JP6235933B2 - 車両用ホイール - Google Patents
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Description
このホイールは副気室とリムとが一体に鋳造されたものであり、連通孔はタイヤ空気室と副気室とを隔てる隔壁に所定の径(所定の断面積)となるように穿たれている。
このホイールでは、連通孔と副気室とがヘルムホルツレゾネータを構成している。そして、このヘルムホルツレゾネータの共鳴振動周波数f0は次式(1)で表される。
C(m/s):副気室内部の音速(=タイヤ空気室の内部の音速)
V(m3):副気室の容積
L(m):連通孔の長さ
S(m2):連通孔の断面積
α:補正係数
ちなみに、この共鳴振動周波数f0は、タイヤ空気室の共鳴振動周波数に合わせて設定される。
しかしながら、従来のヘルムホルツレゾネータ(例えば、特許文献1参照)では、前記のようにタイヤ空気室と副気室とを隔てる隔壁に穿たれた貫通孔で連通孔が形成されるので、前記式(1)中の「連通孔の長さL」は隔壁の厚さと等しくなる。また、ホイール全体の許容重量を考慮すると隔壁の厚さを増大させるにも限界がある。そのため、従来のヘルムホルツレゾネータでは、「連通孔の断面積S」を十分に大きく確保することができずに、安定した消音性能を発揮することができない課題がある。
この車両用ホイールによれば、リムに部分的に形成された肉厚部に連通孔が設けられることで前記式(1)中の「連通孔の長さL」が長くなる。したがって、前記式(1)中の「連通孔の断面積S」を大きく設定することができる。これにより車両用ホイールは、タイヤ空気室と副気室との間での空気の出入りがスムーズになって、安定した消音性能を発揮することができる。
この車両用ホイールによれば、ウェル部の窪みを大きく確保することができるので、これにタイヤが組み付けられる際に、ウェル部に対するタイヤのビード部の落とし込みが阻害されることが避けられる。
この車両用ホイールによれば、副気室の内側に凸となるように肉厚部が形成されるものと比較して、副気室の容積を減らすことなく前記式(1)中の「連通孔の長さL」を長くすることができる。
この車両用ホイールによれば、鋳造で得られる従来の車両用ホイールと異なって副気室を形成するための中子を必要としないので簡単な工程で製造することができる。
ここでは、まず車両用ホイールの全体構成について説明した後に、副気室及び連通孔について説明する。なお、本実施形態に係る車両用ホイールは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽金属製のものを想定している。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ホイール10の斜視図であり、車両用ホイール10のリム11を連通孔14の位置でホイール幅方向Yに部分的に切欠いた切欠き断面を含む図である。図2は、図1におけるリム11の切欠き断面をII方向から見た断面図である。なお、図2には、リム11に組み付けられるタイヤTを仮想線(二点鎖線)で描いている。
図1中、符号11cは、リム11のウェル部であり、符号13は、副気室であり、符号16は、中空状空間である。副気室13は、後記するように、この中空状空間16を仕切ることで形成される。
ウェル部11cの底面を規定するリム11の外周面11dは、ホイール幅方向Yに同径の円筒状に形成されている。
車両用ホイール10は、図2に示すように、リム11の内部に副気室13を有している。本実施形態での副気室13は、ウェル部11cのホイール径方向Zの内側に形成されている。つまり、副気室13は、リム11の外周面11dよりもホイール径方向Zの内側に形成されている。
この副気室13は、本来、リム11の中実部である部分に、ホイール周方向X(図1参照)に沿って形成される環状の中空状空間16を設けて形成されたものである。
本実施形態での副気室13は、ホイール幅方向Yに隔壁18を介して2列に並ぶように形成されている。ちなみに、副気室13のそれぞれは、ホイール幅方向Yに沿う断面視で略矩形を呈している。これらの副気室13は、後に詳しく説明する連通孔14とともに、ヘルムホルツレゾネータを構成する。
図2中、符号15は、肉厚部である。この肉厚部15については後に詳しく説明する。
本実施形態での中空状空間16は、後記する押出し成形法によるリム11の製造時に、リム11と一体に形成されたものであり、リム11のホイール周方向Xの全周にわたって環状に形成されている。
本実施形態での中空状空間16は、図3に示すように、ホイール幅方向Yに隔壁18を介して2つ並ぶように配置されている。
なお、仕切り部材17の数は、本実施形態での4つに限定されるものではなく、設ける副気室13の数に応じて2つ以上とすることができる。
ちなみに、本実施形態での仕切り部材17としては、例えば中空状空間16に充填可能な樹脂製ブロック体、及びホイール母体と同じ材質の金属(例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金等)からなるブロック体等を想定している。
なお、図3及び図4中、符号14は、連通孔である。
連通孔14は、図2に示すように、タイヤ空気室20と副気室13とを隔てる隔壁19、つまりウェル部11cの底面となる外周面11dを規定するリム11部分に穿たれて形成される。
この連通孔14は、前記したように副気室13とともにヘルムホルツレゾネータを構成している。
本実施形態での肉厚部15は、ホイール幅方向Yの各副気室13の中央で(図2参照)、ホイール周方向Xに沿って延在している(図4(a)及び(b)参照)。つまり、本実施形態での肉厚部15は、ホイール周方向Xの全長にわたって形成されるレール形状を呈している。
次に、本実施形態に係る車両用ホイール10(図1参照)の製造方法について説明する。
図5(a)から(c)、及び図6(a)から(c)は、本実施形態に係る車両用ホイール10の製造工程説明図である。
なお、図5(a)は、押出し成形法により製造されるリム材料21の斜視図、図5(b)は、図5(a)のリム材料21における端部の部分拡大斜視図、図5(c)は、肉厚部15に連通孔14を形成したリム材料21の斜視図である。図6(a)は、リム材料21の端部から中空状空間16内に仕切り部材17を圧入して充填する様子を示す部分拡大斜視図、図6(b)は、リム材料21をホイール周方向X(図1参照)のリム11(図1参照)の長さに合わせて切り詰める様子を模式的に示す断面図であり、肉厚部15に沿う断面を表す図、図6(c)は、ロール加工を施して環状に形成したリム材料21の断面図であり、肉厚部15に沿う断面を表す図である。
なお、図6(b)においては、リム材料21の中程の記載を作図の便宜上省略している。
この製造方法では、ホイール母材を構成する前記軽金属のビレットを所定のダイス(金型)から押出して、図5(a)に示すリム材料21を形成する。このリム材料21は、連通孔14(図5(c)参照)が形成されていないほかは、図1に示す切欠き断面と同じ断面を有する長尺部材である。つまり、図5(b)に示すように、このリム材料21には、隔壁18を介して並ぶように形成される2つの中空状空間16と、各中空状空間16に沿ってそれぞれ延在するように形成される2つの肉厚部15とが形成されている。
本実施形態での仕切り部材17としては、中空状空間16の断面形状と略同じ断面形状を有し、中空状空間16の断面よりもやや大きめの断面を有するものを使用することができる。ちなみに、本実施形態での仕切り部材17には、レール状の肉厚部15の外形に対応する形状の溝17aが仕切り部材17の圧入方向Dに沿うように形成されている。
図6(b)中、符号Cは、リム材料21の切断箇所であり、符号14aは、図5(c)に示す連通孔14aに対応する連通孔であり、符号14dは、図5(c)に示す連通孔14dに対応する連通孔であり、符号17は、仕切り部材である。
この車両用ホイール10の副気室13と連通孔14とは、前記のようにヘルムホルツレゾネータを構成する。したがって、このヘルムホルツレゾネータの共鳴振動周波数f0は、タイヤ空気室20(図2参照)の共鳴振動周波数に合わせて設定されるとともに、前記したように式(1)で表される。
V(m3):副気室13の容積
L(m):連通孔14(図2参照)の長さ
S(m2):連通孔14の断面積
α:補正係数
これに対して、本実施形態に係る車両用ホイール10の連通孔14は、リム11に部分的に形成された肉厚部15に設けられるので、前記式(1)中の「連通孔14の長さL」が長くなる。これにより前記式(1)中の「連通孔14の断面積S」を大きく設定することができる。そして、タイヤ空気室20内で気柱共鳴が生じた際の音圧変化は、この大きな断面積の連通孔14を介してタイヤ空気室20から副気室13へと伝達される。つまり、本実施形態に係る車両用ホイール10によれば、タイヤ空気室20と副気室13との間での空気の出入りがスムーズになって、従来よりも安定した消音性能を発揮することができる。
そして、押出し成形法で形成されたリム11を有する車両用ホイール10によれば、鋳造で得られる従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)と異なって副気室13を形成するための中子を必要としないので簡単な工程で製造することができる。
図7(a)から図7(g)は、副気室13及び連通孔14の変形例を示す、ホイール幅方向Yに沿ったリム11の部分断面図である。図8(a)及び図8(b)は、本発明の他の実施形態に係る車両用ホイール10を示す断面図であり、図4(a)及び図4(b)の断面図に対応する図である。
この車両用ホイール10によれば、中空状空間16が2列の前記実施形態と比較して副気室13の容積をより大きくすることができる。これにより一つの副気室13あたりの消音効率を高めることができる。また、この車両用ホイール10によれば、隔壁18(図2参照)を省略することができるので車両用ホイール10の軽量化を図ることができる。
この車両用ホイール10によれば、副気室13の内側に凸となるように肉厚部15が形成される前記実施形態と比較して、副気室13の容積を減らすことなく前記式(1)中の「連通孔の長さL」を長くすることができる。ちなみに、図7(b)は、環状の中空状空間16が2列のものであり、図7(c)は、環状の中空状空間16が1列のものである。
この車両用ホイール10によれば、「連通孔14の長さL」をさらに長くすることができる。ちなみに、図7(d)は、環状の中空状空間16が2列のものであり、図7(e)は、環状の中空状空間16が1列のものである。
この車両用ホイール10によれば、ウェル部11cの底よりもホイール径方向Zの内側に中空状空間16が形成されるものと比較して、中空状空間16のホイール周方向Xの全長が長くなるので、副気室13の容積をより大きくすることができる。これにより一つの副気室13あたりの消音効率を高めることができる。
この車両用ホイール10によれば、副気室13の容積をさらに大きくすることができる。これにより一つの副気室13あたりの消音効率をさらに高めることができる。
この車両用ホイール10によれば、ヘルムホルツレゾネータ構造の多様化を図ることができる。
11 リム
11a ビードシート部
11b リムフランジ部
11c ウェル部
11d 外周面
12 ディスク
13 副気室
14 連通孔
14a 連通孔
14b 連通孔
14c 連通孔
14d 連通孔
15 肉厚部
16 中空状空間
17 仕切り部材
20 タイヤ空気室
21 リム材料
T タイヤ
X ホイール周方向
Y ホイール幅方向
Z ホイール径方向
Claims (4)
- リムにタイヤを取付けた際に形成されるタイヤ空気室と、連通孔を介して連通し、ヘルムホルツレゾネータとして機能する副気室を複数備える車両用ホイールであって、
前記副気室のそれぞれは、前記リムの肉厚部に形成された中空状空間をホイール周方向に仕切ることで形成され、
前記連通孔は、前記リムに部分的に形成された肉厚部に設けられており、
前記中空状空間及び前記肉厚部は、ホイール周方向の全長にわたって形成されていることを特徴とする車両用ホイール。 - 請求項1に記載の車両用ホイールにおいて、
前記中空状空間は、前記リムのウェル部のホイール径方向内側に形成されていることを特徴とする車両用ホイール。 - 請求項1又は請求項2に記載の車両用ホイールにおいて、
前記肉厚部は、ホイール径方向外側に凸となるように形成されていることを特徴とする車両用ホイール。 - 請求項1に記載の車両用ホイールの製造方法であって、
前記中空状空間及び前記肉厚部を有する前記リムは、押出し成形にて形成されることを特徴とする車両用ホイールの製造方法。
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