JP6213600B2 - 物品の製造方法および接着シート - Google Patents
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Description
2液型接着剤としては、例えば、主剤と硬化剤とを混合することで反応が開始する2液混合型接着剤、主剤を含む薬液と硬化剤を含む薬液とをそれぞれ分別塗布し、接触させることで反応が開始する2液分別塗布型接着剤(特許文献2〜5)等がある。2液分別塗布型接着剤は、一般にハネムーン型接着剤、非混合タイプの2液硬化型接着剤等とも呼ばれる。
このように、液状接着剤は、常温硬化が可能であるが、取り扱い等の面から物品の製造を煩雑化させるという問題がある。
なお、第1部材および第2部材のことを、単に部材と称する場合がある。
このように、湿気硬化型の接着剤をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
このように、湿気硬化型の接着剤をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
また、選択するケチミン化合物の種類に応じて、エポキシ樹脂と反応するアミン化合物の種類を変えることができ、硬化反応速度や硬化時間の調整が可能となるからである。
まず、本発明の物品の製造方法について説明する。
本発明の物品の製造方法は、以下の実施形態に大別される。
本発明の物品の製造方法の第1実施形態(以下、第1実施形態の製造方法と略する場合がある。)は、吸湿により硬化する接着層を用いて第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1部材の表面に上記接着層を有する接着シートの上記接着層の一方の面が貼り合わされている接着シート付部材を準備する準備工程と、湿気存在下にて、上記接着シート付部材の上記接着層の他方の面に上記第2部材を貼り合せる貼合工程と、を有することを特徴とする。
接着シート付部材において、上記接着層の他方の面とは、上記接着層の上記第1部材側とは反対側の面をいう。
次に、湿気存在下Wにて、接着シート付部材10の接着層22の他方の面に第2部材2を貼り合せる(図1(b)、貼合工程)。接着シート付部材10の接着層22の他方の面にセパレータ21が配置されている場合は、図1(b)で示すようにセパレータ21を剥離して、露出した接着層22の表面に第2部材2を貼合する。
接着層22は、貼合工程を行う周囲の環境に存在する湿気を吸湿して硬化することで、硬化接着層3となり、硬化前よりも強接着力を発現する。これにより、第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができ、第1部材1、硬化接着層3、および第2部材2からなる物品30が得られる(図1(c))。
このように、湿気硬化型の接着剤をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
本発明の物品の製造方法の第2実施形態(以下、第2実施形態の製造方法と略する場合がある。)は、吸湿により硬化する接着層を用いる物品の製造方法であって、第1部材の一方の面に、上記接着層を有する接着シートの上記接着層の一方の面を貼り合わせる貼合工程と、湿気存在下にて上記接着層を硬化させて硬化接着層とする硬化工程と、を有することを特徴とする。
次に、図2(b)、(c)で示すように、湿気存在下Wにて接着層22を吸湿硬化させて硬化接着層3とする(硬化工程)。接着シート20の接着層22の他方の面にセパレータ21が配置されている場合は、図2(b)で示すように、セパレータ21を剥離して接着層22を湿気に曝してもよい。これにより、第1部材1の一方の面上に硬化接着層3を有する物品30が得られる(図2(c))。
また、接着層の中に他の部材を包含させることで、硬化接着層により上記他の部材を保持し、固定することができる。
このように、湿気硬化型の接着剤をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
本発明の物品の製造方法において、上記接着層は、硬化前に粘着性を有していてもよく、有さなくてもよいが、粘着性を有していることが好ましい。光硬化型や熱硬化型の接着剤は、硬化完了まで養生する必要であるため、上記接着剤を介して部材を貼り合わせてから所望の養生時間、押圧等によりその貼り合せ状態を保持しなければならず、貼合工程の作業が煩雑化してしまう。これに対し、接着シートの接着層が粘着性を有することで、吸湿硬化が完了するまでの間、上記接着層が有する粘着力により、部材との貼り合せ状態を保持しながら硬化養生することができる。
なお、本明細書内における接着層の粘着性とは、硬化前の接着層の粘着性を言う。
接着層が粘着性を有するとは、吸湿硬化前の接着層が、部材を仮固定できる程度の接着力(粘着力)を有することを意味する。すなわち、上記吸湿硬化前の接着層は、吸湿硬化後の接着層である硬化接着層よりも弱い接着力(粘着力)を有する。また、上記接着層は、吸湿硬化して硬化接着層となることで、硬化前よりも強接着力を発現する。接着層が示す具体的な粘着性については後述する。
具体的には、第1実施形態の製造方法においては、上記接着シート付部材の、上記接着層の上記第1部材側とは反対側の面、すなわち、上記接着層の他方の面が上記セパレータで被覆されていることで、第2部材と貼り合わせるまでの間、接着層を保護することができる。
また、第2実施形態の製造方法においては、上記接着層の上記第1部材側とは反対側の面がセパレータで被覆されていることで、上記接着層の吸湿硬化までの間、上記接着層を保護することができる。
本発明の物品の製造方法は、様々な分野の物品の製造方法に用いることができ、その用途は限定されないが、中でも、加熱や光照射が困難な物品の製造方法として、好適に用いることができる。
具体的には、本発明の物品の製造方法は、建築物品、インフラ(インフラストラクチャー)構造物、または自動車の製造方法として好適に用いることができる。
以下、本発明の物品の製造方法を用いた建築物品の製造方法、インフラ構造物の製造方法、および自動車の製造方法について説明する。
本発明の物品の製造方法は、上述した実施形態の中でも第1実施形態を、建築物品の製造方法として好適に用いることができる。
この項においては、「物品」を「建築物品」に、「建築物品の製造方法」を「建材の施工方法」に、「部材(第1部材および第2部材)」を「建材(第1建材および第2建材)」に、それぞれ置き替えて説明する場合がある。
2種類の建材を貼り合せる施工方法としては、1液硬化型や2液混合硬化型の接着剤を塗布して建材同士を貼り合せる方法、両面テープを介して建材同士を貼り合せる方法等が一般に採用されている。
さらに、上記粘着剤は耐熱性や耐候性が劣るため、周囲環境によっては粘着力の低下が短期間で起こり、貼り合せた建材が容易に剥がれてしまう。貼り合せる2つの建材の材質が異なると、それぞれの建材が示す膨張率の差により、反りや浮きが生じやすいという問題もある。
建築物品の製造方法の第1態様(以下、この項において、本態様の製造方法と称する場合がある。)は、上述の「A.実施形態」の項で説明した第1実施形態の製造方法を用いる方法である。
本態様の製造方法は、後述する準備工程および貼合工程を少なくとも有する方法であり、第1建材および第2建材の種類や、建材同士を貼り合せた際の被着面(接着面)の方向、接着層の粘着性の程度に応じた建材の施工が可能である。
以下、本態様の製造方法を用いた建材の施工例について説明する。
本態様の製造方法を用いた施工例の第1例(以下、この項においては「本施工例」と称する場合がある。)は、第1建材および第2建材の被着面(接着面)が鉛直面または法線面となる施工例である。具体的には、第1建材および第2建材のうち一方が壁装材であり、他方が建築構造物の壁である施工例である。本施工例により、建築構造物の壁と壁装材とが硬化接着層を介して貼り合されてなる建築物品を得ることができる。
図3に示す本施工例では、準備工程において、接着シート付建材10Aを準備するに際し、接着シートを建築構造物の壁1Aに貼り合わせる接着シート貼合工程も含んでいる。すなわち、準備工程(図3(a))において、接着層22の両面に防湿性を有するセパレータ21Aが配置された接着シート20Aを用い、接着シート20Aの一方のセパレータ21Aを剥離し、露出した接着層22の表面と建築構造物の壁1Aの表面(鉛直面)とを貼り合せる接着シート貼合工程を含んでいる。そして、準備工程後、建築構造物の壁1Aが有する接着層22の他方の面に壁装材2Aを貼り合わせる貼合工程(図3(b))を行う。
図3に示す例では、第1建材を建築構造物の壁1Aとし、第2建材を壁装材2Aとしたが、その逆であってもよい。
このとき、吸湿前の接着層が粘着性を示すことで、吸湿による硬化反応が進み十分な接着力が発現されるまでの間、壁と壁装材との貼り合せ状態を保持することができ、せん断応力が掛ることによる建材の剥離を抑制することができる。また、経時により接着層の粘着性が低下しても、その間に接着層の吸湿硬化が進み強接着力が発現されるため、上記貼り合せ状態が保持される。
一方、壁装材が軽量であれば、接着層は、粘着性が低くてもよい。接着層が低粘着性を示すことで、自重による壁装材の落下を防ぎつつ、吸湿硬化前であれば貼合後に貼り直すことも可能となるからである。
被着面が鉛直面等であるときの、接着層の具体的な粘着性については、後述する。
本態様の製造方法を用いた施工例の第2例(以下、この項においては「本施工例」と称する場合がある。)は、第1建材および第2建材の被着面(接着面)が水平面となる施工例である。具体的には、第1建材が化粧床材であり、第2建材が建築構造物の床である施工例である。本施工例により、建築構造物の床と化粧床材とが硬化接着層を介して貼り合されてなる建築物品を得ることができる。
図4に示す本施工例では、準備工程(図4(a)、(b))において、接着シート付壁装材10Bを準備するに際し、接着シートを化粧床材に貼り合わせる接着シート貼合工程も含んでいる。すなわち、準備工程(図4(a)、(b))において、防湿シート31に梱包された接着シート20を防湿シート31から取出し、接着シート20の一方のセパレータ21を剥離し、露出した接着層22の表面と化粧床材1Bの表面とを貼り合せて、接着シート付建材10Bを準備する接着シート貼合工程を含んでいる。そして、準備工程後、接着シート付建材10Bの接着層22の他方の面に建築構造物の床2Bを貼り合わせる貼合工程(図4(C))を行う。図4(c)では、第2建材2Bの被着面上で接着シート付建材10Bを水平方向Dへスライド移動させて貼り合せている。本施工例により建築構造物の床2Bと化粧床材1Bとが硬化接着層3を介して貼り合わされてなる建築物品30Bを得ることができる。
図4に示す例では、第1建材を化粧床材とし、第2建材を建築構造物の床としたが、その逆であってもよい。
このとき、上記接着層が粘着性を示すことで、接着層の吸湿硬化反応が進むまでの間、接着層の粘着性により床と化粧床材との貼り合せ状態を保持することができる。
被着面が水平面であるときの接着層の具体的な粘着性、および接着層の粘性については、後述する。
本工程は、上記第1建材の表面に上記接着層を有する接着シートの上記接着層の一方の面が貼り合わされている接着シート付建材を準備する工程である。
上記接着シートは、吸湿により硬化する接着層を有する。
上記接着シートとしては、例えば、セパレータと上記セパレータの一方の面に設けられた接着層とを有する積層体が挙げられ、これを有する接着シート付建材においては、上記接着層の他方の面にセパレータが配置される。
上記接着シートが有する接着層は、吸湿により硬化する組成(湿気硬化性樹脂組成物)を含む。
上記接着層は、接着剤やシーリング材等として用いられる従来公知の湿気硬化型接着剤を用いて形成することができる。
上記接着層に含まれる湿気硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂、および、必要に応じて上記硬化性樹脂と反応する触媒や硬化剤等を含み、吸湿により硬化反応を起こし得る組成を有すればよく、従来公知の湿気硬化型接着剤に用いられる組成物が挙げられる。
具体的には、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物、シアノアクリレート樹脂組成物、加水分解性シリル基含有樹脂組成物等が挙げられる。
以下、湿気硬化性樹脂組成物の組成例について説明する。
上記湿気硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂および硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物とすることができる。上記組成物を含む接着層は、硬化剤が湿気との接触により活性化されることで、エポキシ樹脂が硬化する。上記接着層は硬化剤の種類に応じて湿気に対する敏感性を変化させることができる。
また、上記エポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂であってもよく、固形エポキシ樹脂であってもよく、その両方であってもよいが、中でも、液状エポキシ樹脂および固形エポキシ樹脂の両方を含むことが好ましい。液状エポキシ樹脂および固形エポキシ樹脂の両方を含む場合は、その配合量を調整することで、上記接着層の粘着性を調整することができるからである。なお、エポキシ樹脂の液状、固形とは、常温での状態をいう。
液状エポキシ樹脂および固形エポキシ樹脂を併用する場合の、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂との配合割合は、適宜設定することができる。
また、固形エポキシ樹脂の質量平均分子量およびエポキシ当量は、接着層にかかるせん断応力の大小や応力のかかる方向に応じて適宜設定することができる。例えば、上記接着層にかかるせん断応力が大きい場合、固形エポキシ樹脂は、質量平均分子量(Mw)が900以上6000以下であり、エポキシ当量(g/eq.)が450以上5000以下であることが好ましい。上記接着層の凝集力や製膜性が向上し、せん断応力に強くなるからである。
ケチミン化合物は、分子中に2個以上のケチミン基を有するポリケチミン化合物であることが好ましく、エポキシ樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。ケチミン化合物としては、例えば、特開2005−350514号公報に開示される化合物が挙げられる。ケチミン化合物は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
上記湿気硬化性樹脂組成物は、1以上の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有樹脂、および触媒を含む加水分解性シリル基含有樹脂組成物とすることができる。
上記組成物を含む接着層は、湿気に敏感であり、短時間で吸湿による硬化反応を完了することができるといった特長を有する。
変成シリコーン樹脂としては、従来公知の樹脂を用いることができ、例えば、特開2005−350514号公報に開示される樹脂が挙げられる。
変性シリコーン樹脂としては、公知の湿気硬化性シリコーンゴム組成物のベースポリマー成分等が挙げられ、具体的には、シラノール基末端オルガノポリシロキサン等が挙げられる。変性シリコーン樹脂が上記ベースポリマー成分を含む場合は、さらにアルコキシシランもしくはその部分加水分解縮合物を含んでいてもよい。具体的なシラノール基末端オルガノポリシロキサン、アルコキシシランおよびその部分加水分解縮合物については、例えば、特開2005−350514号公報に開示される各種材料が挙げられる。
触媒の配合量は適宜設定することができ、例えば、加水分解性シリル基含有樹脂100重量部に対して、上記錫触媒は0.05重量部〜10重量部の範囲内で含有されていることが好ましい。
上記湿気硬化性樹脂組成物は、シアノアクリレート化合物を含むシアノアクリレート樹脂組成物とすることができる。上記組成物を含む接着層は、湿気に非常に敏感であり、短時間で吸湿による硬化反応を完了することができるといった特長を有する。
シアノアクリレート化合物としては、空気中の湿気と反応硬化すればよく、例えば、α−シアノアクリレート、アルキルα−シアノアクリレートが挙げられる。
上記湿気硬化性樹脂組成物は、イソシアネート基を有する変性ウレタンプレポリマー樹脂を含むポリウレタン樹脂組成物とすることができる。上記組成物を含む接着層は、湿気に鈍感であり、吸湿による硬化反応が完了するまでの時間が長いといった特長を有する。
具体的なポリオール化合物およびポリイソシアネート化合物としては、例えば特開2009−31388号公報に記載の各種材料が挙げられる。
上記湿気硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に対して相溶性を有する相溶性ポリマー成分を含むことが好ましい。製膜性が向上し接着層に柔軟性を付与することができ、被着体への密着性の向上を図ることが可能となるからである。また、硬化接着層の靭性が向上し、且つ、接着力をより高めることができるからである。
以下、それぞれについて説明する。
極性基を有するポリマーとしては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミド基またはニトリル基等の官能基を有する化合物をモノマー成分とするポリマーが挙げられ、中でも上記官能基を有するアクリル酸エステル共重合体が好ましい。具体的には、エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。なお、ここでのアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の「アクリル酸」には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の「メタクリル酸」も含まれる。
ブロック共重合体としては、アクリル系ブロック共重合体が好ましく、中でもメタクリレート−アクリレート−メタクリレートから構成されるアクリル系トリブロック共重合体が好ましい。アクリル系トリブロック共重合体を構成するメタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジジル等が挙げられる。また、トリブロック共重合体を構成するアクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジル等が挙げられる。
メタクリレート−アクリレート−メタクリレートから構成されるトリブロック共重合体の具体例としては、例えば、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート(MMA−BA−MMA)から構成されるアクリル系トリブロック共重合体(以下、MMA−BA−MMA2元共重合体と表記する場合がある。)が挙げられる。このようなアクリル系ブロック共重合体は、製膜性が向上し、被着面に対して十分な接着性を示すことができる。ブロック共重合体は、ブロックの一部にカルボン酸、水酸基、アミド基等の上述した極性基を導入した変性物であってもよい。
この割合で両者を配合すると、上記湿気硬化性樹脂組成物を含む接着層は、硬化前の段階で、硬化性樹脂(海)中に、ナノオーダーレベルの微粒子状にMMA−BA−MMA2元共重合体(島)が分散した海島構造が発現し、見かけ上の相溶状態が発現される。そして、上記接着層が吸湿により見かけ上の相溶状態を維持しながら硬化することで、優れた接着強度を維持することができる。また、上記接着層が上記の海島構造を有することで、被着体との界面からの水の侵入を抑制でき、さらに優れた接着保持特性を有することができる。
(メタ)アクリル酸エステルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするポリマーであり、所望の重量平均分子量およびガラス転移温度を有する。硬化性樹脂がアクリル樹脂を含む場合は、上記硬化性樹脂としてのアクリル樹脂と、相溶性ポリマー成分としての(メタ)アクリル酸エステルポリマーとは、区別される。
上記(メタ)アクリル酸エステルポリマーは、ホモポリマーであってもよく、ランダム共重合体であってもよい。なお、上記(メタ)アクリル酸エステルポリマーには、ブロック共重合体は含まない。
また、(メタ)アクリル酸エステルには、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステルが含まれる。
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な官能基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。酸無水物基含有モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等が挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、酢酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン等の芳香族ビニル化合物、および、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類のモノマー等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルポリマーは、重量平均分子量(Mw)が90000以上400000以下であることが好ましく、中でも100000以上300000以下が好ましく、特に100000以上200000以下が好ましい。重量平均分子量が上記範囲よりも大きいと、湿気硬化性樹脂組成物中に含まれる硬化性樹脂と混じり合わず分離する場合や、上記硬化性樹脂との相溶性が低下して、湿気硬化性樹脂組成物がセパレータから弾かれてしまい、接着層の形成が困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、接着層の形状を保持することが困難となる場合や、粘着性が高くなり糸引きが生じやすくなり、接着層の強度が得られない場合がある。なお、糸引きとは、接着層を剥がした際に、接着層が被着面に付着して、糸状になって剥離方向に伸びる現象をいう。
上記ガラス転移温度が80℃よりも低いと、セパレータに対する親和性が低下して接着層の形成が阻害される場合や、逆に、糸引きが発生しやすくなるため、接着層の靱性が低下して、層の形状を保持することが困難となる場合がある。ガラス転移によるピークが2以上出現する場合は、複数のピークのうち温度が最も低いピークが上記範囲内にあればよい。
・アタッチメントモード:圧縮モード
・周波数:1.0Hz
・温度範囲:−50℃〜250℃
・昇温速度:5℃/分
ランダム共重合体では、構成するモノマー単位のガラス転移温度が平均化されるため、(メタ)アクリル酸エステルポリマーが、ガラス転移温度が上記の範囲内に無いホモポリマーを構成するモノマー単位を含む場合であっても、ガラス転移温度の低いモノマー単位単体による特性は発揮されにくいと推測されるためである。
上記湿気硬化性樹脂組成物は、組成に応じて、架橋剤、重合触媒、粘着付与剤、硬膜剤、軟化剤、充填剤、可塑剤、溶剤、酸化防止剤、硬化促進剤、シリカなどの無機粒子や難燃剤、増粘剤、放熱剤、絶縁剤、導電剤、強度向上のための繊維(特にチョップド繊維など)等の任意の材料を含んでいてもよい。粘着付与剤としては、例えば、シリコーン樹脂等が挙げられる。
湿気硬化性樹脂組成物は、部材(建材)の材質等に応じて組成を選択することができる。
例えば部材の材質が木材、セラミック、コンクリート、および金属であれば、上記湿気硬化性樹脂組成物としては、組成1で挙げたエポキシ樹脂組成物、組成2で挙げた加水分解性シリル基含有樹脂組成物、組成4で挙げたポリウレタン樹脂組成物が好適である。
また、部材の材質がポリプロピレンやポリエチレン等の難接着樹脂であれば、上記湿気硬化性樹脂組成物としては、組成2で挙げた加水分解性シリル基含有樹脂組成物のうち、硬化性樹脂としてアクリル樹脂またはシリコーン樹脂を含む加水分解性シリル基含有樹脂組成物、組成3で挙げたシアノアクリレート樹脂組成物が好適である。
また、ケチミン化合物は、吸湿によりケトン化合物およびアミン化合物に加水分解する第1段階と、上記アミン化合物およびエポキシ樹脂が反応する第2段階との2段階反応が生じる。このとき、選択するケチミン化合物の種類に応じてエポキシ樹脂と反応するアミン化合物の種類を変えることができ、硬化反応速度や硬化時間の調整が可能となる。これにより、部材の貼り直し等が必要となる場合や、接着シートを湿気存在下に曝してから部材の貼り合わせ等を行うまでにタイムラグがある場合に、吸湿硬化が開始するまでの時間を調整することができるからである。
接着層の粘着力は、建材の種類や被着面の方向に応じて適宜設定することができる。
上記接着層は、被着体となる部材(建材)に対する粘着力が少なくとも0.05N/インチ以上、50N/インチ以下であることが好ましく、中でも0.1N/インチ以上、40N/インチ以下であることが好ましい。また、その粘着力が、少なくとも第1建材と貼合されてからすぐ発揮され、第1建材および第2建材を貼り合せて接着に使用するまでの間、すなわち、少なくとも後述する貼合工程で、第1建材および第2建材を貼り合せる作業を行っている間、保持されることが好ましく、おおよそ1年間保持されることがより好ましい。
まず、接着層の両面にセパレータが設けられた接着シートを25mm×12.5mmのサイズに裁断し、一方のセパレータを剥離し、露出させた接着層上に、一方の被着体である鉄板(溶融亜鉛鍍金鋼板、長さ100mm×幅25mm×厚み1.5mm)の先端部分に貼り付ける。次に、鉄板に貼りつけた接着シートから他方のセパレータを剥離し、露出させた上記接着層上に他方の被着体である鉄板(長さ100mm×幅25mm×厚み1.5mm)の先端部分を貼り付ける。
次いで、一方の被着体を仮固定し、200gの荷重をかけて温度23℃で湿度50%RH環境下(以下、23℃50%RH環境下と表記する場合がある。)で、ずり等なく保持できるかを確認する。ずり等なく保持が可能である時間を、上記接着層が保持特性を発揮することが可能な時間とすることができる。測定には、例えば、テスター産業社製のBE−501等の保持力試験機を用いることができる。
例えば、第1建材および第2建材の被着面(接着面)が鉛直面または法線面である場合、具体的には、第1建材および第2建材が、建築構造物の壁および上記壁に貼り合せる壁装材である場合は、上記接着層の粘着性および保持特性は、上記壁装材の重量にもよるが、高いことが好ましい。建材として、例えば、タイルやパネル等の重量の重い壁装材を用いる場合、接着層が硬化するまでの間に、上記壁装材が自重により剥がれる場合があるためである。
接着層が鉛直面または法線面に対して上述の粘着力および保持特性を示すことで、重量の重い壁装材を用いる場合であっても、吸湿により硬化反応が完了するまでの間、貼り合せ状態を保持することができ、鉛直方向または法線方向から受けるせん断応力により落下するのを防ぐことができるからである。
被着面が水平面である場合における、建材に対する接着層の粘着力としては、上述した建材に対する粘着力の範囲内で、化粧床材等の種類に応じて適宜調整が可能であるが、中でも、0.05N/インチ以上、20N/インチ以下であることが好ましく、特に、0.1N/インチ以上、20N/インチ以下であることが好ましい。また、その粘着力が、少なくとも後述する貼合工程で第1建材および第2建材を貼り合せる作業を行っている間、保持されることが好ましく、中でもおおよそ1年間保持されることが好ましい。
上記接着層の粘性は、組成や配合比等に応じて適宜調整が可能である。例えば、上記接着層がエポキシ樹脂およびケチミン化合物を含む場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量やケチミン化合物のアミン価を調整することで、粘性を調整することができる。
上記接着層の厚みは、部材(建材)の種類等に応じて適宜設定することができ、厚みが大きいほど、粘着性を高くすることができる。上記接着層の厚みとしては、例えば、20μm〜1mmの範囲内とすることができる。
また、部材の被着面が粗面である場合は、上記接着層の厚みは、大きい方が好ましく、具体的には、上記被着面の凹凸の高低差以上の厚みであることが好ましい。上記接着層が上記被着面の凹凸の高低差以上の厚みを有さない場合は、上記接着層が凹凸に追従できず、上記接着層と被着面との接着面積が少なくなるため、所望の期間、部材(建材)を保持することができなくなるからである。
上記セパレータは、接着層の表面に剥離可能に設けられる。上記セパレータは、接着層から剥離可能であれば特に限定されないが、上記接着層を保護することが可能な程度の強度を有することが好ましい。このようなセパレータとしては、例えば、離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、セパ紙、剥離フィルム、剥離紙等の従来公知のセパレータを用いることができる。具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン、フッ素フィルムなどが挙げられる。
また、セパレータは、上記に例示した単層で離型性を有していてもよいが、上質紙、コート紙、含浸紙、プラスチックフィルムなどの離型紙用基材の片面または両面に離型層を形成した積層体を用いてもよい。離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、長鎖アルキル樹脂などがある。これらの樹脂は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用できる。
セパレータが防湿性を有するとは、温度40℃湿度90%RH下におけるセパレータの水蒸気透過度が1g/m2/day以下であればよく、中でも0.1g/m2/day以下であることが好ましい。上記水蒸気透過度は、JIS K7129に準拠して測定することができる。
防湿性を有するセパレータとしては、例えば、シリコーン等の剥離処理がされたアルミ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、アルミ箔、厚みが0.1mm以上のポリエチレンフィルム、防湿フィラーを含むフィルム等が挙げられる。
本工程が、後述する接着シート貼合工程を含み、使用する接着シートが防湿シートにより梱包されている場合、セパレータは防湿性を有していてもよく有していなくてもよい。
遮光性を有するセパレータとしては、例えば、アルミ箔セパレータ、アルミ蒸着フィルムや紙セパレータ、着色セパレータ、紫外線吸収剤入りのフィルムセパレータ等が挙げられる。
接着シートは、例えば、湿気硬化樹脂組成物を必要に応じて溶剤に分散させ、セパレータの片面に塗布し乾燥して接着層を形成することで得られる。
湿気硬化樹脂組成物の塗布方法は特に限定されず、公知の印刷法やコーティング法を用いることができる。また、塗布層の乾燥条件は、塗布層中に含まれている溶剤を十分揮発させることができる程度の条件で行うことが好ましく、組成に応じて適宜設定することができる。
第1建材は、本態様の製造方法により得られる建築物品を構成する建材であり、その種類に応じて適宜選択される。上記建材は被着面を有すれば、その形態は特に限定されない。
有機材料で形成された有機建材としては、例えば、木質板、樹脂板等が挙げられる。木質板としては、例えば杉、檜、松、ラワン、チーク等の樹木からなる木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。
また、無機材料で形成された無機建材としては、例えば、スレート板やケイカル板、石膏ボード、レンガ、コンクリート、セメントモルタル、金属材料、セラミック材料等が用いられる。
本工程では、第1建材の表面に接着シートが予め貼合されている既製の接着シート付建材を準備してもよい。既製の接着シート付建材を用いることで、建築物品の製造に際し、接着シート付建材を別途作製する必要がなく、施工工程の時間短縮を図ることができるからである。
上記の場合、上記接着シート付建材は、例えば、防湿シートにより梱包されていてもよい。
接着シート貼合工程は、施工において、作業者が第1建材の表面に接着シートを貼り合せる工程であり、湿気存在下で実施してもよく、湿気非存在下で実施してもよいが、施工の簡便さから、通常は湿気存在下で実施される。
上記接着シートは、防湿シートにより梱包されていてもよい。例えば、接着層の両面にセパレータが配置された枚葉の接着シートが、防湿シートにより梱包されていてもよく、上記接着シートロールが防湿シートにより梱包されていてもよい。枚葉の上記接着シートが梱包される場合、通常、上記接着シートは両面にセパレータが配置されている。
上記接着シートが防湿シートにより梱包されている場合、梱包内部は湿気が存在していなければよい。具体的には、梱包内部がドライエアや乾燥窒素で充填されていてもよく、梱包内部が、内部真空度が5Pa以下の真空状態であってもよい。
接着層の片面にセパレータを有する接着シートを用いる場合であれば、例えば、接着シートロールから必要量を巻き出して、接着層側を第1建材の表面に配置した後切断して貼り合わせることができる。
また、接着層の両面にセパレータが配置された接着シートを用いる場合であれば、例えば、所望のサイズに切断した枚葉の上記接着シートの一方のセパレータを剥離し、露出した接着層の表面に第1建材の表面を貼り合せることができる。
さらに、接着シートが防湿シートにより梱包されている場合は、例えば、防湿シートを開封して接着シートを取出した後、一方のセパレータを剥離して、露出した接着層の表面に第1建材の表面を貼り合せることができる。
このとき第1建材は、固定建材であることが好ましく、例えば、建築構造物を構成する躯体(壁や床)であることが好ましい。
本工程は、湿気存在下にて、上記接着シート付部材の上記接着層の他方の面に第2部材を貼り合せる工程である。
本工程において、接着層が吸湿硬化することで、硬化前よりも強接着力を発現することができ、これにより、第1建材および第2建材を強固に貼り合せることができる。
第1建材および第2建材の組合せとしては、例えば、一方を表装材とし、他方を建築構造物の躯体とすることができる。具体的には、上記第1建材および第2建材のうち一方が壁装材であり、他方が建築構造物の壁であってもよく、一方が化粧床材であり、他方が建築構造物の床であってもよい。
また、上記第1建材および第2建材の一方を建築構造物の躯体とし、他方を別の建築構造物の躯体とすることができる。2種類の躯体間に配置された接着層が吸湿硬化することで、硬化接着層を溶接やボルト固定の代替とすることができる。
上記の貼り合せ方法は、例えば、第1建材である建築構造物の床と第2建材である化粧床材とを貼り合せる場合等、第1建材と第2建材との貼り合せ面が水平面となる場合に好適である。
先に説明した図4(c)では、第2建材2Bの被着面上で接着シート付建材10Bを水平方向Dへスライド移動させて貼り合せる施工例を示している。
上記硬化接着層は、第1建材と第2建材とを強固に貼り合せることができ、その状態を長時間保持することが可能な接着力を有することが好ましく、中でも、せん断引張強度が高いことが好ましい。施工後に経時でせん断応力が掛る場合であっても、第1建材と第2建材との固定を長期間保持することができ、建材の剥がれを抑制することができるからである。上記硬化接着層のせん断引張強度は、1MPa以上であることが好ましく、中でも10MPa以上であることが好ましい。
上記硬化接着層の粘着性は、接着層に含まれる組成の配合比や硬化の程度を調整することにより調整が可能である。
本態様の製造方法においては、上記準備工程と上記貼合工程との間に、上記接着シート付部材の上記接着層を湿気と接触させる前処理工程を有していてもよい。予め接着シート付建材の接着層に吸湿させて硬化反応を進行させておくことで、貼合工程において第1建材および第2建材を貼り合せてから接着層の硬化反応が完了するまでの養生時間を短縮することができ、建材同士を短時間で強固に貼り合せることが可能となるからである。
本工程は、特に、貼合工程を行う環境の湿度が低い場合や、第1建材および第2建材を短時間で強固に接着させたい場合に行うことが好ましい。
セパレータを剥離せずに接着シート付き建材を湿気環境下に曝露する場合は、上記セパレータは防湿性を有さないことが好ましく、中でも、水蒸気透過度が高いことが好ましい。セパレータが配置された状態でも接着層が十分な量の湿気と接触することが可能となり、また、上記接着層の表面が露出しないため、表面汚染を抑制することができる。
物品の製造方法は、上述した第1実施形態および第2実施形態のいずれかを、インフラ構造物の製造方法として用いることができ、中でも第2実施形態を好適に用いることができる。
したがって、インフラ構造物の製造方法は、すなわち、「インフラ構造物の補修または補強方法」とすることができる。
しかし、液状接着剤を使用して補修・補強用シートを貼り合わせる場合は、計量作業や塗工作業中の飛散により、接着剤が体に付着するおそれがあり、作業負担が大きく、簡便な施工が困難であるという問題がある。また、シート状の熱硬化性接着剤や光硬化性接着剤を有する補修・補強用シートを使用する場合は、貼合後に熱や紫外線を当てて接着剤を硬化させる作業を要する。このため、作業者は、加熱装置や紫外線照射装置を持ち歩く必要があり、また、インフラ構造物の設置場所によっては、上記作業を行うことが困難であるため、補修または補強作業が制限されてしまうという問題がある。
インフラ構造物の製造方法の第1態様は、上述の「A.実施形態」の項で説明した第1実施形態の製造方法を用いる方法であり、第1部材および第2部材が後述するインフラ用部材であり、得られる物品が補修または補強後のインフラ構造物であることを除いて、上述の「1.建築物品の製造方法」の項で説明した内容と同様とすることができる。
なお、上記項中の、「建築物品」は「(補修または補強後の)インフラ構造物」に、「建築物品の製造方法」または「建材の施工方法」は「インフラ構造物の製造方法」または「インフラ構造物の補修または補強方法」に、「部材」、「建材」は「インフラ用部材」に、それぞれ置き替えることができる。
また、上記接着シートの接着層は、後述する補修・補強部材を含浸していてもよい。
インフラ構造物の補修または補強に際し、インフラ用部材である第1部材および第2部材のうち一方は、通常、対象インフラ構造物であり、上記対象インフラ構造物は固定されていてもよい。
異常検知部材としては、貼り付けるインフラ用部材の種類や材質に応じて従来公知の部材を使用することができ、例えばコンクリート製のインフラ用部材であれば、導電性線材、光ファイバー、繊維含浸プラスチックフィルム、市販のひび割れ検知センサ(東京測器研究所社製 KZCA−A)等が挙げられる。
インフラ構造物の製造方法の第2態様は、上述の「A.実施形態」の項で説明した第2実施形態の製造方法を用いる方法であり、第1部材がインフラ用部材であり、得られる物品が補修または補強後のインフラ構造物である。
貼合工程は、インフラ用部材の一方の面に、上記接着層を有する接着シートの上記接着層の一方の面を貼り合わせる工程である。
上記接着層は顔料を含んでいてもよい。補修等した箇所がどこであるかを遠くからでも視認しやすくすることができ、また、顔料を含むことで、接着シートを貼付する下地を保護することができるからである。
セパレータは防湿性を有していてもよく、有さなくてもよい。セパレータが防湿性を有さない場合は、後述する硬化工程において、接着層の他方の面にセパレータを有した状態で、接着層を吸湿硬化させることができる。
硬化工程は、湿気存在下にて上記接着層を硬化させて硬化接着層とする工程である。
上記接着層の他方の面上にセパレータを有する場合は、セパレータの防湿性等に応じて、セパレータを剥離して上記接着層を露出させて吸湿硬化させてもよく、セパレータを剥離せずに上記接着層を吸湿硬化させてもよい。
硬化条件や硬化接着層については、上述の「1.建築物品の製造方法」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
物品の製造方法は、上述した実施形態の中でも第1実施形態を、自動車の製造方法として好適に用いることができる。
一方、熱硬化性接着剤は自動車用部材同士を強固に接着することができるが、接着させる自動車用部材の双方の材質や膨張率が異なる場合、接着剤の硬化の際に加わる熱により、反りや浮きが生じてしまうため、材質の組合せが制限されてしまう。特に、自動車の製造においては、金属製の自動車車体に、プラスチック製の自動車部品が取り付けられることが多く、この場合、上記の問題が顕著に生じやすくなる。
また、両面テープは、熱処理が不要なため、材質や膨張率が異なる自動車用部材同士を容易に貼り付けることが可能であるが、長期耐久性に劣る。
なお、上記項中の、「建築物品」は「自動車」に、「建築物品の製造方法」または「建材の施工方法」は「自動車の製造方法」または「自動車用部材の取付方法」に、「部材」、「建材」は「自動車用部材」に、それぞれ置き替えることができる。
ここで自動車用部材とは、自動車車体および上記自動車車体に取り付けられる自動車部品をいい、内装材、外装材の何れであってもよい。
自動車部品は、一般に自動車に用いられる部品であれば特に限定されず、例えば、エンブレムなどの装飾部材、ピラー等の構造部材等が挙げられる。
第1部材および第2部材の材質の組合せとしては、例えば、ABSやCFRPなどの樹脂と金属類との組合せ、アルミとチタンとの組合せ等の異種金属の組合せ等が挙げられる。
次に、本発明の接着シートについて説明する。本発明の接着シートは、吸湿により硬化する接着層と、上記接着層の少なくとも片面に設けられたセパレータと、を有し、上記セパレータが防湿性を有する第1態様と、防湿シートにより梱包されている第2態様とに大別される。
以下、本発明の接着シートについて、態様ごとに説明する。
本発明の接着シートの第1態様(以下、この項において本態様と称する場合がある。)は、吸湿により硬化する接着層と、上記接着層の少なくとも片面に設けられたセパレータと、を有し、上記セパレータが防湿性を有することを特徴とする。
本態様の接着シートは、接着層の両面に防湿性を有するセパレータが設けられていることが好ましい。
本発明の接着シートの第2態様(以下、この項において本態様と称する場合がある。)は、吸湿により硬化する接着層と、上記接着層の少なくとも片面に設けられたセパレータと、を有し、防湿シートにより梱包されていることを特徴とする。
本態様の接着シートは、接着層の両面にセパレータが設けられていることが好ましい。
防湿シートは、温度40℃湿度90%RHにおける水蒸気透過度が0.1g/m2/day以下であることが好ましい。上記水蒸気透過度は、JIS K7129に準拠して測定された値である。
このような防湿シートとしては、例えば、金属箔、樹脂基材の片面に金属もしくは金属酸化物の蒸着膜が形成されたシート、樹脂基材層の片面に無機酸化物層が形成されたシート等の、従来公知のバリアフィルムを用いることができる。
例えば、本態様の接着シートが枚葉であれば、防湿シートの袋体の中に枚葉の接着シートが真空封入された梱包形態、防湿シートの袋体の中に枚葉の接着シートが封入され、袋体内がドライエアや乾燥窒素で充填された梱包形態等とすることができる。また、本態様の接着シートがロール状に巻回された接着シートロールであれば、防湿シートで上記接着シートロールが覆われており、内部が真空脱気された梱包形態や上記内部がドライエアや乾燥窒素で充填された梱包形態等とすることができる。梱包内には、公知の乾燥剤が入っていてもよい。
本発明の接着シートは、上述の「I.物品の製造方法」の項で説明した物品の製造方法に好適に用いることができるが、上記の用途に限定されず、その他1種以上の部材の貼り合せが必要となるあらゆる用途に用いることができる。
本発明の物品は、第1部材と、上記第1部材上に配置された硬化接着層と、上記硬化接着層上に配置された第2部材と、を有し、上記硬化接着層が、吸湿により硬化したものであることを特徴とする。
本発明の物品は、例えば、既に説明した図1(c)、図3(b)、および図4(c)で例示した物品30、30A、30Bが挙げられる。
1.準備工程
セパレータとして片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム(膜厚:38μm、東セロ株式会社製、商品名:SP−PET−03)を用い、剥離処理面上に、湿気硬化樹脂組成物(エポキシ樹脂組成物)および溶媒を含む下記の接着層用組成物を塗工後の厚さが200μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて接着層を形成し、接着シートを得た。
(エポキシ樹脂組成物)
・液状エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:190g/eq.、分子量:380、三菱化学株式会社製、商品名:jER828) … 120質量部
・固形エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、分子量:5000、三菱化学株式会社製、商品名:jER1009) … 80質量部
・ケチミン系硬化剤(脂肪族アミン型ケチミン、粘度:20mPa.s/25℃、活性水素当量:92、株式会社ADEKA製、商品名:アデカハードナーEH235R−2) … 63質量部
・極性基付与メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体(相溶性ポリマー成分、アルケマ社製、商品名:M22N、) … 30質量部
・シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン社製、商品名:KBM−403) … 10質量部
・酢酸エチル(DICグラフィックス社製) … 150質量部
実施例では、上記接着シートを用いることで、MDFおよび鉄板の貼り合せる施工を簡便に行うことを確認した。
主剤として、シリコーンエラストマー(信越化学社製 商品名:KE−66)と硬化剤(CAT−RC、信越化学社製)とを、重量比で主剤:硬化剤=100:2となる割合で混合し、1液の液状型湿気硬化接着剤(以下、単に1液硬化型接着剤と称する場合がある。)を調製した。
実施例で使用したMDFの片面上に1液硬化型接着剤を塗布し、その塗布面に実施例で使用した鉄板を貼り合せて複合建材を得た。
比較例1では、1液硬化型接着剤の混合調製が煩雑であり、また、1液硬化型接着剤を塗布する際に、MDFからの液のはみだしが確認され、施工が煩雑であった。
実施例で使用した鉄板上に、アクリル系の両面テープ(スリーエム社製 商品名:Y−4180、アクリル系粘着剤含有)を貼り合せ、上記両面テープの片面のセパレータを剥離して、実施例で使用したMDFを貼り合わせて複合建材を得た。
比較例2では両面テープを介してそれぞれの建材を貼り合わせるだけのため、簡易に施工は可能であった。
1.せん断引張強度
以下の方法で評価サンプルを作製し、各評価サンプルについてせん断引張強度を測定した。評価サンプルの作製に使用したMDFは全て実施例と同様とした。
せん断引張強度は、JIS K6850に準拠する方法で、テンシロン引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、RTF1350)を用い、引張速度10mm/minで測定した。測定方法の詳細は、上述の「I.物品の製造方法」の項で説明したとおりである。
実施例で作製した接着シート付建材を用い、MDF上の接着シートのセパレータを剥離して露出した接着層を、接着面積が12.5mm×25mmとなるように、別途準備したMDFに手指にて貼り合わせた。その後、23℃50%RH環境下にて24時間養生を行い、評価サンプル1を得た。評価サンプル1のせん断引張強度は7.5MPaであった。
比較例1で用いた接着剤を液状のまま、MDFの表面に塗布し、同じく接着面積12.5mm×25mmとなるように接着剤層上に別のMDFを貼り合わせた。上記接着剤が液状のため固定ができないため、カプトンテープにて剥がれないように固定し、23℃50%RH環境下にて24時間養生を行い、評価サンプル2を得た。評価サンプル2のせん断引張強度は1.2MPaであった。
MDF上に比較例2で用いたアクリル系の両面テープを貼り合せ、上記両面テープの片面のセパレータを剥離して、上記両面テープ上に接着面積が12.5mm×25mmとなるように別のMDFを貼り合わせた。その後、23℃50%RH環境下にて24時間養生を行い、評価サンプル3を得た。評価サンプル3のせん断引張強度は0.2MPaであった。
一方、評価実施例は、評価比較例1および2と比較して高いせん断引張強度を示すことができた。
2、2A、2B … 第2部材
3 … 硬化接着層
10、10A、10B … 接着シート付部材
20、20A … 接着シート
21、21A … セパレータ
22 … 吸湿により硬化する接着層
30、30A、30B … 物品
31 … 防湿シート
Claims (8)
- エポキシ樹脂およびケチミン化合物を含み、吸湿により硬化する接着層を用いて第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、
前記第1部材の表面に前記接着層を有する接着シートの前記接着層の一方の面が貼り合わされている接着シート付部材を準備する準備工程と、
湿気存在下にて、前記接着シート付部材の前記接着層の他方の面に前記第2部材を貼り合せる貼合工程と、
を有し、
前記接着層が、前記エポキシ樹脂および前記ケチミン化合物に対して相溶性を有する相溶性ポリマー成分を含み、
前記相溶性ポリマー成分が、重量平均分子量が90000以上400000以下であり、ガラス転移温度が80℃以上である(メタ)アクリル酸エステルポリマーである物品の製造方法。 - 前記(メタ)アクリル酸エステルポリマーが、極性基を有する、請求項1に記載の物品の製造方法。
- 前記接着シートは、前記接着層を被覆するセパレータを有する請求項1または請求項2に記載の物品の製造方法。
- 前記準備工程が、前記接着層と、前記接着層の少なくとも片面に設けられた、温度40℃湿度90%RH下における水蒸気透過度が1g/m2/day以下であるセパレータとを有する接着シートの前記接着層の一方の面が、前記第1部材の表面に貼り合わされている接着シート付部材を準備する工程である請求項3に記載の物品の製造方法。
- 前記準備工程が、前記接着層と、前記接着層の少なくとも片面に設けられたセパレータとを有し、温度40℃湿度90%RHにおける水蒸気透過度が0.1g/m2/day以下である防湿シートにより梱包されている接着シートを、前記防湿シートを開封して取り
出し、前記接着シートの前記接着層の一方の面が、前記第1部材の表面に貼り合わされている接着シート付部材を準備する工程である請求項3または請求項4に記載の物品の製造方法。 - 前記接着層の粘着力が0.05N/インチ以上、20N/インチ以下の範囲内である請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の物品の製造方法。
- 前記準備工程と前記貼合工程との間に、前記接着シート付部材の前記接着層を湿気と接触させる前処理工程を有する請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の物品の製造方法。
- 前記物品が建築物品、インフラ構造物、または自動車である請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の物品の製造方法。
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