JP6474543B2 - 既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法・装置・プログラム - Google Patents

既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法・装置・プログラム Download PDF

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Description

この発明は、既存木造住宅について、耐震診断の評点を簡易に算出する方法、装置、およびプログラム、並びにこの簡易耐震診断評点の算出方法を用いる耐震性総合評価方法に関する。
既存木造住宅の耐震診断を精度良く行う方法としては、専門の技術者が時間を掛けて調査し、その調査結果によって精密に診断する方法がある。前記調査は、床下、小屋裏、室内、外観調査等である。この調査は、図面と目視によるため、存在している図面の正確さと専門の技術による判断により結果が左右される。より詳しい調査には、建物の一部を壊して中を見たり、削ってサンプルを得ることもあるが、その場合、補修を行うことが必要となる。そのため簡単な調査で、また建物に傷をつけることなく評価できる簡易耐震診断評価方法が求められる。
簡単な調査で既存木造住宅の耐震診断の評点を算出する式は、古くから研究されており、その多くは固有振動数の実測結果から算出された式である。固有振動数を用いて耐震性を評価する式を示した特許文献としては、次の各例がある。
特許文献1では、(建物固有振動数低下率)=fx/f
x:地震後の固有振動数、fx:地震後の固有振動数、
とする。
特許文献2では、H=(2πf)/g
:建物の動的評点、f:固有振動数、
とする。
特許文献3では、C=(T/0.1)((Q・R)1/2
:耐震補強効果、T:固有周期、Q:増幅量、R:共振の鋭さの度合い、
g:重力加速度 [9.8m/ s 2 ]とする。
実際に運用されている技術としては、建物の常時微動により固有振動数を求め、建物の硬さを評価する技術がある。例えば、同年代の建築物件に比べて、やや硬めである等の評価を行う(実際運用技術1)。この他に、建物を起振器により揺らした状態を測定し、建物の剛性を確認することが行われている(実際運用技術2)。この場合、建物の変形性、すなわち震度がいくつの地震で、建物のどの部分がどのくらい変形するかを求める。
既往研究としては、次の既往研究1〜4がある。
既往研究1は、実測値により、固有振動数と耐震診断評点の関係、建築年との関係の研究である。評価式は、P=4.71×T+2.35
:評点、T:固有周期、
とする。
既往研究2は、固有振動数と耐震診断評点との関係の研究である。評価式は、
=0.42×f−0.56(短辺)
=0.27×f+0.48(長辺)
:評点、f:固有振動数、
とする。
既往研究3は、固有周期とベースシア係数(耐震診断評点)との関係の研究であり、木造住宅を1自由度質点系解析に使用する。評価式は、
T=2π(h・α・R/g・C0.5
=1.17×Is1.34
Is:評点、T:固有周期(=1/固有振動数)、C:ベースシア係数、
g:重力加速度 [9.8m/ s 2 ]とする。
既往研究4は、固有振動数と建物情報(建築年、延べ床面積など)から求める研究である。評価式は、
f=4.671+A+B+C
f:固有振動数、A:建築年代、B:屋根種類、C:外壁種類、
とする。
特開2004−27762号公報 特開2010−261193号公報 特開2005−146448号公報
上記の各特許文献1〜4や、運用技術1,2は、いずれも独自の評点で評価しており、精密診断による耐震診断との比較ができない。そのため、耐震性能が分かり難い。
上記の各既往研究1〜4は、いずれも耐震診断評点を固有振動数のみで評価しており、実測結果からの近似による式であって、精度が悪い。すなわち、精密耐震診断の評点との差が大きい。そのため実用化には不十分である。
この発明の目的は、理論式と実測値を併用することより、常時微動の計測結果と簡単な調査結果とで、建物を傷つけることなく、耐震診断の評点を精度良く求めることができ、また精密耐震診断の評点と整合させることができる既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法、装置、およびプログラムを提供することである。
この発明の他の目的は、高度な知識を有する専門技術者によらなくても、簡単にかつ迅速に、適切な耐震性の評価、被害予測、および改善提案を行うことができる既存木造住宅の耐震性総合評価方法を提案することである。
この発明のさらに他の目的は、耐震改修を行った場合に、改修の効果を定量的に求めることができる既存木造住宅の耐震性総合評価方法を提供することである。
この発明における既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法は、2階建て既存木造住宅からなる耐震性診断の対象建物の、必要耐力に対する保有耐力の割合である耐震診断の評点Is′を算出する方法であるが、より具体的には、前記耐震診断の評点Is′を、次式(1)によって求める。
Figure 0006474543
ここで、上式(1)における定数または変数は、個々の建物に関する情報から定める数
と、個々の建物に依存しない数とがあり、次のとおりである。括弧内の数値ないし数値範
は、一例である。
〔個々の建物の情報により定める数〕
:固有振動数 [Hz]
x1:接合部の形式に対する補正係数(=0.6〜1.0)
x2:劣化調査による補正係数(=0.7〜1.0)
He:等価高さ [m]
Z:地震地域係数(=0.7〜1.0)
〔個々の建物に依存しない定数〕
:層間変形角(1/150)
:振動特性係数(1.0と仮定する)
Ai:層せん断力係数
標準せん断力係数
g:重力加速度 [9.8m/ s2]
α′:有効質量比を含む剛性低減率(0.05〜0.15)
B:他の補正係数(0.5〜1.0)
この式によると、上記の固有振動数により、前記対象建物の建物モデルを1質点系のモデルとし1次モードで振動していると仮定して耐力を求めたうえで、有効質量比率の分配より2質点系のモデルに変えて1階の耐力を演算する方法により、前記対象建物の前記評点とする基本値を求める方法が実現される。
すなわち、上記の式のうち、右辺の次式、
Figure 0006474543
で示される部分が、固有振動数を用いた理論式による対象建物の前記評点とする基本値となる。固有振動数は、対象建物の2階と地盤の2箇所で計測した常時微動のデータから求める。
上記の式(1)において、x1は、接合部の形式に対する補正係数であり、接合部の各種の形式に対して準備した補正係数の中で、該当する接合形式の補正係数を用いる。接合部の形式は、例えば、角金物、ホールダウン金物の使用の有無等である。対象建物について接合形式が既知である場合は、その接合形式に対応する補正係数を用いれば良いが、接合形式が不明である場合等のために、建築年の区分に対応して補正係数を準備し、対応する建築年の区分の補正係数を用いても良い。接合形式は建築の法規によって、傾向が明確であるため、接合部に関する建築の法規が変わる年度によって接合形式を区分し、補正係数を選択するようにすれば、接合部の形式に対する補正係数を簡易にかつ適切に定めることができる。
上記の式(1)において、x2は、前記対象建物の劣化に応じて定める補正係数である。対象建物の劣化は、詳しく知るためには、専門技術者が床下や小屋裏に入って目視したり、対象建物の一部からサンプルを削り取って分析するなどの処置が必要である。しかし、上記のように、建物の劣化の要因毎に該当するか否かを示すチェック項目を定め、これにチェックを付したアンケート形式の劣化調査結果と、その調査結果に対する補正係数との関係を定めておくことで、補正係数として評点に反映させることができる。
上記補正係数x1,x2は、いずれも、固有振動数を用いた理論式による評点の基本値を補正する係数として用いるため、上記のような簡易な調査結果から定めても、評点の精度向上を十分に図ることができる。このように、従来では専門家が厳密な調査により得ていた接合部に関する事項と、劣化に関する事項とを、簡易に求めて評点の精度向上を図ることができる。
上記補正係数Bは、演算により求めた評点を実測値により近づけるための補正係数であり、例えば0.5〜1.0の範囲の値とする。補正係数Bを1.0とする場合は、上記の式(1)は、補正係数Bを省いた次式で示されることになり、この式で評点を求めても良い。
Figure 0006474543
この発明の既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法において、前記いずれかの補正係数につき、前記対象建物を補修した場合における補修内容に対応する補正係数を用いて、補修後の前記評点を算出しても良い。
前記対象建物を補修した場合、前記補正係数を補修内容に対応した値に変更することにより、補修後の前記評点を算出できる。そのため、補修による効果が簡単に予測でき、適切な補修の提案が行える。
この発明の既存木造住宅の耐震性総合評価方法は、既存木造住宅からなる対象建物の耐震性診断を、コンピュータを用いて行う既存木造住宅の耐震性総合評価方法であって、
前記対象建物の常時微動の計測データ、並びに前記対象建物についての建物構造、劣化に影響する要因、および設置地域アンケート形式によるデータを入力する入力過程と、これらの入力データを解析して、耐震性の評価、被害予測、および改善提案の結果を得る解析過程と、この解析過程で得た前記結果を報告データとして纏めて出力する出力過程とを含み、
前記解析過程でこの発明の上記いずれかの既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法を用いることを特徴とする。
従来の耐震診断では、上記のように専門の技術者が時間をかけて、床下、小屋裏、室内、外観等を調査し、その調査結果により解析していたため、時間がかかる上に専門技術者を必要とし、また専門技術者の判断により結果が左右されるという問題点があった。しかし、この発明の耐震性総合評価方法によると、常時微動の計測データと、アンケート形式によるデータから解析を行い、またこの発明の簡易耐震診断評点の算出方法を用いるため、高度な知識を有する専門技術者によらなくても、簡単にかつ迅速に、適切な耐震性の評価、被害予測、および改善提案を行うことができる。
この発明の既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出装置は、2階建て既存木造住宅からなる耐震性診断の対象建物の、必要耐力に対する保有耐力の割合である耐震診断の評点Is′を算出する装置であって、
入力機器(5)により入力された次の入力事項を所定の記憶領域に記憶する入力処理手段(19)と、上記の式(1)によって前記評点Is′を算出する評点算出手段(25)を有することを特徴とする。
この簡易耐震診断評点の算出装置によれば、この発明方法につき前述した理由と同様に、理論式と実測値を併用するため、常時微動の計測結果と簡単な調査結果とで、建物を傷つけることなく、耐震診断の評点を精度良く求めることができる。また、精密耐震診断の評点と整合させることができる。
この発明の既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出プログラムは、コンピュータで実行可能であり、2階建て既存木造住宅からなる耐震性診断の対象建物の、必要耐力に対する保有耐力の割合である耐震診断の評点を算出するプログラムであって、
入力機器により入力された入力事項を所定の記憶領域に記憶する入力処理過程(R0)と、
上記の(1)式によって前記評点を算出する評点算出手順(R1)を有することを特徴とする。
この簡易耐震診断評点の算出プログラムによれば、この発明方法につき前述した理由と同様に、理論式と実測値を併用するため、常時微動の計測結果と簡単な調査結果とで、建物を傷つけることなく、耐震診断の評点を精度良く求めることができる。また、精密耐震診断の評点と整合させることができる。
この発明の他の既存木造住宅の耐震性総合評価方法は、2階建既存木造住宅からなる対象建物の、耐震改修の効果を評価する既存木造住宅の耐震性総合評価方法であって、
前記対象建物の2階と地盤の2箇所での常時微動のデータの測定を、前記対象建物の耐震改修前と耐震改修後とにそれぞれ行い、これら耐震改修前の常時微動のデータを用いた耐震診断の評点の算出と、耐震改修後の常時微動のデータを用いた耐震診断の評点の算出とを、それぞれ、この発明の上記いずれかの既存木造住宅の簡易耐震評価点の算出方法を用いて行い、
算出された耐震改修の前後の耐震診断の評点、または前記評点から求まる前記対象建物の性能を表す事項について耐震改修による効果を比較して定量的に示すことを特徴とする。
前記「評点から求まる前記対象建物の性能を表す事項」は、例えば、対象建物の地震に対する強さを表す事項である。
この方法によると、耐震改修の前後で常時微動のデータの測定を実施し、改修前後の耐震診断の評点を、この発明の簡易耐震診断評点の算出方法を用いて求める。そのため、改修前後の耐震診断の評点を、建物を傷付けることなく、簡単に精度良く求めることができる。このように求めた耐震改修の前後の耐震診断の評点、または前記評点から求まる前記対象建物の性能を表す事項について耐震改修による効果を比較する。そのため、耐震改修による耐震性等の向上の効果を定量化して明確に求めることができる。
このように改修効果の定量化を行うことにより、顧客満足度が向上する。また、改修効果の確認を機械測定により行うため、顧客と一緒に改修効果を確認できる。
この発明の既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法、装置、およびプログラムによると、いずれも、理論式と実測値を併用するため、常時微動の計測結果と簡単な調査結果とで、建物を傷つけることなく、耐震診断の評点を精度良く求めることができ、また精密耐震診断の評点と整合させることができる。しかも、建物を傷つけることなく、少ない建物情報で、かつ専門知識を有しなくても、耐震診断の評点を精度良く求めることができる。
この発明の既存木造住宅の耐震性総合評価方法によると、高度な知識を有する専門技術者によらなくても、簡単にかつ迅速に、適切な耐震性の評価、被害予測、および改善提案を行うことができる。
この発明の他の既存木造住宅の耐震性総合評価方法によると、耐震改修を行った場合に、改修の効果を定量的に求めることができ、顧客満足度の向上が期待できる。
この発明の第1の実施形態に係る既存木造住宅の耐震性総合評価方法における要点を示す説明図である。 そのフラジリティ曲線作成方法の説明図である。 地震リスクの説明図である。 常時微動の計測方法と固有振動数の求め方との説明図である。 同耐震性総合評価方法を実施する装置につき、入力と出力を主に示す概念構成の説明図である。 同耐震性総合評価方法を実施する装置につき、機能達成手段の概要を主に示す概念構成の説明図である。 同耐震性総合評価方法を実施する装置につき、装備するプログラムを主に示す概念構成の説明図である。 同耐震性総合評価方法を実施する装置の機能達成手段を示す概念構成の説明図である。 同耐震性総合評価方法を実施する装置のフラジリティ曲線作成部を主に示す概念構成の説明図である。 簡易耐震評価診断評点の算出プログラムの流れ図である。 フラジリティ曲線作成プログラムの流れ図である。 同耐震性総合評価方法を実施する装置の入力画面例の説明図である。 同耐震性総合評価方法を実施する装置の出力画面例の説明図である。 同既存木造住宅の耐震性総合評価方法の全体の流れ図である。 図14Aの左半分を拡大して示す流れ図である。 図14Aの右半分を拡大して示す流れ図である。 同総合評価方法における地震発生確率の評価の処理の流れ図である。 同総合評価方法における耐震性評価の処理の流れ図である。 同総合評価方法における耐久性評価の処理の流れ図である。 同総合評価方法における劣化評価の処理の流れ図である。 同総合評価方法における全壊・半壊確率と被害低減効果の処理の流れ図である。 同総合評価方法における壁補修の改修概算費用の処理の流れ図である。 同総合評価方法における屋根軽量化の改修概算費用の処理の流れ図である。 同総合評価方法における劣化補修の改修概算費用の処理の流れ図である。 同耐震性総合評価方法における簡易耐震診断評点の算出方法の入力の説明図である。 同簡易耐震診断評点の算出方法に用いる考え方1の説明図である。 同簡易耐震診断評点の算出方法に用いる考え方2の説明図である。 同簡易耐震診断評点の算出方法に用いる考え方1,2の組み合わせの説明図である。 同簡易耐震診断評点の算出方法の評価結果と精密耐震診断の評点との関係の試験例を示すグラフである。 同簡易耐震診断評点の算出方法における算出式の構成の経緯を示す説明図である。 同簡易耐震診断評点の算出方法の算出式に用いる固有振動数を求める経緯の説明図である。 同簡易耐震診断評点の算出方法の算出式における接合部に係る係数を求める経緯の説明図である。 同簡易耐震診断評点の算出方法の算出式における劣化に係る係数を求める経緯の説明図である。 同簡易耐震診断評点の算出方法の算出式における他の補正係数を求める経緯の説明図である。 一般耐震診断式による評価と精密耐震診断の評点との関係の試験例を示すグラフである。 同耐震性総合評価方法におけるフラジリティ曲線作成方法に用いる建物モデルの説明図である。 同モデルと補正整数の関係を示す説明図である。 フラジリティ曲線の例のグラフである。 0-1関数の説明図である。 最大地動速度と損傷確率の関係を示すグラフである。 フラジリティ曲線の中央値を決めるパラメータと築年数の関係を示すグラフである。 フラジリティ曲線の中央値を決めるパラメータと変形性能の関係を示すグラフである。 経年劣化曲線の再評価の説明図である。 簡易法による耐用年数と詳細な求め方による耐用年数とを対比するグラフである。 劣化調査のアンケートにおける項目例の説明図である。 アンケート結果と、フラジリティ曲線の作成に用いる健全度および耐震評価点の計算に用いる劣化係数の関係を示す説明図である。 総合評価を示す図の一例を示す説明図である。 提案する補修・補強方法と費用を示す出力画面例の説明図である。 この発明の他の耐震性総合評価方法を実施する装置につき、機能達成手段の概要を主に示す概念構成の説明図である。 同耐震性総合評価方法を実施する装置につき、装備するプログラムを主に示す概念構成の説明図である。 同耐震性総合評価方法を耐震補強の前後のそれぞれで実施する装置について、入力と出力を主に示す概念構成の説明図である。 同耐震性総合評価方法を耐震補強後に実施する装置について、入力と出力を主に示す概念構成の説明図である。 同耐震性総合評価方法を実施する装置が出力する報告書の内容例を示す説明図である。
この発明の第1の実施形態を図面と共に説明する。図1に示すように、この既存木造住宅の耐震性総合評価方法は、対象建物の地震リスク等の総合的な評価を行う方法であって、主な提案として、簡易耐震診断評点の算出方法と、フラジリティ曲線の作成方法とを含む。なお、この実施形態で言う「木造住宅」は、木造軸組み工法の住宅である。
前記簡易耐震診断による評点は、必要耐力に対する保有耐力の割合とする。この簡易耐震診断評点の算出方法では、精密診断で求める場合の評点に対して、基本的には対象建物の常時微動の計測結果から評点を求める。簡易に求められるようにするが、常時微動の計測結果の他に、評点に影響を及ぼす接合部や劣化による耐力低減を反映させて求める。このようにして求める評点は、精密診断で求める評点に対する換算値であるが、この明細書中では、この評点の算出方法で算出する評点につき、「評点(換算値)」と明記する場合と、単に「評点」と称する場合とがある。
フラジリティ曲線は、入力地震動に対して建物がある損傷状態となる確率を表した曲線であり、この実施形態のフラジリティ曲線作成方法では、対象建物が全壊状態となる場合、および半壊状態となる場合のフラジリティ曲線を求める。このフラジリティ曲線作成方法では、常時微動の計測結果から降伏点耐力またはベースシア係数を求め、また対象建物の耐久性および不具合に関するヒアリング等によるチェック結果から、変形性能(例えば全壊および半壊となるときの変形角を求める。これら降伏点耐力またはベースシア係数と前記変形性能とから建物モデルを作成し、この建物モデルからフラジリティ曲線を作成する。
このフラジリティ曲線作成方法によると、図2に示すように、耐震性、耐久性、劣化度を反映させて作成される。このように作成されたフラジリティ曲線から、例えば、地震ロス関数を作成し、この地震ロス関数と地震ハザード曲線とから、地震損失期待値を得る。この地震損失期待値と耐震リフォーム費用とから、ライフサイクルコスト(LCC)を算出する。
図3に示すように、耐震性能の評価項目、つまり地震リスクに対する評価項目は、立地上の地震危険度、耐震性能の推定値、耐久性(耐用年数)、劣化度に関する項目とし、それぞれ地震起こりにくさ、地震に対する強さ、寿命、健康度と表現する場合がある。
この耐震性総合評価方法では、これらの個々の評価とその総合的評価を行い、また改修の提案を行う。すなわち、この耐震性総合評価方法では、計測による入力データ(常時微動計測データ)と、ヒアリングデータ(住所、建物の構造・仕様、間取り情報、劣化情報、ライフスタイル情報)を用いて解析を行い、建物の耐震性能評価結果、被害予測、改善提案(改修概算費用、改修による被害低減効果、改修技術情報、耐震グッズ情報、LCC評価)を表示する。これらは、画面に表示可能とする他、1枚の報告書を表示・作成する。プリンタがあればその場で報告書を印刷、プリンタが無い場合でも報告書をメール添付またはアップロードができるようにする。
図5および図6は、この既存木造住宅の耐震性総合評価方法に用いる機器、および対象建物を示す。評価ないし診断の対象建物1は、2階建ての既存木造住宅である。この評価方法には、情報処理装置2と、この情報処理装置2に接続される2つのセンサー3が用いられる。図5は情報処理装置2の入力および出力の内容例を図解し、図6は情報処理装置2を構造的に図解する。
情報処理装置2は、パーソナルコンピュータまたは携帯端末等からなるコンピュータである。携帯端末は、例えばタブレット型の端末、またはスマートフォンと呼ばれる高機能携帯電話等である。各センサー3は、常時微動を検出する計測機器であり、加速度センサー等が用いられる。2つのセンサー3は、計測時に対象建物1の地盤部1aと2階1bと設置する。地盤部1aは、例えば対象建物1の玄関の土間とする。
情報処理装置2は、図7に示すように、処理装置本体4と、入力機器5と、出力機器6とを備える。入力機器5は、キーボード、タッチパネル、マウス等のオペレータによる入力操作が可能な機器である。出力機器6は、画像を表示可能な液晶表示装置等の画像表示装置6a、および画像を印刷可能なプリンタ等である。
処理装置本体4は、CPU(中央処理装置)およびメモリ等で構成される演算処理手段7と、大容量記憶素子やハードディスク等からなる記憶装置8と、前記センサー3やその他の外部機器(図示せず)を接続する入出力インタフェース9と、インターネット等の広域通信ネットワークやLAN(ローカルエリアネットワーク)等の通信ネットワーク31と無線または有線で接続する通信手段11を有している。通信手段11により評価結果DB(データベース)サーバ32等に接続される。
処理装置本体4は、OS(オペレーションプログラム)10を備え、このOS10上で動作するアプリションプログラムとして、総合評価プログラム13を備えている。総合評価プログラム13は、対象建物1の固有振動数を演算する微動計測・固有振動数演算プログラム14と、メイン解析プログラム15とで構成される。メイン解析プログラム15は、耐震診断の評点を算出する既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出プログラム16と、既存木造住宅のフラジリティ曲線作成プログラム17と、その他の処理を行う処理プログラム18を有している。処理装置本体4のハードウェアおよびOS10と、前記総合評価プログラム13とで、図6(B)示す入力処理手段19、総合評価手段20、および出力処理手段21を有する耐震性総合評価装置2A〈図8〉が構成される。
図6において、入力処理手段19は、画像表示装置6aに入力すべき事項を案内する入力画面〈図13と共に後述する〉を出力し、入力機器5等から入力されたデータを所定の記憶領域に記憶させる。総合評価手段20は、入力データに所定の処理を施して前記評点の算出やフラジリティ曲線の作成等を行う手段であり、微動計測・固有振動数演算22と、主解析手段23とを有している。出力処理手段21は、総合評価手段20で処理された結果と、入力処理手段19で記憶されたデータとから、評価結果を画像表示装置6aに評価結果画面として出力し、かつ定められた形式の報告書41(図5)となるデータを生成して、出力機器6のプリンタ(図示せず)および評価結果DBサーバ12へ出力する。なお、情報処理装置2は、活断層DB(データベース)24を有するか、または活断層DB24に通信ネットワーク11を介して接続される。
主解析手段23は、図8に示すように、評点を算出する手段である評点算出部25と、フラジリティ曲線を作成するフラジリティ曲線作成部26と、その他の処理を行う処理部27とでなる。前記耐震性総合評価装置2Aのうち、評点算出部25と入力処理手段19とで簡易耐震診断評点算出装置2Aaを構成する。フラジリティ曲線作成部26と入力処理手段19とで図9に示すフラジリティ曲線作成装置2Abを構成する。これら簡易耐震診断評点算出装置2Aaおよびフラジリティ曲線作成装置2Abについては、後に説明する。
図12は、入力画面例を示す。各STEP1〜5の画面は順次切り換えて表示される。各画面に「戻る」「次へ」の入力ボタンが表示され、入力画面を切り換えることができる。これらの入力画面では、対象建物1の所在に関する情報(STEP1)、建物情報(STEP2)、間取り情報(STEP3)、不具合に関する情報(STEP4)を案内し、入力させる。入力の作業は、例えば診断業者の職員が戸主等からヒアリングして行う。なお、間取り情報は、被害予測・耐久性評価・改修概算費用・改修による被害低減効果・LCC評価を行うための非常に重要な情報である。
所在に関する情報としては、対象建物1の存在する住所を入力する。この入力は、例えばメニューから都道府県、市町村、町丁目を選択することで行う。
建物情報としては、築年数、増改築の有無、屋根葺材の種類、屋根の形式、外壁面材の種類、延べ床面積、1階の軒の出、基礎の換気口の配置箇所を入力する。入力形式は、例えば入力ボックスにメニューを表示させ、そのメニューから該当する事項を選択する形式とされる。延べ床面積については、知っているかいないを選択する選択入力を行い、知っている場合は、その面積を入力する。
間取り情報としては、1階部および2階部につき、居室、台所、風呂、洗面所、トイレの部屋数を入力する。
不具合に関する情報については、不具合の種類、つまり対象建物の劣化に影響する要因毎に、その不具合の種類を示す内容を文言で表示し、該当する場合は、該当するか否かのチェックボックス等のチェック入力部にチェックを施すことで行う。
入力させる不具合の種類は、例えば次の各事項(1) 〜(8) であり、図43にも同内容を示した。
(1) 痛んだところはない。または、その都度補修している。
(2) 屋根の棟や軒先の線が波打っている。
(3) 床が傾いている。大きな床鳴りがる。
(4) 柱や壁が傾いている。建具の立付けが悪い。
(5) 外壁仕上げに大きなひび割れが複数生じている。
(6) 部が腐ったり、シロアリに食われている。
(7) 梅雨時期に羽アリの集団を見た。
(8) よく分からない。
STEP1〜4の入力画面による入力が完了すると、STEP5の画面を表示させ、前記2つのセンサー3,3をそれぞれ1階と2階のいずれに設置したかを入力する。この後、この画面に表示された「測定スタート」のソフトウェアキーをオン操作することで、前記センサー3,3による常時微動の計測が行われる。計測時間は、例えば数分である。建物には、風や近隣を走行する車両等による震動要因により、人体に感じない程度であるが常に微振動が生じている。このような常時微動を前記センサー3,3で計測する。
図13は、評価結果の出力画面例を示す。同図に示す各画面は、切り換えて表示可能とされる。評価結果の出力画面では、評価結果となる、評点(換算値であるため、画面では評点予測値と表示している)と、推定耐用年数と、健康度評価点とが各画面でそれぞれ表示され、また被害予測の内容が他の画面で表示される。評点予測値としては、簡易耐震診断による必要耐力に対する保有耐力の割合である評点を表示する。推定耐用年数は、対象建物が寿命となるまでの残り年数である。この他に、図45に示す総合的な表示、および図46に示す補強・補修方法とその実施費用を出力する。なお、これらの出力画面に表示される各事項は、前記報告書に纏めて記録される。
図45等に示すように、総合的な評価の表現方法としては、評価項目の2つ以上を組み合わせたグラフとする。
評価の表現は、各項目に固有の単位による表現(確率、割合、年数、ポイント等)によるほか、それぞれの単位表現を一定の範囲で区分したレベル数字、もしくはマークの数、グラフにより直感的に把握できる方法とする。
総合的な評価をチャートで表現し、チャートの縦軸は地震に対する安心度を表し、横軸は総合的な健康度を表す。
なお、それぞれの評価項目の結果の根拠となる説明、計算方法については確認することができるようにする。
上記各評価結果に対応した改修提案情報として、改修の概算費用、改修による被害低減効果、改修技術情報、耐震グッズ情報、将来のメンテナンスサイクルを考慮した発生費用(LCC)も表示可能とする。
なお、地震危険度と耐震性能を含む評価を組み合わせたものを総合的な評価値(危険耐力比率)として求め、出力画面や報告書に出力しても良い。また、耐久性評価点と健康度評価点を組合せて、長持ち度として求め、出力画面や報告書に出力しても良い。
図14Aは、この耐震性総合評価方法における各処理の全体の流れ図である。同図を拡大し、図14Bと図14Cとに2分して示す。
この耐震性総合評価方法では、前述のように入力画面で入力された対象建物1の所在(住所)に関する入力情報I1、建物情報I2、間取り情報I3、不具合情報T4、および常時微動データI5を用い、解析により、評価結果および提案結果として、地震発生確率(A1)、耐久性評価(A2)、耐震性評価(A3)、劣化評価(A4)、全壊・半壊確率の評価(A5)、被害低減効果の提案(A5)、壁の補強費用提示(A6)、屋根補強費用提示(A7)、劣化補修費用提示(A8)について求める。このように求めた評価結果および提案結果を前述のように画面に表示する。
上記の地震発生確率(A1)、耐震性評価(A2)、耐久性評価(A3)、劣化評価(A4)、全壊・半壊確率の評価(A4)、被害低減効果の提案(A5)、壁の補強費用提示(A6)、屋根補強費用提示(A7)、および劣化補修費用提示(A8)を行うための解析の各過程(S1〜S23)の概要を、図15〜図22と共に説明する。
上記の診断、提案のうち、全壊・半壊確率の評価(A4)および被害低減効果の提案(A5)のための解析過程ではフラジリティ曲線を作成し(S19)、また耐久性評価(A3)および壁の補強費用提示(A6)のために評点(換算値)の算出(S10)を行うが、これらフラジリティ曲線の作成および評点の算出については、図15〜図22による概要説明の後に、具体的に説明する。
図15は、地震発生確率(地震の起こりにくさ)(A1)を求める処理の流れを示す。入力された住所の情報I1(都道府県、市町村、町丁目のデータ)から、緯度、経度、地盤増幅率をデータベースより取得し、解析を行う。データベースおよび解析には、例えば文科省の地震調査研究推進本部より公開されている断層データ、計算方法を用いる。この解析によって、震度5弱〜6強の発生確率を求め、設置場所での地震の起こり難さを評価する。また、付近の活断層情報(予測震度、目安距離・深さ・マグニチュード・発生確率)を求める。
図16は、耐震性評価(建物の強さ)(A2)を行う各処理の流れを示す。入力された建物情報I2における築年数と、不具合情報I4から、築年数による補正係数(建築年度により区分した接合部の形式による補正係数)x1および不具合情報による補正係数x2を取得する。また、常時微動の計測データ(I5)から対象建物1の固有振動数fを取得する。
これらの取得した補正係数x1,x2、固有振動数fを用いて、評点(換算値)を求め、対象建物1の強さを評価する。
図17は、耐久性評価(建物の寿命)(A3)を行う各処理の流れを示す。
入力された住所のデータI1から地域区分とその地域区分における年平均気温に関する係数を取得する。建物情報I2における外壁面材の種類から、外壁に関する係数を取得し、1階の軒種類(軒の出)から軒に関する係数を取得する。建物情報I2における換気口の配置情報である基礎換気のし易さから、換気口に関する係数を取得する。間取りの情報I3から、建物の水廻り面積とその他面積の割合を算出する。
この取得した年平均、外壁、軒、換気口に関する係数と、水廻り面積の割合とから解析して、定められた式により耐用年数を算出する。
この算出した耐用年数と入力された築年数とから、建物の寿命を評価する。寿命=耐用年数−築年数である。
図18は、劣化評価(建物の健康度)(A4)を求める処理の流れを示す。入力された建物の不具合情報I4のチェック内容から、定められ評価規則によって健康度評価点を求める。チェックする事項は、例えば図43と共に前述した項目である。
上記評価規則は、例えばポイント等で求めるようにする。具体例を示すと、所定のチェック項目(1)のみにチェックが入っている場合は、○○点(例えば95Pt)とし、他のチェック項目(5)のみにチェックが入っている場合は、○○点(例えば80Pt)とし、また他のチェック項目(6)にチェックが入っている場合は、○○点(例えば5Pt)とするように定めた規則である。このように求めた健康度評価点から建物の健康度を評価する。
図19は、建物の全壊・半壊確率と被害低減効果(A5)を求めるまでの処理までの流れを示す。入力された住所の情報I1から、年平均気温と、地域区分の係数を取得する。建物情報I2における、外壁面材の種類、1階軒の出、基礎換気のし易さから、外壁、軒、換気口に関する係数を取得する。建物の不具合の情報I4から劣化係数を取得する。間取り情報I3から、建物の水廻り面積とその他面積の割合を算出する。
このように取得した、年平均気温・地域区分の係数、外壁、軒、換気口に関する係数、劣化係数、および水廻り面積とその他面積の割合から、解析を行って変形性能、すなわち対象建物1が全壊となる変形角および半壊となる変形角を推定する。
一方、対象建物1の常時微動のデータを解析して降伏点耐力またはベースシア係数を推定する。
この全壊,半壊となる変形角と、降伏点耐力またはベースシア係数とから建物モデルを作成し、この建物モデルからフラジリティ曲線を作成する。このフラジリティ曲線から、対象建物1の全壊、半壊確率を算出する。ついで、補強、補修後の建物モデルの設定を行い、被害低減効果を提示する。
図20は、改修概算費用(壁の補強費用)の算出(A6)の処理の流れを示す。建物情報I2における築年数から、築年数による補正係数〈接合部の形式による補正係数〉を取得する。建物の不具合情報Iから不具合情報による補正係数を取得する。対象建物1の常時微動の計測データから、固有振動数fを取得する。これら築年数による補正係数、不具合情報I4による補正係数、および固有振動数fを用いて解析し、耐震診断の評点(換算値)Is′を取得する。
評点Is′が1.0以上である場合は、補修の必要がないと判定する。
評点Is′が1.0未満の場合は、延べ床面積から、評点Is′を1.0にするために必要な耐力を算出し、耐震壁の補強枚数を決定する。前記耐力の算出に用いる延べ床面積は、延べ床面積が入力されている場合はその面積の値を用い、延べ床面積が入力されていないときは、間取り情報I3から延べ床面積の推定値を求め、その推定値を用いる。
図21は、改修概算費用(屋根の軽量化費用)(A7)を求める処理の流れを示す。入力された建物情報I2における屋根形状により、この屋根形状から決まる係数を取得する。この係数と延べ床面積とを用いて解析し、1,2階床面積、延べ床面積、建築面積、外部足場面積、外壁面積、仮囲い長さ、建物外周長さ、屋根面積を取得する。解析に用いる延べ床面積の値は、前記と同様に直接に面積で入力された値、または間取り情報から推定した値を用いる。
この後、改修後の屋根材を選択し、選択された屋根材と前記解析で求められた各値とを用いて、屋根の補強費用を求め、提示する。
図22は、改修概算費用(劣化補修費用)(A8)を求める処理の流れを示す。図21で示した屋根の軽量化費用の算出の場合と同様に、延べ床面積または間取り情報を用いて解析して、1,2階床面積、延べ床面積、建築面積、外部足場面積、外壁面積、仮囲い長さ、建物外周長さを取得する。
入力された不具合情報I4より、「外壁仕上に大きなひび割れを複数生じている」とある事項が選択された場合は、所定の解析Aにより、外壁ひび割れ補修費用を求めて結果を表示する。
「木部が腐ったり、シロアリに食われている」とある事項が選択されている場合は、他の解析Bにより、白蟻対策費用を求めて結果を表示する。
「外壁仕上に大きなひび割れを複数生じている」とある事項が選択され、かつ「木部が腐ったり、シロアリに食われている」とある事項が選択されている場合は、前記解析Aと解析Bの両方を行い、外壁ひび割れ補修費用と白蟻対策必要とを表示する。
「外壁仕上に大きなひび割れを複数生じている」とある事項、および「木部が腐ったり、シロアリに食われている」とある事項のいずれも選択されていない場合は、劣化補修に関しての補修は不要と判定する。
次に、図4,図23〜図33と共に耐震診断の評点を算出する過程を説明する。図23のように、耐震性診断の対象建物は2階建て既存木造住宅である。評点は、必要耐力に対する保有耐力の割合とする。
評点を算出する入力としては、対象建物の2階と地盤の2箇所でそれぞれ加速度センサー等のセンサー3により計測した常時微動のデータと、建物情報の入力画面G2(STEP2)で入力された建物情報、および不具合情報入力画面G4(STEP4)で入力されたアンケート形式による劣化調査の結果である。
2階および地盤の常時微動のデータを周波数分析することで、図4に示すように、対象建物1の共振点が見出される。この共振点を固有振動数とする。常時微動のデータから周波数分析で固有振動数を求める方法は、種々の方法,機器が実用化されていて、任意の方法,機器を用いれば良い。
図23において、建物情報の入力画面G2(STEP2)で入力される建物情報は、図12の各入力画面につき前述したように、築年数、増改築の有無、屋根の種類、屋根の形式、外壁材の種類、1階の軒の出、基礎の換気口の配置状況、延べ床面積に係る情報等である。延べ床面積に係る情報は、知っているかいないかを入力させ、知っている場合はその延べ床面積を入力し、知らない場合は別の入力画面で入力された間取りの情報を用いる。
不具合情報入力画面G4で入力される劣化調査の情報は、建物の劣化の要因毎に該当するか否かを示すチェック項目のチェック内容である。チェック項目は、例えば図43と共に前出した項目である。
この評点の算出方法では、上記の入力データを用い、次式(1)からなる耐震性能評価式によって評点Is′を計算する。
Figure 0006474543
ここで、上式(1)における定数または変数は、個々の建物に関する情報から定める数と、個々の建物に依存しない数とがあり、次のとおりである。括弧内の数値ないし数値範囲は、一例である。
〔個々の建物の情報により定める数〕
:固有振動数 [Hz]
x1:接合部の形式に対する補正係数(=0.6〜1.0)
x2:劣化調査による補正係数(=0.7〜1.0)
He:等価高さ[m]
Z:地震地域係数(=0.7〜1.0)
〔個々の建物に依存しない定数〕
:層間変形角(1/150)
:振動特性係数(1.0と仮定する)
Ai:層せん断力係数
標準せん断力係数
g:重力加速度[9.8m/ s2]
α′:有効質量比を含む剛性低減率(0.05〜1.15)
B:他の補正係数(0.5〜1.0)
この耐震性能評価式は、次の観点で作成された式である。
(1) 理論式と実測値による式とし、精度向上を図る。
(2) 精密耐震診断評点と整合させる。
(3) 簡易な建物情報で評価を可能とする。
この耐震性能評価式は、固有振動数を用い、前記対象建物の建物モデルを1質点系のモデルとし1次モードで振動していると仮定して耐力を求めたうえで、有効質量比率の分配より2質点系のモデルに変えて1階部分の耐力を演算方法により、前記対象建物の前記評点とする基本値を求め、
対象建物の躯体構成部材の接合部の形式に対する補正係数x1と、前記対象建物1のアンケート形式による劣化調査による補正係数x2とを、前記の求められた評点の基本値に考慮して前記耐震診断の評点を算出するという手法を実現する式である。
なお、前述の1次モードで振動していると仮定して耐力を求めるにつき、常時微動による固有振動数は対象建物の等価剛性と関係があると仮定する。
この耐震性能評価式は、いわば、精密診断による耐震診断である考え方(1) と、質点モデルによる限界耐力計算である考え方(2) とを融合させた式である。
図24と共に、精密診断による耐震診断の考え方(1) を説明する。この考え方(1) では評点Isおよび保有耐力Qrを次式(3),(4)で表す。評点Isは、必要耐力Qdに対する保有耐力Qrの割合とする。
Figure 0006474543
ここで、
:建物の保有耐力 [kN]
:建物の必要耐力 [kN]
:保有耐力 [kN]
Fs:剛性率による低下係数(0.5〜1.0)
Fe:偏心率と床仕様による低減係数(0.4〜1.0)
:振動特性係数
Z:地震地域係数
:層せん断力係数
:標準せん断力係数
:支持荷重 [kN]
W0:壁等の基準耐力 [kN]
L:有効長さ [m] (=長さ×3.1÷開口幅)
:開口低減係数
:接合部低減係数(0.6〜1.0)
※基礎仕様、壁基準耐力、接合部仕様による
dw:劣化低減係数(0.6〜1.0)
※壁基準耐力、劣化度合いによる
上式において、劣化評価は、「無し」、「部分的」、「著しい」、等で区別する。接合部評価は、角金物、ホールダウン金物使用などで評価する。
この精密診断による考え方(1) は、評点Isを精度良く計算できるが、耐力の低減に係数として、式中に楕円で囲んで示すように、Fs(=剛性率による低減係数)、Fe(=偏心率と床仕様による低減係数)、C(=接合部低減係数)、Cdw(=劣化低減係数)が必要であり、耐力の低減係数が多い。また、このうち低減係数Fs,Feを定めるための情報を得るにつき、専門家による対象建物の調査が必要となる。また、基準耐力Pw0は、実験結果の層間変位角(1/150)以下で決定するが、建物の耐力を実際よりも安全側に評価する傾向にある。
図25と共に、質点モデルによる考え方(2) を説明する。2階建ての木造住宅は1次モードで振動していると仮定し、1質点系モデルとする。また、常時微動による固有振動数fは等価剛性Keと関係があるとする。このように仮定して求めた1質点系モデルを有効質量比により分配し、2質点系のモデルにする。これにより、1階部分の耐力が求まる。
しかし、この考え方(2)は、固有振動数のみで耐力を求めており、接合部や劣化等が評
価に含まれておらず、精度が悪い。
この実施形態は、上記考え方(1) と考え方(2) を融合した式となる上記簡易耐震評価算出式(1)を用いる。すなわち、上記の式(1)に囲み線を付して次に示すように、破線による囲み線で示す部分が精密耐震診断(考え方(1) )に基づく部分であり、実線の囲み線で示す部分が質点系モデルに基づく部分である。また、この実施形態の簡易耐震評価算出式(1)では、前述の式(3)における精密耐震診断で簡易に判断できない係数(Fs,Fz)を省略し、また質点モデルでは、測定した固有振動数fが1質点系の固有振動数であると仮定する。
Figure 0006474543
実施形態の簡易耐震評価算出式(1)に用いる建物情報および定数について、補足説明する。
補正係数x1は、接合部による補正係数であり、ここでは建築年度により区分して設定された値を用いる。例えば、
1980年>建築年、である場合は、x1=0.6とし、
1981≦建築年<2000である場合は、x1=0.6+(建築年−1981)×0.4/19
とし、
建築年2000年である場合は、x1=1.0とする。
この実施形態による上記の簡易耐震評価算出式(1)による評点Is′と、精密耐震診断による評点Isとを、27件の対象建物につき比較した結果を図27に示す。同図に示すように、簡易耐震評価算出式(1)による評点(換算値)は、精密耐震診断による評点と整合性が高い結果が得られることが確認された。
図28と共に、上記簡易耐震評価算出式(1)を導く経緯につき説明する。
・ステップ1では固有振動数fから評点Is′の基準値を求める基本式を作成する。
Is′≒A・f 2
・ステップ2で、上記基本式に、接合部の形式を補正係数x1として付加した式を作成する。
Is′≒A・f 2×x1
・ステップ3で、さらに劣化に対する補正係数x2を付加した式を作成する。
Is′≒A・f 2 ×x1×x2
・ステップ4で、さらに試験結果に対する補正係数Bを付加した式を作成する。
これにより、前述の簡易耐震評価算出式(1)となる。
定数Aは、次式で示される値である。
Figure 0006474543
図29と共に定数Aの算出方法の例を説明する。定数Aを構成する各定数のうち、α′(=有効質量比を含む剛性低減率)以外の各定数は、一般的に定まった値であるが、定数α′については求めておく必要がある。この定数α′は、接合部・劣化低減を含まない耐震診断評点Isと固有振動数の回帰式(最小二乗法)により求める。
図30と共に、接合部形式を補正係数x1につき説明する。補正係数x1は、例えば前述のように、
1980年>建築年、である場合は、x1=0.6とし、
1981≦建築年<2000である場合は、x1=0.6+(建築年−1981)×0.4/19
建築年2000年である場合は、x1=1.0とする。
なおここでは、1981年および2000年で法改正がなされているため、この前後で接合部仕様が変化していると推測して係数を決定している。
図31と共に、劣化に対する補正係数x2につき説明する。この補正係数x2は、例えば、耐震診断一般診断を準用した劣化調査により算出された劣化点数を準用して求める。その場合、x2=0.7〜1.0となる。
図32と共に、試験結果に対する補正係数Bにつき説明する。この補正係数Bは、例えば、耐震診断評点Isと、A×(固有振動数)2×x1×x2の回帰式(最小二乗法)に
より求める。
実施形態に係る簡易耐震評価算出式(1)による評点Is′の算出結果を、他の算出方法と比較した結果を説明する。
この簡易耐震評価算出式(1)による評点Is′の精密耐震評点Isに対する比率を求めたところ、最大1.42、最小0.38であった。
論文として発表されている他の各既往研究A,B,Cでは、それぞれ、
既往研究A:最大3.46、最小0.71、
既往研究B:最大4.00、最小0.88、
既往研究C:最大1.13、最小0.24、
であり、他の算出式と比較して、バランス良く評価できており、精度が良いことが確認できた。
また、一般耐震診断では、最大1.10、最小0.31、であり、一般耐震診断と比較しても、実施掲載の簡易耐震評価算出式(1)によると、バランス良く評価できていることが確認できた。
さらに、実施形態に係る簡易耐震評価算出式(1)は、接合部形式や劣化による低減と建物の耐力とを明確に分けたことにより、耐震補強による評点の予測が可能になるという利点が得られる。
劣化補修の例を説明する。評点Is′=0.5の建物に劣化補修のみを行うときの評価予測である。
x2:0.6→1.0に向上させたとする。この場合、
Is′:0.5→0.5×1.0/0.6→0.8、となる。
すなわち、補強前は、評点Is′=0.5であった建物が、補強によって評点Is′=0.8に向上する。
耐力壁補強の例を説明する。
評点Is′=0.5の建物に耐力壁1枚(基準耐力3kN)を補強するときの評価予測である。
補強前は、Qr=50kN(式の逆算により求める。ただし、建物の総重量が必要)であったところ、補強により、Qr=53kNとなる(式に代入して、補強後の固有振動数fおよび評点Is′を予測)。
この場合、補強前は評点Is′=0.5であったところが、補強により評点Is′=0.7に向上することが計算できる。
この簡易耐震評価算出式(1)によるその他の効果を説明する。
・少量の建物情報のみで(例えば、図23に示す入力画面G2,G4に入力する情報のみで)、耐震診断評点の換算値を算出できる。
・専門的な知識がなくても、劣化に関してアンケートにチェックを付すだけで、耐震診断評点の換算値を算出できる。例えば、顧客へのヒアリングのみでも可能である。
この簡易耐震診断評点の算出方法を実施するプログラムおよび装置の例を説明する。
図7の簡易耐震診断評点の算出プログラム16は、図10に流れ図を示すように、入力処理手順R0、評点算出手順R1、および出力処理手順R2からなる。評点算出手順R1は、前記簡易耐震評価算出式(1)によって評点Is′を算出する手順である。入力処理手順R0は、前記入力処理手段19につき説明した処理を行う手順である。
図8の簡易耐震診断評点算出装置2Aaにおける評点算出部25は、前記簡易耐震評価算出式(1)によって評点Is′を算出する手段である。この評点算出部25と、前記入力処理手段19とで、前記簡易耐震診断評点の算出装置2Aaが構成される。
この簡易耐震診断評点の算出プログラム16および簡易耐震診断評点の算出装置2Aaによると、上記の簡易耐震診断評点の算出方法の実施が行え、この算出方法につき説明したように、理論式と実測値を併用することより、常時微動の計測結果と簡単な調査結果とで、耐震診断の評点を精度良く求めることができ、また精密耐震診断の評点と整合させることができる。
次に、図36に示すフラジリティ曲線、およびその作成方法、装置、プログラムにつき説明する。作成方法の前にフラジリティ曲線につき説明する。
フラジリティ曲線は、入力地震動に対して、建物がある損傷状態となる確率を表したものであり、図36に示すような対数正規分布で表される場合が多い。同図は、全壊となる場合の確率分布と半壊となる場合の確率分布をそれぞれ示す2本のフラジリティ曲線を示す。フラジリティ曲線は、図37に示すような0−1関数と異なり、ある損傷状態となる確率を表すため、その損傷状態となる可能性を詳しく知ることができる。
フラジリティ曲線を対数正規分布関数Φで示す場合、次式(2)で示される。
Figure 0006474543
この対数正規分布関数Φを示す曲線において、標準偏差ζは傾きを示す。標準偏差ζが大きいほど、つまりばらつきが大きいほど、曲線は傾く。中央値λ(図36に○印を付した値)は、損傷確率が50%となるときの地震動νを示す。上式の対数正規分布関数Φは、中央値λと標準偏差ζによって定まるため、その作成には、これら中央値λと標準偏差ζを求める。
建物経年劣化を考慮したフラジリティ曲線につき説明する。これについては、既往研究により、次式で示されることが知られている。図38に示すように、建物の耐力が低いほど、フラジリティ曲線が左に移動する。
Figure 0006474543
上記の建物経年劣化を考慮したフラジリティ曲線は、次の変数を含む。
g:重力加速度(=9.8m/s2
:等価高さ(=例えば4.5m)
:ベースシア係数←(常時微動計測から求める)
μ:有効質量比(=0.9)
:加速度応答スペクトルの低減率(=1.5/(1+10h))
減衰:h=γ(1−1/√(R(τ)/Ry))
係数:γ=0.2
降伏変形角:Ry=1/120
(τ):ある損傷状態となる最大応答角の中央値
←(耐久性・劣化チェック項目から求める)
ζ:最大応答変形角に対する損傷のばらつき(=0.4)
ベースシア係数Cは、種々の求め方が提案されているが、この実施形態では、新たに案出した次式(3)を用いる。このベースシア係数Cを用いると、評点評価式と近い結果となることがわかった。
Figure 0006474543
なお、He:等価高さ
(最大応答変形角)の経年劣化につき説明する。
上記変数R(τ)は、築τ年の建物において、損傷確率が50%となる最大応答角であり、フラジリティ曲線の中央値を決めるパラメータとなる。既往研究により、経年劣化曲線は、次式で示されることが分かっている。
(τ)=Rmo・d(τ)
d(τ)= max [exp(-ln)(0.5)・( τ/ ( τ0 ))2 ),0.5]
mo:新築時の最大応答変形角
上記の式をグラフで示すと図39に示すようになる。低耐久であるほど、耐用年数τ0 が短い。上記の式より、耐用年数τ0が分かり、耐用年数診断が行える。
経年劣化曲線の再評価につき説明する。図41に示すように、ある損傷状態となる最大応答角の中央値Rm0は、築年数によって変化する。中央値Rm0は、健全度が1.0の場合は、同図に破線で示す曲線となるが、対象建物1が劣化していると、耐用年数βτ0が低下する。そこで、劣化診断により、健全度を判定し、その判定結果によって、低減係数 を再評価し、その再評価した低減係数を用いる。
この提案の既存木造住宅のフラジリティ曲線作成方法では、上記のRの経年劣化、および経年劣化曲線の再評価を行ってフラジリティ曲線を作成する。
図36のフラジリティ曲線を作成する方法につき説明する。概要を説明すると、建物のモデル化方法として、図1,図2に示すように、(1)常時微動計測結果によるベースシア係数C(または降伏点耐力)、(2)耐久性(簡易耐久性診断等による耐用年数)、および(3)劣化度(簡易劣化診断等による健全度)を用いて、図34にグラフで示される建物モデルを作成し、この建物のモデルからフラジリティ曲線を作成する。
具体的には、つぎの各過程で作成する。
まず、前記対象建物1につき計測した常時微動から所定の演算規則によって前記建物の耐震性を示すベースシア係数Cまたは降伏点耐力Qを演算する。
このベースシア係数Cまたは降伏点耐力Q、耐用年数、および健全度を用いて、前記対象建物1を、図34に示す荷重と変形角との関係で表されかつ所定の損傷状態となるときの変形角の値を持つ建物モデルにモデル化する。この建物モデルは、対象建物1を1質点系と見なして示すモデルであり、同図に示すように、ある変形角(図示の例では1/120 rad)になるまでは、ベースシア係数Cまたは降伏点耐力Qに変形角が比例するが、前記のある変形角以上では、ベースシア係数Cまたは降伏点耐力Qが一定で、変形のみが進むグラフとなる。なお、木造軸組み住宅が降伏状態になる変形角は一般的に1/120とされており、この値を用いた。前記健全度は劣化の進行程度である。前記所定の損傷状態は、ここでは全壊および半壊であり、全壊および半壊となるときの変形角Rを持つ建物モデルとする。
この建物モデルより得られる前記所定の損傷状態となるときの変形角Rの値、および前記ベースシア係数Cまたは降伏点耐力を用いて前記対象建物のフラジリティ曲線を作成する。
前記耐用年数は、ここでは簡易耐久性診断により求めた耐用年数を用いる。前記健全度は、前記アンケート形式の簡易劣化診断による健全度を用いる。
この方法によると、常時微動の計測値からベースシア係数Cまたは降伏点耐力Qを求め、建物モデルの作成に用いるため、振動性状,耐震性能につき、対象建物1の実測値に基づく精度の良い建物モデルとできる。
また、この対象建物1の基本的な性状,性能を示すベースシア係数Cまたは降伏点耐力Qに加えて、耐用年数、および健全度を用いて建物モデルを作成するため、より一層精度の良い建物モデルが作成できる。前記耐用年数および健全度は、簡易耐久性診断による耐用年数や、簡易劣化診断による健全度を用いることができ、これにより簡単に求めることができる。
前記建物モデルは、荷重と変形角との関係で表されかつ全壊状態および半壊状態となるときの変形角の中央値R(全壊),R(半壊)を持つモデルであり、フラジリティ曲線は前述のように変形角の中央値Rと標準偏差ζによって定まるため、この建物モデルからフラジリティ曲線を簡単に作成することができる。標準偏差ζは、前記2つの中央値Rから求まる。
これらのため、既存木造住宅につき、常時微動計測と簡易なアンケート形式等による調査により即時にフラジリティ曲線を作成できる。また、常時微動計測による耐震性評価結果、耐久性、健全度を踏まえた変形性評価結果を併せた建物モデルを作成でき、そのため精度の良いフラジリティ曲線を作成することができ、実用レベルのフラジリティ曲線の作成方法となる。
前記ベースシア係数をC用いる場合、このベースシア係数Cは、対象建物1につき計測した常時微動から対象建物1の固有振動数fを求め、この固有振動数fの二乗値に、建物構造に関して定められた項目の値を乗算して求めるようにしても良い。
上記の建物構造に関して定められた項目の値は、例えば、対象建物の等価高さHeと、
有効質量比を含む剛性低減率α′等である。
具体例を上げると、ベースシア係数Cを前述の式(3)次式によって求める。
このように、ベースシア係数Cを、常時微動から求まる固有振動数の二乗値に、建物構造に関して定められた項目の値を乗算して求めるようにすることで、精度良くベースシア係数を求めることができる。
前記耐用年数は、木造住宅の基本耐用年数に、間取りから定まる係数D2、構法から定まる係数B2、および対象建物1の設置地域から定まる係数(D11+D12)/2を乗じて求めても良い。
すなわち、耐用年数=(基本耐用年数)×(間取り係数D2)×(構法係数B2)×地域係数((D11+D12)/2)としても良い。
基本耐用年数を30とすると、
耐用年数=30・D2・B2・(D11+D12)/2
となる。
木造住宅は、一般に耐用年数が30〜40年とされているが、この耐用年数は、間取り、構法、設置地域等によって大きく影響する。そのため、これらの要因を係数として定め、基本耐用年数に乗じることで、より精度良く耐用年数が求まる。上記構法は、例えば外壁の形式、軒の出、換気口の配置等である。上記設置地域は、例えばシロアリやイエアリ等の生息する度合いで定められる地域区分や、年平均気温等である。これらの構法や設置地域の違いは、耐用年数に大きく影響する。
間取り係数D2は、延べ床面積および、水廻り部分の割合等による。延べ床面積が大きい程、耐用年数が長くなる傾向になる。また、水廻り部分は、水分を多く含む環境下にあるため、建物の他の部分に比べて耐用年数が短くなる。そのため、水廻り面積の割合およびその他面積の割合を、それぞれ対応する前記基準の係数に乗算して求め、これらの乗算結果を加算した値を間取り係数D2として定めることで、耐用年数の評価の精度向上につながる。
具体例を挙げると、間取りから定まる係数D2は、水廻り部分とその他の部分に対してそれぞれ基準の係数を定めておいて、全体の床面積に対する水廻り面積の割合およびその他面積の割合を、それぞれ対応する前記基準の係数に乗算して求め、これらの乗算結果を加算した値とする。
数値例で示すと、その他の部分の基準の係数を1.5、水廻り部分の基準の係数を0.5、としたときに、その他面積の割合が86%、水廻り面積の割合が14%であり、有効数字を2桁で示すとすると、
D2=1.5×0.86+0.5×0.14=1.36≒1.4
となる。
延べ床面積が不明な場合は、次の簡易算定方法で延べ床面積、水廻り面積の割合を求める。
この簡易算定方法は、居室、台所、風呂、洗面所、トイル等の部屋種類毎に基準面積を適宜に設定しておき、その部屋種類毎の基準面積と対応する部屋数を掛けた値を、部屋種類の全てについて加算する方法である。また、これと同様に、部屋種類毎に基準面積とその部屋数とから、水廻り面積の割合を求める。
表1,表2に示すように、22戸の木造住宅につき、この簡易算定方法により求めた延べ床面積,水廻り面積の割合と、図面より得られる延べ床面積,水廻り面積の割合を比較したところ、表1からわかるように、両者の差は小さく、上記簡易算定方法を用いても支障がないことが確認できた。
次式は、間取りから水廻り面積の割合の割合を求める式の例である。
Figure 0006474543
Figure 0006474543
Figure 0006474543
構法係数B2は、例えば、外壁の種類から定まる係数と、1階の軒の形式(例えば、軒の出)から定まる係数と、換気口の配置から定まる係数の和とする。具体例で示すと、表3に示すように、外壁面材の種類に応じて、1.4、1.2、1.0、0.8の係数が定められ、軒の形式によって0.2、0.0、−0.1の係数が定められ、換気口の配置により1.3、1.0、0.8の係数が定められていたとする。この場合に、例えば、外壁面材が1.2の係数となる種類、軒の形式が−0.1となる種類、換気口の配置が1.3となる配置であるとすると、構法係数B2は、
B2=(1.2+(−0.1)+1.3)/2=1.2
となる。
Figure 0006474543
地域から定まる係数D11,D12のうちD11は、例えば表4の左半部に示すように、シロアリ,イエアリの生息する地域であるか、また内陸部である沿岸部であるかの区分によって定めた係数あり、この表では、区分によって1.0または0.8としている。D12は年平均気温の区分によって定めた係数であり、例えば表4の右半部に示すように、区分によって0.0〜1.2とする。D11=0.8、D12=0.9であって、他の係数が上記の数値例の場合、推定の耐用年数は、次式による値となる。
耐用年数=30(年)・D2・B2・(D11+D12)/2
=30×1.4×((1.2+(−0.1))+1.3)/2
=42年
Figure 0006474543
図42は、この簡易法により求めた耐用年数と、詳細な調査により求めた耐用年数とを22件の木造住宅の調査物件につき比較した例を示す。簡易法では、調査物件での検証による判断が難しい項目について、削除・改良(係数の変更、入力方法の変更)を行った。この簡易法で削除・改良を行った項目は、床下換気口、外壁構法、1階の軒の出、シロアリ分布、地域区分、年平均気温、水廻り面積の割合である。同図に示すように、簡易法により求めた耐用年数と、詳細な調査により求めた耐用年数とに大きさな差はなく、簡易法が実用化できることが分かる。
前記健全度は、前述のように建物の劣化の要因毎に該当するか否かを示すチェック項目を定め、これら複数のチェック項目のチェック結果から、定められた規則によって評価点を求めてその評価点を前記健全度としても良い。前記健全度は、換言すれば劣化の状況である。この劣化の状況である健全度は、建物の劣化の要因毎に該当するか否かを示すチェック項目を定め、これら複数のチェック項目のチェック結果から、前述のポイント等による定められた規則によって評価点を求めることで、適切な値が得られ、適切な値と係数を定めることができる。
前記健全度を評価点で定める場合、評点Is′の求め方につき前述した健全度を用いても良い。
健全度評価の具体例を示すと、図43に示すチェック項目とする。同図のチェック項目は、前述の例と同じである。
また、フラジリティ曲線の作成に用いる健全度は、図43のチェック項目のチェック内容に応じて図44に示す値とする。チェックされた事項に対して、前記評点Is′を求める場合の劣化係数とフラジリティ曲線を求める場合の健全度とは、別の値を定めても良い。
上記のチェック内容からポイントによって定める劣化係数と、一般診断で詳細に算定される劣化係数とを、10件の調査対象建物につき比較したが、0.1以上の差は生じてないことが確認された。
上記のようにして作成したフラジリティ曲線を利用する被害予測等につき説明する。この実施形態の既存木造住宅の耐震性評価方法は、前記のフラジリティ曲線の作成方法で作成したフラジリティ曲線を用いて、前記対象建物1の被害予測を行うことができる。
この方法によると、前記のフラジリティ曲線の作成方法を用いるため、対象建物の被害予測を簡単にかつ精度良く求めることができる。例えば、フラジリティ曲線に震度の値を与えると、その震度における損傷確率が得られ、上記フラジリティ曲線によると、その震度における建物全壊となる損傷確率および半壊となる損傷確率が求まる。
図15と共に前述したように、対象建物1の設置場所における震度5弱〜6強の発生確率を求め、その震度における建物全壊となる損傷確率および半壊となる損傷確率と併せて評価することで、地震損失期待値が得られる。
また、対象建物1を補修した場合の耐用年数および健全度を計算し、その場合の耐用年数および健全度を用いてフラジリティ曲線を再作成することにより、補修後の震度5弱〜6強の全壊,半壊となる損傷確率や地震損失期待値を求めて補修前の値と比較することで、被害低減効果を求め、提案することができる。
この実施形態の耐震性総合評価方法は、既存木造住宅からなる対象建物1の耐震性診断を、コンピュータを用いて行う方法であって、
前記対象建物の常時微動の計測データと、前記対象建物についての建物構造、劣化に影響する要因、および設置地域アンケート形式によるデータとを入力する入力過程と、これらの入力データを解析して、耐震性の評価、被害予測、および改善提案の結果を得る解析過程と、この解析過程で得た前記結果を報告データとして纏めて出力する出力過程とを備え、
上記の既存木造住宅のフラジリティ曲線作成方法を用いる。
従来の耐震診断では、専門の技術者が時間をかけて、床下、小屋裏、室内、外観等を調査し、その調査結果により解析していたため、時間がかかる上に専門技術者を必要とし、また専門技術者の判断により結果が左右されるという問題点があった。しかし、この実施形態の耐震性総合評価方法によると、常時微動の計測データと、アンケート形式によるデータから解析を行い、またこの実施形態のフラジリティ曲線作成方法を用いるため、高度な知識を有する専門技術者によらなくても、簡単にかつ迅速に、適切な耐震性の評価、被害予測、および改善提案を行うことができる。
このフラジリティ曲線作成方法を実施するプログラムおよび装置の例を説明する。
図7のフラジリティ曲線作成プログラム17は、図11に流れ図を示すように、入力処理手順T0、ベースシア係数演算手順T1、耐用年数演算手順T2、健全度演算手順T3、フラジリティ曲線作成手順T5、および出力処理手順T5を含む。
入力処理手順T0は、前述のように入力画面(図12)を表示して入力させ、入力された事項を所定の記憶エリアに記憶する手順である。
出力処理手順T5は、フラジリティ曲線作成手順T5で作成されたフラジリティ曲線を、後の演算等のために所定の記憶領域に記憶させる手順である。出力処理手順T5には、前述の全壊・半壊確率の評価(A5a)および被害低減効果の提案(A5b)を行う手順を含んでいても良い。
ベースシア係数演算手順T1では、対象建物1につき計測した2階1aおよび地盤部1b常時微動のデータから所定の演算規則によって前記建物1の耐震性を示すベースシア係数Cを演算する。この演算は、前述の式(3)を用いて行う。
耐用年数演算手順T2では、入力された間取り、構法、および前記対象建物の設置地域の情報から、間取りから定まる係数、構法から定まる係数、および前記設置地域から定まる係数を前記の所定の演算式(3)によって演算し、設定された木造住宅の基本耐用年数に、前記間取りから定まる係数、構法から定まる係数、および前記設置地域から定まる係数を乗じて耐用年数を求める。
健全度演算手順T3では、建物の劣化の要因毎に該当するか否かを示す定められたチェック項目についてのチェック結果の入力から、定められた規則によって評価点を求めてその評価点を、劣化の進行程度を示す健全度として出力する。前記「定められた規則」は、前述のポイントによる評価である。
フラジリティ曲線作成手順T5は、前記各手順でそれぞれ演算されたベースシア係数、耐用年数、および劣化の進行程度を示す健全度を用いて、前記対象建物1を、荷重と変形角との関係で表しかつ所定の損傷状態となるときの変形角の値を持つ建物モデルにモデル化し、この建物モデルより得られる前記所定の損傷状態となるときの変形角の値、および前記ベースシア係数または降伏点耐力を用いて前記対象建物のフラジリティ曲線を作成する。フラジリティ曲線作成手順T5の具体的な内容は、前述のフラジリティ曲線作成方法で述べたように、図34の建物モデルを作成し、このモデルよりフラジリティ曲線を作成する。
図9のフラジリティ曲線作成装置2bは、この実施形態のフラジリティ曲線作成方法を実施する装置であって、入力処理手段19と、フラジリティ曲線作成部26と、出力処理手段21とを有する。フラジリティ曲線作成部26は、ベースシア係数演算手段28、耐用年数演算手段29、健全度演算手段30、およびフラジリティ曲線作成手段31からなる。フラジリティ曲線作成部26を構成する上記各手段26〜31は、それぞれ、フラジリティ曲線作成プログラム17のベースシア係数演算手順T1、耐用年数演算手順T2、健全度演算手順T3、フラジリティ曲線作成手順T4を実行する手順である。
入力処理手段19および出力処理手段21は、それぞれフラジリティ曲線作成プログラム17の入力処理手順T0および出力処理手順T5を実行する手順である。
このフラジリティ曲線作成プログラム17およびフラジリティ曲線作成装置2bによると、このフラジリティ曲線作成方法の実施が行え、この曲線作成方法について前述したように、既存木造住宅につき、調査により即時にフラジリティ曲線を作成でき、また常時微動計測による耐震性評価結果、耐久性、健全度を踏まえた変形性評価結果を併せて、建物モデルを作成するため、精度の良いフラジリティ曲線を作成でき、実用レベルのものとなる。
なお、図35は、図34の建物モデルを参照して前記評点の補正につき示す図である。耐力Qの低減がない場合に、同図に破線の丸印で示す変形と耐力の関係にあったとする。これに、接合部の形式(接合部と基礎の状況)に対する補正係数x1と、劣化診断による不具合情報による補正係数x2を考慮すると、変形と耐力の関係は、例えば同図に実線で示す丸印の関係となる。
この実施形態における耐震性総合評価方法による効果を纏め直して次に示す。
・簡単な入力と操作により、調査から結果表示までの耐震性能評価が、短時間で精度良く行える。
・センサー3による常時微動測定と居住者に対する簡単なヒアリング内容の入力からプログラム処理により結果を求めるため、操作者の判断による差が小さく、再現性の高い結果が得られる。
・常時微動測定データと、ヒアリングデータ(住所、建物の構造・仕様、間取り情報、劣化情報、ライフスタイル情報)から、総合的に耐震性能を評価できる。
・特に、常時微動測定データと上記ヒアリングデータから、耐震診断評点を推定でき、さらに、固有振動数も算出し結果を表示できることから、建物に傷をつけることなく、耐震診断の評点を精度良く求めることができ、また精密耐震診断の評点と整合させることができる。
・しかも、存木造住宅につき、調査により即時にフラジリティ曲線を作成でき、また常時微動計測による耐震性評価結果、耐久性、健全度を踏まえた変形性評価結果を併せて、建物モデルを作成するため、精度の良いフラジリティ曲線を作成でき、実用レベルのものとなる。
・耐震性に関連する複数の項目がチャートで表示されるため、総合的な理解・判断しやすい。
・総合評価のチャートの縦軸は地震に対する安心度を表し、横軸は総合的な健康度を表すため、総合的な理解・判断しやすい。
・ライフスタイル情報の選択年数を変えることで、ライフスタイル情報の年数にあった地震動発生確率が確認できる。
・地震発生確率を地震起こり難さとして、マークの数で表示する。このため地震発生確率が分かりやすい
・建物の強さをマークの数で表示するため、建物の強さが分かり易い。
・ヒアリングデータ(劣化情報)から、劣化度を健康度評価点としてポイントで表示するため、劣化度が簡単にかつ適切に求まり、また示された劣化度が分かり易い。
・健康度(劣化度)をマークの数で表示するため、分かり易い。
・ヒアリングデータ(住所、建物の構造・仕様、間取り情報)から、耐久性を耐久性評価点としてポイントで評価するため、耐久性が簡単にかつ適切に求まり、また示された耐久性が分かり易い。
・寿命をマークの数で表現し、耐用年数を表示するため、寿命が分かり易い。。
・間取り情報から、床面積・屋根面積・外周長さ・外壁足場面積・仮囲い長さを推定し、その推定した各種面積等を用いて、改修概算費用を表示するため、床面積が不明の場合であっても床面積が簡単にかつ適切に求まり、改修概算費用が求められる。
・現状の建物の被害予測と地震対策実施後(屋根の軽量化・壁の補強・劣化補修)の被害予想を表示するため、対策の選択や補修の予定が行い易い。
・今後の使用年数に合わせて、現状・補強・補強+補修を行った場合のLCC評価を行い、最適な補修・補強方法を表示するため、対策の選択や補修の予定がより一層行い易くなる。
・入力情報と出力情報の評価結果と改修提案内を用いて、報告書を作成するため、この報告書によって必要な事項が全て分かる。
・評価結果はサーバへ送信されるため、プログラムの修正等への活用が可能となる。
・耐震改修方法の説明、耐震アイテムの情報が表示できるため、耐震手法についての知識習得もできる。
・地震リスクを考慮した耐震性能評価指標により、その地域に対応した最適な耐震性能レベルが分かる。
・耐久性評価点と健康度評価点を用いて長持ち度を示す場合は、精度の良い長持ち度がわかる。
・評価に基づく改修方法とその概算費用、耐震性向上度合いが表示されるため、改修実施へ向けた検討がしやすい。
・評価項目は立地上の地震危険度、耐震性能の推定値、耐用年数、劣化度に関する項目とし、それぞれ地震起こり難さ、地震に対する強さ、寿命、健康度と表現する。地震リスクが総合的に分かる。
図47〜図51は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態において、特に説明した事項の他は、図1〜図46と共に前述した第1の実施形態と同様である。この実施形態は、概要を説明すると、耐震改修の前後で微振動の測定およびヒアリング(問診)を実施し、改修前後の効果を定量化して分かり易く表示する。前記実施形態では、補強後の評点は、補強計画の段階での計算により算出されるが、耐震改修後にその改修効果が実際に出ているかは分からない。また、既往の特許文献等の文献では、改修効果を独自の評点や固有振動数のみで評価しているため、耐震性能がわかり難い。この実施形態は、このような課題を解消するものである。
図47に示すように、この実施形態に用いる耐震性総合評価装置2Bは、第1の実施形態における耐震性総合評価装置2A(図6参照)において、総合評価手段20に、耐震改修効果評価手段51を設けたものである。耐震改修効果評価手段51は、図48に示すように、メイン解析プログラム15に加えた比較プログラム52によって構成される。比較プログラム52は、「比較PRG」と略称する場合がある。耐震改修効果評価手段51および比較プログラム52は、次に説明する対象建物1の耐震改修後の評点の算出を行い、評価結果DBサーバ12に記憶しておいた評点と比較して、その耐震改修前後の効果を求める処理を主な内容とする。
この実施形態の既存木造住宅の耐震性総合評価方法では、図49に示すように、対象建物1の2階1bと地盤1aの2箇所での常時微動のデータの測定を、対象建物1の耐震改修前と耐震改修後とにそれぞれ行い、これら耐震改修前の常時微動のデータを用いた耐震診断の評点の算出と、耐震改修後の常時微動のデータを用いた耐震診断の評点の算出とを、第1の実施形態で説明した既存木造住宅の簡易耐震評価点の算出方法を用いて行う。また、算出された耐震改修の前後の耐震診断の評点、および前記評点から求まる前記対象建物1の性能を表す事項について耐震改修による効果を比較して定量的に求める。さらに、後に述べるようにその他の各事項につき、耐震改修の前後の比較を行ってその耐震改修の効果を定量的に求める。耐震改修前の耐震診断の評点の算出やその他の評価事項の求め方は、前記実施形態で述べた方法と同じである。なお、図49は、左半分に耐震改修前の各事項を、右半分に耐震改修後の各事項を示しており、左半分は図5と同じ内容である。右半分は図50に拡大して示す。耐震改修の前後で用いる耐震性総合評価装置2A,2Bは、互いに同じ装置を用いても、別の装置を用いても良い。
耐震改修後の評点や各事項を求めるについては、耐震性総合評価装置2Bに入力機器5(図47,48参照)から改修前後の比較を開始させるための所定の入力を行う。この入力により、耐震改修効果評価手段51(比較PR52)が起動し、耐震改修後の評価を行うモードとなる。このモードにおいて、まず、評価結果DBサーバ12から、同じ対象建物1についての耐震改修前データを取り込む。この耐震改修前データは、先に耐震改修前に前述のように評点算出等の各処理を行って報告書等として評価結果DBサーバ12に登録しておいたデータであり、評点等を求めるために必要な各事項と、耐震改修前の各評価結果が含まれている。
ただし、耐震改修を行った事項については、耐震改修前データについては含まれていないため、ヒアリングを行ってその結果により分かる耐震改修事項を耐震性総合評価装置2Bに入力する。前記ヒアリングは、耐震改修事項についてのチェックリストに従って行い、そのチェックリストのチェック結果を入力する。
前記ヒアリングおよびその結果の入力を行った後、耐震改修された対象建物1について2階1bと地盤1aの2箇所での常時微動のデータの測定を行う。ヒアリングおよびその入力よりも先に、または前記ヒアリングおよびその入力と並行して前記常時微動のデータの測定を行って良い。
このようにして耐震改修後の常時微動のデータ、およびヒアリング結果の入力が得られると、改修前と同様に、耐震診断の評点の算出、およびその他の各事項の評価を行う。評価を行う前記その他の各事項は、例えば、図50に評価結果の出力の各項目を示すように、総合評価、耐震性評価、劣化評価、耐久性評価である。これらの各評価を、先の実施形態で示した耐震改修前の評価時と同様に行い、求められた評価値を耐震改修前の評価値を比較して、改修前後の総合評価、改修前後の耐震性評価、改修前後の劣化評価、改修前後の耐久性評価として出力する。耐震改修の前後の評価値の比較は、前後の評価値をグラフや表で併記することであっても、また前後の評価値の割合を求める処理であっても良い。評価結果の出力には、耐震改修に影響しない事項、例えば対象建物1の建設地の地震発生確率等を含めても良い。
また、上記の出力の他に、「改修効果」として改修前後の効果についての所定の出力、例えば改修効果を纏めた事項を求めて出力する。
前記各出力は、報告書として纏め、印刷するか、またはメール添付して顧客等に送信すると共に、前記評価結果サーバ12に登録、すなわちアップロードする。
前記耐震改修効果評価手段51(比較PRG52)は、このような処理を行う。
図51は、耐震改修効果評価の報告書の一例を示す。この報告書には、施主の氏名や、建物の所在値に係る事項、対象建物の構造,仕様,築年数等に関する各事項(築年数、増改築の有無、延べ面積、外壁仕様、軒の深さ、換気口、屋根の種類、屋根形状等)を記載する。また、建設地に地震が発生する可能性についての情報を、地図や近くの断層等の情報と共に記載する。以上の記載事項は、耐震改修した事項を除き、耐震改修前の情報と同じであり、評価結果DBサーバ12から得た内容である。耐震改修した事項は、前記ヒアリングによるチェックリストの入力内容から得た情報である。
耐震改修の評価に係る出力,表示事項としては、常時微動測定結果(改修前)の表示事項61、常時微動測定結果(改修前)の表示事項62、および耐震改修(すなわち耐震リフォーム)による地震被害の低減効果の表示事項63等である。
常時微動測定結果(改修後)の表示事項61としては、対象建物1の長手方向および短手方向の固有振動数を示す表64と、固有振動数毎の応答倍率との関係を示すグラフ65と、これらについてのコメント(解説)である。このコメントとしては、例えば、「・中地震発生時に、多少の被害が生じるかもしれません。・大地震発生時に、大きな被害が生じるかも知れません。」と言った内容の文言による説明である。
常時微動測定結果(改修前)の表示事項62は、前記「常時微動測定結果(改修後)の表示事項62と、各値やその値の違いによるコメント内容の違いによる他は同じである。
耐震改修(耐震リフォーム)による地震被害の低減効果の表示事項は、横軸に震度、縦軸に被害の程度示したグラフ等に、地震の震度に対する予測される被害の程度を、耐震改修前および耐震改修後について示したものとされる。
このようにこの実施形態の既存木造住宅の耐震性総合評価方法によると、耐震改修を行った場合に、改修の効果を定量的に求めることができ、顧客満足度の向上が期待できる。また、改修効果の確認を機械測定により行うため、顧客と一緒に改修効果を確認できる。
1…対象建物
2…情報処理装置
2A…耐震性総合評価装置
2B…耐震性総合評価装置
3…センサー
4…処理装置本体
5…入力機器
6…出力機器
6a…画像表示装置
13…総合評価プログラム
14…微動計測・固有振動数演算プログラム
15…メイン解析プログラム
16…簡易耐震診断評点の算出プログラム
17…フラジリティ曲線作成プログラム
19…入力処理手段
20…総合評価手段
21…出力処理手段
2Aa…簡易耐震診断評点算出装置
2Ab…フラジリティ曲線作成装置
23…主解析手段
25…評点算出部(評点算出手段)
26…フラジリティ曲線作成部
28…ベースシア係数演算手段
29…耐用年数演算手段
30…健全度演算手段
31…フラジリティ曲線作成手段
51…耐震改修効果評価手段
52…比較プログラム(比較PRG)

Claims (7)

  1. 2階建て既存木造住宅からなる耐震性診断の対象建物の、必要耐力に対する保有耐力の割合である耐震診断の評点Is′を算出する方法であって、
    次式(1)によって前記評点Is′を求める既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法。
    Figure 0006474543
    ここで、
    :固有振動数 [Hz]
    x1:接合部の形式に対する補正係数
    x2:劣化調査による補正係数
    He:等価高さ [m]
    Z:地震地域係数(=0.7〜1.0)
    :層間変形角
    :振動特性係数
    Ai:層せん断力係数
    :標準せん断力係数
    g:重力加速度[9.8m/ s2]
    α′:有効質量比を含む剛性低減率
    B:他の補正係数
    ただし、上式(1)の補正係数Bは省略しても良い。
  2. 請求項1に記載の既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法において、前記接合部の形式に対する補正係数は、前記対象建物の建築の年度によって区分した値とする既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法において、前記いずれかの補正係数につき、前記対象建物を補修した場合における補修内容に対応する補正係数を用いて、補修後の前記評点を算出する既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法。
  4. 既存木造住宅からなる対象建物の耐震性診断を、コンピュータを用いて行う既存木造住宅の耐震性総合評価方法であって、
    前記対象建物の常時微動の計測データ並びに、前記対象建物についての建物構造、劣化に影響する要因、および設置地域アンケート形式によるデータを入力する入力過程と、これらの入力データを解析して、耐震性の評価、被害予測、および改善提案の結果を得る解析過程と、この解析過程で得た前記結果を報告データとして纏めて出力する出力過程とを含み、
    前記解析過程で請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出方法を用いることを特徴とする、
    既存木造住宅の耐震性総合評価方法。
  5. 2階建て既存木造住宅からなる耐震性診断の対象建物の、必要耐力に対する保有耐力の割合である耐震診断の評点を算出する装置であって、
    入力機器により入力された入力事項を所定の記憶領域に記憶する入力処理手段と、 次式(1)によって前記評点Is′を算出する評点算出手段を有することを特徴とする既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出装置。
    Figure 0006474543
    ここで、
    :固有振動数 [Hz]
    x1:接合部の形式に対する補正係数
    x2:劣化調査による補正係数
    He:等価高さ [m]
    Z:地震地域係数(=0.7〜1.0)
    :層間変形角
    :振動特性係数
    Ai:層せん断力係数
    :標準せん断力係数
    g:重力加速度[9.8m/ s2]
    α′:有効質量比を含む剛性低減率
    B:他の補正係数
    ただし、上式(1)の補正係数Bは省略しても良い。
  6. コンピュータで実行可能であり、2階建て既存木造住宅からなる耐震性診断の対象建物の、必要耐力に対する保有耐力の割合である耐震診断の評点を算出するプログラムであって、
    入力機器により入力された次の入力事項を所定の記憶領域に記憶する入力処理過程と、
    次式(1)によって前記評点Is′を算出する評点算出手順を有することを特徴とする既存木造住宅の簡易耐震診断評点の算出プログラム。
    Figure 0006474543
    :固有振動数 [Hz]
    x1:接合部の形式に対する補正係数
    x2:劣化調査による補正係数
    He:等価高さ [m]
    Z:地震地域係数(=0.7〜1.0)
    :層間変形角
    :振動特性係数
    Ai:層せん断力係数
    :標準せん断力係数
    g:重力加速度[9.8m/ s2]
    α′:有効質量比を含む剛性低減率
    B:他の補正係数
    ただし、上式の補正係数Bは省略しても良い。
  7. 2階建既存木造住宅からなる対象建物の、耐震改修の効果を評価する既存木造住宅の耐震性総合評価方法であって、
    前記対象建物の2階と地盤の2箇所での常時微動のデータの測定を、前記対象建物の耐震改修前と耐震改修後とにそれぞれ行い、これら耐震改修前の常時微動のデータを用いた耐震診断の評点の算出と、耐震改修後の常時微動のデータを用いた耐震診断の評点の算出とを、それぞれ、請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の既存木造住宅の簡易耐震評価点の算出方法を用いて行い、
    算出された耐震改修の前後の耐震診断の評点、または前記評点から求まる前記対象建物
    の性能を表す事項について耐震改修による効果を比較して定量的に求めることを特徴とする、
    既存木造住宅の耐震性総合評価方法。
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