部181がロッキングギヤ170の半径方向内側に変位する。
ロック機構109は、ロックアーム180のロック作動方向Lへの変位により作動し、巻取ドラム110の引出方向Pの回転を止める。その際(図37、図38参照)、クラッチ190が、ロックアーム180によりロッキングギヤ170に連結されて、ロッキングギヤ170とともに回転する。回転するクラッチ190により、可動パウル150が、非ロック位置からロック位置に移動する。クラッチ190は、環状の内壁191と、内壁191の内周に形成されたクラッチギヤ192と、内壁191を囲む環状の外壁193と、内壁191の中心に位置する中心孔194を有する。ロッキングギヤ170のギヤ軸部172が中心孔194に挿入されて、ロッキングギヤ170及び巻取ドラムユニット104がクラッチ190に対して相対的に回転する。ロッキングギヤ170のラチェットホイール174は、内壁191と外壁193の間に配置される(図40参照)。ロックアーム180は、内壁191の内側に配置され、ロックアーム180の一端部181は、クラッチギヤ192に係合する。
図41は、クラッチ190の斜視図であり、2つの方向からみたクラッチ190を示している。図41Aは、ロッキングギヤ170側からみたクラッチ190を示し、図41Bは、図41Aの反対側からみたクラッチ190を示している。
図示のように、クラッチギヤ192は、内壁191の内周全体に形成された複数の係合歯からなり、ロック作動方向Lに変位したロックアーム180の一端部181と係合する。ロッキングギヤ170が引出方向Pに回転するときのみ、ロックアーム180の一端部181が、クラッチギヤ192に引っ掛かるようにして係合する。クラッチギヤ192とロックアーム180の係合により、クラッチ190がロッキングギヤ170に連結される。その状態で、ロッキングギヤ170及びロックアーム180が引出方向Pに回転し、クラッチ190がロックアーム180により押されて引出方向Pに回転する。
クラッチ190は、外壁193の一部に形成された弾性変形部195と、弾性変形部195に形成された可動突起196と、外壁193の外側に形成された誘導部197と、誘導部197に形成された細長い誘導孔198を有する。可動突起196は、クラッチ190の半径方向外側に突出し、弾性変形部195の弾性変形により、クラッチ190の半径方向内側に動く。可動パウル150の連動ピン154(図29、図40参照)は、誘導孔198に挿入されて、誘導孔198内で移動しつつ誘導部197により誘導される。可動パウル150は、リターンスプリング152により非ロック位置に向かって付勢されており、通常時には非ロック位置に維持される。その際、連動ピン154は、誘導孔198の一端部198A(図40参照)に位置する。連動ピン154により、誘導部197が押さえられて、クラッチ190の位置が維持される。また、クラッチ190は、連動ピン154により巻取方向Mに付勢される。
ウエビング2の通常の引出時には、停止したクラッチ190に対して、巻取ドラム110とロッキングギヤ170が引出方向Pに回転する。その際、ロックアーム180の一端部181は、クラッチギヤ192から離れた位置に配置され、ロックアーム180は、クラッチギヤ192に係合しない状態に維持される。これに対し、ウエビング2の急激な引き出しにより、巻取ドラム110の引出方向Pの加速度が所定の加速度を超えたときに、ロックアーム180が、巻取ドラム110の引出方向Pの加速度に応じてロック作動方向Lに変位する。ロックアーム180が回転によりロック作動方向Lに変位する際には、ロックアーム180の一端部181がクラッチギヤ192に向かって変位する。続いて、ロック機構109が作動して、巻取ドラム110がロックされる。
図42、図43は、ロック機構109の動作を示す図であり、メカニズムカバーユニット106の内部構造を示している。また、図42、図43は、クラッチ190の一部を削除して、クラッチ190に隠れる部分を示している。
図示のように、ロック機構109は、ロックアーム180の変位により作動する。具体的には、ロックアーム180のロック作動方向Lの変位に伴い(図42A参照)、ロックアーム180の一端部181が、クラッチギヤ192に接近して、クラッチギヤ192に係合する。クラッチギヤ192は、ロック作動方向Lに変位したロックアーム180と係合して、ロックアーム180を停止する。
クラッチギヤ192とロックアーム180により、クラッチ190は、ロッキングギヤ170に連結されて、ロッキングギヤ170及び巻取ドラム110とともに引出方向Pに回転する。これに伴い、可動パウル150の連動ピン154が、誘導部197により押されて誘導孔198内を移動する。連動ピン154は、誘導部197により誘導されて、誘導孔198に沿ってクラッチ190の中心側に移動する。この連動ピン154の移動により、可動パウル150がロック位置に移動して、可動パウル150の係合爪153がラチェットギヤ120のラチェット歯121に係合する(図42B参照)。
ロック機構109は、可動パウル150により巻取ドラム110をロックする。ロック機構109により、巻取ドラム110の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2の引き出しが停止する。クラッチ190の回転中に、クラッチ190の可動突起196は、メカニズムカバー200の固定突起206に接触して、クラッチ190の半径方向内側に動く。固定突起206は、第1収容部201の内壁に形成されて、第1収容部201内に突出する。ロック機構109の作動が完了するときに、可動突起196は、固定突起206を超えた位置で停止する。
ウエビング2の巻き取りにより、巻取ドラム110がウエビング2の負荷から解放されると、巻取ドラム110とロッキングギヤ170が巻取方向Mに回転する。その際、可動突起196が固定突起206に引っ掛かるため、クラッチ190のクラッチギヤ192に対して、ロッキングギヤ170とロックアーム180が相対的に回転する。これに伴い、ロックアーム180の一端部181とクラッチギヤ192の間に隙間が生じて、ロックアーム180がクラッチギヤ192から解放される。ロックアーム180がクラッチギヤ192から外れることで、ロックアーム180とクラッチギヤ192の係合が解除される。また、ロックアーム180がロック作動方向Lの反対方向に変位し、クラッチ190とロッキングギヤ170の連結が解除される(図43A参照)。ラチェットギヤ120の巻取方向Mへの回転に伴い、可動パウル150の係合爪153は、ラチェットギヤ120のラチェット歯121から解放される。
その後、リターンスプリング152の付勢により、可動パウル150が非ロック位置に向かって移動して、可動パウル150の連動ピン154が誘導孔198内を移動する。同時に、連動ピン154により、誘導部197が押されて、クラッチ190が巻取方向Mに回転する。クラッチ190の可動突起196は、メカニズムカバー200の固定突起206により、クラッチ190の半径方向内側に動いて、固定突起206を超える。続いて、可動パウル150は、クラッチ190を回転しつつ非ロック位置に復帰する(図43B参照)。これにより、連動ピン154が誘導孔198の一端部198Aまで移動して、クラッチ190が元の状態に復帰する。また、係合爪153とラチェット歯121との係合が解除されて、ロック機構109による巻取ドラム110のロックが解除される。以降、ウエビング2の引き出しと巻き取りが可能になる。
このように、ロック機構109は、上記した第2の加速度検知機構101Cにより作動するウエビング感応式ロック機構であり、ウエビング2の急激な引き出しに反応してウエビング2の引き出しを停止する。また、ロック機構109は、加速度センサー140(第1の加速度検知機構101B)により作動する車体感応式ロック機構であり、車両の速度の急激な変化に反応してウエビング2の引き出しを停止する。ロック機構109、噛合パウル165、及び、加速度センサー140が、車体感応式ロック機構を構成する。加速度センサー140が噛合パウル165によりロック機構109を作動させて、ロック機構109が上記と同様に巻取ドラム110をロックする。噛合パウル165(図37、図38参照)は、ラチェットホイール174の歯173に噛み合う噛合部材であり、歯173への噛み合いにより、クラッチ190をロッキングギヤ170に連結する。
図44は、噛合パウル165の斜視図である。
図示のように、噛合パウル165は、円筒状の取付部166と、取付部166から突出する板状の受け部167と、ラチェットホイール174の歯173に噛み合う噛合爪168を有する。噛合パウル165が取付部166を中心に回転して、噛合パウル165(噛合爪168)が移動する。なお、噛合パウル165がラチェットホイール174の歯173に噛み合うというときには、噛合爪168が歯173に噛み合う。
クラッチ190(図40、図41参照)は、外壁193に形成されたフランジ193Aと、フランジ193Aに形成された円柱状のパウル支持部199と、フランジ193Aに形成されたストッパー193Bを有する。パウル支持部199が取付部166に挿入されて、噛合パウル165がパウル支持部199に取り付けられる。パウル支持部199は、噛合パウル165を回転可能に支持し、噛合パウル165は、パウル支持部199によりクラッチ190に回転可能に取り付けられる。噛合パウル165が自重により回転するときには、噛合パウル165がストッパー193Bに接触して、噛合パウル165の回転が止められる。その状態で、噛合爪168は、外壁193の開口193Cに配置される。また、加速度センサー140により、噛合爪168は、開口193Cを通って外壁193の内側に移動する。
図45は、噛合パウル165の周辺を模式的に示す図であり、加速度センサー140の一部も示している。
図示のように、噛合パウル165は、ラチェットホイール174の歯173に噛み合わない位置(非噛合位置C1)(図45A参照)と、ラチェットホイール174の歯173に噛み合う位置(噛合位置C2)(図45B参照)とに移動(回転)する。通常時には、噛合パウル165は、非噛合位置C1に配置され、センサーレバー144のロック爪145は、噛合パウル165の近傍に位置する。
車両の加速度が所定の加速度を超えたときには、慣性質量体143が移動して、慣性質量体143により、センサーレバー144とロック爪145が上方へ移動する。ロック爪145により、噛合パウル165(受け部167)が上方に押されて、噛合爪168がラチェットホイール174に接近する。噛合パウル165は、非噛合位置C1から噛合位置C2に移動して、ラチェットホイール174の歯173に噛み合う。噛合パウル165とラチェットホイール174の歯173は、ラチェットホイール174が引出方向Pに回転するときのみ噛み合うように形成されている。ラチェットホイール174が巻取方向Mに回転するときには、噛合パウル165(噛合爪168)は、歯173の外面を相対的に摺動し、歯173の先端において歯173を乗り越える。
噛合パウル165は、ロック機構109の一部を構成しており、ロック機構109は、噛合パウル165の噛合位置C2への移動により作動する。噛合パウル165がラチェットホイール174の歯173に噛み合ったときに、噛合パウル165とラチェットホイール174により、クラッチ190がロッキングギヤ170に連結される。続いて、ウエビング2が引き出されると、噛合パウル165が歯173に噛み合う状態で、クラッチ190が、ロッキングギヤ170及び巻取ドラム110とともに引出方向Pに回転する。これに伴い、ロックアーム180の変位によりロック機構109が作動するときと同様に(図42、図43参照)、ロック機構109が作動する。ロック機構109は、クラッチ190の回転により、上記と同様に動作する。
図46は、ロック機構109の動作を示す図であり、メカニズムカバーユニット106の内部構造を示している。また、図46は、クラッチ190の一部を削除して、クラッチ190に隠れる部分を示している。
図示のように、可動パウル150がクラッチ190の回転によりロック位置に移動して、ロック機構109が可動パウル150により巻取ドラム110をロックする(図46A参照)。ロック機構109により、巻取ドラム110の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2の引き出しが停止する。クラッチ190の可動突起196は、固定突起206を超えた位置で停止する。車両の加速度が所定の加速度以下になったときに、慣性質量体143が重力により元の位置に移動し、センサーレバー144とロック爪145が下方へ移動する(図46B参照)。
ウエビング2の巻き取りにより、巻取ドラム110がウエビング2の負荷から解放されると、巻取ドラム110とロッキングギヤ170が巻取方向Mに回転する。その際、可動突起196が固定突起206に引っ掛かるため、クラッチ190に対して、ロッキングギヤ170とラチェットホイール174が相対的に回転する。これに伴い、噛合爪168と歯173の間に隙間が生じて、噛合パウル165がラチェットホイール174から解放される。噛合パウル165は、歯173から外れて、自重により非噛合位置C1に移動する。また、クラッチ190とロッキングギヤ170の連結が解除される。その後、可動パウル150が非ロック位置に復帰し、クラッチ190が元の状態に復帰する(図43B参照)。これにより、ロック機構109による巻取ドラム110のロックが解除される。
次に、メカニズムカバーユニット106の切替手段220について説明する(図37、図38参照)。切替手段220により、リトラクタ101の状態が、自動ロック状態(ALR)と緊急ロック状態(ELR)とに切り替えられる。
切替手段220は、ロック機構109の状態を切り替える切替機構であり、ロック機構109の状態を切り替えて、リトラクタ101の状態を切り替える。切替手段220により、ロック機構109は、作動状態と待機状態とに切り替えられる。作動状態のロック機構109は、巻取ドラム110をロックして、巻取ドラム110の引出方向Pの回転を止める。待機状態では、切替手段220がロック機構109を作動することはない。この待機状態中に、ロック機構109は、切替手段220から独立して作動可能であり、車両の緊急時に、ウエビング感応式ロック機構と車体感応式ロック機構として作動する。
リトラクタ101の状態を切り替える際に、切替手段220は、ロック機構109の作動を制御して、ロック機構109の状態を切り替える。具体的には、切替手段220により、ロック機構109が待機状態から作動状態に切り替えられて、リトラクタ101が緊急ロック状態から自動ロック状態に切り替えられる。自動ロック状態では、ロック機構109の作動により、ウエビング2が引き出せなくなる。また、切替手段220により、ロック機構109が作動状態から待機状態に切り替えられて、リトラクタ101が自動ロック状態から緊急ロック状態に切り替えられる。緊急ロック状態では、ロック機構109の待機により、ウエビング2の巻き取り及び引き出しが可能である。ただし、車両の緊急時には、ロック機構109が作動して、ロック機構109により巻取ドラム110がロックされる。
切替手段220は、ロック機構109を作動する作動部材230と、作動部材230を所定位置に配置する配置部材240と、配置部材240を移動する円形状の移動部材(制御部材)250と、付勢手段221と、減速機構260を有する。移動部材250は、配置部材240の移動により、リトラクタ101の状態を制御する。減速機構260は、駆動体である偏心部材270と、回転可能な円形状の回転歯車280と、複数の歯(固定歯)261からなる固定歯車262と、回転歯車280の回転を移動部材250に伝達する伝達機構(回転伝達機構)290を有する。作動部材230、配置部材240、移動部材250、偏心部材270、及び、回転歯車280は、合成樹脂により形成されている。
減速機構260は、偏心部材270と回転歯車280により、巻取ドラム110と移動部材250に連結される。固定歯車262は、複数の固定歯261を有する内歯車である。固定歯車262の複数の固定歯261は、リトラクタ101の支持体101Aに固定されて、リトラクタ101及び切替手段220内での位置が固定されている。ここでは、複数の固定歯261は、メカニズムカバー200に形成され、巻取ドラム110の軸線U1を中心に円形状に配置されている。メカニズムカバー200は、ロック機構109の収容部材であり、切替手段220及び減速機構260の各部は、メカニズムカバー200のドラム軸方向外側(巻取ドラム110が位置する側の反対側)に設けられている。
巻取バネユニット107は、巻取ドラム110の付勢機構であり、メカニズムカバー200と切替手段220のドラム軸方向外側に配置され、メカニズムカバー200に取り付けられる。切替手段220は、巻取バネユニット107とメカニズムカバー200の間に位置して、巻取バネユニット107に覆われる。このように、リトラクタ101は、メカニズムカバー200のドラム軸方向外側に配置されて切替手段220を覆うカバー部材を備えている。ここでは、カバー部材は、切替手段220を覆う巻取バネユニット107のカバー部からなる。カバー部は、巻取バネユニット107のメカニズムカバー200側に位置する部分であり、バネシート107Cからなる。バネシート107Cは、切替手段220を覆うシート部材であり、移動部材250のドラム軸方向外側に配置される。移動部材250は、カバー部材であるバネシート107Cに隣接し、バネシート107Cに沿って配置される。バネシート107Cは、移動部材250のドラム軸方向外側に配置されて、移動部材250のドラム軸方向の動きを規制する。
複数の固定歯261(固定歯車262)と回転歯車280は、メカニズムカバー200のドラム軸方向外側に設けられて、互いに噛み合う(図37参照)。また、複数の固定歯261は、メカニズムカバー200のドラム軸方向外側の面(外側面)207に設けられている。ここでは、複数の固定歯261が、メカニズムカバー200のドラム軸方向の外側面207に一体に形成されて、外側面207からドラム軸方向外側に突出する。回転歯車280と偏心部材270は、複数の固定歯261の内側に配置されて、メカニズムカバー200に隣接する。メカニズムカバー200の外側面207は、ロック機構109と回転歯車280の間に位置する規制面であり、回転歯車280のドラム軸方向の動きを規制する。
上記したように、ロッキングギヤ170のギヤ軸部172は、巻取ドラム110の軸部であり、メカニズムカバー200のドラム支持部203に支持されている。また、ギヤ軸部172は、ドラム支持部203の挿入孔204を貫通して、挿入孔204からドラム軸方向外側に突出する。偏心部材270は、挿入孔204から突出するギヤ軸部172に取り付けられる取付孔271を有し、取付孔271内のギヤ軸部172とともに回転する。ギヤ軸部172を取付孔271に挿入することで、偏心部材270がギヤ軸部172に回転不能に取り付けられる。
ギヤ軸部172は、偏心部材270の取付孔271を貫通して、取付孔271からドラム軸方向外側に突出する。移動部材250は、取付孔271から突出するギヤ軸部172に取り付けられる中心孔251を有し、中心孔251内のギヤ軸部172に対して相対的に回転する。ギヤ軸部172を中心孔251に挿入することで、移動部材250が、ギヤ軸部172に回転可能に支持され、巻取ドラム110の軸線U1を中心に、巻取ドラム110に対して相対的に回転する。移動部材250は、回転歯車280のドラム軸方向外側に配置されて、回転歯車280に隣接する。回転歯車280のドラム軸方向外側で、移動部材250は、回転歯車280のドラム軸方向の動きを規制する。
図47は、偏心部材270、回転歯車280、及び、移動部材250の斜視図であり、図38の一部を示している。図48は、メカニズムカバーユニット106の側面図であり、図37の矢印W9方向からみたメカニズムカバーユニット106を示している。図48では、移動部材250を点線で示し、移動部材250に隠れる減速機構260を実線で示している。
図示のように、偏心部材270の外周は、円形状に形成され、偏心部材270の取付孔271は、偏心部材270の円形状の外周の中心(偏心部材270の中心U2)に対して偏心するように形成されている。即ち、取付孔271の中心は、偏心部材270の中心U2に一致せず、中心U2と偏心部材270の外周の間に位置する。ギヤ軸部172が取付孔271に取り付けられたときに、取付孔271の中心は、巻取ドラム110の軸線U1に位置する。また、偏心部材270の中心U2は、巻取ドラム110の軸線U1から所定の距離(偏心量)を隔てて位置する。偏心部材270は、円形状の偏心カムであり、巻取ドラム110の軸線U1に対して中心U2が偏心した状態で、巻取ドラム110と一体に軸線U1(取付孔271の中心)回りに回転する。偏心部材270の回転により、偏心部材270の中心U2は、巻取ドラム110の軸線U1を中心に回転移動する。
回転歯車280は、複数の外周歯281を有する外歯車であり、円形状の中心孔282と、伝達機構290の一部である円形状の複数の伝達孔291を有する。複数の外周歯281は、回転歯車280の外周に形成された歯(外歯)であり、複数の固定歯261よりも少ない数の歯からなる。ここでは、回転歯車280は、18個の外周歯281を有し、固定歯車262は、19個の固定歯261を有する。中心孔282は、回転歯車280の中心に形成された嵌合孔であり、偏心部材270の円形状の外周に回転可能に嵌合する。偏心部材270が回転歯車280の中心孔282に嵌め込まれて、回転歯車280が中心孔282内の偏心部材270に回転可能に取り付けられる。回転歯車280の軸線(回転中心)U3は、偏心部材270の中心U2に一致し、巻取ドラム110の軸線U1から所定の距離(偏心量)を隔てて位置する。偏心部材270は、中心孔282内で回転して、回転歯車280を複数の固定歯261に沿って移動させる。
複数の固定歯261、回転歯車280、及び、偏心部材270は、メカニズムカバー200のドラム軸方向外側で、メカニズムカバー200と移動部材250の間に位置する。固定歯車262の内径は、回転歯車280の外径よりも大きく、複数の固定歯261は、偏心部材270と回転歯車280を囲む。複数の固定歯261は、複数の外周歯281よりも多い数の内歯であり、回転歯車280の外周歯281に噛み合う。また、複数の固定歯261は、巻取ドラム110の軸線U1を中心とする同一円上に位置するとともに、円の円周方向に等間隔に配置されている。なお、複数の固定歯261は、それらの内側で回転する回転歯車280に噛み合う噛合部であればよい。従って、例えば、複数の固定歯261は、円形部の内周に形成してもよく、或いは、互いに離間した状態で円形状に配置された複数の突起であってもよい。
複数の固定歯261の内側で、回転歯車280は、巻取ドラム110の軸線U1に対して偏心した状態で回転可能に偏心部材270に支持されて、偏心部材270に対して相対的に回転する。偏心部材270と回転歯車280は、複数の固定歯261に対して偏心し、回転歯車280は、複数の固定歯261の内の一部に接触する。回転歯車280に接触する固定歯261を除いて、隙間が回転歯車280と固定歯261の間に形成される。偏心部材270の回転に伴い、回転歯車280は、巻取ドラム110の軸線U1に対して偏心した状態で、回転する偏心部材270により、複数の固定歯261に沿って移動する。
偏心部材270が1回転することで、回転歯車280は、複数の固定歯261の内側で、複数の固定歯261に沿って1周移動する。回転歯車280の移動中に、回転歯車280が複数の固定歯261の内の一部に順に接触して、複数の固定歯261の内の一部と複数の外周歯281の内の一部が順に噛み合う。この噛み合いにより、回転歯車280が、巻取ドラム110及び偏心部材270の回転に連動して、軸線U3(中心U2)回りに回転する。回転歯車280は、回転しつつ移動して、複数の固定歯261に沿って転動する。回転歯車280の回転により、回転歯車280の軸線U3は、巻取ドラム110の軸線U1を中心に回転移動する。
回転歯車280の複数の伝達孔291は、同じ内径の円形状に形成された2つ以上の円形孔からなり、回転歯車280の軸線U3から所定距離を隔てた位置に、互いに間隔を開けて形成されている。また、中心孔282と外周歯281の間において、複数の伝達孔291は、回転歯車280の軸線U3を中心とする円周方向に180°以下の間隔(角度間隔)で、回転歯車280に形成されている。ここでは、複数の伝達孔291は、回転歯車280の軸線U3を中心とする円(同一円)の円周方向に等間隔(等角度間隔)に配置されており、軸線U3を中心とする同一円上に位置する。具体的には、4つの伝達孔291が、中心孔282を囲んで、軸線U3を中心とする円周方向に90°間隔に配置され、軸線U3から等距離の位置にある。
なお、リトラクタ101に関して伝達孔291の位置と間隔を規定するときには、伝達孔291の位置と間隔は、伝達孔291の中心を基準に規定される。そのため、伝達孔291の位置は伝達孔291の中心の位置であり、伝達孔291の間隔は伝達孔291の中心の間隔である。例えば、複数の伝達孔291が同一円上に位置するというときには、複数の伝達孔291の中心が同一円上に位置する。複数の伝達孔291の間隔が円周方向に180°以下の間隔であるというときには、複数の伝達孔291の中心の間隔が円周方向に180°以下の間隔である。また、複数の伝達孔291を円周方向に180°以下の間隔で形成するときには、複数の伝達孔291の円周方向の間隔に180°より大きい間隔がなく、全ての間隔が180°以下になるように、複数の伝達孔291を形成する。このような状態を、180°以下の間隔という。従って、2つの伝達孔291を有する回転歯車280では、2つの伝達孔291は、180°より大きい間隔にならないように、180°の間隔で形成される。
移動部材250は、中心孔251と、環状の外周部252と、外周部252に形成された円弧状の外縁凸部253と、伝達機構290の一部である柱状(ここでは、円柱状)の複数の伝達突起292を有する。外縁凸部253は、外周部252の一部に形成され、移動部材250からメカニズムカバー200に向かって突出する。移動部材250の外縁凸部253は、回転歯車280のドラム軸方向外側からメカニズムカバー200に向かって形成されて、移動部材250の半径方向において、複数の固定歯261の外側に配置される。
移動部材250の軸線(回転中心)U4は、巻取ドラム110の軸線U1に一致しており、移動部材250は、巻取ドラム110と同軸になっている。また、移動部材250の軸線U4は、回転歯車280の軸線U3から所定の距離を隔てて位置しており、回転歯車280は、移動部材250の軸線U4に対して偏心した状態で回転する。回転歯車280の回転に伴い、移動部材250は、回転歯車280の回転に連動して、軸線U1、U4回りに回転する。
複数の伝達突起292は、同じ外径の円柱状に形成された2つ以上の円柱部からなり、移動部材250の軸線U4から所定距離を隔てた位置に、互いに間隔を開けて形成されている。また、中心孔251と外周部252の間において、複数の伝達突起292は、移動部材250の軸線U4を中心とする円周方向に180°以下の間隔(角度間隔)で、移動部材250に形成されている。ここでは、複数の伝達突起292は、移動部材250の軸線U4を中心とする円(同一円)の円周方向に等間隔(等角度間隔)に配置されており、軸線U4を中心とする同一円上に位置する。具体的には、複数の伝達孔291と同じ数(4つ)の伝達突起292が、中心孔251を囲んで、軸線U4を中心とする円周方向に90°間隔に配置され、軸線U4から等距離の位置にある。複数の伝達突起292は、複数の伝達孔291が配置される円と同じ直径の円上に配置される。
なお、リトラクタ101に関して伝達突起292の位置と間隔を規定するときには、伝達突起292の位置と間隔は、伝達突起292の中心を基準に規定される。そのため、伝達突起292の位置は伝達突起292の中心の位置であり、伝達突起292の間隔は伝達突起292の中心の間隔である。例えば、複数の伝達突起292が同一円上に位置するというときには、複数の伝達突起292の中心が同一円上に位置する。複数の伝達突起292の間隔が円周方向に180°以下の間隔であるというときには、複数の伝達突起292の中心の間隔が円周方向に180°以下の間隔である。また、複数の伝達突起292を円周方向に180°以下の間隔で形成するときには、複数の伝達突起292の円周方向の間隔に180°より大きい間隔がなく、全ての間隔が180°以下になるように、複数の伝達突起292を形成する。このような状態を、180°以下の間隔という。従って、2つの伝達突起292を有する移動部材250では、2つの伝達突起292は、180°より大きい間隔にならないように、180°の間隔で形成される。
伝達機構290は、複数の伝達孔291と、それぞれ伝達孔291内で常に移動可能な複数の伝達突起292を有する。回転歯車280の軸線U3と移動部材250の軸線U4を一致させた状態で回転歯車280と移動部材250を組み合わせたときに、複数の伝達孔291の位置と複数の伝達突起292の位置は互いに一致する。複数の伝達突起292は、それぞれ対応する伝達孔291に挿入されて伝達孔291内に配置される。ここでは、伝達機構290は、それぞれ円周方向に等角度間隔に配置された複数の伝達孔291と複数の伝達突起292からなる複数組の伝達孔291と伝達突起292を有する。これら複数組の伝達孔291と伝達突起292により、伝達機構290は、回転歯車280の回転を移動部材250に連続して伝達して、移動部材250を回転歯車280の回転方向と同じ方向に回転する。
複数の伝達突起292は、伝達孔291の内径よりも小さい所定の外径に形成され、複数の伝達孔291に対応する位置に形成されている。複数の伝達突起292は、それぞれ対応する伝達孔291内に配置されて、回転歯車280の回転時に、それぞれ伝達孔291内で移動する。回転歯車280の軸線U3を移動部材250の軸線U4に一致させたときに、複数組の伝達孔291と伝達突起292のぞれぞれで、伝達突起292の中心が伝達孔291の中心に一致する。その状態から、回転歯車280が巻取ドラム110及び移動部材250に対して偏心することで、伝達突起292が、伝達孔291の内周側に相対的に移動し、伝達孔291の内周(内周面)に接触する。伝達機構290は、伝達孔291の内周と伝達突起292の外周を接触させて、回転歯車280の回転を移動部材250に伝達する。
図49は、1組の伝達孔291と伝達突起292を示す図であり、図48の一部を示している。
図示のように、回転歯車280の回転時には、移動部材250の伝達突起292は、伝達孔291の内周に沿って移動し、伝達孔291の内周により押される。これにより、回転歯車280の回転が移動部材250に伝達されて、移動部材250が回転する。
図50は、回転歯車280と伝達機構290の関係について説明するための図である。
図示のように、回転歯車280が複数の固定歯261に沿って移動するときに、回転歯車280の軸線軌跡Z1は、所定の直径の円形状をなす(図50A参照)。軸線軌跡Z1は、偏心部材270により複数の固定歯261に沿って移動する回転歯車280の軸線U3の軌跡である。回転歯車280の軸線軌跡Z1は、巻取ドラム110の軸線U1を中心とする円形状をなし、巻取ドラム110とともに回転する偏心部材270の中心U2の軌跡に一致する。軸線軌跡Z1の半径は、軸線U1から軸線U3(中心U2)までの距離であり、巻取ドラム110に対する回転歯車280(偏心部材270)の偏心量Z2である。
伝達孔291の半径Z3は、回転歯車280の偏心量Z2と伝達突起292の半径Z4の和(Z2+Z4)に設定される(図50B参照)。伝達孔291が半径Z3の円形状に形成された場合に、回転歯車280の軸線軌跡Z1は、伝達孔291内における伝達突起292の中心軌跡Z5と一致する形状の軌跡をなす。中心軌跡Z5は、伝達突起292が伝達孔291の内周に接触して1周移動するときの、伝達孔291内における伝達突起292の中心U5の軌跡である。伝達突起292の中心U5は、伝達孔291の内周に接触する部分における伝達突起292の中心である。中心軌跡Z5の中心は、伝達孔291の中心U6に位置する。また、伝達突起292の中心軌跡Z5は、回転歯車280の円形状の軸線軌跡Z1と同じ直径の円形状をなす。このようにしたときに、伝達突起292は、回転歯車280の移動と回転に合わせて、伝達孔291の内周に沿って円滑に移動する。
図51は、減速機構260の動作を示す図であり、減速機構260と移動部材250の一部を図48に対応して示している。ただし、図51Aには、回転歯車280のみを示している。図51Bは、巻取ドラム110がウエビング2の巻取方向Mに回転するときの、減速機構260の動作を左から右に向かって順に示している。また、図51Bは、巻取ドラム110の回転に伴い巻取方向Mに45°ずつ回転する偏心部材270を示すとともに、偏心部材270の回転に伴い変化する回転歯車280と移動部材250の状態を示している。
図示のように、偏心部材270は、巻取ドラム110の軸線U1に対して中心U2が偏心した状態で、巻取ドラム110とともに回転する。偏心部材270により、回転歯車280は、複数の固定歯261の内側で、一部の固定歯261に順に接触しつつ複数の固定歯261に沿って移動する。回転歯車280が複数の固定歯261の配置方向(円周方向)に移動するときに、複数の外周歯281は、固定歯261と順に噛み合って、回転歯車280を次第に回転させる。回転歯車280が複数の固定歯261に沿って1周移動する間に、外周歯281の数と固定歯261の数の差の分だけ、回転歯車280は、巻取ドラム110及び偏心部材270の回転方向の反対方向に回転する。これにより、回転歯車280は、巻取ドラム110の回転速度よりも遅い回転速度で回転する。
ここでは、巻取方向Mに回転する偏心部材270により、回転歯車280が複数の固定歯261に沿って1周移動して、回転歯車280が1個の外周歯281に対応する角度だけ引出方向Pに回転する。具体的には、外周歯281は18個あるため、1個の外周歯281に対応する角度は、360°の18分の1の角度(20°)である。回転歯車280は、偏心部材270が45°回転する毎に2.5°回転し、偏心部材270が360°回転したときに20°回転する。
このように、複数の固定歯261の内側で、回転歯車280は、偏心部材270と複数の固定歯261により、巻取ドラム110に対して減速して回転する。その際、回転歯車280は、偏心部材270の回転に伴い、複数の固定歯261に沿って移動しつつ、各固定歯261に順に噛み合って、巻取ドラム110に対して減速して回転する。回転歯車280の回転中に、伝達突起292は、伝達孔291の内周により、回転歯車280の回転方向の後ろ側から押される。即ち、1つの伝達孔291の内周は、回転歯車280の回転方向の後ろ側に位置する半分の部分(180°の範囲)(伝達部という)で、伝達突起292を回転歯車280の回転方向に押す。従って、伝達孔291と伝達突起292により、回転歯車280の回転を移動部材250に常に伝達するためには、2組以上の伝達孔291と伝達突起292を180°以下の間隔で設ける必要がある。この条件を満たすように、複数の伝達孔291と複数の伝達突起292は、それぞれ180°以下の間隔で形成されている。また、伝達突起292の中心軌跡Z5は、回転歯車280の円形状の軸線軌跡Z1と同じ直径の円形状をなす。
このような伝達孔291と伝達突起292を有する伝達機構290では、回転歯車280の回転時に、複数の伝達突起292は、それぞれ伝達孔291内で円滑に移動する。また、複数組の伝達孔291と伝達突起292の内の少なくとも1組において、伝達突起292の外周が伝達孔291の内周の伝達部に接触する状態に維持される。回転歯車280の移動と回転に伴い、各伝達突起292が伝達孔291の伝達部から離れることはあるが、全ての伝達突起292が伝達孔291の伝達部から同時に離れることはない。複数の伝達突起292の内の少なくとも1つが、回転歯車280の回転方向の後ろ側(伝達部)で伝達孔291の内周に接触し、伝達孔291の内周に沿って移動しつつ、伝達孔291の内周により押される。少なくとも1つの伝達突起292が伝達孔291の伝達部により押されることで、複数の伝達突起292は、回転歯車280の回転を移動部材250に常に伝達する。これにより、移動部材250が回転する。回転歯車280と移動部材250は、回転歯車280が1周移動する毎に、所定角度回転する。
少なくとも1つの伝達突起292が伝達孔291の伝達部に接触する状態で、複数の伝達突起292は、それぞれ伝達孔86内で移動する。これに伴い、移動部材250が回転歯車280とともに円滑に回転し、移動部材250の回転が回転歯車280の回転に正確に同期する。また、巻取ドラム110と移動部材250の回転量の比率が変化するのが防止される。回転歯車280の回転方向が変化したときでも、伝達機構290により、回転歯車280の回転が移動部材250に正確に伝達される。従って、移動部材250が巻取ドラム110の回転に正確に連動して回転する。減速機構260は、巻取ドラム110の巻取方向Mと引出方向Pの回転を減速して、偏心部材270から移動部材250に巻取ドラム110の回転を伝達する。これにより、移動部材250は、巻取ドラム110の回転速度よりも遅い回転速度で、かつ、巻取ドラム110の回転方向の反対方向に回転する。ここでは、ウエビング2の全体が引き出される間に、移動部材250が360°以下の所定角度だけ回転する。
移動部材250(図37、図38参照)は、巻取ドラム110に対して減速して回転する減速部材であり、回転角度に基づいて、リトラクタ101の状態を制御する。減速機構260により、移動部材250は、巻取ドラム110の回転(ウエビング2の巻取ドラム110からの引き出し、及び、ウエビング2の巻取ドラム110への巻き取り)に連動して回転する。これにより、移動部材250が、巻取ドラム110から引き出されたウエビング2の引出量(引出長さ)、及び、巻取ドラム110に巻き取られたウエビング2の巻取量(巻取長さ)に対応して回転して、リトラクタ101の状態を制御する。
切替手段220は、回転する移動部材250によりリトラクタ101の状態を制御して、リトラクタ101の状態を緊急ロック状態と自動ロック状態とに切り替える。その際、切替手段220は、移動部材250によりロック機構109の作動を制御して、ロック機構109を作動状態と待機状態とに切り替えて、リトラクタ101の状態を切り替える。切替手段220により、ロック機構109の状態とリトラクタ101の状態は、ウエビング2の引出長さと巻取長さに応じて制御されて切り替えられる。また、移動部材250は、回転により配置部材240を移動するカム部材であり、配置部材240により作動部材230の位置を制御する。切替手段220は、移動部材250により配置部材240と作動部材230の位置を制御して、ロック機構109の状態とリトラクタ101の状態を切り替える。
配置部材240は、移動部材250に従動するカムフォロアであり、かつ、ロック機構109の状態とリトラクタ101の状態を切り替える切替レバーである。作動部材230は、配置部材240に連動する連動部材であり、かつ、ロック機構109の作動と非作動を切り替える作動スイッチ(切替スイッチ)である。ロック機構109は、作動部材230により作動して、巻取ドラム110の引出方向Pの回転を止める。メカニズムカバー200は、複数の固定歯261の外側に、円柱状の第1、第2回転軸(回転用の軸)208、209と、開口205の近傍に位置する貫通口210を有する。第1回転軸208は、作動部材用回転軸であり、作動部材230は、第1回転軸208に回転可能に取り付けられる。第2回転軸209は、配置部材用回転軸であり、配置部材240は、第2回転軸209に回転可能に取り付けられる。
作動部材230は、メカニズムカバー200に向かって突出する押部231を有し、加速度センサー140と同様に、押部231により噛合パウル165を押して、ロック機構109を作動する。押部231は、貫通口210に挿入されて、貫通口210内で移動する。また、加速度センサー140のロック爪145(図45参照)と同様に、押部231は、噛合パウル165の近傍に位置し、作動部材230の移動により上方に移動して、噛合パウル165を上方に押す。作動部材230により、噛合パウル165は、非噛合位置C1から噛合位置C2に移動して、ラチェットホイール174の歯173に噛み合う。噛合パウル165が噛合位置C2へ移動することで、噛合パウル165とラチェットホイール174により、クラッチ190がロッキングギヤ170に連結される。続いて、ロック機構109が上記と同様に作動する(図46参照)。
図52は、作動部材230、配置部材240、及び、付勢手段221の斜視図であり、図37の一部を示している。図53は、メカニズムカバーユニット106の斜視図であり、3つの方向からみたメカニズムカバーユニット106を示している。また、図53は、メカニズムカバーユニット106内における作動部材230、配置部材240、付勢手段221、及び、噛合パウル165を示している。
図示のように、切替手段220の各部をメカニズムカバー200に取り付ける際に、作動部材230と配置部材240は、異なる回転軸208、209に取り付けられて、連動して回転可能に組み合わされる。付勢手段221は、弾性変形可能な付勢部材(ばね、ゴム、弾性部材等)(ここでは、スチール製の線材により形成されたばね)からなり、作動部材230と配置部材240に取り付けられる。この付勢手段221は、作動部材用付勢手段、かつ、配置部材用付勢手段であり、作動部材230と配置部材240を、それぞれ所定方向に付勢する。
作動部材230は、第1回転軸208に取り付けられる円筒状の取付部232と、取付部232から突出するアーム部233と、付勢手段221により付勢される付勢部234を有する。作動部材230は、取付部232(第1回転軸208)を中心に回転して、回転方向に移動する。作動部材230の押部231は、アーム部233の先端に形成されている。付勢部234は、アーム部233の反対側で取付部232に形成されている。
配置部材240は、第2回転軸209に取り付けられる円筒状の取付部241と、取付部241から突出するアーム部242と、移動部材250に接触する接触部243と、付勢手段221により付勢される付勢部244と、作動部材230に作用する作用突起245と、移動部材250の通過部247を有する。配置部材240は、取付部241(第2回転軸209)を中心に回転して、回転方向に移動する。接触部243と付勢部244は、アーム部242の先端に形成されている。作用突起245は、アーム部242よりも短く、取付部241からアーム部242の反対側に突出する。作動部材230のアーム部233は、配置部材240の取付部241と作用突起245に沿って配置される。作用部246が、作用突起245の先端に形成され、作動部材230のアーム部233に接触する。配置部材240のアーム部242は、作動部材230の付勢部234側に配置される。作用部246がアーム部233に接触する状態で、付勢部234、244は、隙間を開けて配置される。通過部247は、接触部243に形成された凹部からなる。
付勢手段221の環状の2つの端部は、それぞれ作動部材230の付勢部234と配置部材240の付勢部244に取り付けられる。付勢手段221により、作動部材230と配置部材240は、付勢部234、244が離れる方向に、同じ力(付勢力)で付勢される。この付勢力により、トルク(回転のモーメント)が作動部材230と配置部材240に作用する。配置部材240の回転中心と付勢部244との距離は、作動部材230の回転中心と付勢部234との距離よりも長くなっている。そのため、付勢手段221の付勢力により作動部材230と配置部材240にトルクが作用した際に、配置部材240に作用するトルクは、作動部材230に作用するトルクよりも大きくなる。また、配置部材240の回転中心と作用部246との距離は、作動部材230の回転中心とアーム部233の作用部246と接触する位置との距離よりも短くなっている。その結果、作用部246からアーム部233に加わる力が、アーム部233から作用部246に加わる力よりも大きくなる。アーム部233は、作用部246に押されて移動する。
配置部材240は、アーム部233を押しつつ回転(移動)する。同時に、作動部材230が回転して、アーム部233がメカニズムカバー200のストッパー211(図48参照)に接触する。ストッパー211により、作動部材230と配置部材240は、作動部材230によりロック機構109が作動しない位置に維持される。作動部材230は、押部231により噛合パウル165を押さず、噛合パウル165を非噛合位置C1に配置する。切替手段220はロック機構109を作動せず、ロック機構109は待機状態に維持される。その状態から、接触部243は、移動部材250に接触し、移動部材250により、付勢手段221の付勢力に抗して移動する。接触部243の移動に伴い、配置部材240が回転(移動)して、作用部246が移動する。同時に、付勢手段221の付勢により、アーム部233が作用部246に接触した状態で、作動部材230が回転する。このように、配置部材240と作動部材230は、連動して回転する。
作動部材230がストッパー211から離れる方向に移動するのに伴い、作動部材230は、押部231により噛合パウル165をラチェットホイール174に向かって押して、噛合パウル165を噛合位置C2に配置する。また、移動部材250により、配置部材240は、付勢手段221の付勢力に抗して、作動部材230によりロック機構109を作動させる位置に維持される。同時に、作動部材230は、付勢手段221の付勢力により、ロック機構109を作動させる位置に維持される。切替手段220はロック機構109を作動して、ロック機構109は作動状態に維持される。
その状態で、ラチェットホイール174が巻取方向Mに回転すると、噛合パウル165は、ラチェットホイール174の歯173に沿って変位しつつ、ラチェットホイール174の半径方向外側に押される。これに伴い、押部231が噛合パウル165により押されて、アーム部233が作用部246から離れる。その結果、作動部材230が回転して、付勢手段221が作動部材230により更に圧縮される。付勢手段221の付勢により、押部231は、噛合パウル165に接触した状態に維持され、噛合パウル165の変位に合わせて変位する。従って、リトラクタ101は、以上のように構成される作動部材230の変位機構222を備える。
図54は、メカニズムカバーユニット106の側面図であり、図37の矢印W9方向からみたメカニズムカバーユニット106を示している。図55は、図54のY3部の断面図である。図55Aは、非噛合位置C1に配置された噛合パウル165を示し、図55Bは、噛合位置C2に配置された噛合パウル165を示している。
図示のように、作動部材230と配置部材240は、それぞれ回転軸208、209を中心に回転して、回転方向に移動する。即ち、リトラクタ101は、作動部材230と配置部材240を回転により移動させる回転手段223を備えており、回転手段223は、2つの回転軸208、209を有する。回転手段223により、配置部材240は、作動部材230とともに回転により移動(図54の矢印H1)する。配置部材240の移動(回転)に連動して、作動部材230は、回転により移動(図54、図55の矢印H2)する。これにより、作動部材230は、ロック機構109を作動しない非作動位置E1と、ロック機構109を作動する作動位置E2に移動(回転)する。
作動部材230の非作動位置E1は、噛合パウル165が非噛合位置C1に配置される位置である(図55A参照)。作動部材230は、非作動位置E1への移動により噛合パウル165を非噛合位置C1に配置する。噛合パウル165はラチェットホイール174の歯173に噛み合わず、ロック機構109は待機状態に維持される。作動部材230の作動位置E2は、噛合パウル165が噛合位置C2に配置される位置である(図55B参照)。作動部材230は、作動位置E2への移動により噛合パウル165を噛合位置C2に配置する。噛合パウル165は、押部231により押されて、ラチェットホイール174の歯173に噛み合う。ロック機構109は、作動状態に維持される。配置部材240により、作動部材230は、非作動位置E1から作動位置E2に移動して、噛合パウル165によりロック機構109を作動する。ロック機構109は、歯173と噛合パウル165の噛み合いに伴い作動する。
付勢手段221により、作動部材230は、作動位置E2に向かって常に付勢され、押部231により噛合パウル165を押す。噛合パウル165は、ラチェットホイール174に接触したときに、押部231によりラチェットホイール174に押し付けられる。これに対し、配置部材240は、付勢手段221により、作動部材230を非作動位置E1に移動する方向(押部231を噛合パウル165から離す方向)に常に付勢されている。図54では、付勢手段221により、作動部材230は、反時計回りに回転するように付勢され、配置部材240は、時計回りに回転するように付勢されている。
上記したトルクの差により、作動部材230は、配置部材240に押されて、ストッパー211に接触する(図54参照)。その状態で、配置部材240の接触部243は固定歯261近傍に位置し、配置部材240は第1位置F1に配置される。配置部材240の第1位置F1は、作動部材230が非作動位置E1に配置される位置であり、作動部材230は、配置部材240により非作動位置E1に配置される。その状態から、配置部材240は、第1位置F1の外側の第2位置F2に向かって移動して、第2位置F2に配置される。第2位置F2は、作動部材230が作動位置E2に配置される位置である。配置部材240の移動に伴い、付勢手段221の付勢力により、作動部材230が作動位置E2に向かって移動して、押部231は噛合パウル165に接近する。
配置部材240は、回転手段223により回転して、第1位置F1と第2位置F2に配置される。同時に、配置部材240は、作動部材230とともに移動して、作動部材230を非作動位置E1と作動位置E2に配置する。付勢手段221は、配置部材240を第1位置F1に向かって付勢している。配置部材240が付勢手段221の付勢力により第2位置F2から第1位置F1に移動して、作動部材230が作動位置E2から非作動位置E1に移動する。
移動部材250により配置部材240が第1位置F1から第2位置F2に移動するときに、作動部材230は、付勢手段221の付勢力により、非作動位置E1から作動位置E2に移動する。これにより、噛合パウル165がラチェットホイール174に押し付けられる(図55B参照)。噛合パウル165は、引出方向Pに回転するラチェットホイール174の歯173のみに噛み合う。その状態で、ラチェットホイール174が巻取ドラム110とともに巻取方向Mに回転すると、噛合パウル165が、上記したように歯173により押される。噛合パウル165は、歯173に沿って変位して、複数の歯173を順に乗り換える。噛合パウル165の変位に伴い、配置部材240が停止した状態で、作動部材230が、付勢手段221の付勢力に抗して、変位機構222により変位する。
配置部材240が第2位置F2に維持された状態で、変位機構222により、噛合パウル165は、巻取ドラム110とともに巻取方向Mに回転するラチェットホイール174の歯173に沿って変位する。これにより、ラチェットホイール174の巻取方向Mの回転中に、噛合パウル165が複数の歯173に噛合可能な状態に確実に維持される。ラチェットホイール174が引出方向Pに回転すると、噛合パウル165が再び歯173に噛み合う。
配置部材240(図54、図55参照)は、作動部材230とともに移動して、作動部材230を非作動位置E1と作動位置E2とに移動させる。この移動により、作動部材230と配置部材240は、噛合パウル165の位置を制御するとともに、ロック機構109の状態とリトラクタ101の状態を切り替える。配置部材240により作動部材230が非作動位置E1に移動すると、噛合パウル165が非噛合位置C1に移動して、クラッチ190とロッキングギヤ170の連結が解除される。これにより、ロック機構109の状態が待機状態に切り替えられて、リトラクタ101の状態が緊急ロック状態に切り替えられる。配置部材240により作動部材230が作動位置E2に移動すると、噛合パウル165が噛合位置C2に移動して、クラッチ190がロッキングギヤ170に連結される。これにより、ロック機構109の状態が作動状態に切り替えられて、リトラクタ101の状態が自動ロック状態に切り替えられる。
移動部材250により、配置部材240は、第1位置F1と第2位置F2に配置されて、作動部材230を非作動位置E1と作動位置E2に配置する。移動部材250は、巻取ドラム110の回転に連動して回転し、回転に伴い、配置部材240を第1位置F1と第2位置F2とに移動させる。移動部材250は、外周部252と、外縁凸部253と、配置部材240を第1位置F1に維持する第1維持部254と、変更部255と、配置部材240を移動する移動部256と、配置部材240を第2位置F2に維持する第2維持部257と、解放部258を有する。配置部材240の接触部243は、移動部材250の各部253、255、256、257に接触する。
外周部252は、移動部材250の半径方向外側に拡張された拡張部252Aを有し、複数の固定歯261を覆う。拡張部252Aは、外周部252の一部に円弧状に形成されている。外縁凸部253は、拡張部252Aの縁に形成された円弧状凸部であり、複数の固定歯261の一部を囲むように配置される。第1維持部254は、複数の固定歯261と外縁凸部253(第2維持部257)の間に形成される円弧状の通路254Aを有する。第1維持部254の通路254Aは、拡張部252Aとメカニズムカバー200の間の空間からなる。通路254Aの一端部は、移動部256により塞がれ、通路254Aの他端部は、第2維持部257の終端部259において開放されている。
配置部材240の接触部243は、通路254Aの他端部から第1維持部254の通路254A内に入り、通路254A内で外縁凸部253に沿って相対的に移動する。その際、外縁凸部253は、配置部材240の通過部247を通過し、配置部材240(接触部243)は、固定歯261近傍の第1位置F1に配置される。接触部243が通路254A外に位置するときに、配置部材240は、固定歯261近傍の第1位置F1に配置され、移動部材250の外周部252に沿って相対的に移動する。従って、移動部材250の第1維持部254は、通路254Aと、通路254A外に位置する移動部材250の周辺部254Bからなる。周辺部254Bは、移動部材250の外周部252に沿う円弧状の周辺空間であり、通路254Aに繋がる。
外縁凸部253は、移動部材250の円周方向に延びる円弧部253Aと、円弧部253Aの端部に繋がる先端部253Bを有し、円弧部253Aと先端部253Bの間の箇所で移動部材250の半径方向内側に屈曲する。第2維持部257は、外縁凸部253の円弧部253Aからなり、移動部256は、外縁凸部253の先端部253Bからなる。変更部255は、先端部253B(移動部256)と、先端部253Bに繋がる円弧部253A(第2維持部257)の端部からなり、第1維持部254の終端部に位置する。変更部255と拡張部252Aの間に形成されたスリット250Aにより、変更部255は、拡張部252Aから切り離されている。変更部255が配置部材240の通過部247を通過するときに、変更部255は、配置部材240の接触部243に押されて、移動部材250の半径方向外側(図54の矢印H3参照)に弾性変形する。
図56〜図58は、移動部材250の回転に伴う切替手段220の動作を示す図であり、リトラクタ101を図54と同様に示している。図56Cは、図56BのY4部を模式的に示す断面図である。
図示のように、ウエビング2の引き出し又は巻き取りにより巻取ドラム110が引出方向P又は巻取方向Mに回転すると、減速機構260により、移動部材250が巻取ドラム110の回転方向の反対方向に回転する。また、移動部材250の回転に伴い、配置部材240は、移動部材250の円周方向に相対的に移動するとともに、移動部材250の各部252〜257に沿って相対的に移動する。
ウエビング2を巻取ドラム110に完全に巻き取ったときには、配置部材240の接触部243は、第1維持部254(周辺部254B)に配置される(図56A参照)。第1維持部254により、配置部材240が第1位置F1に維持されて、作動部材230が非作動位置E1に維持される。続いて、ウエビング2の引き出しにより移動部材250が回転すると、配置部材240(接触部243)が第1維持部254(通路254A、周辺部254B)に沿って相対的に移動する。また、ウエビング2の引き出しと巻き取りに伴い、配置部材240は、第1維持部254において、移動部材250の円周方向に相対的に移動する。巻取ドラム110からウエビング2が所定長さ(所定の引出長さ)引き出されるまで、接触部243が第1維持部254に配置されて、配置部材240が第1維持部254により第1位置F1に維持される。その結果、ロック機構109の状態が待機状態に維持され、リトラクタ101の状態が緊急ロック状態に維持される。
巻取ドラム110からウエビング2が所定長さ引き出されるときに(図56B参照)、配置部材240が変更部255に沿って相対的に変位し、変更部255により、配置部材240の位置が第1維持部254から移動部256による移動位置に変更される。移動部256による移動位置は、配置部材240が移動部256により移動可能になる位置である。配置部材240は、移動位置まで移動した後、移動部256により移動する。ここでは、ウエビング2の引き出しによる移動部材250の回転に伴い、配置部材240の接触部243が、第1維持部254の通路254A内で、変更部255に接近する(図56C参照)。続いて、接触部243が、通過部247内の変更部255に接触して、変更部255を移動部材250の半径方向外側に押す。これにより、変更部255が、弾性変形して、通過部247を通過する(図57A参照)。
変更部255は、配置部材240により弾性変形して、配置部材240の位置を第1維持部254から移動部256による移動位置に変更する。また、変更部255が通過部247を完全に通過したときに、変更部255は、元の形状に復帰する。同時に、移動部256が第1維持部254の終端部(通路254A)を塞ぐ元の位置に復帰し、接触部243が移動部256に接触可能な位置に配置される。
なお、移動部材250の全体は合成樹脂により形成されており、移動部材250の一部である変更部255は配置部材240により弾性変形する。これに対し、変更部255のみを、移動部材250の他の部分とは別の部品にしてもよい。この場合には、変更部255を、弾性変形可能な材料(例えば、合成樹脂、又は、ステンレス鋼の板)により形成して、移動部材250に固定する。
所定長さ引き出されたウエビング2を巻取ドラム110に巻き取るときに、移動部材250の移動部256が、移動部材250の回転に伴い、配置部材240を第1位置F1から第2位置F2に移動させる(図57B参照)。移動部256は、第2維持部257に向かって傾斜する傾斜部(ここでは、傾斜凸部)からなり、固定歯261近傍の位置から円弧部253A(第2維持部257)まで形成されている。また、移動部256は、移動部材250の回転方向に対して、移動部256による移動位置から第2維持部257に向かって傾斜し、第2維持部257の前端部に繋がる。
ウエビング2の巻き取りによる移動部材250の回転に伴い、配置部材240は、移動部256に接触し、移動部256に沿って次第に移動して、移動部256により第1位置F1から第2位置F2に誘導される。従って、移動部256は、配置部材240を第1位置F1から第2位置F2に誘導する誘導部でもある。
配置部材240が移動部256により移動する際には、配置部材240の接触部243が、付勢手段221の付勢により移動部256に押し付けられた状態で、移動部256により誘導されて、第2維持部257に向かって移動する。これにより、配置部材240が、移動部材250の半径方向外側に向かって移動して、第1位置F1から第2位置F2に移動する(図58A参照)。同時に、作動部材230が非作動位置E1から作動位置E2に移動して、ロック機構109の状態が待機状態から作動状態に切り替えられる。このように、緊急ロック状態で巻取ドラム110からウエビング2が所定長さ引き出されることで、切替手段220は、ロック機構109の状態を切り替えて、リトラクタ101の状態を緊急ロック状態から自動ロック状態に切り替える。
ここでは、ウエビング2が巻取ドラム110から完全に引き出されるときに、変更部255により、配置部材240の位置が、第1維持部254から移動部256による移動位置に変更される。従って、ウエビング2が巻取ドラム110から完全に引き出されるまで、配置部材240は、第1維持部254により第1位置F1に維持される。また、巻取ドラム110から完全に引き出されたウエビング2を巻取ドラム110に巻き取るときに、配置部材240が移動部256により移動する。切替手段220は、ウエビング2が巻取ドラム110から完全に引き出されることで、リトラクタ101の状態を緊急ロック状態から自動ロック状態に切り替える。
移動部256と第2維持部257が繋がる箇所では、外縁凸部253が、なだらかに屈曲して湾曲形状をなす。そのため、配置部材240の接触部243は、移動部256から第2維持部257まで円滑に移動する。接触部243は、第2維持部257に接触し、付勢手段221の付勢により第2維持部257に押し付けられる。接触部243が第2維持部257により押さえられることで、配置部材240が、第2維持部257により保持される。第2維持部257は、第1維持部254の半径方向外側に巻取ドラム110の軸線U1を中心とした円弧状に形成された円弧部253Aからなり、第1維持部254の一部(通路254A)を囲む。所定長さ引き出されたウエビング2の巻取ドラム110への巻取中に、配置部材240は、第2維持部257に接触して、第2維持部257により第2位置F2に維持される。ここでは、完全に引き出されたウエビング2の巻取中に、配置部材240が第2位置F2に維持される。第2維持部257は、移動部材250の円周方向に沿って所定長さに形成されている。
配置部材240が第2位置F2に維持されることで、作動部材230が作動位置E2に維持される。作動位置E2の作動部材230により(図55B参照)、噛合パウル165は、噛合位置C2に配置されて、ラチェットホイール174の歯173に噛み合う。その状態で、ウエビング2が引き出されると、クラッチ190がロッキングギヤ170及び巻取ドラム110とともに引出方向Pに回転して、噛合パウル165が作動部材230から離れる(図46参照)。また、ロック機構109が作動して巻取ドラム110をロックする。
ウエビング2の巻取時には、噛合パウル165が、一旦、ラチェットホイール174の歯173から外れる。続いて、噛合パウル165は、作動部材230の押部231に接触して、押部231により押し上げられ、作動位置E2の作動部材230により再び噛合位置C2に配置される(図55B参照)。その結果、ロック機構109の状態が作動状態に維持されて、リトラクタ101の状態が自動ロック状態に維持される。ロック機構109により、巻取ドラム110の引出方向Pの回転のみが止められる。
ウエビング2の巻き取りによる移動部材250の回転に伴い(図58B参照)、配置部材240(接触部243)は、第2維持部257に沿って相対的に移動するとともに、第2維持部257の終端部259及び移動部材250の解放部258に向かって相対的に移動する。第2維持部257により、配置部材240は、ウエビング2が巻取ドラム110に所定長さ(所定の巻取長さ)巻き取られるまで第2位置F2に維持される。また、ウエビング2が巻取ドラム110に所定長さ巻き取られたときに、配置部材240は、第2維持部257の終端部259から外れて、解放部258により第1維持部254に向かって解放される。配置部材240は、ウエビング2が巻取ドラム110に完全に巻き取られる前に、終端部259から外れる。
配置部材240の接触部243は、終端部259に達した後、第2維持部257から外れる。これにより、接触部243が第2維持部257により押さえられた状態から解放されて、配置部材240が第2維持部257から解放される。移動部材250の解放部258は、終端部259に続く部分であり、第2維持部257から第1維持部254まで形成された解放領域からなる。解放部258において、配置部材240は、移動部材250に接触することなく、移動部材250の半径方向内側に向かって、第2維持部257から第1維持部254まで移動する。
ウエビング2が巻取ドラム110に所定長さ巻き取られて、配置部材240が第2維持部257の終端部259から外れたときに、解放部258は、配置部材240を第2維持部257から第1維持部254に向かって解放する(図54参照)。この解放に伴い、配置部材240は、付勢手段221の付勢により、第2維持部257(第2位置F2)から第1維持部254(第1位置F1)に直ちに移動する。同時に、配置部材240により、作動部材230が作動位置E2から非作動位置E1に移動して、ロック機構109の状態が作動状態から待機状態に切り替えられる。このように、自動ロック状態でウエビング2が巻取ドラム110に所定長さ巻き取られることで、切替手段220は、ロック機構109の状態を切り替えて、リトラクタ101の状態を自動ロック状態から緊急ロック状態に直ちに切り替える。その後、ウエビング2は、巻取ドラム110に巻き取られ、又は、巻取ドラム110から引き出される。
以上説明したように、第2実施形態のリトラクタ101は、第1実施形態のリトラクタ1と同様に作用し、リトラクタ1と同様の効果を奏する。また、作動部材230と配置部材240を異なる回転軸208、209に取り付けたため、第1実施形態のリトラクタ1に比べて、回転軸208、209の軸方向における作動部材230と配置部材240の配置スペースを削減することができる。その結果、第1実施形態のリトラクタ1に比べて、作動部材230と配置部材240をコンパクトに配置することができる。
付勢手段221は、配置部材用付勢手段、かつ、作動部材用付勢手段であり、配置部材240と作動部材230に取り付けられた1つの付勢部材からなる。配置部材240と作動部材230を1つの付勢部材により付勢するため、第2実施形態のリトラクタ101では、第1実施形態のリトラクタ1に比べて、部品数を削減することができる。なお、配置部材240と作動部材230は、1つの回転軸に回転可能に取り付けて、付勢手段221により付勢してもよい。
第2実施形態では(図51参照)、4組の伝達孔291と伝達突起292を有する伝達機構290について説明したが、伝達機構290は、2組以上の伝達孔291と伝達突起292を有していればよい。また、複数組の伝達孔291と伝達突起292は、180°以下の任意の間隔で配置することができる。伝達孔291は、回転歯車280を貫通する孔であってもよく、回転歯車280を貫通しない孔(回転歯車280に形成された凹みを含む)であってもよい。伝達孔291を回転歯車280に形成せずに、移動部材250に伝達孔291を形成してもよい。この場合には、回転歯車280に形成した伝達突起292により、移動部材250の伝達孔291の内周が押されて、回転歯車280の回転が移動部材250に伝達される。