JP6215167B2 - 繊維強化複合体、及び繊維強化複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
この自動車、船舶、航空機などの輸送機器の中でも特に自動車分野においては、その構成用部材が軽量で、高い強度を有することが強く求められている。
この繊維強化複合体は、繊維強化樹脂材によって表層部に強度に優れた繊維強化樹脂層が形成されているとともに前記芯材によって優れた軽量性が発揮されることから自動車のルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバー、トランクリッドなどの部材として有用であると考えられる。
さらに、特許文献1に開示の繊維強化複合体は、樹脂発泡シートを過剰に圧縮して複合化されていると認められ、芯材となっている樹脂発泡体の気泡が押し潰され扁平率が低く、強度不足なものとなっていると考えられる。
本発明の繊維強化複合体は、樹脂発泡体からなる芯材と、樹脂及び繊維を含む繊維強化樹脂材とを備え、前記芯材に積層された前記繊維強化樹脂材によって繊維強化樹脂層が備えられている。
ここで前記芯材としては、例えば、樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう)を熱成形した成形体や樹脂発泡ビーズを型内成形したビーズ発泡成形体が挙げられるが、以下においては、芯材が発泡シート製である場合を例にして、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の繊維強化複合体Aの芯材A1は、前記のように発泡シートによって構成されたものである。
本実施形態に係る繊維強化複合体Aは、平面視における輪郭形状が長方形の板状構造を有し、図1においては、横方向Xが前記長方形の長辺に沿った方向となっており、奥行き方向Yが短辺に沿った方向となっている。
なお、以下においては、この横方向Xを“長さ方向”と称し、奥行き方向Yを“幅方向”と称する。
また、以下においては、この横方向Xと奥行き方向Yとに平行する平面に対して直交する方向Zを“厚み方向”又は“上下方向”と称する。
また、本実施形態の繊維強化複合体Aは、底面部A11の下面が平坦面となっており、且つ底面部A11の上面側が一部を隆起させて隆起部A13が形成されている。
即ち、本実施形態の繊維強化複合体Aは、この隆起部A13がその周囲よりも厚肉となっており、前記芯材A1についてもこの隆起部に対応する箇所が厚肉となっている。
該隆起部A13は、前記底面部A11から前記周側壁部A12の頂部までの高さよりも高さが低く、全体が帯状となって繊維強化複合体Aに備えられている。
また、前記隆起部A13は、繊維強化複合体Aの長さ方向(X)中央部を、幅方向一端側Ay1から他端側Ay2にかけて横断する形で繊維強化複合体Aに備えられている。
前記高段部A1aは、前記隆起部A13を構成しており、繊維強化複合体Aの前記隆起部A13に対応した形状を有している。
即ち、前記高段部A1aは、前記隆起部A13よりも一回り小さな帯状の領域を低段部A1bよりも上方に向かって一段高く突出させることによって形成されており、隆起部A13と同じく繊維強化複合体の幅方向に沿って延在している。
前記低段部A1bは、この高段部A1aの幅方向(繊維強化複合体Aの長さ方向)両側にそれぞれ配されている。
即ち、低段部A1bは、高段部A1aの両側に段差を介して隣接されている。
前記芯材A1は、前記高段部A1aにおける樹脂発泡体の気泡の扁平率が、0.15以上0.9以下で、前記低段部A1bの前記扁平率が0.1以上0.8以下であり、且つ、高段部A1aにおける前記扁平率が前記低段部A1bにおける前記扁平率よりも高い値を有している。
なお、前記高段部と前記低段部とは、その最大高低差が0.5mm以上13mm以下であることが好ましい。
また、高段部における前記扁平率と低段部における前記扁平率の差は、0.05以上0.6以下であることが好ましい。
なお、繊維強化複合体Aにおいて、芯材の気泡の扁平率は、下限以上であることで繊維強化複合体に優れた圧縮強度を付与することができ、上限値以下であることで芯材が優れた柔軟性を発揮し繊維強化樹脂層と芯材との剥離、及び、変形時の芯材の破壊(割れ)が抑制される。
また、前記低段部A1bの前記扁平率は、0.1以上0.7以下であることが好ましく、0.1以上0.5以下であることがさらに好ましい。
また、前記高段部と前記低段部とは、その最大高低差が1mm以上13mm以下であることがより好ましく、1mm以上10mm以下であることが特に好ましい。
さらに、高段部における前記扁平率と低段部における前記扁平率の差は、0.1以上0.6以下であることがさらに好ましく、0.2以上0.6以下であることが特に好ましい。
即ち、本実施形態の繊維強化複合体Aは、前記隆起部A13が補強リブとして機能するばかりでなく、この前記隆起部A13を構成している部分において芯材A1が高強度なものとなっている。
なお、繊維強化複合体に対し、優れた圧縮強度や柔軟性を発揮させ、繊維強化樹脂層と芯材との剥離を抑制するとともに変形時の芯材の破壊(割れ)を抑制させる点においては、「短辺径DS」の方向が、繊維強化複合体の厚み方向となっていることが好ましい。
扁平率は、例えば、マキタ製スライド切断機LS1213に、切断刃『谷テック社レーザービームソー LBS AURORA 260Z』を取り付け、試料をカットした後、断面をデジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス社製、型名『VHX-1000』)にて観察(倍率200倍)することにより算出する。
断面の厚み方向に表面から裏面に亘って仮想線を引き、その仮想線上に接する気泡において、短辺気泡径(DS)、長辺気泡径(DL)を測定し、下記に示す算出方法にて、気泡アスペクト比を算出する。
気泡の扁平率=短辺気泡径÷長辺気泡径
同様な操作を、上記で測定した断面とは異なる面においても実施し、これらを10箇所にて実施して算術平均する。
発泡シートの加熱厚み膨張率が高すぎると、繊維強化複合体の機械的強度が低下するおそれや、成形型への負荷が大きくなりすぎるおそれがある。
発泡シートの加熱厚み膨張率は20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、100%以上が特に好ましい。
発泡シートの加熱厚み膨張率の上限としては、特に限定されないが、400%以下が好ましく、350%以下がより好ましい。
(加熱厚み膨張率の求め方)
発泡シートから一辺が15cmの平面正方形状の試験片を切り出す。
試験片の厚みを任意の9箇所において測定し、その相加平均値を加熱前厚みT1とする。
次に、試験片をその表面温度が145℃となるように2分間加熱した後、25℃にて60分間放置する。
しかる後、試験片の厚みを任意の9箇所において測定し、その相加平均値を加熱後厚みT2とする。
加熱前厚みT1及び加熱後厚みT2に基づいて下記式により発泡シートの加熱厚み膨張率を算出する。
発泡シートにおける145℃での2分間加熱厚み膨張率(%)
=100×(T2−T1)/T1
即ち、発泡シートに含まれている残存ガス量を多くすることによって発泡シートの加熱厚み膨張率を高くすることができる。
又、発泡シートの結晶化度を低くすることによって発泡シートの加熱厚み膨張率を高くすることができる。
(残存ガス量の求め方)
先ず、発泡シート全体の質量W1を測定する。
次に、発泡シート中における残存ガス量を測定する。
該残存ガス量は、ガスクロマトグラフを用いて測定することができ、具体的には、下記要領にて発泡シート中における残存ガス量を測定することができる。
〔GC測定条件〕
測定装置:ガスクロマトグラフ Clarus500(Perkin−Elmer社製)
カラム:DB−1(1.0μm×0.25mmφ×60m:J&W社製)
検出器:FID
GCオーブン昇温条件:初期温度50℃(6分)
昇温速度:40℃/分(250℃まで)
最終温度:250℃(1.5分)
キャリアーガス(He),注入口温度:230℃,検出温度:310℃
レンジ:20
ベントガス 30mL/分(He)、追加ガス 5mL/分(He)
ガス圧力:初期圧力18psi(10分),昇圧速度:0.5psi/min(24psiまで)
〔HS測定条件〕
測定装置:HSオートサンプラー TurboMatrix HS40(Perkin−Elmer社製)
加熱温度:210℃,加熱時間:20分,加圧ガス圧:25psi,加圧時間:1分
ニードル温度:210℃,トランスファーライン温度:210℃,試料導入時間:0.08分
〔算出条件〕
検量線用標準ガス:混合ガス(ジーエルサイエンス社製)
混合ガス含有量:i−ブタン 約1質量%,n−ブタン 約1質量%,バランス 窒素
算出方法:MHE法により試料の含有ガス量を算出した。結果は全てi−ブタン換算量とした。
発泡シート中における残存ガス量(質量%)=100×W2/W1
示差走査熱量計装置(エスアイアイナノテクノロジー社製 商品名「DSC6220型」)を用いて以下のようにして測定する。
発泡シートから切り出した好ましくは直方体形状の試料をアルミニウム製の測定容器の底に隙間のないように約6mg充填して、試料を窒素ガス流量30mL/分の条件下にて30℃で2分間に亘って保持する。
しかる後、試料を速度10℃/分で30℃から290℃まで昇温した時のDSC曲線を得る。
その時の基準物質はアルミナを用いる。
発泡シートが熱可塑性ポリエステル樹脂製である場合、当該発泡シートの結晶化度は、融解ピークの面積から求められる融解熱量(mJ/mg)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(mJ/mg)の差を合成樹脂の完全結晶の理論融解熱量ΔH0で徐して求められる割合となる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂のΔH0は140.1mJ/mgである。
発泡シートの結晶化度は下記式に基づいて算出する。
発泡シートの結晶化度(%)
=100×(│融解熱量(mJ/mg)│−│結晶化熱量(mJ/mg)│)/ΔH0(mJ/mg)
該発泡シートを構成する樹脂は、繊維強化樹脂層A2を構成する樹脂と親和性に優れることが好ましい。
従って、先に例示のものの中では、多くの種類の樹脂との間に優れた親和性を示すものが発泡シートを構成する樹脂として好ましく、該樹脂は、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂などが好ましい。
なお、発泡シートは、単独種類の樹脂で構成される必要はなく、2種類以上の樹脂を含む混合樹脂によって構成されてもよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
なお、芳香族ポリエステル樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリ乳酸系樹脂としては、乳酸がエステル結合により重合した樹脂を用いることができ、商業的な入手容易性及びポリ乳酸系樹脂発泡粒子への発泡性付与の観点から、D−乳酸(D体)及びL−乳酸(L体)の共重合体、D−乳酸又はL−乳酸のいずれか一方の単独重合体、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群から選択される1又は2以上のラクチドの開環重合体が好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
芯材A1の表面に非発泡層が形成されていることによって、芯材A1と繊維強化樹脂層A2とが互いに芯材A1の非発泡層によって強固に一体化し、繊維強化複合体Aは優れた機械的強度を発揮する。
なお、芯材A1の非発泡層の厚みは、芯材A1の非発泡層の表面に対して直交する方向の厚みをいう。
芯材A1の非発泡層の平均厚みは、非発泡層の最小厚みと最大厚みの平均値をいう。
また、その見掛け密度は、0.05〜1.2g/cm3が好ましく、0.08〜0.9g/cm3がより好ましい。
なお、発泡体の密度は、JIS K7222:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に準拠して測定された値をいう。繊維強化複合体Aにおける芯材A1の見掛け密度の測定は、繊維強化複合体Aから繊維強化樹脂層A2を剥離した後の芯材に基づいて行う。
芯材の見掛け密度は、高すぎると、繊維強化複合体の熱成形性が低下し、所望形状を有する繊維強化複合体を得ることができないおそれがある。
(芯材となる樹脂発泡体の作製方法)
(1)合成樹脂発泡粒子を金型内に充填し、熱水や水蒸気などの熱媒体によって合成樹脂発泡粒子を加熱して発泡させ、合成樹脂発泡粒子の発泡圧によって発泡粒子同士を融着一体化させて所望形状を有する発泡体を製造する方法(型内発泡成形法)。
(2)合成樹脂を押出機に供給して化学発泡剤又は物理発泡剤などの発泡剤の存在下にて溶融混練し押出機から押出発泡させて発泡体を製造する方法(押出発泡法)。
(3)合成樹脂及び化学発泡剤を押出機に供給して化学発泡剤の分解温度未満にて溶融混練し押出機から発泡性樹脂成形体を製造し、この発泡性樹脂成形体を発泡させて発泡体を製造する方法。
(1)合成樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から合成樹脂押出物を押出発泡させながら切断した後に冷却して合成樹脂発泡粒子を製造する方法。
(2)合成樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出発泡してストランド状の合成樹脂押出物を製造し、この合成樹脂押出物を所定間隔毎に切断して合成樹脂発泡粒子を製造する方法。
(3)合成樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けた環状ダイ又はTダイから押出発泡して発泡シートを製造し、この発泡シートを切断することによって合成樹脂発泡粒子を製造する方法。
なお、上記ダイとしては、押出発泡において汎用されているものであれば、特に限定されず、例えば、Tダイ、サーキュラダイなどが挙げられる。
一方、ダイとしてサーキュラダイを用いた場合には、サーキュラダイから円筒状に押出発泡して円筒状体を製造し、この円筒状体を徐々に拡径した上で冷却マンドレルに供給して冷却した後、円筒状体をその押出方向に連続的に内外周面間に亘って切断し切り開いて展開することによって発泡シートを製造することができる。
なお、物理発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
前記強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。
強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
なかでも、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的物性を有している。
強化繊維基材としては、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。
織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。
また、前記結束用の糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
複数枚の強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材としては、例えば、以下のような態様が挙げられる。
(1)一種のみの強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材。
(2)複数種の強化繊維基材を用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材。
(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた強化繊維基材どうしを糸で一体化(縫合)してなる積層強化繊維基材。
強化繊維に含浸させる樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の何れも用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。
繊維強化樹脂シートには、熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤や硬化促進剤を含有させても良く、その他の添加剤が含有されていてもよい。
なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
具体的には、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。
なお、エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
樹脂の含有量が少なすぎると、強化繊維どうしの結着性や繊維強化樹脂層A2と芯材A1との接着性が不十分となり、繊維強化樹脂層A2の機械的物性や繊維強化複合体Aの表面硬度又は曲げ弾性率を十分に向上させることができない虞れがある。
また、樹脂の含有量が多すぎる場合も、繊維強化樹脂層A2の機械的物性が低下して、繊維強化複合体の表面硬度又は曲げ弾性率を十分に向上させることができない虞れがある。
厚みが上記範囲内である繊維強化樹脂層は、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
目付が上記範囲内である繊維強化樹脂層は、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
該熱成形としては、例えば、真空成形法、圧空成形法、圧縮成形法などが挙げられる。
真空成形法、圧空成形法及び圧縮成形法を応用した熱成形方法としては、例えば、ストレート成形法、ドレープ成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシスト・リバースドロー成形法、エアスリップ成形法、スナップバック成形法、リバースドロー成形法、プラグアシスト・エアスリップ成形法、マッチモールド成形法、プレス成形法、SMC成形法及び、これらの成形法を組み合わせた熱成形方法が挙げられ、成形性に乏しい繊維強化樹脂材を使用しても外観の良好な繊維強化複合体を得ることができるので、プレス成形法、マッチモールド成形法が好ましい。
本実施形態に係る繊維強化複合体Aは、その変更例において、平面視における輪郭形状が長方形ではなく、正方形やその他の多角形、円形、楕円形、半円形、三日月形、不定形などの種々の形態とすることができる。
即ち、本実施形態の繊維強化複合体Aは、板状構造を有する板状部において帯状の隆起部が形成され、該隆起部に対応する芯材が特定の発泡状態となって備えられていることにより優れた強度が発揮されるものである。
この第二実施形態の繊維強化複合体Aは、図4に示したように幅方向(Y)の一端側Ay1から他端側Ay2に向けて厚みを増大させている。
ただし、本実施形態の繊維強化複合体Aは、長さ方向(X)中央部においては、幅方向一端側Ay1から他端側Ay2にかけての厚みを共通させている。
そして、この厚みを共通させている部位は、繊維強化複合体Aを長さ方向(X)中央部において横断する帯状の領域となって繊維強化複合体Aに備えられている。
この隆起部は、図1に示した繊維強化複合体と同様にその長さ方向左右における部位よりも一段高さの高い高段部AHとなっており、この高段部よりも一段低い左右の低段部ALとの間に段差を形成させる形で繊維強化複合体に備えられている。
なお、この第二実施形態の隆起部も図1に示した繊維強化複合体と同様で図4のII−II線矢視断面も図2と同様のものとなっている。
即ち、第二実施形態の繊維強化複合体Aは、芯材A1が、前記隆起部に対応して帯状に延びる高段部A1aと該高段部A1aに段差を介して隣接された低段部A1bとを有し、該高段部A1aにおける樹脂発泡体の気泡の扁平率が、0.15以上0.9以下で、前記低段部A1bの前記扁平率が0.1以上0.6以下であり、且つ、高段部A1aにおける前記扁平率が前記低段部A1bにおける前記扁平率よりも高い値を有している点においても図1に示した繊維強化複合体と同じである。
また、その場合、一つの隆起部と別の隆起部とは並行するように設けても、不連続的に設けても、交差するように設けても良く、それぞれ高さや幅を異ならせても良い。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET、東洋紡績社製 商品名「CH−611」、ガラス転移温度Tg:79℃、融点:249℃、IV値:1.0)100質量部、タルク0.72質量部、及び、無水ピロメリット酸0.2質量部を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物を口径が65mmで且つL/D比が35の単軸押出機に供給して290℃にて溶融混練した。
次いで、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シートを一辺350mmの平面正方形状に切り出した。
ポリエチレンテレフタレート発泡シートの見掛け密度、厚み、加熱厚み膨張率、結晶化度及び残存ガス量を表1に示す。
面材は、一辺250mmの平面正方形状であった。
また、面材には、熱硬化性樹脂として未硬化のエポキシ樹脂が40質量%含有されていた。
面材どうしは、面材に含まれているエポキシ樹脂によって一体化させて用いた。
しかる後、積層体を145℃に5秒間に亘って加熱して繊維強化樹脂材に含浸されている未硬化のエポキシ樹脂を軟化させて硬化させることなく流動性を有する状態とした。
この状態において、発泡シートと繊維強化樹脂材との仮接着は完全に解除され、繊維強化樹脂材は発泡シート上において自由に移動可能な状態となっていた。
なお、プレス成形時には、積層体が145℃となるように保持し、繊維強化樹脂材に含まれているエポキシ樹脂が硬化することなく流動性を保持するように制御した。
なお、雄雌金型は、隆起部の断面形状が略等脚台形となる繊維強化複合体を製造できるものとした(図5、実施例2に係る寸法図参照)。
また、雄雌金型は、図5に示した短冊状試料(横方向寸法が25mm、奥行き方向(図5における紙面奥行き方向)寸法が130mmの短冊状試料)を10個採取できる繊維強化複合体を作製可能なものとした。
なお、実施例1においては、図5の奥行き方向に延在する隆起部を有し、該隆起部が高さ:約3mm(芯材の高低差1mm)、先端幅:10.7mm(芯材の高段部幅10mm)、側面傾斜角:20度となる短冊状試料を形成可能な雄雌金型を用いた。
なお、図6(a)に実施例1において作製される短冊状試料の芯材部分の形状(断面形状)を示す。
得られた繊維強化複合体は、硬化した熱硬化性樹脂によって繊維どうしが結着され且つ雌雄金型に沿って所望形状に成形された繊維強化樹脂層が発泡シートの表面に沿って全面的に密着した状態となって積層一体化されていた。
なお、発泡シートは、押出後、室温25±5℃に48時間保管したものを使用した。
図5に示すように、芯材の高段部の厚みが3mmとなるようにした以外は、実施例1と同様に繊維強化複合体を作製した。
ポリエチレンテレフタレート100質量部に対するブタンの量を1.1質量部に代えて1.3質量部とし、厚みが3.2mmとなるように製造した発泡シートを芯材とした以外は実施例1と同様に繊維強化複合体を作製した。
隆起部の形状が表1となるように用いる成形型を変更した以外は、実施例3と同様に繊維強化複合体を作製した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シートに代えて厚み3mmのアクリル系樹脂発泡シート(発泡倍率10倍、積水化成品工業株式会社製、製品名「フォーマック #1000グレード」)を芯材とした以外は、実施例3と同様に繊維強化複合体を作製した。
隆起部の形状が表1となるように用いる成形型を変更した以外は、実施例1と同様に繊維強化複合体を作製した。
隆起部の形状が表1となるように用いる成形型を変更した以外は、実施例3と同様に繊維強化複合体を作製した。
隆起部の形状が表1となるように用いる成形型を変更した以外は、実施例3と同様に繊維強化複合体を作製した。
なお、図6(b)に比較例3において作製される短冊状試料の芯材部分の形状(断面形状)を示す。
実施例3の発泡シートを2枚積層して芯材とし、隆起部の形状が表1となるように用いる成形型を変更した以外は、実施例3と同様に繊維強化複合体を作製した。
(曲げ強度の測定)
繊維強化複合体の曲げ強度は、小型卓上試験機(日本電産シンポ社製 商品名「FGS−1000TV/1000N+FGP−100」)及び小型卓上試験機用ソフトウェア「FGS−TV Ver2」を用いて測定した。
また、冶具は日本電産シンポ社製の「FGTT-531」を用いた。
前記短冊状試料を支持台に載置し、ロードセル1000N、試験速度5mm/分、支持台の先端治具5R、開き幅100mmの条件下にて最大点荷重を測定し、最大点荷重を試験片の質量で除して得られた値を質量効率とした。
A1 芯材
A2 繊維強化樹脂層
A13 隆起部
A1a 高段部
A1b 低段部
Claims (6)
- 樹脂発泡体からなる芯材と、
樹脂及び繊維を含む繊維強化樹脂材とを備え、
前記芯材に積層された前記繊維強化樹脂材によって繊維強化樹脂層が備えられている繊維強化複合体であって、
板状構造を有する板状部を備え、該板状部の少なくとも片面側には帯状の隆起部を有し、
前記芯材は、前記隆起部に対応して帯状に延びる高段部と該高段部よりも一段低い低段部とを備えており、該高段部における樹脂発泡体の気泡の扁平率が、0.15以上0.9以下で、前記低段部の前記扁平率が0.1以上0.8以下であり、且つ、高段部における前記扁平率が前記低段部における前記扁平率よりも高い値を有している繊維強化複合体。 - 前記高段部と前記低段部との最大高低差が0.5mm以上13mm以下である請求項1記載の繊維強化複合体。
- 高段部における前記扁平率と低段部における前記扁平率の差が0.05以上0.6以下である請求項1記載の繊維強化複合体。
- 前記芯材が樹脂発泡シートであり、前記樹脂発泡シートに前記繊維強化樹脂材が積層された後に成形されて前記隆起部が形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の繊維強化複合体。
- 自動車用部品、風車用部品、産業機械用部品、医療用機器部品、又は、家電機器用部品として用いられる請求項1乃至4の何れか1項に記載の繊維強化複合体。
- 樹脂発泡体からなる芯材と、
樹脂及び繊維を含む繊維強化樹脂材とを積層し、
前記芯材に積層された前記繊維強化樹脂材を前記芯材とともに熱成形し、
前記芯材に立体形状を備えさせるとともに前記芯材に前記繊維強化樹脂材を接着させて繊維強化樹脂層を形成させ、
板状構造を有する板状部を備え、該板状部の少なくとも片面側に帯状の隆起部を有する繊維強化複合体を作製し、且つ、
前記芯材が、前記隆起部に対応して帯状に延びる高段部と該高段部よりも一段低い低段部とを有し、該高段部における樹脂発泡体の気泡の扁平率が、0.15以上0.9以下で、前記低段部の前記扁平率が0.1以上0.8以下であり、高段部における前記扁平率が前記低段部における前記扁平率よりも高い値を有している繊維強化複合体を作製する繊維強化複合体の製造方法。
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