以下、添付図面を参照して、本発明に係るワーク分割装置及びワーク分割方法について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るワーク分割装置の第1の実施形態を示す要部断面図である。
図1に示すように、ワーク分割装置1は、冷凍チャックテーブル10、突上げ用リング12を備えている。冷凍チャックテーブル10上に、図30に示したような、半導体ウエーハWが粘着シートSを介してフレームFにマウントされたワーク2が設置される。なお、半導体ウエーハWの裏面には、DAF(Die Attach Film ダイアタッチフィルム)D(以下、DAF(D)と表示する。)を介して粘着シートSが貼着された状態となっている。ここで例えば、半導体ウエーハWは厚さ50μm程度、DAF(D)及び粘着シートSはそれぞれ厚さ数μmから100μm程度であるとする。
冷凍チャックテーブル10は、ワーク2を真空吸着により保持して、ワーク2を冷凍チャックテーブル10に接触させて、接触した部分を介して熱伝導によりDAF(D)を0℃以下、例えば−5℃〜−10℃程度に冷却するものである。
また、突上げ用リング12は、冷凍チャックテーブル10の周りを囲むように配置され、リング昇降機構16によって昇降可能に構成されたリングである。なお、このリングには摩擦力低減のためのコロ(ローラ)を設けてもよい。図1では、突上げ用リング12は、下降位置(待機位置)に位置している。
半導体ウエーハWには、図30に示すように、予めレーザ照射等によりその内部に分断予定ラインが格子状に形成されている。詳しくは後述するが、突上げ用リング12は、上昇することにより下から粘着シートSを押し上げて、粘着シートSをエキスパンドするものである。このように粘着シートSを引き伸ばすことにより、分断予定ラインが分断されて半導体ウエーハWがDAF(D)とともに個々のチップTに分割される。
ところで、上述したように、冷凍チャックテーブル10でDAF(D)を冷却するのは、DAF(D)は室温では粘度が高く、突上げ用リング12で粘着シートSを下側から押し上げても、DAF(D)は粘着シートSとともに伸びてしまい、分断されないからである。すなわち、DAF(D)を冷却して脆性化することにより、分断しやすくしているのである。
なお、図1に示すように、ワーク2は、粘着シートSの裏面が、丁度冷凍チャックテーブル10の上面に接触するような位置に、フレーム固定機構(フレーム抑え)18によりフレームFが固定されるようになっている。また、突上げ用リング12の外周側には、サブリング14が設置されている。詳しくは後述するが、このサブリング14は、エキスパンドされた粘着シートSの拡張状態を保持して、分断されたチップT間の間隔を維持するためのものである。
以下、図2のフローチャートに沿って、ワーク分割装置1によるワーク2の半導体ウエーハWを個々のチップTに分割して個片化する動作を説明する。
まず、図2のステップS100において、図1に示すように、半導体ウエーハWの裏面にDAF(D)を介して粘着シートSが接着されたワーク2のフレームFをフレーム固定機構18により固定する。そして、半導体ウエーハWが存在する領域が冷凍チャックテーブル10の上に位置するように配置する。
次に図2のステップS110において、冷凍チャックテーブル10は、ワーク2の裏面を真空吸着により吸着して冷凍チャックテーブル10の表面に確実に接触させる。冷凍チャックテーブル10は低温状態にあるので、この接触により熱伝導でワーク2は冷却される。特に、DAF(D)が−5℃〜−10℃程度に冷却され、これによりDAF(D)は脆性化し、力を加えることにより容易に割れるようになる。冷凍チャックテーブル10は、所定時間真空吸着を行い特にDAF(D)が所定温度になるまでワーク2の冷却を行う。なお、これらの制御は、図示を省略した制御手段によって行われる。
次に、図2のステップS120において、図3に示すように、エキスパンドを行い半導体ウエーハWをDAF(D)とともに個片化する。
すなわち、図3に示すように、冷凍チャックテーブル10は、真空吸着を停止し、ワーク2の吸着を解除し、リング昇降機構16により突上げ用リング12及びサブリング14を上昇させる。突上げ用リング12の上昇は、例えば、400mm/secで、15mm上方に突き上げるようにしている。なお、このときサブリング14はフレームFよりも上には上昇しないような位置で止まっているようにする。
図2に示すように、突上げ用リング12の上昇により、粘着シートSは下から押し上げられ、粘着シートSの面内において放射状にエキスパンド(拡張)される。粘着シートSが拡張されると、半導体ウエーハWは分断予定ラインに沿って分割され、個々のチップT間に数μmから100μmの隙間が形成される。このときDAF(D)は、冷却されて脆性化しているので、DAF(D)も半導体ウエーハWと一緒に分断予定ラインに沿って分割される。これにより半導体ウエーハWは、裏面にDAF(D)が付いた各チップTに個片化される。
粘着シートSは、突上げ用リング12によるエキスパンドを解除するとその弾性によって元に戻ってしまい各チップT間の隙間がなくなってしまうので、少なくとも各チップTが存在する領域において粘着シートSの拡張状態を維持しなければならない。
そこで、次に図2のステップS130において、図4に示すように、サブリング14を、フレームF上の拡張された粘着シートSに挿入できる位置までリング昇降機構16によって上昇させ、サブリング14を粘着シートSの拡張された部分に挿入する。このとき、上昇するサブリング14によって粘着シートSが破断しないように、低速でサブリング14を上昇させる。
次に、図2のステップS140において、図5に示すように、サブリング14だけをフレームFよりも上の位置に残して突上げ用リング12を下降させ、下降位置(待機位置)に移動させる。このとき、サブリング14はフレームF上の位置に残っているので、粘着シートSの拡張状態が保持される。
これにより、粘着シートSの拡張状態が保持されるので、各チップT間の隙間も広く維持され、DAF(D)が再固着することもない。したがって、粘着シートSが弛んだ状態でワーク2を搬送するようなことがなく、その後の処理が容易となる。
以上のように、図2のフローチャートに沿って説明したような方法でワーク2を分割することにより、ワーク分割(個片化)及び分割した各チップ間の隙間を維持するための拡張状態の保持までを一つのユニット内で行うことができ、製品を製造するタクトタイムを速くすることが可能となる。
しかし、サブリング14を用いて粘着シートSの拡張状態を保持する方法では、サブリング14によって粘着シートSを破ってしまう虞がある等の問題がある。
そこで次に、サブリング以外の手段により、エキスパンドが解除されたときにも粘着シートのエキスパンド状態の保持を可能とする実施形態を説明する。
図6は、本発明に係るワーク分割装置の第2の実施形態を示す要部断面図である。
図6に示すように、本実施形態のワーク分割装置100は、冷凍チャックテーブル10、突上げ用リング12、ウエーハカバー(粘着シート抑え)20及び選択的加熱装置22を備えている。本実施形態は、以下説明するように、粘着シートSの拡張状態を保持するために、サブリングを用いずに、ウエーハカバー20と選択的加熱装置22を用いて、弛んだ粘着シートSの部分を選択的に加熱して緊張させることで粘着シートSの拡張状態を保持するようにするものである。
選択的加熱装置22としては、特に光加熱装置、すなわちハロゲンヒータや、レーザあるいはフラッシュランプなどが例示される。しかし、スポットタイプのハロゲンヒータが最も好ましい。
ここでは、選択的加熱装置22としてスポットタイプのハロゲンヒータを用いている。具体的には、インフリッヂ工業(株)のハロゲンスポットヒータLCB−50(ランプ定格12V/100W)を用いた。焦点距離は35mm、集光径は2mmである。しかし、本実施形態では図11に示すように、ちょうど集光する部分を用いて加熱するのではなく、光源から対象物までの距離(照射距離)を46mmとして、焦点距離35mmに対して11mmオフセットし、照射径を17.5mmとしている。実際の照射径は、15mmであり、粘着シートSのワークWの外側の径15mmのエリアを加熱するようにしている。このようにスポットタイプのハロゲンヒータを用いることにより、加熱したい部分のみを選択的に(局所的に)加熱することができ、それ以外の部分への熱ストレスを最小限に抑制することができる。
また、ハロゲンランプ用電源としては、(株)ミューテックのハロゲンランプ用電源KPS−100E−12を使用した。このハロゲンランプ用電源の出力は定格電圧12Vである。また、ソフトスタート(スロースタート)機能を有しており、ハロゲンランプに突入電流が流れるのを防止している。
なお、従来技術の特許文献1に記載されたものにおいては、赤外線ヒータが用いられていたが、赤外線は視認性を有していない。これに対して、本実施形態ではハロゲンランプを用いており、その光は可視光であり視認性を有している。そのため、ハロゲンランプによる加熱領域を作業者が視認することができる。そのため、加熱領域をきちんと確認することができ、作業の確実性を増すことができ、従来の赤外線を用いるものよりも優れた効果を有している。
ウエーハカバー20は、有底の高さの低い円筒形状をしており、底面20aと側面20bとからなり、底面20aは半導体ウエーハWよりも一回り大きく形成されている。また、ウエーハカバー20は、カバー昇降機構21によって昇降可能に設置されており、下降した位置において、半導体ウエーハWを覆うようになっている。また一方、ウエーハカバー20の側面20bの先端面は、上昇した突上げ用リング12の先端面と突き合わされるようになっており、これにより半導体ウエーハWはウエーハカバー20によって完全に密閉される。
選択的加熱装置22は、ウエーハカバー20の外側で対称的な位置に配置され、ウエーハカバー20とヒータ昇降機構23によって昇降可能であり、詳しくは後述するように、下降した位置において粘着シートSの周辺部を選択的に加熱するように構成されている。図では、選択的加熱装置22は、ワーク2の直径方向の対称的な位置に2つ配置されているが、選択的加熱装置22の個数は2個に限定されるものではない。例えば、ウエーハカバー20の周囲に、90度の間隔で4個配置するようにしてもよい。
以下、図7のフローチャートに沿って本実施形態の作用を説明する。
まず、図7のステップS200において、図6に示すように、半導体ウエーハWの裏面にDAF(D)を介して粘着シートSが接着されたワーク2のフレームFをフレーム固定機構18により固定する。そして、半導体ウエーハWが存在する領域が冷凍チャックテーブル10の上に位置するように配置する。なお、半導体ウエーハWには、図30に示すように、予めレーザ照射等によりその内部に分断予定ラインが格子状に形成されている。
次に図7のステップS210において、冷凍チャックテーブル10は、ワーク2の裏面を真空吸着により吸着して冷凍チャックテーブル10の表面に確実に接触させ、熱伝導によってワーク2を冷却する。冷凍チャックテーブル10は、所定時間ワーク2を真空吸着して、DAF(D)が脆性化するように冷却した後、真空吸着を解除する。
次に、図7のステップS220において、図8に示すように、リング昇降機構16によって突上げ用リング12を上昇させて、粘着シートSをエキスパンドする。このときの突上げ用リング12の突き上げは、前の実施形態と同様に、例えば400mm/secの速度で、15mmの高さまで粘着シートSを突き上げる。
これにより粘着シートSが放射状に拡張されて半導体ウエーハWが分断予定ラインに沿ってDAF(D)と一緒になって、各チップTに分割される。
次に、図7のステップS230において、図9に示すように、ウエーハカバー20及び選択的加熱装置22を、それぞれカバー昇降機構21及びヒータ昇降機構23によって下降させ、ウエーハカバー20でワーク2の半導体ウエーハWの部分を被覆する。このとき図9に示すように、ウエーハカバー20の側面20bの先端面と、突上げ用リング12の先端面とを突き合わせて、ウエーハカバー20と突上げ用リング12との間で粘着シートSを把持する。
このウエーハカバー20と突上げ用リング12との間で粘着シートSを把持する力は、例えば40kgf程度である。
次に、図7のステップS240において、図10に示すように、ウエーハカバー20と突上げ用リング12との間で粘着シートSを把持したまま、ウエーハカバー20と突上げ用リング12を、半導体ウエーハWの下側の粘着シートSの裏面が冷凍チャックテーブル10の上面に接触する位置まで下降させる。これにより、粘着シートSの、ウエーハカバー20と突上げ用リング12とで把持された部分の周辺部が弛緩し、弛み部が発生する。なお、このとき、ウエーハカバー20と突上げ用リング12との間で粘着シートSを把持する力は40kgfを維持している。
次に、図7のステップS250において、図11に示すように、ウエーハカバー20と突上げ用リング12との間で把持した部分の外側の弛緩した粘着シートSの部分に対してのみ、選択的加熱装置22でスポット光を当てて選択的に加熱する。このとき、もしDAF(D)も同時に加熱されてしまうとDAF(D)が溶けてチップT間の隙間がなくなってしまう虞があるので、粘着シートSの弛んだ部分のみを選択的に加熱する必要がある。
この加熱により弛んだ粘着シートSが緊張して、弛みが次第に解消して行く。なお、選択的加熱装置22としては、前述したようにスポットタイプのハロゲンヒータを用いており、それぞれ定格出力12V、100Wである。また、光源から粘着シートSの照射対象エリアまでの照射距離は46mmで、焦点距離35mmよりも11mmオフセットされ、直径17.5mmのエリアに光が照射される。また、図に示すように、ハロゲンヒータの照射方向は鉛直方向に対して15度程度傾いている。そして、実際に加熱される粘着シートSのエリアは直径15mmである。このようにハロゲン光により照射された粘着シートSの温度は、140℃〜160℃となる。また、ウエーハカバー20と突上げ用リング12との間の把持力も40kgfが維持されている。
またこのとき、選択的加熱装置(スポットタイプのハロゲンヒータ)22をオンしてからその加熱状態が安定した後(約2秒後)、固定した一定の位置からのみ加熱することによって粘着シートSの緊張状態に偏りが生じないように、選択的加熱装置22をウエーハカバー20の周囲に一定の周期で所定速度で回転することが好ましい。このように選択的加熱装置22をウエーハカバー20の周囲に一定の周期で回転させることで様々な方向から加熱することにより、粘着シートSの緊張状態に偏りが生じるのを防ぐことができる。なお、選択的加熱装置22を回転する場合に、ヒータ昇降機構23が単に選択的加熱装置22を昇降させるだけでなく、選択的加熱装置22を一定の周期で回転させるヒータ回転機構の機能をも備えるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、選択的加熱装置22による熱輻射によって加熱しているので、粘着シートSの弛んだ部分にのみ局所的に(選択的に)加熱することができる。また特に本実施形態では、半導体ウエーハWをウエーハカバー20で覆っているため熱を遮蔽して、選択的加熱装置22によってDAF(D)が加熱されてしまうのを防ぐことができ、より一層選択的加熱装置22による局所的な加熱を可能としている。
なお、ウエーハカバー20で半導体ウエーハWを覆うようにしたことにより、このように半導体ウエーハWを選択的加熱装置22から熱的に遮蔽するだけでなく、光的に遮蔽するという効果も有している。光的に遮蔽するということは、例えば、選択的加熱装置22の光源からの漏れ光が半導体ウエーハWにあたらないように遮蔽したり、半導体ウエーハWのデバイスによっては紫外線等の光に弱いものもあるので、これらのデバイスを紫外線から遮蔽したりして守るということも含まれている。また、さらに選択的加熱装置22で粘着シートSを加熱すると、高温になり煙(ある種のガス)を発生することがあるが、ウエーハカバー20により、そのような煙が半導体ウエーハWに悪影響を与えないように遮蔽して守るという効果も有している。
なお、ウエーハカバー20内にエアーを供給してウエーハカバー20内部に与圧を与えるようにしてもよい。このとき、ウエーハカバー20の側壁にエアーを逃がす穴を設けておくことが好ましい。この穴からエアーが抜けることにより、ウエーハカバー20の外周部で加熱された粘着シートSから発生する煙を吹き飛ばすこともできる。
また、ウエーハカバー20と突上げ用リング12とによって粘着シートSの弛んだ部分の近くを把持しているので、弛んだ部分を加熱することによってウエーハカバー20や突上げ用リング12も加熱されるが、この熱は熱伝導によってウエーハカバー20や突上げ用リング12を通じて逃げて行く。したがって、ウエーハカバー20及び突上げ用リング12の内部に囲われたDAF(D)は、熱的に遮蔽されており、加熱されることはない。
この点従来のように、温風による雰囲気加熱の場合には、熱対流により全体が加熱されてしまうので、粘着シートSの弛んだ部分だけを選択的に加熱することはできなかった。また、DAF(D)の冷却も、冷蔵庫のようにユニット全体を冷却する雰囲気冷却方式でエキスパンドを行う場合には、選択的な冷却をすることができなかった。このように従来、雰囲気加熱や雰囲気冷却を用いた場合には、冷却と加熱を一つのユニットで行うことができなかった。
これに対して本実施形態では、DAF(D)の冷却については、冷凍チャックテーブル10で吸着してワーク2を接触させることによる熱伝導(熱伝達)を用いて冷却しているので、DAF(D)の部分のみを選択的に冷却することができる。また粘着シートSの弛んだ部分の加熱も選択的加熱装置22として特にスポットタイプのハロゲンヒータを用いて輻射により、局所的な部分のみを選択的に加熱することができる。
したがって、本実施形態においては、このように、それぞれ選択的に冷却及び加熱をすることができるので、DAF(D)の冷却と、弛んだ粘着シートSの加熱とを一つのユニット内で行うことが可能となる。
このようにして、ウエーハカバー20の外周部の粘着シートSの弛んだ部分を加熱した結果を図12に示す。
図12は、選択的加熱装置22によって選択的に加熱された粘着シートSが熱収縮している様子を測定したサーモトレーサ画面である。
図12において、スポットタイプのハロゲンヒータでウエーハカバー(粘着シート抑え)20の外側の弛んだ粘着シートSを局所的に加熱している。これにより、図に符号Aで示す粘着シートSの加熱中心の温度は90度近くに達している。これに対して、ウエーハカバー20は50度程度であり、またフレーム固定機構(フレーム抑え)18も40度程度とほとんど温度は上がっていない。なお、図の符号Bの部分も90度程度になっているが、これはハロゲンランプからの正反射光が入ったもので、正確に測定されたものではない。
このように、スポットタイプのハロゲンヒータで加熱することにより、粘着シートSの弛んだ部分のみを加熱し、その他の部分の温度を上昇させないように選択的に加熱することが可能となる。
このようにして、粘着シートSを所定時間加熱して粘着シートSが緊張して弛みが解消したら、選択的加熱装置22による加熱(選択的加熱装置22の回転)を停止する。このとき粘着シートSが硬化するまで約30秒程度、ウエーハカバー20と突上げ用リング12とによる粘着シートSの把持を続ける。
最後に、図7のステップS260において、図13に示すように、ウエーハカバー20(と選択的加熱装置22)を上昇させるとともに、突上げ用リング12を降下させて、粘着シートSの把持を解放する。なおこの間、冷凍チャックテーブル10による真空吸着によって熱収縮部を冷却することにより硬化を促進するようにしてもよい。このように冷凍チャックテーブル10によって真空吸着して冷却することにより、粘着シートSの外周部の加熱された部分の熱をとってやることで、通常室温に放置するよも短時間で粘着シートSを硬化させることができる。その後、冷凍チャックテーブル10による真空吸着を行っていた場合、真空吸着も停止する。
このようにして、各チップTの間隔が十分維持されるとともに、周囲の粘着シートSに弛みのないワーク2を製造することができる。
したがって、本実施形態によれば、チップの品質低下や歩留りの低下を生じることもない。
以上説明した第2実施形態においては、ウエーハカバーによりワーク2の半導体ウエーハWの部分を被覆して加熱手段である選択的加熱装置22から熱的に遮蔽していたが、選択的加熱装置22はスポット的に熱を当てて選択的に加熱することができるので、ウエーハカバーで熱的に遮蔽する方が好ましいが、必ずしもウエーハカバーによる遮蔽は必要ではない。
例えば、半導体ウエーハWを覆う上の部分がなく、ある程度の高さを有する隔壁(側壁)だけを有し、突上げ用リング12とともに粘着シートSを挟む、カシメ機構を構成するものであればよい。ある程度の高さがあれば、隔壁(側壁)だけであっても、選択的加熱装置からの光を遮蔽して熱的な遮蔽をすることもでき、たとえ選択的加熱装置22が光加熱装置でなく温風ヒータのような雰囲気加熱であっても、隔壁の存在によってダイレクトに温風が半導体ウエーハW側の方へいかなければある程度の遮蔽効果を発揮することは可能である。また、煙の遮蔽に関しても同様である。
また、さらにウエーハカバーを完全になくして、選択的加熱装置22によりスポット的に熱を当てて選択的に加熱するだけにしたものも考えられる。
第2の実施形態の変形例として、第2の実施形態からウエーハカバー20の使用をやめたものについて説明する。
以下、このような変形例の動作を図14のフローチャートに沿って説明する。
ワーク分割装置としては、図6に示す第2の実施形態の装置構成からウエーハカバー20を除いたもの、あるいは装置構成は同じで単にウエーハカバー20を使用しないようにしたものとする。
まず図14のステップS300において、半導体ウエーハWの裏面にDAF(D)を介して粘着シートSが接着されたワーク2のフレームFをフレーム固定機構18により固定する。そして、半導体ウエーハWが存在する領域が冷凍チャックテーブル10の上に位置するように配置する。
次に図14のステップS310において、冷凍チャックテーブル10によりワーク2の裏面を真空吸着により吸着して冷凍チャックテーブル10の表面に確実に接触させ、熱伝導によってワーク2を冷却する。
次に図14のステップS320において、リング昇降機構16によって突上げ用リング12を上昇させて、粘着シートSをエキスパンドする。
次に図14のステップS330において、突上げ用リング12を、半導体ウエーハWの下側の粘着シートSの裏面が冷凍チャックテーブル10の上面に接触する位置まで下降させる。これにより、粘着シートSの周辺部が弛緩し、弛み部が発生する。
次に図14のステップS340において、突上げ用リング12の外側の弛緩した粘着シートSの部分に対してのみ、選択的加熱装置22でスポット光を当てて選択的に加熱する。これにより、粘着シートSの弛んだ部分が熱によって緊張し弛みが解消する。またこのとき、粘着シートSの弛緩した部分に加えられた熱は、粘着シートSの他の部分にも伝わろうとするが、粘着シートSに接触している突上げ用リング12を介して熱伝導(熱伝達)によって逃げていくため、DAF(D)の領域の方へは熱が伝わりにくくなっている。なお、このとき、冷凍チャックテーブル10でDAF(D)の領域を同時に冷却するようにしてもよい。
最後に、図14のステップS350において、突上げ用リング12を下降させて下降位置(待機位置)へ移動させる。なおこの間、冷凍チャックテーブル10による真空吸着によって熱収縮部を冷却することにより弛んだ粘着シートSの硬化を促進するようにしてもよい。このように冷凍チャックテーブル10によって真空吸着して冷却することにより、粘着シートSの外周部の加熱された部分の熱をとってやることで、通常室温に放置するよも短時間で粘着シートSを硬化させることができる。
これにより、チップ間隔が十分に確保されたワークが形成され、次の工程での処理が容易となる。
次に、本発明のダイボンダへの応用について説明する。
図15に、従来のダイボンダの一例の概略を示す。図15に示すように、ダイボンダ200は、エキスパンド機構210とボンディング機構220を有している。
エキスパンド機構210により、粘着シートSを介してフレームFにマウントされた半導体ウエーハWが、予め形成された分断予定ラインにより分断されて各チップTに個別化される。
すなわち、半導体ウエーハWがマウントされたフレームFをエキスパンド機構210のエキスパンドステージ212にセットして、フレーム加圧板214でフレームFを下に押し下げて、粘着シートSをエキスパンドすることにより、半導体ウエーハWが個々のチップTに分割される。
なお、このときエキスパンド機構210を、エキスパンドステージ212の代わりに突上げ用リングを用い、フレーム加圧板214の代わりにフレーム固定機構(フレーム抑え)を用いて、フレームFをフレーム固定機構で固定し、突き上げ用リングを粘着シートSの下側から押し上げて粘着シートSをエキスパンドするように構成してもよい。
また、ボンディング機構220は、エキスパンド機構210の下方に可動に配置されたチップ突き上げピン222と、エキスパンド機構210の上方に配置されたカメラ装置224と、エキスパンド機構210の側方に配置された基体移動手段230と、基体移動手段230とエキスパンド機構210の間を往復駆動するコレット226を備えている。
上述したようにエキスパンド機構210が粘着シートSをエキスパンドして半導体ウエーハWを個々のチップTに分割すると、カメラ装置224がピックアップするチップTを撮像し、撮像した画像を処理することでチップTの良否判定等が行われる。この画像処理結果に基づいて、突き上げピン222が上昇してチップTを粘着シートSの下側から突き上げて、ピックアップしやすいようにする。そして、突き上げられたチップTを、コレット226で真空吸着して粘着シートSからピックアップする。コレット226は、基体移動手段230上の基体232の真上まで移動して、吸着したチップTを基体232上にボンディングする。
以上がダイボンダの作用であるが、エキスパンドされた粘着シートS上のすべてのチップTをボンディングするのではなく、そのうちのいくつか、例えば半導体ウエーハWが1000個のチップTに分割されていたとして、そのうちの5個だけをサンプルチップとしてピックアップし、先にこれだけを組み立てて検査を行い、検査OKとなったら残りのすべてのチップTを製品としてボンディングすることがある。
このような場合、サンプルとしてのチップをボンディングする工程と、製品としてのチップをボンディングする工程との間において、サンプルチップの検査が終了するまでサンプルチップを抜いた残りのチップを有するワーク(半導体ウエーハW)を保管しておかなければならない。しかし、保管時間が長くなると、一度エキスパンドされた粘着シートSが次第にもとに戻り、エキスパンドにより拡張されたチップ間の間隔が狭まり、チップ同士が接触したりして破損するという問題がある。
そこで以下説明する例は、ダイボンダに、本発明の隔壁(側壁)と突き上げ用リングとで粘着シートSを挟むカシメ機構と、隔壁の外側を選択的に加熱する選択的加熱装置とを適用して、サンプルチップを抜き出した後、エキスパンドを解除しても、半導体ウエーハW部分の粘着シートSのエキスパンド状態を維持することにより、チップ間の間隔を維持してチップ同士が接触して破損するのを防止しようというものである。
図16に、本発明のカシメ機構及び選択的加熱装置を適用したダイボンダの概略構成を示す。図16は、特にダイボンダのエキスパンド機構の部分を示したもので、粘着シートSをエキスパンドした状態を示している。なお、ここで示す例におけるワークはDAFを有しておらず、半導体ウエーハWが直接粘着シートSに貼着されている。
図16に示すダイボンダのエキスパンド機構は、半導体ウエーハWがマウントされたフレームFを把持するフレーム固定機構118、粘着シートSを下から突き上げる突き上げ用リング112と突き上げ用リング112を昇降動作させるリング昇降機構116、及び粘着シートSの下方に可動に配置されたチップ突き上げピン128と、粘着シートSの上方に配置されたチップTをピックアップするコレット126とを備えている。なお、図示を省略したが、この他にエキスパンド機構の上方には、ピックアップするチップTの位置を確認するためのカメラ装置が配置されている。
このようなダイボンダに対してさらに、エキスパンド機構の上方に、昇降動作可能で、突き上げ用リング112と粘着シートSを挟むように突き合わせて粘着シートSをかしめるカシメ機構を構成する隔壁(側壁)120、及び半導体ウエーハWの周囲の粘着シートSを選択的に加熱する選択的加熱装置122が設置される。
選択的加熱装置122としては、前述したようなスポットタイプのハロゲンヒータであることが好ましい。また、選択的加熱装置122には、選択的加熱装置122を昇降動作させるとともに、選択的加熱装置122を粘着シートSの周囲に沿って回転させる昇降回転機構123が設置されている。
図16においては、リング昇降機構116により突き上げ用リング112を上昇させて粘着シートSをエキスパンドして、半導体ウエーハWの個片化された各チップT間の間隔を広げている。
以下、図17及び図18のフローチャートに沿って、このカシメ機構及び選択的加熱装置を備えたダイボンダのエキスパンド機構の作用を説明する。
まず、図17のフローチャートのステップS400において、半導体ウエーハWが粘着シートSに貼着されたワークのフレームFをフレーム固定機構118により固定し、次にステップS410において、図16に示すように、リング昇降機構116によって突き上げ用リング112を上昇させて、粘着シートSをエキスパンドする。これにより、粘着シートSが放射状に拡張されて、半導体ウエーハWが予め設けられた分断予定ラインに沿って分断され、各チップTに個片化される。
次に、図17のステップS420において、図19に示すように、隔壁120及び選択的加熱装置122を、それぞれ隔壁昇降機構(不図示)及び昇降回転機構123によって下降させる。そして、隔壁120の下端部を粘着シートSを挟んで突き上げ用リング112の先端部と突き合わせて、粘着シートSをかしめるようにする。そして図19に矢印Eで示すように、チップ突き上げピン128を上昇させてチップTを粘着シートSの下側から突き上げてピックアップし易いようにする。また図16に矢印Fで示すように、突き上げられたチップTを、コレット126でピックアップして、ボンディングステージに搬送する。
次に、図17のステップS430において、図20に示すように、隔壁120と突き上げ用リング112とによるカシメ機構で粘着シートSを把持したまま、隔壁120と突き上げ用リング112とをフレームFと同じ高さまで下降させる。これにより、隔壁120と突き上げ用リング112とによるカシメ機構で粘着シートSを把持した部分の周辺の粘着シートSが弛緩して、弛み部が発生する。また、このとき同時に、選択的加熱装置122も昇降回転機構123により粘着シートSの周辺部を加熱できる位置まで下降させておいてもよい。
次に、図17のステップS440において、図21に示すように、選択的加熱装置122により粘着シートSの弛緩部を選択的に加熱する。
粘着シートSの周辺の弛み部を選択的に加熱する工程を図18のフローチャートに沿って詳しく説明する。
図18のステップS441において、選択的加熱装置122のハロゲンヒータがまだ加熱位置まで下降していない場合には、選択的加熱装置122としてのハロゲンヒータを粘着シートSの周辺を加熱できる位置まで昇降回転機構123により下降させる。
ここで、選択的加熱装置122の制御方法について、詳しく説明しておく。図22に、選択的加熱装置122と粘着シートSとの位置関係の一例を平面図で示す。選択的加熱装置122は、スポットタイプのハロゲンヒータである。
図22に示す例では、粘着シートSの周囲に等間隔で対称的に4つの選択的加熱装置122が配置されている。なお、図22では、半導体ウエーハWやフレームF等は省略して、中央にチップTを一つだけ表示している。
図22の例では、チップTは略正方形であり、選択的加熱装置122は、チップTの各辺に対向する位置に配置されている。この位置で各選択的加熱装置122の電源をオンにすると、熱収縮性の材料で形成された粘着シートSは、加熱されて図に矢印Jで示したように収縮する。その結果、チップTは、X方向及びY方向に引っ張られる。
ここで例えば粘着シートSは、図のX方向(横方向)は収縮し難く、Y方向(縦方向)は収縮し易いとする。このような収縮異方性を解消するために、収縮し難いX方向に配置された選択的加熱装置122に対しては、収縮し易いY方向に配置された選択的加熱装置122よりも(ハロゲンヒータに対する)印加電圧を高めに設定するようにする。これにより、粘着シートSは縦方向及び横方向に均等に収縮し、各チップTは外周方向に均等に引っ張られるので、チップT同士がくっついてしまったり、配列ずれを生じることはない。
さらにこのとき、図に矢印Kで示すように、選択的加熱装置(スポットタイプのハロゲンヒータ)122を、昇降回転機構123によって、粘着シートSの周囲に回転走査させる。
図23に、選択的加熱装置122を回転走査する様子を示す。
まず、図23に符号1で示す位置で選択的加熱装置122の電源をオンにして加熱を行う。このとき、前述したように粘着シートSはX方向(横方向)は収縮し難く、Y方向(縦方向)は収縮し易いとしているので、図の符号Hの位置にある選択的加熱装置122は、符号Lの位置にある選択的加熱装置122よりも印加電圧を高く設定する。
次に選択的加熱装置122の電源をオフにするか、加熱に寄与しない電圧を印加して、丁度符号1の中間の位置である符号2の位置まで、選択的加熱装置122を昇降回転機構123によって45度回転する。
次に、符号2の位置でまた選択的加熱装置122の電源をオンにして粘着シートSを加熱する。この符号2の位置においては、X方向とY方向の中間の方向であるので、全ての選択的加熱装置122の印加電圧は等しくする。
このようにして、粘着シートSを、粘着シートSを、横方向、縦方向及び斜め方向の全ての方向に対して均等に収縮させることができる。
なお、選択的加熱装置122の個数はこの例のように4個に限定されるものではなく、図22に示す4個の選択的加熱装置122の間にそれぞれ1個ずつ選択的加熱装置を追加して8個の選択的加熱装置122を備えるようにしてもよい。
図24に、8個の選択的加熱装置を備えた例を示す。図24に示す例においては、図22の4つの選択的加熱装置122に対して、各選択的加熱装置122の間にそれぞれ一つずつ選択的加熱装置122が配置され、全体で8個の選択的加熱装置122が粘着シートSの周囲に等間隔で配置されている。この場合も、8個の選択的加熱装置122は、昇降回転機構123によって粘着シートSに対して昇降可能かつその周囲に回転走査させることができる。
図25に、8個の選択的加熱装置122を回転走査する様子を示す。
例えば、8個の選択的加熱装置122は、始め図25の符号1の位置において粘着シートSの周辺部を加熱する。次に、図25に矢印Kで示すように、選択的加熱装置122を昇降回転機構123によって符号2の位置まで22.5度(360度÷8÷2)だけ回転する。この回転中においては、選択的加熱装置122は電源オフするか、加熱に寄与しない程度の電圧を印加する。そして、次に図25の符号2の位置において粘着シートSの周辺部を加熱する。
なお、このとき前の例と同様に、チップTに対して示したX方向(横方向)はY方向(縦方向)よりも粘着シートSが収縮し難い場合には、図に破線で示した範囲Hにある選択的加熱装置122は、図に破線で示した範囲Lにある選択的加熱装置122よりも印加電圧を高くするようにする。
なお、選択的加熱装置122の個数は、これらの例のように4個や8個に限定されるものではなく、少なくとも4個以上で、粘着シートSの外周に沿って等間隔に対称的に配置することができればよい。例えば、6個の選択的加熱装置は、粘着シートSの外周に沿って等間隔に対称的に配置することができるので、6個でもよい。
また、図22の4個の選択的加熱装置122の間にそれぞれ2個の選択的加熱装置を追加して12個としてもよいし、図22の4個の選択的加熱装置122の間にそれぞれ3個の選択的加熱装置を追加して16個としてもよい。このように、選択的加熱装置122の個数は、4の倍数とすることが好ましい。
このように、少なくとも4個以上の選択的加熱装置を粘着シートSの周囲に均等に配置して、粘着シートSの収縮し難い方向については、選択的加熱装置に対する印加電圧をより高くして加熱するようにして、選択的加熱装置による加熱と所定角度の回転を繰り返すことで、粘着シートSを横方向、縦方向及び斜め方向の全ての方向に対して均等に収縮させることができる。
ここで、再び図18に戻る。なお、図17及び図18のフローチャートでその作用を説明している図16に示すダイボンダにおいては、図24に示すように粘着シートSの周囲に沿って等間隔に8個の選択的加熱装置122が配置されているとする。また、図24の例と同様に、チップTに対して示したX方向(横方向)はY方向(縦方向)よりも粘着シートSが収縮し難いものとする。
図18のステップS442において、図25の符号1で示す位置において、8個の選択的加熱装置122の電源をオンにして粘着シートSの弛んだ外周部を加熱する。このとき、図25に破線Hで囲んだ領域においては、選択的加熱装置122の印加電圧を、破線Lで囲んだ領域においてよりも高く設定する。これにより、粘着シートSの収縮し難い横方向(X方向)についても、収縮し易い方向(Y方向)と同じように収縮させることができ、収縮の異方性を抑性することができる。
次に、図18のステップS443において、選択的加熱装置122の電源をオフにするか加熱に寄与しない電圧を印加して図25に矢印Kで示したように、昇降回転機構123によって選択的加熱装置122を符号2で示す位置まで回転する。
次に、ステップS444において、図25の符号2の位置で、選択的加熱装置122の電源をオンにして粘着シートSの外周部を加熱する。このとき、図25に破線Hで囲んだ領域においては、選択的加熱装置122の印加電圧を、破線Lで囲んだ領域よりも高く設定する。
そして、ステップS445において、選択的加熱装置122の電源をオフにして、昇降回転機構123により選択的加熱装置(ハロゲンヒータ)122を待機位置まで上昇させる。
そして、最後に図17のステップS450において、隔壁120を選択的加熱装置122と同様に待機位置に上昇させるとともに、突き上げ用リング112も待機位置まで降下させ、粘着シートSの拡張を解除する。そしてフレームFをはずしてワークを次の工程に搬送する。あるいは、サンプルチップの検査が終了するまで所定の場所に保管する。
このように選択的加熱装置により粘着シートSの弛んだ部分のみを選択的にまた均等
加熱することにより、粘着シートSが全ての方向について均等に収縮され、分割された各チップTの間隔及び配列を維持することができる。従って、サンプルチップをピックアップしたワークをダイボンダからはずして、サンプルチップの検査が終了するまで保管するとしても、粘着シートSの拡張状態が維持されるため、拡張された粘着シートSが再び元に戻ってチップTの間隔が狭まってチップ同士が接触するようなことはない。
また、選択的加熱装置が粘着シートSの周囲に沿って等間隔に8個配置された場合のその他の加熱制御方法について説明する。
すなわち、例えば図24に示すように、粘着シートSの周囲に沿って等間隔に8個の選択的加熱装置122としてスポットタイプのハロゲンヒータが配置されている。ただし、このときチップTは、図24に示すような略正方形ではなく、図のX方向(横方向)とY方向(縦方向)とにおける長さの比(アスペクト比)は、1:2.4の縦長の長方形状であるとする(図27参照)。
各選択的加熱装置122は、粘着シートSの周囲に45度の間隔で並んでいる。この45度の間隔を8等分して、5.6度ずつ各選択的加熱装置122を粘着シートSの周囲に沿って回転し、5.6度回転するごとにその位置で加熱するようにする。このとき、最初は図26において、選択的加熱装置122としてのハロゲンヒータに対する印加電圧は、LeftとRightの位置では12Vとし、TopとBottomの位置では5Vとする。
このようして、5.6度ずつ回転しながら、8回加熱したら、次は、最初の位置より5.6度の半分の2.8度ずらした位置から初めるようにする。今度は、ハロゲンヒータに対する印加電圧は、LeftとRightの位置では12Vとし、TopとBottomの位置では11Vとする。そして、また5.6度ずつ回転しながら、8回加熱する。
このようにして加熱し、粘着シートS上の各チップTの間隔を、図26に示す、Center、Left、Right、Top、Bottomの5か所について、図27に示すような5つのポイントで、それぞれHorizontal及びVerticalの2方向について測定した。
図28に、それぞれの箇所について各ポイント毎の測定結果を示す。この結果を見ると、上記のような加熱制御により、チップ間の間隔はどの場所においても平均20〜30程度であり、それほど大きな違いは発生しないことがわかる。
これに対して、比較のために、このような加熱制御をすることなく、単に粘着シートSの全周囲から同じように加熱した場合の測定結果を図29に示す。
図29を見ると、チップTのアスペクト比が1:2.4で異方性を有する場合に、全方向から同じように加熱した場合には、粘着シートS上の場所及び方向によって、チップ間隔が、平均で10台から50台までと、大きく変化していることがわかる。
このように、上述したような加熱制御を行うことにより、チップが正方形から大きくはずれたような形状をしており、異方性がある場合でも、全方向について同じように粘着シートSを収縮することができる。また、逆にチップが等方的で異方性がなく、粘着シートSの側に異方性がある場合でも、上記加熱制御方法で対応することができる。
なお、いままで説明したてき例においては、選択的加熱装置は、スポットタイプのハロゲンヒータとしていたが、隔壁120が存在することにより、温風ヒータを用いることも可能である。すなわち、ノズル等から局所的な領域のみに温風を吹き出すようにしすれば、隔壁120により、温風がダイレクトに半導体ウエーハWの領域にはいかないようにすることができるので、粘着シートSの弛み部のみを選択的に加熱することが可能となる。
なお、以上説明したダイボンダに本発明のカシメ機構及び選択的加熱装置を適用した例において、隔壁と突き上げ用リングとで構成されるカシメ機構は、これの内側の半導体ウエーハW(チップT)が貼着された粘着シートSの部分と、これの外側の粘着シートSの部分との間において、前述した実施形態と同様に熱的遮蔽機能を果たしている。
このカシメ機構の外周側を選択的加熱装置で加熱しても、この熱はカシメ機構を構成する突き上げ用リング等の金属部分を通じて熱伝達により逃げていくため、カシメ機構の内側の粘着シートSに熱が伝わることが抑制される。
上に示した例では、選択的加熱装置として光加熱装置(スポットタイプのハロゲンヒータ)が用いられたが、ノズルから加熱したい部分にのみ温風を吹き付けるような温風ヒータでカシメ機構の外周の粘着シートSを加熱するようにしてもよい。粘着シートSの上側から温風を吹き付けても、隔壁があるため、半導体ウエーハWが貼着されている粘着シートSの領域に直接温風があたることはないからである。
以上、本発明のワーク分割装置及びワーク分割方法と本発明のカシメ機構及び選択的加熱装置をダイボンダに適用した例について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。