JP6235376B2 - 建物の損傷評価システム及び損傷評価方法 - Google Patents

建物の損傷評価システム及び損傷評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、建物の損傷評価システム及び損傷評価方法に関し、詳しくは、建物の加速度情報を入力することで建物全体の損傷状況を評価するシステム及び損傷評価方法に関する。
従来、診断対象となる建物の変位や加速度情報を計測し、その計測結果から振動特性を推定することで、建物の損傷状況を把握しようとする技術(所謂、構造ヘルスモニタリング技術)が提案されている。
例えば、特許文献1や特許文献2には、診断対象となる建物に変位計を設置し、その建物の変形量を計測することで、建物の各部位の損傷を評価する技術が記載されている。
また、特許文献3には、診断対象となる建物に加速度計等の振動計を設置し、診断対象となる建物の振動を計測することで該建物の固有振動数を計測し、経年的な固有振動数の低下率に基づいて損傷状況を推定する技術が記載されている。
特開2012−83172号公報 特開2010−78370号公報 特開2004−27762号公報
特許文献1や特許文献2に記載されているような、建物に変形計を設置して損傷評価を行う技術においては、損傷度に大きく影響する変形量を、直接的に計測することができるという利点がある。しかし、この技術には、計測システム全体が高価になるという問題や、設置スペースの確保が容易でないという問題がある。
例えば、非接触型のレーザー変位計を建物に設置する場合には、光源の寿命が十分でなく、光源やターゲットに埃がたまることから、長期に亘る計測のためには頻繁なメンテナンスが必要となり、システム全体が高価になる。また、レーザーを通過させるための場所を建物内に確保する必要があり、建築計画的に不可能あるいは好ましくない場合が生じる。
差動トランス型等の接触型の変位計を建物に設置する場合には、層間変形を計測するための治具が必要になる等、建築計画的に不可能あるいは好ましくない場合が生じる。
一方、特許文献3に記載されているような、建物に加速度計等の振動計を設置して損傷評価を行う技術においては、計測システム全体を安価に構成しやすいという利点や、設置スペースの確保が比較的容易であるという利点がある。
しかし、特許文献3に記載の技術では、損傷状況の推定に用いる情報が、建物全体での固有振動数の低下率のみである。この技術は、固有振動数の低下を招いた原因が、どの層の剛性がどの程度低下したことに依るのかを特定する手段を含んでおらず、この技術で建物各層の経験変形角を合理的に推定することは困難と考えられる。
また、特許文献3に記載の技術は、複数の標準仕様壁を設定し、各標準仕様壁に対して、計測によって壁固有振動数低下率と経験変形角との関連付けを行い、建物固有振動数低下率と壁固有振動数低下率を照合することで、建物の経験変形角を推定する技術であって、実際の建物には多様な壁仕様が併存配置される可能性が高いことから、やはり、この技術で経験変形角を合理的に推定することは困難と考えられる。
また、特許文献3には、建物の初期固有振動数を推定する技術も記載されている。この技術では、標準仕様壁に対して、微小変形レベルでの振動を計測することによって微動剛性を算出し、各壁の微動剛性を総和する。しかし、実際の建物では、計測状況によって振動レベルは変化し、同一の壁仕様や経験変形角であっても、振動レベルが変化すれば固有振動数の低下率等が変化すると考えられる。そのため、引用文献3に記載の技術は、振動レベルの変化に対応するように妥当なパラメーター設定が行われたものとは言い難い。
以上のように、建物に変位計を設置して損傷評価を行う従来の技術では、変形量を直接的に計測することは可能であるが、計測システム全体が高価になるという課題や、設置スペースの確保が困難になるという課題がある。
一方、建物に加速度計等の振動計を設置して損傷評価を行う従来の技術によれば、これらの課題は解決されるが、建物各層の経験変形角を合理的に推定することが困難であり、また、多様な壁仕様が併存配置される建物に対応して経験変形角を合理的に推定することが困難であるから、実際の建物に対応して合理的に損傷状況を推定することが困難であるという課題や、実際の振動レベルの変化に対応して合理的に損傷状況を推定することが困難であるという課題を有していた。
本発明は前記課題を解決する発明であって、建物に加速度計等の振動計を設置した低コストのシステムで、実際の建物の多様な壁仕様に対応し、且つ、実際の建物に生じる多様な振動レベルにも対応して、建物各層の経験変形角を合理的に推定し、建物各層の損傷状況を合理的に推定することを、目的とする。
前記課題を解決するために、本発明を、下記構成を具備する建物の損傷評価システムとする。
本発明の建物の損傷評価システムは、振動計と、設計情報記憶手段と、要素情報記憶手段と、逆解析手段と、層剛性推定手段と、最大経験変形角推定手段と、損傷評価手段とを具備する。振動計は、外乱に対する建物の加速度情報を計測する。
設計情報記憶手段は、建物の各層の構造要素、非構造要素の情報と、各階の質量の情報を記憶する。要素情報記憶手段は、構造要素と非構造要素について、最大経験変形角REmaxとこれを経験した後の振動レベルULと残存剛性KSの関係であるREmax−UL−KS関係を、それぞれ記憶する。逆解析手段は、振動計で計測した加速度情報と設計情報記憶手段に記憶した情報に基づいて逆解析を行い、各層の同定剛性を同定する。層剛性推定手段は、設計情報記憶手段と要素情報記憶手段に記憶した情報に基づいて、構造要素と非構造要素の残存剛性KSの総和である層剛性ΣKSを算出し、各層での最大経験変形角REmaxと振動レベルULと層剛性ΣKSの関係であるREmax−UL−ΣKS関係を定義する。最大経験変形角推定手段は、建物の各層について、振動計で計測した加速度情報から推定される振動レベルULと、逆解析手段で同定した同定剛性と、層剛性推定手段で定義したREmax−UL−ΣKS関係とに基づき、同定剛性を層剛性ΣKSとして入力することで、最大経験変形角REmaxを推定する。損傷評価手段は、最大経験変形角推定手段で推定した各層の最大経験変形角REmaxに基づいて建物全体の損傷状況を評価する。
本発明の建物の損傷評価システムにおいて、要素情報記憶手段は、REmax−UL−KS関係に加えて、最大経験変形角REmaxと損傷状況の関係であるREmax−損傷関係を記憶し、損傷評価手段は、最大経験変形角推定手段で推定した各層の最大経験変形角REmaxと、要素情報記憶手段に記憶したREmax−損傷関係とに基づいて、建物全体の損傷状況を評価することが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価システムにおいては、振動計で計測した加速度情報から振動レベルULを推定する振動レベル推定手段を、更に具備し、逆解析手段は、各層の同定剛性に加えて、建物の動的特性を同定し、振動レベル推定手段は、逆解析手段で同定した各層の同定剛性と、建物の動的特性に含まれる減衰係数と、設計情報記憶手段に記憶した各階の質量の情報とに基づいて、建物の線形振動モデルを構築し、振動計で計測した加速度情報を入力することで、振動レベルULを定義することが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価システムは、建物の建築初期において、残存剛性KSに初期補正係数を乗じることでREmax−UL−KS関係を再設定する初期補正手段を、更に具備することが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価システムは、複数の建物で用いた初期補正係数を記憶する補正情報記憶手段を、更に具備し、補正情報記憶手段には、類似する建物同士を同一のグループに分類し、グループごとに初期補正係数を整理して記憶することが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価システムは、建物の経年期において、建物の剛性が低下した場合に、残存剛性KSに経年補正係数を乗じ、REmax−UL−KS関係を再設定する経年補正手段を、更に具備することが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価システムは、複数の建物で用いた経年補正係数を記憶する補正情報記憶手段を、更に具備し、補正情報記憶手段には、類似する建物同士を同一のグループに分類し、グループごとに経年補正係数を整理して記憶することが好ましい。
前記課題を解決するために、本発明を、下記構成を具備する建物の損傷評価方法とする。
本発明の建物の損傷評価方法は、建物の各層の構造要素、非構造要素の情報と、各階の質量の情報を含む設計情報と、最大経験変形角REmaxとこれを経験した後の振動レベルULと残存剛性KSの関係であるREmax−UL−KS関係とを、それぞれ記憶しておき、建物で計測した加速度情報と設計情報に基づいて逆解析を行うことで、各層の同定剛性を同定し、設計情報とREmax−UL−KS関係とに基づいて、構造要素と非構造要素の残存剛性KSの総和である層剛性ΣKSを算出し、各層での最大経験変形角REmaxと振動レベルULと層剛性ΣKSの関係であるREmax−UL−ΣKS関係を定義し、建物の各層について、計測した加速度情報から定義される振動レベルULと、逆解析で同定した同定剛性と、定義したREmax−UL−ΣKS関係とに基づき、同定剛性を層剛性ΣKSとして入力することで、最大経験変形角REmaxを推定し、推定した各層の最大経験変形角REmaxに基づいて、建物全体の損傷状況を評価する。
本発明の建物の損傷評価方法においては、構造要素と非構造要素についての最大経験変形角REmaxと損傷状況の関係であるREmax−損傷関係を、更に記憶しておき、推定した各層の最大経験変形角REmaxと、記憶しているREmax−損傷関係とに基づいて、建物全体の損傷状況を評価することが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価方法においては、逆解析によって、各層の同定剛性に加えて、建物の動的特性を同定し、振動レベルULの定義は、逆解析で同定した各層の同定剛性と、建物の動的特性に含まれる減衰係数と、記憶した各階の質量の情報とに基づいて、建物の線形振動モデルを構築し、計測した加速度情報を入力することで行なうことが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価方法は、建物の建築初期において、残存剛性KSに初期補正係数を乗じることでREmax−UL−ΣKS関係を再設定することが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価方法においては、類似する建物同士を同一のグループに分類し、グループごとに初期補正係数を整理してデーターベースに記憶させることが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価方法は、建物の経年期において、建物の剛性が低下した場合に、残存剛性KSに経年補正係数を乗じ、REmax−UL−ΣKS関係を再設定することが好ましい。
また、本発明の建物の損傷評価方法においては、類似する建物同士を同一のグループに分類し、グループごとに経年補正係数を整理してデーターベースに記憶させることが好ましい。
本発明は、建物に加速度計等の振動計を設置した低コストのシステムで、実際の建物の多様な壁仕様と、実際の振動レベルに対応して、建物各層の損傷状況を合理的に推定することができるという効果を奏する。
本発明の第1実施形態の建物の損傷評価システムを概略的に示す構成図である。 本発明の第1実施形態の建物の損傷評価システムが備える設計情報記憶手段を更に具体化して示す構成図である。 本発明の第1実施形態の建物の損傷評価システムが備える振動レベル推定手段で構築する線形振動モデルを示すモデル図である。 本発明の第1実施形態の建物の損傷評価システムが備える振動レベル推定手段で算出する層間変形角の時刻歴を示すグラフ図である。 本発明の第2実施形態の建物の損傷評価システムの要部を概略的に示す構成図である。 本発明の第3実施形態の建物の損傷評価システムの要部を概略的に示す構成図である。 本発明の第4実施形態の建物の損傷評価システムの要部を概略的に示す構成図である。
本発明を、以下の第1乃至第4実施形態に基づいて説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態の建物の損傷評価システム(以下、単に「損傷評価システム」という。)や、これを用いた損傷評価方法について、図1−図4に基づいて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態の損傷評価システム100を示している。損傷評価システム100は、建物200の加速度情報に基づいて、建物200の損傷を診断するシステムである。
損傷評価システム100は、建物200の加速度情報を得るための手段として、建物200に設置される複数の振動計101,101,…と、複数の振動計101,101,…で計測した加速度情報が無線で伝達されるルーター102とを備える。ルーター102は、インターネット接続される。
各振動計101は、建物200の水平方向(XY方向)の加速度情報を得ることのできる計器類であればよく、例えば、振動計101として加速度計を用いて加速度情報を得ることや、振動計101として速度計を用い、計測した速度波形を微分することで加速度情報を得ることが可能である。また、ルーター102と各振動計101を無線接続するのではなく、有線で接続することも可能である。
本実施形態において、地表面300上に建築された建物200は二階建てであり、第一層201と第二層202を有し、その上に屋根を有する。振動計101は、建物200の各層201,202の加速度情報を得るためのものであり、本実施形態では、建物200が有する各層201,202の構面の重心部分に設置される。ここでの各層201,202の構面は、図示の1FL211、2FL212及びRFL213である。
1FL211は、建物200の第一層201が設置される基礎上面又は一階床構面である。2FL212は、第二層202の下面を構成する二階床構面である。RFL213は、第二層202の上面を構成する屋根構面である。
各振動計101で計測した加速度情報は、ルーター102及びインターネットを介して、損傷評価システム100のサーバー103に転送される。加速度情報の転送は、定期的に行ってもよいし、地震等の被災直後に行ってもよい。
損傷評価システム100が備えるサーバー103は、以下に詳述するように、各種のデーターベース(以下「DB」と略す。)や演算装置を有し、各振動計101から転送された加速度情報と、各DBに記憶された情報に基づいて、建物200の損傷状況を評価する。
サーバー103は、建物200の設計情報を記憶する設計情報記憶手段104と、建物200が有する各要素の情報を記憶する要素情報記憶手段105とを備える。
設計情報記憶手段104は、各階の質量の情報を記憶するとともに、建物200の各層201,202に配置される構造要素、非構造要素の種類及び数を記憶する。
ここで記憶する各階の質量は、2FL212を基準とした質量と、RFL213を基準とした質量である。各階の質量は、当該構面212,213とその上下層の高さ1/2ずつの領域の質量の総和を基本として設定する。
図2に示すように、本実施形態では設計情報記憶手段104を、構造設計DBから成る構造設計記憶手段104aと、仕様・図面DBから成る仕様・図面記憶手段104bと、リフォーム履歴DBから成るリフォーム履歴記憶手段104cとで、構成している。
構造設計記憶手段104aは、各階の質量の情報を記憶する。仕様・図面記憶手段104bは、建物200の各層201,202に配置される構造要素、非構造要素の種類及び数を、CAD情報で記憶する。リフォーム履歴記憶手段104cは、建物200のリフォーム履歴を記憶する。このリフォーム履歴を用いて、構造設計記憶手段104aや仕様・図面記憶手段104bに記憶する情報を適宜更新することができる。
要素情報記憶手段105は、建物200に配置される各種の構造要素と非構造要素について、静的又は動的な加力実験によって予め定量化したREmax−UL−KS関係と、REmax−損傷関係を、それぞれ記憶する
REmax−UL−KS関係は、各要素の最大経験変形角REmaxと振動レベルULと残存剛性KSの関係である。最大経験変形角REmaxは、各要素に生じた最大の水平変形角である。振動レベルULは、最大経験変形角REmaxを経験した後に当該要素に生じる水平変形角である。残存剛性KSは、振動レベルULだけ変形したときの当該要素の水平割線剛性である。
REmax−損傷関係は、各要素に生じた最大経験変形角REmaxと、当該要素の損傷状況の関係である。
図1に示すように、損傷評価システム100が備えるサーバー103は、計測値記憶手段106を備える。計測値記憶手段106は、ルーター102から転送された加速度情報を記憶する計測値DBから成る。
損傷評価システム100が備えるサーバー103は、更に、逆解析手段107、層剛性推定手段108、振動レベル推定手段109、最大経験変形角推定手段110、損傷評価手段111及び評価履歴記憶手段112を備える。以下、各手段について順に述べる。
(逆解析手段)
逆解析手段107は、結果から原因を解析する逆解析(システム同定)の手法を用いて、加速度情報と設計情報に基づいて、建物200の各層201,202の水平剛性を同定し、更に、建物200の各次振動数、振動モード形及び減衰定数を同定する手段である。
逆解析手段107に入力される加速度情報は、建物200の各構面211,212,213に生じた加速度の情報であり、計測値記憶手段106から逆解析手段107に入力される。逆解析手段107に入力される設計情報は、建物200の各階の質量の情報であり、設計情報記憶手段104(構造設計記憶手段104a)から逆解析手段107に入力される。
以下においては、逆解析手段107で同定される水平剛性を「同定剛性」といい、逆解析手段107で同定される建物200の各次振動数、振動モード形及び減衰定数を、まとめて建物200の「動的特性」という。
(層剛性推定手段)
層剛性推定手段108は、設計情報記憶手段104と要素情報記憶手段105に記憶している情報に基づいて、各層201,202での最大経験変形角REmaxと振動レベルULと層剛性ΣKSの関係であるREmax−UL−ΣKS関係を定義する
具体的には、設計情報記憶手段104に記憶している情報、即ち各層201,202に配置された構造要素、非構造要素の種類及び数の情報と、要素情報記憶手段105に記憶している情報、即ち各要素のREmax−UL−KS関係の情報とに基づいて、各層201,202の構造要素と非構造要素の残存剛性KSの総和である層剛性ΣKSを算出し、各層201,202での最大経験変形角REmaxと振動レベルULと層剛性ΣKSの関係であるREmax−UL−ΣKS関係を定義する
(振動レベル推定手段)
振動レベル推定手段109は、建物200の各層201,202で計測される加速度情報に基づいて、各層201,202の振動レベルULを推定する手段である。
具体的には、以下のようにして振動レベルULを推定する。
振動レベル推定手段109は、まず、逆解析手段107で同定した各層201,202の同定剛性と、同じく逆解析手段107で同定した建物200の動的特性に含まれる減衰定数と、設計情報記憶手段104(構造設計記憶手段104a)に記憶した各階の質量の情報とに基づいて、建物200の線形振動モデル200aを構築する。
図3には、ここで構築する線形振動モデル200aを概略的に示す。図中においては、地表面300上に建築された建物200の2FL212を基準とした質量をm2FL、第一層201の同定剛性をKS1、減衰係数をC1で示し、RFL213を基準とした質量をmRFL、第二層202の同定剛性をKS2、減衰係数をC2で示している。
振動レベル推定手段109では、建物200の1FL211に設置された振動計101の計測結果から、地表面300の加速度波形を得て、この加速度波形を入力データとして与えることで、各層201,202の層間変形角を、時刻歴応答解析等の方法で算出する。図4には、算出される層間変形角の時刻歴の一例(いずれかの層の、いずれかの方向での時刻歴)を示している。図中においては、最大層間変形角の平均を両矢印で示している。このようにして算出された最大層間変形角の平均値に基づいて、振動レベルULを定義すればよい。
(最大変形角推定手段)
最大変形角推定手段110は、建物200の各層201,202について、振動レベル推定手段109で推定した振動レベルULと、逆解析手段107で同定した同定剛性と、層剛性推定手段108で定義したREmax−UL−ΣKS関係とに基づいて、最大経験変形角REmaxを推定する。
即ち、最大変形角推定手段110では、各層201,202において、パラメーターが三つの関係であるREmax−UL−ΣKS関係に対して、推定された振動レベルULを入力し、且つ、逆解析によって同定された同定剛性を層剛性ΣKSとして入力することで、各層201,202の最大経験変形角REmaxを推定する。
(損傷評価手段)
損傷評価手段111は、最大変形角推定手段110で推定した各層201,202の最大経験変形角REmaxと、要素情報記憶手段105に記憶しているREmax−損傷関係とに基づいて、建物200全体の損傷状況を評価する。
即ち、損傷評価手段111では、建物200の損傷状況が最大経験変形角REmaxに大きく依存するという関係に基づいて、予め実験で定量化及びデーターベース化しておいた各要素のREmax−損傷関係に対して、最大変形角推定手段110で推定した各層201,202の最大経験変形角REmaxを入力することで、建物200の各層201,202に配置された各要素の損傷状況を推定し、その推定結果に基づいて最終的に建物200全体の損傷状況を評価する。
本実施形態の損傷評価システム100は、上述の各手段を備えるシステムであるから、建物200の遠隔地にあるサーバー103に対して、インターネット経由で加速度情報を入力データとして与えれば、サーバー103において建物200全体の損傷状況を評価することができる。
損傷評価手段111で評価された建物200全体の損傷状況は、サーバー103が備える評価履歴記憶手段112に記憶させておく。そして、外部のPC(パーソナルコンピューター)400に向けて、評価履歴DBから成る評価履歴記憶手段112から、記憶している評価履歴のデータを定期的に又は被災直後に転送する。外部のPC400は、カスタマー用のPCや、社内PC等である。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の損傷評価システムや、これを用いた損傷評価方法について、図5に基づいて説明する。
なお、第1実施形態の損傷評価システムや損傷評価方法と同様の構成については説明を省略し、以下においては、第2実施形態の特有の構成について詳述する。
図5には、第2実施形態の損傷評価システム100の要部を示している。本実施形態の損傷評価システム100のサーバー103は、建物200の建築初期において残存剛性KSに初期補正係数αを乗じることでREmax−UL−KS関係を再設定する初期補正手段120を、更に具備する。
初期補正手段120は、建物200の建築初期状態において、記憶されていたREmax−UL−KS関係が不適当である場合にこれを補正する手段である。
具体的には、建築初期状態において、逆解析手段107で同定した各層201,202の同定剛性と、最大経験変形角REmax=0として推定した各層201,202の層剛性ΣKSとを比較する。両者間の差異が所定値未満である場合には、補正を行わない。
これに対して、両者間の差異が所定値以上である場合には、同定剛性(REmax=0)と層剛性ΣKSが同一又は略同一となるように、要素情報記憶手段105に格納される各要素の残存剛性KSに対して、初期補正係数αを乗じ、REmax−UL−KS関係を再設定する。
初期補正係数αは、各要素の残存剛性KSに一律に乗じることが好ましいが、要素ごとに異なる値の初期補正係数αを乗じることも可能である。
また、要素情報記憶手段105に格納される各要素が、構造要素と非構造要素を共に含む場合(軽量鉄骨軸組構造であるような場合)には、構造要素の剛性が非構造要素に比べて安定していることから、非構造要素の残存剛性KSにだけ初期補正係数αを乗じることも好ましい。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態の損傷評価システムや、これを用いた損傷評価方法について、図6に基づいて説明する。
なお、第1実施形態の損傷評価システムや損傷評価方法と同様の構成については説明を省略し、以下においては、第3実施形態の特有の構成について詳述する。
図6には、第3実施形態の損傷評価システム100の要部を示している。本実施形態の損傷評価システム100のサーバー103は、建物200の経年期においてREmax−UL−KS関係を再設定する経年補正手段130を、更に具備する。
経年補正手段130は、建築から年月を経ることで建物200の剛性が低下した結果、記憶されたREmax−UL−KS関係が不適当となった場合に、これを補正する手段である。
経年補正手段130では、経年状態において所定期間をあけながら複数回にわたって、逆解析手段107により同定した各層201,202の同定剛性を得る。その結果、同定剛性の低下が確認された場合には、要素情報記憶手段105に格納される各要素の残存剛性KSに対して経年補正係数βを乗じることで、REmax−UL−KS関係を再設定する。
より具体的には、今回同定した同定剛性と、前回推定した最大経験変形角REmax(以下、「最大経験変形角REmax0」という。)と今回推定した振動レベルULとをREmax−UL−ΣKS関係に入力して得られる層剛性ΣKSとを、対比する。当該対比の結果、両者間の差異が所定値以上である場合には、両者が同一又は略同一となるように、各要素の残存剛性KSに経年補正係数βを乗じる。
換言すると、経年補正手段130は、各要素の残存剛性KSに経年補正係数βを乗じることでREmax−UL−KS関係を再設定し、これにより、前回の最大経験変形角REmax0と今回の振動レベルULとをREmax−UL−ΣKS関係に入力して得られる層剛性ΣKSが、今回の同定剛性と同一又は略一致となるように補正する。
経年補正係数βは、各要素の残存剛性KSに一律に乗じることが好ましいが、要素ごとに異なる値の経年補正係数βを乗じることも可能である。
また、要素情報記憶手段105に格納される各要素が、構造要素と非構造要素を共に含む場合(軽量鉄骨軸組構造であるような場合)には、非構造要素の残存剛性KSにだけ経年補正係数βを乗じることも好ましい。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態の損傷評価システムや、これを用いた損傷評価方法について、図7に基づいて説明する。
なお、第1乃至第3実施形態の損傷評価システムや損傷評価方法と同様の構成については説明を省略し、以下においては、第4実施形態の特有の構成について詳述する。
図7には、第3実施形態の損傷評価システム100の要部を示している。本実施形態の損傷評価システム100は、第2実施形態と同様の初期補正手段120と、第3実施形態と同様の経年補正手段130とを備え、更に、補正情報DBから成る補正情報記憶手段140を備えている。
本実施形態の損傷評価システム100では、複数の建物200,200…においてREmax−UL−KS関係を再設定するために用いた初期補正係数αと経年補正係数βを、補正情報記憶手段140に順次記憶させていく。
複数の建物200,200…は、その構造や環境に基づいてグループ分けする。初期補正係数αと経年補正係数βは、グループごとに体系的に整理し、補正情報記憶手段140に記憶させる。
初期補正係数αについては、例えば、建物200の階数、非構造要素の種類、構造要素と非構造要素の比率、仕様等の構造に基づいてグループ分けを行い、グループごとに初期補正係数αを評価し、当該グループでの平均的な初期補正係数αを設定する。更に、異なるグループ間の初期補正係数αの相関分析を行い、初期補正係数αを定式化することも好ましい。
経年補正係数βについては、例えば、建物200の建築エリア、温湿度環境、経過年数等の環境に基づいてグループ分けを行い、グループごとに経年補正係数βを評価し、当該グループでの平均的な経年補正係数βを設定する。更に、異なるグループ間の経年補正係数βの相関分析を行い、経年補正係数βを定式化することも好ましい。
このように、多数の建物200,200…について初期補正係数αと経年補正係数βを体系的に整理した結果を、補正情報記憶手段140に蓄積させていくことで、既存あるいは今後建築予定の建物を診断する際に、その建物が属する構造や環境のグループに基づいて、適切な初期補正係数αや経年補正係数βを予め注出し、反映させることが可能となる。
以上、添付図面に基づいて説明したように、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価システム100は、振動計101、設計情報記憶手段104、要素情報記憶手段105、逆解析手段107、層剛性推定手段108、最大経験変形角推定手段110及び損傷評価手段111を具備する。
振動計101は、外乱に対する建物200の加速度情報を計測する。
設計情報記憶手段104は、建物200の各層201,202の構造要素、非構造要素と、各階の質量の情報を記憶する。
要素情報記憶手段105は、構造要素と非構造要素について、最大経験変形角REmaxとこれを経験した後の振動レベルULと残存剛性KSの関係であるREmax−UL−KS関係を、それぞれ記憶する。
逆解析手段107は、振動計101で計測した加速度情報と設計情報記憶手段104に記憶した情報に基づいて逆解析を行い、各層201,202の同定剛性を同定する。
層剛性推定手段108は、設計情報記憶手段104と要素情報記憶手段105に記憶した情報に基づいて、構造要素と非構造要素の残存剛性KSの総和である層剛性ΣKSを算出し、各層201,202のREmax−UL−ΣKS関係を定義する。REmax−UL−ΣKS関係は、最大経験変形角REmaxと振動レベルULと層剛性ΣKSの関係である。
最大経験変形角推定手段110は、建物200の各層201,202について、振動計101で計測した加速度情報から推定される振動レベルULと、逆解析手段107で同定した同定剛性と、層剛性推定手段108で定義したREmax−UL−ΣKS関係とに基づいて、最大経験変形角REmaxを推定する。
損傷評価手段111は、最大経験変形角推定手段110で推定した各層201,202の最大経験変形角REmaxに基づいて建物200全体の損傷状況を評価する。
本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価システム100は、前記構成を具備するシステムであるから、建物200に変位計を設置する必要がない。そのため、建物200に振動計101を設置した低コストのシステムで、建物200が実際に備える多様な壁仕様等に対応し、また、実際の振動レベルULにも対応して、各層201,202の損傷状況を合理的に推定し、その結果として建物200全体の合理的な損傷状況の推定を行うことが可能となる。
また、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価システム100において、要素情報記憶手段105は、REmax−UL−KS関係に加えて、最大経験変形角REmaxと損傷状況の関係であるREmax−損傷関係を記憶する。損傷評価手段111は、最大経験変形角推定手段110で推定した各層201,202の最大経験変形角REmaxと、要素情報記憶手段105に記憶したREmax−損傷関係とに基づいて、建物200全体の損傷状況を評価する。
そのため、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価システム100によれば、建物200の各層201,202及び全体の損傷状況を、更に合理的に且つ詳細に推定することが可能となる。
また、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価システム100においては、振動計101で計測した加速度情報から振動レベルULを推定する振動レベル推定手段109を、更に具備する。逆解析手段107は、各層201,202の同定剛性に加えて、建物200の動的特性を同定する。振動レベル推定手段109は、逆解析手段107で同定した各層201,202の同定剛性と、建物200の動的特性に含まれる減衰係数と、設計情報記憶手段104に記憶した各階の質量の情報とに基づいて、建物200の線形振動モデル200aを構築し、振動計101で計測した加速度情報(1FL211に設置した振動計101で計測した加速度)を入力することで、振動レベルULを定義する。
そのため、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価システム100によれば、建物200に振動計101を設置した低コストのシステムで、建物200に実際に加わる多様な振動レベルULにも柔軟に対応して、合理的な損傷状況の推定を行うことが可能となる。
また、本発明の第2及び第4実施形態の損傷評価システム100においては、初期補正手段120を更に具備する。初期補正手段120は、建物200の建築初期において、残存剛性KSに初期補正係数αを乗じることでREmax−UL−KS関係を再設定する。
そのため、本発明の第2及び第4実施形態の損傷評価システム100によれば、建築初期の段階で、REmax−UL−KS関係を実情に即した関係となるように再設定することができ、損傷評価の信頼性を更に高めることが可能となる。
また、本発明の第4実施形態の損傷評価システム100においては、複数の建物200,200…で用いた初期補正係数αを記憶する補正情報記憶手段140を、更に具備する。補正情報記憶手段140には、類似する建物200,200…同士を同一のグループに分類し、グループごとに初期補正係数αを整理して記憶する。
そのため、本発明の第4実施形態の損傷評価システム100によれば、このシステムを多くの建物200,200…で運用し、初期補正係数αのデータを蓄積していくことで、より実情に即した損傷評価が可能となり、損傷評価の精度や信頼性を更に高めることができる。
また、本発明の第3及び第4実施形態の損傷評価システム100においては、経年補正手段130を更に具備する。経年補正手段130は、建物200の経年期において、建物200の剛性が低下した場合に、残存剛性KSに経年補正係数βを乗じ、REmax−UL−KS関係を再設定する。
そのため、本発明の第3及び第4実施形態の損傷評価システム100によれば、建築されてから年数を経た段階で、REmax−UL−KS関係を実情に即した関係となるように再設定することができ、損傷評価の信頼性が更に高まる。
また、本発明の第4実施形態の損傷評価システム100においては、複数の建物200,200…で用いた経年補正係数βを記憶する補正情報記憶手段140を、更に具備する。補正情報記憶手段140には、類似する建物200,200…同士を同一のグループに分類し、グループごとに経年補正係数βを整理して記憶する。
そのため、本発明の第4実施形態の損傷評価システム100によれば、このシステムを多くの建物200,200…で運用し、経年補正係数βのデータを蓄積していくことで、より実情に即した損傷評価が可能となり、損傷評価の精度や信頼性が更に高まる。
また、同じく添付図面に基づいて説明したように、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価方法では、建物200の各層201,202の構造要素、非構造要素の情報と、各階の質量の情報を含む設計情報と、最大経験変形角REmaxとこれを経験した後の振動レベルULと残存剛性KSの関係であるREmax−UL−KS関係とを、それぞれ記憶しておく。
そして、建物200で計測した加速度情報と設計情報に基づいて逆解析を行うことで、各層201,202の同定剛性を同定し、設計情報とREmax−UL−KS関係とに基づいて、構造要素と非構造要素の残存剛性KSの総和である層剛性ΣKSを算出し、各層201,202での最大経験変形角REmaxと振動レベルULと層剛性ΣKSの関係であるREmax−UL−ΣKS関係を定義する。
更に、建物200の各層201,202について、計測した加速度情報から定義される振動レベルULと、逆解析手段で同定した同定剛性と、定義したREmax−UL−ΣKS関係とに基づいて、最大経験変形角REmaxを推定し、推定した各層201,202の最大経験変形角REmaxに基づいて、建物200全体の損傷状況を評価する。
本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価方法は、前記構成を具備する方法であるから、建物200に振動計101を設置した低コストのシステムで、建物200が実際に備える多様な壁仕様等に対応し、また、実際の振動レベルULにも対応して、各層201,202の損傷状況を合理的に推定し、その結果として建物200全体の合理的な損傷状況の推定を行うことが可能となる。
また、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価方法では、構造要素と非構造要素についての最大経験変形角REmaxと損傷状況の関係であるREmax−損傷関係を、更に記憶しておく。そして、推定した各層201,202の最大経験変形角REmaxと、記憶しているREmax−損傷関係とに基づいて、建物全体の損傷状況を評価する。
そのため、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価方法によれば、建物200の各層201,202及び全体の損傷状況を、更に合理的に且つ詳細に推定することが可能となる。
また、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価方法においては、逆解析によって、各層201,202の同定剛性に加えて、建物200の動的特性を同定する。振動レベルULの定義は、逆解析で同定した各層201,202の同定剛性と、建物200の動的特性に含まれる減衰係数と、記憶した各階の質量の情報とに基づいて、建物200の線形振動モデル200aを構築し、計測した加速度情報(1FL211に設置した振動計101で計測した加速度)を入力することで行なう。
そのため、本発明の第1乃至第4実施形態の損傷評価方法によれば、建物200に振動計101を設置した低コストのシステムで、建物200に実際に加わる多様な振動レベルULにも柔軟に対応して、合理的な損傷状況の推定を行うことが可能となる。
また、本発明の第2及び第4実施形態の損傷評価方法においては、建物200の建築初期において、残存剛性KSに初期補正係数αを乗じることでREmax−UL−KS関係を再設定する。
そのため、本発明の第2及び第4実施形態の損傷評価方法によれば、建築初期の段階で、REmax−UL−KS関係を実情に即した関係となるように再設定することができ、損傷評価の信頼性を更に高めることが可能となる。
また、本発明の第4実施形態の損傷評価方法においては、類似する建物200,200…同士を同一のグループに分類し、グループごとに初期補正係数αを整理してデーターベースに記憶させる。
そのため、本発明の第4実施形態の損傷評価方法によれば、この方法を多くの建物200,200…で運用し、初期補正係数αのデータを蓄積していくことで、より実情に即した損傷評価が可能となり、損傷評価の精度や信頼性を更に高めることができる。
また、本発明の第3及び第4実施形態の損傷評価方法においては、建物200の経年期において、建物200の剛性が低下した場合に、残存剛性KSに経年補正係数βを乗じ、REmax−UL−KS関係を再設定する。
そのため、本発明の第3及び第4実施形態の損傷評価方法によれば、建築されてから年数を経た段階で、REmax−UL−KS関係を実情に即した関係となるように再設定することができ、損傷評価の信頼性が更に高まる。
また、本発明の第4実施形態の損傷評価方法においては、類似する建物200,200…同士を同一のグループに分類し、グループごとに経年補正係数βを整理してデーターベースに記憶させる。
そのため、本発明の第4実施形態の損傷評価方法によれば、この方法を多くの建物200,200…で運用し、経年補正係数βのデータを蓄積していくことで、より実情に即した損傷評価が可能となり、損傷評価の精度や信頼性が更に高まる。
なお、本発明は、前記した各実施形態には限定されない。例えば、各実施形態では、建物200の各層201,202の変形を層間の変形角で評価しているが、層間距離が一定の規格に従う場合は、層間の変形量で評価することも可能であり、この場合は、層間変形量で評価することが層間変形角で評価することと等価である。即ち、本発明において層間の変形角での評価を変形量での評価に置き換えた場合も、当然に、本発明の技術的範囲に含まれる。
その他の構成についても、本発明の意図する範囲内であれば、各実施形態において適宜の設計変更を行うことや、各実施形態の構成を適宜組み合わせて適用することが可能であり、いずれの場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
100 建物の損傷評価システム
101 振動計
104 設計情報記憶手段
105 要素情報記憶手段
106 計測値記憶手段
107 逆解析手段
108 層剛性推定手段
109 振動レベル推定手段
110 最大変形角推定手段
111 損傷評価手段
120 初期補正手段
130 経年補正手段
140 補正情報記憶手段
200 建物
201 第一層
202 第二層
203 第三層
211 基礎上面又は一階床構面
212 二階床構面
213 屋根構面

Claims (14)

  1. 外乱に対する建物の加速度情報を計測する振動計と、
    建物の各層の構造要素、非構造要素の情報と、各階の質量の情報を記憶する設計情報記憶手段と、
    構造要素と非構造要素について、最大経験変形角REmaxとこれを経験した後の振動レベルULと残存剛性KSの関係であるREmax−UL−KS関係を、それぞれ記憶する要素情報記憶手段と、
    振動計で計測した加速度情報と設計情報記憶手段に記憶した情報に基づいて逆解析を行い、各層の同定剛性を同定する逆解析手段と、
    設計情報記憶手段と要素情報記憶手段に記憶した情報に基づいて、構造要素と非構造要素の残存剛性KSの総和である層剛性ΣKSを算出し、各層での最大経験変形角REmaxと振動レベルULと層剛性ΣKSの関係であるREmax−UL−ΣKS関係を定義する層剛性推定手段と、
    建物の各層について、振動計で計測した加速度情報から推定される振動レベルULと、逆解析手段で同定した同定剛性と、層剛性推定手段で定義したREmax−UL−ΣKS関係とに基づき、同定剛性を層剛性ΣKSとして入力することで、最大経験変形角REmaxを推定する最大経験変形角推定手段と、
    最大経験変形角推定手段で推定した各層の最大経験変形角REmaxに基づいて建物全体の損傷状況を評価する損傷評価手段と、を具備することを特徴とする建物の損傷評価システム。
  2. 要素情報記憶手段は、REmax−UL−KS関係に加えて、最大経験変形角REmaxと損傷状況の関係であるREmax−損傷関係を記憶し、
    損傷評価手段は、最大経験変形角推定手段で推定した各層の最大経験変形角REmaxと、要素情報記憶手段に記憶したREmax−損傷関係とに基づいて、建物全体の損傷状況を評価することを特徴とする請求項1に記載の建物の損傷評価システム。
  3. 振動計で計測した加速度情報から振動レベルULを推定する振動レベル推定手段を、更に具備し、
    逆解析手段は、各層の同定剛性に加えて、建物の動的特性を同定し、
    振動レベル推定手段は、逆解析手段で同定した各層の同定剛性と、建物の動的特性に含まれる減衰係数と、設計情報記憶手段に記憶した各階の質量の情報とに基づいて、建物の線形振動モデルを構築し、振動計で計測した加速度情報を入力することで、振動レベルULを定義することを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の損傷評価システム。
  4. 建物の建築初期において、残存剛性KSに初期補正係数を乗じることでREmax−UL−KS関係を再設定する初期補正手段を、更に具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物の損傷評価システム。
  5. 複数の建物で用いた初期補正係数を記憶する補正情報記憶手段を、更に具備し、
    補正情報記憶手段には、類似する建物同士を同一のグループに分類し、グループごとに初期補正係数を整理して記憶することを特徴とする請求項4に記載の建物の損傷評価システム。
  6. 建物の経年期において、建物の剛性が低下した場合に、残存剛性KSに経年補正係数を乗じ、REmax−UL−KS関係を再設定する経年補正手段を、更に具備することを特
    徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の建物の損傷評価システム。
  7. 複数の建物で用いた経年補正係数を記憶する補正情報記憶手段を、更に具備し、
    補正情報記憶手段には、類似する建物同士を同一のグループに分類し、グループごとに経年補正係数を整理して記憶することを特徴とする請求項6に記載の建物の損傷評価システム。
  8. 建物の各層の構造要素、非構造要素の情報と、各階の質量の情報を含む設計情報と、最大経験変形角REmaxとこれを経験した後の振動レベルULと残存剛性KSの関係であるREmax−UL−KS関係とを、それぞれ記憶しておき、
    建物で計測した加速度情報と設計情報に基づいて逆解析を行うことで、各層の同定剛性を同定し、
    設計情報とREmax−UL−KS関係とに基づいて、構造要素と非構造要素の残存剛性KSの総和である層剛性ΣKSを算出し、各層での最大経験変形角REmaxと振動レベルULと層剛性ΣKSの関係であるREmax−UL−ΣKS関係を定義し、
    建物の各層について、計測した加速度情報から定義される振動レベルULと、逆解析で同定した同定剛性と、定義したREmax−UL−ΣKS関係とに基づき、同定剛性を層剛性ΣKSとして入力することで、最大経験変形角REmaxを推定し、
    推定した各層の最大経験変形角REmaxに基づいて、建物全体の損傷状況を評価することを特徴とする建物の損傷評価方法。
  9. 構造要素と非構造要素についての最大経験変形角REmaxと損傷状況の関係であるREmax−損傷関係を、更に記憶しておき、
    推定した各層の最大経験変形角REmaxと、記憶しているREmax−損傷関係とに基づいて、建物全体の損傷状況を評価することを特徴とする請求項8に記載の建物の損傷評価方法。
  10. 逆解析によって、各層の同定剛性に加えて、建物の動的特性を同定し、
    振動レベルULの定義は、逆解析で同定した各層の同定剛性と、建物の動的特性に含まれる減衰係数と、記憶した各階の質量の情報とに基づいて、建物の線形振動モデルを構築し、計測した加速度情報を入力することで行なうことを特徴とする請求項8又は9に記載の建物の損傷評価方法。
  11. 建物の建築初期において、残存剛性KSに初期補正係数を乗じることでREmax−UL−KS関係を再設定することを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の建物の損傷評価方法。
  12. 類似する建物同士を同一のグループに分類し、グループごとに初期補正係数を整理してデーターベースに記憶させることを特徴とする請求項11に記載の建物の損傷評価方法。
  13. 建物の経年期において、建物の剛性が低下した場合に、残存剛性KSに経年補正係数を乗じ、REmax−UL−KS関係を再設定することを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の建物の損傷評価方法。
  14. 類似する建物同士を同一のグループに分類し、グループごとに経年補正係数を整理してデーターベースに記憶させることを特徴とする請求項13に記載の建物の損傷評価方法。
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