JP6087303B2 - 車両用ホイール - Google Patents
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Description
このホイールは副気室とリムとが一体に鋳造されたものであり、連通孔はタイヤ空気室と副気室とを隔てる隔壁に所定の径(所定の断面積)となるように穿たれている。
このホイールでは、連通孔と副気室とがヘルムホルツレゾネータを構成している。そして、このヘルムホルツレゾネータの共鳴振動周波数f0は次式(1)で表される。
C(m/s):副気室内部の音速(=タイヤ空気室の内部の音速)
V(m3):副気室の容積
L(m):連通孔の長さ
S(m2):連通孔の断面積
α:補正係数
ちなみに、この共鳴振動周波数f0は、タイヤ空気室の共鳴振動周波数に合わせて設定される。
しかしながら、従来のヘルムホルツレゾネータ(例えば、特許文献1参照)では、前記のようにタイヤ空気室と副気室とを隔てる隔壁に穿たれた貫通孔で連通孔が形成されるので、前記式(1)中の「連通孔の長さL」は隔壁の厚さと等しくなる。また、ホイール全体の許容重量を考慮すると隔壁の厚さを増大させるにも限界がある。そのため、従来のヘルムホルツレゾネータでは、「連通孔の断面積S」を十分に大きく確保することができずに、安定した消音性能を発揮することができない課題がある。
この車両用ホイールによれば、連通孔の一端が副気室に臨む仕切り部材の端面でホイール周方向に向いて開口するので、連通孔が前記隔壁に設けられる従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)よりも前記式(1)中の「連通孔の長さL」が長くなる。したがって、前記式(1)中の「連通孔の断面積S」を大きく設定することができる。これにより本発明の車両用ホイールは、タイヤ空気室と副気室との間での空気の出入りがスムーズになって、安定した消音性能を発揮することができる。
この車両用ホイールによれば、連通孔の経路が直線的なものよりも、前記式(1)中の「連通孔の長さL」がさらに長くなる。
この車両用ホイールによれば、リムに対する仕切り部材の取付けが容易になって車両用ホイールの製造工程が簡素化される。また、この車両用ホイールによれば、仕切り部材の修理・交換が可能となる。
この車両用ホイールによれば、中空状空間を形成するリム壁面に対する仕切り部材の接触面圧が高くなるので、仕切り部材が中空状空間をより確実に気密に仕切ることができる。
この車両用ホイールによれば、鋳造で得られる従来の車両用ホイールと異なって副気室を形成するための中子を必要としないので簡単な工程で製造することができる。
以下に本発明の実施形態に係る車両用ホイールについて説明する。
まず車両用ホイールの全体構成について説明した後に、副気室及び仕切り部材について説明する。なお、本実施形態に係る車両用ホイールは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽金属製のものを想定している。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ホイール10の斜視図であり、リム11をホイール幅方向Yに部分的に切欠いた切欠き断面を含む図である。図2は、図1のII−II断面図である。なお、図2には、リム11に組み付けられるタイヤTを仮想線(二点鎖線)で描いている。
図1中、符号11cは、リム11のウェル部であり、符号17は、リム11の中空状空間16を仕切って副気室13を形成するための仕切り部材であり、符号14は、仕切り部材17に形成された連通孔であり、符号19は、仕切り部材17の取付孔である。符号Xは、ホイール周方向を示す矢印、符号Yは、ホイール幅方向を示す矢印である。
ウェル部11cの底面を規定するリム11の外周面11dは、ホイール幅方向Yに同径の円筒状に形成されている。
車両用ホイール10は、図2に示すように、リム11の内部に副気室13を有している。本実施形態での副気室13は、ウェル部11cのホイール径方向Zの内側に形成されている。つまり、副気室13は、リム11の外周面11dよりもホイール径方向Zの内側に形成されている。
この副気室13は、本来、リム11の中実部である部分に、ホイール周方向X(図1参照)に沿って環状の中空状空間16を設け、この中空状空間16をホイール周方向Xに仕切って形成されたものである。
ちなみに、本実施形態での中空状空間16は、後記する押出し成形法によるリム11の製造時に、リム11と一体に形成されたものであり、リム11のホイール周方向Xの全周にわたって環状に形成されている。
本実施形態での副気室13は、前記したように、環状の中空状空間16が複数の仕切り部材17で等間隔に仕切られて形成されたものである。
図3に示すように、副気室13は、ホイール周方向Xに並んで複数形成されている。ちなみに、本実施形態での仕切り部材17の配置数は4つであり、配置されるホイール回転軸Ax周りの位相間隔は90度である。
副気室13は、後に詳しく説明する連通孔14とともに、ヘルムホルツレゾネータを構成する。
図3中、符号14は、仕切り部材17に形成された連通孔である。
図4(a)は、本実施形態に係る車両用ホイール10(図1参照)における仕切り部材17の斜視図、図4(b)は、図4(a)の仕切り部材17の長手側の側面図である。なお、図4(a)中の矢印X、Y及びZのそれぞれは、仕切り部材17がリム11に取り付けられた際の、前記のホイール周方向、ホイール幅方向、及びホイール径方向に対応している。図4(b)には、この仕切り部材17で中空状空間16(図2参照)を仕切った際のリム11を仮想線(二点鎖線)で描いている。
この仕切り部材17は、後に詳しく説明するように、タイヤ空気室20(図2参照)と中空状空間16(図2参照)とを隔てるリム部分に穿たれた取付孔19(図1参照)に圧入される。これにより仕切り部材17は、環状の中空状空間16(図3参照)をホイール周方向Xに仕切ることとなる。そして、前記のように、環状の中空状空間16が複数の仕切り部材17で等間隔に仕切られることで、ホイール周方向Xに複数の副気室13が形成されることとなる(図3参照)。
また、図4(a)に示すように、連通孔14の他端は、ホイール径方向Zの外側(図4(a)の紙面上側)に向いて開口している。つまり、連通孔14の他端は、リム11(図3参照)の外側に形成されることとなるタイヤ空気室20(図2参照)に臨むように仕切り部材17の端面に開口している。
本体部17aは、図4(b)に示すように、その長手側から見た側面視で、中空状空間16(図2参照)と同じ略等脚台形を呈している。つまり本体部17aは、ホイール径方向Zの外側(図4(b)の紙面上側)に長辺が位置し、ホイール径方向Zの内側(図4(b)の紙面下側)に短辺が位置する略等脚台形を呈している。言い換えれば、本体部17aは、ホイール径方向内側からホイール径方向外側に向かって徐々に拡径していくテーパを有する楕円柱形状を有している。
ちなみに、後記する取付孔19(図6(b)参照)の平面形状は、本体部17aにおけるホイール径方向内側の平面形状の楕円よりも大きい楕円形状となっている。また、取付孔19(図6(b)参照)の平面形状は、本体部17aにおけるホイール径方向外側の平面形状の楕円よりも小さい楕円形状となっている。
このような封止部17bは、後記する取付孔19(図6(b)参照)に収まる形状となっている。つまり、本実施形態での封止部17bの平面形状は、取付孔19の平面形状と同じ形状の楕円で形成され、封止部17bの高さは、取付孔19の深さと等しくなるように設定されている。
ちなみに、仕切り部材17は、取付孔19(図6(b)参照)に圧入される際に弾性変形可能な材料で形成することができる。本実施形態での仕切り部材17の材料としては、樹脂を想定している。
次に、本実施形態に係る車両用ホイール10(図1参照)の製造方法について説明する。図5(a)から(c)、並びに図6(a)及び(b)は、本実施形態に係る車両用ホイール10(図1参照)の製造工程説明図である。なお、図5(a)は、押出し成形法により製造されるリム材料21の斜視図、図5(b)は、図5(a)のリム材料21における端部の部分拡大斜視図、図5(c)は、リム材料21をホイール周方向X(図1参照)のリム11(図1参照)の長さに合わせて切り詰める様子を模式的に示す断面図である。なお、図5(c)中、リム材料21の中程の記載を作図の便宜上省略している。
図6(a)は、ロール加工を施して環状に形成したリム材料21の断面図、図6(b)は、リム部分に形成した取付孔19に仕切り部材17を圧入する様子を示す車両用ホイール10の部分拡大斜視図である。
この製造方法では、ホイール母材を構成する前記軽金属のビレットを所定のダイス(金型)から押出して、図5(a)に示すリム材料21を形成する。このリム材料21は、図5(b)に示すように、図2に示すリム11の断面形状と同じ断面形状を有する長尺部材である。図5(b)中、符号16は、中空状空間である。
この際、取付孔19の平面形状は、前記したように、本体部17aにおけるホイール径方向Z内側の平面形状の楕円よりも大きい楕円形状となっているので、本体部17aにおけるホイール径方向Z内側は、取付孔19内に容易に嵌り込む。
また、本体部17aにおけるホイール径方向Z外側の平面形状は、取付孔19の平面形状よりも大きい楕円になっているので、本体部17aにおけるホイール径方向Z外側は、弾性変形しながら取付孔19を介して中空状空間16内に圧入されていく。
そして、このリム11にディスク12(図1参照)が取り付けられて、本実施形態に係る車両用ホイール10(図1参照)の一連の製造工程は終了する。
なお、図6(b)中、符号Yは、ホイール幅方向を示す矢印である。
この車両用ホイール10の副気室13と連通孔14とは、前記のようにヘルムホルツレゾネータを構成する。したがって、このヘルムホルツレゾネータの共鳴振動周波数f0は、タイヤ空気室20(図2参照)の共鳴振動周波数に合わせて設定されるとともに、前記したように式(1)で表される。
V(m3):副気室13の容積
L(m):連通孔14(図2参照)の長さ
S(m2):連通孔14の断面積
α:補正係数
図7は、仕切り部材17の変形例の斜視図である。図8(a)は、中空状空間16の変形例を示す、ホイール幅方向Yに沿ったリム11の部分断面図、図8(b)は、図8(a)の中空状空間16を仕切る仕切り部材17の一例を示す斜視図である。図9(a)から(d)は、中空状空間16の変形例を示す、ホイール幅方向Yに沿ったリム11の部分断面図である。
また、連通孔14は、図示しないが、円弧状に湾曲するように形成することもできる。
なお、図8(b)中、符号17aは、本体部であり、符号17bは、封止部であり、符号Xは、ホイール周方向を示す矢印、符号Zは、ホイール径方向を示す矢印である。符号17cは、仕切り部材17が中空状空間16(図1参照)内に圧入された際に、リム11の隔壁18の端部(図8(a)参照)が嵌り込むように本体部17aに形成された切欠き溝である。
このような中空状空間16及び仕切り部材17によれば、リム11のホイール幅方向Yに2列で並ぶ副気室13(図1参照)を形成することができる。
なお、図8(b)に示す仕切り部材17は、ホイール周方向Xの端面に形成される2つの開口14a,14aが、互いに逆向きになっているが、同じ方向に向くように連通孔14を形成することもできる。
この車両用ホイール10によれば、ウェル部11cの底よりもホイール径方向Zの内側(図9の紙面下側)に中空状空間16が形成されるものと比較して、中空状空間16のホイール周方向X(図3参照)の全長が長くなるので、副気室13(図3参照)の容積をより大きくすることができる。これにより一つの副気室13あたりの消音効率を高めることができる。
この車両用ホイール10によれば、副気室13の容積をさらに大きくすることができる。これにより一つの副気室13あたりの消音効率をさらに高めることができる。
また、中空状空間16は、ホイール幅方向Yに3列以上設けることもできる。
11 リム
11a ビードシート部
11b リムフランジ部
11c ウェル部
11d 外周面
12 ディスク
13 副気室
14 連通孔
16 中空状空間
17 仕切り部材
17a 本体部
17b 封止部
17c 切欠き溝
18 隔壁
19 取付孔
20 タイヤ空気室
21 リム材料
B ビード部
T タイヤ
X ホイール周方向
Y ホイール幅方向
Z ホイール径方向
Ax ホイール回転軸
Claims (5)
- リムにタイヤを取付けた際に形成されるタイヤ空気室と、連通孔を介して連通し、ヘルムホルツレゾネータとして機能する副気室を複数備える車両用ホイールであって、
前記副気室のそれぞれは、前記リムの内部に形成された中空状空間を仕切り部材によってホイール周方向に仕切ることで形成され、
前記連通孔の一端は、前記副気室に臨む前記仕切り部材の端面でホイール周方向に向いて開口し、前記連通孔の他端は、前記タイヤ空気室に臨む前記仕切り部材の端面に開口していることを特徴とする車両用ホイール。 - 請求項1に記載の車両用ホイールにおいて、
前記連通孔は、前記一端側と前記他端側の間の経路が屈曲していることを特徴とする車両用ホイール。 - 請求項1又は請求項2に記載の車両用ホイールにおいて、
前記タイヤ空気室と前記中空状空間とを隔てるリム部分に前記仕切り部材の取付孔が形成され、
前記仕切り部材は、前記取付孔を介して前記中空状空間内に圧入されていることを特徴とする車両用ホイール。 - 請求項3に記載の車両用ホイールにおいて、
前記仕切り部材は、ホイール幅方向が長径でホイール周方向が短径の楕円柱形状を呈していることを特徴とする車両用ホイール。 - 請求項1に記載の車両用ホイールにおいて、
前記中空状空間は、ホイール周方向の全長にわたって形成され、
前記中空状空間を有する前記リムは、押出し成形にて形成されていることを特徴とする車両用ホイール。
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