JP7045885B2 - 車両用ホイール - Google Patents
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Description
このヘルムホルツレゾネータは、ウェル部の外周面に向けて押し付けられるとその両縁部が弾性変形することで周溝に容易に嵌り込む。そのため、このようなヘルムホルツレゾネータによれば、ホイールに対する取り付けを容易に行うことができる。
しかしながら、ウェル部の外周面に取り付けられたヘルムホルツレゾネータには、車両走行時のタイヤの高速回転によって極めて大きな遠心力が生じる。そのため、ウェル部の外周面にその底面が接着剤で拘束されたヘルムホルツレゾネータは、この遠心力によってホイール径方向の外側に膨らんで副気室容積が増加する。つまり、この車両用ホイールは、車両走行時に副気室容積が変動することによって設計上のヘルムホルツレゾネータの共鳴周波数が変化するという新たな課題が生じる。
また、本発明の車両用ホイールは、ウェル部の外周面に接合されたヘルムホルツレゾネータの底部と、この底部にヘルムホルツレゾネータの副気室を介して対向するヘルムホルツレゾネータの上部とがブリッジで連結されていることを特徴とする。
以下では、まず車両用ホイールの全体構成について説明した後に、ヘルムホルツレゾネータとしての副気室部材と、接着剤によるリムへの副気室部材の取付構造と、について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ホイール1の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両用ホイール1は、例えばアルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属製のリム11に、例えばポリアミド樹脂などの合成樹脂製の副気室部材10(ヘルムホルツレゾネータ)が取り付けられて構成されている。
図1中、符号12は、リム11を図示しないハブに連結するためのディスクである。
ちなみに、ホイール幅方向Yの一側(内側)に形成される縦壁15aは、ウェル部11cの外周面11dからリムフランジ側への立ち上り部17に形成されたものを想定している。また、縦壁15bは、外周面11dのホイール幅方向Yの中程でホイール周方向Xに延びる周壁19にて構成されるものを想定している。なお、以下の説明において、これらの縦壁15aと縦壁15bとを特に区別しない場合には、単に縦壁15と称することがある。
次に、副気室部材10について説明する。
図2は、副気室部材10の全体斜視図である。図3は、図1のIII-III断面図である。
図2に示すように、副気室部材10は、一方向に長い部材であって、本体部13と、管体18と、を備えている。このような副気室部材10は、本体部13の中央でホイール幅方向Yに延びる仕切り壁16を境に、ホイール周方向Xに対称形状となるように構成されている。
本体部13は、内側が中空になっている。この中空部(図示省略)は、後記の副気室SC(図3参照)を形成している。この中空部は、仕切り壁16によってホイール周方向Xに二分されている。
具体的には、本体部13は、ウェル部11cの外周面11dに沿って配置される底部25b(底板)と、一対の縦壁15の側面14のそれぞれに沿って配置される側部25c(側板)と、底部25bに対向するように配置される上部25a(上板)と、が略矩形を形成するように相互に接続された構成となっている。
そして、本実施形態での外周面11dからの本体部13の高さ(ホイール径方向Zの高さ)は、縦壁15の高さに一致している。
このような上部25aと底部25bと側部25cとは、本体部13の内側に副気室SCを囲繞形成している。
図1に示すように、管体18は、本体部13におけるホイール幅方向Yの一側(車両用ホイール1の内側)に偏位した位置で、本体部13からホイール周方向Xに突出するように形成されている。
また、連通孔18aは、管体18の内側から本体部13内までさらに延びている。本体部13内で延びる連通孔18aは、本体部13の中空部が隔壁62で部分的に仕切られることで形成されている。ちなみに、本実施形態での隔壁62は、上部25a側から底部25b側に向かって窪んで形成された凹部60と、底部25b側から上部25a側に向かって窪んで形成された凹部64とによって形成されている。
このような連通孔18aは、本体部13の内側に形成される副気室SC(図3参照)と、ウェル部11c(図3参照)上でタイヤ(図示省略)との間に形成されるタイヤ空気室9(図3参照)と、を連通させている。
次に、リム11(図1参照)に対する副気室部材10(図1参照)の取付構造について説明する。
図3に示すように、副気室部材10の本体部13は、底部25bとウェル部11cの外周面11dとが接着剤21で接続され、側部25cと縦壁15の側面14とが接着剤21で接続されている。
ちなみに、このような接着剤21の硬化形態としては、特に制限はないが、中でも化学反応型のものが好ましい。
接着剤21の塗布法としては、例えばバーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ホットメルト法などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
図3に示すように、副気室部材10とリム11との間に付与される接着剤21は、ウェル部11cの外周面11dから縦壁15の側面14に掛けて連続的な膜を形成している。この膜は、本体部13とウェル部11cとの間に形成される前記のクリアランスの全てを埋めている。
図4に示すように、縦壁15の側面14における接着剤21の膜厚T1は、ウェル部11cの外周面11dにおける接着剤21の膜厚T2よりも薄くなっている。
このように接着剤21の膜厚T1,T2を制御することによって、リム11に対する副気室部材10の固着力が飛躍的に高められる。
これに対して、接着剤21は、薄いほうがせん断に強く、厚いほうが剥離に強い。つまり、本実施形態の車両用ホイール1は、「膜厚T1<膜厚T2」となることで側面14の接着剤21の「せん断強度」と、外周面11dの接着剤21の「剥離強度」との両方が高められる。これによりリム11に対する副気室部材10の固着力が飛躍的に高められる。
また、剥離強度[N/mm]は、膜厚が0[μm]から厚くなるにつれて徐々に増加した後に飽和点(膜厚T2参照)を迎える。つまり、剥離強度[N/mm]は、飽和点(膜厚T2参照)で最大となる。
したがって、本実施形態での副気室部材10(図3参照)は、縦壁15(図3参照)の接着剤21(図3参照)の膜厚を図5に示すT1とし、外周面11d(図3参照)における接着剤21の膜厚を図5に示すT2とすることによって、リム11に対する副気室部材10の固着力が最大となる。
また、特に、遠心力F(図3参照)が働いた際に、せん断力が生じる接着剤21の付与面がレーザ食刻面で形成されたものがさらに好ましい。つまり、図3に示す縦壁15の側面14及び/又は本体部13の側部25cがレーザ食刻面で形成されたものがさらに好ましい。
図6に示すように、縦壁15の側面14は、レーザ食刻面22で形成されている。
このレーザ食刻面22は、食刻溝22aと、畝部22bとで構成されている。
本実施形態での食刻溝22aは、例えばYAGレーザを側面14上で一方向に走査させた際に側面14に形成されたものであり、所定の溝深さで図6の紙面表側から裏側に向けて延びたものを想定している。
また、本実施形態での畝部22bは、食刻溝22aの幅方向両側のそれぞれで、所定高さの盛り上がりで形成され、食刻溝22aの延在方向に沿って延びている。
なお、本実施形態での食刻溝22a及び畝部22bの延在方向は、ホイール周方向Xに設定されたものを想定しているがこれに限定されるものではない。
これによりレーザ食刻面22には、食刻溝22a内に深く入り込む接着剤21と、オーバハング部やアーチに係止される接着剤21とによって、接着剤21のアンカ構造が構築される。
したがって、リム11に対する副気室部材10の固着力がより一層強固となる。
なお、このようなレーザ食刻面22は、前記のように、本体部13の側部25cにも形成できることは言うまでもない。
図7に示すように、本体部13の上部25aと側部25cとの接合部には、R部13aが形成されている。また、縦壁15の上部にもR部23が形成されている。
そして、縦壁15と側部25cとの間に配置される接着剤21の上部は、R部13aとR部23の上方に広がって、これらR部13a,23を上方から覆っている。
このR部13a,23の上方を覆う接着剤21によって、リム11に対する副気室部材10の固着力がより一層高められる。
次に、本実施形態の車両用ホイール1の奏する作用効果について説明する。
本実施形態の車両用ホイール1は、副気室部材10が接着剤21によってリム11に取り付けられている。
このような車両用ホイール1によれば、従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)と異なってリム11に副気室部材10を取り付けるための周溝を切削加工する必要がない。したがって、この車両用ホイール1によれば、製造工程が簡素化されて従来よりも製造コストを一段と削減することができる。
つまり、車両用ホイール1は、縦壁15の側面14における接着剤21の膜厚T1が、外周面11dにおける接着剤21の膜厚T2よりも小さくなっていることで、リム11に対する副気室部材10の固着力を飛躍的に高めることができる。
このような車両用ホイール1は、接着剤21のレーザ食刻面22によるアンカ効果、及び金属固体部の表面自由エネルギー構造に伴うぬれ性の向上効果(Youngの接触角の式参照)によって、リム11に対する副気室部材10の固着力を一段と向上させることができる。
前記実施形態では、合成樹脂のみからなる副気室部材10(図3参照)を想定している。しかしながら、副気室部材10は、2種以上の異種材料で構成することもできる。
図8に示すように、副気室部材10の本体部13は、ウェル部11cの外周面11dと、縦壁15の側面14との対向面に、接着用平滑部材としての金属プレート24を有している。
この金属プレート24は、外周面11dとの対向面が、接着剤21に対する接着用の平坦面を有している。この平坦面としては、金属プレート24の表面が、例えば電解研磨、バフ研磨などによって1μm以下の平面度に加工されたものを想定している。
また、金属プレート24の側面14との対向面は、前記の平坦化処理された後にさらにレーザ食刻が施されたもの(レーザ食刻面22(図6参照))を想定している。
このような副気室部材10は、金属プレート24を予め金型内に配置したインサート成形で得ることができる。
また、この車両用ホイール1によれば、金属プレート24の補強効果によって、副気室部材10の本体部13の剛性をさらに高めることができる。
また、この車両用ホイール1は、金属プレート24の側面14との対向面がレーザ食刻面22で形成されているので、リム11に対する副気室部材10の固着力がより一層強固となる。
なお、上側結合部33aは、上部25aが底部25b側に向かって部分的に窪むように形成されたものである。また、下側結合部33bは、底部25bが上部25a側に向かって部分的に窪むように形成されたものである。
このようなブリッジ33は、略円柱状を呈しており、上部25aと底部25bとを部分的に連結している。
これにより上部25aは、副気室部材10に遠心力Fが働いた場合でも、遠心方向へ膨出するのをより確実に抑制することができる。
したがって、この図10に示す副気室部材10によれば、より確実に副気室SCの容積変化を防止することができる。つまり、この副気室部材10を備える車両用ホイール1(図1参照)によれば、副気室部材10における設計上の適正な共鳴周波数をより確実に維持することができる。
そして、ブリッジ33は、図12に示すように、上側結合部33aと、下側結合部33bとが、上部25aと底部25bとの間の略中央の位置で接合されて形成されている。
このようなブリッジ33は、第2変形例に係る副気室部材10(図10参照)と同様に、略円柱状を呈しており、上部25aと底部25bとを部分的に連結している。
これにより、第3変形例に係る副気室部材10(図12参照)を有する車両用ホイール1(図1参照)は、リム11に対する副気室部材10の保持性能がより向上する。また、この車両用ホイール1は、リム11に対する副気室部材10の保持性能がより向上することによって、使用する接着剤21の種類の選定幅を一段と拡大することができる。
10 副気室部材(ヘルムホルツレゾネータ)
11 リム
11c ウェル部
11d ウェル部の外周面
13 副気室部材の本体部
14 縦壁の側面
15 縦壁
15a 縦壁
15b 縦壁
18 管体
18a 連通孔
21 接着剤
22 レーザ食刻面
24 金属プレート(接着用平滑部材)
25a 本体部の上部(上板)
25b 本体部の底部(底板)
25c 本体部の側部(側板)
33 ブリッジ
33a 上側結合部
33b 下側結合部
SC 副気室
T1 接着剤の膜厚
T2 接着剤の膜厚
X ホイール周方向(周方向)
Claims (4)
- ウェル部の外周面上で周方向に延びるように立設された縦壁と、
前記縦壁の側面と前記ウェル部の外周面とに接着剤を介して接続されたヘルムホルツレゾネータと、を備え、
前記縦壁の側面における前記接着剤の膜厚は、前記ウェル部の外周面における前記接着剤の膜厚よりも薄いことを特徴とする車両用ホイール。 - 前記ヘルムホルツレゾネータは、前記ウェル部の外周面側に配置される底部と、前記底部との間で副気室を形成する上部と、前記底部と前記上部とを連結するブリッジと、を有し、
前記ブリッジは、前記周方向に1列並ぶように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。 - 前記接着剤の付与面は、レーザ食刻面で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。
- 前記ヘルムホルツレゾネータの前記ウェル部の外周面側には、接着用平滑部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。
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