JP6225992B2 - トランジスタ - Google Patents

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Description

本発明は、キャリアの移動度が高い新規のトランジスタに関する。
本願は、2013年7月23日に日本に出願された特願2013−152669号、2014年3月18日に日本に出願された特願2014−055595号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
トランジスタは、コンピュータ等の電子回路や、TFT(thin film transistor)、RFID(Radio Frequency IDentification)のIC等、幅広い分野で利用されている。
トランジスタは、通常、基板上にゲート電極、絶縁層、半導体層、ソース電極及びドレイン電極を備えて構成され、近年では有機材料からなる半導体層(有機半導体層)を備えた有機トランジスタも開発されている。有機トランジスタは、柔軟性を有する、真空下ではなく大気下において適用可能な各種印刷法や塗布法等によって積層できるという有機材料の特徴を生かして、フレキシブルな回路をより簡略化された工程で製造できるため、有用性が高い。
トランジスタの性能を比較する重要な指標の一つとして、キャリアの移動度がある。トランジスタでは、ゲート電極に電圧が印加されると、半導体層の絶縁層との界面近傍にキャリアが生成して電気伝導度が上昇し、ソース電極及びドレイン電極間に電圧が印加されると、キャリアがソース電極又はドレイン電極に移動して、電流が流れる。このとき、キャリアの移動度が高いと、トランジスタはON(オン)からOFF(オフ)又はOFFからONへの動作が速く、電流値も大きくなり、好ましい特性となる。
一方で、ゲート電極を半導体層よりも基板側(下側)に備えるボトムゲート型のトランジスタでは、絶縁層の表面の平滑性が低い(凹凸が大きい)と、半導体層の絶縁層との界面近傍において、キャリアが前記界面に沿って移動するために、キャリアの実際の移動距離は、絶縁層の表面の凹凸の影響を受けて、凹凸が小さい(平滑性が高い)場合よりも長くなってしまい、キャリアの移動速度、すなわち移動度が低くなってしまう。そこで、このようなトランジスタでは、絶縁層の表面の平滑性を高くすることが重要となる。
これに対して、絶縁層の表面の平滑性を高くする方法としては、光硬化性樹脂を用いて塗膜を形成した後、この塗膜上に表面の平滑性が高いガラス板等を載せた状態で光を照射して前記樹脂を硬化させて絶縁層を形成し、前記ガラス板等を除去する方法が開示されている(特許文献1参照)。また、絶縁層表面の平滑性の影響を緩和する方法として、絶縁層上に平滑化層を形成し、この平滑化層上に有機半導体層を形成する方法が開示されている(特許文献2参照)。
しかし、特許文献1に記載の方法では、ガラス板等の配置及び除去という操作が必要であり、特許文献2に記載の方法では、平滑化層の形成という操作が必要であって、いずれもトランジスタの製造工程が煩雑であるという問題点があった。
そもそも絶縁層の表面の平滑性は、絶縁層に接して配置されているゲート電極の表面の影響を受けるものであり、ゲート電極の表面の平滑性が低い(凹凸が大きい)と、その平滑性を反映して、絶縁層の表面も同様に平滑性が低くなってしまう。これに対して、特許文献1及び2に記載の方法はいずれも、ゲート電極を簡略化された工程で形成する際に、この問題点を根本的に解決できるものではない。ゲート電極を真空蒸着やスパッタリング等の方法で形成すれば、表面の平滑性を高くできるが、特殊な装置が必要となり、さらに工程も煩雑となって、高コストになってしまうし、ゲート電極を各種印刷法や塗布法等によって形成すれば、上記の半導体層の場合と同様に、大気下において形成できるため、より簡略化された工程によって低コストで製造できるものの、表面の平滑性が低くなってしまうからである。
特開2004−063975号公報 特開2010−238869号公報
本発明は、表面の平滑性が高くかつ簡略化された工程で形成可能なゲート電極を備えたトランジスタを提供することを課題とする。
本発明は、基板上にゲート電極、絶縁層、半導体層、ソース電極及びドレイン電極を備え、前記ゲート電極が、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀を用いて形成されたものであり、前記ゲート電極の「ISO4287:1997」に基づく表面粗さが1〜10nmであるトランジスタを提供する。
Figure 0006225992
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
本発明のトランジスタは、ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造、又はボトムゲート・トップコンタクト型構造を有するものであってもよい。
発明のトランジスタは、前記ゲート電極の厚さが10〜1000nmであり、前記絶縁層の厚さが10〜1000nmであってもよい。
本発明のトランジスタは、ゲート電極が、表面の平滑性が高くかつ簡略化された工程で形成可能である。
本発明に係るトランジスタの一例を示す概略断面図である。 本発明に係るトランジスタの他の例を示す概略断面図である。 本発明に係るトランジスタの他の例を示す概略断面図である。 本発明に係るトランジスタの製造方法の一例を説明するための概略断面図である。 本発明に係るトランジスタの製造方法の一例を説明するための概略断面図である。 本発明に係るトランジスタの製造方法の一例を説明するための概略断面図である。 本発明に係るトランジスタの製造方法の一例を説明するための概略断面図である。 本発明に係るトランジスタの製造方法の一例を説明するための概略断面図である。 本発明に係るトランジスタの製造方法の一例を説明するための概略断面図である。 実施例1のトランジスタを示す平面図である。 実施例1のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例1のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例1のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例2のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例2のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例2のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例1のトランジスタを示す概略断面図である。 比較例1のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例1のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例1のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例2のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例2のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例2のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例3のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例3のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例3のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例3のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例3のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例3のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例4のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例4のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 比較例4のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例4のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例4のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例4のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例4のトランジスタを評価するために、このトランジスタを用いて作製した回路の図である。 実施例4のトランジスタを用いて作製した回路における、整流時の最大周波数を求めるためのグラフである。 実施例5のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例5のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例5のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例5のトランジスタを用いて作製した回路における、整流時の最大周波数を求めるためのグラフである。 実施例6のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例6のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例6のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例6のトランジスタを用いて作製した回路における、整流時の最大周波数を求めるためのグラフである。 実施例7のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例7のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例7のトランジスタの評価結果を示すグラフである。 実施例7のトランジスタを用いて作製した回路における、整流時の最大周波数を求めるためのグラフである。
本発明のトランジスタの好ましい例について以下に説明する。ただし、本発明はこれら例のみに限定されることはなく、例えば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、追加、省略、置換、及びその他の変更(量、数、位置、サイズなど)が可能である。
<<トランジスタ>>
本発明に係るトランジスタは、基板上にゲート電極、絶縁層、半導体層、ソース電極及びドレイン電極を備え、前記ゲート電極が、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)を用いて形成されたものであることを特徴とする。
前記ゲート電極は、β−ケトカルボン酸銀(1)を用いることで、真空下で行う必要がある真空蒸着やスパッタリング等とは異なり、大気下で行うことができる各種印刷法又は塗布法等により、簡略化された工程で形成できる。さらに、β−ケトカルボン酸銀(1)を用いることで、ゲート電極の表面の平滑性が高いので、前記トランジスタは、キャリアの移動度が高いものとなる。また、ゲート電極の表面の平滑性が高いため、前記絶縁層は厚さを十分に薄くしても、その表面の平滑性が低くなることはなく、厚さを任意に設定できる。
Figure 0006225992
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
本発明に係るトランジスタは、ゲート電極として、β−ケトカルボン酸銀(1)を用いて形成されたものを備えている点以外は、従来のトランジスタと同様の構成とすることができる。
図1は、本発明に係るトランジスタの一例を示す概略断面図である。
ここに示すトランジスタ1は、ボトムゲート・トップコンタクト型構造を有するものであり、基板11上にゲート電極12、絶縁層13及び半導体層14をこの順に備え、半導体層14上にソース電極15及びドレイン電極16を、これらが対向するように備えて構成されている。また、ゲート電極12は修飾層17を介して基板11上に設けられており、修飾層17は基板11の一方の主面(上面)全面に、ゲート電極12は修飾層17の一方の主面(上面)全面に、それぞれ設けられている。そして、ソース電極15及びドレイン電極16はそれぞれ中間層18を介して半導体層14上に設けられており、中間層18は、半導体層14上のソース電極15及びドレイン電極16が存在する領域のみに設けられている。
基板11としては、不純物ドープシリコン層の表面部に二酸化ケイ素からなる絶縁層が形成された二層構造のもの(シリコン絶縁層側がゲート電極12の形成側となる)、ガラスからなるもの、樹脂からなるもの等、公知のものが例示できる。また、基板11は表面の平滑性が高いものが好ましい。
基板11の厚さは10μm〜5mmであることが好ましい。
ゲート電極12は、β−ケトカルボン酸銀(1)を用いて形成されたものであり、金属銀からなるもの又は金属銀を主成分とするものである。ここで「金属銀を主成分とする」とは、金属銀の比率が、見かけ上金属銀だけからなるとみなし得る程度に十分に高いことを意味し、例えば、金属銀の比率が95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。また、前記金属銀の比率の上限値は、例えば、100質量%、99.9質量%、99.8質量%、99.7質量%、99.6質量%、99.5質量%、99.4質量%、99.3質量%、99.2質量%及び99.1質量%のいずれかから選択できる。
ゲート電極12の厚さは10〜1000nmであることが好ましい。
ゲート電極12は、β−ケトカルボン酸銀(1)を用いて形成されていることにより、表面の平滑性が高く、表面粗さが好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下のものである。また、ゲート電極12の表面粗さの下限値としては、例えば、1nmを選択できる。ここで、「表面粗さ」とは、JIS B0601:2001(ISO4287:1997)に基づくものであり、算術平均粗さ(Ra)を意味し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=Z(x)で表したときに、以下の式(II)によって求められた値をナノメートル(nm)単位で表示したものである。
Figure 0006225992
ゲート電極12は、ここに示すように、基板11の材質によっては、基板11上に修飾層17を介して設けられていることが好ましく、例えば、修飾層17として適した成分のものを選択することで、ゲート電極12の基板11への密着性を向上させることができる。
修飾層17の厚さは0.1〜100nmであることが好ましい。
密着層として機能する修飾層17としては、シランカップリング剤を用いて形成されたものが例示でき、自己組織化単分子膜であることが好ましい。
前記シランカップリング剤としては、一般式「(R101O)SiCH(CHCHNR201301(式中、rは1又は8であり;R101はアルキル基であり、3個のR101は互いに同一でも異なっていてもよく;R201及びR301はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。)」で表されるものが例示できる(例えば、特開2013−040124号公報参照)。
式中、rは1又は8である。
101はアルキル基であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、炭素数が1〜5であることが好ましい。3個のR101は互いに同一でも異なっていてもよい。
201及びR301はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。
201及びR301における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、炭素数が1〜10であることが好ましい。
201及びR301における前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよいが、炭素数が1〜12であることが好ましく、フェニル基等、単環状であることが好ましい。
前記シランカップリング剤で好ましいものとしては、
(a)R101がメチル基又はエチル基であり、R201が水素原子であり、R301が水素原子、メチル基、エチル基、ヘキシル基又はアリール基であるもの
(b)R101がメチル基又はエチル基であり、R201及びR301が共に、メチル基、エチル基、ヘキシル基又はアリール基であるもの
(c)R101がメチル基又はエチル基であり、R201及びR301がそれぞれ独立にメチル基、エチル基、ヘキシル基又はアリール基であり、ただしR201及びR301が互いに同一ではないもの
が例示でき、より好ましいものとして具体的には、
式「(CHCHO)SiCH(CHCHN(CH」で表されるもの
式「(CHO)SiCHCHCHN(C」で表されるもの
式「(CHCHO)SiCH(CHCHNHC」で表されるもの
式「(CHCHO)SiCH(CHCHN(C」で表されるもの
式「(CHO)SiCHCHCHNH」で表されるもの
が例示できる。
絶縁層(ゲート絶縁膜)13の材質としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機化合物;ベンゾシクロブテン、ポリイミド、ポリオレフィン系熱硬化性樹脂等の有機化合物等、公知のものが例示できる。
絶縁層13は、一種の材質からなるものでもよいし、二種以上の材質からなるものでもよく、二種以上の材質からなる場合、その材質の組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
絶縁層13の厚さは10〜1000nmであることが好ましい。
半導体層14の材質は、有機半導体、及び2個以上の原子がイオン結合により結合してなる化合物半導体のいずれでもよく、目的に応じて公知のものから適宜選択すればよい。
前記化合物半導体としては、窒化ガリウム(GaN)、ヒ化ガリウム(GaAs)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等が例示できる。
前記有機半導体としては、ルブレン、DNTT(dinaphtho[2,3−b:2’,3’−f]thieno [3,2−b]thiophene)、アルキル−DNTT、TIPSペンタセン(6,13−Bis(triisopropylsilylethynyl)pentacene)、DNBDT(dinaphtho[2,3−d:2’,3’−d’]benzo[1,2−b:4,5−b’]dithiophene)、アルキル−DNBDT、PDIF−CN等の低分子材料;pBTTT(poly[2,5−bis(3−alkylthiophen−2−yl)thieno(3,2−b)thiophene])、pDA2T(poly(dialkylthieno[3,2−b]thiophene−co−bithiophene))、P3HT(poly(3−hexylthiophene))、PQT(poly[5,5’−bis(3−alkyl−2−thienyl)−2,2’−bithiophene])等の高分子材料;グラフェン、多層グラフェン、CNT(カーボンナノチューブ)、C60(フラーレン)等の炭素材料等が例示できる。
半導体層14の厚さは10〜100nmであることが好ましい。
なお、ここで、「アルキル−DNTT」とは、DNTT中の1個以上の水素原子がアルキル基で置換された化合物を意味し、「アルキル−DNBDT」とは、DNBDT中の1個以上の水素原子がアルキル基で置換された化合物を意味する。
ソース電極15及びドレイン電極16の材質としては、金、白金、銀、アルミニウム、チタン等の単体金属;インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物等、公知のものが例示できる。
ソース電極15及びドレイン電極16の厚さは10〜1000nmであることが好ましい。
ソース電極15及びドレイン電極16は、ここに示すように、半導体層14上に中間層18を介して設けられていることが好ましく、適した成分のものを選択することで、中間層18を、例えば正孔注入層又は電子受容層とすることができる。
中間層18の厚さは0.2〜10nmであることが好ましい。
正孔注入層又は電子受容層として機能する中間層18の材質は、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等をはじめ、公知のものでよいが、好ましいものとしては、1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロテトラシアノナフトキノジメタン(1,3,4,5,7,8−Hexafluorotetracyanonaphthoquinodimethane、以下、「F6−TNAP」と略記することがある)、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(2,3,5,6−tetrafluoro−7,7,8,8−tetracyanoquinodimethane、以下、「F4−TCNQ」と略記することがある)が例示できる。F6−TNAP及びF4−TCNQは、例えば、「Chem.Mater.2010,22,3926−3932」に記載の方法で製造できる。
ソース電極15及びドレイン電極16間の距離(以下、「チャネル長」と略記することがある)Lは、0.2〜100μmであることが好ましい。
また、ソース電極15及びドレイン電極16の、これらの対向方向に対して垂直な方向の幅(図1においては図示略、図5における符号W参照。以下、「チャネル幅」と略記することがある。)は、1〜5000μmであることが好ましい。
トランジスタ1は、ゲート電極12に電圧が印加されると、半導体層14の絶縁層13との界面近傍にキャリア(正孔、電子)が生成して電気伝導度が上昇し、ソース電極15及びドレイン電極16間に電圧が印加されると、キャリアがソース電極15又はドレイン電極16に移動して、電流が流れる。このとき、半導体層14の絶縁層13との界面近傍においては、キャリアが前記界面に沿って移動する。
一方で、トランジスタ1は、ゲート電極12の表面の平滑性が高い(凹凸が小さい)ことにより、その平滑性を反映して、ゲート電極12上に設けられた絶縁層13も、その厚さによらず(厚さが厚い場合及び薄い場合のいずれにおいても)表面の平滑性が高くなる。したがって、半導体層14の絶縁層13との界面近傍において、キャリアは前記界面に沿って移動するが、キャリアの移動距離は、絶縁層13の表面の凹凸の影響を受けたとしても、凹凸が大きい(平滑性が低い)場合よりも顕著に短くなる。これにより、トランジスタ1はキャリアの移動度が高いものとなる。
本発明に係るトランジスタは、ここに示すものに限定されず、ゲート電極としてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いて形成されたものを備えていればよく、例えば、本発明の効果を損なわない範囲内において、トランジスタ1の構成が一部変更されたものでもよい。
本発明に係るトランジスタは、ゲート電極を半導体層よりも基板側(図1においては下側)に備えたボトムゲート型のものが好ましく、図1に例示するような、ソース電極及びドレイン電極を半導体層に対して基板とは反対側(図1においては上側)に備えたボトムゲート・トップコンタクト型構造を有するもの以外に、例えば、図2に例示するような、ソース電極及びドレイン電極を半導体層に対して基板側(図1においては下側)に備えたボトムゲート・ボトムコンタクト型構造を有するものが挙げられる。なお、図2中、図1に示すものと同じ構成要素には、図1と同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。これは、以降のトランジスタに関する図においても同様である。
図2に示すトランジスタ2は、基板11上にゲート電極12及び絶縁層13をこの順に備え、絶縁層13上にソース電極25及びドレイン電極26を、これらが対向するように備えている。また、ゲート電極12は修飾層17を介して基板11上に設けられており、修飾層17は基板11の一方の主面(上面)全面に、ゲート電極12は修飾層17の一方の主面(上面)全面に、それぞれ設けられている。また、ソース電極25及びドレイン電極26はそれぞれ、表面が中間層28で覆われており、この中間層28を介して、ソース電極25及びドレイン電極26上に半導体層24が設けられている。半導体層24は、さらに、絶縁層13のソース電極25、ドレイン電極26及び中間層28が設けられていない部位の表面上にも設けられている。
トランジスタ2における基板11、ゲート電極12、絶縁層13及び修飾層17は、図1に示すトランジスタ1における基板11、ゲート電極12、絶縁層13及び修飾層17と同じものである。
トランジスタ2における半導体層24、ソース電極25及びドレイン電極26は、形状が異なる点以外は、図1に示すトランジスタ1における半導体層14、ソース電極15及びドレイン電極16と同じものであり、例えば、半導体層24、ソース電極25及びドレイン電極26は、その最大の厚さが、半導体層14、ソース電極15及びドレイン電極16の上記の厚さと同じとなるように構成することができる。
トランジスタ2における中間層28は、形状が異なる点以外は、図1に示すトランジスタ1における中間層18と同じものである。
ここまでは、ゲート電極が基板又は修飾層の上面全面に設けられているトランジスタについて説明したが、本発明に係るトランジスタとしては、図3に示すように、ゲート電極が基板又は修飾層の上面の一部に設けられているものも好適であり、この場合、ゲート電極はパターニングされていてもよい。
図3に示すトランジスタ3は、ゲート電極32が修飾層17(基板11)の上面の一部に設けられていること以外は、図1に示すトランジスタ1と同じものである。なお、本発明に係るトランジスタとしては、図2に示すトランジスタ2において、ゲート電極12が修飾層17(基板11)の上面の一部に設けられているように構成されたものも好適である。
トランジスタ3における基板11、半導体層14、ソース電極15、ドレイン電極16、修飾層17及び中間層18は、図1に示すトランジスタ1における基板11、半導体層14、ソース電極15、ドレイン電極16、修飾層17及び中間層18と同じものである。なお、修飾層17は、基板11上のゲート電極32が形成されている領域のみに設けられていてもよい。
トランジスタ3におけるゲート電極32及び絶縁層33は、形状が異なる点以外は、図1に示すトランジスタ1におけるゲート電極12及び絶縁層13と同じものであり、例えば、絶縁層33は、その最大の厚さが、絶縁層13の上記の厚さと同じとなるように構成することができる。
本発明に係るトランジスタは、他のトランジスタよりもキャリアの移動度が高く、例えば、線形領域においては好ましくは4.7cm/Vs以上、飽和領域においては好ましくは4.0cm/Vs以上とすることが可能である。また、それに伴って本発明に係るトランジスタは、閾値電圧を好ましい範囲とし、OFF電流を低く、電流ON/OFF比を大きくして、より好ましい特性を有するものとすることも可能である。
キャリアの移動度は公知の方法で求められる。例えば、トランジスタのドレイン電圧Vが所定の値である場合のドレイン電流Iとゲート電圧Vとの関係を求め、線形領域においては下記一般式(i)を、飽和領域においては下記一般式(ii)をそれぞれ用いて、キャリアの移動度を算出できる。
Figure 0006225992
(式中、μlinは線形領域におけるキャリアの移動度であり;μsatは飽和領域におけるキャリアの移動度であり;Lはチャネル長であり;Wはチャネル幅であり;Cは絶縁層の単位面積当たりの静電容量であり;Iはドレイン電流であり;Vはドレイン電圧であり;Vはゲート電圧である。)
本発明に係るトランジスタは、高周波数で動作させるのに好適なものであり、特にチャネル長を、例えば、10μm以下等のように短くすることで、より好適なものとなる。例えば、実施例で後述するように、本発明に係るトランジスタを組み込んだ回路における、整流時の最大周波数を、好ましくは13.5MHz以上とすることが可能であり、このようなトランジスタは、例えば、RFID通信用として特に有用である。
トランジスタ1は、例えば、以下の方法で製造できる。図4A〜図4Fは、トランジスタ1の製造方法の一例を説明するための概略断面図である。
まず、図4Aに示すように、基板11上に修飾層17を形成する。
修飾層17は、その材質に応じて形成方法を選択すればよい。例えば、シランカップリング剤を用いる場合、修飾層17は、シランカップリング剤が配合されてなる液状組成物を基板11上に塗工して乾燥させることで形成でき、前記液状組成物は、スピンコーター用いる方法(スピンコート法)等で塗工できる。また、修飾層17は、シランカップリング剤と基板11を密閉容器中に配置して、必要に応じて加熱することにより、シランカップリング剤を気化させて基板11上に付着させることでも形成できる。
次いで、図4Bに示すように、修飾層17上にゲート電極12を形成する。
ゲート電極12は、β−ケトカルボン酸銀(1)が配合されてなる銀インク組成物を調製し、これを修飾層17の表面上に付着させ、必要に応じて乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を適宜選択して行い、金属銀を形成することで形成できる。銀インク組成物及びその付着方法については、後ほど、より詳細に説明する。加熱処理は、乾燥処理を兼ねて行ってもよい。
図3に示すような、ゲート電極が修飾層(基板)の上面の一部に設けられているトランジスタを製造する場合には、例えば、銀インク組成物を修飾層17の表面全面ではなく、一部の領域のみに付着させて金属銀を形成するか、又は上記のように銀インク組成物を修飾層17の表面全面に付着させ、金属銀を形成して得られた銀層を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより、所望の形状にパターニングしてゲート電極とすればよい。ここで、フォトリソグラフィー及びエッチングは、公知の方法で行えばよく、銀層上にレジストパターンを形成し、露出されている銀層をエッチングで除去すればよい。
次いで、図4Cに示すように、ゲート電極12を覆うように基板11上に絶縁層13を形成する。絶縁層13は、スピンコート法、スパッタリング法、アトミックレイヤーデポジション(ALD法)等、公知の方法で形成できる。
ALD法は、真空条件下の反応室内で基板上に原料化合物のガス(吸着ガス)を導入して吸着させ、その分子で単層を形成した後、余剰分の分子をパージで除去し、次いで、反応性化合物のガス(反応ガス)を導入して、単層と反応させて、目的物を生成させ、副生物と余剰の反応性化合物をパージで除去するという、膜形成の1サイクルを繰り返し行うことにより、目的物の目的とする厚さの膜を形成する手法である。例えば、アルミナ(Al)の膜を形成する場合には、吸着ガスとしてトリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物のガスを、反応ガスとして水、オゾン等の酸化性化合物のガスを、パージガスとして窒素ガス等の不活性ガスを用いることができる。ALD法の詳細は、例えば、「特開2003−347042号公報」等、種々の文献で開示されている。
次いで、図4Dに示すように、絶縁層13上に半導体層14を形成する。
半導体層14は、その材質に応じて公知の方法で形成すればよく、例えば、無機半導体からなる半導体層14は真空蒸着法で形成でき、有機半導体からなる半導体層14は各種印刷法又は塗布法で形成できる。印刷法又は塗布法においては、半導体層14を構成するための原料(半導体化合物)が配合されてなる液状組成物を印刷又は塗布に供する。
また、例えば、「国際公開第2011/040155号」において、図1A、1B、2A及び2B等を引用して記載されている方法、すなわち、基板及び端面接触部材を用い、端面接触部材に接触するように基板上に原料溶液(前記液状組成物)を供給して液滴を形成し、この液滴を乾燥させることで半導体膜を形成する方法(以下、「エッジキャスト法」と略記することがある)でも、半導体層14を形成できる。
次いで、図4Eに示すように、半導体層14上に中間層18を形成する。
中間層18は、その材質に応じて公知の方法で形成すればよい。例えば、中間層18は、これを構成するための原料が配合されてなる液状組成物を、半導体層14上に各種印刷法で付着させ、乾燥させることで形成できる。また、中間層18は、半導体層14上に真空蒸着法でも形成でき、例えば、中間層18の材質からなる膜を真空蒸着法により形成した後、フォトリソグラフィーによりこの膜を所望の形状にパターニングして形成してもよいし、金属マスクを介して直接所望の形状の中間層18を真空蒸着法により形成してもよい。
次いで、図4Fに示すように、中間層18上に、ソース電極15及びドレイン電極16を形成する。
ソース電極15及びドレイン電極16は、公知の方法で形成でき、例えば、これら電極の材質からなる膜を真空蒸着法により形成した後、フォトリソグラフィーによりこの膜を所望の形状にパターニングして形成してもよいし、金属マスクを介して直接所望の形状の電極を真空蒸着法により形成してもよい。
上記の製造方法においては、ゲート電極12は、銀インク組成物を用いて大気下で各種印刷法又は塗布法等で形成でき、さらに、絶縁層13の形成時にその表面の平滑性を高くしたり、絶縁層13上に平滑化層を別途形成したりする必要もないため、トランジスタ1はより簡略化された工程によって低コストで製造できる。しかも、ゲート電極12の表面は平滑性が高いため、トランジスタ1はキャリアの移動度が高いものとなる。
なお、トランジスタ2は、半導体層24、ソース電極25、ドレイン電極26及び中間層28の形成順と形状が、半導体層14、ソース電極15、ドレイン電極16及び中間層18の場合と異なる点以外は、トランジスタ1と同様の方法で製造できる。
<銀インク組成物>
前記銀インク組成物は、β−ケトカルボン酸銀(1)が配合されてなるものである。
銀インク組成物としては、液状のものが好ましく、β−ケトカルボン酸銀(1)が溶解又は均一に分散されたものが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[β−ケトカルボン酸銀(1)]
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基である。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示できる。
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
Rにおける前記アルケニル基としては、ビニル基(エテニル基、−CH=CH)、アリル基(2−プロペニル基、−CH−CH=CH)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH)、イソプロペニル基(−C(CH)=CH)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH−CH)、2−ブテニル基(−CH−CH=CH−CH)、3−ブテニル基(−CH−CH−CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示できる。また、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R−CY −」、「CY −」及び「R−C(=O)−CY −」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C−)であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R−C(=O)−CY −」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C−CH−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基である。
における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
におけるRは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C−C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよく、このようなものとしては式「=CH−C−NO」で表される基が例示できる。
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R−C(=O)−」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCHCHCH)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−アセチルピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、2−アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましく、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、又はアセトンジカルボン酸銀であることがより好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成することが可能である。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、β−ケトカルボン酸銀(1)に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。このような範囲であることで、形成された金属銀は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「β−ケトカルボン酸銀(1)に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合されたβ−ケトカルボン酸銀(1)中の銀を意味し、配合後に引き続きβ−ケトカルボン酸銀(1)を構成している銀と、配合後にβ−ケトカルボン酸銀(1)が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体と、の両方を含む概念とする。
[含窒素化合物]
前記銀インク組成物は、β−ケトカルボン酸銀(1)以外に、さらに、炭素数25以下のアミン化合物及び第4級アンモニウム塩、アンモニア、並びに前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上の含窒素化合物(以下、単に「含窒素化合物」と略記することがある)が配合されてなるものが好ましい。
以下、炭素数25以下のアミン化合物を「アミン化合物」、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩を「第4級アンモニウム塩」、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩を「アミン化合物由来のアンモニウム塩」、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩を「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある。
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミンが例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が例示でき、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子が例示できる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたものが例示できる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタンが例示できる。
前記第2級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミンが例示できる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が例示できる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が例示できる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが例示できる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF)等が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、2−ブロモベンジルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、かかるアリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、ブロモフェニルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミンが例示できる。
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが例示できる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム等が例示できるが、これに限定されない。
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、前記含窒素化合物の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり0.2〜15モルであることが好ましく、0.3〜5モルであることがより好ましい。
前記含窒素化合物の配合量を上記のように規定することで、銀インク組成物は安定性がより向上し、金属銀の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して導電層を形成できる。
[アルコール]
銀インク組成物は、β−ケトカルボン酸銀(1)以外に、さらにアルコールが配合されてなるものが好ましい。
前記アルコールは、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。
また、前記アルコール類は、一価アルコール及び多価アルコールのいずれでもよい。
なかでも、前記アルコールは、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
好ましい前記アルコールとしては、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)、及び前記アセチレンアルコール(2)に該当しない炭素数が1〜7のアルコール(以下、「その他のアルコール」と略記することがある)が例示できる。
なお、本明細書においては、単なる「アルコール」との記載は、特に断りの無い限り、「その他のアルコール」だけではなく、「アセチレンアルコール(2)」も含めてこれらを包括するアルコール類全般を意味するものとする。
Figure 0006225992
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が例示でき、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様である。そして、置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールが例示できる。
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、銀インク組成物において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、β−ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたり0.03〜0.7モルであることが好ましく、0.05〜0.3モルであることがより好ましい。このような範囲とすることで、銀インク組成物の安定性がより向上する。
炭素数が1〜7の前記その他のアルコールは、炭素数が2〜5であることが好ましく、より具体的には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール等の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコールが例示できる。
前記その他のアルコールを用いる場合、銀インク組成物において、前記その他のアルコールの配合量は、β−ケトカルボン酸銀(1)の配合量1質量部あたり0.2〜4質量部であることが好ましく、0.5〜2質量部であることがより好ましい。その他のアルコールの前記配合量が前記下限値以上であることで、銀インク組成物は取り扱い性がより向上し、前記上限値以下であることで、金属銀をより効率的に形成できる。
前記アルコールは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[還元剤]
銀インク組成物は、β−ケトカルボン酸銀(1)以外に、さらに前記アルコールに該当しない還元剤が配合されてなるものでもよい。還元剤を配合することで、前記銀インク組成物は、金属銀をより形成し易くなり、例えば、低温での加熱処理でも十分な導電性を有する金属銀を形成できる。
前記還元剤は、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上の還元性化合物(以下、単に「還元性化合物」と略記することがある)であることが好ましい。
H−C(=O)−R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
(還元性化合物)
前記還元性化合物は、シュウ酸(HOOC−COOH)、ヒドラジン(HN−NH)及び前記一般式(5)で表される化合物(化合物(5))からなる群から選択される一種以上である。すなわち、配合される還元性化合物は、一種のみでよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。
21における炭素数20以下のアルキル基は、炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
21における炭素数20以下のアルコキシ基は、炭素数が1〜20であり、R21における前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
21における炭素数20以下のN,N−ジアルキルアミノ基は、炭素数が2〜20であり、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記アルキル基はそれぞれ炭素数が1〜19である。ただし、これら2個のアルキル基の炭素数の合計値が2〜20である。
窒素原子に結合している前記アルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜19である点以外は、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
前記還元性化合物として、ヒドラジンは、一水和物(HN−NH・HO)を用いてもよい。
前記還元性化合物は、ギ酸(H−C(=O)−OH)、ギ酸メチル(H−C(=O)−OCH)、ギ酸エチル(H−C(=O)−OCHCH)、ギ酸ブチル(H−C(=O)−O(CHCH)、プロパナール(H−C(=O)−CHCH)、ブタナール(H−C(=O)−(CHCH)、ヘキサナール(H−C(=O)−(CHCH)、ホルムアミド(H−C(=O)−NH)、N,N−ジメチルホルムアミド(H−C(=O)−N(CH)又はシュウ酸であることが好ましい。
銀インク組成物において、還元剤の配合量は、β−ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたり0.04〜3.5モルであることが好ましく、0.06〜2.5モルであることがより好ましい。このように規定することで、銀インク組成物は、より容易に、より安定して金属銀を形成できる。
[その他の成分]
銀インク組成物は、β−ケトカルボン酸銀(1)、含窒素化合物、アルコール及び還元剤以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
銀インク組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、好ましいものとしては、アルコール以外の溶媒が例示でき、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物における前記その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
銀インク組成物中の成分は、すべて溶解していてもよいし、一部又はすべてが溶解していなくてもよいが、溶解していない成分は、均一に分散されていることが好ましい。
銀インク組成物は、β−ケトカルボン酸銀(1)、及びβ−ケトカルボン酸銀(1)以外の成分を配合することで得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。ただし、本発明においては、還元剤は滴下により配合することが好ましく、さらに滴下速度の変動を抑制することで、金属銀の表面粗さをより低減できる傾向にある。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法、ミキサーを使用して混合する方法、超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。
また、配合時間(混合時間)も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、5分〜5時間であることが好ましい。
例えば、還元剤の配合時には、得られる配合物(銀インク組成物)は比較的発熱し易い。そして、還元剤の配合時の温度が高い場合、この配合物は、後述する銀インク組成物の加熱処理時と同様の状態になるため、還元剤による前記カルボン酸銀の分解促進作用によって、前記カルボン酸銀の少なくとも一部において金属銀の形成が開始されることがあると推測される。このような金属銀を含有する銀インク組成物は、金属銀を含有しない銀インク組成物よりも温和な条件で後処理を行うことにより、目的とする金属銀を形成できることがある。また、還元剤の配合量が十分に多い場合にも、同様に温和な条件で後処理を行うことにより、目的とする金属銀を形成できることがある。このように、β−ケトカルボン酸銀(1)の分解を促進する条件を採用することで、後処理として、より低温での加熱処理で、あるいは加熱処理を行わずに常温での乾燥処理のみで、目的とする金属銀を形成できることがある。また、このような金属銀を含有する銀インク組成物は、金属銀を含有しない銀インク組成物と同様に取り扱うことができ、特に取り扱い性が劣ることもない。
銀インク組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基板11(修飾層17)上に付着させることができる。
前記印刷法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が例示できる。
前記塗布法としては、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が例示できる。
上記のゲート電極12を形成する工程においては、基板11(修飾層17)上に付着させる銀インク組成物の量、又は銀インク組成物におけるβ−ケトカルボン酸銀(1)の配合量を調節することで、ゲート電極12の厚さを調節できる。
基板11上に付着させた銀インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、18〜30℃で大気下において乾燥させる方法が例示できる。
基板11上に付着させた銀インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、0.2〜12時間であることが好ましく、0.4〜10時間であることがより好ましい。β−ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記銀インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属銀を形成できる。
銀インク組成物の加熱処理の方法は特に限定されず、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱等で行うことができる。また、銀インク組成物の加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。そして、常圧下及び減圧下のいずれで行ってもよい。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<トランジスタの製造>
(銀インク組成物の製造)
2−メチルアセト酢酸銀(1質量部)、2−エチルヘキシルアミン(2質量部、2−メチルアセト酢酸銀に対して3.5倍モル量)、及びメタノール(1質量部)を5〜10℃で10分間撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
(トランジスタの製造)
図4A〜図4Fを参照して説明した方法により、以下の手順でトランジスタを製造した。
厚さ0.7mmのガラス基板を、シランカップリング剤である3−アミノプロピルトリメトキシシラン((CHO)SiCHCHCHNH、信越シリコーン社製「KBM−903」)と共に密閉容器中に配置して、100℃で加熱することで、前記シランカップリング剤の蒸気を前記基板に接触させ、前記基板表面に厚さ1nmの修飾層を形成した。
次いで、スピンコート法(2000rpm、20秒)により上記で製造した銀インク組成物を修飾層上に塗工し、80℃で30分、さらに150℃で30分加熱処理することで、修飾層上に厚さ100nmのゲート電極を形成した。
このゲート電極について、表面粗さ(Ra)をJIS B0601:2001(ISO4287:1997)に準拠して測定したところ、4nmであった。
次いで、濃度が18質量%であるベンゾシクロブテン(以下、「BCB」と略記することがある)のメシチレン溶液を、スピンコート法でゲート電極上に塗工し、50〜250℃で約10時間加熱することで、ゲート電極上に厚さ300nmのBCBからなる絶縁層を形成した。
次いで、「国際公開第2011/040155号」に記載のエッジキャスト法により、絶縁層上にアルキル−DNBDTからなる厚さ50nmの半導体層(有機半導体層)を形成した。
次いで、真空蒸着法により、半導体層上にF6−TNAPからなる厚さ0.5nmの中間層を形成した。
次いで、真空蒸着法により、中間層上に金からなる厚さ30nmのソース電極及びドレイン電極を、チャネル長が100μmとなるようにそれぞれ形成した。
以上の工程を経て、本発明に係るトランジスタを製造した。得られたトランジスタの平面図を図5に示す。図5中、符号Wはチャネル幅を示す。
<トランジスタの評価>
得られたトランジスタについて、キャリアの移動度、閾値電圧、OFF電流、電流ON/OFF比をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。また、このときのドレイン電流Iとゲート電圧Vとの関係、及びドレイン電流Iとドレイン電圧Vとの関係(出力特性)についてのグラフを図6A〜図6Cに示す。図6Aは線形領域(V=−0.5V)におけるIとVとの関係、図6Bは飽和領域(V=−10V)におけるIとVとの関係、図6CはIとVとの関係を、それぞれ示す。
[実施例2]
厚さ300nmのBCBからなる絶縁層に代えて、スピンコート法により、厚さ200nmのポリイミド(以下、「PI」と略記することがある)からなる絶縁層を形成したこと以外は、実施例1と同じ方法でトランジスタを製造した。
そして、得られたトランジスタについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。また、このときのドレイン電流Iとゲート電圧Vとの関係、及びドレイン電流Iとドレイン電圧Vとの関係(出力特性)についてのグラフを図7A〜図7Cに示す。図7Aは線形領域(V=−0.5V)におけるIとVとの関係、図7Bは飽和領域(V=−10V)におけるIとVとの関係、図7CはIとVとの関係を、それぞれ示す。
[比較例1]
以下の手順で、従来のゲート電極を備えた比較用のトランジスタを製造した。
厚さ0.7mmのガラス基板上に、真空蒸着法により、厚さ7nmのクロム(Cr)層、厚さ50nmの金(Au)層、及び厚さ7nmのクロム(Cr)層をこの順で積層して、ゲート電極を形成した。
このゲート電極について、上層のクロム層の表面粗さ(Ra)をJIS B0601:2001(ISO4287:1997)に準拠して測定したところ、1nmであった。
以降、ゲート電極(上層のクロム層)上に、実施例1と同じ方法で、厚さ300nmの絶縁層、厚さ50nmの半導体層(有機半導体層)、厚さ0.5nmの中間層 並びに厚さ30nmのソース電極及びドレイン電極をそれぞれ形成した。
以上の工程を経て、従来品のトランジスタを製造した。得られたトランジスタの概略断面図を図8に示す。図8中、符号9はトランジスタを、符号92はゲート電極を、符号92a及び92cはクロム層を、符号92bは金層を、それぞれ示す。なお、トランジスタ9の平面図(図示略)は、実施例1のトランジスタ1の場合(図5)と同様である。
そして、得られたトランジスタについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。また、このときのドレイン電流Iとゲート電圧Vとの関係、及びドレイン電流Iとドレイン電圧Vとの関係(出力特性)についてのグラフを図9A〜図9Cに示す。図9Aは線形領域(V=−1V)におけるIとVとの関係、図9Bは飽和領域(V=−20V)におけるIとVとの関係、図9CはIとVとの関係を、それぞれ示す。
[比較例2]
厚さ300nmのBCBからなる絶縁層に代えて、スピンコート法により、厚さ200nmのPIからなる絶縁層を形成したこと以外は、比較例1と同じ方法でトランジスタを製造した。
そして、得られたトランジスタについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。また、このときのドレイン電流Iとゲート電圧Vとの関係、及びドレイン電流Iとドレイン電圧Vとの関係(出力特性)についてのグラフを図10A〜図10Cに示す。図10Aは線形領域(V=−1V)におけるIとVとの関係、図10Bは飽和領域(V=−10V)におけるIとVとの関係、図10CはIとVとの関係を、それぞれ示す。
[比較例3]
以下の手順で、銀ナノ粒子インクで形成したゲート電極を備えた比較用のトランジスタを製造した。
厚さ0.7mmのガラス基板上に、スピンコート法により、銀ナノ粒子インク(ハリマ化成社製「NPS−J」、平均粒子径:12nm、固形分:62〜67質量%、溶媒:テトラデカン)を塗工し、150℃で30分加熱処理することで、ガラス基板上に厚さ100nmのゲート電極を形成した。
このゲート電極について、表面粗さ(Ra)をJIS B0601:2001(ISO4287:1997)に準拠して測定したところ、21nmであった。
以降、ゲート電極上に、実施例1と同じ方法で、厚さ300nmの絶縁層、厚さ50nmの半導体層(有機半導体層)、厚さ0.5nmの中間層 並びに厚さ30nmのソース電極及びドレイン電極をそれぞれ形成した。
以上の工程を経て、従来品のトランジスタを製造した。得られたトランジスタの概略断面図は、修飾層を備えていない点以外は図1と同様であり、平面図は図5と同様である(図示略)。
そして、得られたトランジスタについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。また、このときのドレイン電流Iとゲート電圧Vとの関係、及びドレイン電流Iとドレイン電圧Vとの関係(出力特性)についてのグラフを図11A〜図11Cに示す。図11Aは線形領域(V=−0.5V)におけるIとVとの関係、図11Bは飽和領域(V=−10V)におけるIとVとの関係、図11CはIとVとの関係を、それぞれ示す。
Figure 0006225992
表1から明らかなように、実施例1〜2のトランジスタは、大気下においてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いて塗布法で形成したゲート電極の表面粗さが小さく、真空蒸着で形成し、表面粗さが同等以下のゲート電極を用いた比較例1〜2のトランジスタよりも、キャリアの移動度が高かった。また、閾値電圧が適度な数値範囲にあり、OFF電流が低く、電流ON/OFF比が大きかった。さらに、図6A〜図6C及び図7A〜図7Cに示すように、IとV、IとVは、いずれも明りょうな相関関係を示していた。このように、実施例1〜2のトランジスタは、優れた特性を有していた。
一方、比較例3のトランジスタは、大気下において銀ナノ粒子を用いて塗布法で形成したゲート電極の表面粗さが大きかった。また、比較例3のトランジスタは動作しなかったが、これはゲート電流が大きいことから、ゲート電極が絶縁層を貫通し、ソース電極又はドレイン電極にまで達しているからであると推測された。
[実施例3]
スピンコート法(3000rpm、30秒)により、ゲート電極上にオレフィン液(シクロオレフィン系熱硬化性樹脂を含有する液、日本ゼオン社製「ES2110−10」)を塗工し、150℃で60分加熱することで、厚さ300nmのBCBからなる絶縁層に代えて、厚さ300nmのオレフィンからなる絶縁層を形成したこと以外は、実施例1と同じ方法でトランジスタを製造した。
そして、得られたトランジスタについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。また、このときのドレイン電流Iとゲート電圧Vとの関係、及びドレイン電流Iとドレイン電圧Vとの関係(出力特性)についてのグラフを図12A〜図12Cに示す。図12Aは線形領域(V=−0.5V)におけるIとVとの関係、図12Bは飽和領域(V=−10V)におけるIとVとの関係、図12CはIとVとの関係を、それぞれ示す。
[比較例4]
2層構造のシリコンウェハー(表面が熱酸化されて厚さ100nmの二酸化ケイ素層が形成されたN型ハイドープシリコン)を用い、その二酸化ケイ素層を絶縁層の一部として、またN型シリコン層を基板とゲート電極とを兼ねるものとして、それぞれ用い、この二酸化ケイ素層について、表面粗さ(Ra)をJIS B0601:2001(ISO4287:1997)に準拠して測定したところ、0.1nmであった。
次いで、前記二酸化ケイ素層上に、スピンコート法により、実施例3の場合と同じ方法で厚さ300nmのオレフィンからなる絶縁層を形成した。
以降、実施例3と同じ方法で、厚さ50nmの半導体層(有機半導体層)、厚さ0.5nmの中間層 並びに厚さ30nmのソース電極及びドレイン電極をそれぞれ形成した。
以上の工程を経て、従来品のトランジスタを製造した。
そして、得られたトランジスタについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。また、このときのドレイン電流Iとゲート電圧Vとの関係、及びドレイン電流Iとドレイン電圧Vとの関係(出力特性)についてのグラフを図13A〜図13Cに示す。図13Aは線形領域(V=−0.5V)におけるIとVとの関係、図13Bは飽和領域(V=−30V)におけるIとVとの関係、図13CはIとVとの関係を、それぞれ示す。
Figure 0006225992
表2から明らかなように、実施例3のトランジスタは、実施例1〜2のトランジスタと同様に、大気下においてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いて塗布法で形成したゲート電極の表面粗さが小さく、キャリアの移動度が高かった。また、閾値電圧が適度な数値範囲にあり、OFF電流が低く、電流ON/OFF比が大きかった。さらに、図12A〜図12Cに示すように、IとV、IとVは、いずれも明りょうな相関関係を示していた。このように、実施例3のトランジスタは、優れた特性を有していた。
比較例4のトランジスタも、実施例3のトランジスタと同様の特性を有していた。
[実施例4]
<トランジスタの製造>
(銀インク組成物の製造)
2−メチルアセト酢酸銀(1質量部)、2−エチルヘキシルアミン(2質量部、2−メチルアセト酢酸銀に対して3.5倍モル量)、メタノール(1質量部)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(0.04質量部、2−メチルアセト酢酸銀に対して0.07倍モル量)を5〜10℃で10分間撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
(トランジスタの製造)
以下の手順で、図3に示すトランジスタを製造した。
厚さ100mmのポリエチレンナフタレート製基板(PEN基板)上に、上記で製造した銀インク組成物をスピンコート法(2000rpm、20秒)により塗工し、100℃で30分、さらに150℃で30分加熱処理することで、PEN基板上に厚さ100nmの銀層を形成した。
次いで、フォトリソグラフィーとエッチングにより、形成した銀層を厚さ100nm、幅10μmの線状にパターニングして、ゲート電極を形成した。
このとき、フォトリソグラフィーでは、レジストとしてシプレイ社製「S1805」を用い、スピンコート法(1000rpm、30秒)によりこれを銀層上に塗工し、90℃で10分加熱した後、100mW/cmで露光し、現像液(東京応化社製「NMD−3」)を用いて1分現像して、120℃で20分加熱することで、レジストパターンを形成した。
また、エッチングでは、銀エッチング液(関東化学社製「SEA−1」)を用いて、露出された銀層を除去し、残っていたレジストをアセトン洗浄で除去することにより、ゲート電極を形成した。
このゲート電極について、表面粗さ(Ra)をJIS B0601:2001(ISO4287:1997)に準拠して測定したところ、4nmであった。
次いで、上記で得られた、PEN基板上にゲート電極が積層された積層物の表面(PEN基板及びゲート電極の表面)に、スピンコート法(3000rpm、30秒)により、オレフィン液(日本ゼオン社製「ES2110−10」)を塗工し、150℃で60分加熱することで、厚さ400nmのオレフィンからなる絶縁層を形成した。
次いで、この絶縁層上に、所定のパターンを形成できるようにマスクを設置し、アルキル−DNBDTからなる半導体を140℃で蒸着させ、マスクを取り除くことにより、絶縁層上に厚さ25nmの半導体層(有機半導体層)を形成した。
次いで、上記で得られた、PEN基板上にゲート電極、絶縁層及び半導体層がこの順に積層された積層物の表面(絶縁層及び半導体層の表面)に、金を蒸着させ、金層を形成した。
次いで、フォトリソグラフィーとエッチングにより、形成した金層を、チャネル長が5μmとなるようにパターニングして、ソース電極及びドレイン電極を形成した。
このとき、フォトリソグラフィーでは、レジストとしてOrthogonal社製「OSCOR2312」を用い、スピンコート法(2000rpm、30秒)によりこれを金層上に塗工し、60℃で20分加熱した後、300mW/cmで露光し、60℃で20分加熱してから、現像液(3M社製「Novec7300」)を用いて現像することで、レジストパターンを形成した。
また、エッチングでは、エッチング液(関東化学社製「AurumS−50790」)を用いて、露出された金層を除去し、残っていたレジストを洗浄液(3M社製「Novec7100」)で除去することにより、金からなる厚さ50nmのソース電極及びドレイン電極をそれぞれ形成して、トランジスタを製造した。
<トランジスタの評価>
得られたトランジスタについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。また、このときのドレイン電流IDとゲート電圧VGとの関係、及びドレイン電流IDとドレイン電圧VDとの関係(出力特性)についてのグラフを図14A〜図14Cに示す。図14Aは線形領域(V=−1V)におけるIDとVGとの関係、図14Bは飽和領域(VD=−20V)におけるIDとVGとの関係、図14CはIDとVDとの関係を、それぞれ示す。
さらに、得られたトランジスタを用いて、図15に示す構成の回路を作製し、整流時の最大周波数を求めた。より具体的には、以下のとおりである。なお、図15において、符号G、D、Sは、それぞれ上記で得られたトランジスタのゲート電極、ドレイン電極、ソース電極を意味する。
この回路において、入力信号(Function Generator)の周波数を変化させ、周波数ごとのVin(入力された交流電圧の最小値)と、Vout(コンデンサに出力(整流)された直流電圧)とを測定し、Vout/Vinを算出して、グラフにプロットし、曲線を求めた。そして、低周波数側で一定となっているVout/Vinの値の3dB分(前記値の約70%)に相当する値を算出し、この値と交差する周波数を求め、これを整流時の最大周波数とした。結果を表3に示す。またこのとき得られたグラフを図16に示す。
[実施例5]
<トランジスタの製造>
スピンコート法(1000rpm、20秒)により、実施例4と同じ銀インク組成物を厚さ0.7mmのガラス基板上に塗工し、100℃で30分、さらに150℃で30分加熱処理することで、ガラス基板上に厚さ200nmの銀層を形成した。
次いで、フォトリソグラフィーとエッチングにより、形成した銀層を厚さ200nm、幅10μmの線状にパターニングして、ゲート電極を形成した。このとき、フォトリソグラフィーとエッチングは、実施例4の場合と同じ方法で行った。
このゲート電極について、表面粗さ(Ra)をJIS B0601:2001(ISO4287:1997)に準拠して測定したところ、4nmであった。
次いで、上記で得られた、ガラス基板上にゲート電極が積層された積層物の表面(ガラス基板及びゲート電極の表面)に、ALD法により、厚さ130nmのアルミナ層を形成した。ALD法は、吸着ガスとしてトリエチルアルミニウムガスを、反応ガスとしてHOガスをそれぞれ用い、窒素ガスをキャリアガスとしてこれらを反応室内に導入し、パージガスとして窒素ガスを用いて行った。膜生成時の温度(成膜温度)は150℃とした。窒素ガスの流量は、これをキャリアガスとして用いた場合は300sccmとし、パージガスとして用いた場合は1500sccmとした。反応室内の圧力は40Paとした。トリエチルアルミニウムガスの導入時間は0.3秒、HOガスの導入時間は0.3秒、パージガス(窒素ガス)の導入時間は1秒とした。
さらに、このアルミナ層上に、スピンコート法(2000rpm、30秒)により、オレフィン液(日本ゼオン社製「ES2110−10」)を塗工し、150℃で60分加熱することで、厚さ30nmのオレフィン層を形成した。以上により、基板側から前記アルミナ層及びオレフィン層がこの順に積層されてなる絶縁層を形成した。
次いで、実施例4と同じ方法で、絶縁層上に厚さ25nmの半導体層(有機半導体層)を形成し、この半導体層上に金からなる厚さ50nmのソース電極及びドレイン電極をそれぞれ形成して、トランジスタを製造した。
<トランジスタの評価>
得られたトランジスタについて、実施例4と同様に評価を行った。結果を表3に示す。また、このときのドレイン電流IDとゲート電圧VGとの関係、及びドレイン電流IDとドレイン電圧VDとの関係(出力特性)についてのグラフを図17A〜図17Cに示す。図17Aは線形領域(V=−1V)におけるIDとVGとの関係、図17Bは飽和領域(VD=−20V)におけるIDとVGとの関係、図17CはIDとVDとの関係を、それぞれ示す。また、整流時の最大周波数を求めたときに得られたグラフを図18に示す。
[実施例6]
フォトリソグラフィーでのレジストパターンを変更し、チャネル長が2μmのソース電極及びドレイン電極を形成したこと以外は、実施例5と同じ方法でトランジスタを製造した。
そして、得られたトランジスタについて、実施例4と同様に評価を行った。結果を表3に示す。また、このときのドレイン電流IDとゲート電圧VGとの関係、及びドレイン電流IDとドレイン電圧VDとの関係(出力特性)についてのグラフを図19A〜図19Cに示す。図19Aは線形領域(V=−1V)におけるIDとVGとの関係、図19Bは飽和領域(VD=−10V)におけるIDとVGとの関係、図19CはIDとVDとの関係を、それぞれ示す。また、整流時の最大周波数を求めたときに得られたグラフを図20に示す。
[実施例7]
銀層形成時のスピンコート法の条件を2000rpm、20秒に代えて4000rpm、20秒として、厚さ40nmのゲート電極を形成し、さらに、フォトリソグラフィーでのレジストパターンを変更し、チャネル長が2μmのソース電極及びドレイン電極を形成したこと以外は、実施例4と同じ方法でトランジスタを製造した。
そして、得られたトランジスタについて、実施例4と同様に評価を行った。結果を表3に示す。また、このときのドレイン電流IDとゲート電圧VGとの関係、及びドレイン電流IDとドレイン電圧VDとの関係(出力特性)についてのグラフを図21A〜図21Cに示す。図21Aは線形領域(V=−1V)におけるIDとVGとの関係、図21Bは飽和領域(VD=−20V)におけるIDとVGとの関係、図21CはIDとVDとの関係を、それぞれ示す。また、整流時の最大周波数を求めたときに得られたグラフを図22に示す。
Figure 0006225992
表3から明らかなように、実施例4〜7のトランジスタは、実施例1〜3のトランジスタと同様に、大気下においてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いて塗布法で形成したゲート電極の表面粗さが小さく、キャリアの移動度が高かった。また、閾値電圧が適度な数値範囲にあり、OFF電流が低く、電流ON/OFF比が大きかった。さらに、図14A〜図14C、図17A〜図17C、図19A〜図19C及び図21A〜図21Cに示すように、IDとVG、IDとVDは、いずれも明りょうな相関関係を示していた。このように、実施例4〜7のトランジスタは、優れた特性を有していた。
さらに、実施例4〜7のトランジスタは、チャネル長が短く、高周波数で動作させるのに有利で、より実用性が高いものであるが、整流時の最大周波数がいずれも大きいことで、このことが確認された。
本発明は、コンピュータの電子回路や、TFTのIC等で利用可能である。
1,2,3 トランジスタ
11 基板
12,32 ゲート電極
13,33 絶縁層
14,24 半導体層
15,25 ソース電極
16,26 ドレイン電極
17 修飾層
18,28 中間層
L チャネル長
W チャネル幅

Claims (3)

  1. 基板上にゲート電極、絶縁層、半導体層、ソース電極及びドレイン電極を備え、
    前記ゲート電極が、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀を用いて形成されたものであり、
    前記ゲート電極の「ISO4287:1997」に基づく表面粗さが1〜10nmであるトランジスタ。
    Figure 0006225992
    (式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基であり;
    はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
    はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
    は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
  2. ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造、又はボトムゲート・トップコンタクト型構造を有する請求項1に記載のトランジスタ。
  3. 前記ゲート電極の厚さが10〜1000nmであり、前記絶縁層の厚さが10〜1000nmである請求項1に記載のトランジスタ。
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