本発明の繊維強化複合体の製造方法は、加熱寸法変化率が1%以上で且つ再発泡時の加熱条件下の発泡力が0.1mN/mm3以上である再発泡可能な発泡芯材の表面に、熱可塑性樹脂又は未硬化の熱硬化性樹脂が含浸された繊維強化材を積層して積層体を製造する積層工程と、上記積層体を金型内に供給した後に上記積層体を加熱することによって上記発泡芯材を再発泡させ、上記発泡芯材の発泡圧力によって上記繊維強化材を金型の内面に押圧することによって金型の表面に沿って成形させると共に上記発泡芯材の表面に上記繊維強化材を積層一体化させる成形工程とを含有することを特徴とする。
本発明の繊維強化複合体の製造方法で用いられる発泡芯材を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、得られる繊維強化複合体の機械的強度及び衝撃吸収性が優れていることから、アクリル樹脂及び熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましく、成形工程において、発泡芯材の結晶化度を上昇させて耐熱性を有する発泡芯材とすることができるので、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂がより好ましい。なお、合成樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸と二価アルコールとが、縮合反応を行った結果得られた高分子量の線状ポリエステルである。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、ポリ乳酸系樹脂が挙げられる。
芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステルであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、芳香族ポリエステル樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
なお、芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に、例えば、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などの三価以上の多価カルボン酸やその無水物、グリセリンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどの三価以上の多価アルコールなどを構成成分として含有していてもよい。
又、芳香族ポリエステル樹脂は、使用済のペットボトルなどから回収、再生したリサイクル材料を用いることもできる。
ポリエチレンテレフタレートは架橋剤によって架橋されていてもよい。架橋剤としては、公知のものが用いられ、例えば、無水ピロメリット酸などの酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられる。なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリエチレンテレフタレートを架橋剤によって架橋する場合には、押出機にポリエチレンテレフタレートと共に架橋剤を供給すればよい。押出機に供給する架橋剤の量は、少なすぎると、ポリエチレンテレフタレートの溶融時の溶融粘度が小さくなりすぎて、破泡してしまうことがあり、多すぎると、ポリエチレンテレフタレートの溶融時の溶融粘度が大きくなりすぎて、発泡体を押出発泡によって製造する場合には押出発泡が困難となることがあるので、ポリエチレンテレフタレート100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂としては、乳酸がエステル結合により重合した樹脂を用いることができ、商業的な入手容易性及びポリ乳酸系樹脂発泡粒子への発泡性付与の観点から、D−乳酸(D体)及びL−乳酸(L体)の共重合体、D−乳酸又はL−乳酸のいずれか一方の単独重合体、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群から選択される1又は2以上のラクチドの開環重合体が好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、成形工程及び得られる繊維強化複合体の物性に影響を与えない限り、乳酸以外の単量体成分として、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸などの脂肪族多価カルボン酸;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの脂肪族多価アルコールなどを含有していてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、成形工程及び得られる繊維強化複合体の物性に影響を与えない限り、アルキル基、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基などのその他の官能基を含んでいてもよい。ポリ乳酸系樹脂はイソシアネート系架橋剤などによって架橋されていてもよく、エステル結合以外の結合手により結合していてもよい。
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマーを重合させることによって製造される。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの何れか一方又は双方を意味する。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
又、アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリル系モノマー以外にこれと共重合可能なモノマー成分を含有していてもよい。このようなモノマーとしては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。
後述する再発泡時において、発泡芯材の発泡力は0.1mN/mm3以上に限定され、 0.1〜10mN/mm3が好ましく、0.2〜1mN/mm3がより好ましい。発泡芯材の発泡力は、低すぎると、発泡芯材の再発泡によって繊維強化材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の繊維強化材の表面平滑性が低下し若しくは繊維強化材を所望形状に成形できず、又は、発泡芯材と繊維強化材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する。一方、発泡芯材の発泡力が必要以上に高すぎると、発泡芯材による繊維強化材の金型内面への押圧力が大きくなりすぎて、繊維強化材に含浸させている熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が必要以上に金型外に流出してしまい、繊維強化材を構成している繊維が外部に露出し易くなり、得られる繊維強化複合体の表面平滑性が低下することがあるので、得られる繊維強化複合体の繊維強化材の表面平滑性が低下し若しくは繊維強化材を所望形状に成形できない虞れ、又は、発泡芯材と繊維強化材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れがある。
発泡芯材の発泡力は、発泡芯材の後述する表面層の結晶化度、発泡芯材の見掛け密度、残存発泡剤量又は連続気泡率を調整することによって制御することができる。例えば、発泡芯材の表面層の結晶化度を上昇させることによって発泡芯材の発泡力を低くすることができる一方、発泡芯材の表面層の結晶化度を低下させることによって発泡芯材の発泡力を高くすることができる。
なお、発泡芯材の発泡力は、「発泡プラスチック−硬質材料の圧縮試験」で使用される万能試験機を用いて、発泡芯材が加熱により膨張(発泡)する時に生じる荷重を連続的に測定し、測定開始後の所定時間で検知された最小荷重を試験片体積で除した値である。
具体的には、発泡芯材から一辺が50mmの立方体形状の試験片を切り出す。試験片を温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で24時間以上に亘って放置した後、測定を行う。万能試験機、テンシロン付帯高低温度恒温槽及び万能試験機データ処理ソフトを用いて、発泡芯材の再発泡時の温度に設定した恒温槽内で、上部圧縮板と下部圧縮板との間に挟み込まれた試験片が50mmから膨張(発泡)することにより発生する荷重を測定する。測定は1800秒間に亘って連続して行い、測定開始から600秒経過した時点から1800秒経過した時点までの間に測定された最小荷重F(mN)を試験片体積で除した値を発泡力とする。なお、万能試験機は、例えば、オリエンテック社から商品名「UCT−10T」にて市販されている装置を用いることができる。テンシロン付帯高低温度恒温槽としては、例えば、T.S.E.社から市販されている。万能試験機データ処理ソフトは、UTPS−STDソフトブレーン社から市販されている。
発泡力(mN/mm3)=最小荷重F(mN)/試験片の体積(mm3)
上記発泡芯材の圧縮強度は10kPa以上が好ましく、100kPa以上がより好ましく、1000kPa以上が特に好ましい。発泡芯材の圧縮強度は、低すぎると、繊維強化複合体の破壊応力が減少し、その結果、繊維強化複合体の衝撃吸収性が低下する。
発泡芯材の圧縮強度は、発泡芯材の後述する表面層の結晶化度、発泡芯材の見掛け密度、残存発泡剤量又は連続気泡率を調整することによって制御することができる。例えば、発泡芯材の表面層の結晶化度を上昇させることによって発泡芯材の圧縮強度を高くすることができる一方、発泡芯材の表面層の結晶化度を低下させることによって発泡芯材の圧縮強度を低くすることができる。
なお、発泡芯材の圧縮強度は、JIS K7220:1999「発泡プラスチック-硬質材料の圧縮試験」記載の方法に準拠して測定した5%圧縮時の圧縮強度をいう。例えば、発泡芯材から縦50mm×横50mm×厚み25mmの直方体形状の試験片を切り出し、圧縮速度10mm/分の条件下にて5%圧縮時の試験片の圧縮強度を測定する。
発泡芯材を構成している合成樹脂が結晶性樹脂を含有している場合、発泡芯材の表面層の結晶化度は、高すぎると、発泡芯材の再発泡が阻害されて、繊維強化材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の繊維強化材の表面平滑性が低下し若しくは繊維強化材を所望形状に成形できない虞れ、又は、発泡芯材と繊維強化材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れがあるので、24%未満が好ましく、23%未満がより好ましく、10%以下が特に好ましい。
発泡芯材を構成している合成樹脂が結晶性樹脂を含有している場合、発泡芯材の内層の結晶化度は、高すぎると、発泡芯材の再発泡が阻害されて、繊維強化材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の繊維強化材の表面平滑性が低下し若しくは繊維強化材を所望形状に成形できない虞れ、又は、発泡芯材と繊維強化材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れがあることから、24%未満が好ましく、低すぎると、発泡芯材が柔軟になりすぎて発泡芯材の再発泡によって繊維強化材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないことがあるので、5〜23%が好ましい。
発泡芯材の表面層とは、発泡芯材の表面と、この表面に対して垂直な方向に発泡芯材のその方向における厚みの5%に相当する寸法だけ内側に入った部分との間に存在する発泡芯材部分をいう。発泡芯材の内層は、発泡芯材の表面層を除いた部分の全てをいう。
なお、発泡芯材の表面層及び内層の結晶化度は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法で測定する。
具体的には、示差走査熱量計装置(エスアイアイナノテクノロジー社製 商品名「DSC6220型」)を用い、アルミニウム製の測定容器の底に隙間のないように、測定対象となる層から切り出した好ましくは直方体形状の試料を約6mg充填して、試料を窒素ガス流量30mL/分の条件下にて30℃で2分間に亘って保持する。
なお、発泡芯材の内層から試料を切り出す場合、発泡芯材の重心を含むように発泡芯材から試料を切り出す。
しかる後、試料を速度10℃/分で30℃から290℃まで昇温した時のDSC曲線を得る。その時の基準物質はアルミナを用いた。発泡芯材の表面層及び内層の結晶化度は、融解ピークの面積から求められる融解熱量(mJ/mg)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(mJ/mg)の差を結晶性熱可塑性樹脂の完全結晶の理論融解熱量ΔH0で徐して求められる割合である。例えば、ポリエチレンテレフタレートのΔH0は140.1mJ/mgである。発泡芯材の測定対象となる層の結晶化度は下記式に基づいて算出される。
発泡芯材の測定対象となる層の結晶化度(%)
=100×(│融解熱量(mJ/mg)│−│結晶化熱量(mJ/mg)│)/ΔH0(mJ/mg)
別に4個の発泡芯材を更に用意し、それぞれの発泡芯材の表面層及び内層の結晶化度を上述と同様の要領で測定し、5個の発泡芯材のそれぞれの表面層の結晶化度の相加平均値を発泡芯材の表面層の結晶化度とし、5個の発泡芯材のそれぞれの内層の結晶化度の相加平均値を発泡芯材の内層の結晶化度とする。
発泡芯材の表面層の結晶化度の調整方法としては、例えば、発泡直後の発泡芯材における表面の冷却速度を遅くすることによって発泡芯材の表面層の結晶化度を上昇させることができる一方、発泡直後の発泡芯材における表面の冷却速度を速くすることによって発泡芯材の表面層の結晶化度を低くすることができる。
又、発泡芯材の内層の結晶化度の調整方法としては、例えば、後述する型内発泡成形によって発泡芯材を製造する時に熱媒体の金型内への流入圧力を上昇させて、金型の内部に充填した合成樹脂発泡粒子も十分に加熱することによって発泡芯材の内層の結晶化度を上昇させることができる一方、型内発泡成形によって発泡芯材を製造する時に熱媒体の金型内への流入圧力を低下させて、金型の内部に充填した合成樹脂発泡粒子の加熱を抑制することによって発泡芯材の内層の結晶化度を低くすることができる。
上記発泡芯材の加熱寸法変化率は1%以上に限定され、2%以上が好ましく、1〜30%がより好ましく、2〜20%が特に好ましい。発泡芯材の加熱寸法変化率は、低すぎると、発泡芯材の再発泡によって繊維強化材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の繊維強化材の表面平滑性が低下し若しくは繊維強化材を所望形状に成形できなかったり、発泡芯材と繊維強化材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下したり、又は、繊維強化材7に含まれている空気や、繊維強化材7とキャビティB1内面との隙間に存在する空気が残存し易くなって、繊維強化複合体の表面平滑性が低下する。発泡芯材の加熱寸法変化率は、高すぎると、発泡芯材による繊維強化材の金型内面への押圧力が大きくなりすぎて、繊維強化材に含浸させている熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が必要以上に金型外に流出してしまい、繊維強化材を構成している繊維が外部に露出し易くなり、得られる繊維強化複合体の表面平滑性及び機械的強度が低下する虞れがある。
発泡芯材の加熱寸法変化率は、発泡芯材に含まれている残存発泡剤量を調整することによって制御することができる。即ち、発泡芯材に含まれている残存発泡剤量を多くすることによって発泡芯材の加熱寸法変化率を高くすることができる。
なお、発泡芯材の加熱寸法変化率は、発泡芯材を大気圧雰囲気下において90℃の雰囲気中に90分間に亘って放置した時の寸法変化率をいう。具体的には、複合体用発泡体から一辺が50mmの立方体形状の試験片を切り出し、試験片を23℃、相対湿度60%にて24時間に亘って静置する。この試験片の厚みを任意の三カ所において測定し、これらの三カ所の厚みの相加平均値を試験片の「加熱前寸法」とする。
次に、試験片を大気圧雰囲気、90℃に保持されたオーブン内に供給した後、試験片をオーブン内に90分間に亘って放置する。しかる後、試験片をオーブンから取り出して常圧下、23℃、相対湿度60%にて1時間に亘って放置する。試験片の厚みを加熱前に測定した同一の三カ所において測定し、これらの三カ所の厚みの相加平均値を試験片の「加熱後寸法」とする。加熱寸法変化率を下記式に基づいて算出する。加熱寸法変化率が負の値となった場合には試験片は収縮している。加熱寸法変化率が正の値となった場合には試験片は膨張している。なお、オーブンとしては、例えば、ヤマト科学社から商品名「DN44」にて市販されている恒温乾燥機を用いることができる。
加熱寸法変化率(%)=100×(加熱後寸法−加熱前寸法)/加熱前寸法
発泡芯材の見掛け密度は、0.01〜0.7g/cm3が好ましく、0.03〜0.7g/cm3がより好ましい。なお、発泡体の密度は、JIS K7222「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に準拠して測定された値をいう。
発泡芯材の見掛け密度は、低すぎると、発泡芯材が柔らかくなりすぎて、発泡芯材の再発泡によって繊維強化材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の繊維強化材の表面平滑性が低下し若しくは繊維強化材を所望形状に成形できない虞れ、又は、発泡芯材と繊維強化材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れがある。
発泡芯材の見掛け密度は、高すぎると、発泡芯材の柔軟性が低下し、発泡芯材を金型内面に沿った状態に正確に再発泡させることができないため、発泡芯材によって繊維強化材を金型内面に沿って正確に且つ十分に押圧することができず、得られる繊維強化複合体の繊維強化材の表面平滑性が低下する虞れ、又は、発泡芯材と繊維強化材との一体化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れがある。
又、発泡芯材の連続気泡率は、高いと、繊維強化材に含浸させた熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が発泡体内に浸透し、発泡体と繊維強化材との接着に過剰の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が必要となり、得られる繊維強化複合体の繊維強化材を構成している繊維が露出しやすくなって繊維強化複合体の表面平滑性が低下することがあるので、30%未満が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。なお、発泡芯材の連続気泡率の調整は、型内発泡成形法を用いて発泡体を製造する場合、合成樹脂粒子を製造する際の押出発泡温度や押出機に供給する発泡剤量を調整することによって行うことができる。
ここで、発泡芯材の連続気泡率はASTM D−2856に記載の測定方法に準拠して下記の要領で測定される。先ず、発泡芯材の見掛け上の体積を測って見掛け体積V1(cm3)とする。次に、発泡芯材の実際試料体積V2(cm3)を体積測定空気比較式比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。なお、体積測定空気比較式比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されている。
そして、発泡芯材の見掛け体積V1(cm3)と、発泡芯材の実際試料体積V2(cm3)に基づいて下記式により発泡体の連続気泡率を算出することができる。
連続気泡率(%)=100×(V1−V2)/V1
発泡芯材中の残存発泡剤量は、少なすぎると、発泡芯材の再発泡によって繊維強化材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の繊維強化材の表面平滑性が低下し若しくは繊維強化材を所望形状に成形できない虞れ、又は、発泡芯材と繊維強化材との一体化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下する虞れがあることから、0.2重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましいが、多すぎると、発泡芯材による繊維強化材の金型内面への押圧力が大きくなりすぎて、繊維強化材に含浸させている熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が必要以上に金型外に流出してしまい、繊維強化材を構成している繊維が外部に露出し易くなり、得られる繊維強化複合体の表面平滑性が低下することがあるので、0.2〜5重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
発泡芯材中の残存発泡剤量は、例えば、押出発泡による発泡芯材の製造時に合成樹脂に混合させる発泡剤を多くすることによって発泡芯材中の残存発泡剤量を多くする方法、型内発泡成形による発泡芯材の製造時に用いられる合成樹脂発泡粒子に含浸している発泡剤の量を多くすることによって発泡芯材中の残存発泡剤量を多くする方法、発泡芯材に発泡剤を更に含浸させて発泡芯材中の残存発泡剤量を多くする方法、発泡芯材の製造時の発泡のための加熱を少なくして発泡芯材中の残存発泡剤量を多くする方法、発泡芯材の加熱雰囲気下で一定時間置くなどの養生工程を設けて発泡芯材中の残存発泡剤量を少なくする方法などの方法によって制御することができる。
なお、発泡芯材中の残存発泡剤量は、ガスクロマトグラフを使って測定することができる。試料10〜20mgを精秤し、熱分解炉PYR−1A(島津製作所製)の分解炉入口にセットして15秒ほどキャリアーガス(ヘリウムガス)でパージを行ない、試料セット時の混合ガスを排出する。その後、試料を炉心まで挿入して加熱することによりガスを放出させ、この放出ガスを島津製作所製ガスクロマトグラフを用いて測定し、得られたクロマトチャートのピーク面積からそれぞれの標準ガス検量線を使用して試料中の残存発泡剤を定量する。
〔ガスクロマトグラフ条件〕
測定装置:ガスクロマトグラフ GC-14B(島津製作所製)
カラム:ポラパックQ(80/100)3mmφ×1.5m(ジーエルサイエンス社製)
データ処理装置:C−R3A
検出器:TCD
カラム温度:100℃
注入口温度:120℃
検出器温度:120℃
キャリアーガス:ヘリウム
キャリアーガス流量:1mL/分
〔加熱炉条件〕
測定装置:熱分解炉PYR−1A(島津製作所製)
加熱炉温度:240℃
〔算出条件〕
検量線標準ガス:i−ブタン、n−ペンタン
算出方法:絶対検量線法により、i−ブタン、n−ペンタンの検量線を予め作成し、得られた試料の残存発泡剤量を標準ガス毎の検量線により算出した。結果において、n−ブタンガス量はi−ブタン換算量、i−ペンタンガス量はn−ペンタン換算量とした。
発泡芯材の製造方法としては、加熱寸法変化率が1%以上で且つ再発泡時の加熱条件下の発泡力が0.1mN/mm3以上である発泡芯材を製造することができれば、公知の製造方法を用いることができる。具体的には、発泡芯材の製造方法としては、(1)合成樹脂発泡粒子を金型内に充填し、熱水や水蒸気などの熱媒体によって合成樹脂発泡粒子を加熱して発泡させ、合成樹脂発泡粒子の発泡圧によって発泡粒子同士を融着一体化させて所望形状を有する発泡芯材を製造する方法(型内発泡成形法)、(2)合成樹脂を押出機に供給して化学発泡剤又は物理発泡剤などの発泡剤の存在下にて溶融混練し押出機から押出発泡させて発泡芯材を製造する方法(押出発泡法)、(3)合成樹脂及び化学発泡剤を押出機に供給して化学発泡剤の分解温度未満にて溶融混練し押出機から発泡性樹脂成形体を製造し、この発泡性樹脂成形体を発泡させて発泡芯材を製造する方法、(4)化学発泡剤を含有した塊状重合体を製造した後、加熱発泡させて発泡芯材を製造する方法(バルク発泡法)、(5)ミキシングヘッドなどで単量体と発泡剤を混ぜて混合物を作製した後、混合物を吐出し重合させながら発泡を行い、型内に混合物を注入し発泡体を製造し、重合反応、発泡工程が終了した後、型から取出して発泡芯材を製造する方法などが挙げられ、所望形状の発泡芯材を容易に製造することができることから、上記(1)の型内発泡成形法が好ましい。
上記(1)の型内発泡成形法で用いられる合成樹脂発泡粒子の製造方法としては、(1)合成樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から合成樹脂押出物を押出発泡させながら切断した後に冷却して合成樹脂発泡粒子を製造する方法、(2)合成樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出発泡してストランド状の合成樹脂押出物を製造し、この合成樹脂押出物を所定間隔毎に切断して合成樹脂発泡粒子を製造する方法、(3)合成樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けた環状ダイ又はTダイから押出発泡して発泡シートを製造し、この発泡シートを切断することによって合成樹脂発泡粒子を製造する方法、(4)懸濁重合などで合成樹脂粒子を作製し、オートクレーブなどで発泡剤を含浸させた発泡性粒子を製造した後、水蒸気などの熱媒体を供給できる予備発泡機を用いて加熱発泡させて合成樹脂発泡粒子を製造する方法、(5)合成樹脂を押出機内に供給して溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出してストランド状の合成樹脂押出物を製造し、この合成樹脂押出物を所定間隔毎に切断して合成樹脂粒子を製造し、それをオートクレーブなどで発泡剤を含浸させ発泡性粒子を製造した後、水蒸気などの熱媒体を供給できる予備発泡機を用いて加熱発泡させて合成樹脂発泡粒子を製造する方法などが挙げられる。
次に、上記合成樹脂発泡粒子の製造方法の一例について説明する。先ず、合成樹脂発泡粒子を押出発泡で製造する場合に用いられる製造装置の一例について説明する。図1中、1は、押出機の前端に取り付けられたノズル金型である。図2に示したように、ノズル金型1の前端面10には、ノズルの出口部11、11・・・が複数個、同一仮想円A上に等間隔毎に形成されている。なお、押出機の前端に取り付けるノズル金型は、ノズル内において合成樹脂原料が発泡しなければ、特に限定されない。
そして、ノズル金型1の前端面10におけるノズルの出口部11、11・・・で囲まれた部分には、回転軸2が前方に向かって突出した状態に配設されており、この回転軸2は、後述する冷却部材4を構成する冷却ドラム41の前部41aを貫通してモータなどの駆動部材3に連結されている。
更に、上記回転軸2の後端部の外周面には一枚又は複数枚の回転刃5、5・・・が一体的に設けられており、全ての回転刃5は、その回転時には、ノズル金型1の前端面10に常時、接触した状態となる。なお、回転軸2に複数枚の回転刃5、5・・・が一体的に設けられている場合には、複数枚の回転刃5、5・・・は回転軸2の周方向に等間隔毎に配列されている。又、図2では、一例として、四個の回転刃5、5・・・を回転軸2の外周面に一体的に設けた場合を示した。
そして、回転軸2が回転することによって回転刃5、5・・・は、ノズル金型1の前端面10に常時、接触しながら、ノズルの出口部11、11・・・が形成されている仮想円A上を移動し、ノズルの出口部11、11・・・から押出された熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡物を順次、連続的に切断可能に構成されている。
又、ノズル金型1の少なくとも前端部と、回転軸2とを包囲するように冷却部材4が配設されている。この冷却部材4は、ノズル金型1よりも大径な正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設された円筒状の周壁部41bとを有する有底円筒状の冷却ドラム41とを備えている。
更に、冷却ドラム41の周壁部41bにおけるノズル金型1の外方に対応する部分には、冷却液42を供給するための供給口41cが内外周面間に亘って貫通した状態に形成されている。冷却ドラム41の供給口41cの外側開口部には冷却液42を冷却ドラム41内に供給するための供給管41dが接続されている。
冷却液42は、供給管41dを通じて、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って斜め前方に向かって供給されるように構成されている。そして、冷却液42は、供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって、冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進む。そして、冷却液42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、その結果、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面は冷却液42によって全面的に被覆された状態となるように構成されている。
なお、冷却液42としては、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を冷却することができれば、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられるが、使用後の処理を考慮すると、水が好ましい。
そして、冷却ドラム41の周壁部41bの前端部下面には、その内外周面間に亘って貫通した状態に排出口41eが形成されている。排出口41eの外側開口部には排出管41fが接続されている。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子及び冷却液42を連続的に排出口41eを通じて排出できるように構成されている。
合成樹脂と、好ましくは架橋剤とを押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して合成樹脂を好ましくは架橋剤によって架橋した後、押出機の前端に取り付けたノズル金型1から合成樹脂を押出発泡させて得られた押出発泡物を回転刃5によって切断し合成樹脂粒子を製造することができる。
又、化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。なお、化学発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
物理発泡剤は、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、物理発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
次に、上記発泡芯材の表面に部分的に又は全面的に繊維強化材を積層することによって積層体を製造する(積層工程)。繊維強化材を構成している繊維としては、特に限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維などが挙げられ、優れた機械的強度及び耐熱性を有していることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
繊維強化材の形態としては、特に限定されず、例えば、織物、編物、不織布、繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)をポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂糸又はガラス繊維糸などのステッチ糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。
繊維強化材は、(1)織物、編物又は不織布を含む面材同士又はこれらの面材を任意の組み合わせで複数枚、積層してなる多層面材、(2)繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)をポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂糸又はガラス繊維糸などのステッチ糸で結束(縫合)してなる複数枚の面材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた面材同士をポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂糸又はガラス繊維糸などのステッチ糸で一体化(縫合)してなる多層面材であってもよい。
上記(1)の多層面材において、織物を複数枚、積層してなる多層面材の場合、各織物を構成している経糸(緯糸)の長さ方向が織物の平面方向からみて放射状に配列されていることが好ましい。具体的には、図3及び図4に示したように、各織物を構成している経糸(緯糸)の長さ方向をそれぞれ1a、1b・・・としたとき、これら経糸(緯糸)の長さ方向1a、1b・・・が放射状に配列されていることが好ましく、経糸(緯糸)の長さ方向1a、1b・・・のうちの任意の経糸(緯糸)の長さ方向1aを特定したとき、特定の経糸(緯糸)の長さ方向1aを中心にして他の経糸(緯糸)の長さ方向1b、1c・・・が線対称となるように配列していることがより好ましい。
また、各織物を構成している経糸(緯糸)の長さ方向1a、1b・・・同士の交差角度は、繊維強化材の強度が一方向に偏らず任意の方向において略同一の機械的強度を付与することができるので、織物を二枚重ね合わせる場合には90°が好ましく、織物を三枚以上重ね合わせる場合には45°が好ましい。
上記(2)の多層面材において、各面材を構成している繊維束の繊維の長さ方向が面材の平面方向からみて放射状に配列されていることが好ましい。具体的には、図3及び図4に示したように、各面材を構成している繊維束の繊維の長さ方向をそれぞれ1a、1b・・・としたとき、これら繊維の長さ方向1a、1b・・・が放射状に配列されていることが好ましく、繊維の長さ方向1a、1b・・・のうちの任意の長さ方向1aを特定したとき、特定の長さ方向1aを中心にして線対称となるように他の長さ方向1b、1c・・・が配列していることがより好ましい。
また、各面材を構成している繊維束の繊維の長さ方向1a、1b・・・同士の交差角度は、繊維強化材の強度が一方向に偏らず任意の方向において略同一の機械的強度を付与することができることから、面材を二枚重ね合わせる場合には90°が好ましく、面材を三枚以上重ね合わせる場合には45°が好ましい。
繊維強化材には熱可塑性樹脂又は未硬化の熱硬化性樹脂(以下、総称して「強化用合成樹脂」ということがある」)が含浸されているが、未硬化の熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
又、熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、発泡芯材との接着性又は繊維強化材を構成している繊維同士の接着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
繊維強化材中における強化用合成樹脂の含有量は、少なすぎると、繊維強化材を構成している繊維同士の結合が弱くなり若しくは繊維強化材と発泡体との接着が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下し、又は、繊維強化材を構成している繊維が、得られる繊維強化複合体の表面に露出しやすくなり、繊維強化複合体の表面平滑性が低下することがあり、多すぎると、繊維強化材を構成している繊維間に存在する強化用合成樹脂の量が多くなりすぎ、かえって繊維強化材の機械的強度が低下し、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあるので、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。
繊維強化材中に強化用合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)繊維強化材を強化用合成樹脂中に浸漬して繊維強化材中に強化用合成樹脂を含浸させる方法、(2)繊維強化材に強化用合成樹脂を塗布し、繊維強化材に強化用合成樹脂を含浸させる方法などが挙げられる。
なお、熱硬化性樹脂を含浸した繊維強化材及び繊維強化材は市販されているものを用いることができる。熱硬化性樹脂を含浸した繊維強化材は、例えば、三菱レイヨン社から商品名「パイロフィルプリプレグ」にて市販されている。繊維強化材は、例えば、三菱レイヨン社から商品名「パイロフィル」にて市販されている。熱可塑性樹脂を含浸した繊維強化材は、例えば、長瀬ケムテック社から商品名「NNGF60−03s」にて市販されている。
強化用合成樹脂を含浸させた後の繊維強化材の厚みは、薄すぎると、繊維強化複合体の表面に繊維強化材を構成している繊維が露出しやすくなって、繊維強化複合体の表面平滑性が低下することがあり、厚すぎると、繊維量が増加して繊維強化複合体の軽量性が低下することがあるので、0.02〜2mmが好ましく、0.05〜2mmがより好ましい。
強化用合成樹脂を含浸させた後の繊維強化材の目付は、小さいと、繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあり、大きいと、繊維強化複合体の軽量性が低下することがあるので、50〜4000g/m2が好ましく、100〜1000g/m2がより好ましい。
繊維強化複合体を製造するには、先ず、図5に示したように、発泡芯材6の表面に、熱可塑性樹脂又は未硬化の熱硬化性樹脂が含浸された繊維強化材7を部分的に又は全面的に積層して積層体Mを形成する。なお、発泡芯材6の表面に積層される繊維強化材7は、発泡芯材6の表面に接着一体化されていても接着一体化されていなくてもよいが、その後の工程における積層体Mの取扱性を考慮すると、発泡芯材6の表面に繊維強化材7を仮接着し一体化しておくことが好ましい。図5では、発泡芯材6を例示として角柱状とした場合を示したが、この形状に限定されず、内部に中空部を有する形状などであってもよい。
発泡芯材6の表面に繊維強化材7を仮接着させる場合、繊維強化材7に含まれている熱可塑性樹脂又は未硬化の熱硬化性樹脂によって発泡芯材6の表面に繊維強化材7を仮接着させてもよいし、又は、別途用意した公知の接着剤を介して発泡芯材6の表面に繊維強化材7を仮接着させてもよい。発泡芯材6の表面への繊維強化材7の接着力は、1〜500kPaが好ましい。なお、発泡芯材6と繊維強化材7との仮接着力は、JIS K6850(1999)に準拠して試験速度10mm/分の条件下にて測定することができる。仮接着力は、例えば、フォースゲージ(日本電産シンポ社製 商品名「FGS−1000TV/1000N+FGP−100」)を用いて測定することができる。
図5では、一枚の繊維強化材7を発泡芯材6の表面に巻き付けて積層体Mを製造したが、複数枚の繊維強化材7を発泡芯材6の表面に積層して積層体Mを製造してもよい。
次に、上記積層工程に続いて成形工程を行う。図6に示したように、積層体Mよりも僅かに大きな大きさを有するキャビティB1を有する金型Bを用意し、この金型BのキャビティB1を開き、キャビティB1内に積層体Mを配設した後にキャビティB1を閉止する。なお、金型BのキャビティB1の内面には、得られた繊維強化複合体を円滑に取り出すことができるように離型処理が施されていることが好ましい。
積層体Mを金型BのキャビティB1内に配設した状態において、金型BのキャビティB1の内面に、積層体Mの繊維強化材7が全面的に近接した状態となっており、成形工程において、発泡芯材6の再発泡力によって、繊維強化材7が十分な押圧力でもって金型BのキャビティB1の内面に押圧される。具体的には、積層体Mを金型BのキャビティB1内に供給した状態において、積層体Mの発泡芯材6と、これに対向する金型BのキャビティB1内面との間の距離は2mm以下となるように調整することが好ましい。
更に、金型Bを包囲するようにリリースフィルムCを金型Bの外面に巻き付けるなどして積層した上で、リリースフィルムC上に更にブリーザークロスDを金型Bの外面に巻き付けるなどして配設する。図6では、リリースフィルムC及びブリーザークロスDを金型Bの外面に巻き付けた状態を示したが、この配設状態に限定されず、金型Bの外面の一部にリリースフィルムC及びブリーザークロスDをリリースフィルムCが金型B側となるように配設してもよい。
上記リリースフィルムCは、金型Bに対して容易に剥離可能に構成されている。リリースフィルムCは、合成樹脂フィルムから構成されており、表裏面間に亘って貫通する貫通孔が形成されていてもいなくてもよいが、繊維強化材7中に含浸させている余分な合成樹脂をブリーザークロスDに円滑に吸収させることができるので、貫通孔が形成されていることが好ましい。
リリースフィルムCに貫通孔が形成されていない場合、繊維強化材7中に含浸させている余分な合成樹脂は、リリースフィルムCの外方を通じてブリーザークロスDに吸収される。
リリースフィルムCにその表裏面間に亘って貫通する貫通孔が多数、形成されている場合、リリースフィルムCの貫通孔を通じて繊維強化材7中に含浸させていた余分な合成樹脂をブリーザークロスDに吸収させることができる。リリースフィルムCを構成している合成樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(4フッ化エチレン−エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂などが挙げられる。
上記ブリーザークロスDは、繊維強化材7中に含浸させていた余分な強化用合成樹脂を吸収するために用いられ、積層体Mの加熱によって変形、変質しないものであればよく、不織布が挙げられる。不織布としては、例えば、ナイロン繊維などのアミド樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維などからなる不織布、ガラスクロスなどが挙げられる。
次に、積層体MをキャビティB1内に収納した金型BにバギングフィルムEを被せてバギングフィルムEによって積層体Mを気密的に密封する。バギングフィルムEは、積層体Mを密封し、積層体M全体を真空引きするためのフィルムである。バギングフィルムEを構成している合成樹脂としては、ナイロンなどのアミド樹脂が挙げられる。バギングフィルムEの外周縁部同士の接合部分は粘着テープなどの封止材Fによって気密的に密着一体化されており、積層体Mが収納された金型Bは、バギングフィルムE内に気密的に密封した状態に収納されている。なお、バギングフィルムEの一部にバックバルブGを配設する。なお、用いられるバギングフィルムEは、一枚であってもよいし、複数枚のバギングフィルムEを用いて、積層体Mが収納された金型BをバギングフィルムE内に気密的に密封した状態に収納してもよい。
しかる後、積層体Mを収納している金型Bが密封されたバギングフィルムEをオートクレーブ内に配設する。次に、バックバルブGに真空ラインを接続し、バックバルブGを通じてバギングフィルムE内の空間部H内を吸引、排気することによって空間部H内を減圧状態にする。
バギングフィルムEの空間部H内の真空度は、低すぎると、繊維強化材中に存在している空気の吸引、排除が不十分となることがあり、得られた繊維強化複合体の繊維強化材中にボイドが発生して繊維強化複合体の機械的強度が低下し、又は、繊維強化材と金型との間の隙間に存在する空気の吸引、排除が不十分となり、繊維強化複合体の繊維強化材の表面平滑性が低下することがあり、高すぎると、繊維強化材中に含浸させた強化用合成樹脂が必要以上に吸引されてしまい、繊維強化材中の強化用合成樹脂の含有量が少なくなって繊維強化材の機械的強度が低下し、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下し、又は、繊維強化材を構成している繊維が露出し、得られる繊維強化複合体の表面平滑性が低下することがあるので、0.08〜0.10MPaが好ましく、0.09〜0.10MPaがより好ましい。
次に、バギングフィルムEで密封された空間部H内の減圧後又は減圧の開始と同時に空間部H内の積層体Mを加熱する。積層体Mの加熱によって、繊維強化材7中の強化用合成樹脂を軟化させる。強化用合成樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂を含んでいる場合、熱硬化性樹脂が硬化することなく流動性を保持した状態となるように温度制御する必要がある。又、強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含んでいる場合、熱可塑性樹脂が流動性を有する状態となるように温度制御する。
積層体Mの加熱温度は、低すぎると、繊維強化材に含浸させている強化用合成樹脂の軟化が不十分となって、繊維強化材を金型のキャビティ形状に沿って正確に成形することができないことがあり、高すぎると、発泡芯材の気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び衝撃吸収性が低下することがあるので、(強化用合成樹脂のガラス転移温度−60℃)〜(強化用合成樹脂のガラス転移温度+80℃)が好ましく、(強化用合成樹脂のガラス転移温度−50℃)〜(強化用合成樹脂のガラス転移温度+70℃)がより好ましい。なお、本発明において、積層体Mの加熱温度とは、積層体Mの加熱を積層体Mの雰囲気温度を上昇させることによって行っている場合には積層体Mの加熱時の雰囲気温度をいい、積層体Mを金型によって加熱している場合には金型の温度をいう。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が含有されている場合、強化用合成樹脂のガラス転移温度Tgは、強化用合成樹脂に含まれている合成樹脂のガラス転移温度Tgのうちの最も高いガラス転移温度Tgとする。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、全ての熱硬化性樹脂が硬化することなく流動性を有する状態となるように積層体Mの加熱温度を調整する必要がある。
なお、本発明において、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。示差走査熱量計装置を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、試料を30℃から−40℃まで降温した後に10分間に亘って保持した後、試料を−40℃から290℃まで昇温(1st Heating)し290℃に10分間に亘って保持した後に290℃から−40℃まで降温(Cooling)、10分間に亘って保持した後に−40℃から290℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温速度及び降温速度は10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いる。本発明において、ガラス転移点とは、2nd Heating過程で得られたDSC曲線より得られた中間点ガラス転移温度のことをいう。又、この中間点ガラス転移温度はJIS K7121:1987(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求める。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」で市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
本発明において、熱硬化性樹脂のガラス転移温度は下記の要領で測定された温度をいう。熱硬化性樹脂のガラス転移温度を測定する場合には熱硬化性樹脂を予め硬化させる必要がある。熱硬化性樹脂の硬化温度はJIS K7121:1987において測定される発熱ピーク温度±10℃が目安とされる。熱硬化性樹脂の硬化時間は60分間が目安とされ、硬化後の熱硬化性樹脂の発熱ピークをJIS K7121:1987に準拠して測定した際に、発熱ピークが観察されなければ、硬化が完了されたとみなせ、この硬化後の熱硬化性樹脂を用いて、後述する要領で熱硬化性樹脂のガラス転移温度を測定する。なお、上述した熱硬化性樹脂の硬化温度の目安となる発熱ピーク温度の詳細な測定方法は、下記の通りである。熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下の要領で行う。示差走査熱量計装置を用いてアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、基準物質としてアルミナを用い、試料を30℃から220℃まで速度5℃/分で昇温させる。本発明において、熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度とは1回目昇温時のピークトップの温度を読みとった値である。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121(1987)「プラスチックの転移温度測定方法」における規格9.3「ガラス転移温度の求め方」に準拠して測定された温度とする。具体的には、ガラス転移温度を測定する、硬化後の熱硬化性樹脂6mgを試料として採取する。示差走査熱量計装置を用い、装置内で流量20mL/分の窒素ガス流の下、試料を20℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温して200℃にて試料を10分間に亘って保持する。その後、試料を装置から速やかに取出して25±10℃まで冷却した後、装置内で、流量20mL/分の窒素ガス流の下、20℃/分の昇温速度で試料を200℃まで再度、昇温した時に得られるDSC曲線よりガラス転移温度(中間点)を算出する。測定においては基準物質としてアルミナを用いる。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
更に、積層体Mの上記加熱によって発泡芯材を再発泡させる。発泡芯材が再発泡によって膨張し、この発泡芯材の膨張によって発泡芯材の表面に配設された繊維強化材7が金型BのキャビティB1内面に押し付けられる。この時、繊維強化材7中の強化用合成樹脂は上述の通り流動性を有した状態に維持されていることから、発泡芯材6の再発泡による押圧力によって、繊維強化材7は金型BのキャビティB1形状に沿って容易に且つ円滑に変形し成形される。
本発明では、発泡芯材6はその再発泡時における発泡力が0.1mN/mm3以上とされ、且つ加熱寸法変化率が1%以上と十分な膨張力を有していることから、繊維強化材7を金型BのキャビティB1内面に十分な押圧力でもって押し付けることができる。
又、繊維強化材7は発泡芯材6によるキャビティB1内面への押圧によって繊維強化材7に含浸させている強化用合成樹脂が繊維強化材7の表面にあらわれるので、繊維強化材7の表面には表皮層が形成され、繊維強化材7を構成している繊維は強化用合成樹脂中に埋没した状態となる。更に、繊維強化材7の成形途上において、繊維強化材7に含まれている空気や、繊維強化材7とキャビティB1内面との隙間に存在する空気は、バギングフィルムEの空間部H内の減圧によって円滑にキャビティB1外に吸引、排出されると共に、繊維強化材7中に含浸された余分な強化用合成樹脂もキャビティB1外に吸引、排出されてブリーザークロスDに吸収される。従って、得られる繊維強化複合体の表面は、繊維が殆ど露出しておらず、残存した空気による凹凸もなく、優れた表面平滑性を有している。なお、繊維強化材7に含まれている空気、繊維強化材7とキャビティB1内面との隙間に存在する空気、及び、繊維強化材7中に含浸された余分な強化用合成樹脂は、金型Bの接合面などの隙間を通じて金型BのキャビティB1外に排出される。
上述のように、繊維強化材7中に含浸された余分な強化用合成樹脂をブリーザークロスに吸収、除去させていることから、繊維強化材に過剰とならないようにしながら必要量の強化用合成樹脂を含浸させ、繊維強化材の繊維同士を繊維が高度に配向した状態に強化用合成樹脂によって結着させることができ、よって、得られる繊維強化複合体は優れた機械的強度を有していると共に、繊維強化材の表面には余分な強化用合成樹脂が残存していないので、得られる繊維強化複合体は優れた表面平滑性を有している。
加えて、発泡芯材6の再発泡時には、発泡芯材6を構成している合成樹脂は適度な柔軟性を有していることから、発泡芯材6自体も金型BのキャビティB1内面に沿って円滑に変形し、繊維強化材7を全体的に金型BのキャビティB1内面に押圧することができ、繊維強化材7はキャビティB1内面に沿って正確に成形される。
又、発泡芯材6はこれを構成している合成樹脂の線膨張によって膨張しているのではなく、再発泡によって膨張していることから、発泡芯材6には再発泡後に冷却された状態において歪みは殆ど残存しておらず、得られる繊維強化複合体は高温時においても優れた寸法安定性を有している。
上述のように、発泡芯材6を再発泡させて繊維強化材7を金型BのキャビティB1内面に沿って成形した後、オートクレーブ内を必要に応じて加圧することによって積層体Mを加圧すると共に上記加熱を継続して行う。なお、積層体Mの加熱中においてバギングフィルムEの空間部H内の減圧状態は維持されている。
上記積層体の加熱を継続しているが、繊維強化材7に含浸させている強化用合成樹脂が熱硬化性樹脂を含有している場合には、上記加熱によって繊維強化材7中に含浸させている熱硬化性樹脂を硬化させる。なお、熱硬化性樹脂の軟化後において、積層体Mの加熱温度は同一であってもよいし変化させてもよいが、熱硬化性樹脂の硬化を促進するために積層体Mの加熱温度を上昇させることが好ましい。
積層体の繊維強化材7に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、低すぎると、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあり、高すぎると、発泡シートの気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び衝撃吸収性が低下することがあるので、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度−50℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度+50℃)が好ましく、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度−40℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度+40℃)がより好ましい。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgは、強化用合成樹脂に含まれている熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgのうちの最も高いガラス転移温度Tgとする。
上記熱硬化性樹脂の硬化によって繊維強化材の繊維同士は結着、固定されると共に繊維強化材7は金型BのキャビティB1内面に沿って成形された状態にて発泡芯材6の表面に熱硬化性樹脂によって全面的に密着した状態にて積層一体化されて繊維強化複合体を得ることができる。
又、繊維強化材7に含浸させている強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含んでいる場合、熱硬化性樹脂の場合と異なり、後述するように冷却することによって熱可塑性樹脂が固化した状態となり、繊維強化材の繊維同士は熱可塑性樹脂によって結着、固定されると共に繊維強化材7は金型BのキャビティB1内面に沿って成形された状態にて発泡芯材6の表面に熱可塑性樹脂によって全面的に密着した状態にて積層一体化されて繊維強化複合体を得ることができる。
次に、繊維強化複合体を冷却すると共に繊維強化複合体に加えている加圧力を解除した後、バギングフィルムEの空間部H内の減圧を解除した上で空間部Hを開放して、金型BのキャビティB1内から繊維強化複合体を取り出せばよい。
得られた繊維強化複合体は、硬化した熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂によって繊維同士が結着され且つ金型BのキャビティB1内面に沿って所望形状に成形された繊維強化材7が発泡芯材6の表面に沿って密着した状態に積層一体化されている。
このようにして得られた繊維強化複合体は、発泡芯材6の表面に、硬化した熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂で繊維同士が強固に結着されてなる繊維強化材7が強固に積層一体化されており、優れた機械的強度を有していると共に、一部に発泡体を有していることから軽量性及び衝撃吸収性にも優れている。
更に、繊維強化複合体の発泡芯材6及び繊維強化材7は、発泡芯材6の再発泡力によって金型BのキャビティB1内面に十分な押圧力でもって金型BのキャビティB1内面に押圧されて金型BのキャビティB1内面に沿った形状に正確に成形されており、繊維強化複合体は所望の形状を有している。
又、繊維強化複合体の繊維強化材7の表面には、発泡芯材6の再発泡力による押圧によって繊維強化材7に含浸されている熱可塑性樹脂又は未硬化の熱硬化性樹脂が繊維強化材7表面に滲出し、繊維強化材7の表面に層状となって表皮層を形成しているので、繊維強化材7を構成している繊維が外部に露出しておらず、繊維強化複合体はその表面平滑性に優れており、繊維強化材7の表面粗さRaは15μm以下となっている。
上述した繊維強化複合体の製造方法では、繊維強化複合体の製造を減圧下にて行った場合を説明したが、常圧下にて行ってもよい。なお、積層体を製造する積層工程は上述と同様であるのでその説明を省略する。
次に、上記積層工程に続いて成形工程を行う。積層体Mよりも僅かに大きな大きさを有するキャビティを有する一対の金型を用意し、この金型のキャビティを開き、キャビティ内に積層体を配設した後に一対の金型を型締めしてキャビティを閉止する。なお、金型のキャビティの内面には、上述と同様に、得られた繊維強化複合体を円滑に取り出すことができるように離型処理が施されていることが好ましい。
積層体を金型のキャビティ内に配設した状態において、金型のキャビティの内面に、積層体の繊維強化材が全面的に近接した状態となっており、成形工程において、発泡芯材の再発泡力によって、繊維強化材が十分な押圧力でもって金型のキャビティの内面に押圧される。具体的には、積層体Mを金型BのキャビティB1内に供給した状態において、積層体Mの発泡芯材と、これに対向する一対の金型のキャビティ内面との間の距離は2mm以下となるように調整することが好ましい。
次に、一対の金型のキャビティ内に収納している積層体を加熱する。積層体の加熱によって、繊維強化材中の強化用合成樹脂を軟化させる。強化用合成樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂を含んでいる場合、熱硬化性樹脂が硬化することなく流動性を保持した状態となるように温度制御する必要がある。又、強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含んでいる場合、熱可塑性樹脂が流動性を有する状態となるように温度制御する。
積層体の加熱温度は、低すぎると、繊維強化材に含浸させている強化用合成樹脂の軟化が不十分となって、繊維強化材を金型のキャビティ形状に沿って正確に成形することができないことがあり、高すぎると、発泡芯材の気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び衝撃吸収性が低下することがあるので、(強化用合成樹脂のガラス転移温度−60℃)〜(強化用合成樹脂のガラス転移温度+80℃)が好ましく、(強化用合成樹脂のガラス転移温度−50℃)〜(強化用合成樹脂のガラス転移温度+70℃)がより好ましい。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が含有されている場合、強化用合成樹脂のガラス転移温度Tgは、強化用合成樹脂に含まれている合成樹脂のガラス転移温度Tgのうちの最も高いガラス転移温度Tgとする。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、全ての熱硬化性樹脂が硬化することなく流動性を有する状態となるように積層体Mの加熱温度を調整する必要がある。
積層体の上記加熱によって発泡芯材を再発泡させる。発泡芯材が再発泡によって膨張し、この発泡芯材の膨張によって発泡芯材の表面に配設された繊維強化材が金型のキャビティ内面に押し付けられる。この時、繊維強化材中の強化用合成樹脂は上述の通り流動性を有した状態に維持されていることから、発泡芯材の再発泡による押圧力によって、繊維強化材は金型のキャビティ形状に沿って容易に且つ円滑に変形し成形される。
又、繊維強化材7は発泡芯材6によるキャビティB1内面への押圧によって繊維強化材7に含浸させている強化用合成樹脂が繊維強化材7の表面にあらわれるので、繊維強化材7の表面には表皮層が形成され、繊維強化材7を構成している繊維は強化用合成樹脂中に埋没した状態となる。従って、得られる繊維強化複合体の表面は、繊維が殆ど露出しておらず、残存した空気による凹凸もなく、優れた表面平滑性を有している。
加えて、発泡芯材の再発泡時には、発泡芯材を構成している合成樹脂は適度な柔軟性を有していることから、発泡芯材自体も一対の金型のキャビティ内面に沿って円滑に変形し、繊維強化材を全体的に金型のキャビティ内面に押圧することができ、繊維強化材はキャビティ内面に沿って正確に成形される。
上述のように、発泡芯材を再発泡させて繊維強化材を金型のキャビティ内面に沿って成形した後、積層体の上記加熱を継続して行う。
上記積層体の加熱を継続しているが、繊維強化材に含浸させている強化用合成樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂を含んでいる場合には、上記加熱によって繊維強化材中に含浸させている熱硬化性樹脂を硬化させる。なお、熱硬化性樹脂の軟化後において、積層体の加熱温度は同一であってもよいし変化させてもよいが、熱硬化性樹脂の硬化を促進するために積層体の加熱温度を上昇させることが好ましい。
積層体の繊維強化材7に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、低すぎると、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあり、高すぎると、発泡シートの気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び衝撃吸収性が低下することがあるので、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度−50℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度+50℃)が好ましく、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度−40℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度+40℃)がより好ましい。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgは、強化用合成樹脂に含まれている熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgのうちの最も高いガラス転移温度Tgとする。
上記熱硬化性樹脂の硬化によって繊維強化材の繊維同士は結着、固定されると共に繊維強化材は金型のキャビティ内面に沿って成形された状態にて発泡芯材の表面に硬化した熱硬化性樹脂によって全面的に密着した状態にて積層一体化されて繊維強化複合体を得ることができる。
又、繊維強化材7に含浸させている強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含んでいる場合、熱硬化性樹脂の場合と異なり、熱硬化性樹脂の場合のように硬化工程は必要なく、冷却することによって熱可塑性樹脂が固化した状態となり、繊維強化材の繊維同士は熱可塑性樹脂によって結着、固定されると共に繊維強化材は金型のキャビティ内面に沿って成形された状態にて発泡芯材の表面に熱可塑性樹脂によって全面的に密着した状態にて積層一体化されて繊維強化複合体を得ることができる。