JP4090543B2 - 1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法 - Google Patents
1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4090543B2 JP4090543B2 JP29672297A JP29672297A JP4090543B2 JP 4090543 B2 JP4090543 B2 JP 4090543B2 JP 29672297 A JP29672297 A JP 29672297A JP 29672297 A JP29672297 A JP 29672297A JP 4090543 B2 JP4090543 B2 JP 4090543B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- epoxy resin
- resin composition
- fiber sheet
- component epoxy
- ketimine compound
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Working Measures On Existing Buildindgs (AREA)
- Lining Or Joining Of Plastics Or The Like (AREA)
- Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
橋桁、柱等の耐震補強工事で、特に入り組んだ箇所の補強工事や施工期間が限られる場合は、鉄やコンクリート等の旧来の材料で補強する方法に比べて、重機が不必要なことから、ここ数年、有力な方法として、熱硬化性樹脂の代表であるエポキシ樹脂と炭素繊維(CF)とからなる複合材料である炭素繊維強化エポキシ樹脂(CFRP)を用いた鉄筋コンクリート構造(RC構造)の補強方法が普及してきている。この補強方法は、炭素繊維シート工法(CF工法)ともいわれ、炭素繊維シートにエポキシ樹脂を含浸させ、コンクリート表面に接着させることにより、コンクリートの曲げ補強、剪断補強、靱性補強をする工法である。炭素繊維シート工法で使用する含浸用樹脂(結合材ともいう)としては、従来、2液型エポキシ樹脂系が主に用いられており、1液型エポキシ樹脂系は用いられていない。
しかし、2液型エポキシ樹脂系では、樹脂の計量や混合を現場で行わざるをえず、作業性に劣り、また、混合比を最適化するためにある程度の材料の無駄が出た。得られる組成物の品質は一定しているとは限らないという品質保証に関する問題もあった。
また、樹脂のポットライフを意識して、少量ずつ混合しなければならず、混合後には汚れた容器の洗浄や空き缶ゴミの発生など作業上の煩わしさを多く伴い、また、無駄になった材料の廃棄やゴミの発生による自然環境への影響も無視できなかった。
また、一般にポットライフとの兼ね合いから、指触乾燥時間が長くなりがちであり、工程間の待機時間が長く、作業効率を低くしていた。5℃以下では硬化速度が極めて遅いことも問題であった。
さらに、2液型エポキシ樹脂系に含まれるアミン硬化剤の毒性、皮膚刺激性も作業環境の観点から問題とされている。
低温での硬化速度の改良に関しては、エポキシ樹脂以外のラジカル重合系のビニルエステル・スチレン系やアクリルポリマー・MMA(メチルメタクリレート)系等の樹脂を用いる試みがあり、一定の成果は収めている。しかし、臭気等の問題に関しては2液型エポキシ樹脂系よりも劣っている。
かかる繊維シートと含浸用樹脂を用いた補強工法では、含浸用樹脂として2液型エポキシ樹脂以外は殆ど利用されず、2液型エポキシ樹脂の特性が必要不可欠と誤解され、それ以外の他の材料が検討されることは殆どなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の2液エポキシ樹脂系複合材料と同等の補強効果を持ち、さらに、作業性が良好で、作業環境、資源消費の点で優れる1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、コンクリート表面のレイタンス層を取り除き、前記コンクリート表面にプライマーを塗布して乾燥させ、前記プライマー塗布面に、下記式(2)で表されるケトンと下記式(3)で表されるポリアミンとを反応させて得られるケチミン化合物と、エポキシ樹脂とを含有する湿気硬化型1液エポキシ樹脂組成物を塗布し、前記1液エポキシ樹脂組成物の上に繊維シートを貼りつけ、更に、前記繊維シートの上に、下記式(2)で表されるケトンと下記式(3)で表されるポリアミンとを反応させて得られるケチミン化合物と、エポキシ樹脂とを含有する湿気硬化型1液エポキシ樹脂組成物を塗布し、前記繊維シートをしごき、前記1液エポキシ樹脂組成物を前記繊維シートに含浸させるとともに前記1液エポキシ樹脂組成物中から脱泡を行い、前記繊維シートを前記1液エポキシ樹脂組成物を介してコンクリート表面に接着させる、1液エポキシ樹脂と繊維シートからなる1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法を提供する。
【化2】
R 4 :炭素数1〜6のアルキル基
R 5 :CH 3 またはC 2 H 5
R 6 :H、CH 3 またはC 2 H 5
R 7 :有機基(O,S,Nを有する基も含む)
k:2以上の整数
【0005】
前記ケチミン化合物とエポキシ樹脂とを含有する湿気硬化型1液エポキシ樹脂組成物のチクソインデックスが3以上であるのが好ましい。
【0006】
前記ケチミン化合物が、メチルイソプロピルケトンとノルボルナン骨格のジアミンを反応させて得られるケチミン化合物であるのが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明の1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法(以下、本発明の補強方法と記す)は、ケチミン化合物を湿気硬化剤として含有する1液エポキシ樹脂組成物を含浸用樹脂(結合材)として繊維シートに含浸させ、RC構造の表面に繊維シートを接着定着させ、RC構造の曲げ補強、剪断補強、靱性補強等の補強効果を得るものである。1液エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性と硬化性の両立を図ることが困難で、実用化には遠いと思われがちだが、本発明の補強方法では、特にアラミド繊維のFRPの場合、作業性と補強性の両立に寄与する。
【0008】
本発明の補強方法は、好ましくは以下の順序で行われる。
まず、RC構造のコンクリートの表面から、高水圧等でゴミを落とす。次に、コンクリート表面のレイタンス層をサンダー、コンクリート鉋等で取り除き、プライマー(例えば、2液型のエポキシ系溶剤希釈型プライマー、または、エマルジョン系プライマー)を塗布する。プライマーが指触乾燥した後、ケチミン化合物とエポキシ樹脂とを含有する湿気硬化型1液エポキシ樹脂組成物を乾燥したプライマー表面にローラー刷毛で塗布する。
ついで、繊維シートを1枚貼りつけ、シートの上から同様の1液エポキシ樹脂組成物を含浸用樹脂としてローラー刷毛で塗布し、さらに、ゴムへらにてシートを十分にしごき、1液エポキシ樹脂組成物をシートに含浸させるとともに組成物中から脱泡を行う。
含浸用樹脂としては、繊維シートへの含浸性が良好であることが望ましい。また、垂直面に塗布する場合が多いので、ダレが起こらないように流動性が低いことが望ましい。
1液エポキシ樹脂組成物の塗布量は、繊維シートの接着に十分な量であればよく特に限定はないが、例えば、目付け量として200〜300〔g/m2 〕塗布すれば、繊維シートとコンクリートとを十分に接着することができ、100%コンクリート破壊となる接着力を得ることができる。
補強効果を高めるために繊維シートを複数枚積層する場合は、1液エポキシ樹脂組成物を繊維シートに含浸させた後、シート上に次の繊維シートを1枚貼り付け、シート上に該組成物をローラー刷毛で塗布しゴムへらにて含浸、脱泡を行う工程を繰り返す。
繊維シートを必要枚数積層接着した後、養生し表面を硬化させる。ここで、霧吹き等により水分を供給すれば、硬化時間の短縮がはかれ、作業待機時間を短縮することが可能である。一般には、数日から数週間で内部まで硬化する。表面が硬化した後、必要に応じて塗装や耐火被覆の設置をしてもよい。
【0009】
本発明の補強方法に含浸用樹脂として用いられる湿気硬化型1液エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、ケチミン化合物とを含有する組成物である。
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、特に限定はなく、後述するケチミン化合物から遊離されるアミンの活性水素と反応可能なグリシジル基を持つエポキシ樹脂であれば、いかなるものであっても使用可能である。
例えば、ビスフェノールAのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂およびその誘導体、グリセリンのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ポリアルキレンオキサイドのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラックのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ダイマー酸のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうちビスフェノールAのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、汎用のエポキシ樹脂として好適に用いられる。
【0010】
本発明に用いられるケチミン化合物は、下記式(1)で表される。
【化1】
式中、R1 は、メチレン基、イソブチレン基、シクロヘキセン基等の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは脂環式炭化水素基、フェニレン基、または、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの残鎖等のポリオキシアルキレンポリアミンの残鎖を表す。これらの中でも1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの残鎖が好ましい。R1 の炭素数が上記範囲であると、硬化性と貯蔵安定性のバランスが取れるので好ましい。
R2 、R3 は、炭素数1〜6のアルキル側鎖を有するプロピル基やブチル基等の炭素数1〜11のアルキル基、または、フェニル基を表す。これらの中でもイソプロピル基、t−ブチル基が好ましい。R2 、R3 の炭素数が上記範囲であると、硬化性、貯蔵安定性のバランスが取れるので好ましい。R2 、R3 は同一であっても異なっていてもよい。複数のR2 、複数のR3 がある場合は、同じR2 、R3 で表される基がそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
nは2以上の整数を表す。
【0011】
このようなケチミンは、分子内の窒素の塩基性が弱く、エポキシ樹脂中のエポキシ基とは反応しない。しかし、水分により容易にアミンを遊離し、このアミンの活性水素がエポキシ基と重付加反応し、エポキシ樹脂を硬化させる。このため、上述のケチミンとエポキシ樹脂を含有する組成物では、水分が混入しないかぎり長期間、貯蔵安定で、一端、開放され空気中の水分と接触すると速やかに硬化する。また、アミンそのものが含有されてはいないため、このようなケチミン化合物を含有する1液エポキシ樹脂組成物は、皮膚刺激性等の人体への悪影響を及ぼすことがない。また、粘度調整や反応性の調節のために溶媒を適当に加えてもよい。
【0012】
上述のケチミンの製造法としては、分子内に1級アミンを有する化合物と、分子内にカルボニル基を有する化合物とを、加熱還流し、脱水縮合反応させる方法を示すことができる。
分子内に1級アミンを有する化合物としては、例えば、エチレンやプロピレンを単重合させたポリアルキレンのポリアミン;α位がメチレンであるアミノ基を分子内に少なくとも2個以上有するポリアミン等が挙げられる。
分子内にカルボニル基を有する化合物として、例えば、メチルt−ブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。
これら、ケチミンの原料として例示したアミン系とケトン系の化合物は、それぞれ、単独でも2種以上を併用してもよい。また、これらの化合物より製造されるケチミンは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0013】
このようなケチミンとして、より好ましくは、α位に置換基をもつ立体障害の大きいケトンと、α位がメチレンであるアミノ基を分子内に少なくとも2個以上有する立体障害の少ないポリアミンを反応させて得られるケチミン化合物が挙げられる。
特に上記ケトンが下記式(2)で表される化合物で、かつ上記ポリアミンが下記式(3)で表される化合物であるのがさらに好ましい。
【化2】
R4 :炭素数1〜6のアルキル基
R5 :CH3 またはC2 H5
R6 :H、CH3 またはC2 H5
【化3】
R7 :有機基(O,S,Nを有する基も含む)
k:2以上の整数
【0014】
このような、α位に置換基を持つケトンとα位がメチレンであるアミノ基を2個以上有するポリアミンとを反応させて得られるケチミン化合物は、ケチミン基の2重結合の近くに嵩高い基を有するので、硬化速度と貯蔵安定性という相反する特性をバランスよく満たすので、1液エポキシ樹脂組成物に用いられるケチミンとしてさらに好ましい。
このようなケチミン化合物の製造方法は、特願平9−8714号公報に詳細に記載されている。
【0015】
1液エポキシ樹脂組成物に含まれるケチミン化合物の含有量は、前記エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基1個に対する、ケチミン化合物が加水分解して遊離する1級アミン中の活性水素の当量として、0.5〜3当量、好ましくは1〜1.5当量であるのがよい。0.5当量未満であると、得られる湿気硬化型1液エポキシ樹脂組成物の硬化性や構造強度が十分ではなくなり、3当量超では、未反応のアミンがブリードしてアミンフラッシュを起こし、また、コスト的に不経済であり、好ましくない。
【0016】
用いる1液エポキシ樹脂組成物は、含浸用樹脂として繊維シートへの含浸性が良好であることが望ましい。また、傾斜面に塗布した際にダレが起こらないよう流動性が低いことが望ましい。含浸性、流動性の両方の要請を満たすために、1液エポキシ樹脂組成物のチクソインデックスが3以上であるのが好ましく、特に3〜10であるのがより好ましい。施工時、チクソインデックスが3未満であると、1液エポキシ樹脂組成物がダレてしまい、十分な接着性が得られず好ましくない。
チクソインデックスの値は、炭酸カルシウム、有機ベントナイト、シリカ等の充填剤、および/または、アマイドワックス等のチクソ性付与剤を配合することにより調節することが可能である。充填剤、チクソ性付与剤の配合量は、必要とするチクソインデックスの値に応じて適宜決めることができる。
【0017】
1液エポキシ樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記必須の成分に加え、其の他の添加剤、例えば、酸化チタン等の老化防止剤;ブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤;カーボン、アゾ顔料等の着色剤;ジオクチルフタレート等の可塑剤;ロジン系、テルペン系樹脂、テルペンフェノール、フェノール樹脂等の接着付与剤;クロロアルキルホスフェート等の難燃剤を配合してもよい。
【0018】
1液エポキシ樹脂組成物の製造法としては、特に限定はなく、好ましくは上記各成分を減圧下に混合ミキサー等の撹拌装置を用いて十分に混練し、均一に分散させて組成物とするのがよい。
【0019】
上記構成である1液エポキシ樹脂組成物は、2液型エポキシ樹脂よりも、表面硬化性に優れる。特に、本発明の補強方法に用いると、組成物を塗布する際の塗布面積が広いので、特に表面硬化性に優れる。従って、本発明の補強方法は、指触乾燥時間が短縮され、工程間の待機時間が短くなり、作業効率が向上する。
【0020】
本発明に用いられる繊維シートとしては、弾性率、強度に優れた、高剛性タイプ、高強度タイプ等のアラミド繊維(芳香族からなるポリアミド繊維)や、炭素繊維等の高性能強化繊維を編み組みした繊維シートを用いることができる。これらの中でも、アラミド繊維は、通常の有機繊維よりもはるかに大きい引張り強度と優れた弾力性、耐熱性をもち、さらに含浸用樹脂の含浸が良好であるので好ましい。
アラミド繊維を用いた繊維シートでは、3000〜12000本のアラミド繊維のフィラメントを束ねて1束とし、1〜2回/m程度の撚りをかけ扱い易くしたものや、撚りをかけたアラミド繊維をブレード構造で編み組みしたものを、ナイロン等の横糸により並列に配置させた構造であるのが好ましい。編み目ができて立体的な構造をとることにより、繊維シート表面に隙間ができ、含浸用樹脂がより含浸しやすくなるからである。
また、アラミド繊維は、例えば炭素繊維と比較してより柔軟である。剛直な強化繊維を用いた繊維シートにエポキシ樹脂を含浸させて複合材料としたものでは、繊維の継ぎ目に応力が集中しがちで繊維シートが破断しやすいが、撚りをかけたりブレード構造としたアラミド繊維をシートとし、1液エポキシ樹脂組成物を含浸させ硬化させて得られる複合材料では、複合材料の硬度が比較的低く応力の集中が起こらないので、複合材料は破断しにくく好ましい。
【0021】
本発明の補強方法は、上記構成を持つので、2液型のエポキシ樹脂組成物を含浸用樹脂として用いた従来法に比べ、同等の補強効果を示し、さらに、以下の特性を持つ。
本発明の補強方法では、1液型のエポキシ樹脂組成物を用いるので、組成物の混合作業が必要なく計量、容器の洗浄といった作業の手間がいらず、作業性に優れる。材料の無駄がなく、空き缶等のゴミの発生が少ないため、自然環境に優しい。また、材料の無駄が出ないことから、資源消費の観点で優れている。
現場での計量、混合が不要であることは、用いる1液エポキシ樹脂組成物の品質が一定しており品質が保証されることを意味し、従って、かかる組成物を用いる本発明の補強方法では、繊維シートとコンクリート表面の接着性等の特性について一定して優れた効果を発揮することができる。
用いる1液エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、人体特に皮膚に有害であるアミンではなく、ケチミン化合物を含有するので、本発明の補強方法は、作業環境が良好で、作業衛生上好ましい。
今後は、土木、建築現場へもISO−9000シリーズや、14000シリーズ、16000シリーズがJISとの連動で適用されることになるが、現場での計量、混合が不要なことは、品質保証関連+9000シリーズの運営を容易にする。また、ロスがないことは、自然環境への影響を最小限にする14000シリーズの運営方針に合致するし、作業環境の良さは同様に16000シリーズへの適合性が高い。
本発明の補強方法は、従来、使用されている2液型のエポキシ樹脂を用いる補強方法よりも樹脂の表面硬化性に優れるので、次の作業までの待機時間が少なく工期が短縮できる。
チクソインデックスが3以上、かつ、多孔質材料に対する液状成分のしみ込み性の良い1液エポキシ樹脂組成物を用いるので、繊維シートへの含浸が良好であると同時に流動性がひくく、施工時にダレが起こりにくく、優れた接着力を発揮する。
ケチミン基の2重結合の近くに嵩高い基を有するケチミン化合物を含有する1液エポキシ樹脂組成物を用いれば、硬化速度と貯蔵安定性という相反する特性をバランスよく満たす。
【0022】
このような特性を有する本発明の補強方法は、土木用途、特に、橋桁、柱、コンクリート壁面等の耐震補強方法として好適である。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
(実施例1〜4)
ノルボルナン骨格のジアミン(NBDA、三井東圧化学(株)社製)100gとその1.5倍当量のメチルイソプロピルケトン180g、及びトルエン200gをフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら15〜24時間反応を続け、ケチミン化合物を得た。エポキシ樹脂(ELA128、住友化学工業社製)100重量部に、炭酸カルシウム100重量部、得られたケチミン化合物40重量部、亜リン酸エステル(JP360、城北化学社製)1.6重量部を混合し、1液エポキシ樹脂組成物を得た。得られた組成物について、1〔rpm〕、10〔rpm〕、20℃の条件下で、それぞれ粘度を測定し、1〔rpm〕、10〔rpm〕における粘度の比、粘度(1rpm)/粘度(10rpm)をチクソインデックスとして求めた。チクソインデックスは6.0〜7.5であった。
「舗装用コンクリート平板」(JIS A 5304)に記載の普通平板を用い、普通平板表面のレイタンス層をサンダーで取り除き、エポキシ系2液溶剤希釈型プライマー(ハマタイト プライマーEP201、横浜ゴム株式会社製)を該平板のコンクリート表面に塗布した。プライマーが指触乾燥した後、上述の1液エポキシ樹脂組成物をコンクリート表面にローラー刷毛にて塗布し、ついで下記表1記載の繊維シート材料を編み組みした繊維シートを1枚貼り付け、さらにシートの上から再び上述の組成物をローラー刷毛にて塗布し、さらにゴムへらにて十分にしごき、含浸および脱泡を行った。室内で1週間の養生を行った後、4cm角の鉄片を2液エポキシ樹脂接着剤(クイックメンダー、コニシ(株)社製)で表面に貼り付け、周囲をカッターで切り落とし、試験体を作製した。得られた試験体を用いて、建研式付着強さ試験に準拠して引張り試験機にて、含浸接着樹脂のコンクリートとの付着力を、付着強さとコンクリートの破壊状態(コンクリート全表面積に対する破壊された表面積の百分率)についてを測定した。
【0024】
表−1 付着力試験
目付け量や繊維種類の異なる繊維シートに対して、実施例で得られた1液エポキシ樹脂系含浸用樹脂は、15〔kgf/cm2 〕以上かつ100%コンクリート破壊という付着力を示し、含浸用樹脂として十分な性能を示した。
なお、実施例1〜4で用いた繊維を以下に示す。
炭素繊維:日本石油(株)社製
アラミド1:高剛性タイプ(東レ・デュポン(株)社製)
アラミド2:高強度タイプ(帝人(株)社製)
【0025】
(実施例5〜6)
「炭素繊維を用いた耐震補強法研究会報告書」(平成8年9月、(財)日本土木センター出版、p6)に記載の方法に準拠して、継ぎ手強さ評価のための試験片を作製した。作製方法は以下の通りである。
一方向繊維シートを15cm重ねあわせ、前記実施例で作製、使用した1液エポキシ樹脂組成物を含浸させ、室内で1週間の養生を行い継ぎ手を作製した後、JIS K 7073記載の方法に準拠して、繊維シートを幅25.0mmに切り出し、繊維シートと引張り試験機の掴み部を2液エポキシ接着剤で接着して引張り試験片とした。試験片をそれぞれ5体作製した。
(比較例1〜2)
実施例5〜6と同様の方法で、下記表2に示す繊維シート材料からなる繊維シートを用いて、継ぎ手のない試験片をそれぞれ5体作製した。
【0026】
JIS K 7073に準拠して、実施例5〜6、比較例1〜2で得られた試験片を用いて継ぎ手強さを引張り試験で評価した。1液エポキシ樹脂組成物の目付け量280〔g/m2 〕でアラミド1からなる試験片と、目付け量300〔g/m2 〕で炭素繊維からなるシート(35000kgf/cm2 クラス:グラノック HT300)についてそれぞれ、15cmの継ぎ手のあるものと継ぎ手のないものと、それぞれ5体についての強度を測定し、測定値の平均値をそれぞれの強度とした。結果を下記表2に示す。
【0027】
表−2 強度試験
表中、単位は〔kgf/mm2 〕である。
破壊モードは、いずれも母材破壊であり、なおかつ、15cm継ぎ手ありの試験片と継ぎ手なしの試験片は、実質同等の強度を示したことから、本発明の1液エポキシ樹脂組成物は、従来、繊維シートの含浸用樹脂として用いられてきた2液エポキシ樹脂系含浸接着剤と同等な補強効果を持ち、かかる1液エポキシ樹脂組成物を用いる本発明の補強方法は、従来の2液エポキシ樹脂系含浸接着剤を用いる補強補修工法への利用が可能であることが示された。
【0028】
【発明の効果】
本発明の1液エポキシ樹脂組成物を含浸用樹脂として用いる補強方法は、従来の2液エポキシ樹脂系含浸接着剤を用いる補強方法と同等の補強効果を持つ。さらに、本発明の補強方法では、1液型の組成物を用いるので混合作業が必要なく作業性に優れ、含浸用樹脂中の硬化剤がアミン化合物ではなくケチミン化合物なので作業環境に悪影響がなく、材料の無駄がないので資源消費の点においても、従来の2液型の含浸用樹脂を用いる補強方法よりも優れている。
Claims (4)
- コンクリート表面のレイタンス層を取り除き、
前記コンクリート表面にプライマーを塗布して乾燥させ、
前記プライマー塗布面に、下記式(2)で表されるケトンと下記式(3)で表されるポリアミンとを反応させて得られるケチミン化合物と、エポキシ樹脂とを含有する湿気硬化型1液エポキシ樹脂組成物を塗布し、
前記1液エポキシ樹脂組成物の上に繊維シートを貼りつけ、
更に、前記繊維シートの上に、下記式(2)で表されるケトンと下記式(3)で表されるポリアミンとを反応させて得られるケチミン化合物と、エポキシ樹脂とを含有する湿気硬化型1液エポキシ樹脂組成物を塗布し、
前記繊維シートをしごき、前記1液エポキシ樹脂組成物を前記繊維シートに含浸させるとともに前記1液エポキシ樹脂組成物中から脱泡を行い、
前記繊維シートを前記1液エポキシ樹脂組成物を介してコンクリート表面に接着させる、1液エポキシ樹脂と繊維シートからなる1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法。
R 5 :CH 3 またはC 2 H 5
R 6 :H、CH 3 またはC 2 H 5
R 7 :有機基(O,S,Nを有する基も含む)
k:2以上の整数 - 前記ケチミン化合物とエポキシ樹脂とを含有する湿気硬化型1液エポキシ樹脂組成物のチクソインデックスが3以上である請求項1に記載の1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法。
- 前記ケチミン化合物が、メチルイソプロピルケトンとノルボルナン骨格のジアミンを反応させて得られるケチミン化合物である請求項1または2に記載の1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法。
- 前記1液エポキシ樹脂と繊維シートからなる1液エポキシ樹脂系複合材料の目付け量が、200〜300g/m2 である請求項1〜3のいずれかに記載の1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29672297A JP4090543B2 (ja) | 1997-10-29 | 1997-10-29 | 1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29672297A JP4090543B2 (ja) | 1997-10-29 | 1997-10-29 | 1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11131823A JPH11131823A (ja) | 1999-05-18 |
JP4090543B2 true JP4090543B2 (ja) | 2008-05-28 |
Family
ID=17837252
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP29672297A Expired - Fee Related JP4090543B2 (ja) | 1997-10-29 | 1997-10-29 | 1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4090543B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20000011749A (ko) | 1998-07-16 | 2000-02-25 | 하기와라 세이지 | 일체포장에폭시수지조성물 |
JP2014234603A (ja) * | 2013-05-31 | 2014-12-15 | 和彦 内田 | 鉄筋コンクリート柱の耐震補強構造及びその形成方法 |
JP6364798B2 (ja) * | 2014-02-07 | 2018-08-01 | 三菱ケミカル株式会社 | 補強繊維織物及びその製造方法 |
JP6213600B2 (ja) * | 2015-10-07 | 2017-10-18 | 大日本印刷株式会社 | 物品の製造方法および接着シート |
-
1997
- 1997-10-29 JP JP29672297A patent/JP4090543B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11131823A (ja) | 1999-05-18 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN102391817B (zh) | 一种水下环氧结构胶粘剂及其制备方法 | |
CN105925228A (zh) | 一种多功用改性环氧树脂修补胶 | |
CN102482548A (zh) | 固化性和固化的粘合剂组合物 | |
CN107109144A (zh) | 具有粘接用途的粘合性凝胶片、其制造方法、一对被粘物的固定方法及复合材料 | |
JP4756873B2 (ja) | パテ状2成分型エポキシ樹脂組成物 | |
CN103052681B (zh) | 用于环氧树脂的固化剂 | |
US4950701A (en) | Bonding method and adhesive useful for the method | |
KR20050069491A (ko) | 저온경화 및 습윤 접착성이 우수한 에폭시 그라우트 조성물 | |
JP4090543B2 (ja) | 1液エポキシ樹脂系複合材料による鉄筋コンクリート構造の補強方法 | |
CN105802566B (zh) | 一种用于潮湿混凝土表面cfrp粘贴的环氧树脂系胶结剂 | |
CN110423587A (zh) | 一种新型碳纤维加固配套用底胶及其制备方法 | |
WO2020033258A1 (en) | Two-component adhesive composition based on epoxide resin | |
TW508401B (en) | Repair/reinforcement method of existing construction and resin | |
JP3323072B2 (ja) | エポキシ樹脂組成物 | |
KR102399784B1 (ko) | 접착제 조성물 | |
JP4475698B2 (ja) | プライマー組成物とそれを用いたコンクリート、モルタルの打継ぎ方法 | |
JPH0977849A (ja) | 土木建築材料用硬化性樹脂組成物 | |
RU2623774C1 (ru) | Эпоксидная композиция холодного отверждения | |
JP2003342314A (ja) | 短繊維を配合したアクリル系硬化性組成物 | |
JP2000273151A (ja) | エポキシ樹脂用硬化剤組成物 | |
KR20230118577A (ko) | 2-파트 에폭시계 구조 접착제 조성물 | |
BR112012023821B1 (pt) | Composição de dois componentes de resina epóxi, sistema de dosagem e método para unir e/ou reparar partes | |
JP3650642B2 (ja) | プリプレグの常温硬化方法 | |
JP3757035B2 (ja) | 新旧コンクリート打継ぎ工法 | |
KR102565672B1 (ko) | 수중 구조물 보수 보강에 사용되는 하이브리드 섬유 함침용 수중 경화형 에폭시 수지 조성물 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20040701 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060426 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070227 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20070427 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070724 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20070920 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20071127 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20080125 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20080201 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080219 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Effective date: 20080227 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110307 Year of fee payment: 3 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |