JP6223246B2 - 溶銑脱硫方法 - Google Patents
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Description
この脱硫処理の手法として、特許文献1〜3に開示される技術がある。
特許文献1に開示の溶銑の脱硫方法は、CaO及びMgOを主成分とする精錬剤を用いて溶銑の脱硫を行う方法において、溶銑のAl濃度を0.005〜0.1質量%に調整して、カルシューム−アルミネートの生成を抑制することを特徴とする。これは、浸漬させたランスからフラックスをインジェクションする方法(所謂インジェクション脱硫)である。
このような脱硫処理の技術に加えて、特許文献4に開示されるように、容器に収容された溶銑にフラックスを上置きし、耐火物の攪拌羽(インペラ)を浸漬及び回転させて、上置きされたフラックスを溶銑中に巻き込むことにより脱硫する機械式脱硫方法(所謂KR脱硫)も存在する。
即ち、本発明の溶銑脱硫方法は、高炉より出銑された溶銑に、転炉での脱炭工程前の溶銑段階で機械式攪拌により脱硫処理を実施するにあたり、1330℃以上の前記溶銑に対して、以下に示す条件を満たす組成のフラックスを用いることを特徴とする。
図1は、高炉1から出銑された溶銑の精錬工程の一例を模式的に示す図である。
図1に示すように、高炉1から出銑された溶銑は、混銑車3にて受銑された後、製鋼工場に運搬され、そこで混銑車3から溶銑鍋4へ払い出される。この溶銑鍋4は、クレーンによって除滓位置に移され、鍋中の溶銑表面に存在する高炉スラグが除去(除滓)された後、クレーンによって転炉正面に運ばれる。除滓されて転炉正面に運ばれた溶銑は、溶銑鍋4から転炉へ装入される。転炉への溶銑の装入を終了した空の溶銑鍋4は、再びクレーンによって払出位置に戻され、混銑車3から溶銑鍋4へ次チャージの溶銑が払い出される。
図2は、溶銑を貯留する溶銑鍋4、及び溶銑鍋4に貯留された溶銑に浸漬されたインペラ5の構成を示す図である。この図2に示す構成によって機械式攪拌を行えば、溶銑中の硫黄は脱硫剤へと効果的に移行して脱硫スラグが形成され、形成された脱硫スラグを取り除くことで「硫黄分が除かれた溶銑」を得ることができる。
攪拌動力Pは、以下に示す永田の式(例えば、化学工学便覧、丸善(1998),P893-897)などを参照)を用いて得られる。
上述のように、本実施形態による上述の脱硫処理は、溶銑鍋4に、脱硫剤であるフラックスを添加する添加処理と、フラックスが添加された溶銑鍋4内の溶銑に対して機械式攪拌を施す攪拌処理とを有している。具体的に、本実施形態による脱硫処理は、添加処理に用いられるフラックスの成分の規定に特徴を有すると共に、攪拌処理における攪拌動力密度εの規定に特徴を有する。
上述の脱硫処理における脱硫反応は吸熱反応であるため、高温の方が進みやすいという特性がある。従って、フラックスに必要とされる条件が溶銑温度に依存して異なり、特に1330℃付近を境界として同一フラックスによる脱硫効率が大きく変化する。
尚、本実施形態においては溶銑温度の上限を定めないが、脱硫処理における実操業上の合理的な条件として、1450℃程度を溶銑温度の上限と考えることができる。
参考までに、脱硫処理前の溶銑温度が1330℃未満になると脱硫効率が大きく低下するが、その理由は、溶銑温度が1330℃未満になると、低温のため、脱硫反応自体の効率が悪くなる上、添加されたフラックス中の石灰の滓化が顕著に遅くなり、フラックス中の石灰の利用効率が大幅に低下するからである。
まず、フラックスは、換算M.Alについて以下の式(1)を満足する。
ここで、脱硫反応は、[S]+(O)=(S)+[O]・・式(ア)で表される。なお、記号[ ]は溶銑中に溶解していることを示し、記号( )は、スラグ中に溶解していることを示す。この式(ア)から分かるように、脱硫反応を効率良く進めるためには、第1に、溶銑中の酸素ポテンシャルを低減させる必要があり(第1の条件)、第2に、スラグ中の硫黄の活量を低下させる必要がある(第2の条件)。
尚、式(1)によって、換算M.Alの値の下限を0.05kg/t以上と示したが、その上限は3kg/t未満である。金属Al(M.Al)は高価なので、できるだけ使用量を減らすのが好ましい。
ここで注意しなくてはならないのは、上述の通り、M.Al及びAlNは、脱硫処理中に酸化されて、処理後にはほぼ全量がAl2O3になるという点である。Al2O3はスラグの脱硫能を低下させるので、M.Al及びAlNから転化するAl2O3の量を考慮した上で、フラックスの組成を設計しなくてはならない。
下の表2において、アルミ灰(1)とは、アルミ二ウム精錬で発生するアルミドロスを灰絞り処理し、含有するM.Alを回収したあとの残渣である。また、アルミ灰(2)とは、上述のアルミドロスを、アーク炉処理(例えば、特開2006−283083号公報を参照)によりM.Alを回収した後の残渣であり、AlNの含有量がアルミ灰(1)より高いのが特徴である。
まず、被検体であるフラックスのM.Al[wt%]を、臭素メタノール分解−ICP発光分析法により測定する。ここで、単位[wt%]は、重量パーセントを示す。
さらに、この残渣をICP発光分析によりアルミニウム(Al)の総量T.Al[wt%]を測定し、下式(3)に示すように、アルミニウム(Al)の総量T.Al[wt%]からAlN中のAl量を除いたものがAl2O3中のAlの量であるとしてAl2O3[wt%]を計算した。
本実施形態による攪拌処理では、攪拌動力密度ε[kw/t]を以下の式(4)に示すように用いる。
一方、M.Alを用いず全量AlNを用いた場合、脱酸反応の進行が遅いため、添加後すぐには酸素ポテンシャルが下がらず脱硫能を低下させるため、M.AlとAlNの比率には最適範囲が存在すると考えられ、効率良く脱硫反応を進行させるためには、M.AlとAlNの比率を最適範囲に調整した上で操業する必要がある。
つまり、攪拌動力が大きい場合は巻き込み大気量(巻き込み酸素量)が多いため、遅効性の(脱酸反応の進行が遅い)AlNの比率が高い必要があるし、また攪拌動力が小さい場合は即効性の(脱酸反応の進行が速い)M.Alの比率が高い必要がある。
以上に説明したとおり、上述の式(1),(2)及び(4)を満たすフラックスの組成及び攪拌動力密度εによる脱硫処理を行うことで、脱硫処理前の溶銑温度が1330℃以上の溶銑を効果的に脱硫することができる。
まず、実験条件について述べる。実験には高周波溶解炉を用いた。炉の内径(D)は400mm、浴深さ(Z)は340mm、溶銑量は300kgである。また、処理時間は攪拌開始より10分(min)とし、フラックスは、炉上方より攪拌開始直前に一括投入した。フラックスとしては、粒径が全て3mm未満である3mmアンダー品を用いた。
溶銑成分について、溶銑中の炭素Cの含有量である溶銑[C]は4.32〜4.68重量%、同じく硫黄Sの含有量である溶銑[S]は0.019〜0.027重量%、ケイ素Siの含有量である溶銑[Si]は0.26〜0.55重量%であった。
以下の表3は、脱硫処理の結果(実験結果)を実施例として示している。
以下の表4は、脱硫処理の結果(実験結果)を比較例1として示している。
図3は、表3に示す実施例の結果と表4に示す比較例1の結果を表すグラフである。図3に示すグラフによると、式(1)で規定する換算M.Alを満たしていない場合、つまり換算M.Alが0.05kg/t未満の場合は、処理後溶銑Sが50ppmを超えているので、式(1)で規定する換算M.Alが0.05kg/t以上となる成分のフラックスを用いて脱硫処理を行うことが望まれる。
図4は、表3に示す実施例の結果と表5に示す比較例2の結果を表すグラフである。図4に示すグラフによると、式(4)で規定する換算M.Alを満たしていない場合、つまり、脱酸パラメータZである、M.Al及びAlNによる比X(=AlN/(AlN+M.Al))と攪拌動力密度εとの商(X/ε)が、0.2以上0.9以下の範囲にない場合は、処理後溶銑Sが50ppmを超えている。従って、0.2以上0.9以下の脱酸パラメータZにおいて脱硫処理を行うことが望まれる。
図5は、表3に示す実施例の結果と表6に示す比較例3の結果を表すグラフである。図5に示すグラフによると、式(2)で規定する塩基度を満たしていない場合、つまり、SiO2やAl2O3の含有量に対するCaOやMgOの含有量の比が大きい場合は、処理後溶銑Sが50ppmを超えている。従って、式(2)で規定する塩基度が30以下となる成分のフラックスを用いて脱硫処理を行うことが望まれる。
3 混銑車
4 溶銑鍋
5 インペラ
Claims (1)
- 高炉より出銑された溶銑に、転炉での脱炭工程前の溶銑段階で機械式攪拌により脱硫処理を実施するにあたり、
1330℃以上の前記溶銑に対して、以下に示す条件を満たす組成のフラックスを用いることを特徴とする溶銑脱硫方法。
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