以下、添付図面を参照して、本発明に係るワーク分割装置及びワーク分割方法について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係るワーク分割装置の第1の実施形態を示す構成図である。
図1に示すように、第1の実施形態のワーク分割装置1は、ワークユニット2の冷却・拡張及び拡張状態の保持を同一のユニットで実施することができる装置であり、主として、雰囲気冷却手段10と、ワーク分割手段11と、選択的加熱手段15と、ウェハカバー20と、で構成される。
そして、図30に示したようなワークユニット2がワーク分割手段11のフレームFにマウントされる。即ち、ワークとしての半導体ウェハW(以下、「ウエハW」という)が貼付されるダイシングテープSの周縁部が、剛性のあるリング状のフレームFにマウントされ、フレームFがフレーム固定機構18に固定される。
ウェハWの裏面は、DAF(Die Attach Film ダイアタッチフィルム…以下、「DAF(D)」と表示する。)を介してダイシングテープSに貼付された状態となっている。ここで例えば、ウェハWは厚さ50μm程度、DAF(D)及びダイシングテープSはそれぞれ厚さ数μmから100μm程度のものが一般的に使用される。
ダイシングテープSとしては、次の種類のテープを好適に使用できる。即ち、ポリオレフィン(PO)系テープの場合、例えば古河電工製のUC−353EP−110やリンテック製のD−675、ポリ塩化ビニール(PVC)系テープの場合、日東電工製のUE−110Bやリンテック製のD−175、UV型DAFテープ(基材はPO系)の場合、日立化成工業製のFHシリーズ(例えば、FH−9011)等が挙げられる。また、感圧型DAFテープ(基材はPO系)としては、日立化成工業製のHRシリーズ(例えばHR−9004)が挙げられる。このようなダイシングテープSは、エキスパンド性を有するとともに加熱することによって熱収縮又は熱硬化する。
ウェハWを保持するエキスパンド性のダイシングテープSは、フレームFにマウントしてエキスパンドさせることが必要となるため、当然ウェハWよりも大きい領域となる。例えば、ウェハの径(直径)が200mmサイズの円板の場合、エキスパンドするダイシングテープSは、300mm程度の大きさのリング状のフレームFに貼られており、その内側にウェハWがある。ウェハWとフレームFの間も25mm〜40mm以上はある。
ウェハWの裏面とダイシングテープSの間にはDAF(D)が介在されている。DAF(D)はウェハWとほぼ同径ではあるが、実質はウェハWよりも少し大きくしている。なぜならば、DAF(D)は伸縮性の材料であるので、ウェハWと全く同一サイズとした場合、ウェハWが、DAF(D)に対して、少しずれて貼り付けられてしまう場合があるからである。こうした微妙なずれがあっても、必ずDAF上にウェハWを載せ置いて貼り付けるために、DAF(D)はそのずれ量も考慮して多少ウェハWよりも大きめ、即ち、外形にして約10mm程度大きくすることが好ましい。しかし、必ずしもこれに限定されるものではなく、極端な場合、DAF(D)はダイシングテープSと同じようにフレームFいっぱいの大きさとしてもよい。
また、DAFテープは伸縮性の材料であり、ウェハWの裏面に確実に貼り付けるためには、貼り付け精度上のマージンからDAF径はウェハWの径よりも10mm程度、少なくとも、ウェハWの径よりも2mm以上(片側1mm以上)大きくすることが好ましい。
雰囲気冷却手段10は、ワークユニット2をとりまく雰囲気を冷却することによって、分断予定ラインを有するウェハWを含むワークユニット2を冷却するものである。
雰囲気冷却手段10としては、ワーク分割装置1の機器類が収納される冷蔵室30内全体を冷却する冷蔵室内冷却手段32と、ワークユニット2に冷却ガスを吹き付ける冷却ガス吹付手段34と、の少なくとも1つを備えることにより構成される。
冷蔵室内冷却手段32は、冷却ガス製造装置36で製造された冷却ガスを、ダクト38を介して冷蔵室30内に導入することにより、冷蔵室30内全体を冷却する。これにより、ワークユニット2をとりまく雰囲気を冷却してワークユニット2の分断予定ラインを含むウェハWを冷却する。冷蔵室30内全体を冷却する方法としては、冷却ガスを冷蔵室30内に供給する方法の他に、冷蔵室30の内壁面全体に冷却パネル(図示せず)を設ける方法でもよい。
また、冷却ガス吹付手段34は、冷却ガス製造装置36で製造された冷却ガスを、ダクト40を介してワークユニット2の下方に設けられた中空円板状の吹出ノズル42に供給し、吹出ノズル42の上面(ワーク面側)に形成された多数の吹出口からワークユニット2に向かって冷却ガスを吹き出す。中空円板状の吹出ノズル42の直径は、DAF径よりも一回り大きい(例えば5mm程度)ことが好ましい。
なお、吹出ノズル42から吹き出す冷却ガスの風速は、フレームFに支持されたワークユニット2にバタつきが生じない程度の風速であることが好ましい。このような風速であっても、ワークユニット2に当たる冷却ガスに対流が生じることにより、ワークユニット2の冷却速度を向上できる。
そして、ワークユニット2は、雰囲気冷却手段10によってDAF(D)が0℃以下、例えば−5℃〜−10℃程度になるように冷却される。従って、冷却ガスは、空気でもよいが、低温まで冷却しやすい窒素ガスや炭酸ガス等を使用することが好ましい。窒素ガスや炭酸ガスを用いた場合には、テープへの投入熱量が過大となっても、テープの酸化反応を抑えることができるため、発煙や発火の虞がなくなる点で好ましい。
なお、雰囲気冷却手段10として、冷蔵室内冷却手段32と冷却ガス吹付手段34との例で示したが、これに限定されるものではなく、ワークユニット2に直接接触しないでワークユニット2を冷却させることができるものであればよい。
ワーク分割手段11は、主として、ワークユニット2のダイシングテープSを保持するフレームFと、フレームFを固定するフレーム固定機構18と、ダイシングテープSをエキスパンドする突上げ用リング12と、で構成される。
突上げ用リング12は、ワークユニット2の下方であって、ウェハWとフレームFとの間に配置された円筒状の部材であり、吹出ノズル42を囲むように配置される。また、突上げ用リング12はリング昇降機構16によって昇降可能に構成され、円筒状の突上げ用リング12が上昇したときに、ダイシングテープSの全周で接触するように形成される。これにより、突上げ用リング12は、吹出ノズル42から吹き出した冷却ガスが突上げ用リング12の外側に拡散することを抑制する隔壁としての役目を兼用する。また、突上げ用リング12は、アルミニウムなどの熱伝導性の良い金属等で形成されているのがよい。
なお、この突上げ用リング12には摩擦力低減のためのコロ12A(ローラ)を設けてもよい。図1では、突上げ用リング12は、ワークユニット2の下降位置(待機位置)に位置している。
ウェハWには、図30に示すように、予めレーザ照射等によりその内部に分断予定ラインが格子状に形成されている。詳しくは後述するが、突上げ用リング12は、上昇することにより下からダイシングテープSを押し上げて、ダイシングテープSをエキスパンド(引き伸ばす)する。このようにダイシングテープSを引き伸ばすことにより、分断予定ラインが分断されてウェハWがDAF(D)とともに個々のチップT(図30参照)に分割
される。
ところで、上述したように、DAF(D)を冷却するのは、DAF(D)は室温では粘度が高く、突上げ用リング12でダイシングテープSを下側から押し上げても、DAF(D)はダイシングテープSとともに伸びてしまい、分断されないからである。
即ち、DAF(D)を冷却して脆性化することにより、分断しやすくしているのである。
また、選択的加熱手段15としては、ダイシングテープSの弛み部分を選択的に加熱できるものであればどのようなものでもよいが、ここでは光加熱装置22について説明する。
光加熱装置22は、ウェハカバー20の外側で対称的な位置に配置され、ウェハカバー20とヒータ昇降機構23によって昇降可能であり、詳しくは後述するように、下降した位置においてダイシングテープSの周辺部を選択的に加熱するように構成されている。図1では、光加熱装置22は、ワークユニット2の直径方向の対称的な位置に二つ配置されているが、光加熱装置22の個数は2個に限定されるものではない。例えば、ウェハカバー20の周囲に、90度の間隔で4個配置するようにしてもよい。
光加熱装置22は、例えば、スポットタイプのハロゲンランプヒータである。また、光加熱装置22は、光を照射して輻射により加熱するものであれば、その他に、レーザやフラッシュランプなどでもよい。
こうした光加熱装置22の場合、光の照射状態を目視で確認することができる。また、光が照射された領域は、輻射現象により加熱されるのに対して、光が照射されない領域は加熱されない。即ち、光を照射するとき、その照射領域を視認することができるので、その照射が視認できる領域を輻射により加熱する領域として局所的に限定することが可能となる。
本実施形態においては、光加熱装置22としてスポットタイプのハロゲンランプヒータを用いている。具体的には、インフリッヂ工業(株)のハロゲンスポットヒータLCB−50(ランプ定格12V/100W)を用いた。焦点距離は35mm、集光径は2mmである。しかし、後述する図6に示すように、丁度集光する部分を用いて加熱するのではなく、光源から対象物までの距離(照射距離)を46mmとして、焦点距離35mmに対して11mmオフセットし、照射径を17.5mmとしている。実際の照射径は、15mmであり、ダイシングテープSのワークWの外側の径15mmのエリアを加熱するようにしている。
図1に示すように、ウェハカバー20は、有底の高さの低い円筒形状をしており、底面20aと側面20bとからなり、底面20aはウェハWよりも一回り大きく形成されている。
また、ウェハカバー20は、カバー昇降機構21によって昇降可能に設置されており、下降した位置において、ウェハWを覆うようになっている。一方、ウェハカバー20の側面20bの先端面は、上昇した突上げ用リング12の先端面と突き合わされるようになっており、これによりウェハWはウェハカバー20とダイシングテープSとによって完全に密閉される。また、ウェハカバー20は、突上げ用リング12と同様に、アルミニウムなどの熱伝導性の良い金属等で形成されているのがよい。
図1に示すように、カバー昇降機構21の内部を中空にして、冷却ガス製造装置36で製造された冷却ガスがダクト39を介してウェハカバー20から吹き出されるようにすることが好ましい。図1では、ダクト切換手段41を設けて、冷却ガス製造装置36から冷蔵室30へのダクト38と、ウェハカバー20へのダクト39と、を切換可能に構成している。これにより、冷蔵室30内全体を冷却することなく、ウェハカバー20から吹き出す冷却ガスと冷却ガス吹付手段34から吹き出す冷却ガスでウェハ周辺(ワーク周辺)のみの雰囲気を効率的に冷却する雰囲気冷却手段を構築することが可能となる。このようにウェハカバー20から冷却ガスを吹き出す構成とする場合には、ウェハカバー20内が完全に密閉されると冷却ガスの逃げ場がなくなるので、ウェハカバー20に部分的に冷却ガスの逃げ孔(図示せず)を開けておく必要がある。
また、選択的加熱手段15の場合には、突上げ用リング12はリング昇降機構16によって昇降可能に構成され、円筒状の突上げ用リング12が上昇したときに、ダイシングテープSの全周で接触するように形成されることが好ましい。
このように突上げ用リング12をダイシングテープSの全周で接触する構成とすることにより、突上げ用リング12は以下のような機能を有している。
即ち、DAF(D)が貼られた領域は、DAF(D)をウェハWとともに分断するために、冷却状態を保っておく必要がある。一方、ダイシングテープSをエキスパンドした後、ダイシングテープSに弛みが発生した際、その弛みを排除しなくてはならない。ダイシングテープSに弛みが残されたままワークユニット2を搬送すると、分断されたチップT同士がぶつかってチップを破損することになるからである。この弛みを排除するため、ダイシングテープSとして、上記したように、加熱すると熱収縮したり、熱硬化したりする機能を有する熱収縮性のテープが使用される。
このようにエキスパンドしてウェハWを個々に分断する場合において、ウェハ領域は冷却することによって、DAFテープの分断性を向上させることを確保しなければならないとともに、ウェハ領域外の外側においては、弛みをなくす目的でダイシングテープSを選択的に加熱して弛んだ部分を熱収縮又は熱硬化させることが必要となる。
即ち、突上げ用リング12及びウェハカバー20は、冷却状態を維持する必要のあるウェハ領域と、加熱状態を維持する必要のあるウェハ領域外との二つの領域においての熱環境を分離するという機能を有している。
特に、雰囲気冷却手段10として冷却ガス吹付手段34を使用した場合、冷却ガス吹付手段34から吹き出された冷却ガスは突上げ用リング12によって拡散されるのが抑制され、ウェハ領域を効率的に冷却する。また、ウェハ領域外のダイシングテープSの弛みが発生した部分を加熱した暖かい熱のウェハ領域への流入は突上げ用リング12で効果的に遮断される。また、ダイシングテープSは高分子でできており、金属などと比べて熱伝導性が悪いため、ウェハ領域外を加熱した暖かい熱は熱伝導性の良い金属製の突上げ用リング12やウェハカバー20を伝って逃げる。これにより、突上げ用リング12の内周部に存在するウェハ領域に暖かい熱が伝わりにくくできる。
以上から、突上げ用リング12やウェハカバー20によって、熱環境を領域的に効果的に隔離することができる。即ち、突上げ用リング12の内側、また、特にウェハ領域は局所的に冷却されてDAFの分断性が向上する状態を保つ。一方で突上げ用リング12の外側は、加熱することによってダイシングテープSを熱収縮又は熱硬化させて、エキスパンドにより発生したダイシングテープ外周部の弛みを除去し、緊張した状況を作ることが可能となる。
図2はワークユニット2のフレームF上、ウェハカバー20の外側のダイシングテープS上、及びウェハW側にそれぞれ貼られたサーモラベルTLの拡大図であり、図3は、光加熱装置22によってウェハカバー20の外側のダイシングテープSを加熱したプロセス後のサーモラベル拡大図である。
ここで、サーモラベルTLは50℃以上の温度で赤変するタイプである。図3のプロセス後のサーモラベル拡大図でもわかるように、光が照射されていないウェハW側及びフレームF側は50℃に達していない。
このようにスポットタイプのハロゲンランプヒータを用いることにより、加熱したい部分のみを選択的に(局所的に)加熱することができ、それ以外の部分への熱ストレスを最小限に抑制することができる。
また、ハロゲンランプ用電源としては、(株)ミューテックのハロゲンランプ用電源KPS−100E−12を使用した。このハロゲンランプ用電源の出力は定格電圧12Vである。また、ソフトスタート(スロースタート)機能を有しており、ハロゲンランプに突入電流が流れるのを防止している。
これらの組み合わせにより、ヒータ電源ON指令よりスロースタート0.75秒を経てヒータ最大照度に到達するまでにかかる時間は3秒以内である。これは温風ヒータや赤外線ヒータと比較すると非常に短時間である。同様に最大照度から電源OFFまでの時間も同様である。また、所定の照度から別の照度への変更応答性も3秒以内である。このようにハロゲンランプを用いることにより、短時間で目的の照度つまり温度を得ることができる。これは一般的な赤外線ヒータや温風ヒータでの実現は困難である。このように制御性が良いこともハロゲンランプヒータを用いることが好ましい一つの理由である。
ハロゲンランプヒータによる輻射現象を利用した局所的な加熱によって、雰囲気冷却手段10を利用したワークユニット2、特にウェハW及びDAF(D)の冷却であっても、ダイシングテープ外周部の弛み部分のみを選択的に加熱して、弛みを除去することができる。即ち、冷却によるDAFの脆性化と、ダイシングテープSの熱収縮又は熱硬化による拡張状態の保持とを同じ冷蔵室30内で行うことができる。これによって、DAFの冷却後、ダイシングテープSの熱収縮のために、場所を移動させる必要がなくなる。
次に、図4のフローチャートに沿って、上記の如く構成された第1の実施の形態のワーク分割装置1によって、ワークユニット2のウェハWを個々のチップTに分割して個片化するワーク分割方法を説明する。なお、図5〜図8は冷蔵室30を省略して図示している。
まず、図4のステップS200において、図1に示すように、ウェハWの裏面にDAF(D)を介してダイシングテープSが接着されたワークユニット2をフレームFにマウントするとともに、フレームFをフレーム固定機構18により固定する。
次に図4のステップS210において、冷蔵室内冷却手段32及び冷却ガス吹付手段34の少なくとも1つを使用してワークユニット2を冷却する。特に、DAF(D)を−5℃〜−10℃程度に冷却してDAF(D)を脆性化し、力を加えることにより容易に割れるようにする。これら冷蔵室内冷却手段32及び冷却ガス吹付手段34から吹き出される冷却ガスの温度及び風量等の冷却条件の制御は、図示を省略した制御手段によって行われる。
なお、ウェハWには、図30に示すように、予めレーザ照射等によりその内部に分断予定ラインが格子状に形成されている。
次に、図4のステップS220において、図5に示すように、リング昇降機構16によって突上げ用リング12を上昇させて、ダイシングテープSをエキスパンドする。このときの突上げ用リング12の突上げは、例えば400mm/secの速度で、15mmの高さまでダイシングテープSを突き上げる。
これによりダイシングテープSがワークユニット2の中心から放射状に拡張されてウェハWが分断予定ラインに沿ってDAF(D)と一緒になって、各チップTに分割される。
次に、図4のステップS230において、図6に示すように、ウェハカバー20及び光加熱装置22を、それぞれカバー昇降機構21及びヒータ昇降機構23によって下降させ、ウェハカバー20でワークユニット2のウェハWの部分を被覆する。このとき図6に示すように、ウェハカバー20の側面20bの先端面と、突上げ用リング12の先端面とを突き合わせて、ウェハカバー20と突上げ用リング12との間でダイシングテープSを把持する。このウェハカバー20と突上げ用リング12との間でダイシングテープSを把持する力は、例えば40kgf程度である。
次に、図4のステップS240において、図7に示すように、ウェハカバー20と突上げ用リング12との間でダイシングテープSを把持したまま、ウェハカバー20と突上げ用リング12を下降させる。これにより、ダイシングテープSのウェハカバー20と突上げ用リング12とで把持された部分の周辺部が弛緩し、弛み部が発生する。なお、このとき、ウェハカバー20と突上げ用リング12との間でダイシングテープSを把持する力は40kgfを維持している。
次に、図4のステップS250において、図8に示すように、ウェハカバー20と突上げ用リング12の各先端面を突き合わせて把持した部分の外側の弛緩したダイシングテープSの部分に対してのみ、光加熱装置22でスポット光を当てて選択的に加熱する。このとき、もしウェハWが貼付されたDAF(D)の領域も同時に加熱されてしまうとDAF(D)が溶けてチップT間の隙間がなくなってしまう虞があるので、ダイシングテープSのウェハWが貼付された領域以外の弛んだ部分のみを選択的に加熱する必要がある。この点において第1の実施の形態では、光加熱装置22での選択的な加熱と、突上げ用リング12及びウェハカバー20による熱環境の隔離作用と、によってウェハWが貼付されたDAF(D)の領域も同時に加熱されることを効果的に防止できる。また、光加熱装置22で弛緩したダイシングテープSの部分を加熱している間、吹出ノズル42及びウェハカバー20から冷却ガスを吹き出してウェハ領域を冷却することも良い方法である。
この加熱によりダイシングテープSの弛み部分が熱収縮又は熱硬化により緊張して、弛みが解消する。なお、例えば光加熱装置22はそれぞれ100Wであり、直径20mmのエリアに光を照射する。ウェハカバー20と突上げ用リング12との間の把持力も40kgfが維持されている。
またこのとき、光加熱装置22をオンしてからその加熱状態が安定した後(約2秒後)、固定した一定の位置からのみ加熱することによってダイシングテープSの拡張状態に偏りが生じないように、光加熱装置22をウェハカバー20の周囲に一定の周期で且つ所定速度で回転することが好ましい。このように光加熱装置22をウェハカバー20の周囲に一定の周期で回転させることで様々な方向から加熱することにより、ダイシングテープSの拡張状態に偏りが生じるのを防ぐことができる。なお、光加熱装置22を回転する場合に、ヒータ昇降機構23が単に光加熱装置22を昇降させるだけでなく、光加熱装置22を一定の周期で回転させるヒータ回転機構の機能をも備えるようにしてもよい。
ここで、光加熱装置22の制御方法について、詳しく説明しておく。図9に、光加熱装置22とダイシングテープSとの位置関係の一例を平面図で示す。光加熱装置22は、スポットタイプのハロゲンランプヒータである。
図9に示す例では、ダイシングテープSの周囲に等間隔で対称的に4つの光加熱装置22が配置されている。なお、図9では、ウェハWやフレームF等は省略して、中央にチップTを一つだけ表示している。
図9の例では、チップTは略正方形であり、各光加熱装置22は、チップTの各辺に対向する位置にそれぞれ配置されている。この位置で各光加熱装置22の電源をオンすると、熱収縮性又は熱硬化性の材料で形成されたダイシングテープSは、加熱されて図に矢印Jで示したように熱収縮するか又は熱硬化する。その結果、チップTは、X方向及びY方向に引っ張られる。
ここで例えばダイシングテープSは、図のX方向(横方向)は収縮し難く、Y方向(縦方向)は収縮し易いとする。このような収縮異方性を解消するために、収縮し難いX方向に配置された光加熱装置22に対しては、収縮し易いY方向に配置された光加熱装置22よりも(ハロゲンランプヒータに対する)印加電圧を高めに設定するようにする。これにより、ダイシングテープSは縦方向及び横方向に均等に収縮し、各チップTは外周方向に均等に引っ張られるので、チップT同士がくっついてしまったり、配列ずれを生じたりすることはない。
さらにこのとき、図9に矢印Kで示すように、光加熱装置22(スポットタイプのハロゲンランプヒータ)を、ヒータ昇降機構23によって、ダイシングテープSの周囲に回転走査させる。
図10に、光加熱装置22を回転走査する様子を示す。
まず、図10に符号1で示す位置で光加熱装置22(図10においては図示省略)の電源をオンにして加熱を行う。このとき、前述したようにダイシングテープSは、X方向(横方向)は収縮し難く、Y方向(縦方向)は収縮し易いとしているので、図の符号Hの位置にある光加熱装置22は、符号Lの位置にある光加熱装置22よりも印加電圧を高く設定する。
次に光加熱装置22の電源をオフにするか、加熱に寄与しない電圧を印加して、丁度符号1の中間の位置である符号2の位置まで、光加熱装置22をヒータ昇降機構23により45度回転する。
次に、符号2の位置でまた光加熱装置22の電源をオンにしてダイシングテープSを加熱する。この符号2の位置においては、X方向とY方向の中間の方向であるので、全ての光加熱装置22の印加電圧は等しくする。
このようにして、ダイシングテープSを、横方向、縦方向及び斜め方向の全ての方向に対して均等に収縮させることができる。
なお、光加熱装置22の個数はこの例のように4個に限定されるものではなく、図9に示す4個の光加熱装置22の間にそれぞれ1個ずつ光加熱装置を追加して8個の光加熱装置22を備えるようにしてもよい。
図11に、8個の光加熱装置を備えた例を示す。図11に示す例においては、図9の4つの光加熱装置22に対して、各光加熱装置22の間にそれぞれ一つずつ光加熱装置22が配置され、全体で8個の光加熱装置22がダイシングテープSの周囲に等間隔で配置されている。この場合も、8個の光加熱装置22は、ヒータ昇降機構23によってダイシングテープSに対して昇降可能かつその周囲に回転走査させることができる。
図12に、8個の光加熱装置22を回転走査する様子を示す。
例えば、8個の光加熱装置22は、始め図12の符号1の位置においてダイシングテープSの周辺部を加熱する。次に、図12に矢印Kで示すように、光加熱装置22をヒータ昇降機構23によって符号2の位置まで22.5度(360度÷8÷2)だけ回転する。
この回転中においては、光加熱装置22は電源オフするか、加熱に寄与しない程度の電圧を印加する。そして、次に図12の符号2の位置においてダイシングテープSの周辺部を加熱する。
なお、このとき前の例と同様に、チップTに対して示したX方向(横方向)はY方向(縦方向)よりもダイシングテープSが収縮し難い場合には、図12に破線で示した範囲Hの光加熱装置22は、図12に破線で示した範囲Lにある光加熱装置22よりも印加電圧を高くするようにする。
なお、光加熱装置22の個数は、これらの例のように4個や8個に限定されるものではなく、少なくとも4個以上で、ダイシングテープSの外周に沿って等間隔に対称的に配置することができればよい。例えば、6個の光加熱装置は、ダイシングテープSの外周に沿って等間隔に対称的に配置することができるので、6個でもよい。
また、図9の4個の光加熱装置22の間にそれぞれ2個の光加熱装置を追加して12個としてもよいし、図9の4個の光加熱装置22の間にそれぞれ3個の光加熱装置を追加して16個としてもよい。このように、光加熱装置22の個数は、4の倍数とすることが好ましい。
このように、少なくとも4個以上の光加熱装置をダイシングテープSの周囲に均等に配置して、ダイシングテープSの収縮し難い方向については、光加熱装置22に対する印加電圧をより高くして加熱するようにして、光加熱装置22による加熱と所定角度の回転を繰り返すことで、ダイシングテープSを横方向、縦方向及び斜め方向の全ての方向に対して均等に収縮させることができる。
なお、ここでは、図11に示すようにダイシングテープSの周囲に沿って等間隔に8個の光加熱装置22が配置されているとする。また、図11の例と同様に、チップTに対して示したX方向(横方向)はY方向(縦方向)よりもダイシングテープSが収縮し難いものとする。
次に、図12の符号1で示す位置において、8個の光加熱装置22の電源をオンにしてダイシングテープSの弛んだ外周部を加熱する。このとき、図12に破線Hで囲んだ領域においては、光加熱装置22の印加電圧を、破線Lで囲んだ領域においてよりも高く設定する。これにより、ダイシングテープSの収縮し難い横方向(X方向)についても、収縮し易い方向(Y方向)と同じように収縮させることができ、収縮の異方性を抑性できる。
次に、光加熱装置22の電源をオフにするか加熱に寄与しない電圧を印加して図12に矢印Kで示したように、ヒータ昇降機構23によって光加熱装置22を符号2で示す位置に回転する。
次に、図12の符号2の位置で、光加熱装置22の電源をオンにしてダイシングテープSの外周部を加熱する。このとき、図12に破線Hで囲んだ領域においては、光加熱装置22の印加電圧を、破線Lで囲んだ領域よりも高く設定する。
そして、光加熱装置22の電源をオフにして、ヒータ昇降機構23により光加熱装置22を待機位置まで上昇させる。
そして、最後に、ウェハカバー20を光加熱装置22と同様に待機位置に上昇させるとともに、突上げ用リング12も待機位置まで降下させ、ダイシングテープSの拡張を解除する。そしてフレームFをはずしてワークを次の工程に搬送する。
このように光加熱装置22によりダイシングテープSの弛んだ部分のみを選択的にまた均等加熱することにより、ダイシングテープSが全ての方向について均等に収縮され、分割された各チップTの間隔及び配列を維持することができる。また、光加熱装置22がダイシングテープSの周囲に沿って等間隔に8個配置された場合のその他の加熱制御方法について説明する。
すなわち、例えば図11に示すように、ダイシングテープSの周囲に沿って等間隔に8個の光加熱装置22としてスポットタイプのハロゲンランプヒータが配置されている。ただし、このときチップTは、図11に示すような略正方形ではなく、図のX方向(横方向)とY方向(縦方向)とにおける長さの比(アスペクト比)は、1:2.4の縦長の長方形状であるとする(図14参照)。
各光加熱装置22は、ダイシングテープSの周囲に45度の間隔で並んでいる。この45度の間隔を8等分して、5.6度ずつ各光加熱装置22をダイシングテープSの周囲に沿って回転し、5.6度回転する毎にその位置で加熱するようにする。このとき、最初は図13において、光加熱装置22としてのハロゲンランプヒータに対する印加電圧は、LeftとRightの位置では12Vとし、TopとBottomの位置では5Vとする。
このようして、5.6度ずつ回転しながら、8回加熱したら、次は、最初の位置より5.6度の半分の2.8度ずらした位置から初めるようにする。今度は、ハロゲンランプヒータに対する印加電圧は、LeftとRightの位置では12Vとし、TopとBottomの位置では11Vとする。そして、また5.6度ずつ回転しながら、8回加熱する。
このようにして加熱し、ダイシングテープS上の各チップTの間隔を、図13に示すCenter、Left、Right、Top、Bottomの5か所について、図14に示すような5つのポイントで、それぞれHorizontal及びVerticalの2方向について測定した。
図15に、それぞれの箇所について各ポイントの測定結果を示す。この結果を見ると、上記のような加熱制御により、チップ間の間隔はどの場所においても平均20〜30程度であり、それほど大きな違いは発生しないことがわかる。
これに対して、比較のために、このような加熱制御をすることなく、単にダイシングテープSの全周囲から同じように加熱した場合の測定結果を図16に示す。
図16を見ると、チップTのアスペクト比が1:2.4で異方性を有する場合に、全方向から同じように加熱した場合には、ダイシングテープS上の場所及び方向によって、チップ間隔が、平均で10台から50台までと、大きく変化していることがわかる。
このように、上述したような加熱制御を行うことにより、チップが正方形から大きくはずれたような形状をしており、異方性がある場合でも、全方向について同じようにダイシングテープSを収縮することができる。また、逆にチップが等方的で異方性がなく、ダイシングテープSの側に異方性がある場合でも、上記加熱制御方法で対応することができる。
なお、いままで説明してきた例においては、光加熱装置22は、スポットタイプのハロゲンランプヒータとしていたが、ウェハカバー20が存在することにより、温風ヒータを用いることも可能である。即ち、ノズル等から局所的な領域のみに温風を吹き出すようにしすれば、ウェハカバー20により、温風がダイレクトに半導体ウェハWの領域には行かないようにすることができるので、ダイシングテープSの弛み部のみを選択的に加熱することが可能となる。
また、本実施形態においては、光加熱装置22による熱輻射によって加熱しているので、ダイシングテープSの弛んだ部分にのみ局所的に(選択的に)加熱することができる。
また特に本実施形態では、ウェハWをウェハカバー20で覆っているため熱を遮蔽して、光加熱装置22によってワークが貼付されたDAF(D)が加熱されてしまうのを防ぐことができ、より一層光加熱装置22による局所的な加熱を可能としている。
また、ウェハカバー20と突上げ用リング12とによってダイシングテープSの弛んだ部分の近くを把持しているので、弛んだ部分を加熱することによってウェハカバー20や突上げ用リング12も加熱されるが、この熱は熱伝導によってウェハカバー20や突上げ用リング12を通じて逃げて行く。従って、ウェハカバー20及び突上げ用リング12の内部に囲われたウェハWが貼付されたDAF(D)は、熱的に遮蔽されており、加熱されることはない。
従って、本実施形態においては、ウェハWが貼付されたDAF(D)の冷却と、ウェハWが貼付された領域以外の弛んだダイシングテープSの加熱とを一つのユニット内(冷蔵室30内)で行うことが可能である。
このようにして、ウェハカバー20の外周部のダイシングテープSの弛んだ部分を加熱した結果を図17及び図18に示す。
図17及び図18は、光加熱装置22によって選択的に加熱されたダイシングテープSが熱収縮している様子を測定したサーモトレーサ画面である。
図17及び図18において、スポットタイプのハロゲンランプヒータでウェハカバー20の外側の弛んだダイシングテープSを局所的に加熱している。これにより、図17及び図18に符号Aで示すダイシングテープSの加熱中心の温度は140度近くに達している。これに対して、ウェハカバー20は50度程度であり、またフレーム固定機構18も40度程度とほとんど温度は上がっていない。なお、図17及び図18の符号Bの部分も90度程度になっているが、これはハロゲンランプからの正反射光が入ったもので、正確に測定されたものではない。
このように、スポットタイプのハロゲンヒータで加熱することにより、ダイシングテープSの弛んだ部分のみを加熱し、その他の部分の温度を上昇させないように選択的に加熱することが可能となる。
次に、上述したダイシングテープSの各種種類に対して輻射による光加熱装置22による加熱収縮実験を行った結果について説明する。
プロセス時間は、PO系のテープに関して標準的な時間とした。ワークユニット2の冷却は、室温から−10℃まで20秒で冷却を行った。エキスパンドは3秒で15mm突上げ用リング12を上昇させた。ダイシングテープSへの弛み形成時間は7秒とした。熱収縮は、スロースタート分と光加熱装置22の移動時間が、6秒×4ステップで、24秒+6秒とする。あるいは、熱収縮を、スロースタート分と光加熱装置の移動時間が、6秒×8ステップで、48秒+10秒とする。
また、ダイシングテープSの硬化待ちを30秒とし、さらにロード、アンロード、センタリング等に10秒とする。以上の合計で、100秒又は128秒とする。なお、8ステップは小チップの場合である。
このとき光加熱装置22はスポットタイプのため、光照射位置での単位面積あたりの投入熱量が多い。これにより、熱収縮性のあるPO系のダイシングテープはもちろん、熱硬化性のあるPVC系のダイシングテープでも緊張させることができた。
例えば、上述したリンテック製のPO系のテープであるD175では、テープのロール方向(MD)に5mm、幅方向(TD)に3mm拡張保持することができた。
このようにして、ダイシングテープSを所定時間加熱してダイシングテープSが緊張して弛みが解消したら、光加熱装置22による加熱(光加熱装置22の回転)を停止する。このときダイシングテープSが硬化するまで約30秒程度、ウェハカバー20と突上げ用リング12と、によってダイシングテープSの把持を続ける。
最後に、図4のステップS260において、図19に示すように、ウェハカバー20及び光加熱装置22を上昇させるとともに、突上げ用リング12を降下させて、ダイシングテープSの把持を解放する。なおこの間、雰囲気冷却手段10によるワークユニット2の冷却によって、熱収縮部又は熱硬化部を冷却することにより硬化を促進するようにしてもよい。
これにより、ダイシングテープSの外周部の加熱された部分の熱をとってやることで、通常室温に放置するよも短時間でダイシングテープSを硬化させることができる。その後、雰囲気冷却手段10も停止する。
このようにして、各チップTの間隔が十分維持されるとともに、周囲のダイシングテープSに弛みのないワークユニット2を製造することができる。図20にこのようにして製造した熱収縮処理後のワークの写真を示す。図20はテープ裏側から撮像したものであるが、ウェハ内に縦横に白い隙間が入っていることがはっきりと確認することができ、各チップが離間した状態が維持されていることがわかる。
これに対して、従来のように冷却・拡張ユニットと熱収縮ユニットが別ユニットで、各ユニット間でワーク搬送が必要な場合には、弛んだダイシングテープSが大きく垂れ下がって不定の状態となる。即ち、図21に状態図で示すように、ダイシングテープS上でDAF(D)とともに個片化されたチップTの上面同士が互いに接触してしまう。このように、隣り合ったチップ間の隙間がなくなってしまうと、その後の工程でチップの破損が生じたりして品質低下を招いてしまう。
しかし、本実施形態によれば、図20で示したように、熱収縮処理後において個片化された各チップTが離間した状態が維持され、チップTの品質低下や歩留りの低下を生じることもない。
以上説明した第1実施形態においては、ウェハカバー20によりワークユニット2のウェハWの部分を被覆して加熱手段である光加熱装置22から熱的に遮蔽していた。しかし、光加熱装置22はスポット的に熱を当てて選択的に加熱することができるので、ウェハカバー20で熱的に遮蔽する方が好ましいが、必ずしもウェハカバー20による遮蔽は必要ではない。
従って、変形例として第1の実施形態からウェハカバー20の使用をやめたものも考えられる。以下、ウェハカバー20を有しない場合の動作を図22のフローチャートに沿って説明する。
ワーク分割装置としては、図1に示す第1の実施形態の装置構成からウェハカバー20を除いたもの、あるいは装置構成は同じで単にウェハカバー20を使用しないようにしたものとする。
まず図22のステップS300において、半導体ウェハWの裏面にDAF(D)を介してダイシングテープSが接着されたワークユニット2をフレームFにマウントし、フレームFをフレーム固定機構18により固定する。
次に図22のステップS310において、冷蔵室内冷却手段32及び冷却ガス吹付手段34の少なくとも1つを使用してワークユニット2を冷却する。特に、DAF(D)を−5℃〜−10℃程度に冷却してDAF(D)を脆性化し、力を加えることにより容易に割れるようにする。これら冷蔵室内冷却手段32及び冷却ガス吹付手段34から吹き出される冷却ガスの温度及び風量等の冷却条件の制御は、図示を省略した制御手段によって行われる。
次に図22のステップS320において、リング昇降機構16によって突上げ用リング12を上昇させて、ダイシングテープSをエキスパンドする。
次に図22のステップS330において、突上げ用リング12を下降させる。これにより、ダイシングテープSの周辺部が弛緩し、弛み部が発生する。
次に図22のステップS340において、突上げ用リング12の外側の弛緩したダイシングテープSの部分に対してのみ、光加熱装置22でスポット光を当てて選択的に加熱する。これにより、ダイシングテープSの弛んだ部分が熱によって緊張し弛みが解消する。またこのとき、ダイシングテープSの弛緩した部分に加えられた熱は、ダイシングテープSの他の部分にも伝わろうとするが、ダイシングテープSに接触している突上げ用リング12を介して熱伝達によって熱が逃げて行くため、DAF(D)の領域の方へは熱が伝わり難くなっている。
また、このとき、ダイシングテープSは高分子で熱伝導率が低いのに対して、突上げ用リング12は金属等で形成していることから熱がそのまま突上げ用リング12に伝達されやすい。また、突上げ用リング12は、ダイシングテープSよりも熱伝導率を高く設定しておけば、特にDAF(D)には熱が伝わらないようになる。
なお、このとき、吹出ノズル42から冷却ガスを吹き出してウェハW及びDAF(D)の領域を同時に冷却するようにすることが好ましい。このように、ダイシングテープSの外周部の加熱された部分の熱をとってやることで、光加熱装置22でダイシングテープSの弛緩部分を加熱している際にDAF(D)が暖まるのを防止できるとともに、通常室温に放置するよも短時間でダイシングテープSの加熱部分を硬化させることができる。
最後に、図22のステップS350において、突上げ用リング12を下降させて下降位置(待機位置)へ移動させる。
これにより、チップ間隔が十分に確保されたワークが形成され、次の工程での処理が容易となる。
以上説明した第1の実施の形態によれば、ダイシングテープSのエキスパンドによる弛み部分のみを選択的加熱手段15で選択的に加熱して熱収縮又は熱硬化させることができるので、ワークユニット2を冷却する手段として雰囲気冷却手段10を使用しても、ワークユニット2の冷却・拡張とエキスパンド状態の保持とを同一の位置、即ち同一のユニットで実施することができる。これにより、従来のように、ユニット間でのワーク搬送をなくすことができるので、ダイシングテープの弛みによるチップの品質低下等を防ぐことができる。
また、ダイシングテープSの弛み部分を加熱する手段として光加熱装置22のような選択的加熱手段15を使用することにより、暖められた熱がDAF(D)に伝わることもない。従って、ワークユニット2の冷却・拡張とエキスパンド状態の保持とを同一の位置、即ち同一のユニットで実施しても、DAF(D)が暖められてダイシングテープに過度に粘着することがない。
[第1の実施の形態の変形例]
図23は、選択的加熱手段15の別態様であり、光加熱装置22に代えて、ダイシングテープSの弛んだ部分に直接接触して熱伝達によって、弛んだ部分を選択的に加熱するようにしたものである。なお、他の構成は上述した第1の実施の態様と同様である。
この熱伝達式の選択的加熱手段15は、突上げ用リング12に一体的に組み込まれることが好ましい。即ち、突上げ用リング12の先端部に加熱部44(図23の斜線部分)を設けて、加熱部44と電源装置46とを電気配線48により接続し、電源装置46をオンにすることで加熱部44が加熱される。この場合、コロ12A(ローラ)についても加熱されることが好ましい。
これにより、図24に示すように、加熱部44がダイシングテープSの弛んだ部分に直接接触して加熱し、弛んだ部分を熱収縮又は熱硬化させるので、ダイシングテープSの拡張状態が保持される。この場合も、図24に示すように、ウェハカバー20が下降してワークを覆うときには、該ウェハカバー20の側部20bの先端面が、突上げ用リング12の先端面と突き合わせられワークをウェハカバー20内部に密閉することが好ましい。これにより、加熱部44により加熱されているウェハ領域外からウェハ領域を完全に熱的に遮蔽することができる。
本実施の形態では、加熱部44を突上げ用リング12の先端部に設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、加熱部44を別体として構成してもよい。例えば、突上げ用リング12とフレームFとの間に円筒状の加熱部を形成し、この加熱部44と電源装置46とを電気配線48による繋いでもよい。
[第2の実施の形態]
図25は、本発明に係るワーク分割装置の第2の実施形態を示す構成図である。
図25に示すように、ワーク分割装置100は、ワークユニット2の冷却・拡張及び拡張状態の保持を同一のユニットで実施することができる装置であり、主として、雰囲気冷却手段10と、ワーク分割手段11と、機械的な弛み排除手段13とで構成される。
雰囲気冷却手段10及びワーク分割手段11については、上述した第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。また、機械的な弛み排除手段13は、主として、突上げ用リング12の外周側にサブリング14を設置して構成される。このサブリング14は、エキスパンドされたダイシングテープSの拡張状態を保持して、分断されたチップT間の間隔を維持するためのものであり、その作用については次のワーク分割方法の中で説明する。
図26のフローチャートに沿って、上記の如く構成された第2の実施の形態のワーク分割装置100によって、ワークユニット2のウェハWを個々のチップTに分割して個片化するワーク分割方法を説明する。
まず、図26のステップS100において、図25に示すように、ウェハWの裏面にDAF(D)を介してダイシングテープSが接着されたワークユニット2をフレームFにマウントし、フレームFをフレーム固定機構18により固定する。
次に図26のステップS110において、冷蔵室内冷却手段32及び冷却ガス吹付手段34の少なくとも1つを使用してワークユニット2を冷却する。ワークユニット2のうち特に、DAF(D)を−5℃〜−10℃程度に冷却してDAF(D)を脆性化し、力を加えることにより容易に割れるようにする。これら冷蔵室内冷却手段32及び冷却ガス吹付手段34から吹き出される冷却ガスの温度及び風量等の冷却条件の制御は、図示を省略した制御手段によって行われる。
次に、図26のステップS120において、図27に示すように、ダイシングテープSのエキスパンド処理を行ってウェハWをDAF(D)とともに個片化する。なお、図27〜図29は冷蔵室30を省略して図示している。
即ち、図27に示すように、リング昇降機構16により突上げ用リング12及びサブリング14を上昇させる。突上げ用リング12の上昇は、例えば、400mm/secで、15mm上方に突き上げるようにしている。なお、このときサブリング14はフレームFよりも上には上昇しないような位置で止まっているようにする。
図27に示すように、突上げ用リング12の上昇により、ダイシングテープSは下から押し上げられ、ダイシングテープSの面内においてワークユニット2の中心から放射状にエキスパンド(拡張)される。ダイシングテープSが拡張されると、ウェハWは分断予定ラインに沿って分割され、個々のチップT間に数μmから100μmの隙間が形成される。このときDAF(D)は、冷却されて脆性化しているので、DAF(D)もウェハWと一緒に分断予定ラインに沿って分割される。これにより、ウェハWは、裏面にDAF(D)が付いた各チップTに個片化される。
ダイシングテープSは、突上げ用リング12によるエキスパンドが解除されると、その弾性によって元に戻ってしまい、各チップT間の隙間がなくなってしまうので、少なくとも各チップTが存在する領域においてダイシングテープSの拡張状態を維持しなければならない。
そこで、次に図26のステップS130において、図28に示すように、サブリング14をフレームF上の拡張されたダイシングテープSに挿入できる位置までリング昇降機構16によって上昇させ、サブリング14をダイシングテープSの拡張された部分に挿入する。このとき、上昇するサブリング14によってダイシングテープSが破断しないように、低速でサブリング14を上昇させる。
次に、図26のステップS140において、図29に示すように、サブリング14だけをフレームFよりも上の位置に残して突上げ用リング12を下降させ、下降位置(待機位置)に移動させる。このとき、サブリング14はフレームF上の位置に残っているので、ダイシングテープSの拡張状態が保持される。
これにより、ダイシングテープSの拡張状態が保持されるので、各チップT間の隙間も広く維持され、DAF(D)が再固着することもない。従って、ダイシングテープSが弛みのある状態でワークユニット2を搬送するようなことがなく、その後の処理が容易となる。
以上のように、図26のフローチャートに沿って説明したような方法でワークであるウェハWを分割することにより、ワーク分割(個片化)及び分割した各チップ間の隙間を維持するための拡張状態の保持までを同一の位置である冷蔵室30内、即ち一つのユニット内で行うことができる。
このように、本発明の第2の実施の形態では、ダイシングテープSのエキスパンドによる弛みをサブリング14によって機械的に排除するようにしたので、ワークユニット2を冷却する手段として雰囲気冷却手段10を使用しても、ワークユニット2の冷却・拡張とエキスパンドした後の拡張状態の保持とを同一の位置、即ち同一のユニット(冷蔵室30内)で実施することができる。
そして、ワークユニット2の冷却・拡張及び拡張状態の保持を同一のユニットで実施することにより、ユニット間でのワーク搬送をなくし、ダイシングテープSの弛みによるチップ相互の接触による品質低下等を防ぐことができる。さらには、ワークユニット2の冷却・拡張及び拡張状態の保持を同一のユニットで実施することにより、製品を製造するタクトタイムを速くすることが可能となる。
また、ダイシングテープSのエキスパンドによる弛みをサブリング14によって機械的に排除するようにしたので、DAF(D)が暖められることもない。従って、ダイシングテープが過度に粘着することを防ぐことができる。
なお、ダイシングテープSのエキスパンドによる弛みを機械的に排除する弛み排除手段としてサブリング14の例で示したが、これに限定されず、弛みを機械的に排除する手段であればどのような手段でもよい。
以上、本発明のワーク分割装置及びワーク分割方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
例えば、第1の実施の形態において、ダイシングテープSの光が照射された領域は、光が照射されていることを視認できるに越したことはない。しかし、赤外線等で照射エリアが視認されずとも、DAF(D)が存在するウェハ領域が十分局所冷却された状態にあることを前提に、外周のダイシングテープSの所定のエリアを相対的に局所加熱することができればよい。
また、突上げ用リング12で、ウェハ領域とダイシングテープSの外周領域とに熱領域を区分でき、ウェハ領域では冷却状態を形成し、ダイシングテープ外周部において加熱状態を、同一箇所において形成しているのであればよい。
(付記)
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(付記1)ダイシングテープにダイアタッチフィルムを介して貼付されたワークを、予め形成された分断予定ラインに沿って個々のチップに分割するワーク分割装置において、前記ワークを保持するワーク保持位置を有し、前記ワークを保持する同位置において、前記分断予定ラインを有する半導体ウェハからなるワークをとりまく雰囲気を冷却することによって前記ワークの分断予定ラインを含む前記ワークを冷却する雰囲気冷却手段と、前記冷却後、前記ダイシングテープをエキスパンドして前記ワーク及び前記ダイアタッチフィルムを分割するワーク分割手段と、前記ダイシングテープの前記ワークが前記ダイアタッチフィルムを介して貼付された領域以外の部分を選択的に加熱して、前記ダイシングテープの前記エキスパンドによる弛みを排除する選択的加熱手段と、を備えたワーク分割装置。
付記1の発明によれば、ダイシングテープのエキスパンドによる弛み部分のみを選択的加熱手段で選択的に加熱して熱収縮又は熱硬化させることができるので、ワークを冷却する手段として雰囲気冷却手段を使用しても、ワークの冷却・拡張と拡張状態の保持とを同一の位置、即ち同一のユニットで実施することができる。これにより、従来のように、ユニット間でのワーク搬送をなくすことができるので、ダイシングテープの弛みによるチップの品質低下等を防ぐことができる。またDAFが暖められることによって、ダイシングテープに過度に粘着することを防ぐことができる。
(付記2)前記選択的加熱手段は、光の輻射により前記ダイシングテープの前記ワークが前記ダイアタッチフィルムを介して貼付された領域以外の部分を選択的に加熱する光加熱装置である付記1に記載のワーク分割装置。
光加熱装置であれば、ダイシングテープのエキスパンドによって弛んだ部分を選択的に加熱することができる。
(付記3)ダイシングテープにダイアタッチフィルムを介して貼付されたワークを、予め形成された分断予定ラインに沿って個々のチップに分割するワーク分割装置において、前記ワークを保持するワーク保持位置を有し、前記ワークを保持する同位置において、前記分断予定ラインを有する半導体ウェハからなるワークをとりまく雰囲気を冷却することによって前記ワークの分断予定ラインを含む前記ワークを冷却する雰囲気冷却手段と、前記冷却後、前記ダイシングテープをエキスパンドして前記ワーク及び前記ダイアタッチフィルムを分割するワーク分割手段と、前記ダイシングテープの前記エキスパンドによる弛みを機械的に排除する弛み排除手段と、を備えたワーク分割装置。
付記3の発明によれば、ダイシングテープのエキスパンドによる弛みを機械的に排除する弛み排除手段を設けたので、ワークを冷却する手段として雰囲気冷却手段を使用しても、ワークの冷却・拡張と拡張状態の保持とを同一の位置、即ち同一のユニットで実施することができる。これにより、従来のように、ユニット間でのワーク搬送をなくすことができるので、ダイシングテープの弛みによるチップの品質低下等を防ぐことができる。またDAFが暖められることによって、ダイシングテープが過度に粘着することを防ぐことができる。
(付記4)前記雰囲気冷却手段は、前記ワーク分割装置が収納される冷蔵室内全体を冷却する冷蔵室内冷却手段と、前記ワークに冷却ガスを吹き付ける冷却ガス吹付手段と、の少なくとも1つを備えた付記1から3の何れか1項に記載のワーク分割装置。
これは、雰囲気冷却手段の好ましい態様を示したものであり、冷蔵室内冷却手段と冷却ガス吹付手段の両方を備えることが特に好ましい。
(付記5)
前記ワーク分割手段は、前記冷却されたワークの外周部を、前記ダイシングテープの外周支持部から相対的に押し上げてエキスパンドする突上げ用リングである付記1から4の何れか1項に記載のワーク分割装置。
これによれば、簡単な機構でワークを一度に分割することができる。
(付記6)前記エキスパンドされたワークの領域を覆うように有底の円筒形状を有するとともに、昇降可能に配置され、下降したときに前記ワークを覆うウェハカバーを備え、前記選択的加熱手段は該ウェハカバーの周囲に昇降可能に配置された付記1、2、4、5の何れか1項に記載のワーク分割装置。
これによれば、突上げ用リングを降下させてもチップ間隔を維持し、ウェハカバーにより半導体ウェハの領域を選択的加熱手段の熱から遮蔽することができ、ダイアタッチフィルムが溶けるのを防ぎ、チップ間の隙間がなくなることを防止することができる。
(付記7)前記ワーク分割手段は、前記冷却されたワークの外周部を、前記ダイシングテープの外周支持部から相対的に押し上げてエキスパンドする突上げ用リングであり、前記ウェハカバーが下降して前記ワークを覆うときには、該ウェハカバーの側部の先端面が、前記エキスパンドしている突上げ用リングの先端面と突き合わせられ前記ワークを前記ウェハカバー内部に密閉することを特徴とする付記6に記載のワーク分割装置。
これにより、半導体ウェハの領域を完全に熱的に遮蔽することができる。
(付記8)前記光加熱装置は、前記ワークを覆っているウェハカバーの周囲を一定の周期で回転可能に配置されていることを特徴とする付記2に記載のワーク分割装置。これにより、ダイシングテープを均等に加熱することができダイシングテープの拡張状態に偏りが生じるのを防ぐことができる。
(付記9)ダイシングテープにダイアタッチフィルムを介して貼付されたワークを、予め形成された分断予定ラインに沿って個々のチップに分割するワーク分割方法において、前記ワークを保持するワーク保持位置を有し、前記ワークを保持する同位置において、前記分断予定ラインを有する半導体ウェハからなるワークをとりまく雰囲気を冷却することによって前記ワークの分断予定ラインを含む前記ワークを冷却する雰囲気冷却工程と、前記冷却後、前記ダイシングテープをエキスパンドして前記ワーク及び前記ダイアタッチフィルムを分割するワーク分割工程と、前記ダイシングテープの前記ワークが前記ダイアタッチフィルムを介して貼付された領域以外の部分を選択的に加熱して、前記ダイシングテープの前記エキスパンドによる弛みを排除する選択的加熱工程と、を備えたワーク分割方法。
付記9に記載の発明によれば、ダイシングテープのエキスパンドによる弛み部分のみを選択的加熱工程で選択的に加熱して熱収縮又は熱硬化させることができるので、ワークを加熱する工程として雰囲気加熱工程を使用しても、ワークの冷却・拡張とエキスパンド状態の保持とを同一の位置、即ち同一のユニットで実施することができる。これにより、従来のように、ユニット間でのワーク搬送をなくすことができるので、ダイシングテープの弛みによるチップの品質低下等を防ぐことができる。またDAFが暖められることによって、ダイシングテープに過度に粘着することを防ぐことができる。
(付記10)前記選択的加熱工程は、光の輻射により前記ダイシングテープの前記ワークが前記ダイアタッチフィルムを介して貼付された領域以外の部分を選択的に加熱することを特徴とする付記9に記載のワーク分割方法。
(付記11)ダイシングテープにダイアタッチフィルムを介して貼付されたワークを、予め形成された分断予定ラインに沿って個々のチップに分割するワーク分割方法において、前記ワークを保持するワーク保持位置を有し、前記ワークを保持する同位置において、前記分断予定ラインを有する半導体ウェハからなるワークをとりまく雰囲気を冷却することによって前記ワークの分断予定ラインを含む前記ワークを冷却する雰囲気冷却工程と、前記冷却後、前記ダイシングテープをエキスパンドして前記ワーク及び前記ダイアタッチフィルムを分割するワーク分割工程と、前記ダイシングテープの前記エキスパンドによる弛みを機械的に排除する弛み排除工程と、を備えたワーク分割方法。
付記11に記載の発明によれば、ダイシングテープのエキスパンドによる弛みを機械的に排除する弛み排除工程を設けたので、ワークを加熱する工程として雰囲気加熱工程を使用しても、ワークの冷却・拡張とエキスパンド状態の保持とを同一の位置、即ち同一のユニットで実施することができる。これにより、ユニット間でのワーク搬送をなくし、ダイシングテープの弛みによるチップの品質低下等を防ぐことができる。またDAFが暖められることによって、ダイシングテープに過度に粘着することを防ぐことができる。
(付記12)前記雰囲気冷却工程は、前記ワーク分割装置が収納される冷蔵室内全体を冷却する冷蔵室内冷却工程と、前記ワークに冷却ガスを吹き付ける冷却ガス吹付工程と、の少なくとも1つを備えた付記9から11の何れか1項に記載のワーク分割方法。
(付記13)前記ワーク分割工程は、前記冷却されたワークの外周部を、突上げ用リングで前記ダイシングテープの外周支持部から相対的に押し上げてエキスパンドすることを特徴とする請求項9〜12の何れか1項に記載のワーク分割方法。
また、ワーク分割工程は、冷却されたワークの外周部を、突上げ用リングでダイシングテープの外周支持部から相対的に押し上げてエキスパンドすることが好ましい。
(付記14)前記エキスパンドされたワークの領域を覆うように有底の円筒形状を有し昇降可能に配置されたウェハカバーを備え、該ウェハカバーが下降したときに前記円筒形状の先端面が前記エキスパンドしている突上げ用リングの先端面と突き合わせられ、前記ワークを該ウェハカバー内部に密閉するワーク被覆工程を有し、前記選択的加熱工程は、前記ワークを覆っている前記ウェハカバーの周囲を選択的に加熱する請求項9、10、12、13の何れか1項に記載のワーク分割方法。
(付記15)ダイシングテープをエキスパンドすることにより、前記ダイシングテープにダイアタッチフィルムを介して貼付されたワークを個々のチップに分割するワーク分割手段を備えたワーク分割装置であって、前記ワークをとりまく雰囲気を冷却する雰囲気冷却手段と、前記ワーク分割手段として設けられ、前記ダイシングテープを突き上げて前記ダイシングテープをエキスパンドさせ、前記ワークを分割する突上げ用リングと、前記雰囲気冷却手段と同一のユニット内に設けられ、前記雰囲気冷却手段により前記雰囲気が冷却されている状態の下、前記ダイシングテープの前記ワークが前記ダイアタッチフィルムを介して貼付された領域以外の部分で、且つ前記突上げ用リングの外側の弛緩した部分にスポット光をあてて選択的に加熱して、前記ダイシングテープの弛みを排除する選択的光加熱手段と、を備え、前記雰囲気冷却手段は、前記選択的光加熱手段による加熱後に、前記ダイアタッチフィルムと前記ダイシングテープの弛緩部分とを同時に冷却するワーク分割装置。
(付記16)ダイシングテープをエキスパンドすることにより、前記ダイシングテープにダイアタッチフィルムを介して貼付されたワークを個々のチップに分割するワーク分割工程を備えたワーク分割方法であって、前記ワークをとりまく雰囲気を冷却する雰囲気冷却工程と、前記ワーク分割工程において突上げ用リングにより前記ダイシングテープを突き上げて前記ダイシングテープをエキスパンドさせて前記ワークを分割した後に実行される工程であって、前記雰囲気冷却工程と同一のユニット内で行われ、前記雰囲気冷却工程にて前記雰囲気が冷却されている状態の下、前記ダイシングテープの前記ワークが前記ダイアタッチフィルムを介して貼付された領域以外の部分で、且つ前記突上げ用リングの外側の弛緩した部分にスポット光をあてて選択的に加熱して、前記ダイシングテープの弛みを排除する選択的光加熱工程と、備え、前記雰囲気冷却工程は、前記選択的光加熱工程による加熱後に、前記ダイアタッチフィルムと前記ダイシングテープの弛緩部分とを同時に冷却するワーク分割方法。
(付記17)ダイシングテープをエキスパンドし、前記ダイシングテープにダイアタッチフィルムを介して貼付されたワークを個々のチップに分割するワーク分割手段と、前記ダイシングテープの前記ワークが前記ダイアタッチフィルムを介して貼付された領域以外の部分で、且つ前記ワーク分割手段のエキスパンドにより弛緩した部分にスポット光をあてて選択的に光加熱し、前記ダイシングテープの弛みを排除する選択的光加熱手段と、前記ワークおよび前記光加熱により弛みを排除したダイシングテープ部分を含む雰囲気を冷却する雰囲気冷却手段と、を備えたワーク分割装置。
付記17の発明によれば、ダイシングテープのエキスパンドによる弛み部分のみを選択的加熱手段で選択的に加熱して熱収縮又は熱硬化させることができるので、ワークを冷却する手段として雰囲気冷却手段を使用しても、ワークの冷却・拡張と拡張状態の保持とを同一の位置、即ち同一のユニットで実施することができる。これにより、従来のように、ユニット間でのワーク搬送をなくすことができるので、ダイシングテープの弛みによるチップの品質低下等を防ぐことができる。またDAFが暖められることによって、ダイシングテープに過度に粘着することを防ぐことができる。
(付記18)ダイシングテープをエキスパンドし、前記ダイシングテープにダイアタッチフィルムを介して貼付されたワークを個々のチップに分割するワーク分割工程と、前記ダイシングテープの前記ワークが前記ダイアタッチフィルムを介して貼付された領域以外の部分で、且つ前記ワーク分割工程でのエキスパンドにより弛緩した部分にスポット光をあてて選択的に光加熱し、前記ダイシングテープの弛みを排除する選択的光加熱工程と、前記ワークおよび前記光加熱により弛みを排除したダイシングテープ部分を含む雰囲気を冷却する雰囲気冷却工程と、を有するワーク分割方法。