本発明の繊維強化複合体の製造方法は、発泡芯材の少なくとも一面に繊維強化プラスチック層が積層一体化されてなる繊維強化複合体を製造する製造方法であって、二次発泡可能な原反発泡体の少なくとも一面に、強化用合成樹脂が含浸された強化繊維を含む繊維強化プラスチック層形成材を積層して積層体を製造する積層工程と、上記積層体を雌雄金型間に形成されたキャビティ内に配設する配設工程と、上記積層体を加熱して上記原反発泡体を二次発泡させて発泡余力を有する二次発泡体とすると共に上記繊維強化プラスチック層形成材を熱成形可能な状態にする二次発泡工程と、上記雌雄金型によって上記積層体の発泡余力を有する二次発泡体を圧縮して上記発泡芯材とし、上記発泡芯材の少なくとも一面に、繊維強化プラスチック層形成材から形成された繊維強化プラスチック層を積層する圧縮工程とを含むことを特徴とする。
先ず、二次発泡可能な原反発泡体1の少なくとも一面に、強化繊維に強化用合成樹脂が含浸された繊維強化プラスチック層形成材2を積層して積層体Bを製造する(積層工程)。
二次発泡可能な原反発泡体1としては、加熱によって二次発泡可能であれば、特に限定されない。原反発泡体1の製造方法は公知の製造方法が用いられる。なお、図1では、原反発泡体1の両面に繊維強化プラスチック層形成材2を積層した場合を示したが、原反発泡体の片面にのみ繊維強化プラスチック層形成材2を積層してもよい。又、図1の原反発泡体は、平板状である場合を示したが、所望形状に成形されていてもよい。
原反発泡体1を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられ、繊維強化プラスチック層A2に含浸されている熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂との接着性に優れていることから、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。なお、合成樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸と二価アルコールとが、縮合反応を行った結果得られた高分子量の線状ポリエステルである。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステルであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、芳香族ポリエステル樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
なお、芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に、例えば、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などの三価以上の多価カルボン酸やその無水物、グリセリンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどの三価以上の多価アルコールなどを構成成分として含有していてもよい。
又、芳香族ポリエステル樹脂は、使用済のペットボトルなどから回収、再生したリサイクル材料を用いることもできる。
ポリエチレンテレフタレートは架橋剤によって架橋されていてもよい。架橋剤としては、公知のものが用いられ、例えば、無水ピロメリット酸などの酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられる。なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリエチレンテレフタレートを架橋剤によって架橋する場合には、押出機にポリエチレンテレフタレートと共に架橋剤を供給すればよい。押出機に供給する架橋剤の量は、少なすぎると、ポリエチレンテレフタレートの溶融時の溶融粘度が小さくなりすぎて、破泡してしまうことがあり、多すぎると、ポリエチレンテレフタレートの溶融時の溶融粘度が大きくなりすぎて、発泡体を押出発泡によって製造する場合には押出発泡が困難となることがあるので、ポリエチレンテレフタレート100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂としては、乳酸がエステル結合により重合した樹脂を用いることができ、商業的な入手容易性及びポリ乳酸系樹脂発泡粒子への発泡性付与の観点から、D−乳酸(D体)及びL−乳酸(L体)の共重合体、D−乳酸又はL−乳酸のいずれか一方の単独重合体、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群から選択される1又は2以上のラクチドの開環重合体が好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、圧縮工程及び得られる繊維強化複合体の物性に影響を与えない限り、乳酸以外の単量体成分として、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸などの脂肪族多価カルボン酸;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの脂肪族多価アルコールなどを含有していてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、圧縮工程及び得られる繊維強化複合体の物性に影響を与えない限り、アルキル基、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基などのその他の官能基を含んでいてもよい。ポリ乳酸系樹脂はイソシアネート系架橋剤などによって架橋されていてもよく、エステル結合以外の結合手により結合していてもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物、ポリフェニレンエーテルにスチレン系モノマーをグラフト共重合してなる変性ポリフェニレンエーテル、この変性ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物、フェノール系モノマーとスチレン系モノマーとを銅(II) のアミン錯体などの触媒存在下で酸化重合させて得られるブロック共重合体、このブロック共重合体とポリスチレン系樹脂との混合物などが挙げられる。なお、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2、6−ジメチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジエチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジクロロフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジブロモフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−メチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジ−n−プロピルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−ブロモ−6−メチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−ブロモフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−エチルフェニレン−1、4−エーテル)などが挙げられる。ポリフェニレンエーテル系樹脂の重合度は、通常、10〜5000のものが用いられる。
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマーを重合させることによって製造される。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの何れか一方又は双方を意味する。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
又、アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリル系モノマー以外にこれと共重合可能なモノマー成分を含有していてもよい。このようなモノマーとしては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。
ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系モノマーをモノマー単位として含む単独重合体又は共重合体、スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能な一種又は二種以上のビニルモノマーとをモノマー単位として含む共重合体などが挙げられ、スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能な一種又は二種以上のビニルモノマーとをモノマー単位として含む共重合体が好ましく、メタクリル酸及び/又はメタクリル酸メチルと、スチレン系モノマーとをモノマー単位として含む共重合体がより好ましい。なお、ポリスチレン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなど)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなど)などのアクリル系モノマー、無水マレイン酸、アクリルアミドなどが挙げられ、アクリル系モノマーが好ましく、メタクリル酸、メタクリル酸メチルを含むことがより好ましく、メタクリル酸、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
原反発泡体1は、後述する二次発泡工程において加熱されることによって二次発泡する。原反発泡体1を効果的に二次発泡させるために、原反発泡体1中にはガスが残存されていることが好ましい。
原反発泡体1中の残存ガス量は0.1重量%以上が好ましく、0.2〜1.5重量%がより好ましく、0.3〜1.1重量%が特に好ましい。原反発泡体1中の残存ガス量が少なすぎると、原反発泡体の二次発泡性が低下し、圧縮工程において、二次発泡体を十分に圧縮させることができず、二次発泡体の表面部の気泡の変形が不十分となり、二次発泡体の機械的強度の向上が不十分となる虞れがある。その結果、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができず、二次発泡体を圧縮して得られる発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成される繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となる虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、又は、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れが生じることがある。一方、原反発泡体1中の残存ガス量が多すぎると、二次発泡体の圧縮時に二次発泡体の気泡に破泡が生じて発泡芯材の機械的強度の低下が生じる虞れがあり、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができなくなり、上記問題を生じる虞れがある。
原反発泡体1中の残存ガス量は下記の要領で測定される。原反発泡体全体の重量W1を測定する。原反発泡体中の残存ガス量はガスクロマトグラフを用いて測定することができ、例えば、下記装置を用いて下記条件にて原反発泡体中の残存ガス量を測定することができる。
原反発泡体の試料10〜30mgを20mLバイアル瓶に入れて精秤し、バイアル瓶を密閉してオートサンプラー付ガスクロマトグラフにセットし、バイアル瓶を210℃で20分間に亘って加熱した後、バイアル瓶の上部空間の気体をMHE(Multiple Headspace Extraction)法にて定量分析し、原反発泡体中の含有ガス量W2を測定する。
ここでいうMHE法とは、気固平衡にある気相ガスの放出を繰り返すことで得られるピーク面積の減衰を利用する定量方法である。
〔GC測定条件〕
測定装置:ガスクロマトグラフ Clarus500(Perkin-Elmer社製)
カラム:DB−1(1.0μm×0.25mmφ×60m:J&W社製)
検出器:FID
GCオーブン昇温条件:初期温度50℃(6分)
昇温速度:40℃/分(250℃まで)
最終温度:250℃(1.5分)
キャリアーガス(He),注入口温度:230℃,検出温度:310℃
レンジ:20
ベントガス 30mL/分(He)、追加ガス 5mL/分(He)
ガス圧力:初期圧力18psi(10分)、昇圧速度:0.5psi/min(24psiまで)
〔HS測定条件〕
測定装置:HSオートサンプラー TurboMatrix HS40(Perkin-Elmer社製)
加熱温度:210℃,加熱時間:20分,加圧ガス圧:25psi,加圧時間:1分
ニードル温度:210℃,トランスファーライン温度:210℃,試料導入時間:0.08分
〔算出条件〕
検量線用標準ガス:混合ガス(ジーエルサイエンス社製)
混合ガス含有量:i-ブタン 約1重量%,n-ブタン 約1重量%,バランス 窒素
算出方法:MHE法により試料の含有ガス量を算出した。結果は全てi-ブタン換算量とした。
原反発泡体中における残存ガス量は下記式に基づいて算出することできる。
原反発泡体中における残存ガス量(重量%)=100×W2/W1
原反発泡体1の見掛け密度は、小さすぎると、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあり、大きすぎると、得られる繊維強化複合体の軽量性が低下することがあるので、0.03〜0.7g/cm3が好ましく、0.05〜0.5g/cm3がより好ましい。
なお、本発明において、発泡体の見掛け密度は、JIS K7222「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に準拠して測定された値をいう。後述する繊維強化複合体Aにおける発泡芯材A1の見掛け密度の測定は、繊維強化複合体Aから繊維強化プラスチック層A2を剥離した後の発泡芯材に基づいて行う。
原反発泡体1の結晶化度は29%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。原反発泡体1の結晶化度は、高すぎると、原反発泡体の二次発泡性が低下し、圧縮工程において、二次発泡体を十分に圧縮させることができず、二次発泡体の表面部の気泡の変形が不十分となり、二次発泡体の機械的強度の向上が不十分となる虞れがある。その結果、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができず、二次発泡体を圧縮して得られる発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成される繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となる虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、又は、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れが生じることがある。
なお、本発明において、発泡体の結晶化度は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法に準拠して測定された値をいう。
具体的には、示差走査熱量計装置(エスアイアイナノテクノロジー社製 商品名「DSC6220型」)を用い、アルミニウム製の測定容器の底に隙間のないように、発泡体から切り出した好ましくは直方体形状の試料を約6mg充填して、試料を窒素ガス流量30mL/分の条件下にて30℃で2分間に亘って保持する。
しかる後、試料を速度10℃/分で30℃から290℃まで昇温した時のDSC曲線を得る。その時の基準物質はアルミナを用いた。発泡体の結晶化度は、融解ピークの面積から求められる融解熱量(mJ/mg)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(mJ/mg)の差を合成樹脂の完全結晶の理論融解熱量ΔH0で徐して求められる割合である。例えば、ポリエチレンテレフタレートのΔH0は140.1mJ/mgである。発泡体の結晶化度は下記式に基づいて算出される。
発泡体の結晶化度(%)
=100×(│融解熱量(mJ/mg)│−│結晶化熱量(mJ/mg)│)/ΔH0(mJ/mg)
原反発泡体の後述する二次発泡温度T1での体積膨張率は、1〜100%が好ましく、1〜50%がより好ましい。原反発泡体の二次泡温度T1での体積膨張率が低すぎると、圧縮工程において、二次発泡体を十分に圧縮させることができず、二次発泡体の表面部の気泡の変形が不十分となり、二次発泡体の機械的強度の向上が不十分となる虞れがある。その結果、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができず、二次発泡体を圧縮して得られる発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成される繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となる虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、又は、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れが生じることがある。原反発泡体の二次発泡温度T1での体積膨張率が高すぎると、二次発泡体の圧縮が難しくなり、二次発泡体の表面部における気泡の偏平化が不足し、二次発泡体の機械的強度の向上が不十分となる虞れがあり、その結果、上記と同様の問題を生じる虞れがある。
なお、原反発泡体の二次発泡温度T1での体積膨張率はJIS K7212(プラスチック−熱可塑性プラスチックの熱安定性試験方法−オーブン法)A法に準拠して測定され、具体的には、下記の要領で測定される。原反発泡体から一辺が15cmの平面正方形状で且つ厚みが1cmのシート状の試験片を切り出す。試験片の厚みを任意の9箇所において測定し、その相加平均値を加熱前厚みH1とする。次に、試験片をその表面温度がT1℃となるように1分間に亘って加熱する。しかる後、試験片の厚みを任意の9箇所において測定し、その相加平均値を加熱後厚みH2とする。加熱前厚みH1及び加熱後厚みH2に基づいて下記式により原反発泡体の二次発泡温度H1での体積膨張率を算出する。
原反発泡体の二次発泡温度T1での体積膨張率(%)
=100×(H2−H1)/H1
原反発泡体1の製造方法としては、二次発泡が可能であれば、公知の製造方法を用いることができる。具体的には、原反発泡体の製造方法としては、(1)合成樹脂発泡粒子を金型内に充填し、熱水や水蒸気などの熱媒体によって合成樹脂発泡粒子を加熱して発泡させ、合成樹脂発泡粒子の発泡圧によって発泡粒子同士を融着一体化させて所望形状を有する原反発泡体を製造する方法(型内発泡成形法)、(2)合成樹脂を押出機に供給して化学発泡剤又は物理発泡剤などの発泡剤の存在下にて溶融混練し押出機から押出発泡させて原反発泡体を製造する方法(押出発泡法)、(3)合成樹脂及び化学発泡剤を押出機に供給して化学発泡剤の分解温度未満にて溶融混練し押出機から発泡性樹脂成形体を製造し、この発泡性樹脂成形体を発泡させて原反発泡体を製造する方法などが挙げられ、所望形状の原反発泡体を容易に製造することができることから、上記(1)の型内発泡成形法が好ましい。
上記(1)の型内発泡成形法で用いられる合成樹脂発泡粒子の製造方法としては、(1)合成樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から合成樹脂押出物を押出発泡させながら切断した後に冷却して合成樹脂発泡粒子を製造する方法、(2)合成樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出発泡してストランド状の合成樹脂押出物を製造し、この合成樹脂押出物を所定間隔毎に切断して合成樹脂発泡粒子を製造する方法、(3)合成樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けた環状ダイ又はTダイから押出発泡して発泡シートを製造し、この発泡シートを切断することによって合成樹脂発泡粒子を製造する方法などが挙げられる。
上記(2)の押出発泡法の製造方法としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練した後に押出機の先端に取り付けたダイから押出発泡させて原反発泡体を製造する方法が挙げられる。なお、上記ダイとしては、押出発泡において汎用されているものであれば、特に限定されず、例えば、Tダイ、サーキュラダイなどが挙げられる。
上記製造方法において、ダイとしてTダイを用いた場合には、押出機からシート状に押出発泡することによって原反発泡体を製造することができる。一方、ダイとしてサーキュラダイを用いた場合には、サーキュラダイから円筒状に押出発泡して円筒状体を製造し、この円筒状体を徐々に拡径した上で冷却マンドレルに供給して冷却した後、円筒状体をその押出方向に連続的に内外周面間に亘って切断し切り開いて展開することによって原反発泡体を製造することができる。
化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。なお、化学発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
物理発泡剤は、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、物理発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
原反発泡体1の少なくとも一面に繊維強化プラスチック層形成材2を積層して積層体Bを製造する。繊維強化プラスチック層形成材2は、強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させてなる。繊維強化プラスチック層形成材2は、原反発泡体1の片面又は両面の何れに積層させてもよいが、得られる繊維強化複合体の寸法安定性に優れていることから、原反発泡体1の両面に積層させることが好ましい。
繊維強化プラスチック層形成材2を構成している強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的物性を有している。
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。また、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
強化繊維基材は、一枚の強化繊維基材のみを積層せずに用いてもよく、複数枚の強化繊維基材を積層して積層強化繊維基材として用いてもよい。複数枚の強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材としては、(1)一種のみの強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(2)複数種の強化繊維基材を用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた強化繊維基材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層強化繊維基材などが用いられる。なお、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
強化繊維に含浸されている強化用合成樹脂としては、熱可塑性樹脂又は硬化前の熱硬化性樹脂の何れも用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
又、熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、発泡芯材との接着性又は繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維同士の接着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
繊維強化プラスチック層形成材2の強化用合成樹脂のガラス転移温度は、(原反発泡体を構成している熱可塑性樹脂のガラス転移温度−10℃)〜(原反発泡体を構成している熱可塑性樹脂のガラス転移温度+150℃)であることが好ましく、(原反発泡体を構成している熱可塑性樹脂のガラス転移温度+5℃)〜(原反発泡体を構成している熱可塑性樹脂のガラス転移温度+100℃)であることがより好ましい。繊維強化プラスチック層形成材2の強化用合成樹脂のガラス転移温度が、原反発泡体を構成している熱可塑性樹脂のガラス転移温度に比して低すぎると、繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂が、後述する二次発泡工程又は圧縮工程において、繊維強化プラスチック層形成材から多量に流出し、得られる繊維強化プラスチック層の機械的強度又は外観が低下することがある。繊維強化プラスチック層形成材2の強化用合成樹脂のガラス転移温度が、原反発泡体を構成している熱可塑性樹脂のガラス転移温度に比して高すぎると、繊維強化プラスチック層形成材の熱成形に必要な温度において、二次発泡体が破泡を生じてしまい、後述する圧縮工程において、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができず、二次発泡体を圧縮して得られる発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成される繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となる虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下したり、又は、得られる繊維強化複合体の発泡芯材の機械的強度が低下する虞れが生じることがある。
なお、本発明において、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。示差走査熱量計装置を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、試料を30℃から−40℃まで降温した後に10分間に亘って保持した後、試料を−40℃から290℃まで昇温(1st Heating)し290℃に10分間に亘って保持した後に290℃から−40℃まで降温(Cooling)、10分間に亘って保持した後に−40℃から290℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温速度及び降温速度は10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いる。本発明において、ガラス転移温度とは、2nd Heating過程で得られたDSC曲線より得られた中間点ガラス転移温度のことをいう。又、この中間点ガラス転移温度はJIS K7121:1987(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求める。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」で市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
本発明において、熱硬化性樹脂のガラス転移温度は下記の要領で測定された温度をいう。熱硬化性樹脂のガラス転移温度を測定する場合には熱硬化性樹脂を予め硬化させる必要がある。熱硬化性樹脂の硬化温度はJIS K7121:1987において測定される発熱ピーク温度±10℃が目安とされる。熱硬化性樹脂の硬化時間は60分間が目安とされ、硬化後の熱硬化性樹脂の発熱ピークをJIS K7121:1987に準拠して測定した際に、発熱ピークが観察されなければ、硬化が完了されたとみなせ、この硬化後の熱硬化性樹脂を用いて、後述する要領で熱硬化性樹脂のガラス転移温度を測定する。なお、上述した熱硬化性樹脂の硬化温度の目安となる発熱ピーク温度の詳細な測定方法は、下記の通りである。熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下の要領で行う。示差走査熱量計装置を用いてアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、基準物質としてアルミナを用い、試料を30℃から220℃まで速度5℃/分で昇温させる。本発明において、熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度とは1回目昇温時のピークトップの温度を読みとった値である。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
繊維強化プラスチック層形成材2中における強化用合成樹脂の含有量は、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。強化用合成樹脂の含有量が少なすぎると、強化繊維同士の結着性や、得られる繊維強化複合体において繊維強化プラスチック層と発泡芯材との接着性が不十分となり、繊維強化プラスチック層の機械的物性や繊維強化複合体の表面硬度又は曲げ弾性率などの機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。又、強化用合成樹脂の含有量が多すぎると、繊維強化プラスチック層の機械的物性が低下して、繊維強化複合体の表面硬度又は曲げ弾性率などの機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。
繊維強化プラスチック層形成材2の厚みは、0.02〜2mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。厚みが上記範囲内である繊維強化プラスチック層形成材は、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
繊維強化プラスチック層形成材の目付は、50〜4000g/m2が好ましく、100〜2000g/m2がより好ましい。目付が上記範囲内である繊維強化プラスチック層形成材は、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
強化用繊維中に強化用合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)強化繊維を強化用合成樹脂中に浸漬して強化繊維中に強化用合成樹脂を含浸させる方法、(2)強化繊維に強化用合成樹脂を塗布し、強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させる方法などが挙げられる。
なお、繊維強化プラスチック層形成材は市販されているものを用いることができる。強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸した繊維強化プラスチック層形成材は、例えば、三菱レイヨン社から商品名「パイロフィルプリプレグ」にて市販されている。強化繊維基材は、例えば、三菱レイヨン社から商品名「パイロフィル」にて市販されている。強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸した繊維強化プラスチック層形成材は、例えば、長瀬ケムテック社から商品名「NNGF60−03s」にて市販されている。
次に、図2に示したように、雌雄金型C、Dを開いた上で積層体Bを雌雄金型C、D間に配設した後、雌雄金型C、Dを閉止することによって、上記積層体Bを雌雄金型C、D間に形成されたキャビティE内に配設する(配設工程)。この際、雌金型Cに対する雄金型Dの相対的な変位方向と、原反発泡体1に対する繊維強化プラスチック層形成材2の積層方向(図2において上下方向)とが合致するように、キャビティE内に積層体Bを配設することが好ましい。
雄金型Dの凸部D1を雌金型Cの凹部C1に嵌め込むことによってキャビティEが形成され、雄金型Dの凸部D1の雌金型Cの凹部C1への嵌め込み度合いを調整することによってキャビティEの容量が変化できるように構成されており、配設工程においては、雌金型Cの凹部C1に対する雄金型Dの凸部D1の嵌め込み度合いを小さくしてキャビティEの容量を大きくしている。
積層体Bは、雌雄金型C、D間に形成されたキャビティE内に配設する前に予備加熱されていてもよい。積層体Bの予備加熱温度は、後述する二次発泡工程における積層体Bの原反発泡体1の二次発泡温度をT1としたとき、(T1−120℃)〜(T1−5℃)が好ましい。積層体Bを上述の温度範囲に予備加熱することによって、二次発泡工程の時間短縮を図ることができると共に、原反発泡体に結晶性樹脂が含有している場合、原反発泡体の結晶化度の上昇に起因した原反発泡体の二次発泡性の低下を抑制して、優れた外観を有する繊維強化複合体を得ることができるので好ましい。なお、原反発泡体1の二次発泡温度T1は、雌雄金型C、Dにおけるキャビティの壁面の温度をいう。積層体Bの予備加熱温度は、積層体Bの繊維強化プラスチック層形成材2の表面温度をいう。
積層体Bを雌雄金型C、D間に形成されたキャビティE内に配設した状態において、キャビティE内に積層体Bが配設されていない空間部が形成されていることが好ましい。キャビティE内に空間部が形成されていることによって、積層体Bの原反発泡体1の二次発泡を円滑に行うことができ好ましい。積層体Bを雌雄金型C、DのキャビティE内に配設し且つ原反発泡体1を二次発泡させる前において、積層体Bが雌雄金型C、DのキャビティEの容積の60〜99%を占めていることが好ましく、70〜97%を占めていることがより好ましく、70〜90%が特に好ましい。
雌雄金型C、DのキャビティEの容積に対する積層体Bの占める割合(積層体占有割合)が小さすぎると、後述する圧縮工程において、積層体と雌雄金型との間に存在している空気を十分に排除することができず、雌雄金型による押圧力を積層体に十分に加えることができないために二次発泡体を十分に圧縮させることができず、二次発泡体の表面部の気泡の変形が不十分となり、二次発泡体の機械的強度の向上が不十分となる虞れがある。その結果、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができず、二次発泡体を圧縮して得られる発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成される繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となる虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、又は、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れが生じることがある。一方、雌雄金型C、DのキャビティEの容積に対する積層体Bの占める割合(積層体占有割合)が大きすぎると、原反発泡体の二次発泡が不十分となり、圧縮工程において二次発泡体の表面部の気泡を十分に偏平化させようとすると、二次発泡体の厚みが薄くなりすぎて、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがある。
又、雌雄金型C、DのキャビティE内に積層体Bを配設し且つ原反発泡体1を二次発泡させる前の状態において、圧縮工程における二次発泡体3の圧縮方向に対して交差する方向(図2において左右方向)の原反発泡体1の端面11、好ましくは、圧縮工程における二次発泡体3の圧縮方向に対して直交する方向の原反発泡体1の端面11は、雌雄金型C、DのキャビティEの壁面E1に近接した状態にあることが好ましい。このように、圧縮工程における二次発泡体の圧縮方向に対して交差する方向の原反発泡体1の端面11がキャビティEの壁面E1に近接した状態としておくことによって、圧縮工程での二次発泡体3の圧縮方向に原反発泡体1の二次発泡を促進させることができ、二次発泡体3を圧縮させて得られる発泡芯材A1の厚みを十分なものとし、得られる繊維強化複合体の機械的強度をより向上させることができる。なお、「近接した状態」とは、原反発泡体1の端面11がキャビティEの壁面E1に接触している状態及び原反発泡体1の端面11とこれに対向するキャビティEの壁面E1との間隔が1mm以内にある状態をいう。
次に、図3に示したように、雌雄金型C、DのキャビティE内に配設した積層体Bを二次発泡温度T1に加熱して積層体Bの原反発泡体1を二次発泡させて発泡余力を有する二次発泡体3とすると共に、繊維強化プラスチック層形成材2を熱成形可能な状態とする(二次発泡工程)。二次発泡工程において、積層体Bの原反発泡体1の二次発泡が完了した状態にて、雌雄金型C、DのキャビティE内は積層体Bによって充填された状態となっていることが好ましい。繊維強化プラスチック層形成材2の強化用合成樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂を含む場合、未硬化の熱硬化性樹脂を軟化させて硬化させることなく流動性を有する状態とする。熱硬化性樹脂は、加熱によって熱硬化する前に流動性を有する状態となるので、この流動性を有する状態を二次発泡工程中及び後述する圧縮工程の二次発泡体の圧縮中において維持するように温度制御する。強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合、二次発泡工程中及び後述する圧縮工程の二次発泡体の圧縮中において、熱可塑性樹脂が流動性を有する状態となるように温度制御する。なお、積層体Bの加熱は、雌雄金型C、Dを加熱することによって行えばよい。
本発明において「二次発泡体が発泡余力を有する」とは下記の通り定義される。原反発泡体を二次発泡温度T1に加熱して原反発泡体に外力を加えることなく完全に二次発泡させて完全発泡体を得る。この完全発泡体の見掛け密度G1よりも二次発泡体の見掛け密度が大きい場合、二次発泡体は発泡余力を有しているとする。
本発明においては、積層体Bの原反発泡体1の二次発泡が完了して得られた二次発泡体は発泡余力を有している。二次発泡体が発泡余力を有していることによって、後述する圧縮工程において、発泡余力を有する二次発泡体を圧縮した際に、気泡内の発泡ガスが気泡を内部から支持する作用を示し、二次発泡体に加えられる圧縮力によって二次発泡体の気泡が圧壊されて潰れ又は気泡壁が屈曲されるような事態を生じることなく、二次発泡体の気泡を圧縮し、特に、二次発泡体の表面部の気泡を偏平化することができる。従って、得られる繊維強化複合体の発泡芯材は、軽量性を維持しつつ、機械的強度に優れている。更に、発泡芯材は、繊維強化プラスチック層の積層面の表面性に優れており、繊維強化プラスチック層を強固に積層一体化させることができ、得られる繊維強化複合体は優れた外観及び機械的強度を有する。
更に、発泡余力を有する二次発泡体を圧縮することによって、二次発泡体に含有されている発泡ガスが微細な気泡を生成し、その結果、得られる繊維強化複合体の発泡芯材は優れた機械的強度を有する。
積層体Bの原反発泡体1の二次発泡が完了した直後の二次発泡体の見掛け密度G2と、上記完全発泡体の見掛け密度G1との比(G2/G1)は、1.01〜2.00が好ましく、1.02〜1.5がより好ましい。原反発泡体1の二次発泡が完了した直後の二次発泡体の見掛け密度G2と、上記完全発泡体の見掛け密度G1との比(G2/G1)は、小さすぎると、気泡内の発泡ガスが二次発泡体に加えられる圧縮力に対して気泡を内側から支持することができず、気泡が圧壊されて潰れたり又は気泡壁が屈曲してしまい、発泡芯材の機械的強度が低下し、又は、発泡芯材と繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となり、得られる繊維強化複合体の機械的強度又は外観が低下することがある。原反発泡体1の二次発泡が完了した直後の二次発泡体の見掛け密度G2と、上記完全発泡体の見掛け密度G1との比(G2/G1)は、大きすぎると、二次発泡体の圧縮が難しくなり、二次発泡体の表面部における気泡の偏平化が不足し、二次発泡体の機械的強度の向上が不十分となる虞れがあり、その結果、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができず、二次発泡体を圧縮して得られる発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成される繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となる虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、又は、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れが生じることがある。
二次発泡温度T1と、原反発泡体1を構成している合成樹脂のガラス転移温度T2との差(T1−T2)は、5〜90℃が好ましく、10〜80℃がより好ましい。二次発泡温度T1と、原反発泡体1を構成している合成樹脂のガラス転移温度T2との差(T1−T2)が小さいと、原反発泡体の二次発泡性が低下し、圧縮工程において、二次発泡体を十分に圧縮させることができず、二次発泡体の表面部の気泡の変形が不十分となり、二次発泡体の機械的強度の向上が不十分となる虞れがある。その結果、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができず、二次発泡体を圧縮して得られる発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成される繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となる虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、又は、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れが生じることがある。二次発泡温度T1と、原反発泡体1を構成している合成樹脂のガラス転移温度T2との差(T1−T2)が大きいと、原反発泡体の二次発泡時に破泡が生じて、得られる二次発泡体の機械的強度が低下し、上記と同様の問題を生じる虞れがある。
原反発泡体1を二次発泡させて得られる二次発泡体3は、これが有する発泡力によって繊維強化プラスチック層形成材2をキャビティEの壁面に押圧し、繊維強化プラスチック層形成材2を二次発泡体3の表面又は雌雄金型C、Dのキャビティの壁面に沿った状態に予備成形すると共に、繊維強化プラスチック層形成材2中に含まれている空気の一部を除去し、更に、繊維強化プラスチック層形成材2中に含まれている強化用合成樹脂を繊維強化プラスチック層形成材2の表面に滲出させる。
圧縮工程において、二次発泡体3が雌雄金型C、DのキャビティEの壁面を二次発泡方向に押圧する最も高い圧力(プレス圧力)は、0.02〜8MPaが好ましく、0.02〜5MPaがより好ましい。二次発泡体3が雌雄金型C、DのキャビティEの壁面を二次発泡方向に押圧する最も高い圧力が小さすぎると、繊維強化プラスチック層内に含まれている空気(ボイド)を排除することができず、得られる繊維強化プラスチック層の機械的強度又は外観が低下することがある。二次発泡体3が雌雄金型C、DのキャビティEの壁面を二次発泡方向に押圧する最も高い圧力が大きすぎると、二次発泡体の圧縮時に二次発泡体の気泡に破泡が生じて発泡芯材の機械的強度の低下が生じる虞れがあり、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができなくなる。その結果、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができず、二次発泡体を圧縮して得られる発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成される繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となる虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、又は、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れが生じることがある。
原反発泡体1の二次発泡完了直後の二次発泡体3の見掛け密度は、0.02〜0.6g/cm3が好ましく、0.05〜0.4g/cm3がより好ましい。原反発泡体1の二次発泡完了直後の二次発泡体3の見掛け密度が小さすぎると、後述する圧縮工程において二次発泡体に破泡を生じ、二次発泡体が雌雄金型からの圧縮力を受止することができなくなり、二次発泡体に繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型によって十分に押圧することができず、二次発泡体を圧縮して得られる発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成される繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となる虞れが生じたり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、又は、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れが生じることがある。原反発泡体1の二次発泡完了直後の二次発泡体3の見掛け密度が大きすぎると、得られる繊維強化複合体の軽量性が低下する虞れがある。
原反発泡体1の二次発泡完了直後の二次発泡体3の見掛け密度と原反発泡体1の見掛け密度との比(原反発泡体1の二次発泡完了直後の二次発泡体3の見掛け密度/原反発泡体1の見掛け密度)は、0.5〜0.9が好ましい。原反発泡体1の二次発泡完了直後の二次発泡体3の見掛け密度と原反発泡体1の見掛け密度との比が小さすぎると、二次発泡体の気泡が大きくなりすぎて、二次発泡体の表面部の気泡を偏平化することができず、得られる繊維強化複合体の機械的強度又は外観が低下することがある。原反発泡体1の二次発泡完了後の二次発泡体3の見掛け密度と原反発泡体1の見掛け密度との比が大きすぎると、圧縮工程において二次発泡体の表面部の気泡を十分に偏平化させようとすると、二次発泡体の厚みが薄くなりすぎて、得られる繊維強化複合体の機械的強度が却って低下することがある。
しかる後、図4に示したように、雄金型Dの凸部D1の雌金型Cの凹部C1への嵌め込み度合いを大きくすることによって、キャビティEの容量を配設工程時のキャビティEの容量よりも小さくし、積層体Bの発泡余力を有する二次発泡体3を該二次発泡体3に対する繊維強化プラスチック層形成材2の積層方向(図4において上下方向、雌金型Cに対する雄金型Dの相対的な移動方向)に圧縮して発泡芯材A1とする(圧縮工程)。積層体Bの二次発泡体3の圧縮中は、積層体Bの二次発泡体3を構成している熱可塑性樹脂が軟化した状態を維持するように積層体Bを加熱している。
積層体Bの二次発泡体3はその表面部が中央部に比して高く加熱されていることから、積層体Bの二次発泡体3の圧縮によって、二次発泡体3の表面部が中央部に比して圧縮され易くなっている。従って、圧縮工程において、二次発泡体3の表面部の気泡が雌雄金型C、Dによる圧縮力によって偏平化して二次発泡体3の機械的強度が向上する。二次発泡体3の機械的強度が向上することにより、二次発泡体3は、雌雄金型による圧縮力を十分に受止することができる。そして、繊維強化プラスチック層形成材2を雌雄金型C、Dによって二次発泡体3に十分な押圧力でもって押圧することができる。
従って、二次発泡体3を圧縮して形成される発泡芯材A1に、繊維強化プラスチック層形成材2から形成された繊維強化プラスチック層A2を強固に積層一体化させることができると共に、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維の配向度合いを向上させることができ、得られる繊維強化複合体は優れた機械的強度を有している。
更に、繊維強化プラスチック層形成材2を押圧することによって、積層体Bの二次発泡体3の繊維強化プラスチック層形成材2に含まれている空気を除去することができ、強化繊維同士を強化用合成樹脂によって強固に結着一体化して機械的強度に優れた繊維強化プラスチック層A2を形成することができ、得られる繊維強化複合体は優れた機械的強度を有していると共に外観にも優れている。
又、二次発泡体3が雌雄金型C、Dによる圧縮力を十分に受止しながら、繊維強化プラスチック層形成材2が二次発泡体3の表面に雌雄金型C、Dによって十分な押圧力でもって押圧されるので、繊維強化プラスチック層A2を発泡芯材A1の表面に二次発泡体3の表面又はキャビティEの壁面に沿って熱成形しながら積層させることができる。従って、二次発泡体3から形成される発泡芯材A1の表面に、繊維強化プラスチック層形成材2から形成される繊維強化プラスチック層A2を所望形状に熱成形しつつ強固に積層一体化させることができ、得られる繊維強化複合体は優れた機械的強度及び外観を有する。
そして、上述の通り、二次発泡体3を圧縮して形成される発泡芯材A1は、その表面部の気泡が偏平化されて機械的強度が向上されているので、得られる繊維強化複合体は、発泡芯材A1を有していることによって軽量性に優れているにもかかわらず優れた機械的強度も有している。
発泡芯材A1の見掛け密度は、小さすぎると、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあり、大きすぎると、得られる繊維強化複合体の軽量性が低下することがあるので、0.03〜0.7g/cm3が好ましく、0.05〜0.5g/cm3がより好ましい。
圧縮前後の二次発泡体の見掛け密度の比(圧縮前の二次発泡体の見掛け密度/圧縮後の二次発泡体の見掛け密度)、即ち、原反発泡体1の二次発泡完了直後における二次発泡体3の見掛け密度と発泡芯材A1の見掛け密度との比(原反発泡体1の二次発泡完了直後における二次発泡体3の見掛け密度/発泡芯材A1の見掛け密度)は、0.4〜0.9が好ましく、0.5〜0.8がより好ましい。原反発泡体1の二次発泡完了直後における二次発泡体3の見掛け密度と発泡芯材A1の見掛け密度との比が小さすぎると、二次発泡体を圧縮しすぎてしまい、二次発泡体に破泡が生じて発泡芯材の機械的強度が低下し、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れがある。原反発泡体1の二次発泡完了直後における二次発泡体3の見掛け密度と発泡芯材A1の見掛け密度との比が大きすぎると、二次発泡体の圧縮が不十分となり、発泡芯材と、繊維強化プラスチック層形成材から形成された繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となったり、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている空気の除去が不十分となって得られる繊維強化複合体の外観若しくは機械的強度が低下する虞れが生じたり、又は、繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維を十分に配向させることができずに得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れがある。
原反発泡体1の見掛け密度と発泡芯材A1の見掛け密度との比は、より優れた機械的強度及び軽量性を備えた繊維強化複合体を得ることができるので、0.6〜1.5が好ましく、0.7〜1.3がより好ましい。
又、発泡芯材が結晶性樹脂を含む場合には、圧縮工程時及び必要に応じて行われる熱硬化性樹脂の硬化過程において、結晶性樹脂の結晶化度を上昇させて、得られる繊維強化複合体の耐熱性及び機械的強度を向上させることが好ましい。
次に、積層体Bの二次発泡体3を圧縮した後、繊維強化プラスチック層形成材2に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸されている場合には、積層体Bの繊維強化プラスチック層形成材2に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させて、繊維強化プラスチック層形成材の強化繊維同士を硬化した熱硬化性樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチック層形成材2を繊維強化プラスチック層A2とし、この繊維強化プラスチック層を硬化した熱硬化性樹脂によって発泡芯材A1(二次発泡体3を圧縮して形成された発泡芯材A1)の少なくとも一面に積層一体化させて繊維強化複合体Aを製造する。
積層体Bの繊維強化プラスチック層形成材2に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、圧縮工程時の加熱温度と同一であってもよいし変化させてもよいが、熱硬化性樹脂の硬化を促進するために、積層体Bの二次発泡体3を圧縮させる時の積層体Bの加熱温度よりも高いことが好ましい。
積層体Bの繊維強化プラスチック層形成材2に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、低すぎると、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあり、高すぎると、得られる発泡芯材の気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び機械的強度が低下することがあるので、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度−50℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度+50℃)が好ましく、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度−40℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度+40℃)がより好ましい。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、強化用合成樹脂に含まれている熱硬化性樹脂のガラス転移温度のうちの最も高いガラス転移温度とする。
又、繊維強化プラスチック層形成材2に含浸させている強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱硬化性樹脂の場合と異なり、上述した硬化過程は必要なく、後述するように冷却することによって熱可塑性樹脂を固化させて、繊維強化プラスチック層形成材の強化繊維同士を固化した熱可塑性樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチック層形成材2を繊維強化プラスチック層A2とし、この繊維強化プラスチック層A2を固化した熱可塑性樹脂によって発泡芯材A1(二次発泡体3を圧縮して形成された発泡芯材A1)の少なくとも一面に積層一体化させて繊維強化複合体Aを製造する。
次に、繊維強化複合体Aを必要に応じて冷却した後、雌雄金型C、Dを開いて繊維強化複合体Aを取り出して繊維強化複合体Aを得ることができる。得られた繊維強化複合体Aは、熱可塑性樹脂又は硬化した熱硬化性樹脂によって強化繊維同士が結着された繊維強化プラスチック層A2が発泡芯材A1の表面に沿って全面的に密着した状態に積層一体化されている。
このようにして得られた繊維強化複合体Aは、発泡芯材A1の表面に、熱可塑性樹脂又は硬化した熱硬化性樹脂で強化繊維同士が強固に結着されてなる繊維強化プラスチック層A2が強固に積層一体化されており、優れた機械的強度を有していると共に、一部に発泡体を有していることから軽量性及び衝撃吸収性にも優れている。
更に、得られた繊維強化複合体Aの発泡芯材A1の表面部の気泡は偏平化されて機械的強度が向上しており、得られる繊維強化複合体Aは優れた機械的強度を有している。
又、得られた繊維強化複合体Aの繊維強化プラスチック層A2を構成している強化繊維同士は、空気が殆ど入らない状態で強化用合成樹脂によって結着一体化され且つ配向性が高められていることから優れた機械的強度を有しており、得られる繊維強化複合体は優れた機械的強度を有している。
繊維強化複合体Aの発泡芯材A1の結晶化度は、低すぎると、繊維強化複合体の機械的強度又は耐熱性が低下することがあり、高すぎると、繊維強化複合体が脆く割れやすくなり、繊維強化複合体の不要部分を切除する際に繊維強化複合体に割れが生じることがあるので、10〜35%が好ましく、15〜30%がより好ましい。
上記では、積層体Bを雌雄金型C、DのキャビティE内に配設した状態(配設工程)において、キャビティE内に積層体Bが配設されていない空間部が生じている場合を説明したが、図5に示した通り、積層体Bを雌雄金型C、DのキャビティE内に配設した状態(配設工程)において、キャビティE内に積層体BをキャビティE内に空間部が形成されないように配設し、積層体Bの原反発泡体1の二次発泡に連動させて、雄金型Dの凸部D1の雌金型Cの凹部C1への嵌め込み度合いを小さくすることによってキャビティEの容量を大きくするようにしてもよい。
このようにして得られた繊維強化複合体は、圧縮強度などの機械的強度及び軽量性に優れているため、自動車、航空機、鉄道車輛又は船舶などの輸送機器分野、家電分野、情報端末分野、家具の分野などの広範な用途に用いることができる。
例えば、繊維強化複合体は、輸送機器の部品、及び、輸送機器の本体を構成する構造部材を含めた輸送機器構成用部材(特に自動車用部材)、ヘルメット用緩衝材、農産箱、保温保冷容器などの輸送容器、部品梱包材として好適に用いることができる。