JP4830014B2 - 車両用ホイール - Google Patents
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Description
従来、タイヤの気柱共鳴音を低減する副気室部材をリムのウェル部に嵌め込んで取り付けた車両用ホイールが知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用ホイールは、板状に延出した副気室部材の縁部がバネ弾性を有しており、縁部の延出先端がウェル部に形成された溝に嵌め込まれた際に、縁部の延出方向への反発力によって副気室部材がウェル部に係止されるようになっている。
したがって、副気室部材とウェル部との固定部に万一不具合が生じたとしても、ウェル部からの副気室部材の外れを防止することができる車両用ホイールが望まれている。
この車両用ホイールは、副気室部材とウェル部外周面との固定部に不具合が生じても、副気室部材を外側から被覆する被覆部材により、ウェル部外周面から副気室部材が外れるのを防止する。
また、この車両用ホイールは、被覆部材がタイヤ空気室からリムへの熱伝達を抑制することにより、タイヤ空気室内の温度低下を防止して、タイヤのトレッド部の温度を高く維持する。これにより、車両用ホイールは、タイヤの転がり抵抗を低減して燃費を向上させる。
また、この車両用ホイールは、被覆部材で副気室部材を保護するので、タイヤ脱着作業中の副気室部材の損傷を防止する。
この車両用ホイールは、タイヤ空気室からリムへの熱伝達を、より一層抑制して、タイヤの転がり抵抗の低減による燃費向上効果を、より一層高める。
この車両用ホイールは、副気室部材とリムとの熱膨張率が異なっても、それらの間に介在するゴム材が熱膨張率の差を吸収するため、副気室部材のリム外周面への固定を、より確実にする。
この車両用ホイールは、副気室部材の上部と、凹み部に隣接するウェル部外周面とが連続する面を形成するので、被覆部材の装着固定を容易にする。また、この車両用ホイールは、副気室部材のホイール径方向の外側への突出がなくなるので、タイヤ脱着作業中の副気室部材の損傷を確実に防止する。
この車両用ホイールは、複数の副気室部材及びスペーサがホイール全周に亘って隙間なく連続するので、被覆部材の装着固定を容易にする。
この車両用ホイールは、副気室部材から突出する連通部の収容箇所として、スペーサを有効活用すると共に、突出する連通部を有する複数の副気室部材を、スペーサを介してホイール全周に亘って連続させる。しかも、この車両用ホイールは、その連通部がスペーサにより囲まれるので、タイヤ脱着作業中の連通部の損傷を防止する。
《車両用ホイールの全体構成》
図1(a)に示すように、本実施形態に係る車両用ホイール10は、リム11と、このリム11をハブ(図示省略)に連結するためのディスク12とを備えている。
このようなリム11とディスク12とは、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽量高強度材料等から製造される。なお、これらの材料は限定されるものではなく、スチール等から形成されるものであってもよい。
副気室部材13は、ヘルムホルツ・レゾネータとして機能してタイヤ空気室MC内の気柱共鳴音(空洞共鳴音)を低減するように構成されている。
副気室部材13は、図2に示すように、ウェル部11cの外周面11i(以下、ウェル部外周面11iということがある)上で所定の間隔を存してホイール周方向Xに並ぶように複数配置されている。なお、図2中、符号16は、ウェル部11cと副気室部材13との間に介在するゴム材である。このゴム材16については後で詳しく説明する。
本実施形態での副気室部材13は、図2に示すように、ホイール周方向Xに等間隔に4つ配置されている。つまり、ホイール回転軸Axを挟んで対向する一対の副気室部材13,13が2組配置されている。
図3(c)に示すように、底板25aは、リム幅方向Yに平坦となっており、上板25bは、ホイール径方向Zの外側(図3(c)の紙面上側)に凸となるように弓なりに湾曲している。そして、弓なりで中高となる本体部13aは、リム幅方向Yの両端に向かうほど勾配が徐々になだらかになるように形成されてその両端部が薄くなっている。つまり、本実施形態での本体部13aは、図1(b)に示すように、ウェル部11c上で扁平形状を呈している。
本体部13aのリム幅方向Yの幅Wは、図1(b)に示すように、ウェル部11cのリム幅方向Yの両側に、少なくともタイヤ20のビード部21a,21aを落とし込む余地部分Rを確保できる範囲で設定することが望ましい。
副気室SCの容積は、50〜250cc程度が望ましく、100cc前後が最も望ましい。副気室SCの容積をこの範囲内に設定することで、副気室部材13は、消音効果を充分に発揮しつつ、車両用ホイール10(図1(a)参照)の軽量化を図ることができる。
ちなみに、本実施形態に係る副気室部材13によれば、副気室SCの容積が100cc前後のものをタイヤ空気室MC内に4つ配置した場合に、220Hzの気柱共鳴音を13dB程度低減できることを本発明者らはシミュレーション試験を行って確認している。
ホイール周方向Xの副気室部材13(図2参照)の長さは、車両用ホイール10の重量の調整やウェル部11c(図2参照)に対する組み付けの容易性を考慮して適宜に設定することができる。
連通部13bの内径は、断面が円形の場合には、5mm以上が望ましい。また、円形以外の断面形状の連通部13bは、その断面積で同じ断面積の円形に換算して直径5mm以上のものが望ましい。
f0(Hz):共鳴周波数
C(m/s):副気室SC内部の音速(=タイヤ空気室MC内部の音速)
V(m3):副気室SCの容積
L(m):連通部13bの長さ
S(m2):連通部13bの開口部断面積
α:補正係数
スペーサ15は、図2に示すように、ウェル部外周面11i上に等間隔に配置された副気室部材13同士の間に配置されている。そして、スペーサ15のホイール周方向Xの長さは、副気室部材13の本体部13a同士の間隔と略等しくなるように設定されている。
スペーサ15は、図4(a)及び(b)に示すように、ホイール周方向Xの一端側に凹み15aを有する中実のブロック体で形成されている。なお、スペーサ15は、中空であってもよい。
この凹み15aは、後記するように、スペーサ15を副気室部材13同士の間に配置した際に(図5参照)、副気室部材13の長手方向に突出する連通部13bを収容すると共に連通部13bの開口をタイヤ空気室MC(図1(b)参照)に臨ませるものである。つまり、凹み15aは、スペーサ15のホイール周方向Xの一端側であって、このスペーサ15を覆うこととなる後記する被覆部材14(図1(a)参照)側の面に形成されていればその形状に特に制限はない。したがって、凹み15aは、前記したようにスペーサ15の高さ方向に貫通するように形成されていなくてもよく、例えば、図4(d)に示すように、ホイール径方向Zの内側が有底のものであってもよい。
以上のようなスペーサ15は、樹脂、合成ゴム等で形成することができる。
被覆部材14は、ゴム製であって、図1(a)及び(b)に示すように、リム11の外周面の全周に沿って配置される環状帯である。被覆部材14は、ウェル部外周面11i上に固定された副気室部材13及びスペーサ15を覆うように配置されると共に、ウェル部11cにおけるビード部21a,21aを落とし込む余地部分R、及びこの余地部分Rからハンプ部11eに掛けて形成される立ち上がり部11fに亘って配置されている。
そして、リム11に取り付ける前の被覆部材14の形状は、本発明の課題の解決を阻害しないかぎり、幅方向に同一径の通常の円筒形状であってもよい。
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等が挙げられ、中でも断熱ゴムであるブチルゴム(IIR)及びエチレンプロピレンゴム(EPDM)は、後記するようにタイヤ20(図1(b)参照)の転がり抵抗をより低減することができるので望ましい。なお、ゴム成分に、通常ゴム業界で使用されている配合剤、例えばカーボンブラック等の補強剤、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等を適宜配合することができるのは勿論のことである。
なお、ゴム成分に対する前記した断熱性充填剤及び発泡剤のそれぞれの配合量は、通常ゴム業界で行われている範囲内で適宜に設定することができる。
本実施形態に係る車両用ホイール10は、ウェル部11cの外周面にゴム材16(図1(b)参照)を固定する工程と、このゴム材16上に副気室部材13及びスペーサ15を固定する工程と、ウェル部11c上で副気室部材13及びスペーサ15を覆うように被覆部材14を配置し、この被覆部材14をリム外周面11e(図1(b)参照)に固定する工程を経て製造することができる。
接着剤としては、例えばエポキシ樹脂系のものを好適に使用することができる。
ゴム材16は、ウェル部11cの外周面と副気室部材13との間に介在させることで、副気室部材13とウェル部11c(リム11)との熱膨張率の差を吸収するものである。つまり、ゴム材16は、ウェル部11c(リム11)に対する副気室部材13の固定力を高めている。
本実施形態でのゴム材16は、図1(b)に示すように、副気室部材13のリム幅方向Yにおける幅と略同じ幅であって、ウェル部11cの径よりも僅かに短径の環状帯で構成されている。このゴム材16は、接着剤を塗布したウェル部外周面11iに嵌装されて固定される。ゴム材16の厚さは、熱膨張率の差を吸収できる範囲で適宜に設定することができる。ちなみに、本実施形態では0.5mmに設定されている。
そして、ゴム材16を張り付けた接着剤を乾燥させることでこの工程は終了する。
なお、ウェル部外周面11iには、前記したように、副気室部材13及びスペーサ15の両側に、ビード部21a,21a(図1(b)参照)を落とし込む余地部分Rが確保される。
本実施形態における車両用ホイール10によれば、例えばウェル部外周面11iに対する副気室部材13の接着力が低下した場合のように、副気室部材13とウェル部11cとの固定部に不具合が生じたとしても、副気室部材13を外側から被覆する被覆部材14により、ウェル部外周面11iから副気室部材13が外れるのを防止することができる。
また、副気室部材13及びスペーサ15が、接着剤と被覆部材14によってウェル部外周面11iに固定されているので、この車両用ホイール10によれば、高速回転する際の耐久性が一段と向上する。
ちなみに、ブチルゴムを使用した発泡ゴムからなる被覆部材14(厚さ2mm)を使用した車両用ホイール10は、被覆部材14を有しない車両用ホイールと比較して、車両走行時のタイヤ空気室MCの温度が2〜3℃向上し、LA−4モード(米国自動車燃費試験市街地走行モード)で燃費が約1%向上することを本発明者らはシミュレーション試験で確認している。
図6に示すように、車両用ホイール10に対するタイヤ脱着工程において、タイヤ20のビード部21aをウェル部11cの前記した余地部分Rに落とす際に、タイヤチェンジャー(レバー)の先端の移動軌跡L1は、扁平形状の副気室部材13の上方に位置することとなる。
また、図6に示すように、車両用ホイール10に対する空気圧検出装置17の取付工程において、空気圧検出装置17のタイヤバルブ17a部分をリム11に形成された取付孔11gに挿嵌して固定する際に、空気圧検出装置17の移動軌跡L2は、扁平形状の副気室部材13の上方に位置することとなる。
そして、副気室部材13は、図7(b)に示すように、リム幅方向Yの本体部13aの総断面が、図7(a)に示すリム幅方向Yの凹み部11hの総断面と略同じになるように形成されているほかは、前記実施形態での副気室部材13と同様に形成されている。
図7(a)中、符号Yはリム幅方向であり、符号Zはホイール径方向である。図7(b)中、符号Xはホイール周方向であり、符号Yはリム幅方向である。
また、副気室部材13の連通部13b(図8参照)は、凹み部11h内でホイール周方向Xに本体部13aから突出させることができるので、タイヤ脱着作業中の連通部13bの損傷を確実に防止できる。
ちなみに、この車両用ホイール10は、図8に示すように、副気室部材13同士の間にスペーサ15を配置しているが、本発明はこれに限定されず、副気室部材13のみを収容する形状に凹み部11hを形成すると共に、スペーサ15は省略してもよい。この車両用ホイール10では、副気室部材13同士の間に介在することとなるウェル部11c、つまりウェル部11cを構成する金属部分そのものがスペーサ15として機能することとなる。
図9に示す車両用ホイール10は、副気室部材13をウェル部11cの周面に沿って等間隔に3つ配置している。
そして、スペーサ15は、副気室部材13同士の間隔に合わせてホイール周方向Xに長くなっている他は、前記実施形態でのスペーサ15と同様に構成されている。
なお、図9中、符号14aは被覆部材14の開口であり、符号Axはホイール回転軸である。
11 リム
11a ビードシート部
11b リムフランジ部
11c ウェル部
11d リム外周面
11e ハンプ部
11f 立ち上がり部
11g 取付孔
11h 凹み部
11i ウェル部外周面
12 ディスク
13 副気室部材
13a 本体部
13b 連通部
14 被覆部材
14a 開口
15 スペーサ
16 ゴム材
17 空気圧検出装置
17a タイヤバルブ
20 タイヤ
21a ビード部
25b 上板
25a 底板
25c 前板
25d 後板
MC タイヤ空気室
SC 副気室
X ホイール周方向
Y リム幅方向
Z ホイール径方向
Claims (6)
- リムのウェル部外周面上に、タイヤの気柱共鳴音を低減する副気室部材を備える車両用ホイールであって、
前記副気室部材を前記ウェル部外周面に固定した後、ゴム製の被覆部材で前記副気室部材を外側から被覆し、この被覆部材をリム幅方向における前記副気室部材の両側でリム外周面に固定したことを特徴とする車両用ホイール。 - 前記被覆部材は断熱ゴムで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。
- リムの前記ウェル部外周面にゴム材を固定し、このゴム材に前記副気室部材を固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ホイール
- 前記副気室部材は前記ウェル部外周面に形成した凹み部に収容され、前記副気室部材の上部と前記凹み部に隣接する前記ウェル部外周面とが連続する面を形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ホイール。
- 前記ウェル部外周面上に複数の前記副気室部材を周方向に間隔を存して固定し、前記各副気室部材をリム幅方向の断面が周方向の全長に亘って同一になるように形成すると共に、前記副気室部材のリム幅方向の断面と同じ断面を有するスペーサを、隣接する前記副気室部材の間で前記ウェル部外周面上に固定して、前記副気室部材のリム幅方向の断面をホイール全周に亘って連続させ、前記被覆部材で前記副気室部材と前記スペーサとを外側から被覆し、前記被覆部材をリム幅方向における前記副気室部材及び前記スペーサの両側で前記リム外周面に固定したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用ホイール。
- 前記スペーサの前記被覆部材側の面に凹みを形成する共に、この凹みに合わせて前記被覆部材に開口を形成し、前記副気室部材から突出して前記副気室部材の内部とタイヤ空気室とを連通する連通部をこの凹みに配置したことを特徴とする請求項5に記載の車両用ホイール。
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