以下、本開示の実施態様を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
また、本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
本発明者等は、物品の製造において、部材の接着に際して接着剤および両面粘着テープのそれぞれが有する上述した課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をそれぞれシート化した接着シートを用いることで、上述した接着剤および両面粘着テープの欠点を補いつつ、双方が持つ利点を活かした部材の接着が可能であることを知得した。
2液分別塗布型接着剤を用いた物品の製造方法では、例えば特許文献2および3で開示されるように、通常、2種類の液状材料を各部材の被着面に分別塗布した後、各部材の液状材料塗布面同士を接触させて常温硬化させることで、部材同士を貼り合せて行う。しかし、塗布接着法による物品の製造方法は、上述した問題を有する。
これに対し、本発明者は、2液分別塗布型接着剤を用い、2種類の液状材料の一方から形成された接着層を有する接着シートと、他方から形成された接着層を有する接着シートとが対となった接着シートセットを開発した。そして、各接着シートを別々の部材にそれぞれ貼り、各部材の接着層同士を接触させたところ、塗布接着法と同様に常温硬化が進み、部材を強固に接着することが可能となることを見出した。また、上記接着シートセットを用いることで、塗布接着法よりも物品の製造が簡便となることを見出した。なお、特許文献2〜5には、2液分別塗布型接着剤の各液状材料のシート化については、開示も示唆もされていない。
さらに、本発明者は、上記接着シートセットによれば、接着剤を比較的低い温度で硬化させることができる可能性があることから、上記部材の反りや浮きの発生を抑制することができ、材質や膨張率差に因らず、様々な部材を組合せて貼り合わせることが可能であることを見出した。例えば、熱硬化型接着剤をシート状にした接着シートは、材質や膨張率の大きく異なる部材を貼り合わせると、接着剤の加熱硬化の際に部材の反りや浮きが生じるという問題があるため、貼合する部材の組合せが材質等により制限されてしまう。特に、金属部材とプラスチック部材とを貼り合せる場合に、上記の問題が顕著化する。これに対し、2液分別塗布型接着剤から形成した接着シートセットによれば、比較的低い温度での硬化にすることが可能であるため、上述したような不具合の発生を抑えることができる。
なお、上述した特許文献には、2液分別塗布型接着剤の各液状材料のシート化については、開示も示唆もされていない。また、これらの特許文献では、2液分別塗布型接着剤の各液状材料を別々にシート化して接着シートセットとすること、および上記接着シートセットの各接着シートを、接着層の少なくとも片面にセパレータを有する仕様とすることで、分別保管可能とする思想は、開示も示唆もされていないと推量される。さらに、これらの特許文献では、塗布接着法に代えて、接着シートセットを用いて部材の貼り合せ等を行い、物品を製造することに関して、開示も示唆もされていないと推量される。
本開示の物品の製造方法は、上述したこれらの知見に基づく。本開示の物品の製造方法は、5つの実施形態に大別される。以下、各実施形態に分けて説明する。なお、本開示において、第1接着層および第2接着層のことを、単に接着層と称する場合があり、第1セパレータおよび第2セパレータのことを、単にセパレータと称する場合がある。また、第1接着シートおよび第2接着シートのことを、単に接着シートと称する場合がある。また、第1部材および第2部材のことを、単に部材と称する場合があり、第1接着シート付部材および第2接着シート付部材のことを、単に接着シート付部材と称する場合がある。
I.物品の製造方法の第1実施形態
本開示の物品の製造方法の第1実施形態(以下、本実施形態とする場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1部材に、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートの、上記第1接着層の他方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する第1接着シート付部材準備工程と、上記第2部材に、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートの、上記第2接着層の他方の面が貼り合されている、第2接着シート付部材を準備する第2接着シート付部材準備工程と、上記第1接着シート付部材の上記第1セパレータ、および上記第2接着シート付部材の上記第2セパレータをそれぞれ剥離して、上記第1接着層の上記一方の面と上記第2接着層の上記一方の面とを貼り合わせる貼合工程と、を有する。
図1(a)〜(d)は、本実施形態の物品の製造方法の一例を示す工程図である。本実施形態の物品の製造方法は、まず、第1接着シート付部材準備工程として、図1(a)で示すように、第1部材1に、第1接着層22および第1接着層22の一方の面側に配置された第1セパレータ21を有する第1接着シート11の、第1接着層22の他方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材20を準備する。また、第2接着シート付部材準備工程として、図1(b)で示すように、第2部材2に、第2接着層24および第2接着層24の一方の面側に配置された第2セパレータ23を有する第2接着シート12の、第2接着層24の他方の面が貼り合されている、第2接着シート付部材30を準備する。第1接着シート付部材準備工程および第2接着シート付部材準備工程は、順不同で行うことができる。次に、貼合工程として、第1接着シート付部材20の第1セパレータ21、および第2接着シート付部材30の第2セパレータ23をそれぞれ剥離して(図1(c))、第1接着層22の上記一方の面と第2接着層24の上記一方の面とを貼り合わせる(図1(d))。このとき、第1接着層22および第2接着層24は、互いに接触することにより、第1接着層22中の成分と第2接着層24中の成分とが拡散して硬化反応が生じ、接着性が向上する。そして硬化反応の完了により、第1接着層22および第2接着層24は、強い接着力を発現した硬化接着層3となり(図1(d))、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、硬化接着層3、および第2部材2をこの順に有する物品10が得られる。
第1実施形態の製造方法によれば、第1接着シート付部材が有する第1接着層と第2接着シート付部材が有する第2接着層とを貼り合せることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合せることができる。また、各接着シート付部材は、部材に接着シートが貼り合わされているため、2液型接着剤のような2種類の液状材料の混合が不要であり、部材同士の貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらにまた、第1接着層および第2接着層は、互いが接触するまでは硬化反応が進まないことから、貼合工程前までは、それぞれ接着シート付部材として長期間、分別保管することができ、貼り合せるタイミングに応じて、各接着シート付部材の接着層同士を接触させることができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
本実施形態の物品の製造方法による効果について、さらに詳細に説明する。本実施形態の物品の製造方法では、第1接着シート付部材における第1接着層と第2接着シート付部材における第2接着層とを貼り合せることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強接着力をもって部材同士を貼り合わせることができる。ここで、各接着シート付部材は、部材に予め接着シートが設けられており、第1接着シート付部材における第1接着層と、第2接着シート付部材における第2接着層とは、互いが接触するまでは硬化反応が進まない。このため、各接着シート付部材は、貼合工程までそれぞれ長期間分別保管することができ、部材同士を貼り合わせるタイミングに応じて、各接着シート付部材からセパレータを剥離して、接着層同士を接触させることができる。
また、2液分別塗布型接着剤を用いた塗布接着法では、通常、2つの液状材料を分別して各部材に塗布する塗布作業と、塗布膜を接触させて各部材を貼り合わせる貼合作業とを連続して行う必要がある。これに対し、本実施形態の物品の製造方法によれば、接着シート付部材における接着シートを形成する作業は、部材同士を貼り合わせる作業から独立して行うことができ、部材同士を貼り合わせるタイミングで各液状材料を塗布する必要がない。また、第1接着シート付部材と第2接着シート付部材とは、場所、環境、時間等に関係なく別々に作成することができ、且つ、別々の場所で保管が可能である。このため、各接着シート部材において接着層の厚み管理が可能となり、均一な厚みの接着層を部材上に設けることができる。また、部材への接着剤の塗布ムラ、塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。
このように、本実施形態の物品の製造方法によれば、塗布接着法による不具合を解消することが出来、塗布接着法よりも部材同士の貼り合わせによる物品の製造を簡便化することができる。また、各部材に設ける接着層を数μm単位の薄層とすることができ、得られる物品全体の薄化、小型化を図ることができる。
以下、本実施形態の物品の製造方法に用いられる接着シート、および本実施形態の物品の製造方法について、工程ごとに説明する。
A.第1接着シートおよび第2接着シート
第1接着シートは、第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する。また、第2接着シートは、第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する。第1接着シートおよび第2接着シートは、第1接着シートの第1接着層と、第2接着シートの上記第2接着層とが、互いに接触することにより硬化して接着するように構成されていることから、接着シートセットとして用いることができる。
(1)第1接着層および第2接着層
第1接着層および第2接着層は、互いに接触することにより硬化して接着することができる。
(a)組成
第1接着層は第1接着剤成分を含有する第1接着剤組成物で構成される。また、第2接着層は第2接着剤成分を含有する第2接着剤組成物で構成される。第1接着剤成分および第2接着剤成分は、互いに接触することにより硬化して接着することができる。
ここで、接着剤成分とは、硬化反応に寄与する成分をいい、例えば、硬化性有機化合物、硬化性無機材料、硬化剤、触媒、開始剤、硬化促進剤、還元剤、酸又はアルカリ成分、酸発生剤、塩基発生剤、吸水剤等が挙げられる。
第1接着層に含まれる第1接着剤成分と第2接着層に含まれる第2接着剤成分とは、接触により硬化反応が開始し、各成分が相互に拡散するにつれて硬化反応が進むことで、実質的に均一な硬化が可能となる。
第1接着剤成分および第2接着剤成分の組合せは、特に限定されないが、例えば、硬化性有機化合物を第1接着剤成分とし、硬化剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物および潜在性硬化剤を第1接着剤成分とし、触媒や還元剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物および開始剤を第1接着剤成分とし、還元剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物および開始剤を第1接着剤成分とし、硬化性有機化合物および還元剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性無機材料を第1接着剤成分とし、水分や触媒を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物およびph反応付与成分を第1接着剤成分とし、酸又はアルカリ成分を第2接着剤成分とする組合せ等が挙げられる。また、第1接着剤成分および第2接着剤成分の組合せは、これらの逆であってもよい。
第1接着層および第2接着層は、例えば、第1接着剤成分を含有する液状材料と、第2接着剤成分を含有する液状材料と、の2種類から構成される2液分別塗布型接着剤の各液状材料を用いて得ることができる。上記2液分別塗布型接着剤としては、従来公知の組成が挙げられる。具体的には、アクリル化合物およびラジカル重合開始剤を含有するA液と、レドックス重合触媒の還元剤を含有するB液と、から構成されるプライマー型のアクリル接着剤(SGA)、アクリル化合物およびラジカル重合開始剤を含有するA液と、アクリル化合物およびレドックス重合触媒の還元剤を含有するB液と、から構成される2液主剤型のアクリル接着剤(SGA)、ポリオール化合物を含有するA液と、ポリイソシアネート化合物を含有するB液と、から構成されるウレタン接着剤、エポキシ化合物を含有するA液と、ポリアミドやポリチオール、イミダゾール等の硬化剤を含有するB液と、から構成されるエポキシ接着剤、シリコーン低重合体等のシリコーン化合物を含有するA液と、白金触媒を含有するB液と、から構成されるシリコーン接着剤等が挙げられる。なお、2液分別塗布型接着剤はこれらに限定されず、被着体の材質等に応じて適宜選択することが可能である。また、2液分別塗布型接着剤に限らず、ポリマーセメント等の2液硬化型塗料等を用いることも可能である。
以下、第1接着層および第2接着層の材料について説明する。
(i)第1接着剤成分および第2接着剤成分
第1接着剤成分および第2接着剤成分は、少なくともいずれか一方が、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する。以下、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合について説明する。第1接着剤成分および第2接着剤成分は、通常、異なる組成を有する。
[1]第1接着剤成分
第1接着層に含まれる第1接着剤成分は、第2接着層に含まれる第2接着剤成分と硬化反応を生じるものであってもよく、第2接着剤成分の存在により、第1接着剤成分に含まれる成分同士が硬化反応を生じるものであってもよい。第1接着層および第2接着層に2液分別塗布型接着剤を用いる場合は、第1接着剤成分は、通常、2液分別塗布型接着剤における主剤成分を少なくとも含む。
上記第1接着剤成分としては、例えば、硬化性有機化合物、硬化性無機材料、これらと併用されるその他の材料等が挙げられる。上記第1接着剤成分は、硬化性有機化合物または硬化性無機材料の一方を含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。
[a]硬化性有機化合物
硬化性有機化合物としては、公知の2液分別塗布型接着剤に用いられる硬化性有機化合物が挙げられ、例えば、エポキシ化合物、アクリル化合物、ポリオール化合物、シリコーン低重合体等のシリコーン化合物、メラミン化合物、フェノール化合物混合物、シリル化合物等が挙げられる。これらは、第1接着層と貼り合わせる被着体の材質に応じて適宜選択することが可能である。例えば、貼り合わせる被着体の材質が、木材、セラミック、コンクリート、金属であれば、硬化性有機化合物は、エポキシ化合物やポリオール化合物とすることができる。また、例えば、例えば、貼り合わせる被着体の材質が、ポリプロピレンやポリエチレン等の難接着材料であれば、硬化性有機化合物は、シリコーン化合物やアクリル化合物とすることができる。また、アクリル化合物は材料の自由度が高く、金属、木材、ABS等の有機物にも広く使用が可能である。
上記第1接着剤成分がアクリル化合物を含む場合、上記アクリル化合物は、アクリル単量体、アクリル重合体のいずれであってもよい。また、アクリル重合体は、アクリル低重合体、アクリル高重合体のいずれであってもよい。例えば、特開2008−248111号公報や特開2016−175195号公報に開示されるアクリル化合物が挙げられる。
また、上記第1接着剤成分がポリオール化合物を含む場合、上記ポリオール化合物は、分子中に複数個の水酸基を有すればよく、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
上記第1接着剤成分がメラミン化合物、フェノール化合物混合物、またはシリル化合物を含む場合、これらの化合物については、一般的な2液分別塗布型接着剤に用いられる化合物と同様とすることができる。
上記第1接着剤成分がエポキシ化合物を含む場合、上記エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することができ、一般にエポキシ接着剤に使用されるエポキシ化合物を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、脂肪族系エポキシ化合物、グリコール系エポキシ化合物、ペンタエリスリトール系エポキシ化合物、芳香族系エポキシ化合物、ウレタン変性エポキシ化合物やゴム変性エポキシ化合物等の変性エポキシ化合物、その他特開2009−167251号公報で開示されるエポキシ化合物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられていてもよく、2種以上用いられていてもよい。
上記第1接着剤成分に含まれるエポキシ化合物は、液状エポキシ化合物であってもよく、固形エポキシ化合物であってもよい。液状エポキシ化合物は、常温で液状のエポキシ化合物をいい、固形エポキシ化合物は常温で固形のエポキシ化合物をいう。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物であれば、主鎖のビスフェノール骨格が1以上3以下であれば、常温で液状とすることができ、主鎖のビスフェノール骨格が2以上10以下であれば、常温で固形とすることができる。
上記第1接着層には、液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の少なくとも一方が含まれていればよいが、両方が含まれていてもよい。上記第1接着層が液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物を含む場合は、それぞれの分子量および配合量を調整することで、硬化前の粘着性や硬化後の接着力を調整することができる。
上記液状エポキシ化合物の質量平均分子量およびエポキシ当量は、第1接着層と第2接着層との接触に際して要求される硬化速度に応じて適宜設定することができる。例えば、液状エポキシ化合物の質量平均分子量(Mw)は200以上900以下の範囲内とすることができる。また、このとき、エポキシ当量(g/eq.)は100以上500以下の範囲内とすることができる。上記の範囲とすることで、第1接着層と第2接着層とを接触させた際に、第1接着層に含まれる液状エポキシ化合物が他方の第2接着層側へ浸透しやすくなり、硬化速度を速めることができる。また、硬化後の接着層の耐久性、接着力を向上させることができる。
また、固形エポキシ化合物の質量平均分子量およびエポキシ当量は、接着層にかかるせん断応力の大小や応力のかかる方向に応じて適宜設定することができる。例えば、固形エポキシ化合物の質量平均分子量(Mw)は900以上6000以下の範囲内とすることができる。上記の範囲とすることで、接着層の耐久性、粘着力を向上させることができる。また、このとき、エポキシ当量(g/eq.)は450以上5000以下の範囲内とすることができる。上記の範囲とすることで、接着層の凝集力や製膜性が向上し、せん断応力に強くなるからである。また、硬化後の接着層の耐久性、接着力を向上させることができる。
質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。また、エポキシ当量は、JIS K7236:2009(エポキシ化合物のエポキシ当量の求め方)に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む化合物のグラム数である。
第1接着層がエポキシ化合物として液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の両方を含む場合、液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の配合比は、第1接着層に要求される粘着性および凝集力に応じて設定することができる。強粘着性もしくは低凝集力の第1接着層とするためには、第1接着層中の液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の合計量(100質量%)に対して、上記液状エポキシ化合物の含有量は50質量%以上、中でも60質量%以上とすることができ、また、95質量%以下、中でも90質量%以下とすることができる。液状エポキシ化合物の含有量は、固形エポキシ化合物の含有量よりも多くすることができる。一方、弱粘着性もしくは高凝集力の第1接着層とするためには、第1接着層中の液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の合計量(100質量%)に対して、上記液状エポキシ化合物の含有量は20質量%以上、中でも30質量%以上とすることができ、また、70質量%以下、中でも60質量%以下とすることができる。第1接着層中の液状エポキシ化合物の含有量は、固形エポキシ化合物の含有量以下とすることができる。なお、一般に、接着層は、粘着力が強いほど凝集力が低く柔軟性を有する層となり、一方、粘着力が弱いほど凝集力が高く硬い層となる。
中でも、上記第1接着剤成分はエポキシ化合物を含むことができる。硬化後の凝集力や接着力が高く、木材、コンクリート、セラミック等の広域な材質に対して高強度に接着することが可能であるからである。
また、上記第1接着剤成分はアクリル化合物を含んでいてもよい。例えばアクリル化合物を適宜選択することにより、被着体に応じて第1接着層の物性を調整することができるため、例えば異種部材を接着する場合に適している。また、アクリル化合物は、耐候性、透明性が良好であるという利点を有する。
[b]硬化性無機材料
上記硬化性無機材料としては、例えば、水を触媒として硬化する水硬化性無機材料を用いることができる。上記水硬化性無機材料として具体的には、ポルトランドセメント、アルミナセメント、耐酸セメント、スラグセメント、ローマンセメント、マグネシアセメント等のセメント類、石膏、石灰、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
[c]その他の成分
第1接着剤成分は、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等の他に、例えば、硬化剤、触媒、開始剤、硬化促進剤、還元剤等を含むことができる。これらの材料は、通常、対となる第2接着層に含有される第2接着剤成分とは異なる材料とすることができ、硬化性有機化合物や硬化性無機材料の種類、第2接着層に含まれる第2接着剤成分の種類に応じて適宜選択することができる。
例えば、第1接着層が第1接着剤成分として硬化性有機化合物を含む場合であって、上記硬化性有機化合物がアクリル化合物である場合、第1接着剤成分は、アクリル化合物の他に、例えばラジカル重合開始剤を含むことができる。この場合、対となる第2接着層は、第2接着剤成分として、例えばレドックス重合触媒の還元剤を含む、あるいはアクリル化合物およびレドックス重合触媒の還元剤を含むことができる。具体的には、特開2008−308531号公報で開示される過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤が挙げられる。
また例えば、第1接着層が第1接着剤成分として硬化性有機化合物を含む場合であって、上記硬化性有機化合物がエポキシ化合物である場合、第1接着剤成分は、エポキシ化合物の他に、一般にエポキシ化合物に配合されるフェノール化合物、アミン化合物、チオール化合物等の硬化剤、ジシアンジアミド、マイクロカプセル型アミン類や包接触媒、ヒドラジド類等の潜在性硬化剤、カチオン触媒型硬化剤等の硬化剤を含むことができる。この場合、対となる第2接着層は、第2接着剤成分として、例えば脂肪族ジメチルウレア、芳香族ジメチルウレア等の硬化触媒、イミダゾール、リン系触媒、ポリアミン類等を含むことができる。
[2]第2接着剤成分
第2接着層に含有される第2接着剤成分は、第1接着層に含まれる第1接着剤成分と直接反応するものであってもよく、第1接着層に含まれる第1接着剤成分の硬化反応を誘発または促進させるものであってもよい。第2接着剤成分としては、第1接着剤成分の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、硬化剤、酸又はアルカリ成分、硬化促進剤、酸発生剤、塩基発生剤、触媒、吸水剤等が挙げられる。
第1接着剤成分がエポキシ化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば硬化剤が挙げられる。上記硬化剤として具体的には、イミダゾール化合物、フェノール化合物、アミン化合物、ポリアミド化合物、酸無水物、イソシアネート化合物、チオール化合物等が挙げられる。中でも、上記硬化剤はイミダゾール化合物とすることができる。イミダゾール化合物は、室温でのエポキシ化合物との反応性がよく、また、硬化後のガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性、耐久性に優れるとともに、分子量が小さい化合物が多い。このため、第1接着層と第2接着層とを接触させた際に、第2接着層に含まれる硬化剤がエポキシ化合物を含有する他方の第1接着層へと浸透しやすくなり、接触による硬化反応が起こり易くなるからである。
第1接着剤成分がアクリル化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば触媒、還元剤、開始剤等が挙げられる。具体的には、特開2008−308531号公報で開示される過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤、特開2008−81691号公報で開示されるレドックス重合触媒の還元剤が挙げられる。
また、第2接着剤成分がアクリル化合物を含んでいてもよい。この場合、第1接着剤成分および第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物は同じであってもよく、異なってもよい。第1接着剤成分および第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物が異なる場合には、例えばアクリル化合物を適宜選択することにより、被着体に応じて第1接着層の物性を調整することができるため、異種部材を接着する場合に適している。また、第1接着剤成分および第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物が異なる場合には、第1接着層にそれぞれ要求される機能に応じて、アクリル化合物を適宜選択することができる。
第1接着剤成分がポリオール化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば硬化剤が挙げられる。具体的には、ポリイソシアネート化合物が挙げられ、中でも、ポリオール化合物との反応性に優れることから、MDI、粗製MDI、TDI等の芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
第1接着剤成分がシリコーン化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば白金触媒が挙げられる。
第1接着剤成分がメラミン化合物またはフェノール化合物混合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば、硫酸水溶液含有ハイドロゲル、水酸化ナトリウム含有ハイドロゲル等の酸又はアルカリ成分が挙げられる。
第1接着剤成分がシリル化合物もしくは硬化性無機材料を含む場合の第2接着剤成分としては例えば、固体状液体分散コロイドが挙げられる。具体的には、ハイドロゲル、吸水性重合体、ゼラチン等が挙げられる。上記の第1接着剤成分は、これらに含まれる水分により硬化することができる。
上記第2接着剤成分の含有量は、第1接着層と第2接着層とが接触した際に、第1接着剤成分と十分に反応することが可能な量とすることができ、第1接着剤成分および第2接着剤成分の組合せや種類に応じて適宜設定が可能である。例えば、第1接着剤成分がエポキシ化合物を含み、上記第2接着剤成分が硬化剤としてイミダゾール化合物を含む場合、上記第2接着層中のイミダゾール化合物の含有量としては、エポキシ化合物のエポキシ当量にもよるが、例えば、エポキシ化合物100質量部に対し、0.1質量部以上30質量部以下の範囲内とすることができ、1質量部以上20質量部以下の範囲内とすることができる。上記第2接着層中のイミダゾール化合物の含有量が多すぎると、被着体との密着が弱くなる場合があり、一方、上記含有量が少なすぎると、硬化不良の要因となる場合があるからである。なお、第1接着剤成分に含有される硬化性有機化合物がエポキシ化合物以外の材料である場合、第2接着剤成分の含有量は、汎用の2液硬化型接着剤を使用する際の2液硬化時の一般的な配分から大きく外れることがなければ特段の問題はない。
以上、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合について説明したが、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合には、その逆とすることができる。
第1接着剤成分および第2接着剤成分の一方のみが硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有してもよく、第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有してもよいが、中でも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有することができる。この場合、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する接着剤成分を含むもののほうが、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有しない接着剤成分を含むものよりも、厚みを大きくすることができる。そのため、第1接着層に含まれる第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含むことにより、第1接着層の厚みを大きくすることができる。したがって、例えば凹凸面や多孔質面を有する部材に適用する場合には、凹凸面や多孔質面に対しても十分な塗布厚みとすることができる。
(ii)相溶性重合体成分
第1接着層は、第1接着剤成分に対して相溶性を有する相溶性重合体成分をさらに含むことができる。また、第2接着層は、第2接着剤成分に対して相溶性を有する相溶性重合体成分をさらに含むことができる。以下、第1接着剤成分に対して相溶性を有する相溶性重合体成分、および第2接着剤成分に対して相溶性を有する相溶性重合体成分のことを、それぞれ第1相溶性重合体成分、および第2相溶性重合体成分と称する場合がある。
[1]第1相溶性重合体成分
第1接着層は、第1接着剤成分に対して相溶性を有する第1相溶性重合体成分をさらに含むことができる。その理由は以下の通りである。
2液分別塗布型接着剤は、通常、2種類の液状材料をそれぞれ塗布後、すぐに互いを接触硬化させて用いられるが、各液状材料は製膜性に劣るため、所望の厚みでそれぞれシート化し分別保存しようとすると、長期間シート形状を保持することが困難であるという問題がある。これに対し、各液状材料の成分に対して相溶性を有する相溶性重合体成分を含有させることで、製膜性を向上させることができ、長期間シート形状を保持することが可能となる。また、上記2種類の液状材料を別々に塗布して形成した各接着層においては、上記液状材料の成分は可塑剤として機能するため、各液状材料の成分を含む接着層に更に相溶性重合体成分を加えることで、接着層全体が可塑化され、相溶性重合体成分による粘着性や柔軟性が発揮される。これにより、硬化前の粘着性や被着体への密着性の向上を図ることが可能となり、また、硬化後の接着層の靭性が向上し且つ接着力をより高めることができる。
ここで、第1接着剤成分に対して相溶性を有するとは、上記第1接着剤成分、中でも、上記硬化性有機化合物との親和性がよく、上記第1接着剤成分と任意の割合で混合した場合に、相分離しないことをいう。第1接着層において、上記第1相溶性重合体成分が第1接着剤成分に対して相溶していることは、例えば、第1接着層の透明性が高いこと、第1接着層のヘイズ値が低いこと、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)により第1接着層の表面もしくは断面を観察したときに、層内にミクロンサイズの島が発生していないこと、等から確認することができる。後述する第2接着層においても同様である。
特に、第1接着層または第2接着層が、第1接着剤成分または第2接着剤成分として、エポキシ化合物、アクリル化合物、およびポリオール化合物のいずれかの硬化性有機化合物を含む場合に、上記第1相溶性重合体成分による効果がより高く発揮され得る。例えば、第1接着層または第2接着層に含まれる硬化性有機化合物がアクリル化合物の場合、架橋密度が高くなる傾向にあるところ、第1相溶性重合体成分を含むことで、アクリル化合物の主鎖を長くすること、すなわち架橋密度を低くすることができ、第1接着層に柔軟性を付与することが可能となる。第1接着層または第2接着層に含まれる硬化性有機化合物がエポキシ化合物の場合の、上記第1相溶性重合体成分による効果の発現については、後で詳細に説明する。
また、上記第1相溶性重合体成分は、さらに第2接着層に含まれる第2接着剤成分に対して相溶性を有することができる。第2接着剤成分に対して相溶性を有するとは、上記第2接着剤成分との親和性がよく、第1接着層と第2接着層とが接触し、上記第2接着剤成分と任意の割合で混合した場合に相分離しないことをいう。
第1相溶性重合体成分は、第1接着剤成分との相溶性が良好な重合体を含むものであれば特に限定されない。上記重合体は、極性基を有していてもよい。極性基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基、アミド基等が挙げられる。
中でも、上記第1相溶性重合体成分は、アクリル重合体を含む成分、すなわち相溶性アクリル重合体含有成分とすることができる。
上記相溶性アクリル重合体含有成分は、上記アクリル重合体がアクリル酸エステル単量体の単独重合体であり、上記単独重合体を2種以上含む混合成分であってもよく、上記アクリル重合体が2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体であり、共重合体を1以上含む成分であってもよい。また、上記相溶性アクリル重合体含有成分が、上記単独重合体と上記共重合体との混合成分であってもよい。アクリル酸エステル単量体の「アクリル酸」には、メタクリル酸の概念も含まれる。具体的には、上記相溶性アクリル重合体含有成分は、メタクリレートの重合体とアクリレートの重合体との混合物であってもよく、アクリレート−アクリレート、メタクリレート−メタクリレート、メタクリレート−アクリレート等で構成された(メタ)アクリル酸エステル共重合体であってもよい。中でも上記相溶性アクリル重合体含有成分は、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体((メタ)アクリル酸エステル共重合体)を含むことができる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体成分としては、例えば、特開2014−065889号公報に記載の単量体成分が挙げられる。上記単量体成分は、上述した極性基を有していてもよい。エポキシ化合物との相溶性が向上し、粘着力および硬化後の接着力を高めることができるからである。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。なお、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の「アクリル酸」には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の「メタクリル酸」を含む。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、ブロック共重合体を挙げることができ、さらにメタクリレート−アクリレートで構成されるアクリル系ブロック共重合体を挙げることができる。アクリル系ブロック共重合体を構成するアクリレートやメタクリレートは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジル等が挙げられる。これらの「アクリル酸」には、メタクリル酸も含まれる。
メタクリレート−アクリレートの共重合体の具体例としては、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート(MMA−BA−MMA)共重合体等のアクリル系共重合体が挙げられる。MMA−BA−MMA共重合体には、ポリメチルメタクリレート−ポリブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレート(PMMA−BA−MMA)のブロック共重合体も含まれる。このようなアクリル系共重合体は、製膜性が向上し、被着面に対して十分な接着性を示すことができる。
上記アクリル重合体は、極性基を有していなくてもよく、また一部に上述した極性基を導入した変性物であってもよい。上記変性物は、エポキシ化合物との相溶性がさらに向上するため、接着強度がより向上する。
中でも、上記第1相溶性重合体成分は、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下である第1重合体部分と、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上である第2重合体部分とを有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体とすることができる。このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、柔らかいセグメントとなる第1重合体部分と、硬いセグメントとなる第2重合体部分とを有する。このような共重合体を添加することにより、第1接着層は、被着面に対する浮きや剥がれを有効に抑制することができ、また、硬化後の靭性が向上して接着力をより高めることができるからである。
上記の効果の発現は、以下のように推定できる。従来の接着剤では、靱性や柔軟性を付与するために、主剤となる硬化性有機化合物、例えばエポキシ化合物の他に、アクリル重合体を添加することが行われていたが、上記アクリル重合体の添加により接着剤自体の耐熱性が低下していた。これに対し、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体のような、柔らかいセグメントと、硬いセグメントとを併せ持つアクリル重合体を用いることで、硬いセグメントが耐熱性に寄与し、柔らかいセグメントが靱性ないし柔軟性に寄与するため、硬化後の第1接着層は、靱性を有しかつ優れた接着性を保持することができると考えられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分および第2重合体部分の少なくとも一方は、硬化性有機化合物に対して相溶性を有する。第1重合体部分が硬化性有機化合物に対して相溶性を有する場合には、柔軟性を高めることができる。また、第2重合体部分が硬化性有機化合物に対して相溶性を有する場合には、凝集性や靱性を高めることができる。
第1重合体部分または第2重合体部分の一方が硬化性有機化合物に対して相溶性を有さない場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、硬化性有機化合物に対して相溶性を有する重合体部分である相溶部位と、硬化性有機化合物に対して相溶性を有さない重合体部分である非相溶部位とを有することになる。この場合、硬化性有機化合物を含む接着剤組成物に、アクリル重合体として上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を添加すると、相溶部位が硬化性有機化合物と相溶し、非相溶部位が硬化性有機化合物と相溶しないため、相分離が起こる。その結果、硬化後の第1接着層では、海島構造が発現する。海島構造としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の種類、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分および第2重合体部分の相溶性、極性基導入による変性の有無によって異なり、例えば、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、硬化性有機化合物の硬化物が島であるような海島構造が挙げられる。硬化後の第1接着層は、このような海島構造を有することで、応力を分散させやすくすることができるので、界面破壊を避けることができ、優れた接着性を維持することができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、中でもブロック共重合体とすることができ、特に、相溶部位を重合体ブロックA、非相溶部位を重合体ブロックBとするA−B−Aブロック共重合体とすることができる。さらには、第1重合体部位が非相溶部位、第2重合体部分が相溶部位であり、第1重合体部分を重合体ブロックB、第2重合体部分を重合体ブロックAとするA−B−Aブロック共重合体とすることができる。アクリル重合体としてこのようなA−B−Aブロック共重合体を用いることにより、硬化後の第1接着層内では、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造の場合には、島部分を小さくすることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造の場合や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、硬化性有機化合物の硬化物が島であるような海島構造の場合には、海部分を小さくすることができる。そのため、硬化後の接着層内では、見かけ上、硬化性有機化合物およびアクリル重合体が相溶した状態となる。このような見かけ上の相溶状態が発現されることにより、硬化後の第1接着層は、さらに応力を分散させやすくすることができるので、界面破壊を避けることができ、優れた接着性を維持することができる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、第1重合体部分または第2重合体部分の一部に上述の極性基を導入した変性物であってもよい。硬化後の第1接着層の耐熱性がより向上するとともに、硬化性有機化合物との相溶性も向上するため、接着性が向上する。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分のTgは、10℃以下であり、−150℃以上10℃以下の範囲内、中でも−130℃以上0℃以下の範囲内、特に−110℃以上−10℃以下の範囲内とすることができる。
なお、第1重合体部分のTgは、「POLYMERHANDBOOK第3版」(John Wiley & Sons,Ink.発行)に記載された各単独重合体のTg(K)を基にして、下記式で計算により求めることができる。
1/Tg(K)=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・+Wn/Tgn
Wn;各単量体の質量分率
Tgn;各単量体の単独重合体のTg(K)であり、ポリマーハンドブック(3rd Ed.,J.Brandrup and E.H.Immergut,WILEY INTERSCIENCE)中の値など、一般に公開されている掲載値を用いればよい。後述の第2重合体部分のTgも同様である。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体とすることができる。第1重合体部分を構成する単量体成分および重合体成分は、Tgが所定の範囲である第1重合体部分を得ることができる単量体成分および重合体成分であればよく、例えばアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、酢酸ビニル、アセタール、ウレタン等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体、EVA等の共重合体が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第2重合体部分のTgは、20℃以上であり、20℃以上150℃以下の範囲内、中でも30℃以上150℃以下の範囲内、特に40℃以上150℃以下の範囲内とすることができる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第2重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体とすることができる。第2重合体部分を構成する単量体成分は、Tgが所定の範囲である第2重合体部分を得ることができる単量体成分であればよく、例えばメタクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、アクリルアミド、スチレン、塩化ビニル、アミド、アクリロニトリル、酢酸セルロース、フェノール、ウレタン、塩化ビニリデン、塩化メチレン、メタクリロニトリル等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体が挙げられる。
上記の第1重合体部分および第2重合体部分を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の具体例としては、上記のMMA−BA−MMA共重合体等が挙げられる。
上記第1相溶性重合体成分の質量平均分子量は、第1接着層に要求される粘着性や凝集力に応じて適宜設定することができるが、上記第1接着剤成分の質量平均分子量、中でも硬化性有機化合物の質量平均分子量よりも大きくすることができる。第1相溶性重合体成分に製膜性を任せ、硬化性有機化合物は可塑成分として働く必要があるからである。また、第1相溶性重合体成分は第2接着層に含まれる第2接着剤成分と相溶することが望ましいからである。具体的には、上記第1相溶性重合体成分の質量平均分子量は、1万以上90万以下の範囲内とすることができ、中でも3万以上50万以下の範囲内とすることができる。第1相溶性重合体成分の質量平均分子量が小さすぎると、3次元架橋が支配的となり、靱性が低下する場合があり、一方、大きすぎると、相溶性が悪くなるため強度が低下する。上記第1相溶性重合体の質量平均分子量は、GPC(溶離液:THF、標準物質:PS、試料:20μL、流量:1mL/min、カラム温度:40℃)により測定することができる。
上記第1接着層中の第1相溶性重合体成分の含有量は、第1相溶性重合体成分の種類、第1接着剤成分の種類、第1接着層に要求される粘着性、凝集性、粘性等に応じて適宜調整することが可能である。例えば、第1接着層が、第1接着剤成分として、アクリル化合物、エポキシ化合物等の硬化性有機化合物を含み、第1相溶性重合体成分として上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む場合、硬化性有機化合物100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量は4質量部以上100質量部以下の範囲内とすることができる。この割合で両者を配合すると、第1接着層は、接触硬化前の段階で、硬化性有機化合物中に、ナノオーダーレベルの微粒子状にアクリル重合体が分散した構造が発現し、見かけ上の相溶状態が発現される。そして、上記第1接着層は、第2接着層との接触により、見かけ上の相溶状態を維持しながら硬化することで、優れた接着強度を発揮することができる。また、第1接着層が上記の構造を有することで、被着体との界面からの水の侵入を抑制でき、さらに優れた接着保持特性を有することができる。
また例えば、第1接着層が、第1接着剤成分として、硬化性有機化合物や硬化性無機材料を含まない場合、第1接着層中の第1相溶性重合体成分の含有量は、第1接着層中の第1接着剤成分100質量部に対して10質量部以上200質量部以下の範囲内とすることができ、中でも20質量部以上100質量部以下の範囲内とすることができる。第1相溶性重合体成分の分子量等に応じて好適な含有量は異なるが、おおよそ上記の範囲内とすることができる。第1相溶性重合体成分の含有量が少なすぎると、第1接着層の製膜性や接着性が不良となる場合があり、一方、上記含有量が多すぎると、第1接着層の強度低下の要因となる場合がある。
[2]第2相溶性重合体成分
第2接着層は、第2接着剤成分に対して相溶性を有する第2相溶性重合体成分をさらに含むことができる。また、上記第2相溶性重合体成分は、さらに第1接着層に含まれる第1接着剤成分に対して相溶性を有することができる。その理由および第2相溶性重合体成分の具体例、および第2相溶性重合体成分の含有量については、上述の第1相溶性重合体成分と同様であるため、ここでの説明は省略する。第1接着層または第2接着層が、第1接着剤成分または第2接着剤成分として、エポキシ化合物、アクリル化合物、およびポリオール化合物のいずれかの硬化性有機化合物を含む場合、上記第2相溶性重合体成分による効果がより高く発揮され得る。
第2相溶性重合体成分の質量平均分子量は、上記第2接着剤成分の質量平均分子量、中でも硬化性有機化合物の質量平均分子量よりも大きくすることができる。その理由、具体的な質量平均分子量の範囲、およびその測定方法については、上述した第1相溶性重合体成分と同様であるため、ここでの説明は省略する。
[3]その他
第1接着層に含まれる第1相溶性重合体成分と、第2接着層に含まれる第2相溶性重合体成分とは、同一の成分であってもよく、異なる成分であってもよい。第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が同一の成分である場合には、同一の成分が最も相拡散がしやすいため、反応速度の点で有利だからである。また、コスト面でも有利である。第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が同一の成分である場合、上記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体とすることができ、中でもアクリル系共重合体またはその変性物、特にMMA−BA−MMA共重合体またはその変性物とすることができる。また、上記アクリル重合体は、中でも所定の第1重合体部分および第2重合体部分を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体またはその変性物とすることができる。その理由については、上述の第1相溶性重合体成分の項で説明した理由と同様である。
また、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が異なる成分である場合には、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分を適宜選択することで、被着体に応じて第1接着層および第2接着層の物性を調整することができるため、異種部材を接着する場合に適している。第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分を適宜選択することで、硬化後の第1接着層および第2接着層の物性や機能を調整することが出来る。
(iii)その他の成分
第1接着層および第2接着層は他に、シリカやガラスビーズ等の無機粒子や、連鎖移動剤、硬化促進剤、難燃剤、増粘剤、放熱剤、絶縁剤、導電剤、強度向上のための繊維(特にチョップド繊維等)、シリコーン化合物等の粘着付与剤、酸化防止剤、反応抑制剤等の任意の成分を含んでいてもよい。
第1接着層および第2接着層は、着色剤を含んでいてもよい。一方の着色層が着色剤を含む場合には、一方の接着層を着色することで、他方の接着層を有する接着シートとの判別を容易にすることができ、施工時の作業ミスを防ぐことができる。また、両方の接着層が着色剤を含む場合には、接着シートの識別を容易とする観点から、一方の接着層に含まれる着色剤は、他方の着色層に含まれる着色剤と色が異なることができる。すなわち、第1接着層および第2接着層は、それぞれ異なる色を有することができる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック等の顔料、染料等が挙げられる。中でも接着層は顔料を含むことができる。着色剤として顔料を含むことで、顔料に紫外線を吸収させて部材の紫外線劣化を防ぐことができるからである。
また、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方は、例えば、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、赤外線反射剤等の耐候剤を含むことができる。これにより、部材を保護したり、硬化後の接着層の経時劣化を抑制したりすることができる。
(b)性状
第1接着層および第2接着層は、透明であってもよく不透明であってもよいが、透明とすることができる。接着層に含まれる成分が十分に相溶し、粘着性等の所望の機能を発揮可能となるからである。
第1接着層および第2接着層は、硬化前に粘着性を有していてもよく、有さなくてもよいが、粘着性を有することができる。光硬化型や熱硬化型の接着剤は、硬化完了まで養生する必要であるため、上記接着剤を介して部材を貼り合わせてから所望の養生時間、押圧等によりその貼り合せ状態を保持しなければならず、貼合工程の作業が煩雑化してしまう。これに対し、第1接着層および第2接着層が粘着性を有することで、接触硬化が完了するまでの間、双方の接着層が有する粘着力により、部材や接着層同士の貼り合せ状態を保持しながら硬化養生することができる。なお、本明細書内において、「接着層の粘着性」とは、特段の事情が無い限り、接触前(硬化前)の接着層が有する粘着性をいう。
ここで、「粘着」とは「接着」に含まれる概念である。粘着は一時的な接着現象の意味として用いられるのに対し、接着は実質的に永久的な接着現象の意味として用いられる点で区別されることがある(岩波書店 理化学辞典第5版)。「粘着性」および「粘着力」とは、感圧により接着する性質およびそのときの接着力を指す。接着層が粘着性を有するとは、接触硬化前の接着層が、部材を仮固定できる程度の接着力(粘着力)を有することを意味する。すなわち、硬化前の接着層は、硬化後よりも弱い接着力を有する。
接触前(硬化前)の第1接着層および第2接着層の粘着力は、各接着層の種類、被着体の種類および配置態様に応じて適宜設定することができる。第1接着層および第2接着層は、被着体に対する粘着力が、少なくとも0.05N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内とすることができ、中でも0.1N/インチ以上、40N/インチ以下の範囲内とすることができる。
第1接着層および第2接着層は、粘着力の大きさに応じて、さらに強粘着性、中粘着性、弱粘着性に分類することができる。具体的には、粘着力が5N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内を強粘着性、1N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内を中粘着性、0.05N/インチ以上、1N/インチ未満の範囲内を弱粘着性とすることができる。中粘着性は、用途や物性に応じて強粘着性または弱粘着性に含めることができる。第1接着層および第2接着層の粘着性は、厚みや、組成等を調整することで調整が可能である。
第1接着層および第2接着層の各接着層の粘着力は、同じであってもよく異なっても良い。接着層は、粘着力が強いほど凝集力が低く柔軟性を有する層となり、一方、粘着力が弱いほど凝集力が高く硬い層となる。第1接着層および第2接着層のうち、一方が強粘着性である場合には、他方の接着層に密着しやすくなり、第1接着層および第2接着層の各接着層に含まれる成分が互いに移行しやすくなるため、接触による硬化反応が進みやすくなり、反応性を向上させることが可能である。また、第1接着層および第2接着層の一方が弱粘着性である場合には、取扱性が良くなり、作業性を向上させることができるとともに、一度貼り合せても硬化反応が完了する前であれば、第1接着層と第2接着層との接着面での剥離および貼り直しが可能となり、リワーク性を向上させることができる。また、第1接着層および第2接着層の一方が中粘着性である場合には、反応性、作業性、リワーク性がいずれも良好となる。
被着体に対する粘着力は、以下の方法で測定することができる。なお、両面側にセパレータが設けられていない接着シートは、離型フィルムであるセパレータ(例えば、ニッパ社製 PETセパレータPET28×IJ0)を貼り付けてから測定する。まず、接着層の両面にセパレータが設けられた接着シートを縦25.4mm、横150mmのサイズに裁断し、一方のセパレータを剥離して、露出させた接着層上にPETフィルム(東洋紡社製A4100)を手動ローラーを用いて貼り合わせる。その後、もう片方のセパレータを剥離し、露出させた接着層上にSUS板(304BA、被着面:研磨面、試料:縦25.4mm、横150mm)を、手動ローラーを用いて貼り合せる。その後、PETフィルム付きの接着層をSUS板から20mm程、手で剥離し、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、型番:RTF−1150H)を用いて、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)および粘着力の試験法の方法1(温度23℃、湿度50%RH、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠した条件(引張速度:300mm/分、剥離距離:150mm、剥離角:180°)で、SUS板面に対する粘着力(N/インチ)を測定することができる。なお、1インチは25.4mmである。
ここで、上記「少なくとも」とは、最低限の範囲の粘着力を有していれば、接着層を被着体と貼り合わせたときに、その貼り合わせ状態を保持することができる粘着力である範囲を意味する。そして、接着層がこの範囲の粘着力を有する間は、被着体は接着層に対して好ましく貼り合わせることができる。
第1接着層および第2接着層の各接着層の厚みは、被着体の種類等に応じて適宜設定することができ、第1接着層と第2接着層との接触による硬化反応に必要な量の各成分を含有することが可能な厚みとすることができる。具体的には、第1接着層の厚みは、2μm以上、中でも5μm以上、特に20μm以上とすることができ、また、200μm以下、中でも150μm以下、特に100μm以下とすることができる。また、第2接着層の厚みは、2μm以上、中でも5μm以上、特に10μm以上とすることができ、また、200μm以下、中でも150μm以下、特に100μm以下とすることができる。
第1接着層および第2接着層の各接着層の厚みは、同じであってもよく、異なっていてもよい。中でも、第2接着層が第1接着層より厚みを小さくすることが出来る。一般に、厚みと粘着力の強さとは比例関係にあり、厚みの大きい接着層は粘着力が強くなり柔らかい層となり、厚みの小さい接着層は粘着力が弱くなり硬い層となる。そのため、第1接着層および第2接着層の厚みが異なる場合には、すなわち柔軟さの異なる接着層を組み合わせる場合には、上述したように、リワーク性、保持特性、反応性を高めることができる。
また、第1接着層に貼り合わせる第1部材の被着面、または、第2接着層に貼り合わせる第2部材の被着面が粗面である場合は、接着層の厚みは大きくすることができる。具体的には、各部材の被着面の凹凸の高低差以上の厚みとすることができる。第1接着層および第2接着層が上記被着面の凹凸の高低差以上の厚みを有さない場合は、第1接着層および第2接着層が凹凸に追従できず、第1接着層および第2接着層と被着面との接着面積が少なくなるため、所望の期間、被着体を保持することができなくなるからである。
第1接着層および第2接着層は、接触硬化により硬化接着層となる。硬化接着層については後述する。
(2)第1セパレータおよび第2セパレータ
第1セパレータは、第1接着層から剥離可能であれば特に限定されず、第1接着層を保護することが可能な程度の強度を有することができる。また、第2セパレータは、第2接着層から剥離可能であれば特に限定されず、第2接着層を保護することが可能な程度の強度を有することができる。このようなセパレータとしては、例えば、離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、セパ紙、剥離フィルム、剥離紙等の従来公知のものを用いることができる。具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン、フッ素フィルム等が挙げられる。また、セパレータは、上記に例示した単層で離型性を有していてもよいが、上質紙、コート紙、含浸紙、プラスチックフィルム等の離型紙用基材の片面または両面に離型層を形成した積層体を用いてもよい。離型層としては、離型性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、シリコーン化合物、有機化合物変性シリコーン化合物、フッ素化合物、アミノアルキド化合物、メラミン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物、長鎖アルキル化合物等がある。これらの化合物は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用できる。
被着体の被着面が粗面である場合は、上記セパレータは柔軟性を有することができる。各接着シートを各部材に貼り合わせる際に、接着層の伸びにセパレータも追従可能となるからである。このようなセパレータとしては、例えばPEフィルム等が挙げられる。
上記セパレータは、接着層に含有される材料の種類や被着体を貼り合わせる施工環境に応じて、遮光性を有していてもよい。貼合工程までの間に接着層が紫外線等の照射を受けて劣化するのを抑制することができるからである。遮光性を有するセパレータとしては、例えば、アルミ箔セパレータ、アルミ蒸着フィルムや紙セパレータ、着色セパレータ、紫外線吸収剤入りのフィルムセパレータ等が挙げられる。
また、上記セパレータは、接着層と接する面に易剥離処理が施されていてもよい。
第1接着シートにおける第1セパレータおよび第2接着シートにおける第2セパレータは、それぞれ同一色であってもよく、異なる色を有していてもよい。中でも、第1セパレータおよび第2セパレータは、それぞれ異なる色を有することができる。第1接着シートおよび第2接着シートの判別が容易になるからである。
被着体に貼り付ける前の接着シートは、接着層の両面にセパレータを有していてもよい。接着層の両面にセパレータを有する場合、各面に配置されるセパレータは同一であってもよく異なってもよいが、一方が軽剥離性を有し、他方が重剥離性を有することができる。
(3)仕様
第1接着シートは、第1接着層が、第1セパレータの少なくとも一方の面側に設けられていればよく、第1セパレータの少なくとも一方の面側の全面に設けられていてもよく、第1セパレータの少なくとも一方の面側にパターン状に設けられていてもよい。第1接着層が第1セパレータの一方の面側にパターン状に設けられているとは、第1セパレータの一方の面側において、第1接着層が設けられている部分と、第1接着層が設けられていない部分とを、それぞれ有するこという。なお、第1接着層が第1部材の一方の面側にパターン状に設けられている場合も同様に定義することができる。
図2(a)、(b)は、第1接着シートの一例を示す概略平面図およびA−A線断面図であり、第1接着層22が、第1セパレータ21の一方の面側にパターン状に設けられており、複数の第1接着部22aを有する。
また、第2接着シートは、第2接着層が、第2セパレータの少なくとも一方の面側に設けられていればよく、第2セパレータの少なくとも一方の面側の全面に設けられていてもよく、第2セパレータの少なくとも一方の面側にパターン状に設けられていてもよい。ここで、第2接着層がパターン状に設けられているとは、第2セパレータの一方の面側において、第2接着層が設けられている部分と、第2接着層が設けられていない部分とを、それぞれ有するこという。なお、第2接着層が第2部材の一方の面側にパターン状に設けられている場合も同様に定義することができる。
第1接着シートが、第1セパレータの一方の面側の全面に第1接着層が設けられている場合、上記第1接着層は切込部により区切られていてもよい。第1接着層が切込部により区切られ、若しくは、第1接着層がパターン状に設けられることで、上記第1接着シートは、第1セパレータの一方の面側に、1以上の第1接着部を有する第1接着層が設けられている一面付けまたは多面付けとすることが出来る。なお、第1接着層が有する第1接着部が1つである場合、第1接着シートは一面付けである。
また、第2接着シートが、第2セパレータの一方の面側の全面に第2接着層が設けられている場合、上記第2接着層は切込部により区切られていてもよい。第2接着層が切込部により区切られ、若しくは、第2接着層がパターン状に設けられることで、上記第2接着シートは、第2セパレータの一方の面側に、1以上の第2接着部を有する第2接着層が設けられている一面付けまたは多面付けとすることが出来る。なお、第2接着層が有する第2接着部が1つである場合、第2接着シートは一面付けである。
以下、第1接着シートに想定される仕様について説明する。なお、第2接着シートの各仕様は、第1接着シートの各仕様と同様とすることが出来るため、説明を省略する。
(a)第1接着シートの第1仕様
本仕様の第1接着シートは、上記第1接着層が、第1セパレータの少なくとも一方の面側の全面に設けられており、切込部を有しない。本仕様の第1接着シートは、第1接着層が1つの第1接着部となる一面付けである。
本仕様の第1接着シートは、例えば、後述する第1接着シート準備工程において、上記第1接着部の第1セパレータが配置されていない面に、1つの部材を貼り合わせて、一面付けの第1接着シート付部材とすることができる。また、後述する第1接着シート準備工程において、上記第1接着部の第1セパレータが配置されていない面に、複数の第1部材をパターン状に貼り合わせて、多面付けの第1接着シート付部材とすることもできる。
(b)第1接着シートの第2仕様
本仕様の第1接着シートは、第1接着層が、第1セパレータの少なくとも一方の面側の全面に設けられており、上記第1接着層が、上記第1接着層を厚み方向に切断する切込部を有し、上記切込部により画定される第1接着部を有する。
本仕様の第1接着シートは、第1接着層は切込部によって厚み方向に切断されており、第1接着部は切込部により画定される。上記第1接着層は、1つの第1接着部を有していても良く、複数の第1接着部を有していてもよい。また、切込部により画定される第1接着部の大きさおよび形状としては、第1部材の被着面の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。
図3(a)、(b)に例示する本仕様の第1接着シート11は、第1セパレータ21の一方の面側の全面に第1接着層22が設けられており、第1接着層22が、第1接着層22を厚み方向に切断する切込部25を有し、切込部25により画定される複数の第1接着部22aを有する。図3(b)は図3(a)のA−A線断面図である。
本仕様の第1接着シートにおいて、第1接着層が1つの第1接着部を有する場合、例えば、後述する第1接着シート準備工程において、1つの第1接着部の第1セパレータが配置されていない面に、1つの第1部材を貼り合わせて、一面付けの第1接着シート付部材とすることができる。また、本仕様の第1接着シートにおいて、第1接着層が複数の第1接着部を有する場合、例えば、後述する第1接着シート準備工程において、複数の第1接着部の第1セパレータが配置されていない面に、複数の第1部材をそれぞれ貼り合わせて、図5(a)、(b)に例示する多面付けの第1接着シート付部材とすることができる。図5(b)は図5(a)のA−A線断面図であり、図5に例示する第1接着シート付部材については後で説明する。
(c)接着シートの第3仕様
本仕様の第1接着シートは、上記第1接着層が第1セパレータの少なくとも一方の面側にパターン状に設けられており、上記第1接着層が、パターン状の第1接着部を有する。
本仕様の第1接着シートにおいて、上記第1接着層は、1つの第1接着部を有していても良く、複数の第1接着部を有していてもよい。また、上記の場合の第1接着部の大きさおよび形状としては、第1部材の被着面の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。
図2(a)、(b)に例示する本仕様の第1接着シート11は、第1接着層22が第1セパレータ21の一方の面側にパターン状に設けられており、第1接着層22が、パターン状の複数の第1接着部22aを有する。図2(b)は図2(a)のA−A線断面図である。
本仕様の第1接着シートにおいて、第1接着層が1つの接着部を有する場合は、例えば、後述する第1接着シート準備工程において、1つの第1接着部の第1セパレータが配置されていない面に、1つの第1部材を貼り合わせて、一面付けの第1接着シート付部材とすることができる。また、本仕様の第1接着シートにおいて、第1接着層が複数の第1接着部を有する場合は、例えば、後述する第1接着シート準備工程において、複数の上記第1接着部の第1セパレータが配置されていない面に、複数の第1部材をそれぞれ貼り合わせて、図6(a)、(b)に例示する多面付けの第1接着シート付部材とすることができる。図6(b)は図6(a)のA−A線断面図であり、図6に例示する第1接着シート付部材については後で説明する。
B.第1接着シート付部材準備工程および第2接着シート付部材準備工程
第1接着シート付部材準備工程は、上記第1部材に、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートの、上記第1接着層の他方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する工程である。また、第2接着シート付部材準備工程は、上記第2部材に、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートの、上記第2接着層の他方の面が貼り合されている、第2接着シート付部材を準備する工程である。
第1接着シート付部材準備工程および第2接着シート付部材準備工程は、順不同でそれぞれ独立して行うことが出来る。
1.第1接着シート付部材および第2接着シート付部材
第1接着シート付部材準備工程において準備する第1接着シート付部材は、上記第1部材に、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートの、上記第1接着層の他方の面が貼り合されている。また、第2接着シート付部材準備工程において準備する第2接着シート付部材は、上記第2部材に、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートの、上記第2接着層の他方の面が貼り合されている。
第1接着シート付部材における第1部材および第2接着シート付部材第2部材は、同種部材であってもよく、異種部材であってもよい。異種部材としては、例えば材料、性質、性状、機能、形態等が異なる部材を挙げることができる。具体的な部材については、特に限定されないが、例えば、工業用部材、建築用部材、自動車用部材、インフラストラクチャー(インフラ)用部材、電子用部材等が挙げられる。建築用部材、自動車用部材、インフラ用部材、電子用部材の具体例については、後述する。なお、第1部材および第2部材の一方は、固定されていてもよい。
第1接着シート付部材は、第1接着シートに1つの第1部材が配置された一面付けであってもよく、第1接着シートに複数の第1部材がそれぞれ配置された多面付けであってもよい。第1接着シート付部材が一面付けであれば、貼合工程において、上記1つの第1部材を第1接着層と共に第1セパレータから剥離して、第2接着シート付部材の第2接着層の上記一方の面に貼り合わせることが可能となる。これにより、1つの第1接着シート付部材から1つの物品を製造することが出来る。一方、第1接着シート付部材が多面付けであれば、貼合工程において、各第1部材を第1接着層の第1接着部と共に第1セパレータから剥離して、第2接着シート付部材の第2接着層の上記一方の面に貼り合わせることが可能となる。これにより、1つの第1接着シート付部材から複数の物品を製造することが出来る。第2接着シート付部材についても同様に、一面付けであっても良く、多面付けであってもよい。
以下、第1接着シート付部材に想定される仕様について説明する。なお、第2接着シート付部材の各仕様は、第1接着シート付部材の各仕様と同様とすることが出来るため、説明を省略する。
(1)第1接着シート付部材の第1仕様
本仕様の第1接着シート付部材は、第1部材層に、第1接着シートの第1接着層の他方の面が貼り合されており、上記第1接着層および上記第1部材層は、上記第1接着層および上記第1部材層を厚み方向に切断する切込部を有し、上記第1接着層は、上記切込部により画定される第1接着部を有し、上記第1部材層は、上記切込部により画定される上記第1部材を有する。
ここで、第1部材層とは、第1接着層の他方の面の全面に貼り合わされ、切込部により画定される前の第1部材をいう。
本仕様の第1接着シート付部材において、上記第1接着層は、上記切込部により画定される1つの上記第1接着部を有し、上記第1部材層は、上記切込部により画定される1つの上記第1部材を有していてもよい。この場合、本仕様の第1接着シート付部材は、上記第1接着部および上記第1部材が順に積層された第1接着部付部材を1つ有する一面付けとすることが出来る。
また、本仕様の第1接着シート付部材において、上記第1接着層は、上記切込部により画定される複数の上記第1接着部を有し、上記第1部材層は、上記切込部により画定される複数の上記第1部材を有していてもよい。この場合、本仕様の第1接着シート付部材は、上記第1接着部および上記第1部材が順に積層された第1接着部付部材を複数有する多面付けとすることができる。
切込部により画定される第1接着部および第1部材の大きさおよび形状は、被着体の被着面の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。
図4(a)、(b)は、第1接着シート付部材の第1仕様の一例を示す概略平面図およびA−A線断面図である。本仕様の第1接着シート付部材20は、第1部材層1aに、第1接着シート11の第1接着層22の他方の面が貼り合されており、第1接着層22および第1部材層1aは、第1接着層22および第1部材層1aを厚み方向に切断する切込部25を有し、第1接着層22は、切込部25により画定される複数の第1接着部22aを有し、第1部材層1aは、切込部25により画定される複数の第1部材1を有する。
(2)第1接着シート付部材の第2仕様
本仕様の第1接着シート付部材は、上記第1接着シートの上記第1接着層が、上記第1接着層を厚み方向に切断する切込部を有し、上記切込部により画定される第1接着部を有し、上記第1接着部の上記第1セパレータが配置されていない面に、上記第1部材が貼り合わされている。
本仕様の第1接着シート付部材において、上記第1接着シートの上記第1接着層が、上記第1接着層を厚み方向に切断する切込部を有し、上記切込部により画定される1つの第1接着部を有し、上記第1接着部の上記第1セパレータが配置されていない面に、1つの上記第1部材が貼り合わされていてもよい。この場合、本仕様の第1接着シート付部材は、上記第1接着部および上記第1部材が順に積層された第1接着部付部材を1つ有する一面付けとすることが出来る。
また、本仕様の第1接着シート付部材において、上記第1接着シートの上記第1接着層が、上記第1接着層を厚み方向に切断する切込部を有し、上記切込部により画定される複数の第1接着部を有し、複数の上記第1接着部の上記第1セパレータが配置されていない面に、複数の上記第1部材がそれぞれ貼り合わされていてもよい。この場合、本仕様の第1接着シート付部材は、上記第1接着部および上記第1部材が順に積層された第1接着部付部材を複数有する多面付けとすることができる。
切込部により画定される第1接着部の大きさおよび形状は、被着体の被着面の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。また、配置する第1部材の大きさおよび形状は、第1接着部の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。
図5(a)、(b)は、第1接着シート付部材の第2仕様の一例を示す概略平面図およびA−A線断面図である。本仕様の第1接着シート付部材20は、第1接着シート11の第1接着層22が、第1接着層22を厚み方向に切断する切込部25を有し、切込部25により画定される複数の第1接着部22aを有し、複数の第1接着部22aの第1セパレータ21が配置されていない面に、複数の第1部材1がそれぞれ貼り合わされている。
(3)第1接着シート付部材の第3仕様
本仕様の第1接着シート付部材は、上記第1接着シートの上記第1接着層がパターン状に設けられており、上記第1接着層がパターン状の第1接着部を有し、上記第1接着部の上記第1セパレータが配置されていない面に、上記第1部材が貼り合わされている。
本仕様の第1接着シート付部材において、上記第1接着シートの上記第1接着層は、パターン状の1つの第1接着部を有し、上記第1接着部の上記第1セパレータが配置されていない面に、1つの上記第1部材が貼り合わされていてもよい。この場合、本仕様の第1接着シート付部材は、上記第1接着部および上記第1部材が順に積層された第1接着部付部材を1つ有する一面付けとすることが出来る。
また、本仕様の第1接着シート付部材において、上記第1接着シートの上記第1接着層がパターン状に設けられており、上記第1接着層がパターン状の複数の第1接着部を有し、複数の上記第1接着部の上記第1セパレータが配置されていない面に、複数の上記第1部材がそれぞれ貼り合わされていてもよい。この場合、本仕様の第1接着シート付部材は、上記第1接着部および上記第1部材が順に積層された第1接着部付部材を複数有する多面付けとすることができる。
図6(a)、(b)は、第1接着シート付部材の第3仕様の一例を示す概略平面図およびA−A線断面図である。本仕様の第1接着シート付部材20は、第1接着シート11の第1接着層22がパターン状に設けられており、第1接着層22がパターン状の複数の第1接着部22aを有し、複数の第1接着部22aの第1セパレータ21が配置されていない面に、複数の第1部材1がそれぞれ貼り合わされている。
第1接着部の大きさおよび形状は、被着体の被着面の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。また、配置する第1部材の大きさおよび形状は、第1接着部の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。
(4)第1接着シート付部材の第4仕様
本仕様の第1接着シート付部材は、上記第1接着シートの上記第1接着層が、第1セパレータの一方の面側の全面に設けられ、上記第1接着層の上記第1セパレータが配置されていない面に第1部材が貼り合わされている。
本仕様の第1接着シート付部材は、上述した第2仕様の第1接着シート付部材の第1接着層が切込部を有さない仕様と同様である。
本仕様の第1接着シート付部材においては、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記第1セパレータが配置されていない面に、1つの第1部材が貼り合わされていてもよく、複数の第1部材がパターン状に貼り合わされていてもよい。配置する第1部材の大きさおよび形状は、適宜調整される。
図7(a)、(b)は、第1接着シート付部材の第4仕様の一例を示す概略平面図およびA−A線断面図である。本仕様の第1接着シート付部材20は、第1接着シート11の第1接着層22の第1セパレータ21が配置されていない面に、複数の第1部材1がパターン状に配置されている。
2.第1接着シート付部材準備工程および第2接着シート付部材準備工程
第1接着シート付部材を準備する方法としては、別途形成した第1接着シートと第1部材と貼り合せても良く、第1部材上に直接第1接着シートを形成してもよい。中でも、第1接着シート付部材は、別途形成した第1接着シートと第1部材とを貼り合せて形成することができる。すなわち、第1接着シート付部材準備工程は、上記第1セパレータの少なくとも一方の面側に上記第1接着層を形成して、上記第1接着シートとする第1接着シート準備工程と、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記他方の面を、上記第1部材に貼り合わせる第1接着シート貼合工程と、を含むことができる。
また、第2接着シート付部材を準備する方法も、第1接着シート付部材の準備方法と同様とすることができる。中でも、第2接着シート付部材は、別途形成した第2接着シートと第2部材とを貼り合せて形成することができる。すなわち、第2接着シート付部材準備工程は、上記第2セパレータの少なくとも上記一方の面側に上記第2接着層を形成して、上記第2接着シートとする第2接着シート準備工程と、上記第2接着シートの上記第2接着層の上記他方の面を、上記第2部材に貼り合わせる第2接着シート貼合工程と、を含むことができる。
図8(a)〜(c)は、第1接着シート付部材準備工程の一例を示す工程図であり、図8(a)は第1接着シート準備工程、図8(b)、(c)は第1接着シート貼合工程を示す。図示しないが、第2接着シート付部材準備工程についても同様とすることができる。
接着シート付部材準備工程は、接着シート準備工程および接着シート貼合工程の順で行うことで、場所、環境、時間などが関係なく、第1接着シート付部材および第2接着シート付部材を別々に作製できる。ここで、各接着シート準備工程では、セパレータ上に接着層を形成する際に接着層の厚み管理が可能となるため、接着層は位置精度や厚み精度が良い。このため、接着シート貼合工程において、部材および接着層を精度良く貼り合せることができる。また、別途、接着シートを準備することから、部材上に接着層を形成しないため、接着剤の塗布ムラ、塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、接着シートおよび部材を所望のタイミングで貼り合わせることができるため、接着シートおよび部材を単体で取り扱うことが出来、取り扱いが容易となる。以下、各工程について説明する。
(1)第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程
第1接着シート準備工程は、上記第1セパレータの上記少なくとも上記一方の面側に上記第1接着層を形成して、上記第1接着シートとする工程である。また、第2接着シート準備工程は、上記第2セパレータの上記少なくとも上記一方の面側に上記第2接着層を形成して、上記第2接着シートとする工程である。
第1接着シートの第1接着層は、例えば、第1接着剤成分を含有する第1接着剤組成物を第1セパレータの少なくとも一方の面に塗布し、乾燥することで形成することができる。上記第1接着剤組成物は、少なくとも第1接着剤成分を含有し、さらに第1相溶性重合体成分を含むことができる。また、第2接着シートの第2接着層は、例えば、第2接着剤成分を含有する第2接着剤組成物を第2セパレータの少なくとも上記一方の面に塗布し、乾燥することで形成することができる。上記第2接着剤組成物は、少なくとも第2接着剤成分を含有し、さらに第2相溶性重合体成分を含むことができる。上記第1接着剤組成物および上記第2接着剤組成物は、必要に応じて溶剤を含むことが出来る。
上記第1接着剤組成物は、第1セパレータの少なくとも上記一方の面の全面に塗布しても良く、第1セパレータの少なくとも上記一方の面にパターン状に塗布してもよい。上記第2接着剤組成物についても同様である。各接着剤組成物の塗布方法は特に限定されず、公知の印刷法やコーティング法を用いることができる。接着層をセパレータの少なくとも上記一方の面にパターン状に形成する場合には、セパレータの少なくとも上記一方の面に接着剤組成物を配置する部分と配置しない部分とをそれぞれ有するようにパターン状に塗布すればよい。このような塗布方法としても特に限定されず、公知の印刷法やコーティング法を用いることができる。塗布層の乾燥条件は、塗布層中に含まれている溶剤を十分揮発させることができる程度の条件で行うことができ、組成に応じて適宜設定することができる。
第1接着シートは、第1接着剤組成物を第1セパレータの少なくとも上記一方の面に塗布し乾燥して第1接着層を形成後、上記第1接着層の露出面に他の第1セパレータを配置することで、第1接着層の一方の面側および他方の面側にそれぞれ第1セパレータを有することも可能である。第2接着シートについても同様である。
第1接着層に切込部を形成する場合、切込部の形成方法としては、例えばハーフカット加工、ピンホール処理、レーザー加工等を用いることができる。第1接着層の一方の面側および他方の面側にそれぞれ第1セパレータを有する場合であれば、一方の第1セパレータの面に第1接着層を形成した後、第1接着層上に他方の第1セパレータを配置する前に、第1接着層に切込部を形成してもよい。また、上記の場合、一方の第1セパレータの面に第1接着層を形成し、第1接着層の露出面に他方の第1セパレータを配置した後に、第1接着層および上記第1接着層の他方の第1セパレータに切込部を形成してもよい。さらに、第1接着層に切込部を形成した後、切込部により画定される第1接着部以外の部分を除去することにより、第1接着層をパターン状とすることもできる。第2接着層に切込部を形成する場合も同様とすることが出来る。
本工程において準備する第1接着シートは、枚葉であってもよく、長尺であってもよい。また、上記第1接着シートは、一面付けであってもよく多面付けであってもよい。第2接着シートについても同様である。
(2)第1接着シート貼合工程および第2接着シート貼合工程
第1接着シート貼合工程は、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記他方の面を、上記第1部材に貼り合わせる工程である。また、第2接着シート貼合工程は、上記第2接着シートの上記第2接着層の上記他方の面を、上記第2部材に貼り合わせる工程である。
第1接着シート貼合工程において、第1部材は、第1接着シートの仕様に応じて貼り合わせることが出来る。例えば、第1接着シートが上述した第2仕様である場合、図9(b)に例示するように、複数の第1接着部22aの第1セパレータ21が配置されていない面に、複数の第1部材1をそれぞれ貼り合せることができる。図9は、本実施形態の物品の製造方法の他の例を示す工程図であり、図9(a)は第2接着シート付部材準備工程における第2接着シート貼合工程、図9(b)は第1接着シート付部材準備工程における第1接着シート貼合工程、図9(c)〜(e)は貼合工程を示す。
また、第1接着シートが上述した第3仕様である場合、図10(b)に例示するように、複数の第1接着部22aの第1セパレータ21が配置されていない面に、複数の第1部材1をそれぞれ貼り合せることができる。図10は、本実施形態の物品の製造方法の他の例を示す工程図であり、図10(a)は第2接着シート付部材準備工程における第2接着シート貼合工程、図10(b)は第1接着シート付部材準備工程における第1接着シート貼合工程、図10(c)〜(e)は貼合工程を示す。
また、図示しないが、第1接着シートが上述した第1仕様である場合は、第1接着層の一方の面の所望の位置に、複数の第1部材をパターン状に貼り合せることができる。
第2接着シート貼合工程における、各仕様の第2接着シートと第2部材との貼合方法についても、上述した第1接着シート貼合工程における、各仕様の第1接着シートと第1部材との貼合方法と同様とすることが出来る。
第1部材と第1接着シートとの貼合方法は、第1接着シートの形態に応じて適宜選択することができる。第1接着層の一方の面側に第1セパレータを有する第1接着シートを用いる場合であれば、例えば、第1接着層を巻内面としてロール状に巻回された第1接着シートロールを用い、第1接着シートロールから必要量を巻き出して、第1接着層側を第1部材に配置した後切断して貼り合せることができる。また、第1接着シートが多面付けである場合には、第1接着シートの第1接着層側の面を第1部材に配置した後、切断して貼り合せることができる。さらに、第1接着層の一方の面側および他方の面側にそれぞれ第1セパレータが配置された第1接着シートを用いる場合であれば、枚葉の第1接着シートを用い、第1接着シートの一方の面側の第1セパレータを剥離して第1接着層を露出させ、その上に第1部材を貼り合せることができる。第2部材と第2接着シートとの貼合方法についても同様である。
第1接着シート貼合工程において、第1接着シートは第1部材の被着面全域に貼り合せてもよく、第1部材の被着面の周縁に枠形状に貼り合せてもよい。第1接着シートを貼り合せる際は、スキージ等を用いて第1部材と第1接着シートの第1接着層との接着面に気泡が入らないようにすることができる。第2部材と第2接着シートとの貼合方法についても同様である。
第1接着シート貼合工程においては、第1部材および第1接着シートは、接触状態で押圧してもよく、接触状態で加熱してもよく、押圧および加熱の両方を同時に行う加熱圧着を行ってもよい。第1接着層が第1部材の隙間に入り込みやすくなり、第1接着シートと第1部材との貼合強度を高めることができるからである。押圧方法としては、例えば、軽く振動を与えながらローラーを用いて押圧する方法が挙げ荒れる。また、加熱方法としては、例えば、サーマルヘッドを用いる方法等が挙げられる。さらに、加熱圧着方法としては、例えば、アイロンを押し当てて加熱圧着する方法等が挙げられる。第2接着シート貼合工程においても同様である。
さらに、上記第1接着シート貼合工程においては、第1接着シートが有する第1接着層が所定の粘着力を有する場合、第1部材の貼り合せ位置を決める位置決め工程を有することが可能である。第1接着層が所望の粘着力を示すことで、貼合工程を行う際に貼り合せ位置が所望の位置となるように、第1部材上で接着シートを貼り直すことが可能となるからである。例えば、第1接着シートの第1接着層が所望の粘着力を示せば、第1接着シート付部材準備工程は、第1接着シート準備工程と、第1接着シート貼合工程と、第1部材の貼り合せ位置を決める位置決め工程と、を含むことができる。このとき、第1接着層を有する第1接着シートと貼り合せる第1部材は、特に限定されないが、例えば、固定部材とすることができ、物品の製造方法を建築物品の製造方法に適用する場合、建築構造物を構成する躯体(壁や床)とすることができる。第2接着シート貼合工程においても同様である。
(3)その他の工程
上記第1接着シート付部材が、第1部材層に、上記第1接着シートの上記第1接着層の他方の面が貼り合されている場合、第1接着シート付部材準備工程は、第1接着シート貼合工程において、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記他方の面を、上記第1部材層に貼り合わせた後に、第1セパレータの上記一方の面側に設けられた上記第1接着層および上記第1部材層を厚み方向に切断する切込部を形成し、上記切込部により1以上の第1部材および1以上の第1接着部を画定する画定工程を行っても良い。1以上の第1接着部付部材を形成することが出来るからである。図11(c)は、第1接着シート付部材準備工程における画定工程の一例を示している。なお、図11は、本実施形態の物品の製造方法の一例を示す工程図であり、図11(a)は第1接着シート付部材準備工程における第1接着シート貼合工程、図11(b)は第2接着シート付部材準備工程における第2接着シート貼合工程、図11(d)〜(f)は貼合工程を示す。
同様に、第2接着シート付部材が、第2部材層に、上記第2接着シートの、上記第2接着層の他方の面が貼り合されている場合、第2接着シート付部材準備工程は、第2部材貼り合せ工程の後に、第2セパレータの上記一方の面側に設けられた上記第2接着層および上記第2部材層を厚み方向に切断する切込部を形成し、上記切込部により1以上の第2部材および1以上の第2接着部を画定する画定工程を行っても良い。
また、図示しないが、上記接着シート付部材が第4仕様である場合、第1接着シート付部材準備工程は、第1接着シート貼合工程後に、上記第1部材の外周に沿って上記第1接着層を厚み方向に切断する切込部を形成し、上記切込部により1以上の第1接着部を画定する画定工程を行っても良い。また、上記画定工程後、切込部により画定される第1接着部以外の部分を除去する除去工程を行っても良い。さらに、上記第1接着シート付部材が第4仕様である場合、上記画定工程において、上記切込部は、さらに上記第1セパレータの厚み方向を切断するように形成してもよい。第1接着シート付部材を個片化することが出来るからである。切込部の形成方法については、上述した方法と同様である。第2接着シート付部材準備工程においても同様である。
C.貼合工程
貼合工程は、上記第1接着シート付部材の上記第1セパレータ、および上記第2接着シート付部材の上記第2セパレータをそれぞれ剥離して、上記第1接着層の上記一方の面と上記第2接着層の上記一方の面とを貼り合わせる工程である。
接着シート付部材が多面付けである場合には、多面付けの接着シート部材から、上記接着部および上記部材が順に積層された接着部付部材を剥離して、他方の接着シート付部材、若しくは他方の接着部付部材に貼り合せることができる。
例えば、第1接着シート付部材が第1仕様または第2仕様である場合、図11(d)〜(f)または図9(c)〜(e)に示すように、第1接着シート付部材20のセパレータ21から、第1接着部22aおよび第1部材1が順に積層された第1接着部付部材31を剥離して、第2部材2の第2接着層24の一方の面に貼り合せることができる。
また、第1接着シート付部材が第3仕様の場合である場合、図10(c)〜(e)に示すように、第1接着シート付部材20の第1セパレータ21から、第1接着部22aおよび第1部材1が順に積層された第1接着部付部材31を剥離して、第2部材2の第2接着層24の一方の面に貼り合せることができる。図示しないが、第2接着シート付部材についても同様とすることが出来る。
本工程においては、上記第1接着シート付部材の上記第1セパレータを剥離する第1セパレータ剥離操作、上記第2接着シート付部材の上記第2セパレータを剥離する第2セパレータ剥離操作、および上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の上記一方の面と上記第2接着シート付部材の上記第2接着層の上記一方の面とを貼り合わせる貼合操作を含む。各操作はそれぞれ別々に行ってもよく、3つの操作のうち少なくとも2以上の操作を同時に行っても良い。第1セパレータ剥離操作、第2セパレータ剥離操作、および貼合操作のうち少なくとも2つ以上の操作を同時に行うとは、具体的には、同一の製造ライン上で第1セパレータ剥離操作と第2セパレータ剥離操作とを同時に行う場合、同一の製造ライン上で第1セパレータ剥離操作または第2セパレータ剥離操作と貼合操作とを同時に行う場合、同一の製造ライン上で第1セパレータ剥離操作、第2セパレータ剥離操作、および貼合操作を同時に行う場合等が挙げられる。
ここで、本明細書内において、2以上の操作を同時に行うとは、2以上の操作が重複して行われる時間が存在する、若しくは、2以上の操作が重複して行われる時間が存在しない場合であっても、一方の操作と他方の操作とが連続して行われ、一方の操作の終了から他方の操作の開始までの時間が所定の範囲内であることをいう。一方の操作の終了から他方の操作の開始までの時間としては、具体的には1分以下、中でも0.5分以下とすることができる。3以上の操作が重複して行われる場合は、1つの操作の終了から次の操作の開始までの時間を上記の範囲内としてもよく、また、最初の操作の終了から最後の操作の開始までの時間を上記の範囲内としてもよい。なお、本開示の物品の製造方法の各実施態様において、2以上の工程を同時に行う場合も同様に定義することが出来る。
上記第1セパレータ剥離操作において第1セパレータを剥離する方法は、特に限定されず、手動または吸着等の機械的方法により第1接着層付部材をピックアップする方法、手動または機械で第1セパレータを巻き取りながら剥離する方法等が挙げられる。上記第2セパレータ剥離操作においても同様である。
上記貼合操作において、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層と上記第2接着シート付部材の上記第2部材の上記第2接着層とを貼り合わせる方法は、特に限定されず、例えば、第1接着シート付部材の第1接着層と、第2接着シート付部材の第2接着層とを向かい合わせて、直上方向から貼り合せる方法を用いることができる。
また、他の貼り合せ方法としては、一方の接着シート付部材に対して、他方の接着シート付部材を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。例えば、液状接着剤を用いる場合、液状接着剤が塗布された部材を移動させて貼り合せることは非常に困難である。また、液状接着剤が塗布された部材を移動させると、被着面からの液状接着剤のはみ出しや液垂れが生じてしまう。一方、接着シートでは、予め液状材料がシート化されているため、接着シート付部材を移動させて貼り合せることができる。上記の方法の場合、移動する接着シート付部材の接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、容易に剥離可能であり、貼り直しが可能となるからである。
さらに、他の貼り合せ方法としては、一方の部材が固定されており、固定された一方の接着シート付部材に対して、他方の接着シート付部材を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。
また、他の貼り合せ方法としては、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方が低粘性または高粘性を示す場合、第1接着シート付部材の第1接着層と、第2接着シート付部材の第2接着層とを向かい合わせて、一方を他方の被着面に対して平行方向にスライド移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。上記の貼り合せ方法は、例えば、第1部材および第2部材の接着面が水平面に対して、−45度以上+45度以下の範囲内、中でも−30度以上+30度以下の範囲内、特に−15度以上+15度以下の範囲内である場合に適している。
さらに、他の貼り合せ方法としては、第1接着層の一方の面および第2接着層の一方の面に対してせん断力を与えながら、第1接着シート付部材の第1接着層と、第2接着シート付部材の第2接着層とを貼り合せる方法を挙げることができる。中でも、例えば一方の接着シート付部材の被着面に対して斜め上方向から他方の接着シート付部材を貼り合せる場合には、接着層の面はせん断力を受けるため、有利である。上記の場合、少なくとも一方の接着シート付部材の接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。リワーク性が向上するため、接着層の面にせん断力を与えた場合に、接着層の厚みがさらに不均一になりにくくすることができる。
本工程は、第1接着層および第2接着層間の粘着力の強弱に応じて、第1部材と第2部材との貼合に際し、一方を貼り直して位置決めする位置決め操作を有していてもよい。
上記第1接着層および第2接着層は、接触により硬化反応を生じることができる。第1接着層および第2接着層の硬化温度は、常温を含むことができ、例えば5℃以上180℃以下の範囲内で設定することができる。硬化温度が常温を含むことで、加熱や冷却を行わなくてもよいようにできるため、物品の製造を簡便にすることができる。なお、常温とは23℃をいう。
また、第1接着層および第2接着層は、接触状態で加熱してもよい。第1接着層および第2接着層を接触させた状態で加熱することで、第1接着層および第2接着層の粘度を低下させて、第1接着層および第2接着層の密着性を高め、第1接着層および第2接着層に含まれる成分を移行しやすくすることができ、硬化反応を促進させることができるからである。また、第1接着層および第2接着層が粘着性を有さない場合や粘着性が低い場合でも、第1接着層および第2接着層を加熱することで、粘着性を発現させたり粘着性を高めたりすることができ、第1接着層および第2接着層の密着性を高めることができる。加熱温度は、第1接着層および第2接着層の組成に応じて適宜設定することができるが、例えば、30℃以上120℃以下の範囲内とすることができ、中でも40℃以上80℃以下の範囲内とすることができる。加熱温度が高すぎると、第1接着層および第2接着層のフロー性が大きくなり、接着剤が被着面からはみ出してしまい、はみ出た状態で硬化が進むことで外観不良の原因となる場合があるからである。また、低分子の単量体成分等の第1接着層および第2接着層に含まれる成分によっては、高温下で臭気が発生する。一方、加熱温度が低すぎると、硬化促進効果があまり得られず、工程時間の短縮が図りにくい場合がある。
また、第1接着層および第2接着層は、接触状態で押圧してもよい。第1接着層および第2接着層を接触させた状態で押圧することで、第1接着層および第2接着層を密着させ、第1接着層および第2接着層に含まれる成分を移行しやすくすることができ、硬化反応を促進させることができるからである。押圧方法としては、例えばローラーを用いて押圧する方法等が挙げられる。
また、第1接着層および第2接着層は、接触状態で光を照射してもよい。例えば、第1接着層および第2接着層の少なくともいずれか一方が光により活性化される成分を有する場合には、第1接着層および第2接着層を接触させた状態で光を照射することで、硬化反応を促進させることができる。また、上記の場合であって、第1接着層および第2接着層が粘着性を有さない場合や粘着性が低い場合でも、第1接着層および第2接着層に光を照射することで、粘着性を発現させたり粘着性を高めたりすることができ、第1接着層および第2接着層の密着性を高めることができる。照射する光は、反応性を高めることが可能であれば特に限定されないが、例えば、紫外光が挙げられる。
また、上記の加熱、押圧、光照射は、単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。例えば、加熱および押圧を行う場合、アイロンなどを用いて加熱圧着する方法等を用いることができる。
上記第1接着層および第2接着層は、貼り合せ後、所望の時間養生させることができる。第1接着層に含有される成分および第2接着層に含有される成分の拡散が進み、十分に硬化させることで強い接着力を発現することができるからである。養生時間は、第1接着層および第2接着層の組成に応じて適宜設定することができるが、例えば、0.5時間以上72時間以下の範囲内とすることができる。養生時間が短すぎても、貼り合せのやり直しがきかず、一方、養生時間が長すぎても、工程時間が伸びてしまう。
第1接着層および第2接着層は、接触による硬化反応が完了すると、硬化接着層となる。硬化接着層は、第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分が反応して硬化してなる硬化物層である。硬化接着層は、単一層であってもよいし、第1接着層および第2接着層の接触界面が残存していてもよい。
硬化接着層は、その強い接着力をもって第1部材と第2部材とを強固に貼り合せることができ、その状態を長時間保持可能な接着力を有することができ、中でも、引張せん断強度を高くすることができる。経時でせん断応力が掛る場合であっても、第1部材と第2部材との固定を長期間保持することができ、部材の剥がれを抑制することができるからである。
D.物品
本実施形態の物品の製造方法により得られる物品は、第1部材と、第1接着層および第2接着層を含む硬化接着層と、第2部材と、をこの順に有する。上記物品としては、選択する第1部材および第2部材の種類に応じて、例えば、建築物品、インフラ構造物、自動車物品(自動車本体、自動車部品)、電子部品等が挙げられる。物品の詳細については、「VI.用途」の項で説明する。
II.物品の製造方法の第2実施形態
本開示の物品の製造方法の第2実施形態(以下、本実施形態とする場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートを準備する第1接着シート準備工程と、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートを準備する第2接着シート準備工程と、上記第1接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第1部材を貼り合わせて第1接着シート付部材とする第1貼合操作を少なくとも含む第1接着シート貼合工程と、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面に、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の上記一方の面を貼り合わせる第2貼合操作を少なくとも含む第2接着シート貼合工程と、上記第1接着シート付部材に設けられた上記第2接着層の上記一方の面に、上記第2部材を貼り合わせる第3貼合操作を少なくとも含む第2部材貼合工程と、を有し、上記第1接着シート貼合工程または上記第2接着シート貼合工程が、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面側に配置された上記第1セパレータを剥離する第1セパレータ剥離操作を更に含み、上記第2接着シート貼合工程または上記第2部材貼合工程が、上記第2接着シートの上記第2接着層の上記一方の面側に配置された上記第2セパレータを剥離する第2セパレータ剥離操作を更に含む。
図12(a)〜(e)は、本実施形態の物品の製造方法の一例を示す工程図である。本実施形態の物品の製造方法は、まず、第1接着シート準備工程として、図12(a)で示すように、第1接着層22および第1接着層22の一方の面側に配置された第1セパレータ21を有する第1接着シート11を準備する。また、第2接着シート準備工程として、図12(b)で示すように、第2接着層24および第2接着層24の一方の面側に配置された第2セパレータ23を有する第2接着シート12を準備する。次に、第1接着シート貼合工程として、図12(c)で示すように、第1接着シート11の第1接着層の22他方の面に、第1部材1を貼り合わせて第1接着シート付部材20とする第1貼合操作を行う。図12(c)では、第1接着シート貼合工程が、第1接着シート11の第1接着層22の一方の面側に配置された第1セパレータ21を剥離する第1セパレータ剥離操作を含み、第1セパレータ剥離操作と第1貼合操作とを同時に行っている。続いて、第2接着シート貼合工程として、図12(d)で示すように、第2接着シート12の第2接着層24の他方の面に、第1接着シート付部材20の第1接着層22の一方の面を貼り合わせる第2貼合操作を行う。図12(d)では、第2接着シート貼合工程が第2接着シート12の第2接着層24の一方の面側に配置された第2セパレータ23を剥離する第2セパレータ剥離操作を含み、第2セパレータ剥離操作と第2貼合操作とを同時に行っている。第1接着層22および第2接着層24は、互いに接触することにより硬化することができる。そして、第2部材貼合工程として、図12(e)で示すように、第1接着シート付部材20に設けられた第2接着層24の一方の面に、第2部材2を貼り合わせる第3貼合操作を行う。
第2部材貼合工程において、第1接着層22および第2接着層24は、接触による硬化反応が完了することで強い接着力を発現した硬化接着層3となり、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、第1接着層22および第2接着層24を含む硬化接着層3、第2部材2をこの順に有する物品10を得ることが出来る。なお、図12(e)中の領域Pは、第1接着層22および第2接着層24の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
本実施形態の物品の製造方法によれば、第1部材上にて第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とを貼り合せることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合せることができる。また、第1部材上で、第1接着シートおよび第2接着シートがそれぞれ貼り合せて積層されることから、2液型接着剤のような2種類の液状材料を混合する必要がなく、貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着シートを用いることから、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらにまた、第2部材側には接着層が設けられていないことから、第2部材の取り扱いが容易となる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
本実施形態の物品の製造方法において、第1接着シートにおける第1接着層と、第2接着シートにおける第2接着層とは、互いが接触するまでは硬化反応が進まない。このため、各接着シートは、第2接着シート貼合工程までそれぞれ分別保管することができ、貼り合わせるタイミングに応じて、各接着シート付部材からセパレータを剥離して、接着層同士を接触させることができる。また、2液分別塗布型接着剤を用いた塗布接着法では、単一部材上に各液状材料を順番に塗布することは困難である。しかし、本実施形態の物品の製造方法によれば、第1部材上で第1接着シートおよび第2接着シートをそれぞれ貼り合わせて積層可能であり、単一部材上で接触による硬化反応を生じさせることが出来る。このため、貼り合わせを簡便に行うことが可能である。さらに、接着シート付部材における接着シートを形成する作業は、部材同士を貼り合わせる作業から独立して行われるため、部材同士を貼り合わせるタイミングで2液分別塗布型接着剤の各液状材料を塗布する必要がない。また、接着シートを用いることで、上述したように接着層の厚み管理が可能となり、均一な接着層を部材上に配置することが可能となる。
このように、本実施形態の物品の製造方法によれば、塗布接着法による不具合を解消することが出来、塗布接着法よりも部材同士の貼り合わせによる物品の製造を簡便化することが出来る。
以下、本実施形態の物品の製造方法について、工程ごとに説明する。
A.第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程
第1接着シート準備工程は、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートを準備する工程である。また、第2接着シート準備工程は、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートを準備する工程である。
第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程は、それぞれ独立して行うことが出来る。
1.第1接着シートおよび第2接着シート
本工程において準備する第1接着シートおよび第2接着シートについては、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した第1接着シートおよび第2接着シートと同様とすることが出来る。
上記第1接着シートは、第1接着層の少なくとも一方の面側に第1セパレータを有していればよく、第1接着層の一方の面側および他方の面側にそれぞれ第1セパレータを有していても良い。上記第2接着シートについても同様である。第1接着シートおよび第2接着シートが、それぞれ接着層の一方の面側にセパレータを有する片面セパレータ仕様である場合、全ての工程を同一の製造ライン上で連続して実施することができ、各セパレータの剥離操作を減らすことが出来る。
各接着シートは、一面付けであってもよく、多面付けであってもよい。多面付けの接着シートについては、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
2.第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程
第1接着シートおよび第2接着シートの各接着シートの形成方法、その他各接着シート準備工程の詳細については、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した各接着シート準備工程と同様であるため、ここでの説明は省略する。
各接着シート準備工程においては、セパレータの一方の面側に接着層を形成後、上記接着層を厚み方向に切断する切込部を形成し、上記切込部により1以上の接着部を画定する画定操作を行っても良い。複数の接着部を画定することで接着シートを多面付けとすることが出来る。また、接着層に切込部を形成して、剥離の際の糊切れをよくすることが出来る。
B.第1接着シート貼合工程
第1接着シート貼合工程は、上記第1接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第1部材を貼り合わせて第1接着シート付部材とする第1貼合操作を少なくとも含む工程である。
1.第1部材
第1部材は、第2部材との組合せに応じて適宜選択することができる。部材については、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した部材と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.第1貼合操作
第1貼合操作は、上記第1接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第1部材を貼り合わせて第1接着シート付部材とする操作である。第1接着シートと第1部材との貼合方法については、「I.物品の製造方法の第1実施形態 B.第1接着シート付部材準備工程および第2接着シート付部材準備工程」の項で説明した第1接着シートと第1部材との貼合方法と同様とすることが出来るため、ここでの説明は省略する。
第1接着シートが第1接着層の一方の面側および他方の面側にそれぞれ第1セパレータを有する場合、上記第1貼合操作には、後述する第1セパレータ剥離操作とは別に、第1接着層の他方の面側に配置された第1セパレータを剥離する操作が含まれる。
3.第1セパレータ剥離操作
本工程は、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面側に配置された上記第1セパレータを剥離する第1セパレータ剥離操作を含むことが出来る。本工程において第1セパレータ剥離操作を行うことで、続く第2接着シート貼合工程を行う際に、第1セパレータの剥離操作の忘れを防止することが出来る。中でも、第1接着シート貼合工程と、第2接着シート貼合工程とを同時に行う場合に、本工程が第1セパレータ剥離操作を含むことの効果をより発揮し得る。
第1セパレータ剥離操作において剥離される第1セパレータは、第1接着層の一方の面、すなわち上記第1接着層の第1部材と貼り合わされる面とは反対側の面に有する第1セパレータである。第1セパレータの剥離方法については、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
本工程において第1セパレータ剥離操作を実施するタイミングとしては、特に限定されず、上記第1貼合操作の前に行ってもよく、上記第1貼合操作の後に行ってもよい。また、上記第1セパレータ剥離操作と上記第1貼合操作とを同時に行ってもよい。本工程において、第1セパレータ剥離操作を上記第1貼合操作の前に行うことで、第1貼合操作後に第1セパレータを剥離する必要が無く、続く第2接着シート貼合工程を連続して実施することが出来る。第1セパレータ剥離操作を上記第1貼合操作の前に行うとは、例えば、第1接着シートの第1セパレータから第1接着部を剥離した後、別途それを第1部材に貼り合せることが挙げられる。
また、本工程において、第1セパレータ剥離操作を上記第1貼合操作の後に行うことで、第1貼合操作を行う間、第1接着層の他方の面の汚染を防ぐことが出来る。第1セパレータ剥離操作を上記第1貼合操作の後に行うとは、例えば、第1接着シートと第1部材とを貼り合せた後で、上記第1セパレータを剥離することで、第1部材に第1接着部を一括で設けることが挙げられる。
さらに、本工程において、第1セパレータ剥離操作と上記第1貼合操作とを同時に行うことで、操作数を減らすことが出来、工程時間を短くすることが出来る。また、第1貼合操作において、上記第1接着シートの上記第1接着層の他方の面と上記第1部材と一定の圧力を加えて貼り合わせ、加圧状態から第1セパレータを剥離する操作を行うことで、第1接着層の転写不良を防ぐことができる。上記第1セパレータ剥離操作と上記第1貼合操作とを同時に行うとは、例えば、製造ライン上で、第1接着シートを搬送しながら、第1接着シートの第1接着層と第1部材とを接触させて貼り合わせると同時に、第1接着シートから第1セパレータを剥離して上記第1セパレータを巻き取ることが挙げられる。
4.その他
本工程により得られる第1接着シート付部材は、第1接着層および上記第1接着層の片面に設けられた第1部材を有する。第1接着シート付部材は、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した第1接着シート付き部材と同様とすることができる。本工程が第1セパレータ剥離操作を含まない場合は、得られる第1接着シート付き部材は、第1接着層の上記一方の面側に第1セパレータが配置されている。
C.第2接着シート貼合工程
第2接着シート貼合工程は、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面に、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の上記一方の面を貼り合わせる第2貼合操作を少なくとも含む工程である。
1.第2貼合操作
第2貼合操作は、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面に、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の上記一方の面を貼り合わせる操作である。
第2接着シートが第2接着層の一方の面および他方の面にそれぞれ第2セパレータを有する場合、上記第2貼合操作には、第2接着層の他方の面、すなわち第1接着層と貼り合わせる面側に有する第2セパレータを剥離する操作が含まれる。
第1接着シート付部材と第2接着シートと貼合方法は、特に限定されず、第1接着シート付部材の第1接着層と第2接着シートの第2接着層とを向かい合わせて直上方向から貼り合せることができる。また、巻回された第2接着シートを必要量巻き出して、第2接着層の上記他方の面が第1接着シート付部材側を向く様にして第1接着層上に配置して、押圧する方法を用いることが出来る。
上記第2接着層は、粘着力または凝集力を調整することで、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面に貼り合せる際に、貼り直しが可能となり、また、後述する第2部材貼合工程において、第2部材の貼り直しも可能となる。また、上記第2接着層は低粘性または高粘性とすることで、後述する第2部材貼合工程において、第2接着層の被着面に対して第2部材を平行方向にスライド移動させて貼り合せることが可能となる。
第1接着シート付部材および第2接着シート付部材は、第1接着層と第2接着層とを接触させた状態で加熱しても良く、押圧しても良く、光を照射してもよい。上記加熱、押圧、光照射は、単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。なお、加熱、押圧および光照射については、「I.物品の製造方法の第1実施形態 C.貼合工程」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
第1接着シート付部材の第1接着シートおよび第2接着シートの少なくとも一方が多面付けである場合には、多面付けの接着シートの接着部を他方の接着シートの接着層または接着部に貼合することができる。例えば、図13(a)で例示するように、多面付けの第1接着シート付部材20および多面付けの第2接着シート12を貼り合わせる場合は、第1接着シート付部材20の第1接着部22aと、多面付けの第2接着シート12の第2接着部24aとが平面視上重なる様に貼り合わせることができ、必要に応じて第1部材1を切断することで、図13(b)で例示するように個片化や不要部分の除去等が可能となる。
2.第1セパレータ剥離操作
上記第1接着シート貼合工程が上記第1セパレータ剥離操作を含まない場合、本工程は、上記第1セパレータ剥離操作を含むことが出来る。本工程が第1セパレータ剥離操作を含むことで、上記第1接着シート貼合工程の実施から本工程の実施までの間の第1接着層の汚染等を防ぐことが出来るからである。中でも、上記第1接着シート貼合工程の実施から本工程の実施までの時間が長い場合に、本工程が第1セパレータ剥離操作を含むことの効果をより発揮し得る。
第1セパレータの剥離方法については、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
本工程において第1セパレータ剥離操作を実施するタイミングとしては、特に限定されず、上記第2貼合操作の前に行ってもよく、上記第1セパレータ剥離操作と上記第2貼合操作とを同時に行ってもよい。本工程において、第1セパレータ剥離操作と上記第2貼合操作とを同時に行うことで、操作数を減らすことが出来、工程時間を短くすることが出来る。また本工程において、第1セパレータ剥離操作と上記第2貼合操作とを同時に行うことで、例えば嫌気性の必要なアクリル系接着層などを使用する場合、第1セパレータを剥離する操作と第2接着シートを貼り合わせる操作との時間をできるだけ短くすることで、硬化性をより上げることができる。また、第1セパレータ剥離操作および第2貼合操作の間の時間をできるだけ短くすることで、第1セパレータを剥離する際に接着層が帯電して周囲のチリやホコリが接着層の露出面に付着して、粘着強度が低下するのを防ぐことが出来る。
3.第2セパレータ剥離操作
本工程は、上記第2接着シートの上記第2接着層の上記一方の面側に配置された上記第2セパレータを剥離する第2セパレータ剥離操作を含むことが出来る。本工程において第2セパレータ剥離操作を行うことで、続く第2部材貼合工程を行う際に、第2セパレータの剥離操作の忘れを防止することが出来る。中でも、第2接着シート貼合工程と、第2部材貼合工程とを同時に行う場合に、本工程が第2セパレータ剥離操作を含むことの効果をより発揮し得る。
第2セパレータ剥離操作において剥離する第2セパレータは、第2接着層の第1接着層と貼り合わせる面と反対側に有する第2セパレータである。第2セパレータの剥離方法については、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
本工程において第2セパレータ剥離操作を実施するタイミングとしては、特に限定されず、上記第2貼合操作の前に行ってもよく、上記第2貼合操作の後に行ってもよい。また、上記第2セパレータ剥離操作と上記第2貼合操作とを同時に行ってもよい。本工程において、第2セパレータ剥離操作を上記第2貼合操作の前に行うことで、第2貼合操作後に第2セパレータを剥離する必要が無く、続く第2部材貼合工程を連続して実施することが出来る。第2セパレータ剥離操作を上記第2貼合操作の前に行うとは、例えば、第2接着シートの第2セパレータから第2接着部を剥離した後、それを第1接着シート付き部材に貼り合せることが挙げられる。
また、本工程において、第2セパレータ剥離操作を上記第2貼合操作の後に行うことで、第2貼合操作を行う間、第2接着層の他方の面の汚染を防ぐことが出来る。第2セパレータ剥離操作を上記第2貼合操作の後に行うとは、例えば、第2接着シートと第1接着シート付部材とを貼り合せた後で、上記第2セパレータを剥離することで、第1接着シート付部材に第2接着部を一括で設けることが挙げられる。
さらに、本工程において、第2セパレータ剥離操作と上記第2貼合操作とを同時に行うことで、操作数を減らすことが出来、工程時間を短くすることが出来る。上記第2セパレータ剥離操作と上記第2貼合操作とを同時に行うとは、例えば、製造ライン上で、第2接着シートおよび第1接着シート付部材を搬送しながら、第2接着シートの第2接着層と第1接着シート付部材とを接触させて貼り合わせると同時に、第2接着シートから第2セパレータを剥離して上記第2セパレータを巻き取ることが挙げられる。
D.第2部材貼合工程
第2部材貼合工程は、上記第1接着シート付部材に設けられた上記第2接着層の上記一方の面に、上記第2部材を貼り合わせる第3貼合操作を少なくとも含む工程である。
1.第2部材
第2部材は、第1部材との組合せに応じて適宜選択することができる。部材については、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した部材と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.第3貼合操作
第3貼合操作における上記第2接着層の他方の面に上記第2部材を貼り合わせる方法としては、特に限定されず、例えば、第1接着シート付部材に配置された上記第2接着層の一方の面に対して、直上方向から貼り合せることができる。また、第2接着層が低粘性または高粘性を示す場合、第1接着シート付部材または第2部材のうち一方を固定し、固定された一方の部材の被着面に対して、他方の部材を平行方向にスライド移動させて貼り合せることができる。
上記第1接着シート付部材に設けられた上記第2接着層が多面付けである場合は、複数の上記第2接着部に複数の第2部材をそれぞれ配置することができる。
本工程は、養生時間内に行うことで、第1接着層および第2接着層の接触硬化反応が完了するまでの間、第2接着層の粘着性により第2部材を固定することができ、上記硬化反応の完了により第1部材および第2部材を強固に固定することができる。また、養生の間、作業者が他の作業を行うことができる。中でも、本工程は、第2接着シート貼合工程後、具体的には第2貼合操作により第1接着層および第2接着層が接触してから、0.5時間以内に行うことができる。第1接着層および第2接着層の硬化反応が完了すると第2接着層に第2部材を貼ることが困難になる場合があるからである。
また、上記第2接着層の他方の面に第2部材を重ねた状態で、押圧または加熱を行っても良く、両方を同時に行う加熱圧着を行ってもよい。
養生時間および硬化温度については、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した内容と同様である。
本工程において、上記第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応が完了すると、第1部材と第2部材との間に硬化接着層が形成される。硬化接着層については、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
3.第2セパレータ剥離操作
上記第2接着シート貼合工程が上記第2セパレータ剥離操作を含まない場合、本工程は、上記第2セパレータ剥離操作を含むことが出来る。本工程が第2セパレータ剥離操作を含むことで、上記第2接着シート貼合工程の実施から本工程の実施までの間の第2接着層の汚染等を防ぐことが出来るからである。
第2セパレータの剥離方法については、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
本工程において第2セパレータ剥離操作を実施するタイミングとしては、特に限定されず、上記第3貼合操作の前に行ってもよく、上記第2セパレータ剥離操作と上記第3貼合操作とを同時に行ってもよい。第1セパレータ剥離操作の実施のタイミングによる効果については、「2.第1セパレータ剥離操作」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
E.その他
第1接着シート貼合工程と第2接着シート貼合工程とは、同時に行うことができる。第1接着シート貼合工程および第2接着シート貼合工程を同時に行うことで、貼合位置のずれを防ぐことができる。また、工程の実施のし忘れを防ぐことができる。
ここで、第1接着シート貼合工程と第2接着シート貼合工程とを同時に行うとは、例えば、図14で示すように、ロール状に巻回された第1接着シート11、およびロール状に巻回された第2接着シート12を、第1セパレータ21および第2セパレータ23がそれぞれ上面を向くように、第1部材1の搬送方向と同一方向に巻き出して、第1接着シート11の第1セパレータ21を剥離しながら、第1接着層22の他方の面に第1部材1を貼り合せるのと同時に、第2接着シート12の第2セパレータ21を剥離しながら、第2接着層24の他方の面に第1接着層22の一方の面を貼り合わせることで、第1接着シート貼合工程と第2接着シート貼合工程とを連続して行うことが挙げられる。図14では、第1排出部102aにおいて第1接着シート11の第1接着層22が第1部材1上に貼り合わされた後に、第1セパレータ21が回収され、第2排出部102bにおいて第2接着シート12の第2接着層24が第1接着層22上に重なり合う様に貼り合わされた後に、第2セパレータ23が回収される例を示している。
また、第2部材の種類、性状に応じて、第2接着シート貼合工程と第2部材貼合工程とを同時に行うことも出来る。
F.物品
本実施形態の物品の製造方法により得られる物品は、第1部材と、第1接着層および第2接着層を含む硬化接着層と、第2部材と、をこの順に有する。上記物品については、上述した第1実施形態の物品の製造方法により得られる物品と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
III.物品の製造方法の第3実施形態
本開示の物品の製造方法の第3実施形態(以下、本実施形態とする場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートを準備する第1接着シート準備工程と、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートを準備する第2接着シート準備工程と、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面または他方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせて、多層接着シートとする第1貼合操作を含む多層接着シート準備工程と、上記多層接着シートの上記第1接着層の上記第2接着層とは反対側の面に上記第1部材を貼り合わせる第2貼合操作を少なくとも含む第1部材貼合工程と、上記多層接着シートの上記第2接着層の上記一方の面に、上記第2部材を貼り合わせる第3貼合操作を少なくとも含む第2部材貼合工程と、を有し、上記多層接着シート準備工程または上記第1部材貼合工程が、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面側に配置された上記第1セパレータを剥離する第1セパレータ剥離操作を更に含み、上記多層接着シート準備工程、上記第1部材貼合工程または上記第2部材貼合工程が、上記多層接着シートの上記第2接着層の上記一方の面側に配置された上記第2セパレータを剥離する第2セパレータ剥離操作を更に含む。
図15は、本実施形態の物品の製造方法の一例を示す工程図である。本実施形態の物品の製造方法における第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程は、図12(a)、(b)で示した第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程と同様であるため、図示を省略する。次に、多層接着シート準備工程として、図15(a)で示すように、上記第1接着シート11の第1接着層22の一方の面に、第2接着シート12の第2接着層24の他方の面を貼り合わせて、多層接着シート40とする第1貼合操作を行う。図15(a)では第1接着シート11の第1接着層22の一方の面側に配置された第1セパレータ21を剥離する第1セパレータ剥離操作を更に含み、第1セパレータ剥離操作と第1貼合操作とを同時に行っている。次に、第1部材貼合工程として、図15(b)で示すように、多層接着シート40の第1接着層22の第2接着層24とは反対側の面に第1部材1を貼り合わせる第2貼合操作を行う。図15(b)では、第1部材貼合工程が、多層接着シート40の第2接着層24の一方の面側に配置された第2セパレータ23を剥離する第2セパレータ剥離操作を更に含み、第2セパレータ剥離操作と第2貼合操作とを同時に行っている。また、第2部材貼合工程として、図15(c)で示すように、多層接着シート40の第2接着層24の一方の面に、第2部材2を貼り合わせる第3貼合操作を行う。多層接着シート40において、第1接着層22および第2接着層24は、互いに接触しており、第1部材貼合工程および第2部材貼合工程中に、第1接着層22中の成分と第2接着層24中の成分とが拡散して、硬化反応が生じて、強い接着力を発現することができる。第1接着層22および第2接着層24は、硬化反応の完了により硬化接着層3となり、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、第1接着層22および第2接着層24を含む硬化接着層3、第2部材2をこの順に有する物品10を得ることが出来る。なお、図15(c)中の領域Pは、第1接着層22および第2接着層24の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
本実施形態の物品の製造方法によれば、予め、第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とが積層された多層接着シートを用い、上記多層接着シートに対して各部材を貼り合せることで、部材同士の貼合時間の短縮を図ることができ、また、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合せることができる。さらに、上記多層接着シートを用いるため、2液型接着剤のような2種類の液状材料の混合が不要であり、部材同士の貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
本実施形態の物品の製造方法においては、2つの部材を貼り合わせる際に、予め準備した第1接着シートの第1接着層と、予め準備した第2接着シートの第2接着層とを貼り合せた多層接着シートに対して、各部材を貼り合わせることができる。ここで、各接着シートを形成する工程は、第1部材および第2部材を貼り合わせる工程から独立して行われるため、従来の塗布接着法のように、部材同士を貼り合わせるタイミングで各液状材料を塗布する必要がない。このため、各接着シートにおいて接着層の厚み管理が可能となり、また、上記接着層は位置精度や厚み精度が良いことから、部材と接着層とを精度良く貼り合せることができる。また、各部材にそれぞれ液状材料を塗布する作業が不要であり、多層接着シートに対して各部材を貼り合わせるため、各部材単体での取り扱いが容易となる。
このように、本実施形態の物品の製造方法によれば、塗布接着法による不具合を解消することが出来、塗布接着法よりも部材同士の貼り合わせによる物品の製造を簡便化することができる。
以下、本実施形態の物品の製造方法について、工程ごとに説明する。
A.第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程
第1接着シート準備工程は、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートを準備する工程である。また、第2接着シート準備工程は、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートを準備する工程である。第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程は、それぞれ独立して行うことが出来る。
1.第1接着シートおよび第2接着シート
本工程において準備する第1接着シートおよび第2接着シートについては、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した第1接着シートおよび第2接着シートと同様とすることが出来る。
上記第1接着シートは、第1接着層の少なくとも一方の面側に第1セパレータを有していればよく、上記第1接着層の一方の面側および他方の面側にそれぞれ第1セパレータを有していても良い。第2接着シートについても同様である。第1接着シートおよび第2接着シートが、それぞれ接着層の一方の面側にセパレータを有する片面セパレータ仕様である場合、全ての工程を同一の製造ライン上で連続して実施することができ、各セパレータの剥離操作を減らすことが出来る。
上記第1接着シートは、一面付けであってもよく、多面付けであってもよい。また、第2接着シートは、一面付けであってもよく、多面付けであってもよい。多面付けの接着シートについては、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明を省略する。
2.第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程
第1接着シートおよび第2接着シートの各接着シートの形成方法、その他各接着シート準備工程の詳細については、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した各接着シート準備工程と同様であるため、ここでの説明は省略する。
各接着シート準備工程においては、セパレータの一方の面側に接着層を形成後、上記接着層を厚み方向に切断する切込部を形成し、上記切込部により1以上の接着部を画定する画定操作を行っても良い。複数の接着部を画定することで、接着シートを多面付けとすることができる。また、接着層に切込部を形成して、剥離の際の糊切れをよくすることが出来る。
B.多層接着シート準備工程
多層接着シート準備工程は、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面または他方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせて、多層接着シートとする第1貼合操作を含むである。
1.第1貼合操作
第1貼合操作では、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面は、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面と貼り合わせてもよく、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記他方の面と貼り合わせてもよい。
第1接着シートが、第1接着層の上記一方の面側に第1セパレータを有する片面セパレータ仕様の場合、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせることで、多層接着シートは、第2接着層側の面に第2セパレータを有し、第1接着層側の面が露出した仕様とすることが出来る。
また、上記の場合、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記他方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせることで、多層接着シートは、第1接着層側の面に第1セパレータを有し、第2接着層側の面に第2セパレータを有する仕様とすることが出来る。
第1貼合操作における第1接着シートおよび第2接着シートの貼合方法は、特に限定されず、例えば、第1接着シートの第1接着層と、第2接着シートの第2接着層とを向かい合わせて、直上方向から貼り合せる方法を用いることができる。上記貼合方法としては、例えば、巻回された第1接着シートロールと、巻回された第2接着シートロールと、を準備し、それぞれ巻き出して、上記第1接着シートの上記第1接着層および上記第2接着シートの上記第2接着層を貼合することができる。また、別の貼合方法として、例えば、枚葉状の第1接着シートおよび枚葉状の第2接着シートを貼り合わせる方法を用いることが出来る。第1接着シートと第2接着シートとの貼り合せは、手動で行ってもよく、ロールラミネーター(例えば、フジプラ株式会社製 ラミパッカーLPP4513)等の機械を用いて連続的に行ってもよい。
図16は、第1接着シートの第1接着層の他方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせて、多層接着シートとする例を示す。図16では、第1接着シート11の第1接着層22の他方の面と、第2接着シート12の第2接着層23の他方の面とを重ね合せ部108a、108bにより重ねて貼り合わせて多層接着シート40とし、排出部102から排出する。なお、図16では、重ね合せ部108a、108bにより第1接着シート11と第2接着シート12とを重ね合させる第1貼合操作と同時に、第1接着シート11の第1セパレータ21を剥離する第1セパレータ剥離操作、および、第2接着シート12の第2セパレータ23を剥離する第2セパレータ剥離操作を行っている。
また、図17は、第1接着シートの第1接着層の上記一方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせて、多層接着シートとする例を示す。図17では、第1接着シート11を第1セパレータ21が上面を向くように巻き出して、巻回された第2接着シート12は、第1接着シート11の巻き出し方向と同一方向に、第2セパレータ23が上面を向くように巻き出して、第1接着シート11の第1セパレータ21を剥離しながら、露出した第1接着層22の一方の面に、第2接着シート12の第2接着層24の他方の面を貼り合わせる。なお、図17では、第1セパレータ剥離操作を第1貼合操作の前に行い、第2セパレータ剥離操作を第1貼合操作と同時に行っており、第1排出部102aにおいて第1セパレータ21が回収され、第2排出部102bにおいて第2セパレータ23が回収される。
本工程においては、第1接着層および第2接着層を接触させた状態で、加熱してもよく、押圧してもよく、光を照射してもよい。なお、加熱、押圧および光照射については、「I.物品の製造方法の第1実施形態 C.貼合工程」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
第2接着シートが多面付けである場合には、第1接着シート付部材の接着シートと第2接着シートの第2接着部とを貼り合せ、必要に応じて切断してもよい。多層接着シートを個片化することが出来るからである。
2.第1セパレータ剥離操作
本工程は、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面側に配置された上記第1セパレータを剥離する第1セパレータ剥離操作を含むことが出来る。第1セパレータの剥離方法については、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
本工程において、第1セパレータ剥離操作を行うタイミングは特に限定されず、第2接着シートと貼り合わせる第1接着シートの第1接着層の面に応じて適宜選択することができる。例えば、本工程において第1接着シートの第1接着層の上記一方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせる場合は、第1セパレータ剥離操作は、第1貼合操作の前または第1貼合操作と同時に行うことが出来る。第1接着層の表面の汚染防止や、操作数の低減を図ることが出来るからである。また、本工程において、第1接着シートの第1接着層の上記他方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせる場合は、第1セパレータ剥離操作は、第1貼合操作の後または第1貼合操作と同時に行うことが出来る。第1セパレータの剥離忘れの防止や、操作数の低減を図ることが出来るからである。
なお、第1接着シート準備工程において準備する第1接着シートが、第1接着層の一方の面および他方の面にそれぞれ第1セパレータを有し、本工程において第1接着シートの第1接着層の他方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせる場合、上記第1セパレータ剥離操作とは別に、第1貼合操作の前、または第1貼合操作と同時に、第1接着シートの第1接着層の他方の面側に配置された第1セパレータを剥離する操作を行うことができる。
3.第2セパレータ剥離操作
本工程は、上記多層接着シートの上記第2接着層の上記一方の面側に配置された上記第2セパレータを剥離する第2セパレータ剥離操作を含むことが出来る。第2セパレータの剥離方法については、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
本工程において、第2セパレータ剥離操作を行うタイミングは特に限定されず、第1貼合操作の前に行っても良く、第1貼合操作の後に行っても良く、第1貼合操作と同時に行ってもよい。第2セパレータ剥離操作を行う各タイミングによる効果については、「II.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明した第2セパレータ剥離操作を行う各タイミングによる効果と同様であるため、ここでの説明は省略する。
なお、第2接着シート準備工程において準備する第2接着シートが、第2接着層の一方の面および他方の面にそれぞれ第2セパレータを有する場合、上記第2セパレータ剥離操作とは別に、第1貼合操作の前、または第1貼合操作と同時に、第2接着シートの第2接着層の他方の面側に配置された第2セパレータを剥離する操作を行うことができる。
4.多層接着シート
本工程により得られる多層接着シートは、少なくとも第1接着層、第2接着層、および第2セパレータをこの順に有する。また、上記多層接着シートは、第1接着層の上記第2接着層とは反対側の面に第1セパレータを有していても良い。第1接着層および第2接着層は、接触により硬化反応が進むことから、上記多層接着シートは、上記第1接着層と上記第2接着層との接着界面において、硬化領域を有していてもよい。上記硬化領域とは、上記第1接着層および上記第2接着層のそれぞれに含有される成分が拡散して硬化した領域をいう。
多層接着シートを準備後、すぐに貼合工程を行わない場合は、多層接着シートは、第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応が進行しないように、低温環境下で保管することができる。上記低温環境下とは5℃以下の環境下をいい、多層接着シートは、中でも−20℃以上5℃以下の冷蔵庫もしくは冷凍庫に保管することができる。
5.その他
上記多層接着シートが、第2セパレータの一方の面側の全面に、上記第1接着層および上記第2接着層が配置されている場合、本工程において、上記多層接着シートの上記第1接着層および上記第2接着層を厚み方向に切断して切込部を形成し、上記切込部により1以上の第1接着部および1以上の第2接着部を画定する画定操作を行っても良い。画定操作を行うことで、上記第1接着層は、上記切込部により画定される1以上の第1接着部を有することが出来、上記第2接着層は、上記切込部により画定される1以上の第2接着部を有することが出来る。これにより、第1接着層および第2接着層の多層接着層は、第1接着部および第2接着部が順に積層された1以上の多層接着部を有することが出来る。また、切込部を形成した後、切込部により画定される多層接着部以外の部分を除去することにより、上記多層接着部がパターン状に設けられた多面付けの多層接着シートとすることが出来る。
C.第1部材貼合工程および第2部材貼合工程
第1部材貼合工程は、上記多層接着シートの上記第1接着層の上記第2接着層とは反対側の面に上記第1部材を貼り合わせる第2貼合操作を少なくとも含む工程である。また、第2部材貼合工程は、上記多層接着シートの上記第2接着層の上記一方の面に、上記第2部材を貼り合わせる第3貼合操作を少なくとも含む工程である。
1.第1部材および第2部材
第1部材および第2部材は、組合せに応じて適宜選択することが出来る。上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した部材と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.第2貼合操作および第3貼合操作
第2貼合操作および第3貼合操作において、多層接着シートの各接着層と部材との貼合方法は特に限定されず、各部材が上記多層接着シートの各接着層の面に対して直上方向から貼り合せてもよく、平行方向にスライドさせて貼り合わせてもよい。
第2貼合操作および第3貼合操作の各貼合操作は、部材と多層接着シートの接着層とを重ねた状態で押圧または加熱を行っても良く、押圧および加熱の両方を同時に行う加熱圧着を行ってもよい。その理由については、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
多層接着シートが多面付けである場合、多層接着シートの複数の多層接着部の第2セパレータが配置されていない面に第1部材層を貼り合せて切断してもよく、複数の多層接着部の第2セパレータが配置されていない面に、第1部材をそれぞれ貼り合わせてもよい。
3.第1セパレータ剥離操作
多層接着シート準備工程が上記第1セパレータ剥離操作を含まない場合、第1部材貼合工程は、上記第1セパレータ剥離操作を更に含むことができる。第1セパレータ剥離操作を行うタイミングは特に限定されず、第2貼合操作の前におこなっても良く、第2貼合操作と同時に行っても良い。上記第1セパレータ剥離操作を行う各タイミングによる効果については、既に述べた通りである。
4.第2セパレータ剥離操作
多層接着シート準備工程が上記第2セパレータ剥離操作を含まない場合、第1部材貼合工程または第2部材貼合工程は、上記多層接着シートの上記第2接着層の上記一方の面側に配置された上記第2セパレータを剥離する第2セパレータ剥離操作を更に含むことができる。
第1部材貼合工程および第2部材貼合工程は、順不同で実施可能である。このため、例えば、第1部材貼合工程、第2部材貼合工程の順で実施する場合、上記第1部材貼合工程が上記第2セパレータ剥離操作を含むことで、第2部材貼合工程を行う際に、第2セパレータの剥離操作の忘れを防止することが出来る。また、上記の場合、上記第2部材貼合工程が上記第2セパレータ剥離操作を含むことで、上記第1部材貼合工程の実施から本工程の実施までの間の第1接着層の汚染等を防ぐことが出来る。
上記第1部材貼合工程が上記第2セパレータ剥離操作を含む場合、上記第2セパレータ剥離操作を行うタイミングとしては、特に限定されず、上記第2貼合操作の前に行っても良く、上記第2貼合操作の後に行っても良く、上記第2貼合操作とを同時に行っても良い。上記第1部材貼合工程において、上記第2セパレータ剥離操作を行う各タイミングによる効果については、「II.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明した第1セパレータ剥離操作を行う各タイミングによる効果と同様とすることが出来る。
一方、上記第2部材貼合工程が上記第2セパレータ剥離操作を含む場合、上記第2セパレータ剥離操作を行うタイミングとしては、上記第3貼合操作の前に行っても良く、上記第2セパレータ剥離操作と上記第3貼合操作とを同時に行っても良い。上記第2部材貼合工程において、上記第2セパレータ剥離操作を行う各タイミングによる効果については、「II.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明した第2セパレータ剥離操作を行う各タイミングによる効果と同様とすることが出来る。
第2セパレータの剥離方法については、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
5.その他
第1部材貼合工程または第2部材貼合工程は、順不同で実施可能であるが、多層接着シートが、第1接着層側に第1セパレータを有しない場合は、第1接着層の汚染防止や多層接着シートの取り扱いの観点から、第1部材貼合工程、第2部材貼合工程の順に実施することができる。
第1部材貼合工程および第2部材貼合工程の各部材貼合工程は、多層接着シート準備工程において第1接着層および第2接着層が接触してから硬化反応が完了するまでの間に行うことができる。第1接着層および第2接着層の硬化が進むと、各接着層に各部材を貼り合わせることが困難になる場合があるからである。
多層接着シート準備工程において、上記多層接着シートが低温環境下に保管されない場合は、各部材貼合工程は、第1接着層と第2接着層とが接触してから0.5時間以内に行うことができる。また、多層接着シート準備工程において、上記多層接着シートが低温環境下に保管されている場合は、各部材貼合工程は、低温環境下から解放されてから養生時間の間に行うことができる。養生時間については、上述の「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した養生時間と同様とすることが出来る。
D.その他
多層接着シート準備工程は、第1部材貼合工程または第2部材貼合工程と同時に行ってもよい。多層接着シート準備工程と第1部材貼合工程または第2部材貼合工程とを同時に行うことで、貼りムラや位置ズレを抑えることができる。例えば、図18で示すように、第1接着シート11の第1接着層22の他方の面と、第2接着シート12の第2接着層23の他方の面とを重ね合せ部108a、108bにより重ねて貼り合わせ、得られた多層接着シート40を排出部102で排出しながら第1部材1に貼り付けることで、多層接着シート準備工程と第1部材貼合工程とを同時に行うことが出来る。
E.物品
本実施形態の物品の製造方法により得られる物品は、第1部材と、第1接着層および第2接着層を含む硬化接着層と、第2部材と、をこの順に有する。上記物品については、上記「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した物品と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
IV.物品の製造方法の第4実施形態
本開示の部材の貼合方法の第4実施形態(以下、本実施形態とする場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用いる物品の製造方法であって、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートを準備する第1接着シート準備工程と、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートを準備する第2接着シート準備工程と、上記第1接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第1部材を貼り合わせて第1接着シート付部材とする第1貼合操作を少なくとも含む第1接着シート貼合工程と、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面に、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の上記一方の面を貼り合わせる第2貼合操作、および上記第2接着シートの上記第2接着層の上記一方の面側に配置された上記第2セパレータを剥離する第2セパレータ剥離操作を含む第2接着シート貼合工程と、を有し、上記第1接着シート貼合工程または上記第2接着シート貼合工程が、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面側に配置された上記第1セパレータを剥離する第1セパレータ剥離操作を更に含む。
本実施形態の物品の製造方法は、第2部材貼合工程を除いて、上述した物品の製造方法の第2実施形態と同様である。既に説明した図12(a)〜(d)が、本実施形態の物品の製造方法における第1接着シート準備工程、第2接着シート準備工程、第1接着シート貼合工程、および第2接着シート貼合工程に相当する。
本実施形態の物品の製造方法によれば、第1部材上にて第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とを貼り合せることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって第1部材および接着層を一体化することができる。また、第1部材上で、第1接着シートおよび第2接着シートがそれぞれ貼り合せて積層されることから、2液型接着剤のような2種類の液状材料を混合する必要がなく、貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着シートを用いることから、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、一方の接着層の中に他の部材を包含させ、若しくは第1接着層および第2接着層の接触界面に他の部材を配置することで、硬化した接着層により上記他の部材を保持し、固定することができ、また、上記他の部材により第1部材の補修または補強等することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
すなわち、本実施形態の物品の製造方法によれば、上述した物品の製造方法の第2実施形態で説明したように、塗布接着法による不具合を解消することが出来る。また、第1接着シートにおける第1接着層と、第2接着シートにおける第2接着層との接触硬化反応を利用して、接着層に機能性を付与することができる。例えば、硬化後の第2接着層の硬さが硬化後の第1接着層の硬さよりも高くなるように設計することで、最表面に配置される第2接着層にハードコート性を付与することができる。また、第1接着層および第2接着層の一方の層内に第2部材を包含させ、または、第1接着層および第2接着層の接触界面に第2部材を配置することで、硬化接着層により上記第2部材を保持し、固定することができ、また、上記第2部材により第1部材の補修または補強等することができる。
このように、本実施形態の物品の製造方法によれば、塗布接着法では困難な、第1接着シートにおける第1接着層と、第2接着シートにおける第2接着層との接触硬化性を利用した物品を製造することが出来る。
以下、本実施形態の物品の製造方法について、工程ごとに説明する。
A.第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程
第1接着シート準備工程は、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートを準備する工程である。また、第2接着シート準備工程は、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートを準備する工程である。
1.第1接着シートおよび第2接着シート
第1接着シートおよび第2接着シートは、上述の「II.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明した第1接着シートおよび第2接着シートと同様とすることができる。
本実施形態においては、第1部材側の第1接着層には接着性能が求められ、最表面に配置される第2接着層には保護機能が求められる。このため、第2接着層の硬化後の硬さを、第1接着層の硬化後の硬さよりも硬くすることで、最表面に配置される第2接着層にハードコート性を付与することができる。第1接着層および第2接着層の硬化後の硬さは、例えば、第1接着層に含まれる第1相溶性重合体成分と第2接着層に含まれる第2相溶性重合体成分とを異にする、第1接着剤成分および第2接着剤成分がアクリル化合物を含む場合、第1接着剤成分に含まれるアクリル化合物と第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物とを異にする等により調整が可能となる。
また、本実施形態においては、第2接着層は最表面に配置されるため、上記第2接着層は耐候剤を含むことで、最表面に配置される第2接着層に耐候性を付与することが出来る。耐候剤としては、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で例示したものが挙げられる。
また、本実施形態においては、上記第2接着層が着色剤を含むことで、本実施形態の物品の製造方法を、例えばインフラ構造物の製造方法に適用する場合において、補修した位置を視認しやすくする識別機能を有することができる。また、本実施形態においては、第2接着層は最表面に配置されるため、第2接着層が顔料を含むことで、上記第2接着層において顔料に紫外線を吸収させて、第1部材の紫外線劣化を防ぐことができ、耐候性を付与することが出来る。着色剤、顔料としては、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で例示したものが挙げられる。
なお、第1接着シートにおける第1接着層も、耐候剤、着色剤等を含むことで、同様の効果を奏することができる。
本実施形態においては、第2接着シートは、第2接着層の他方の面側に第2部材を配置することが出来る。これにより、第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とが接触硬化することで、第2部材を硬化接着層中に包含することが可能となる。例えば、上記第2部材として、補修・補強部材やセンサ装置等を用いることで、補修・補強機能や検知機能を付与することが出来る。
また、上記第2接着シートの第2接着層は、第2部材を含浸することができる。これにより第2接着シート貼合工程において第1接着層と第2接着シートの第2接着層とが接触硬化することで、最表面に近い位置に第2部材を接着層内に包含可能となり、第2部材が有する機能を付与することが出来る。
ここで、第2接着層が第2部材を含浸するとは、第2接着層の接着機能を阻害しない態様で第2接着層内に第2部材が包含されることをいい、例えば、第2部材が第2接着層内に埋め込まれていること、第2部材に第2接着剤成分を含有する第2接着剤組成物が含浸されていることをいう。また、第2部材に第2接着剤成分を含有する第2接着剤組成物が含浸されているとは、具体的には、例えば、繊維材で形成された補修・補強部材に第2接着剤成分を含有する第2接着剤組成物が含浸されていることが挙げられる。
図19(a)は、第2接着シート12の第2接着層24が第2部材2である繊維材で形成された補修・補強部材を含み、第2接着剤成分を含有する第2接着剤組成物が上記第2部材に含浸されている例を示している。図19(a)〜(c)は、第1部材1であるインフラ構造物の一方の面に、第1接着層22および第2接着層24を含む硬化接着層3が形成され、硬化接着層3内に第2部材2が包含されている、物品10の製造方法の一例を示しており、上記物品10は、補修・補強後のインフラ構造物となる。図19(a)〜(c)は、第2接着シート貼合工程の他の例を示す工程図である。
第2部材としては、例えば、補修・補強部材、センサ装置を挙げることができる。補修・補強部材、センサ装置については後述する。
なお、第1接着シートも同様に、第1接着層の他方の面に第2部材を配置することができ、また、上記第1接着層が第2部材を内部に含むことができる。
上記第2接着シートは、第2セパレータの第2接着層側の面が賦形面であってもよい。第2セパレータの第2接着層側の面を賦形面とすることで、図20で示すように、硬化接着層3表面に第2セパレータ23の賦形面の形状が賦形された物品10を得ることができ、上記物品に意匠性を付与することができるからである。図20は、本実施形態の物品の製造方法の第2接着シート貼合工程の他の例を示す工程図である。
2.第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程
第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程の各接着シート準備工程については、上記「II.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。各接着シートを多面付けとする場合は、各接着シート準備工程において画定操作を行っても良い。
B.第1接着シート貼合工程
第1接着シート貼合工程は、上記第1接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第1部材を貼り合わせて第1接着シート付部材とする第1貼合操作を少なくとも含む工程である。本工程については、上述の「II.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明した第1接着シート貼合工程と同様であるため、ここでの説明は省略する。
第1接着シート貼合工程は、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面側に配置された上記第1セパレータを剥離する第1セパレータ剥離操作を更に含んでいてもよい。本工程における第1セパレータ剥離操作については、上述の「II.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
C.第2接着シート貼合工程
第2接着シート貼合工程は、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面に、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の上記一方の面を貼り合わせる第2貼合操作、および上記第2接着シートの上記第2接着層の上記一方の面側に配置された上記第2セパレータを剥離する第2セパレータ剥離操作を含む工程である。本工程については、上述の「II.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明した第2接着シート貼合工程の、第2セパレータ剥離操作を含む場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記第1接着シート貼合工程が上記第1セパレータ剥離操作を含まない場合、本工程は、上記第1セパレータ剥離操作を含むことが出来る。本工程における第1セパレータ剥離操作については、上述の「II.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
D.その他
本実施形態の物品の製造方法は、上記第2接着シート準備工程では、上記第2接着シート準備工程では、第2部材を内部に含み、一方の主面であり、上記第1接着シートの上記第1接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第1面、および他方の主面であり、第3接着シートの第3接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第2面、を有する上記第2接着層と、上記第2接着層の上記第2面側に配置されている上記第2セパレータと、を有する上記第2接着シートを準備し、上記第2接着シート貼合工程では、上記第2貼合操作が、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の上記一方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の上記第1面を貼り合わせる操作であり、上記第2貼合操作および上記第2セパレータ剥離操作に加えて、上記第2接着層の上記第2面に、上記第3接着シートの上記第3接着層の一方の面を貼り合わせる第3貼合操作を更に含むことができる。
第2部材を内部に含み、一方の主面であり、上記第1接着シートの上記第1接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第1面、および他方の主面であり、第3接着シートの第3接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第2面、を有する上記第2接着層を、第2部材介在接着層とする。
図21は、本実施形態の物品の製造方法の他の例を示す工程図である。図示しないが、第2接着シート準備工程では、第2部材2を内部に含み、一方の主面であり、第1接着シートの第1接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第1面24a、および他方の主面であり、第3接着シートの第3接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第2面24b、を有する第2接着層24と、第2接着層24の第2面24b側に配置されている第2セパレータ23と、を有する第2接着シート12を準備する。第2接着シート貼合工程では、図21(a)で示すように、第2貼合操作として、第1接着シート付部材20の第1接着層22の一方の面に、第2接着シート12の第2接着層24の第1面24aを貼り合わせる操作を行う。図21(a)では、第2接着シート12の第2セパレータ23を剥離する第2セパレータ剥離操作を行いながら第2貼合操作を行っている。また、第2接着シート貼合工程では、第2貼合操作および第2セパレータ剥離操作に加えて、図21(b)で示すように、第2接着層24の第2面24bに、第3接着シート13の第3接着層27の一方の面を貼り合わせる第3貼合操作を更に含む。第2接着シート12の第2接着層24の第1面24aおよび第1接着シート付部材20の第1接着層22、ならびに、第2接着シート12の第2面24bおよび第3接着シート13の第3接着層27は、互いに接触することにより硬化することで、強接着性を発現することが可能であり、2つの硬化接着層3の間に第2部材2を有する物品を形成することが出来る。
上述したように、第2接着層中に第2部材が含浸されている場合、第1接着層と第2接着シートの第2接着層とが接触硬化することで、最表面に近い位置に第2部材を接着層内に包含可能となる。しかし、上記の場合、第2接着層と第1接着層とを接触させて、硬化反応を進行させようとすると、上記第2部材により成分の拡散が妨げられてしまう。接着層に含まれる成分が拡散しないと硬化することができず、また接着層に含まれる成分が拡散しにくくても硬化不良になる。
これに対し、第2接着層を上述の構造を有する第2部材介在接着層とすることで、第2接着層の第1面と第1接着層との接触、および第2接着層の第2面と第3接着層との接触により、成分の拡散および硬化反応が進みやすくなり、十分に硬化させることが可能となる。
1.第2接着シート準備工程
第2接着シート準備工程では、第2部材を内部に含み、一方の主面であり、上記第1接着シートの上記第1接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第1面、および他方の主面であり、第3接着シートの第3接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第2面、を有する上記第2接着層と、上記第2接着層の上記第2面側に配置されている上記第2セパレータと、を有する上記第2接着シートを準備する。
(1)第2接着層(第2部材介在接着層)
第2部材介在接着層は、第2部材を内部に含み、一方の主面であり、上記第1接着シートの上記第1接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第1面、および他方の主面であり、第3接着シートの第3接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第2面、を有する。
第2部材介在接着層は、第2部材を内部に含み、上記の機能を有する第1面および第2面を有すればよい。このような第2部材介在接着層としては、例えば、図21で例示するように、第2部材2と、第2部材2の一方の面側に設けられた第1接着領域部71と、第2部材2の他方の面側に設けられた第2接着領域部72と、を有し、少なくとも第1接着領域部71が第2接着剤成分を含む構成とすることが出来る。第2部材介在接着層において、上記第1接着領域部が、第2接着層の第1面を担うことができる。また、第2接着領域部も第2接着剤成分を含む場合は、上記第2接着領域部が第2接着層の第2面を担っても良い。
第2部材介在接着層における第1接着領域部は、上述の「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した第2接着剤成分を含むことができる。第1接着領域部は、第2部材の一方の面側の全面に設けられていても良く、パターン状に設けられていても良く、適宜選択することができる。また、上記第1接着領域部の厚みは、第1接着層との接触により、上記第1接着領域部および第1接着層が十分に硬化することが可能な量の第2接着剤成分を含むことが可能な厚みであればよく、適宜設計することが出来る。
上記第1接着領域部は、例えば、第2部材の一方の面に上述した上述の「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した第1接着剤組成物を塗布して形成することが出来る。
第2部材介在接着層における第2接着領域部は、第3接着シートの第3接着層と接触することにより硬化して接着することが可能であればよく、上述の「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した第1接着剤成分または第2接着剤成分を含むことが出来る。第2接着領域部は、第2部材の他方の面側の全面に設けられていても良く、パターン状に設けられていても良く、適宜選択することができる。また、上記第2接着領域部の厚みは、第3接着層との接触により、上記第2接着領域部および第3接着層が十分に硬化することが可能な量の接着剤成分を含むことが可能な厚みであればよく、適宜設計することが出来る。
上記第2接着領域部は、例えば、第2部材の他方の面に上述した上述の「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した第1接着剤組成物または第2接着剤組成物を塗布して形成することが出来る。
第2部材介在接着層における第2部材は、第1接着領域部および第2接着領域部を設けることが可能な部材であれば特に限定されないが、第1接着領域部および第2接着領域部にそれぞれ含まれる接着剤成分が反応する関係にある場合は、上記第2部材としては、上記接着剤成分を透過しない部材を選択することができる。具体的には、補修・補強部材、センサ装置等が挙げられる。補修・補強部材、センサ装置については後述する。
なお、第2部材介在接着層として、上述した、第2接着剤成分を含有する第2接着剤組成物が第2部材に含浸されている第2接着層を用いてもよい。第1接着領域部と第1接着層との間、第2接着領域部と第3接着層との間で第2接着層の成分の拡散が生じるため、硬化不良の発生を抑えることができる。この場合、第1接着領域部および第2接着領域部は、それぞれ第2接着剤成分を含むことができる。
2.第2接着シート貼合工程
第2部材介在接着層を有する第2接着シートを用いる場合、第2接着シート貼合工程は、第2貼合操作、上記第2セパレータ剥離操作および第3貼合操作を含む。
(1)第2貼合操作および第2セパレータ剥離操作
第2部材介在接着層を有する第2接着シートを用いる場合、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の上記一方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の上記第1面を貼り合わせる操作を行う。上記第2貼合操作および第2セパレータ剥離操作については、既に説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)第3貼合操作
第2部材介在接着層を有する第2接着シートを用いる場合、上記第2接着シート貼合工程は、上記第2貼合操作および上記第2セパレータ剥離操作に加えて、上上記第2接着層の上記第2面に、上記第3接着シートの上記第3接着層の一方の面を貼り合わせる第3貼合操作を更に含む。
(i)第3接着シート
第3接着シートは第3接着層を有しており、上記第3接着層の少なくとも一方の面側に第3セパレータを有することができる。第3セパレータは、第1セパレータまたは第2セパレータと同様とすることができる。第3接着シートは、第3接着層の一方の面側にのみ有していても良く、第3接着層の一方の面および他方の面にそれぞれ第3セパレータを有していても良い。
第3接着シートの第3接着層は、第2接着層の第2面と接触することにより硬化して接着可能であればよく、第2面を担う第2接着領域部に含まれる接着剤成分に応じた接着剤成分を含むことができる。例えば、第2接着領域部が第1接着剤成分を含む場合、上記第3接着層は、第2接着剤成分を含むことが出来る。この場合、上記第3接着シートは、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した第2接着シートと同様とすることができる。また、第2接着領域部が第2接着剤成分を含む場合、上記第3接着層は、第1接着剤成分を含むことが出来る。この場合、上記第3接着シートは、「I.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した第1接着シートと同様とすることができる。
(ii)第3貼合操作
第3貼合操作における第3シートの貼合方法は、特に限定されず、第1接着シートおよび第2接着シートの貼合方法と同様とすることが出来る。第3接着シートが第3接着層の他方の面側に第3セパレータを有する場合、第3貼合操作と同時、または第3貼合操作の後に、第3接着シートの第3接着層の他方の面側に配置された第3セパレータを剥離する操作を行う。
E.物品
本実施形態の物品の製造方法により得られる物品は、特に限定されないが、中でも、第1接着層と第2接着層との間、または第2接着層内に、補修・補強部材、センサ装置等の配置が可能となることから、インフラ構造物とすることができる。
V.物品の製造方法の第5実施形態
本開示の物品の製造方法の第5実施形態(以下、本実施形態とする場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用いる物品の製造方法であって、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートを準備する第1接着シート準備工程と、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートを準備する第2接着シート準備工程と、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面または他方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせて、多層接着シートとする第1貼合操作を少なくとも含む多層接着シート準備工程と、上記多層接着シートの上記第1接着層の上記第2接着層とは反対側の面に上記第1部材を貼り合わせる第2貼合操作を含む第1部材貼合工程と、を有し、上記多層接着シート準備工程または上記第1部材貼合工程が、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面側に配置された上記第1セパレータを剥離する第1セパレータ剥離操作を更に含み、上記多層接着シート準備工程または上記第1部材貼合工程が、上記多層接着シートの上記第2接着層の上記一方の面側に配置された上記第2セパレータを剥離する第2セパレータ剥離操作を更に含む。
本実施形態の物品の製造方法は、第2部材貼合工程を除いて、上述した物品の製造方法の第3実施形態と同様である。既に説明した図12(a)、(b)、図15(a)〜(c)が、それぞれ本実施形態の物品の製造方法における第1接着シート準備工程、多層接着シート工程、第1部材貼合工程に相当する。
本実施形態の物品の製造方法によれば、予め、第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とが積層された多層接着シートを用い、上記多層接着シートに対して部材を貼り合せることで、貼合時間の短縮を図ることができ、また、硬化により発現される強い接着力をもって第1部材および接着層を一体化することができる。さらに、上記多層接着シートを用いるため、2液型接着剤のような2種類の液状材料の混合が不要であり、貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、一方の接着層の中に他の部材を包含させ、若しくは第1接着層および第2接着層の接触界面に他の部材を配置することで、硬化した接着層により上記他の部材を保持し、固定することができ、また、上記他の部材により第1部材の補修または補強等することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
すなわち、本実施形態の物品の製造方法によれば、予め準備した第1接着シートの第1接着層と、予め準備した第2接着シートの第2接着層とを貼り合せた多層接着シートに対して、第1部材を貼り合わせることで、物品の製造方法の第3実施形態と同様の効果を奏することが出来る。また、物品の製造方法の第4実施形態と同様に、第1接着シートにおける第1接着層と、第2接着シートにおける第2接着層との接触硬化反応を利用して、接着層に機能性を付与することができる。このように、本実施形態の物品の製造方法によれば、塗布接着法では困難な、第1接着シートにおける第1接着層と、第2接着シートにおける第2接着層との接触硬化性を利用した物品を製造することが出来る。
以下、本実施形態の物品の製造方法について、工程ごとに説明する。
A.第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程
第1接着シート準備工程は、上記第1接着層および上記第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有する第1接着シートを準備する工程である。また、上記第2接着層および上記第2接着層の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータを有する第2接着シートを準備する工程である。
1.第1接着シートおよび第2接着シート
第1接着シートおよび第2接着シートは、上述の「III.物品の製造方法の第3実施形態」の項で説明した第1接着シートおよび第2接着シートと同様とすることができる。
本実施形態においては、得られる物品において、第2接着層が最表層に配置されることから、第2接着シートの第2接着層として、上述の「IV.物品の製造方法の第4実施形態 A.第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程」の項で説明した第2接着層とすることができる。
2.第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程
第1接着シート準備工程および第2接着シート準備工程の各接着シート準備工程については、「III.物品の製造方法の第3実施形態」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。各接着シートを多面付けとする場合は、各接着シート準備工程において画定操作を行っても良い。
B.多層接着シート準備工程
多層接着シート準備工程は、上記第1接着シートの上記第1接着層の上記一方の面または他方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の他方の面を貼り合わせて、多層接着シートとする第1貼合操作を少なくとも含む工程である。また本工程は、第1セパレータ剥離操作をさらに含んでいても良く、第2セパレータ剥離操作をさらに含んでいても良く、両方の操作を含んでいても良い。本工程については、上述の「III.物品の製造方法の第3実施形態」の項で説明した多層接着シート準備工程と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
C.第1部材貼合工程
第1部材貼合工程は、上記多層接着シートの上記第1接着層の上記第2接着層とは反対側の面に上記第1部材を貼り合わせる第2貼合操作を含む工程である。また、本工程は、第1セパレータ剥離操作をさらに含んでいても良く、第2セパレータ剥離操作をさらに含んでいても良く、両方の操作を含んでいても良い。本工程については、上述の「III.物品の製造方法の第3実施形態」の項で説明した第1部材貼合工程と同様とすることが出来るため、ここでの説明は省略する。
D.その他の工程
本実施形態の物品の製造方法は、上記第2接着シート準備工程では、第2部材を内部に含み、一方の主面であり、上記第1接着シートの上記第1接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第1面、および他方の主面であり、第3接着シートの第3接着層と接触することにより硬化して接着することが可能な第2面、を有する上記第2接着層と、上記第2接着層の上記第2面側に配置されている上記第2セパレータと、を有する上記第2接着シートを準備し、上記多層接着シート準備工程では、上記第1貼合操作が、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の上記一方の面または他方の面に、上記第2接着シートの上記第2接着層の上記第1面を貼り合わせる操作であり、上記第1部材貼合工程では、上記第2貼合操作に加えて、上記第2接着層の上記第2面に、上記第3接着シートの上記第3接着層の一方の面を貼り合わせる第3貼合操作を更に含むことができる。
本実施形態の物品の製造方法において、第2接着層が第2部材介在接着層である第2接着シートを用いることの効果については、上述の「IV.物品の製造方法の第4実施形態 D.その他」の項で説明した効果と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記第1貼合操作については、上述の「III.物品の製造方法の第3実施形態」の項で説明した詳細と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、第2接着層が第2部材介在接着層である第2接着シート、第3接着層を有する第3シート、および第3貼合操作については、上述の「IV.物品の製造方法の第4実施形態 D.その他」の項で説明した詳細と同様であるため、ここでの説明は省略する。
E.物品
本実施形態の物品の製造方法により得られる物品は、特に限定されないが、中でも、第1接着層と第2接着層との間、または第2接着層内に、第2部材として、補修・補強部材またはセンサ装置の配置が可能となることから、インフラ構造物とすることができる。
VI.用途
本開示の物品の製造方法は、様々な分野の物品の製造方法に用いることができ、その用途は限定されないが、中でも、加熱や光照射が困難な物品の製造方法として好適に用いることができる。具体的には、本開示の物品の製造方法は、建築物品、インフラ構造物、自動車の製造方法、電子部品の製造方法として好適に用いることができる。以下、本開示の物品の製造方法を用いた、建築物品、インフラ構造物、自動車、電子部品の各製造方法について説明する。
1.建築物品
建築物品の製造方法には、上述した物品の製造方法の中でも、第1実施形態から第3実施形態までのいずれかの物品の製造方法を好適に用いることができる。
建築物品としては、例えば、家屋、ビル、建物、塔等の一般に建築業界で施工される建築構造物、これらに用いられる複合建材等が挙げられる。
第1部材および第2部材は、建築物品を構成する建材であり、その種類に応じて適宜選択される。上記建材は被着面を有すれば、その形態は特に限定されない。
上記建材は、例えば、無機材料、有機材料、またはこれらを組み合わせた複合材料、積層材料から構成されていても良い。第1部材の建材および第2部材の建材の材質は、同一であってもよく異なってもよく、使用環境や用途等に応じて、適宜選択して組み合わせることができる。
有機材料で形成された有機建材としては、例えば、木質板、プラスチック板等が挙げられる。木質板としては、例えば杉、檜、松、ラワン、チーク等の樹木で構成される木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。また、無機材料で形成された無機建材としては、例えば、スレート板やケイカル板、石膏ボード、レンガ、コンクリート、セメントモルタル、金属材料、セラミック材料等が用いられる。
上記建材としては、建築施工において公知のものが挙げられる、具体的には、既存の建築構造物の柱、梁、天井、壁、床などの躯体、新たに建築構造物を施工する際に躯体を構成するのに用いられる床板、壁板、天井板等の建築部材、躯体や建築部材を下地としてその表面に貼り合せて用いる表装材等が挙げられる。表装材としては、例えば、ビニル壁紙、織物壁紙、紙壁紙、無機質壁紙、化粧フィルム、タイル、パネル、化粧板等の壁装材、タイル、リノリウム、フローリングブロック、フローリング、クッションフロアー、フローリングボード等の化粧床材が挙げられる。
第1部材および第2部材の組合せとしては、例えば、一方を表装材とし、他方を建築構造物の躯体とすることができる。具体的には、第1部材および第2部材の一方が壁装材であり、他方が建築構造物の壁であってもよく、一方が化粧床材であり、他方が建築構造物の床であってもよい。また、第1部材および第2部材の一方を建築構造物の躯体とし、他方を別の建築構造物の躯体とすることができる。2種類の躯体間を第1接着層および第2接着層を介して貼り合せることで、硬化接着層を溶接やボルト固定の代替とすることができる。
2.インフラ構造物
インフラ構造物の製造方法には、上述した物品の製造方法の中でも、第2実施形態、第4実施形態および第5実施形態の物品の製造方法を好適に用いることができる。
インフラ構造物としては、例えば、橋梁、橋脚、トンネル、法面、道路舗装、河川管理施設、砂防堰堤、砂防床固工、下水管梁、下水処理場、港湾施設、空港、公営住宅、集合住宅、一般住宅、都市公園、官庁施設、海岸堤防、航路標識、道路標識、信号機、架線、送信設備、送電設備等が挙げられる。
例えば、第2部材を貼り付けることにより第1部材が補修または補強されたインフラ構造物とすることができる。また、接着シートが有する接着層に補修または補強部材(以下、補修・補強部材と略する。)が含まれている、または、接着層表面に補修・補強部材が配置されていることで、補修・補強部材を内包した硬化接着層により、第1部材が補修または補強されたインフラ構造物とすることができる。また、例えば、インフラ構造物である第1部材に、第2部材としてセンサ装置を取り付けることができる。また、接着シートが有する接着層にセンサ装置が含まれている、または、接着層表面にセンサ装置が配置されていることで、センサ装置を内包した硬化接着層を、インフラ構造物である第1部材に取り付けることができる。
第1部材および第2部材は、インフラ用部材であればよく、被着面を有していれば、その形態は特に限定されない。インフラ用部材としては、例えば、補修または補強前のインフラ構造物あるいはセンサ装置の取付前のインフラ構造物(以下、対象インフラ構造物)や、補修・補強部材、センサ装置等が挙げられる。インフラ構造物の製造方法においては、インフラ用部材である第1部材および第2部材のうち、一方は対象インフラ構造物であり、対象インフラ構造物は、固定されていてもよい。
補修・補強部材としては、従来公知の部材を用いることができ、例えば、第1接着層中に含浸可能な部材が挙げられる。具体的には、補強用途では、アラミド繊維、炭素繊維、ビニロン繊維、PET繊維等を挙げることができる。また、機能を付与できる補修用途では、広告用看板、塗装フィルム、防水シート、吸水シート、耐紫外線シート、保水シート、着色シート等を挙げることができる。なお、補強には、ヒビを隠したり、凹凸を消したりする補修を含み、さらに強度向上、保水、表面保護、加飾等の機能を付与するものも含む。
センサ装置は、インフラ用部材に貼り付けて、インフラ用部材の状態変化を検知するものである。センサ装置としては、例えばセンサ部と、RFタグとを備えるものが挙げられる。センサ部には、例えば慣性力(加速度、角速度)、歪み、音響波、超音波、電磁波等の物理量を検知することができるものが用いられる。センサ部としては、貼り付けるインフラ用部材の種類や材質に応じて従来公知のセンサ部を使用することができ、例えば、加速度センサ、角速度センサ、音響センサ、表面弾性波センサ、超音波センサ、歪みセンサ、GPS(グローバルポジションシステム)センサ、距離センサ(測距センサ)等を用いることができる。具体的には、センサ部は、インフラ構造物の振動、剥落、ひび割れ、位置ずれ、傾き、歪み等の変化を検知することができる。例えば、特開2016−194441号公報に開示されるセンサ装置を使用することができる。
また、センサ装置は、例えばコンクリート製のインフラ用部材に貼り付けて、その表面の状態変化を検知するものであってもよい。例えばコンクリート表面のクラックの発生やその成長、コンクリート表面の水分濃度や塩分等のイオン濃度の変化等を検知するものが用いられる。具体的には、導電性線材、光ファイバー、繊維含浸プラスチックフィルム、市販のひび割れ検知センサ(東京測器研究所社製 KZCA−A)等の従来公知のセンサ装置を使用することができる。また、例えば、特開2015−087351号公報に開示されるコンクリート異常検知部材を使用することもできる。
3.自動車
自動車の製造方法には、上述した物品の製造方法の中でも、第1実施形態から第3実施形態までのいずれかの物品の製造方法を好適に用いることができる。
自動車の製造方法においては、第1部材および第2部材を自動車用部材として、双方を第1接着層および第2接着層を介して貼り合わせることができる。
第1部材および第2部材は、自動車用部材であればよく、被着面を有していれば、その形態は特に限定されない。自動車用部材とは、自動車車体および上記自動車車体に取り付けられる自動車部品をいい、内装材、外装材の何れであってもよい。自動車部品は、一般に自動車に用いられる部品であれば特に限定されず、例えば、エンブレムなどの装飾部材、ピラー等の構造部材等が挙げられる。
上記自動車用部材の材料は、自動車の部位に応じて適宜選択することができ、例えば、無機材料、金属材料、セラミック材料、有機材料、またはこれらを組み合わせた複合材料や積層材料等が挙げられる。第1部材および第2部材の材質は、同一であってもよく異なってもよく、適宜選択して組み合わせることができる。第1部材および第2部材の材質の組合せとしては、例えば、ABS、ポリイミド、ポリプロピレン、炭素繊維強化複合材料(CFRP)やガラス繊維強化複合材料(GFRP)等の繊維強化複合材料(FRP)等の有機材料と金属類との組合せ、アルミとチタンとの組合せ等の異種金属の組合せ等が挙げられる。
4.電子部品の製造方法
電子部品には、上述した物品の製造方法の中でも、第1実施形態から第3実施形態までのいずれかの物品の製造方法を好適に用いることができる。
電子部品において、上述の物品の製造方法は、例えば、MEMS、チップ等の電子部品の固定や、基板同士の接合等に適用することができる。また、接着シートセットは、ダイボンディングフィルムとして利用することができる。
以下に実施例および比較例を示して、本開示をさらに具体的に説明する。
[材料]
第1接着剤組成物および第2接着剤組成物において用いた各成分の詳細を表1に示す。
[実施例1〜10]
以下の手順で、物品を製造した。
1.第1接着シート付き部材準備工程
(1)第1接着シート準備工程
片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されたポリエステルフィルム(膜厚:38μm、東セロ株式会社製、商品名:SP−PET−03、以下、第1セパレータAとする。)を用い、剥離処理面上に、下記表2に示す組成配合からなる第1接着剤組成物を、塗工後の厚さが75μmとなるようにアプリケーターを用いてそれぞれ塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて、第1接着層を形成した。次に、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理がされたポリエステルフィルム(膜厚:38μm、東セロ株式会社製、商品名:SP−PET−01、以下、第1セパレータBとする。)を用い、その剥離処理面を第1接着層と対向するように重ね合わせて2kgのローラーを用いて押圧した。これにより、第1接着層の一方の面側に第1セパレータAが配置され、他方の面側に第1セパレータBが配置された第1接着シートを得た。
(2)第1接着シート貼合工程
第1接着シートを、長さ25mm、幅12.5mmに裁断し、第1セパレータBを剥離して第1接着層の他方の面を露出させ、第1部材として溶融亜鉛鍍金鋼板(JIS G3302/SGCC規格品、長さ100mm、幅25mm、厚さ1.5mm)の先端部分に貼り付けて、第1接着シート付部材を作製した。
2.第2接着シート付き部材準備工程
(1)第2接着シート準備工程
第2セパレータBとして、第1セパレータBと同じものを用い、剥離処理面上に下記表2に示す組成配合から成る第2接着剤組成物を塗工後の厚さが25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて第2接着層を形成した。次に、第2セパレータAとして、第1セパレータAと同じものを用い、その剥離処理面を第2接着層と対向するように重ね合わせて2kgのローラーを用いて押圧した。これにより、第2接着層の一方の面側に第2セパレータAが配置され、他方の面側に第2セパレータBが配置された第1接着シートを得た。
(2)第2接着シート貼合工程
第2接着シートを、長さ25mm、幅12.5mmに裁断し、第2セパレータBを剥離して第2接着層の他方の面を露出させ、第2部材として溶融亜鉛鍍金鋼板(第1部材と同じ)の先端に貼りつけて、第2接着シート付部材を作製した
3.接着シート貼合工程
第1接着シート付部材および第2接着シート付部材の、第1セパレータAおよび第2セパレータAをそれぞれ剥離して、第1接着層の一方の面および第2接着層の一方の面をそれぞれ露出させて、接着面積が長さ25mm、幅12.5mmとなるように貼り合わせた。その後、その仮固定部分上に3kgの荷重をかけて温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で7日間もしくは1ヵ月間養生を行い、物品を得た。
また、各接着シート付き部材の部材同士を仮固定した後、仮固定部分上に3kgの荷重をかけた状態で、150℃で30分の加熱を行い、熱硬化後の強度測定用サンプルも別途作製した。
[比較例1]
第1部材上にアクリル系両面テープ(スリーエム社製 商品名:Y−4180、アクリル粘着剤含有)を貼り合せ、上記両面テープの片面のセパレータを剥離して、第2部材を貼り合わせた。
[評価]
(1)接着強度(せん断引張強度)
得られた物品の両端を、温度23℃、湿度50%RHの環境でテンシロン万能材料試験機(RTF−1350、株式会社エー・アンド・デイ製)に固定し、JIS K6850:1999(接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法)準拠法により、10mm/分で引っ張り、せん断引張強度を測定し、その値を接着強度とした。
(2)硬化性
各物品について、接着強度測定後、破断面を食指にて確認し、タックが残っていなければ○、残っていれば×とした。
(3)粘着性
第1接着シートを、縦25.4mm、横150mmのサイズに裁断し、第1セパレータBを剥離して、露出させた第1接着層の他方の面にPETフィルム(東洋紡社製A4100)を手動ローラーで貼り合わせた。その後、第1セパレータAを剥離して、露出させた第1接着層の一方の面にSUS板(304BA、被着面:研磨面、試料:縦25.4mm、横150mm)を手動ローラーで用いて貼り合せた。その後、PETフィルム付きの第1接着層をSUS板から20mm程、手で剥離し、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、型番:RTF−1150H)を用いて、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)および粘着力の試験法の方法1(温度23℃、湿度50%RH、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠した条件(引張速度:300mm/分、剥離距離:150mm、剥離角:180°)で、SUS板面に対する第1接着層の粘着力(N/インチ)を測定した。第2接着シートの第2接着層の粘着力についても、上記と同様の方法により測定した。粘着力が0.05N/25mm以上を○とし、0.05N/25mm未満を×とした。結果を表2に示す。
[評価考察]
実施例1〜10の結果から、2液分別硬化型接着剤の各液状材料をそれぞれシート化した接着シートは、接触により硬化し、部材を強固に貼り合わせることが可能であることが示唆された。また、実施例1〜10と比較例1との結果から、非硬化系の接着層では凝集力が低いため、せん断強度が低くなり、加熱にも耐えられないことが示唆された。実施例1および2を比較すると、組成Eの量が多い程、靱性が向上し、強度が上がる傾向にあった。さらに実施例1、3および4の比較から、組成Hの量が減少すると、全体的に硬く脆くなるため強度は多少低下する傾向にあるが、逆に組成Aを少なくしたとしても、貼り合わせ後の第1接着層および第2接着層に含まれる成分の拡散がうまくいかず、常温硬化性が低下する傾向にあった。ただし、この場合であっても、加熱すれば拡散が促進され強度は高くなった。実施例5〜10を比較すると、組成Cを添加することにより、相溶性と靱性が上がり、常温硬化性(特に7日後硬化のせん断強度の結果を参照。)に優れた。このとき、組成Cの添加量を増やすにつれ、第1接着層および第2接着層に含まれる成分の拡散性は低下するため、室温硬化性は低下する傾向にあるが、靱性が向上し加熱後の強度が特に向上した。