以下、本発明の実施の形態について、図1〜図10を参照しながら説明する。なお、以下に示す図において、図1の図示横方向をX軸とし、右方向をX(+)、左方向をX(−)と表し、図示縦方向をZ軸とし、上方をZ(+)、下方をZ(−)と表し、紙面に垂直方向をY軸とし、紙面奥側をY(+)、紙面手前側をY(−)と表して説明する。
[実施形態1]
図1〜図3は、実施形態1に係る打ち抜き装置1を示す構成説明図であり、図1は正面図、図2は平面図、図3は図1に示す打ち抜き装置1をX(−)方向から見た側面図である。図1〜図3に示すように、打ち抜き装置1は、ベース10上に配置されるプレスユニット11と、プレスユニット11のフレーム枠内に固定されるダイセット12と、被加工物であるワークWを保持し製品打ち抜き位置に搬送するワーク保持装置である第1クランパ13(第1ワーク保持装置)および第2クランパ14(第2ワーク保持装置)とを備えている。なお、加工可能なワークWとしては、打ち抜き加工が可能な厚みで、材質は金属板、リジット基板、並びに非金属板など特に限定されない。
図1、図2に示すように、プレスユニット11のフレーム枠は、右サイドフレーム15と左サイドフレーム16と、右サイドフレーム15と左サイドフレーム16とを接続する上フレーム17および下フレーム18(図4参照)とを一体化して構成される。ベース10の上面にはベースプレート19が固定されている。ベースプレート19には、左右にガイドポスト20が2本ずつ立てられていて、ガイドポスト20を案内軸としてプレスユニット11がダイセット12と一体でベース10(ペースプレート19)に対してZ軸に沿って昇降可能となっている。プレスユニット11の上方には、上型昇降装置21が設けられている。上型昇降装置21は、サーボモータとサーボモータの回転を直線運動に変換する変換機構を有している。変換機構としては、たとえば、ボールねじ機構などである。上型昇降装置21は、先端側がダイプレート22に固定され、ダイプレート22を介して上型50(図4参照)をZ軸に沿って降下させたり上昇させたりする。
図3に示すように、プレスユニット11の下方にはプレスユニット11を昇降させる押し上げ装置24を備えている。押し上げ装置24は、サーボモータとサーボモータの回転を直線運動に変換する変換機構(たとえば、ボールねじ機構)を有している。押し上げ装置24の上方(Z(+))先端側は下フレーム18に固定されていて、プレスユニット11は押し上げ装置24によって、上昇および降下の両方の動作が制御される。押し上げ装置24の下方(Z(−))側は、ベース10側に固定されている。
図2に示すように、第1クランパ13は、プレスユニット11に対してY(−)方向側に配置され、第2クランパ14は、プレスユニット11を挟んで第1クランパ13に対して反対側のY(+)方向側に配置されている。第1クランパ13および第2クランパ14は、Y軸方向の移動距離が異なるもののほぼ同じ構成で、互いに向き合うように配置されている。図2に示す第1クランパ13は、ワークWが給材された位置を表し、第2クランパ14は、第1クランパ13からワークWが受け渡された後の任意位置を表している。第1クランパ13は、給材されたワークWのY(−)方向端部を、ワークWの裏面を受けるクランプテーブル25と、クランプテーブル25のX方向の両端部に配置される1対のクランプ26でワークWを厚み方向に挟み込み、ワークWを位置ずれがないように保持する。クランプ26は、ワークWを第1クランパ13に給材する際には、給材の妨げにならないように回転させたり、移動させたりする機構を備え、所定位置に給材した後にワークWの上面に移動してワークWを押えて保持する。
第1クランパ13は、図1〜図3に示すように、X軸駆動部27およびX軸駆動部27の上部に配置されるY軸駆動部28を有している。X軸駆動部27およびY軸駆動部28は共に、サーボモータとサーボモータの回転を直線運動に変換する変換機構(たとえば、ボールねじ機構)を有している。X軸機構部27は、ワークWをX軸ガイドレール29上でX軸に沿って往復移動させる。Y軸駆動部28は、ワークWをY軸ガイドレール30上でY軸方向に往復移動させる。第1クランパ13は、ベース10に立てられたX軸支持ブロック31上に支持され、X軸方向に平行に延在された2本のフレーム32上に移動可能に支持されている(図3参照)。Y軸駆動部28の上部には回転機構部35が配置される。
回転機構部35は、第1クランパ13上に給材されたワークWの基準X軸または基準Y軸に対する姿勢(角度ずれ)を補正する。図2、図3に示すように、ワークWの上方には、位置検出用のカメラ36が設置され、ワークWに設けられているマーカー(図示せず)を撮像し、記憶されている基準X軸および基準Y軸のマーカーとのずれ量を検出し、回転機構部35、X軸駆動部27およびY軸駆動部28によって、角度ずれ、X軸およびY軸のずれ量を補正する。カメラ36の設置位置は、マーカーを検出できれば特に限定されず、第1クランパ13側のワークWの上方、または第1クランパ13側と第2クランパ14側の両方に設置してもよく、ワークWの下方側に設置してもよい。
第2クランパ14は、上記第1クランパ13とほぼ同じ構成であって、第1クランパ13に対向するように配置されている。第2クランパ14は、図2、図3に示すように、X軸駆動部37およびX軸駆動部37の上部に配置されるY軸駆動部38を有している。X軸駆動部37およびY軸駆動部38はともに、サーボモータとサーボモータの回転を直線運動に変換する変換機構(たとえば、ボールねじ機構)を有している。X軸機構部37は、ワークWをX軸ガイドレール39上でX軸方向に往復移動させる。Y軸駆動部38は、ワークWをY軸ガイドレール40上でY軸に沿って往復移動させる。第2クランパ14は、ベース10に立てられたX軸支持ブロック41上に支持されX軸方向に平行に延在された2本のフレーム42上に移動可能に支持されている。第2クランパ14は、第1クランパ13から受け渡されたワークWの裏面を受けるクランプテーブル55とクランプテーブル55の左右に配置されるクランプ56とでワークWを厚み方向に挟み込み、ワークWを位置ずれがないように保持する。クランプ56は、ワークWを第1クランパ13から受け取る際には、給材の妨げにならないように回転させたり、移動させたりする機構を備え、所定位置に給材した後にワークWの上面に移動してワークWを押えて保持する。
Y軸駆動部38の上方には、ワークWを水平に回転させる回転機構部35が配置されている。回転機構部35は、第1クランパ13から受け渡されたワークWの基準X軸または基準Y軸に対する姿勢(角度ずれ)を補正する。第2クランパ14は、ワークWをカメラ36の下方まで移動させワークWに設けられているマーカー(図示せず)を撮像し、記憶されている基準X軸および基準Y軸とマーカーとのずれ量を検出し、回転機構部35、X軸駆動部37およびY軸駆動部38によって、角度ずれ、X軸およびY軸のずれ量を補正する。第1クランパ13から受け渡されたワークWの角度ずれ、X軸およびY軸に位置ずれがない場合には、第2クランパ14における姿勢および位置ずれ補正は省略できる。カメラ36を第2クランパ14側に追加配置するようにしてもよい。
第1クランパ13による位置補正後、第1クランパ13によってワークWをX軸方向およびY軸方向に移動させながら所定の打ち抜き位置に達したところで製品を打ち抜く。第2クランパ14も同じようにワークWをX軸方向およびY軸方向に移動させながら所定の打ち抜き位置に達したところで製品を打ち抜く。第2クランパ14において所定数量の製品の打ち抜きが終了した後、ワークWを第1クランパ13側に移動させ、第1クランパに受け渡す。第1クランパ13は、ワークWを除材位置に移動する。
図2に示すように、第1クランパ13の左方(X(−)側)には、給材ストッカ33が配置されていて加工前のワークWがストックされ、右方(X(+)側)には、除材ストッカ34が配置されていて加工後のワークWがストックされる。加工後のワークWの上面には、打ち抜かれた製品がとどまっていて、製品を含んでワークWを除材することや、製品を除材した後にワークWを除材することができる。図示は省略するが、ワークWの給材側には給材装置、除材側には除材装置を装備することが可能である。続いて、図4を参照してダイセット12の構成について説明する。
図4は、実施形態1に係る打ち抜き装置1に用いるダイセットしての実施例1に係るダイセット12の構成を示す図である。ダイセット12は、パンチ44を支持するパンチホルダー45とパンチプレート46と可動ストリッパ47とを有する下型48と、ダイ23とダイプレート22とを有し、パンチ44に対して昇降可能な上型50を有する。可動ストリッパ47は、パンチホルダー45に立てられた2本のボルト51によってZ軸に沿って昇降可能に支持され、可動ストリッパ47とパンチホルダー45との間に介在されるコイルばね52によってダイ23側に付勢されている。
上型50は、パンチプレート46に立てられた4本のガイドポスト53(図2参照)によってZ軸に沿って昇降可能に支持されている。ダイ23にはダイ孔54が設けられており、パンチ54の外形はダイ孔54と同じ外形形状、すなわち製品の外形形状を有している。ダイ孔54とパンチ44の間には適切なクリアランスが設けられている。上型昇降装置21を駆動して上型50(ダイ23)を降下させることによって製品が打ち抜かれる。図4は、製品の外形を打ち抜く型構造を表している。可動ストリッパ47は、上型50(ダイ23)の降下に連動して降下し、上型50が上昇する際にコイルばね52の付勢力によって上昇する。打ち抜かれた製品は、ワークW上に留まる。
次に、実施例2に係るダイセット12Aについて図5を参照して説明する。前述した実施例1が製品の外形を打ち抜く型構造であることに対し、実施例2は、製品の外形と製品内の孔とを同時に打ち抜く型構造である。実施例1のダイセット12に対してダイセット12Aと記載し、実施例1との相違個所を中心に説明する。なお、実施例1と同じ構成部材には、図4と同じ符号を付して説明する。
図5は、実施例2に係るダイセット12Aの構成を示す図である。ダイセット12Aは、パンチ44を有する下型48と、ダイ23を有する上型50とで構成される。下型48側のパンチ44には、孔抜き用ダイ孔57が設けられている。パンチ44の外形は製品外形となる。可動ストリッパ47の構成および作用は実施例1と同じであり、説明を省略する。ダイ23には、製品外形を形成するダイ孔54が設けられ、ダイ孔54の内側には、孔抜き用パンチ58と可動ストリッパ59が配置されている。孔抜き用パンチ58は、ダイプレート22に固定される。可動ストリッパ59は、ダイプレート22に立てられた2本のボルト51によってZ軸に沿って昇降可能に支持され、可動ストリッパ59とダイプレート22の間に介在されるコイルばね52によってパンチ44側に付勢されている。可動ストリッパ59は、孔抜きの際に、ワークWを押え、孔抜き後に、孔抜き用パンチ58から製品を外す機能を有する。
下型48と上型50の動作は、上記実施例1と同じであるが、ワークWに対して孔抜きと、製品の外形抜き(総抜き)を同時進行で行うことができる。孔抜きカスは、孔抜き用ダイ孔57の下方側に落下し、製品はワークWの上方側に打ち抜かれる。なお、孔抜き用パンチ58と孔抜き用ダイ孔の形状を組み合わせることで、打ち抜き加工以外に半抜き加工や絞り加工などを行うことが可能となる。
図6は、実施形態1に係る打ち抜き装置1によるワークWの打ち抜き方法を模式的に表す説明図であり、図6(A)はワークWを打ち抜き位置に搬送した状態、図6(B)はワークWの上面(上基準面Kとする)にダイ23が当接した瞬間、図6(C)は製品W0を打ち抜いた直後を表している。ここでは、実施例1のダイセット12を例示し説明する。ダイ23は、ワークWに当接し打ち抜く上型50を構成する部材である。図6(D)は、従来技術による製品打ち抜き直後を表した図で、プレスユニット11が無い構造が一般的であるが、本実施形態1と比較しやすくするためにプレスユニット11を記載している。ワークWは、第1クランパ13または第2クランパ14によって常時一定の高さに保持される。すなわち、上基準面Kの位置は、図6(A)〜図6(D)において一定である。なお、図6では、第1クランパ13を例示し、コイルばね52の図示を省略している。
図6(A)に示すように、ワークWは第1クランパ13で保持され、可動ストリッパ47上に搬送されている。ダイ23は上死点に位置し、ワークWとの間には隙間S1がある。なお、パンチ44の上面は、可動ストリッパ47の上面と一致していても、わずかに下方にあるようにしてもよい。図6(B)はダイ23を降下させてワークWの上基準面Kに当接させた瞬間を表している。この時には、可動ストリッパ47は動かない。このままダイ23を降下させると、従来技術においては図6(D)に表すように、ダイ23とパンチ44とでワークWを打ち抜く。この際、可動ストリッパ47はダイ23の降下分(打ち抜きストロークS2)下方側に移動する。ワークWは第1クランパ13によって上基準面Kの位置が変化しないように保持されていることから、ダイ23(可動ストリッパ47)の移動分曲がってしまう。そこで、実施形態1では、図6(C)に示すように、ダイ23がワークWの上基準面Kに当接してからワークWを打ち抜くストローク分(S2)、プレスユニット11を押し上げ装置24によって押し上げ、第1クランパ13で保持する位置(上基準面K)と打ち抜き後のワークWの上面位置とに変化がないようにしている。すなわち、ダイ23がワークWの打ち抜き開始のタイミングでダイ23の降下に同期してプレスユニット11を上昇させることで上基準面Kの位置を打ち抜き前後において一定に維持できるので、ワークWは曲がらない。その結果、以降の打ち抜きにおいて製品W0を変形がない所望の形状に形成できる。
なお、実施例2のダイセット12Aにおいても、ダイ23と孔抜き用パンチ58は、一体で降下するため、図6において説明したように、ダイ23のワークWの打ち抜き開始に同期してプレスユニット11を上昇させれば、上基準面Kの位置を打ち抜き前後において一定に維持しているので、ワークWは曲がらない。その結果、以降の打ち抜きにおいて製品W0を変形なく所望の形状に形成できる。
ワークWは、第1クランパ13で保持して所定数の打ち抜き加工をした後、第2クランパ14に受け渡され、第1クランパ13が保持していることで加工できなかった領域も、第2クランパ14で保持し直すことで、第1クランパ13が保持していた範囲にも打ち抜き加工することを可能にしている。このことについて図7を参照して説明する。
図7は、ワークWの加工可能領域を示す説明図である。塗りつぶした三角と二点鎖線で表した位置より端部側の領域は、第1クランパ13で保持され打ち抜き加工ができない領域で、実線で囲まれた領域Mが良好な加工可能領域である。また、白抜きの三角と二点鎖線で表した位置より端部側の領域は、第2クランパで保持され打ち抜き加工ができない領域で、点線で囲まれた領域Nが良好な加工可能領域である。図7において、ハッチングが格子状に交差する領域は、第1クランパ13と第2クランパ14それぞれがワークWを保持していても打ち抜き加工が行える領域である。このように、第1クランパ13と第2クランパ14でワークWを持ち替えて打ち抜き加工すれば、ワークWの面積の大部分が加工可能領域となる。
以上説明した実施形態1に係る打ち抜き装置1は、下型48と、下型48に向かって昇降可能な上型50と、を有するダイセット12,12Aと、ダイセット12,12Aが取り付けられるとともに、上型50を昇降させる上型昇降装置21を有し、上型50の降下に対して逆方向に上昇可能なプレスユニット11と、ワークWを基準高さ位置に保持し所定平面位置に搬送するワーク保持装置である第1クランパ13および第2クランパ14と、ワークWを打ち抜く際に、上型50(ダイ23)がワークWの上基準面Kに当接するタイミングから上型50の降下に同期し、プレスユニット11を上昇させる押し上げ装置24と、を有している。
このような構成にすれば、製品を打ち抜く際に、上型50(ダイ23)の降下に同期してプレスユニット11を上昇させるため、打ち抜き前のワーク保持位置とワーク打ち抜き直後とで上基準面Kの位置が変化しないので製品打ち抜き後のワークWが変形しない(曲がらない)。そのことから、その後の打ち抜き加工において、変形のない所望の形状の製品W0を連続的に形成することができる。
また、上記打ち抜き装置1において、プレスユニット11は、押し上げ装置24によって上昇および降下の動作が制御される。このようにすれば、プレスユニット11の降下位置、上昇位置および上昇速度や降下速度を正確に制御することができる。また、プレスユニット11の昇降動作に関わる衝撃や振動などを抑制できる。
また、上記打ち抜き装置1においては、ワーク保持装置は、プレスユニット11を挟んでワークWの送り方向(Y軸方向)両側に配置され、ワーク保持装置は、ワークWの一方側を保持する第1クランパ13(第1ワーク保持装置)と、第1クランパ13から受け渡されたワークWの他方側を保持する第2クランパ14(第2ワーク保持装置)とを備えている。このように、第1クランパ13と第2クランパ14を装備することによって、第1クランパ13のワーク保持位置とは異なる位置に第2クランパ14で持ち替えて打ち抜き加工を行えば、従来不可能であった第1クランパ13がワークを保持する領域においても打ち抜き加工が可能となる。このようにすれば、1枚のワークからより多くの製品を打ち抜くことが可能で生産性を高めることができる。また、第1クランパ13と第2クランパ14との間のワークWの受け渡しが短時間で行え、ワークWの持ち替えロスを抑えることが可能となる。
また、ダイセット12においては、下型48はパンチ44を有し、上型50はダイ孔54を有している。このようなダイセット構造にすれば、ワークWは下型48側から上型50側に打ち抜かれる。つまり、製品は、ワークWの上方(上型50側)に打ち抜かれるので、下型48の下方側に製品W0を落下させる構造よりも製品の表面に傷が付にくくなる。
また、ダイセット12Aにおいては、下型48のパンチ44が孔抜き用ダイ孔57を有し、上型50がダイ孔54と、ダイ孔54の内側に配置される孔抜き用パンチ58を有している。このようなダイセット構造にすれば、製品W0の外形抜きと製品内側の孔抜きとを同じ打ち抜き工程で実施可能となる。孔抜き加工されたワークWの一部(抜きカス)は、下方側に落下し、打ち抜かれた製品W0はワークWの上方側(上型50側)に打ち抜かれることになり、抜きカスと製品W0が分離されるので製品W0の表面に傷が付きにくい。
また、上型50を昇降する上型昇降装置21およびプレスユニット11を昇降させる押し上げ装置24には、駆動源としてサーボモータとボールねじ機構を使用することによって、上型昇降装置21と押し上げ装置24の降下、上昇のタイミングと速度、移動量を正確に制御することができる。また、X軸駆動部27,37、Y軸駆動部28,38においても、駆動源としてサーボモータとボールねじ機構を使用することによって、駆動タイミング、駆動速度および移動量を正確に制御することができる。
[実施形態2]
続いて、実施形態2に係る打ち抜き装置2について図面を参照して説明する。前述した実施形態1が、保持されたワークWの上基準面Kの位置を変えないように上型50(ダイ23)の降下に同期してプレスユニット11を上昇させることに対して、実施形態2は、上型50(ダイ23)の降下に同期してワーク保持装置(第1クランパ13、第2クランパ14)を降下させることが異なる。したがって、実施形態1との相違個所を中心に、実施形態1(図4参照)と同じ構成部材には、図4と同じ符号を付して説明する。
図8は、実施形態2に係る打ち抜き装置2の構成を示す正面図であり、実施例1で説明したダイセット12を断面図で表示している。なお、打ち抜き装置2には、実施例2で説明したダイセット12Aも適合する。ワーク保持装置(第1クランパ13、第2クランパ14)は図示を省略している。ベース10の上面には、アーチ状のプレスフレーム構造体60が固定されている。プレスフレーム構造体60は、X軸方向の両側に設けられたサイドフレーム61,61と、両者を連結固定する上フレーム62とで構成されている。上フレーム62には、上型昇降装置21が装備されている。上型昇降装置21は、先端側がダイプレート22に固定され、ダイプレート22を介して上型50をZ軸方向に降下させたり上昇させたりする。上型昇降装置21の構成は、実施形態1(図4参照)と同じなので詳しい説明は省略する。パンチプレート46はベース10に固定されている。
図9は、実施形態2に係る打ち抜き装置2の構成を示す側面図である。ここでは、主として第1クランパ63および第2クランパ64の構成について説明する。なお、本実施形態2の第1クランパ63および第2クランパ64の平面構成は、実施形態1(図2参照)に記載の第1クランパ13および第2クランパ14と同じであり、詳しい説明は省略する。図9に示すように、第1クランパ63は、X軸駆動部27およびX軸駆動部27の上部に配置されるY軸駆動部28を有している。X軸駆動部27およびY軸駆動部28はともに、サーボモータとサーボモータの回転を直線運動に変換する変換機構(たとえば、ボールねじ機構)を備えている。X軸機構部27は、ワークWをX軸ガイドレール29上でX軸方向に往復移動させる。Y軸駆動部28は、ワークWをY軸ガイドレール30上でY軸方向に往復移動させる。X軸駆動部27およびY軸駆動部28は、実施形態1(図2参照)と同じ構成である。
Y軸駆動部28の上部には、ワークWを降下させたり上昇させたりするワーク昇降機構部65と、ワークWを水平に回転させる回転機構部35が配置されている。回転機構部35は、実施形態1と同じ構成である。ワーク昇降機構部65は、サーボモータとサーボモータの回転を直線運動に変換する変換機構(たとえば、ボールねじ機構)を備えている。ワーク昇降機構部65は、上型50(ダイ23)の降下に同期しワークWを降下させ、上型50(ダイ23)の上昇に従いワークWを上昇させる。本実施形態2の第1クランパ63は、ワーク昇降機構部65を付加する構成以外は、実施形態1の第1クランパ13と同じ構成としている。
第2クランパ64は、X軸駆動部37およびX軸駆動部37の上部に配置されるY軸駆動部38を有している。X軸駆動部37およびY軸駆動部38は共に、サーボモータとサーボモータの回転を直線運動に変換する変換機構(たとえば、ボールねじ機構)を備えている。X軸機構部37は、ワークWをX軸ガイドレール39上でX軸方向に往復移動させる。Y軸駆動部38は、ワークWをY軸ガイドレール40上でY軸方向に往復移動させる。X軸駆動部37およびY軸駆動部38は、実施形態1(図2参照)と同じ構成である。
Y軸駆動部38の上部には、ワークWを降下させたり上昇させたりするワーク昇降機構部65と、ワークWを水平に回転させる回転機構部35が配置されている。回転機構35およびワーク昇降機構部65は、第1クランパ63と同じ構成である。ワーク昇降機構部65は、上型(ダイ23)の降下に同期しワークWを降下させ、ダイの上昇に従いワークWを上昇させる。本実施形態2の第2クランパ64は、ワーク昇降機構部65を付加した以外の構成は、実施形態1の第2クランパ14と同じ構成としている。
図10は、実施形態2に係る打ち抜き装置2によるワークWの打ち抜き方法を模式的に表す説明図であり、図10(A)はワークWを打ち抜き位置に搬送した状態、図10(B)は上型50の構成部材であるダイ23がワークWの上面(上基準面Kとする)に当接した瞬間、図10(C)は製品を打ち抜いた直後を表している。従来技術による製品打ち抜き直後の状態は、図6(D)を参照する。ワークWは、ワーク打ち抜き時まで第1クランパ63または第2クランパ64によって常時一定の高さに保持されている。すなわち、上基準面Kの位置は、図10(A),(B)において変わらない。なお、図10では、第1クランパ63を例示し、コイルばね52の図示を省略している。また、実施例1のダイセット12を図示して説明する。
図10(A)に示すように、ワークWは第1クランパ63で保持され、可動ストリッパ47上に載置されている。ダイ23)は上死点に位置し、ワークWとの間には隙間S1がある。なお、パンチ44の上面は、可動ストリッパ47の上面と一致していても、わずかに下方にあるようにしてもよい。図10(B)はダイ23を降下させてワークWの上面に当接させた瞬間を表している。この時には、可動ストリッパ47は動かない。図10(C)に示すように、ダイ23がワークWの上基準面Kに当接した後、ワークWを打ち抜くストロークS2分ダイ23は降下する。ダイ23の降下に同期してワーク昇降機構部65によって第1クランパ63を降下させる。すなわち、第1クランパ63が保持している上基準面Kを打ち抜き後のワークWの上基準面Kと同じ高さ位置まで移動することによって、相対的な基準位置Kは変わらないのでワークWは曲がることがなく、以降の打ち抜きにおいて製品W0を変形なく形成できる。第2クランパ64においても、第1クランパ63と同じ作用によって製品を変形なく形成できる。
以上説明した実施形態2に係る打ち抜き装置2は、下型48と、下型48に向かって昇降可能な上型50と、上型50(ダイ23)を昇降させる上型昇降装置21と、ワークWを保持し所定平面位置に搬送するワーク保持装置である第1クランパ63および第2クランパ64と、を有し、第1クランパ63および第2クランパ64は、ワークWを打ち抜く際に、上型50(ダイ23)が降下しワークWの上基準面Kに当接するタイミングで上型50(ダイ23)の降下に同期してワークWを降下させるワーク昇降機構部65を有している。
このような構成の打ち抜き装置2は、製品W0を打ち抜く際に、上型50(ダイ23)の降下に同期してワークWを降下させるため、打ち抜き時および打ち抜き後のワークWの上基準面Kの相対的な位置が変化しないので製品W0を打ち抜いた後のワークが変形しない。そのことから、以降の打ち抜き加工において、変形のない所望の形状の製品W0を形成することが可能となる。実施形態2の打ち抜き方法は、実施例1のダイセット12(図4参照)および実施例2のダイセット12A(図5参照)ともに適合する。
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。たとえば、前述した実施形態1では、プレスユニット11の昇降手段として上型昇降装置21とほぼ同じ構成の押し上げ装置24を使用しているが、これに限らず、プレスユニット11とベース10の間にくさび状の押し上げ部材を用いて、この押し上げ部材を押し込んでプレスユニット11を上昇させ、引き出して降下させる構造とすることが可能である。
また、前述した実施形態1,2は、ワークWの一方の端部を第1クランパ13で、他方の端部を第2クランパ14で各々持ち替えて保持する、いわゆる片持ち構造であるが、ワークWを両持ち構造としてもよい。たとえば、第1クランパ13、第2クランパ14それぞれにワークWの送り方向両端隅部の4か所にクランプを設け両端支持としてもよく、第1クランパ13と第2クランパ14とで同時にワークWを保持するようにしてもよい。また、第1クランパ13のみの構成とし、第1クランパ13でワークWを第2クランパ14の保持領域まで搬送し加工する構成にすることも可能である。