本発明者は、物品の製造において、部材の接着に際して接着剤および両面粘着テープのそれぞれが有する上述した課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をそれぞれシート化した接着シートを用いることで、上述した接着剤および両面粘着テープの欠点を補いつつ、双方が持つ利点を活かした部材の接着が可能であることを知得した。
2液分別塗布型接着剤を用いた物品の製造方法では、例えば特許文献2および3で開示されるように、通常、2種類の液状材料を各部材の被着面に分別塗布した後、各部材の液状材料塗布面同士を接触させて常温硬化させることで、部材同士を貼り合せて行う。しかし、塗布接着法による物品の製造方法は、上述した問題を有する。
これに対し、本発明者は、2液分別塗布型接着剤を用い、2種類の液状材料の一方から形成された接着層を有する接着シートと、他方から形成された接着層を有する接着シートとが対となった接着シートセットを開発した。そして、各接着シートを別々の部材にそれぞれ貼り、各部材の接着層同士を接触させたところ、塗布接着法と同様に常温硬化が進み、部材を強固に接着することが可能となることを見出した。また、上記接着シートセットを用いることで、塗布接着法よりも物品の製造が簡便となることを見出した。なお、特許文献2~5には、2液分別塗布型接着剤の各液状材料のシート化については、開示も示唆もされていない。
さらに、本発明者は、上記接着シートセットによれば、接着剤を比較的低い温度で硬化させることができることから、上記部材の反りや浮きの発生を抑制することができ、材質や膨張率差に因らず、様々な部材を組合せて貼り合せることが可能であることを見出した。例えば、熱硬化型接着剤をシート状にした接着シートは、材質や膨張率の大きく異なる部材を貼り合せると、接着剤の加熱硬化の際に部材の反りや浮きが生じるという問題があるため、貼合する部材の組合せが材質等により制限されてしまう。特に、金属部材とプラスチック部材とを貼り合せる場合に、上記の問題が顕著化する。これに対し、2液分別塗布型接着剤から形成した接着シートセットによれば、比較的低い温度での硬化が可能であるため、上述したような不具合の発生を抑えることができる。
本開示の物品の製造方法および重ね貼り装置は、上述したこれらの知見に基づく。以下、本開示の物品の製造方法および重ね貼り装置について、詳細に説明する。なお、本明細書内において、第1接着層および第2接着層のことを、単に接着層と称する場合があり、第1接着シートおよび第2接着シートのことを、単に接着シートと称する場合がある。また、第1部材および第2部材のことを、単に部材と称する場合がある。さらに、第1接着シート付部材および第2接着シート付部材のことを、単に接着シート付部材と称する場合がある。
I.物品の製造方法
まず、本開示の物品の製造方法について説明する。本開示の物品の製造方法は、5つの実施形態を有する。以下、本開示の物品の製造方法に用いられる接着シート、および本開示の物品の製造方法の各実施形態について説明する。
A.第1接着シートおよび第2接着シート
本開示において、第1接着シートは第1接着層を備え、第2接着シートは第2接着層を備え、第1接着シートおよび第2接着シートは、第1接着層および第2接着層が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図1(a)、(b)は、接着シートの一例を示す模式図である。第1接着シート11は第1接着層22を備え、第2接着シート12は第2接着層24を備える。第1接着シート11および第2接着シート12は、一対になっており、第1接着層22および第2接着層24が互いに接触することにより硬化して、強い接着力を発現し、強固に接着可能となるように構成されている。第1接着シート11は、第1接着層22の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータ21を有していてもよく、図1(a)で示すように、第1接着層の片面に第1セパレータを有していてもよく、図1(b)で示すように、第1接着層の両面に第1セパレータを有していてもよい。同様に、第2接着シート12は、第2接着層24の少なくとも一方の面側に配置された第2セパレータ23を有していてもよく、図1(a)で示すように、第2接着層の片面に第2セパレータを有していてもよく、図1(b)で示すように、第2接着層の両面に第2セパレータを有していてもよい。
以下、第1接着シートおよび第2接着シートの各構成について説明する。
1.第1接着層および第2接着層
第1接着層および第2接着層は、互いに接触することにより硬化して接着することができる。以下、第1接着層および第2接着層の物性、性状および材料について説明する。
(1)物性
第1接着層および第2接着層は、硬化前に粘着性を有していてもよく、有さなくてもよいが、粘着性を有することができる。光硬化型や熱硬化型の接着剤は、硬化完了まで養生する必要であるため、上記接着剤を介して部材を貼り合せてから所望の養生時間、押圧等によりその貼り合せ状態を保持しなければならず、貼合工程の作業が煩雑化してしまう。これに対し、第1接着層および第2接着層が粘着性を有することで、接触硬化が完了するまでの間、双方の接着層が有する粘着力により、部材や接着層同士の貼り合せ状態を保持しながら硬化養生することができる。なお、本明細書内において、「接着層の粘着性」とは、特段の事情が無い限り、接触前(硬化前)の接着層が有する粘着性をいう。
ここで、「粘着」とは「接着」に含まれる概念である。粘着は一時的な接着現象の意味として用いられるのに対し、接着は実質的に永久的な接着現象の意味として用いられる点で区別されることがある(岩波書店 理化学辞典第5版)。「粘着性」および「粘着力」とは、感圧により接着する性質およびそのときの接着力を指す。接着層が粘着性を有するとは、接触硬化前の接着層が、部材を仮固定できる程度の接着力(粘着力)を有することを意味する。すなわち、硬化前の接着層は、硬化後よりも弱い接着力を有する。接着層が示す具体的な粘着性については後述する。
接触前(硬化前)の第1接着層および上記第2接着層の粘着力は、各接着層の種類、部材の種類および配置態様に応じて適宜設定することができる。接着層の被着体に対する粘着力は、少なくとも0.05N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内とすることができ、中でも0.1N/インチ以上、40N/インチ以下の範囲内とすることができる。
接着層は、粘着力の大きさに応じて、さらに弱粘着性、中粘着性、強粘着性に分類することができる。具体的には、粘着力が0.05N/インチ以上、1N/インチ未満の範囲内を弱粘着性、1N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内を中粘着性、5N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内を強粘着性とすることができる。中粘着性は、用途や物性に応じて弱粘着性に含めることができる。接着層は、弱粘着性とすることで、接着層の取り扱い性(作業性)およびリワーク性を向上させることができる。一方、強粘着性とすることで、反応性を向上させることができる。また、接着層は、中粘着性とすることで、作業性、リワーク性および反応性のいずれも良好とすることができる。第1接着層および第2接着層は、これらの粘着性の組合せにより所望の機能を発揮することが可能となる。
接着層は、弱粘着性または中粘着性とすることで、容易に剥離可能となり、貼り直しが可能であり、リワーク性を向上させることができる。このような特徴を活かして、例えば、部材に対して接着シートを移動させて貼り合せる、接着シートに対して部材を移動させて貼り合せる、一方の接着シート付部材に対して他方の部材を移動させて貼り合せる、一方の部材に対して他方の接着シート付部材を貼り合せることが可能となる。
また、第1接着層および第2接着層は、少なくとも一方が弱粘着性または中粘着性を示すことで、容易に剥離可能となり、貼り直しが可能であり、リワーク性を向上させることができる。このような特徴を活かして、例えば、上記の例の他、一方の接着シート付部材に対して他方の接着シート付部材を移動させて貼り合せる、一方の接着シート付部材に対して他方の接着シートを移動させて貼り合せる、一方の接着シートに対して他方の接着シート付部材を移動させて貼り合せる、一方の接着シート付部材に対して他方の接着シートを貼り合せる、一方の接着シートに対して他方の接着シートを移動させて貼り合せることが可能となる。
接着層は、粘着力が強いほど凝集力が低く柔軟性を有する層となり、一方、粘着力が弱いほど凝集力が高く硬い層となる。接着層の粘着性は、厚みや、組成等を調整することで調整が可能である。
また、第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分のうち、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層は、それぞれ所望の粘着力を有することができる。第1接着層の粘着力は、0.05N/インチ以上、中でも0.1N/インチ以上、特に0.5N/インチ以上とすることができ、また、50N/インチ以下、中でも40N/インチ以下、特に30N/インチ以下とすることができる。一方、第2接着層の粘着力は、0.05N/インチ以上、中でも0.1N/インチ以上、特に0.2N/インチ以上とすることができ、また、30N/インチ以下、中でも20N/インチ以下、特に10N/インチ以下とすることができる。なお、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層の粘着力は、その逆となる。
第1接着層および第2接着層の粘着力は、少なくとも被着体に貼り合せてからすぐ発揮され、第1接着層および第2接着層の接触により硬化反応が完了するまでの間保持することができ、中でもおおよそ1年間保持することができる。
被着体に対する粘着力は、以下の方法で測定することができる。なお、両面側にセパレータが設けられていない接着シートは、離型フィルムであるセパレータ(例えば、ニッパ社製 PETセパレータPET28×IJ0)を貼り付けてから測定する。まず、接着層の両面にセパレータが設けられた接着シートを縦25.4mm、横150mmのサイズに裁断し、一方のセパレータを剥離して、露出させた接着層上にPETフィルム(東洋紡社製A4100)を手動ローラーを用いて貼り合せる。その後、もう片方のセパレータを剥離し、露出させた接着層上にSUS板(304BA、被着面:研磨面、試料:縦25.4mm、横150mm)を、手動ローラーを用いて貼り合せる。その後、PETフィルム付きの接着層をSUS板から20mm程、手で剥離し、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、型番:RTF-1150H)を用いて、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)および粘着力の試験法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠した条件(引張速度:300mm/分、剥離距離:150mm、剥離角:180°)で、SUS板面に対する粘着力(N/インチ)を測定することができる。なお、1インチは25.4mmである。なお、後述する粘着力についても、この方法により測定することができる。
また、上記の場合における被着体に対する保持特性は、以下の方法により測定することができる。なお、両面側にセパレータが設けられていない接着シートは、離型フィルムであるセパレータ(例えば、ニッパ社製 PETセパレータPET28×IJ0)を貼り付けてから測定する。まず、接着層の両面にセパレータが設けられた接着シートを長さ12.5mm×幅25mmのサイズに裁断し、一方のセパレータを剥離し、露出させた接着層上に、一方の被着体である鉄板(溶融亜鉛鍍金鋼板、長さ100mm×幅25mm×厚み1.5mm)の先端部分を貼り付ける。接着層は被着体の端から長さ方向に12.5mmまでおよび幅方向全体を覆うように貼り付ける。次に、鉄板に貼りつけた接着シートからもう一方のセパレータを剥離し、露出させた接着層上にもう一方の被着体である鉄板(溶融亜鉛鍍金鋼板、長さ100mm×幅25mm×厚み1.5mm)の先端部分を貼り付ける。接着層は鉄板の端から長さ方向に12.5mmまでおよび幅方向全体を覆うように貼り付ける。そして、接着層が張り付けられた一方の被着体の接着層と接着層が張り付けられたもう一方の被着体の接着層とを、接着層どうしが向かい合って重なり、かつそれぞれの被着体の接着層が貼り付けられていない側の端が反対を向いて重ならないように、貼り合せることによって、試験体を得る。次いで、保持力試験機にて、試験体の一方の被着体の上側を仮固定し、試験体のもう一方の被着体の下側に200gの荷重をかけて23℃、50%RHの環境下でずり等なく保持できるかを確認する。ずり等なく保持が可能である時間を、上記接着層が保持特性を有することができる時間とすることができる。保持力試験機は、例えば、テスター産業社製のBE-501等を用いることができる。
ここで、上記「少なくとも」とは、最低限の範囲の粘着力を有していれば、接着層を被着体と貼り合せたときに、その貼り合せ状態を保持することができる粘着力である範囲を意味する。そして、接着層がこの範囲の粘着力を有する間は、被着体は接着層に対して好ましく貼り合せることができる。
第1接着層および第2接着層の被着体に対する粘着性および保持特性は、部材の種類、被着面の方向に応じて、さらに詳細な設定が可能である。例えば、部材同士を貼り合せたときに、第1部材および第2部材と接着層との接着面(被着面)が、鉛直面または法線面に対して、-45度以上+45度以下の範囲内、中でも-30度以上+30度以下の範囲内、特に-15度以上+15度以下の範囲内である場合、部材に対する接着層の粘着性および保持特性は、部材の重量にもよるが、高くすることができる。重量の重い部材を用いる場合であっても、第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応が完了するまでの間、貼り合せ状態を保持することができるからである。また、鉛直方向または法線方向から受けるせん断応力により、接着層に貼り合せた部材が自重で落下するのを防ぐことができるからである。
部材と接着層との接着面(被着面)が、鉛直面または法線面に対して上述の範囲内である場合、被着体に対する接着層の粘着力は、上述した被着体に対する粘着力の範囲内で、部材の重量に応じて適宜調整が可能である。粘着力は、中でも0.05N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内とすることができ、特に0.1N/インチ以上、40N/インチ以下の範囲内とすることができる。また、その粘着力は、少なくとも被着体に貼り合せてからすぐ発揮され、第1接着層および第2接着層との接触により硬化反応が完了するまでの間保持することができ、中でもおおよそ1年間保持することができる。
また、上記の場合において、接着層は、更に、上述した保持特性の試験方法において、少なくとも200g荷重をかけた状態で、1日以上の保持力を有し、そのときの被着体に対する粘着力は5N/インチ以上とすることができる。通常、第1接着層および第2接着層の接触により硬化するまでに要する時間は組成にもよるが、概ね1日程度であることから、少なくとも硬化に要する1日以上、所定の荷重を掛けた状態で保持することができ、且つ、被着体に対して所望の粘着力を示すことができる。
一方、第1部材および第2部材と接着層との接着面(被着面)が、水平面に対して、-45度以上+45度以下の範囲内、中でも-30度以上+30度以下の範囲内、特に-15度以上+15度以下の範囲内である場合、接着層は、硬化までの間、部材同士を仮固定することが可能な粘着力および保持特性を示すことができる。部材と接着層との接着面(被着面)が、水平面に対して上述の範囲内である場合、被着体に対する接着層の粘着力は、上述した被着体に対する粘着力の範囲内で、部材の種類に応じて適宜調整が可能である。粘着力は、中でも0.05N/インチ以上、20N/インチ以下の範囲内とすることができ、特に0.1N/インチ以上、20N/インチ以下の範囲内とすることができる。また、その粘着力は、少なくとも被着体に貼り合せてからすぐ発揮され、第1接着層および第2接着層との接触により硬化反応が完了するまでの間保持することができ、中でもおおよそ1年間保持することができる。
第1接着層および第2接着層は、接着層同士の接着面の方向に応じて、相手の接着層に対して所望の粘着性を示すことができる。例えば、接着層同士の接着面が、鉛直面または法線面に対して、-45度以上+45度以下の範囲内、中でも-30度以上+30度以下の範囲内、特に-15度以上+15度以下の範囲内となる場合であれば、第1接着層および第2接着層間の粘着性および保持特性は高くすることができる。また、接着層同士の接着面が、水平面に対して、-45度以上+45度以下の範囲内、中でも-30度以上+30度以下の範囲内、特に-15度以上+15度以下の範囲内となる場合、第1接着層および第2接着層間の粘着性および保持特性は特に限定されない。接着層同士の接着面が、鉛直面または法線面に対して上述の範囲内である場合、ならびに、水平面に対して上述の範囲内である場合の、第1接着層および第2接着層間の具体的な粘着力、保持特性とその効果については、上述した被着体に対する接着層の粘着力の値および保持特性とその効果の説明と同様とすることができる。
第1接着層および第2接着層間の粘着力は、以下の方法により測定することができる。まず、第1接着層の両面に第1セパレータが設けられた接着シートとPETフィルム(東洋紡社製A4100)とを、上述の接着層の粘着力の測定の際に行った方法と同様にして貼り合せる。次に、第2接着層の両面に第2セパレータが設けられた接着シートも同様のサイズに裁断し、一方の第2セパレータを剥離して露出させた第2接着層上にSUS板(304BA、被着面:研磨面、試料:縦25.4mm、横150mm)を手動ローラーを用いて貼り合せる。その後、第1接着層上の第1セパレータおよび第2接着層上の第2セパレータをそれぞれ剥離し、露出した接着層同士を手動ローラーにて貼り合せた後、PETフィルム上の第1接着層を、第2接着層との接着面にて手で20mm程剥離し、引張試験機を用いて第2接着層に対する粘着力を測定することができる。引張試験の条件は、上述した被着体に対する粘着力の測定条件と同様とすることができる。
第1接着層および第2接着層は、少なくとも一方が低粘性もしくは高粘性を示すことで、硬化完了前であれば貼り合せたまま被着面に対して平行移動させることができ、貼り合せ位置を調整することができる。このような特徴を活かして、例えば、一方の接着シート付部材に対して他方の接着シート付部材を平行方向にスライド移動させて貼り合せる、一方の接着シート付部材に対して他方の接着シートを平行方向にスライド移動させて貼り合せる、一方の接着シートに対して他方の接着シート付部材を平行方向にスライド移動させて貼り合せる、一方の接着シートに対して他方の接着シートを平行方向にスライド移動させて貼り合せることが可能となる。
第1接着層および第2接着層の粘性の高低は、損失正接の値に応じて分類することができる。第1接着層および第2接着層の少なくとも一方が低粘性を示すとは、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方の、23℃における損失正接(以下、「tanδ(23℃)」ともいう。)が、0.2以下であることをいい、中でも0.1以下とすることができる。また、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方が高粘性を示すとは、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方の、tanδ(23℃)が、0.5以上であることをいい、中でも1.0以上とすることができる。
tanδは、接着層の粘性を反映し、応力緩和挙動(力が加わった場合の変形の遅れ)を示すパラメーターの1つである。tanδの値が小さいと接着層の変形に対する復元が速く起こりやすく、値が大きいと変形に対する復元が遅く起こりやすいことを示す。tanδは、例えば、測定装置としてティー・エイ・インスツルメント社製の固体粘弾性アナライザーRSA-IIIを用い、JIS K7244-1:1998(プラスチック-動的機械特性の試験方法-第1部:通則)に準拠した動的粘弾性測定法(アタッチメントモード:圧縮モード、周波数:1Hz、温度:-50℃~150℃、昇温温度:5℃/分)にて測定した貯蔵弾性率’および損失弾性率”から算出することができる(tanδ=E”/E’)。第1接着層および第2接着層の粘性は、各層に含有される成分の組成や配合比等に応じて適宜調整が可能である。
また、第1接着層および第2接着層は、接触硬化により硬化接着層となる。硬化接着層については後述する。
(2)第1接着層および第2接着層の粘着力の組合せ
第1接着層および第2接着層は、作業性、反応性、リワーク性、保持特性等、2つの接着層間に要求される機能、貼合後の物品の用途等に応じて、双方の粘着力を適宜選択して組み合わせることができる。以下、第1接着層および第2接着層の粘着力の組合せについて、要求される機能ごとに説明する。
(a)作業性が良好となる組合せ
上記第1接着層および第2接着層は、双方を貼り合せる際に、接着層が作業者の手に付着しにくい等の作業性が良好となる粘着力の組合せとすることができる。このような組合せとしては、第1接着層の粘着力および第2接着層の粘着力が、それぞれ0.05N/インチ以上、1N/インチ未満の範囲内である組合せとすることができる。すなわち、第1接着層および第2接着層の両方を弱粘着性とすることができる。第1接着層および第2接着層をそれぞれ弱粘着性とすることで、貼り合せる際に接着層が手に付着しにくくなり、貼合作業を容易に行うことができ、作業性を向上することができる。
(b)リワーク性が良好となる組合せ
第1接着層および第2接着層は、少なくとも一方のリワーク性が良好となる粘着力の組合せとすることができる。このような組合せとしては、第1接着層および第2接着層のうち、一方の粘着力が他方の粘着力よりも強い組合せとすることができる。粘着力の強い接着層は柔らく、粘着力の弱い接着層は硬いため、柔軟さの異なる接着層を組み合わせることで、一度貼り合せても硬化反応が完了する前であれば、第1接着層と第2接着層との接着面での剥離および貼り直しが可能となり、リワーク性の向上を図ることが可能となるからである。
第1接着層および第2接着層のうち、一方の粘着力が他方の粘着力よりも強い組合せとしては、一方の粘着力を5N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内とし、他方の粘着力を0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、一方を強粘着性とし、他方を中粘着性または弱粘着性とすることができる。中でも、一方の粘着力は5N/インチ以上、15N/インチ以下の範囲内とすることができ、他方の粘着力は0.1N/インチ以上、3N/インチ以下の範囲内とすることができる。
また、上記組合せにおいては、さらに第1接着層および第2接着層がそれぞれ一定以上の粘着力を有することができる。部材に対してそれぞれの接着層を十分に貼合することができ、また、貼り直す際に、第1接着層と第2接着層との接着面で剥離が生じやすく、且つ、部材と接着層との接着面において剥離を生じにくくすることができるからである。第1接着層および第2接着層がそれぞれ一定以上の粘着力を有するとは、具体的には、粘着力は0.5N/インチ以上とすることができ、中でも1N/インチ以上とすることができる。
第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分のうち、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、リワーク性が良好となる組合せとしては、第1接着層の粘着力が、第2接着層の粘着力よりも強い組合せとすることができる。このとき、第1接着層は強粘着性とすることができる。さらに、第1接着層は強粘着性であり、第2接着層は中粘着性または弱粘着性とすることができ、特に、第2接着層は中粘着性または弱粘着性であり、且つ、上述した一定以上の粘着力を有することができる。なお、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層の粘着力は、その逆となる。
リワーク性が良好であるとは、第1接着層と第2接着層とを自重で貼り合せて10秒間保持した後、剥離したときに、剥離前の第1接着層の接着面積に対する、剥離後の第2接着層側に移行した第1接着層の面積の割合(以下、接着層移行率とする。)が50%以下とすることができ、中でも40%以下、特に30%以下とすることができる。上記接着層移行率が上記の範囲であれば、第1接着層と第2接着層とを剥離した後、再度貼り直す際に、第1接着層が所望の機能を発揮することが可能となる。
リワーク性は以下の方法により測定することができる。まず、第1接着層の両面にセパレータが設けられた第1接着シート(サイズ:25mm×100mm)を準備し、第1接着シートの一方のセパレータを剥離して露出した第1接着層の面を、SUS304(BA処理)板(サイズ:25mm×100mm)の片面に貼付して、第1試験片とする。同様に、第2接着層の両面にセパレータが設けられた第2接着シート(サイズ:25mm×100mm)を準備し、第2接着シートの一方のセパレータを剥離して露出した第2接着層の面を、別のSUS304(BA処理)板(サイズ:25mm×100mm)の片面に貼付して、第2試験片とする。次に、第1接着シートが上向きとなるように水平面に第1試験片を静置し、第1接着シートの他方のセパレータを剥離して第1接着層の面を露出する。また、第2試験片は、第2接着シートの他方のセパレータを剥離して第2接着層の面を露出し、上記第1接着層の露出面と上記第2接着層の露出面とを十字に重ねあわせ、接着面積が25mm×25mmとなるように、自重のみで直接重ねて貼り合せる。10秒間保持した後、第2試験片を剥離し、剥離前の第1接着層の接着面積(すなわち第2接着層との接触面積)100%に対する、剥離後の第2接着層側に移行した第1接着層の面積の割合を算出する。
(c)反応性が良好となる組合せ
第1接着層および第2接着層は、双方の接触により生じる硬化反応の反応性が高くなる粘着力の組合せとすることができる。第1接着層および第2接着層の接触硬化により形成される硬化接着層の接着力を強くすることができ、硬化接着層を介して部材を強固に貼り合せることができるからである。このような組合せについて、以下に説明する。
(i)組合せ1
反応性が良好となる粘着力の組合せとしては、第1接着層および第2接着層のうち、一方の粘着力が他方の粘着力よりも強い組合せとすることができる。粘着力の強い接着層は柔軟性を有する層であり、粘着力の弱い接着層は硬い層であるため、粘着力の強い接着層が粘着力の弱い接着層に密着しやすくなり、粘着力の弱い接着層に含まれる成分が粘着力の強い接着層に移行しやすくなるため、接触硬化による反応が進みやすくなるからである。また、上述したように、上記組合せは、リワーク性も高くすることができる。
ここで、一方の粘着力が他方の粘着力よりも強いとは、具体的には、一方の粘着力は5N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内とし、他方の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、第1接着層および第2接着層のうち、一方は強粘着性とし、他方は中粘着性または弱粘着性とすることができる。強粘着性の接着層は柔軟性を有するため、硬化反応が完了する前であれば貼り直しが可能となり、反応性に加えてリワーク性の向上を図ることが可能となるからである。中でも、一方の粘着力は5N/インチ以上、15N/インチ以下の範囲内とし、他方の粘着力は0.1N/インチ以上、3N/インチ以下の範囲内とすることができる。
(ii)組合せ2
第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分のうち、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、反応性が良好となる粘着力の他の組合せとしては、第1接着層の粘着力が、第2接着層の粘着力よりも強い組合せとすることができる。
第1接着層の粘着力を第2接着層の粘着力よりも強くすることで、第1接着層が第2接着層よりも柔軟性を有することができ、第2接着剤成分が第1接着層側に移行しやすくなるため、接触硬化による反応が進みやすくなる。このように反応性が向上することで、接触硬化後のせん断強度を高くすることができ、部材を強固に貼り合せることができる。
また、上記組合せとしては、第1接着層の厚みが、第2接着層の厚みよりも大きい組合せとすることができる。第2接着層の厚みが小さい方が、第2接着剤成分が第1接着層側に移行しやすく、接触硬化による反応が促進されるため、反応性がより向上するからである。
上記組合せとしては、第1接着層の粘着力は5N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内とすることができ、すなわち、第1接着層は強粘着性とすることができる。
本発明者は、後述する実施例の結果で示すように、第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応において、第1接着層の粘着性の強度が反応性に寄与することを知見した。つまり、強粘着性の第1接着層は柔軟性が高いため、他方の第2接着層の粘着力によらず相溶し易くなり、第2接着剤成分が第1接着層側に移行しやすくなる。このため、硬化反応が進みやすくなり、接触硬化により形成される硬化接着層の接着力を強くすることができる。中でも接触硬化後のせん断強度が高くなるため、接着層同士の接着面が鉛直面または法線面に対して所定の範囲内である場合に、自重による部材の落下を防ぐことができる。また、強粘着性の接着層は柔軟性を有するため、硬化反応が完了する前であれば貼り直しが可能となり、反応性に加えてリワーク性の向上を図ることが可能となる。
なお、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層の粘着力は、その逆となる。
(iii)せん断強度
第1接着層および上記第2接着層は、反応性が高いほど、接触硬化反応後のせん断強度、すなわち、硬化接着層のせん断強度が大きくなる。硬化接着層の引張せん断強度は大きくすることができ、中でも1MPa以上とすることができ、特に2MPa以上とすることができる。また、引張せん断強度の上限は特に限定されず、一般的な接着層の引張せん断強度の上限と同様とすることができる。
せん断強度はJIS K6850:1999(接着剤-剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法)に準拠して以下の方法(ただし、試験速度は10mm/minとする)により測定することができる。なお、両面側にセパレータが設けられていない接着シートは、離型フィルムであるセパレータ(例えば、ニッパ社製 PETセパレータPET28×IJ0)を貼り付けてから測定する。 まず、第1接着シート、第2接着シート、および2枚のSUS板(サイズ:長さ100mm×幅25mm)を準備する。第1接着シートは、第1接着層の両面にセパレータを設けた層構成とする。また、第2接着シートは、第2接着層の両面にセパレータを設けた層構成とする。各接着シートのサイズは、長さ12.5mm×幅25mmとする。次に、第1接着シートの一方のセパレータを剥離し、露出した第1接着層の面を一方のSUS板の片面の先端に貼付する。第2接着シートについても同様の方法で、他方のSUS板の片面の先端に貼付する。続いて、SUS板上の第1接着シートの他方のセパレータを剥離して露出した第1接着層の面と、SUS板上の第2接着シートの他方のセパレータを剥離して露出した第2接着層の面とを直接重ねて貼り合せて(接着面積:12.5mm×25mm)クリップで固定して、SUS板/第1接着層/第2接着層/SUS板の順で積層されたサンプルを作製する。上記サンプルを23℃、50%RH環境下で24時間または4日間静置して養生した後、各養生時間後のサンプルについて、23℃、50%RH環境下で上記サンプルの両端をテンシロン万能材料試験機(RTF-1350、株式会社エーアンドデイ製)に固定し、接着面に対し平行方向に10mm/minで引っ張り測定する。養生時間が24時間および4日間のそれぞれの場合において、引張せん断強度は上記の範囲内とすることができる。
(d)保持特性が良好となる組合せ
第1接着層および第2接着層は、互いが接触するように貼り合せたときの保持力が高くなる粘着力の組合せとすることができる。上第1接着層および第2接着層間の保持力を高くすることで、第1接着層および第2接着層の接触硬化が完了するまでの間、双方の有する粘着力により貼り合せ状態を保持することができるからである。中でも、第1接着層と第2接着層との接着面が鉛直面または法線面に対して所定の範囲内である場合に、接触硬化が完了するまでの間に自重により接着面において剥離が生じるのを防ぐことができる。上記保持力は、粘着力、厚み、および凝集力の少なくとも1以上を調整することで、向上を図ることが可能となる。
(i)組合せ1
保持特性が良好となる組合せとしては、第1接着層および上記第2接着層のうち、少なくとも一方の粘着力が5N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内である組合せ、すなわち、第1接着層および第2接着層のうち、少なくとも一方を強粘着性とする組合せとすることができる。このとき他方の粘着力は特に限定されないが、一方の粘着力よりも弱くすることができ、中でも、他方の粘着力は中粘着性または弱粘着性とすることができる。
第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分のうち、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層は上述した粘着力を有する強粘着性とすることができる。中でも、第1接着層は上述した粘着力を有する強粘着性とし、第2接着層は中粘着性または弱粘着性とすることができる。なお、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層の粘着力は、その逆となる。
(ii)組合せ2
保持特性が良好となる他の組合せとしては、第1接着層および第2接着層のうち、一方の接着層の厚みおよび他方の接着層の厚みの比が0.5:1~5:1の範囲内であり、一方の接着層の厚みが2μm以上200μm以下の範囲内である組合せとすることができる。一般に、厚みと粘着力の強さとは比例関係にあることから、2つの接着層の間に上記の厚みの大小関係を有することで、厚みの大きい接着層は粘着力が強くなり柔らかい層となるため、全体的に応力を分散しやすくなり、保持力を高くすることが可能となるからである。
他方の接着層の厚みは、上記の比率を満たすことが可能であれば、特に限定されないが、一方の接着層の厚みよりも小さくすることができる。中でも、一方の接着層の厚みおよび他方の接着層の厚みの比は0.6:1~3:1の範囲内とすることができ、特に0.8:1~2:1の範囲内とすることができる。また、一方の接着層の厚みは、5μm以上150μm以下の範囲内とすることができる。
一方の厚みを有する接着層は、強粘着性とし、他方の厚みを有する接着層は、中粘着性または弱粘着性とすることができる。その理由は上記組合せ1で説明したため、省略する。
なお、上記厚みが小さすぎると、凝集力が大きい(貯蔵弾性率が高い)場合であっても応力集中に耐えられず保持力が低下する場合があり、一方、厚みが大き過ぎると、凝集力が低い(貯蔵弾性率が低い)場合であっても、第1接着層および第2接着層の接着面でズレが起きやすくなり、保持力が低下する傾向にある。
第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分のうち、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層の厚みと第2接着層の厚みとの比(第1接着層の厚み:第2接着層の厚み)は0.5:1~5:1の範囲内とすることができ、中でも0.6:1~3:1の範囲内、特に0.8:1~2:1の範囲内とすることができる。また、上記の場合において、第1接着層の厚みは2μm以上200μm以下の範囲内とすることができ、中でも5μm以上150μm以下の範囲内とすることができる。2つの接着層の接触硬化により、ある程度の接着強度を得るためには、第2接着層側に第1接着層に含まれる第1接着剤成分が移行する必要がある。このため、第1接着層を上記厚みとすることで、成分が移行しやすくなり、また、強粘着性を有することができ、上述した効果を奏しやすくすることができる。なお、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層の厚みは、その逆となる。
(iii)組合せ3
保持特性が良好となる他の組合せとしては、第1接着層および第2接着層のうち、少なくとも一方が所定の凝集力を有する組合せとすることができる。すなわち、第1接着層および第2接着層のうち、少なくとも一方の20℃における貯蔵弾性率は1.0×105Pa以上、1.0×106Pa以下の範囲内とすることができる。具体的には、上記貯蔵弾性率は、1.0×105Pa以上、中でも2.0×105Pa以上とすることができ、また、1.0×106Pa以下、中でも5.0×106Pa以下とすることができる。
上記貯蔵弾性率は、外力と歪みにより物体に生じたエネルギーのうち、物体の内部に保存する成分として定義され、硬化前の接着力の硬度の指標となる。上記貯蔵弾性率は、JIS K7244-1に準拠した動的粘弾性測定法により測定することができる。具体的な測定装置および測定条件については、上述した粘性を規定する損失正接(tanδ)の算出方法における貯蔵弾性率E’の測定に用いた測定装置および測定条件と同様とすることができる。
ここで、接着層は、貯蔵弾性率に応じた粘着性を有し、粘着力が弱くなると、貯蔵弾性率の値が高くなり凝集力も高くなる。保持特性は、一般に、2つの接着層間の粘着力の関係によると考えられる。すなわち、第1接着層および第2接着層のうち、一方が強粘着性の接着層であれば、強粘着性の接着層は、凝集力が低く柔軟性を有するが、強粘着力により全体的に応力が分散されやすくなるため、高い保持特性を有することができる。
また、後述する実施例の結果で示すように、第1接着層および第2接着層が共に弱粘着性であっても、一方の接着層の貯蔵弾性率が所定の範囲内にある場合は、保持特性の向上を図ることが可能となることが示唆された。これらの結果から、弱粘着性の接着層同士の組合せは、各接着層の凝集力は高く硬いが、所定の貯蔵弾性率を有するため、どちらか一方に応力が集中せず全体で力を受け止め、せん断方向の耐力を高めることができ、その結果保持特性が良好となると推量される。
他方の接着層の動的粘弾性は、一方の接着層の動的粘弾性よりも高くてもよく、低くてよく、一方の接着層の粘着力および厚みに応じて適宜設定することができる。中でも、第1接着層および第2接着層のそれぞれの20℃における貯蔵弾性率は、上述した所定の範囲内とすることができる。双方の接着層が所定の範囲内に貯蔵弾性率を有することで、一方の接着層のみが所定の範囲内に貯蔵弾性率を有する場合よりも、更に高い保持特性を有することができるからである。
第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分のうち、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、少なくとも第2接着層は、上記の貯蔵弾性率を有することができる。中でも、第2接着層は、上記の貯蔵弾性率を有し、且つ弱粘着性とすることができる。なお、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層の関係は、その逆となる。
(iv)その他
第1接着層および第2接着層は、少なくとも一方が、所定の粘着力、厚みおよび凝集力の少なくとも1以上を有し、他方が所定の貯蔵弾性率を有することができる。具体的には、第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分のうち、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層は上述した所定の粘着力および厚みの少なくとも一方を有し、第2接着層は上述した所定の貯蔵弾性率を有することができる。なお、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層の関係は、その逆となる。
(v)保持力
第1接着層および第2接着層間の保持力は、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠した方法で8秒以上とすることができ、中でも10秒以上、特に12秒以上とすることができる。
ここでの保持力はJIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠して以下の方法により測定することができる。なお、両面側にセパレータが設けられていない接着シートは、離型フィルムであるセパレータ(例えば、ニッパ社製 PETセパレータPET28×IJ0)を貼り付けてから測定する。まず、第1接着層の両面にセパレータが設けられた第1接着シート(サイズ:長さ12mm×幅12mm)を準備し、第1接着シートの一方のセパレータを剥離して露出した第1接着層の面を、SUS板(サイズ:長さ125mm×幅50mm)の片面の先端中央に貼付する。次に、第2接着層の両面にセパレータが設けられた第2接着シート(サイズ:長さ12mm×幅12mm)を準備し、第2接着シート一方のセパレータを剥離し、露出した第2接着層の面と、SUS板上の第1接着シートの他方のセパレータを剥離して露出した第1接着層の面とを、直接重ねて貼り合せる(貼合面積:12mm×12mm)。続いて、第2接着シートの他方のセパレータを剥離して露出した第2接着層の全面にPETシート(サイズ:長さ150mm×幅12mm)の先端を貼付する。SUS板の長手方向が鉛直方向となるようにSUS板を固定し、23℃、50RH%環境下でSUS板から下側に突出したPETシートの下端に1kg重の錘を吊るしたときの、錘が落下する時間を測定する。
(e)その他
第1接着層および第2接着層の粘着力の組合せは、2つの接着層間に要求される機能に応じて上述した組合せの中から適宜選択することができる。中でも、第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分のうち、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層が、第1相溶性重合体成分をさらに含み、且つ強粘着性であり、第2接着層が、第2相溶性重合体成分をさらに含み、且つ弱粘着性である組合せが、反応性、リワーク性、保持特性が良好となる。なお、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層の関係は、その逆となる。
(3)材料
第1接着層および第2接着層は、互いに接触することにより硬化して接着することができる。このような性質を有する第1接着層および上記第2接着層としては、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着剤成分および第2接着剤成分のうち、第1接着剤成分を含有する接着層を第1接着層と、第2接着剤成分を含有する接着層を第2接着層とすることができる。
ここで、接着剤成分とは、硬化反応に寄与する成分をいう。例えば、硬化性有機化合物、硬化性無機材料、硬化剤、触媒、開始剤、硬化促進剤、還元剤、酸又はアルカリ成分、酸発生剤、塩基発生剤、吸水剤等が挙げられる。
第1接着層に含まれる第1接着剤成分と第2接着層に含まれる第2接着剤成分とは、接触により硬化反応が開始し、各成分が相互に拡散するにつれて硬化反応が進むことで、実質的に均一な硬化が可能となる。
第1接着剤成分および第2接着剤成分の組合せは、特に限定されないが、例えば、硬化性有機化合物を第1接着剤成分とし、硬化剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物および潜在性硬化剤を第1接着剤成分とし、触媒や還元剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物および開始剤を第1接着剤成分とし、還元剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物および開始剤を第1接着剤成分とし、硬化性有機化合物および還元剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性無機材料を第1接着剤成分とし、水分や触媒を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物およびph反応付与成分を第1接着剤成分とし、酸又はアルカリ成分を第2接着剤成分とする組合せ等が挙げられる。また、第1接着剤成分および第2接着剤成分の組合せは、これらの逆であってもよい。
第1接着層および第2接着層は、例えば、第1接着剤成分を含有する液状材料と、第2接着剤成分を含有する液状材料と、の2種類から構成される2液分別塗布型接着剤の各液状材料を用いて形成することができる。上記2液分別塗布型接着剤としては、従来公知の組成が挙げられる。具体的には、アクリル化合物およびラジカル重合開始剤を含有するA液と、レドックス重合触媒の還元剤を含有するB液と、から構成されるプライマー型のアクリル接着剤(SGA)、アクリル化合物およびラジカル重合開始剤を含有するA液と、アクリル化合物およびレドックス重合触媒の還元剤を含有するB液と、から構成される2液主剤型のアクリル接着剤(SGA)、ポリオール化合物を含有するA液と、ポリイソシアネート化合物を含有するB液と、から構成されるウレタン接着剤、エポキシ化合物を含有するA液と、ポリアミドやポリチオール、イミダゾール等の硬化剤を含有するB液と、から構成されるエポキシ接着剤、シリコーン低重合体等のシリコーン化合物を含有するA液と、白金触媒を含有するB液と、から構成されるシリコーン接着剤等が挙げられる。なお、2液分別塗布型接着剤はこれらに限定されず、部材の材質等に応じて適宜選択することが可能である。また、2液分別塗布型接着剤に限らず、ポリマーセメント等の2液硬化型塗料等を用いることも可能である。
以下、第1接着層および第2接着層の材料について説明する。
(a)第1接着剤成分および第2接着剤成分
第1接着剤成分および第2接着剤成分は、少なくともいずれか一方が、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する。以下、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合について説明する。
(i)第1接着剤成分
第1接着層に含まれる第1接着剤成分は、第2接着層に含まれる第2接着剤成分と硬化反応を生じるものであってもよく、第2接着剤成分の存在により、第1接着剤成分に含まれる成分同士が硬化反応を生じるものであってもよい。第1接着層および第2接着層に2液分別塗布型接着剤を用いる場合は、第1接着剤成分は、通常、2液分別塗布型接着剤における主剤成分を少なくとも含む。
第1接着剤成分としては、例えば、硬化性有機化合物、硬化性無機材料、これらと併用されるその他の材料等が挙げられる。第1接着剤成分は、硬化性有機化合物または硬化性無機材料の一方を含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。
(硬化性有機化合物)
硬化性有機化合物としては、公知の2液分別塗布型接着剤に用いられる硬化性有機化合物が挙げられ、例えば、エポキシ化合物、アクリル化合物、ポリオール化合物、シリコーン低重合体等のシリコーン化合物、メラミン化合物、フェノール化合物混合物、シリル化合物等が挙げられる。これらは、第1接着層が貼り合される部材の材質に応じて適宜選択することが可能である。例えば、部材の材質が、木材、セラミック、コンクリート、金属であれば、硬化性有機化合物は、エポキシ化合物やポリオール化合物とすることができる。また、例えば、部材の材質が、ポリプロピレンやポリエチレン等の難接着材料であれば、硬化性有機化合物は、シリコーン化合物やアクリル化合物とすることができる。また、アクリル化合物は材料の自由度が高く、金属、木材、ABS等の有機物にも広く使用が可能である。
第1接着剤成分がエポキシ化合物を含む場合、上記エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することができ、一般にエポキシ接着剤に使用されるエポキシ化合物を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、脂肪族系エポキシ化合物、グリコール系エポキシ化合物、ペンタエリスリトール系エポキシ化合物、芳香族系エポキシ化合物、ウレタン変性エポキシ化合物やゴム変性エポキシ化合物等の変性エポキシ化合物、その他特開2009-167251号公報で開示されるエポキシ化合物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられていてもよく、2種以上用いられていてもよい。
第1接着剤成分に含まれるエポキシ化合物は、液状エポキシ化合物であってもよく、固形エポキシ化合物であってもよい。液状エポキシ化合物は、常温で液状のエポキシ化合物をいい、固形エポキシ化合物は常温で固形のエポキシ化合物をいう。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物であれば、主鎖のビスフェノール骨格が1以上3以下であれば、常温で液状とすることができ、主鎖のビスフェノール骨格が2以上10以下であれば、常温で固形とすることができる。
第1接着層においては、液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の少なくとも一方が含まれていればよいが、両方が含まれていてもよい。第1接着層が液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物を含む場合は、それぞれの分子量および配合量を調整することで、硬化前の粘着性や硬化後の接着力を調整することができる。
上記液状エポキシ化合物の質量平均分子量およびエポキシ当量は、第1接着層と第2接着層との接触に際して要求される硬化速度に応じて適宜設定することができる。例えば、液状エポキシ化合物の質量平均分子量(Mw)は200以上900以下の範囲内とすることができる。また、このとき、エポキシ当量(g/eq.)は100以上500以下の範囲内とすることができる。上記の範囲とすることで、第1接着層と第2接着層とを接触させた際に、第1接着層に含まれる液状エポキシ化合物が他方の第2接着層側へ浸透しやすくなり、硬化速度を速めることができる。また、硬化後の耐久性、接着力を向上させることができる。
また、固形エポキシ化合物の質量平均分子量およびエポキシ当量は、第1接着層にかかるせん断応力の大小や応力のかかる方向に応じて適宜設定することができる。例えば、固形エポキシ化合物の質量平均分子量(Mw)は900以上6000以下の範囲内とすることができる。上記の範囲とすることで、耐久性、粘着力を向上させることができる。また、このとき、エポキシ当量(g/eq.)は450以上5000以下の範囲内とすることができる。上記の範囲とすることで、凝集力や製膜性が向上し、せん断応力に強くなるからである。また、硬化後の耐久性、接着力を向上させることができる。
質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。また、エポキシ当量は、JIS K7236:2009(エポキシ化合物のエポキシ当量の求め方)に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む化合物のグラム数である。
第1接着層がエポキシ化合物として液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の両方を含む場合、液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の配合比は、要求される粘着性および凝集力に応じて設定することができる。強粘着性もしくは低凝集力の第1接着層とするためには、第1接着層中の液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の合計量(100質量%)に対して、上記液状エポキシ化合物の含有量は50質量%以上、中でも60質量%以上とすることができ、また、95質量%以下、中でも90質量%以下とすることができる。液状エポキシ化合物の含有量は、固形エポキシ化合物の含有量よりも多くすることができる。一方、弱粘着性もしくは高凝集力の第1接着層とするためには、第1接着層中の液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の合計量(100質量%)に対して、上記液状エポキシ化合物の含有量は20質量%以上、中でも30質量%以上とすることができ、また、70質量%以下、中でも60質量%以下とすることができる。第1接着層中の液状エポキシ化合物の含有量は、固形エポキシ化合物の含有量以下とすることができる。
第1接着剤成分がアクリル化合物を含む場合、上記アクリル化合物は、アクリル単量体、アクリル重合体のいずれであってもよい。また、アクリル重合体は、アクリル低重合体、アクリル高重合体のいずれであってもよい。例えば特開2008-248111号公報や特開2016-175195号公報に開示されるアクリル化合物が挙げられる。
また、第1接着剤成分がポリオール化合物を含む場合、上記ポリオール化合物は、分子中に複数個の水酸基を有すればよく、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
第1接着剤成分がメラミン化合物、フェノール化合物混合物、またはシリル化合物を含む場合、これらの化合物については、一般的な2液分別塗布型接着剤に用いられる化合物と同様とすることができる。
中でも、第1接着剤成分はエポキシ化合物を含んでいてもよい。硬化後の凝集力や接着力が高く、木材、コンクリート、セラミック等の広域な材質に対して高強度に接着することが可能であるからである。
また、第1接着剤成分はアクリル化合物を含んでいてもよい。例えばアクリル化合物を適宜選択することにより、部材に応じて第1接着層の物性を調整することができ、部材に対する適性を高めることができる。また、アクリル化合物は、耐候性、透明性が良好であるという利点を有する。
(硬化性無機材料)
硬化性無機材料としては、例えば、水を触媒として硬化する水硬化性無機材料を用いることができる。上記水硬化性無機材料として具体的には、ポルトランドセメント、アルミナセメント、耐酸セメント、スラグセメント、ローマンセメント、マグネシアセメント等のセメント類、石膏、石灰、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
(その他の成分)
第1接着剤成分は、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等の他に、例えば、硬化剤、触媒、開始剤、硬化促進剤、還元剤等を含むことができる。これらの材料は、通常、対となる第2接着層に含有される第2接着剤成分とは異なる材料とすることができ、硬化性有機化合物や硬化性無機材料の種類、第2接着層に含まれる第2接着剤成分の種類に応じて適宜選択することができる。
例えば、第1接着層が第1接着剤成分として硬化性有機化合物を含む場合であって、上記硬化性有機化合物がアクリル化合物である場合、第1接着剤成分は、アクリル化合物の他に、例えばラジカル重合開始剤を含むことができる。この場合、対となる第2接着層は、第2接着剤成分として、例えばレドックス重合触媒の還元剤を含む、あるいはアクリル化合物およびレドックス重合触媒の還元剤を含むことができる。具体的には、特開2008-308531号公報で開示される過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤が挙げられる。
また例えば、第1接着層が第1接着剤成分として硬化性有機化合物を含む場合であって、上記硬化性有機化合物がエポキシ化合物である場合、第1接着剤成分は、エポキシ化合物の他に、一般にエポキシ化合物に配合されるフェノール化合物、アミン化合物、チオール化合物等の硬化剤、ジシアンジアミド、マイクロカプセル型アミン類や包接触媒、ヒドラジド類等の潜在性硬化剤、カチオン触媒型硬化剤等の硬化剤を含むことができる。この場合、対となる第2接着層は、第2接着剤成分として、例えば脂肪族ジメチルウレア、芳香族ジメチルウレア等の硬化触媒、イミダゾール、リン系触媒、ポリアミン類等を含むことができる。
(ii)第2接着剤成分
第2接着層に含有される第2接着剤成分は、第1接着層に含まれる第1接着剤成分と直接反応するものであってもよく、第1接着層に含まれる第1接着剤成分の硬化反応を誘発または促進させるものであってもよい。第2接着剤成分としては、第1接着剤成分の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、硬化剤、酸又はアルカリ成分、硬化促進剤、酸発生剤、塩基発生剤、触媒、吸水剤等が挙げられる。これらの成分は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。第2接着剤成分、通常、第1接着剤成分とは異なる組成を有する。
第1接着剤成分がエポキシ化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば硬化剤が挙げられる。上記硬化剤として具体的には、イミダゾール化合物、フェノール化合物、アミン化合物、ポリアミド化合物、酸無水物、イソシアネート化合物、チオール化合物等が挙げられる。中でも、上記硬化剤はイミダゾール化合物とすることができる。イミダゾール化合物は、室温でのエポキシ化合物との反応性がよく、また、硬化後のガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性、耐久性に優れるとともに、分子量が小さい化合物が多い。このため、第1接着層と第2接着層とを接触させた際に、第2接着層に含まれる硬化剤がエポキシ化合物を含有する他方の第1接着層へと移行しやすくなり、接触による硬化反応が起こり易くなるからである。
第1接着剤成分がアクリル化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば触媒、還元剤、開始剤等が挙げられる。具体的には、特開2008-308531号公報で開示される過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤、特開2008-81691号公報で開示されるレドックス重合触媒の還元剤が挙げられる。
また、第1接着剤成分がアクリル化合物を含む場合、第2接着剤成分もアクリル化合物を含んでいてもよい。この場合、第1接着剤成分および第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物は同じであってもよく、異なってもよい。第1接着剤成分および第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物が異なる場合には、例えばアクリル化合物を適宜選択することにより、部材に応じて第1接着層および第2接着層の物性を調整することができるため、部材に対する適性を高めることができる。また、第1接着剤成分および第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物が異なる場合には、第1接着層および第2接着層にそれぞれ要求される機能に応じて、アクリル化合物を適宜選択することができる。例えば、後述の物品の製造方法の第4実施形態および第5実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着層および第2接着層を積層する場合、第1部材側の第1接着層には接着性能が求められ、最表面に配置される第2接着層には保護機能が求められる。この場合、最表面に配置される第2接着層のほうが硬化後に硬くなるように、アクリル化合物を適宜選択することで、第2接着層にハードコート性を付与することができる。
第1接着剤成分がポリオール化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば硬化剤が挙げられる。具体的には、ポリイソシアネート化合物が挙げられ、中でも、ポリオール化合物との反応性に優れることから、MDI、粗製MDI、TDI等の芳香族ポリイソシアネートとすることができる。
第1接着剤成分がシリコーン化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば白金触媒が挙げられる。
第1接着剤成分がメラミン化合物またはフェノール化合物混合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば、硫酸水溶液含有ハイドロゲル、水酸化ナトリウム含有ハイドロゲル等の酸又はアルカリ成分が挙げられる。
第1接着剤成分がシリル化合物もしくは硬化性無機材料を含む場合の第2接着剤成分としては例えば、固体状液体分散コロイドが挙げられる。具体的には、ハイドロゲル、吸水性重合体、ゼラチン等が挙げられる。上記の第2接着剤成分は、これらに含まれる水分により硬化することができる。
上記第2接着剤成分の含有量は、第1接着層と第2接着層とが接触した際に、第1接着剤成分と十分に反応することが可能な量とすることができ、第1接着剤成分および第2接着剤成分の組合せや種類に応じて適宜設定が可能である。例えば、第1接着剤成分がエポキシ化合物を含み、上記第2接着剤成分が硬化剤としてイミダゾール化合物を含む場合、上記第2接着層中のイミダゾール化合物の含有量としては、エポキシ化合物のエポキシ当量にもよるが、例えば、エポキシ化合物100質量部に対し、中でも0.1質量部以上30質量部以下の範囲内、特に1質量部以上20質量部以下の範囲内とすることができる。上記第2接着層中のイミダゾール化合物の含有量が多すぎると、部材との密着が弱くなる場合があり、一方、上記含有量が少なすぎると、硬化不良の要因となる場合があるからである。なお、第1接着剤成分に含有される硬化性有機化合物がエポキシ化合物以外の材料である場合、第2接着剤成分の含有量は、汎用の2液硬化型接着剤を使用する際の2液硬化時の一般的な配分から大きく外れることがなければ特段の問題はない。
以上、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合について説明したが、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合には、その逆とすることができる。
(b)第1相溶性重合体成分
第1接着層は、第1接着剤成分に対して相溶性を有する第1相溶性重合体成分をさらに含むことができる。その理由は以下の通りである。
2液分別塗布型接着剤は、通常、2種類の液状材料をそれぞれ塗布後、すぐに互いを接触硬化させて用いられるが、各液状材料は製膜性に劣るため、所望の厚みでそれぞれシート化し分別保存しようとすると、長期間シート形状を保持することが困難であるという問題がある。これに対し、各液状材料の成分に対して相溶性を有する相溶性重合体成分を含有させることで、製膜性を向上させることができ、長期間シート形状を保持することが可能となる。また、上記2種類の液状材料を別々に塗布して形成した各接着層においては、上記液状材料の成分は可塑剤として機能するため、各液状材料の成分を含む接着層に更に相溶性重合体成分を加えることで、接着層全体が可塑化され、相溶性重合体成分による粘着性や柔軟性が発揮される。これにより、硬化前の粘着性や部材への密着性の向上を図ることが可能となり、また、硬化後の接着層の靭性が向上し且つ接着力をより高めることができる。
ここで、第1接着剤成分に対して相溶性を有するとは、上記第1接着剤成分、中でも、上記硬化性有機化合物との親和性がよく、上記第1接着剤成分と任意の割合で混合した場合に、相分離しないことをいう。第1接着層において、第1相溶性重合体成分が第1接着剤成分に対して相溶していることは、例えば、第1接着層の透明性が高いこと、第1接着層のヘイズ値が低いこと、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)により第1接着層の表面もしくは断面を観察したときに、層内にミクロンサイズの島が発生していないこと、等から確認することができる。後述する第2接着層においても同様である。
特に、第1接着層または第2接着層が、第1接着剤成分または第2接着剤成分として、エポキシ化合物、アクリル化合物、およびポリオール化合物のいずれかの硬化性有機化合物を含む場合に、第1相溶性重合体成分による効果がより高く発揮され得る。例えば硬化性有機化合物がアクリル化合物の場合、架橋密度が高くなる傾向にあるところ、第1相溶性重合体成分を含むことで、アクリル化合物の主鎖を長くすること、すなわち架橋密度を低くすることができ、第1接着層に柔軟性を付与することが可能となる。硬化性有機化合物がエポキシ化合物の場合の、第1相溶性重合体成分による効果の発現については、後で説明する。
また、第1相溶性重合体成分は、さらに第2接着層に含まれる第2接着剤成分に対して相溶性を有することができる。第2接着剤成分に対して相溶性を有するとは、上記第2接着剤成分との親和性がよく、第1接着層と第2接着層とが接触し、上記第2接着剤成分と任意の割合で混合した場合に相分離しないことをいう。
第1相溶性重合体成分は、第1接着剤成分との相溶性が良好な重合体を含むものであれば特に限定されない。上記重合体は、極性基を有していてもよい。極性基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基、アミド基等が挙げられる。
中でも、上記第1相溶性重合体成分は、アクリル重合体を含む成分、すなわち相溶性アクリル重合体含有成分とすることができる。
上記相溶性アクリル重合体含有成分は、上記アクリル重合体がアクリル酸エステル単量体の単独重合体であり、上記単独重合体を2種以上含む混合成分であってもよく、上記アクリル重合体が2種以上のアクリル酸エステル単量体で構成される共重合体であり、共重合体を1以上含む成分であってもよい。また、上記相溶性アクリル重合体含有成分が、上記単独重合体と上記共重合体との混合成分であってもよい。アクリル酸エステル単量体の「アクリル酸」には、メタクリル酸の概念も含まれる。具体的には、上記相溶性アクリル重合体含有成分は、メタクリレートの重合体とアクリレートの重合体との混合物であってもよく、アクリレート-アクリレート、メタクリレート-メタクリレート、メタクリレート-アクリレート等のアクリル酸エステル重合体であってもよい。中でも上記アクリル重合体含有成分は、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体((メタ)アクリル酸エステル共重合体)を含むことができる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体成分としては、例えば、特開2014-065889号公報に記載の単量体成分が挙げられる。上記単量体成分は、上述した極性基を有していてもよい。エポキシ化合物との相溶性が向上し、粘着力および硬化後の接着力を高めることができるからである。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチルアクリレート-ブチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。なお、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の「アクリル酸」には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の「メタクリル酸」を含む。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、ブロック共重合体を挙げることができ、さらにメタクリレート-アクリレート共重合体等のアクリル系ブロック共重合体を挙げることができる。アクリル系ブロック共重合体を構成するアクリレートやメタクリレートは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジル等が挙げられる。これらの「アクリル酸」には、メタクリル酸も含まれる。
メタクリレート-アクリレート共重合体の具体例としては、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート(MMA-BA-MMA)共重合体等のアクリル系共重合体が挙げられる。MMA-BA-MMA共重合体には、ポリメチルメタクリレート-ポリブチルアクリレート-ポリメチルメタクリレート(PMMA-BA-MMA)のブロック共重合体も含まれる。このようなアクリル系共重合体は、製膜性が向上し、被着面に対して十分な接着性を示すことができる。
アクリル重合体は、極性基を有していなくてもよく、また一部に上述した極性基を導入した変性物であってもよい。上記変性物は、エポキシ化合物との相溶性がさらに向上するため、接着強度がより向上する。
中でも、第1相溶性重合体成分は、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下である第1重合体部分と、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上である第2重合体部分とを有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体とすることができる。このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、柔らかいセグメントとなる第1重合体部分と、硬いセグメントとなる第2重合体部分とを有する。このような共重合体を添加することにより、第1接着層は、被着面に対する浮きや剥がれを有効に抑制することができ、また、硬化後の靭性が向上して接着力をより高めることができるからである。
上記の効果の発現は、以下のように推定できる。従来の接着剤では、靱性や柔軟性を付与するために、主剤となる硬化性有機化合物、例えばエポキシ化合物の他に、アクリル重合体を添加することが行われていたが、上記アクリル重合体の添加により接着剤自体の耐熱性が低下していた。これに対し、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体のような、柔らかいセグメントと、硬いセグメントとを併せ持つアクリル重合体を用いることで、硬いセグメントが耐熱性に寄与し、柔らかいセグメントが靱性ないし柔軟性に寄与するため、硬化後の第1接着層は、靱性を有しかつ優れた接着性を保持することができると考えられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分および第2重合体部分の少なくとも一方は、硬化性有機化合物に対して相溶性を有する。第1重合体部分が硬化性有機化合物に対して相溶性を有する場合には、柔軟性を高めることができる。また、第2重合体部分が硬化性有機化合物に対して相溶性を有する場合には、凝集性や靱性を高めることができる。
第1重合体部分または第2重合体部分の一方が硬化性有機化合物に対して相溶性を有さない場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、硬化性有機化合物に対して相溶性を有する重合体部分である相溶部位と、硬化性有機化合物に対して相溶性を有さない重合体部分である非相溶部位とを有することになる。この場合、硬化性有機化合物を含む接着剤組成物に、アクリル重合体として上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を添加すると、相溶部位が硬化性有機化合物と相溶し、非相溶部位が硬化性有機化合物と相溶しないため、相分離が起こる。その結果、硬化後の第1接着層では、海島構造が発現する。海島構造としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の種類、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分および第2重合体部分の相溶性、極性基導入による変性の有無によって異なり、例えば、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、硬化性有機化合物の硬化物が島であるような海島構造が挙げられる。硬化後の第1接着層は、このような海島構造を有することで、応力を分散させやすくすることができるので、界面破壊を避けることができ、優れた接着性を維持することができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、中でもブロック共重合体とすることができ、特に、相溶部位を重合体ブロックA、非相溶部位を重合体ブロックBとするA-B-Aブロック共重合体とすることができる。さらには、第1重合体部位が非相溶部位、第2重合体部分が相溶部位であり、第1重合体部分を重合体ブロックB、第2重合体部分を重合体ブロックAとするA-B-Aブロック共重合体とすることができる。アクリル重合体としてこのようなA-B-Aブロック共重合体を用いることにより、硬化後の第1接着層内では、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造の場合には、島部分を小さくすることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造の場合や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、硬化性有機化合物の硬化物が島であるような海島構造の場合には、海部分を小さくすることができる。そのため、硬化後の接着層内では、見かけ上、硬化性有機化合物およびアクリル重合体が相溶した状態となる。このような見かけ上の相溶状態が発現されることにより、硬化後の第1接着層は、さらに応力を分散させやすくすることができるので、界面破壊を避けることができ、優れた接着性を維持することができる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、第1重合体部分または第2重合体部分の一部に上述の極性基を導入した変性物であってもよい。硬化後の第1接着層の耐熱性がより向上するとともに、硬化性有機化合物との相溶性も向上するため、接着性が向上する。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分のTgは、10℃以下であり、-150℃以上10℃以下の範囲内、中でも-130℃以上0℃以下の範囲内、特に-110℃以上-10℃以下の範囲内とすることができる。
なお、第1重合体部分のTgは、「POLYMERHANDBOOK第3版」(John Wiley & Sons,Ink.発行)に記載された各単独重合体のTg(K)を基にして、下記式で計算により求めることができる。
1/Tg(K)=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・+Wn/Tgn
Wn;各単量体の質量分率
Tgn;各単量体の単独重合体のTg(K)であり、ポリマーハンドブック(3rd Ed.,J.Brandrup and E.H.Immergut,WILEY INTERSCIENCE)中の値など、一般に公開されている掲載値を用いればよい。後述の第2重合体部分のTgも同様である。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体とすることができる。第1重合体部分を構成する単量体成分および重合体成分は、Tgが所定の範囲である第1重合体部分を得ることができる単量体成分および重合体成分であればよく、例えばアクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、酢酸ビニル、アセタール、ウレタン等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体、EVA等の共重合体が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第2重合体部分のTgは、20℃以上であり、20℃以上150℃以下の範囲内、中でも30℃以上150℃以下の範囲内、特に40℃以上150℃以下の範囲内とすることができる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第2重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体とすることができる。第2重合体部分を構成する単量体成分は、Tgが所定の範囲である第2重合体部分を得ることができる単量体成分であればよく、例えばメタクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、アクリルアミド、スチレン、塩化ビニル、アミド、アクリロニトリル、酢酸セルロース、フェノール、ウレタン、塩化ビニリデン、塩化メチレン、メタクリロニトリル等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体が挙げられる。
アクリル酸エステル単量体の「アクリル酸」には、メタクリル酸も含まれる。
上記の第1重合体部分および第2重合体部分を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の具体例としては、上記のMMA-BA-MMA共重合体等が挙げられる。
上記第1相溶性重合体成分の質量平均分子量は、第1接着層に要求される粘着性や凝集力に応じて適宜設定することができるが、上記第1接着剤成分の質量平均分子量よりも大きくすることができる。第1相溶性重合体成分に製膜性を任せ、第1接着剤成分は可塑成分として働く必要があるからである。また、第1相溶性重合体成分は第2接着層に含まれる第2接着剤成分と相溶することができるからである。具体的には、上記第1相溶性重合体成分の質量平均分子量は、1万以上90万以下の範囲内とすることができ、中でも3万以上50万以下の範囲内とすることができる。第1相溶性重合体成分の質量平均分子量が小さすぎると、3次元架橋が支配的となり、靱性が低下する場合があり、一方、大きすぎると、相溶性が悪くなるため強度が低下する。上記第1相溶性重合体成分の質量平均分子量は、GPC(溶離液:THF、標準物質:PS、試料:20μL、流量:1mL/min、カラム温度:40℃)により測定することができる。
第1接着層中の第1相溶性重合体成分の含有量は、第1相溶性重合体成分の種類、第1接着層に要求される粘着性、凝集性、粘性等に応じて適宜調整することが可能である。例えば、第1接着剤成分として、アクリル化合物、エポキシ化合物等の硬化性有機化合物を含み、第1相溶性重合体成分として上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む場合、硬化性有機化合物100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量は4質量部以上100質量部以下の範囲内とすることができる。この割合で両者を配合すると、第1接着層は、接触硬化前の段階で、硬化性有機化合物中に、ナノオーダーレベルの微粒子状にアクリル重合体が分散した構造が発現し、見かけ上の相溶状態が発現される。そして、上記第1接着層は、第2接着層との接触により、見かけ上の相溶状態を維持しながら硬化することで、優れた接着強度を発揮することができる。また、硬化後の第1接着層が上記の構造を有することで、被着体との界面からの水の侵入を抑制でき、さらに優れた接着保持特性を有することができる。
また例えば、第1接着層が、第1接着剤成分として、硬化性有機化合物や硬化性無機材料を含まない場合、第1接着層中の第1相溶性重合体成分の含有量は、第1接着層中の第1接着剤成分100質量部に対して10質量部以上200質量部以下の範囲内、中でも20質量部以上100質量部以下の範囲内とすることができる。第1相溶性重合体成分の分子量等に応じて好適な含有量は異なるが、おおよそ上記の範囲内とすることができる。第1相溶性重合体成分の含有量が少なすぎると、第1接着層の製膜性や接着性が不良となる場合があり、一方、上記含有量が多すぎると、第1接着層の強度低下の要因となる場合がある。
(c)第2相溶性重合体成分
第2接着層は、第2接着剤成分に対して相溶性を有する第2相溶性重合体成分をさらに含むことができる。また、上記第2相溶性重合体成分は、さらに第1接着層に含まれる第1接着剤成分に対して相溶性を有することができる。その理由および第2相溶性重合体成分の具体例、および第2相溶性重合体成分の含有量については、上述の第1相溶性重合体成分と同様であるため、ここでの説明は省略する。第1接着層または第2接着層が、第1接着剤成分または第2接着剤成分として、エポキシ化合物、アクリル化合物、およびポリオール化合物のいずれかの硬化性有機化合物を含む場合、上記第2相溶性重合体成分による効果がより高く発揮され得る。
第2相溶性重合体成分の質量平均分子量は、上記第2接着剤成分の質量平均分子量、中でも硬化性有機化合物の質量平均分子量よりも大きくすることができる。その理由、具体的な質量平均分子量の範囲、およびその測定方法については、上述した第1相溶性重合体成分と同様であるため、ここでの説明は省略する。
第2接着層に含まれる第2相溶性重合体成分と、第1接着層に含まれる第1相溶性重合体成分とは、同一の成分であってもよく、異なる成分であってもよい。第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が同一の成分である場合には、同一の成分が最も相拡散がしやすいため、反応速度の点で有利だからである。また、コスト面でも有利である。第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が同一の成分である場合、中でも、アクリル重合体を含む同一の成分とすることができる。このとき、上記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体とすることができ、中でもアクリル系共重合体またはその変性物、特にMMA-BA-MMA共重合体またはその変性物とすることができる。また、上記アクリル重合体は、中でも所定の第1重合体部分および第2重合体部分を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体またはその変性物とすることができる。その理由については、上述の第1相溶性重合体成分の項で説明した理由と同様である。
また、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が異なる成分である場合には、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分を適宜選択することで、部材に応じて第1接着剤組成物および第1接着層の物性を調整することができ、部材に対する適性を高めることができる。
また、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が異なる成分である場合、第1接着剤組成物および第1接着層にそれぞれ要求される機能に応じて、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分を適宜選択することができる。例えば、後述の物品の製造方法の第4実施形態および第5実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着層および第2接着層を積層する場合、第1部材側の第1接着層には接着性能が求められ、最表面に配置される第2接着層には保護機能が求められる。この場合、最表面に配置される第2接着層のほうが硬化後に硬くなるように、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分を適宜選択することで、第1接着層にハードコート性を付与することができる。
(d)その他の成分
第1接着層および第2接着層は他に、シリカやガラスビーズ等の無機粒子や、連鎖移動剤、難燃剤、増粘剤、放熱剤、絶縁剤、導電剤、強度向上のための繊維(特にチョップド繊維等)、シリコーン化合物等の粘着付与剤、酸化防止剤、反応抑制剤等の任意の成分を含んでいてもよい。
第1接着層および第2接着層は、着色剤を含んでいてもよい。第1接着層および第2接着層の一方が着色剤を含む場合、着色剤を入れて一方の接着層を着色することで、他方の接着層を有する接着シートとの判別を容易にすることができ、施工時の作業ミスを防ぐことができる。また、第1接着層および第2接着層の両方が着色剤を含む場合、接着シートの識別を容易とする観点から、各接着層に含まれる着色剤の色は異なっていてもよい。すなわち、第1接着層および上記第2接着層は、それぞれ異なる色を有することができる。さらに、例えば、後述の物品の製造方法の第4実施形態および第5実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着層および第2接着層を積層する場合、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方が着色剤を含むことにより、視認性を高めることができ、接着剤シートを貼付した箇所の確認が容易になるとともに、接着シートを貼付する部材を保護することができる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック等の顔料、染料等が挙げられる。中でも、着色剤は顔料とすることができる。着色剤として顔料を含むことで、顔料に紫外線を吸収させて部材の紫外線劣化を防ぐことができるからである。
また、後述の物品の製造方法の第4実施形態および第5実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着層および第2接着層を積層する場合、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方は、例えば、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、赤外線反射剤等の耐候剤を含むことができる。これにより、部材を保護したり、硬化後の第1接着層および第2接着層の経時劣化を抑制したりすることができる。
(4)性状
接着層は、透明であってもよく不透明であってもよいが、透明とすることができる。接着層に含まれる成分が十分に相溶し、粘着性等の所望の機能を発揮可能となるからである。
接着層の厚みは、部材の種類等に応じて適宜設定することができ、第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応に必要な量の接着剤成分を含有することが可能であればよい。
第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分のうち、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層の厚みは、第2接着層の厚みよりも大きくすることができる。第1接着層は、厚みが大きいほど強粘着性を示すことができ、第2接着層よりも粘着力を強くすることができるからである。また、例えば第2接着剤成分は少量でも触媒的な作用が可能であるが、第2接着剤成分自体が硬化するわけではないため、第1接着剤成分が少量つまり厚みが小さい場合、第2接着層に対し第1接着剤成分が十分な量で行き渡らず硬化不良の原因となるからである。第1接着層の厚みとしては、機能を発揮することが可能であれば特に限定されないが、例えば2μm以上、中でも5μm以上、特に20μm以上とすることができる。また、上記厚みは、200μm以下、中でも150μm以下、特に100μm以下とすることができる。
また、上記の場合、第2接着層は、厚みを大きくすれば粘着力を強くすることができるが、第1接着層との接触硬化の反応性を高める観点から、上記厚みは小さくすることができる。第1接着層と接触したときに、第2接着剤成分が第1接着層へ移行しやすくなるため、硬化反応が進行しやすくなり反応性が向上するからである。第2接着層は、上述したように、例えば第2接着剤成分の含有量が少量であっても第1接着剤成分に対する機能が発揮可能であるため、第1接着層よりも薄厚とすることができ、また、粘着力を弱くすることができる。第2接着層の厚みは、機能が発揮可能であれば特に限定されないが、例えば2μm以上、中でも5μm以上、特に10μm以上とすることができる。また、上記厚みは、200μm以下、中でも150μm以下、特に100μm以下とすることができる。
なお、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着層および第2接着層の厚みは、その逆となる。
また、部材の被着面が粗面である場合は、接着層の厚みは大きくすることができ、具体的には、上記被着面の凹凸の高低差以上の厚みとすることができる。接着層が上記被着面の凹凸の高低差以上の厚みを有さない場合は、接着層が凹凸に追従できず、接着層と被着面との接着面積が少なくなるため、所望の期間、部材を保持することができなくなるからである。
接着層は、セパレータの少なくとも一方の面側に設けられている場合、例えばセパレータの少なくとも一方の面側に全面に設けられていてもよく、パターン状に設けられていてもよい。
第1接着層は、第1セパレータの少なくとも一方の面側に全面に設けられている場合、図2(a)、(b)に例示するように、第1接着層22を厚み方向に切断する切込部25を有し、この切込部25により画定される第1接着部22aを有していてもよい。この場合には、図3(a)に例示するように、予め第1接着部22aに第1部材1を貼り合せて、第1接着シート付部材20を準備することができる。第1接着層は第2接着層と接触するまでは硬化反応が進まないことから、予め第1接着シート付部材を作製し、第1接着層および第2接着層を接触させる前まで長期間保管することができ、部材を貼り合せるタイミングに応じて、第1接着シート付部材を使用することができる。また、第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、複数の第1接着部を有していてもよい。第1接着層が複数の第1接着部を有する場合には、予め各第1接着部に複数の第1部材をそれぞれ貼り合せて、第1接着シート付部材を準備することができる。この場合において、例えば第1部材の大きさが比較的小さい場合は、効率的に第1接着シートに対して複数の第1部材を貼り合せることができるとともに、第1接着シート付部材の管理が容易となる。なお、図2(b)は図2(a)のA-A線断面図である。また、図3については後述する。
上記の場合、第1接着層は切込部によって厚み方向に切断されており、第1接着部はそれぞれ切込部によって画定される。切込部により画定される第1接着部の大きさおよび形状としては、部材の被着面の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。
また、上記の場合、第1接着層の少なくとも一方の面側には第1セパレータが配置される。第1接着層の片面に第1セパレータが配置されている場合には、第1接着層は切込部によって厚み方向に切断されているが、第1セパレータは切断されないようにすることができる。また、第1接着層の両面に第1セパレータが配置されている場合、一方の第1セパレータは切断されないようにすることができ、他方の第1セパレータは第1接着層と同じ位置で厚み方向に切断されていてもよく、切断されていなくてもよい。
同様に、第2接着層は、第2接着層を厚み方向に切断する切込部を有し、この切込部により画定される第2接着部を有していてもよい。なお、第2接着層が、切込部を有し、この切込部により画定される第2接着部を有する場合については、上記第1接着層が、切込部を有し、この切込部により画定される第1接着部を有する場合と同様とすることができる。
また、第1接着層は、図4(a)、(b)に例示するように、第1接着層22が第1セパレータ21の少なくとも一方の面側にパターン状に設けられている場合、パターン状の第1接着部22aを有することができる。この場合にも、図5(a)に例示するように、予め第1接着部22aに第1部材1を貼り合せて、第1接着シート付部材20を準備することができる。そのため、上記の場合と同様の利点を有する。また、第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、複数の第1接着部を有していてもよい。第1接着層が複数の第1接着部を有する場合には、上記の場合と同様の利点を有する。なお、図4(b)は図4(a)のA-A線断面図である。また、図5については後述する。
ここで、パターン状とは、セパレータの少なくとも一方の面側において、接着層が設けられている部分と、接着層が設けられていない部分とを有する状態をいう。
上記の場合、第1接着部の大きさおよび形状としては、部材の被着面の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。
同様に、第2接着層は、第2接着層がセパレータの少なくとも一方の面側にパターン状に設けられている場合、パターン状の第2接着部を有することができる。なお、第2接着層が、パターン状の第2接着部を有する場合については、上記第1接着層が、パターン状の第1接着部を有する場合と同様とすることができる。
2.セパレータ
接着シートは、接着層を有していればよいが、接着層の少なくとも一方の面側に配置されたセパレータを有していてもよい。セパレータは、接着層の少なくとも一方の面側に剥離可能に設けられる。セパレータが配置されていることで、部材や他の接着層と貼り合せるまでの間、接着層を保護することができる。
接着シートは、接着層の片面にセパレータを有していてもよく、両面にセパレータを有していてもよい。例えば、部材や他方の接着シートに貼り付ける前の接着シートは、接着層の片面にセパレータを有していてもよく、両面にセパレータを有していてもよい。また、部材または他方の接着シートに貼り付けた後の接着シートは、接着層の部材または他方の接着シートとは反対側の面にセパレータを有することができる。
なお、第1接着シートが有するセパレータを第1セパレータと称し、第2接着シートが有するセパレータを第2セパレータと称する。
セパレータは、接着層から剥離可能であれば特に限定されず、接着層を保護することが可能な程度の強度を有することができる。このようなセパレータとしては、例えば、離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、セパ紙、剥離フィルム、剥離紙等の従来公知のものを用いることができる。具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン、フッ素フィルムなどが挙げられる。また、セパレータは、上記に例示した単層で離型性を有していてもよいが、上質紙、コート紙、含浸紙、プラスチックフィルムなどの離型紙用基材の片面または両面に離型層を形成した積層体を用いてもよい。離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリコーン化合物、有機化合物変性シリコーン化合物、フッ素化合物、アミノアルキド化合物、メラミン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物、長鎖アルキル化合物などがある。これらの化合物は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用できる。
部材の被着面が粗面である場合は、セパレータは柔軟性を有することができる。接着シートを部材に貼り合せる際に、接着層の伸びにセパレータも追従することが可能となるからである。このようなセパレータとしては、例えばPEフィルム等が挙げられる。
セパレータは、接着層に含有される材料の種類や部材を貼り合せる施工環境に応じて、遮光性を有していてもよい。貼合工程までの間に接着層が紫外線等の照射を受けて劣化するのを抑制することができるからである。遮光性を有するセパレータとしては、例えば、アルミ箔セパレータ、アルミ蒸着フィルムや紙セパレータ、着色セパレータ、紫外線吸収剤入りのフィルムセパレータ等が挙げられる。
また、セパレータは、接着層と接する面に易剥離処理が施されていてもよい。
第1接着シートの第1セパレータおよび第2接着シートの第2セパレータは、それぞれ同一色であってもよく、異なる色を有していてもよい。中でも、第1セパレータおよび第2セパレータは、それぞれ異なる色を有することができる。第1接着シートおよび第2接着シートの判別が容易になるからである。
部材に貼り付ける前の接着シートは、接着層の両面にセパレータを有していてもよい。このような接着シートは、部材に接着シートを貼り合せる、接着シート付部材に接着シートを貼り合せる、または接着シート同士を貼り合せる場合に用いることができる。接着層の両面にセパレータを有する場合、各面に配置されるセパレータは同一であってもよく異なってもよいが、一方が軽剥離性を有し、他方が重剥離性を有することができる。
3.第1接着シートおよび第2接着シート
接着シートは、枚葉であってもよく、長尺であってもよい。
第1接着シートおよび第2接着シートは、例えば2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料、すなわち、第1接着剤成分を含む接着剤組成物および第2接着剤成分を含む接着剤組成物を、それぞれ別々のセパレータの片面に塗布し、乾燥することで形成することができる。接着剤組成物は必要に応じて溶剤を含むことができる。
接着剤組成物の塗布方法は特に限定されず、公知の印刷法やコーティング法を用いることができる。接着層をセパレータの片面にパターン状に形成する場合には、セパレータの片面に接着剤組成物をパターン状に塗布すればよい。このような塗布方法としても特に限定されず、公知の印刷法やコーティング法を用いることができる。また、塗布層の乾燥条件は、塗布層中に含まれている溶剤を十分揮発させることができる程度の条件で行うことができ、組成に応じて適宜設定することができる。
また、接着層に切込部を形成する場合、切込部の形成方法としては、例えばハーフカット加工、ピンホール処理、レーザー加工等を用いることができる。接着層の両面にセパレータが配置される場合には、一方のセパレータの片面に接着層を形成した後、接着層上に他方のセパレータを配置する前に、接着層に切込部を形成してもよく、一方のセパレータの片面に接着層を形成し、接着層上に他方のセパレータを配置した後に、接着層および他方のセパレータに切込部を形成してもよい。さらに、接着層に切込部を形成した後、切込部により画定される接着部以外の部分を除去することにより、セパレータの片面に接着層をパターン状に設けることもできる。
接着シートは、接着剤組成物をセパレータの片面に塗布し乾燥して接着層を形成後、接着層上に他のセパレータを配置することで、接着層の両面にセパレータを有することも可能である。
B.物品の製造方法の第1実施形態
本開示の物品の製造方法の第1実施形態(以下、第1実施形態の製造方法と略する場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1部材に、上記第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する第1準備工程と、上記第2部材に、上記第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面が貼り合されている、第2接着シート付部材を準備する第2準備工程と、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面と、上記第2接着シート付部材の上記第2接着層の他方の面とを貼り合せる貼合工程と、を有する。
図6は、第1実施形態の製造方法の一例を示す工程図である。図6に例示するように、まず、第1接着シート付部材20を準備する(図6(a)、第1準備工程)。第1接着シート付部材20は、第1部材1に、第1接着層22を有する第1接着シート11の第1接着層22の一方の面が貼り合されてなる。図6(a)に示すように、第1接着シート11の第1接着層22は、第1セパレータ21の片面側に設けられていてもよい。また、別途、第2接着シート付部材30を準備する(図6(b)、第2準備工程)。第2接着シート付部材30は、第2部材2に、第2接着層24を有する第2接着シート12の第2接着層24の一方の面が貼り合されてなる。図6(b)に示すように、第2接着シート12の第2接着層24は、第2セパレータ23の片面側に設けられていてもよい。第1準備工程および第2準備工程は、順不同で行うことができる。続いて、第1接着シート付部材20の第1接着層22の他方の面と、第2接着シート付部材30の第2接着層24の他方の面とを貼り合せる(図6(c)~(d)、貼合工程)。第1接着シート付部材20や第2接着シート付部材30が、第1接着層22や第2接着層24の他方の面側に第1セパレータ21や第2セパレータ23を有する場合は、それぞれのセパレータを剥離して貼合する。このとき、第1接着層22および第2接着層24は、互いに接触することにより、第1接着層22中の成分と第2接着層24中の成分とが拡散して硬化反応が生じ、接着性が向上する。そして硬化反応の完了により、第1接着層22および第2接着層24は、強い接着力を発現した硬化接着層3となり(図6(d))、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、硬化接着層3、および第2部材2を有する物品10が得られる。
第1実施形態の製造方法によれば、第1接着シート付部材が有する第1接着層と第2接着シート付部材が有する第2接着層とを貼り合せることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合せることができる。また、各接着シート付部材は、部材に接着シートが貼り合わされているため、2液型接着剤のような2液の混合が不要であり、部材同士の貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらにまた、第1接着層および第2接着層は、互いが接触するまでは硬化反応が進まないことから、貼合工程前までは、それぞれ接着シート付部材として長期間、分別保管することができ、貼り合せるタイミングに応じて、各接着シート付部材の接着層同士を接触させることができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
第1実施形態の製造方法は、第1部材および第2部材の種類や、部材同士を貼り合せた際の被着面(接着面)の方向、第1接着層および第2接着層の粘着力の程度に応じた施工が可能である。以下、第1実施形態の製造方法を用いた施工例について、例を挙げて説明する。
第1実施形態の製造方法を用いた施工例の第1例は、第1部材および第2部材の被着面(接着面)が鉛直面または法線面となる施工例である。図7に示す例では、第2部材2の被着面が鉛直面となっている。なお、図7中の符号については、図6中の符号と同様である。
上記の例において、被着面は、鉛直面または法線面に対して、-45度以上+45度以下の範囲内、中でも-30度以上+30度以下の範囲内、特に-15度以上+15度以下の範囲内とすることができる。上記被着面の場合、貼合工程において第1部材の表面の第1接着層と第2部材の表面の第2接着層とを貼り合せると、鉛直方向または法線方向にせん断応力が掛かる。しかし、第1接着層および第2接着層がそれぞれ所望の粘着力および凝集力を有することで、第1接着層と第2接着層との接触による硬化反応が進み十分な接着力が発現されるまでの間、第1部材と第2部材との貼り合せ状態を保持することができ、せん断応力が掛ることによる部材の剥離を抑制することができる。また、経時により粘着力が低下しても、その間に硬化反応が進むことで発現した強い接着力により、第1部材と第2部材とを強固に接着保持することが可能となる。また、第1接着層および第2接着層の粘着力を調整することで、第1接着層および第2接着層の硬化前であれば、貼合後に貼り直すことも可能となる。さらに、第1接着層および第2接着層のうち、少なくとも一方を弱粘着性または中粘着性とする、あるいは少なくとも一方を高粘性または低粘性とすることで、貼り合せた状態で被着面に対して平行移動させることができ、位置調整が可能となる。第1接着層および第2接着層の具体的な物性および組合せについては、上述した通りである。
第1実施形態の製造方法を用いた施工例の第2例は、第1部材および第2部材の被着面(接着面)が水平面となる施工例である。図8に示す例では、第2部材2の被着面が水平面となっている。なお、図8中の符号については、図6中の符号と同様である。
上記の例において、被着面は、水平面に対して、-45度以上+45度以下の範囲内、中でも-30度以上+30度以下の範囲内、特に-15度以上+15度以下の範囲内とすることができる。上記被着面の場合、第1接着層および第2接着層がそれぞれ所望の粘着力および凝集力を有することで、第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応が進むまでの間、第1部材と第2部材との貼り合せ状態を保持することができる。また、硬化後は第1部材と第2部材とが強固に接着されることから、水平方向にせん断応力を受けても第1部材と第2部材との位置ズレを生じにくくすることができる。また、第1接着層および第2接着層間の粘着力を調整することで、第1接着層および第2接着層の硬化前であれば、貼合後に貼り直すことも可能となる。さらに、第1接着層および第2接着層のうち、少なくとも一方を弱粘着性または中粘着性とする、あるいは少なくとも一方を高粘性または低粘性とすることで、貼り合せた状態で被着面に対して平行移動させることができ、位置調整が可能となる。第1接着層および第2接着層の具体的な物性および組合せについては、上述した通りである。
以下、第1実施形態の製造方法における各工程について説明する。
1.第1準備工程および第2準備工程
第1実施形態の製造方法における第1準備工程は、上記第1部材に、上記第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する工程である。また、第2準備工程は、上記第2部材に、上記第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面が貼り合されている、第2接着シート付部材を準備する工程である。第1準備工程および第2準備工程は、順不同で行うことができる。
接着シート付部材は、接着シートの接着層の一方の面に、1つの部材が貼り合わされているものであってもよく、接着シートの接着層の一方の面に、複数の部材が貼り合されている、多面付け接着シート付部材であってもよい。
第1準備工程および第2準備工程では、部材に接着シートが予め貼合されている接着シート付部材を準備してもよい。既製の接着シート付部材を用いることで、物品の製造に際し、接着シート付部材を作製する必要がなく、時間の短縮を図ることができるからである。
また、第1準備工程および第2準備工程の少なくとも一方が、セパレータと上記セパレータの少なくとも一方の面側に設けられた上記接着層とを有する接着シートを用い、上記接着層の上記セパレータが配置されていない面を部材に貼合する接着シート貼合工程を有していてもよい。
第1準備工程が第1接着シート貼合工程を有する場合、第1接着シートの第1接着層は、第1接着層を厚み方向に切断する切込部を有し、切込部により画定される第1接着部を有していてもよい。この場合、第1接着シート貼合工程では、第1接着部の一方の面に、第部材を貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、図2(a)、(b)に例示するように複数の第1接着部22aを有していてもよい。第1接着層が複数の第1接着部を有する場合、第1接着シート貼合工程では、図3(a)に例示するように、複数の第1接着部22aの一方の面に、複数の第1部材1をそれぞれ貼り合せることができる。この場合において、例えば第1部材の大きさが比較的小さい場合は、効率的に第1接着シートに対して複数の第1部材を貼り合せることができるとともに、第1接着シート付部材の管理が容易となる。
同様に、第2準備工程が第2接着シート貼合工程を有する場合、第2接着シートの第2接着層は、第2接着層を厚み方向に切断する切込部を有し、切込部により画定される第2接着部を有していてもよい。なお、第2接着シートの第2接着層が、切込部を有し、切込部により画定される第2接着部を有する場合については、上述の第1接着シートの第1接着層が、切込部を有し、切込部により画定される第1接着部を有する場合と同様とすることができる。
また、第1準備工程が第1接着シート貼合工程を有する場合、第1接着シート貼合工程では、第1接着層の一方の面に、複数の第1部材を貼り合せて、多面付け第1接着シート付部材を作製してもよい。
同様に、第2準備工程が第2接着シート貼合工程を有する場合、第2接着シート貼合工程では、第2接着層の一方の面に、複数の第2部材を貼り合せて、多面付け第2接着シート付部材を作製してもよい。
さらに、第1準備工程が第1接着シート貼合工程を有する場合、第1接着シートの第1接着層は、パターン状の第1接着部を有していてもよい。この場合、第1接着シート貼合工程では、第1接着部の一方の面に、第1部材を貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、図4(a)、(b)に例示するように複数の第1接着部22aを有していてもよい。第1接着層が複数の第1接着部を有する場合、第1接着シート貼合工程では、図5(a)に例示するように、複数の第1接着部22aの一方の面に、複数の第1部材1をそれぞれ貼り合せることができる。この場合において、例えば第1部材の大きさが比較的小さい場合は、効率的に第1接着シートに対して複数の第1部材を貼り合せることができるとともに、第1接着シート付部材の管理が容易となる。
同様に、第2準備工程が第2接着シート貼合工程を有する場合、第2接着シートの第2接着層は、パターン状の第2接着部を有していてもよい。なお、第2接着シートの第2接着層がパターン状の第2接着部を有する場合については、上述の第1接着シートの第1接着層がパターン状の第1接着部を有する場合と同様とすることができる。
部材と接着シートとの貼合方法は、接着シートの形態に応じて適宜選択することができる。接着層の片面側にセパレータが配置された接着シートを用いる場合であれば、例えば、ロール状に巻回された接着シートロールから必要量を巻き出して、接着層側を部材に配置した後切断して貼り合せることができる。また、接着層の両面側にセパレータが配置された接着シートを用いる場合であれば、枚葉の接着シートの一方のセパレータを剥離して接着層を露出させ、その接着層に部材を貼り合せることができる。
接着シート貼合工程において、接着シートは部材の被着面全域に貼り合せてもよく、部材の被着面の周縁に枠形状に貼り合せてもよい。接着シートを貼り合せる際は、スキージ等を用いて部材と接着シートの接着層との接着面に気泡が入らないようにすることができる。
接着シート貼合工程においては、アイロンなどを用いて加熱圧着して貼り合せてもよく、軽く振動を与えながらローラーを用いて加圧して貼り合せてもよい。接着層が部材の隙間に入り込みやすくなり、接着シートと部材との貼合強度を高めることができる。
また、接着シート貼合工程においては、接着層の粘着力が0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内である場合、部材に対して、接着シートを移動させて貼り合せることができる。部材に対して、接着シートを移動させて所望の位置に貼合するときに、接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、接着シートが別の被着体や別の場所等に付着しても容易に剥離可能となり、貼り直しが可能となるため、リワーク性を向上させることができる。また、接着シートが作業者の手に付着しにくく取り扱いが容易となり、作業性を向上させることができる。このとき、部材は、固定部材とすることができる。
さらに、接着層が弱粘着性または中粘着性である場合、接着シート貼合工程(例えば、第1接着シート貼合工程)は、他方の接着シート付部材(例えば、第2接着シート付部材)の貼り合せ位置を決める位置決め工程を有することができる。接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、貼合工程を行う際に他方の接着シート付部材の貼り合せ位置が所望の位置となるように、準備工程において部材上で接着シートを貼り直すことが可能となるからである。例えば、第1接着シートの第1接着層が所定の粘着力を示せば、第1準備工程は、第1接着シート貼合工程と、第2接着シート付部材の貼り合せ位置を決める位置決め工程と、の両方を含むことができる。第2準備工程においても同様である。このとき、部材は、固定部材とすることができる。
また、接着シート貼合工程においては、接着層の一方の面に対してせん断力を与えながら、部材に、接着シートの接着層の一方の面を貼り合せてもよい。例えば、部材上に液状接着剤を塗布する場合、液状接着剤の塗布面にせん断力を与えると、液状接着剤の塗布厚みが不均一となり、良好な接着性能を得ることが困難である。また、液状接着剤は、部材の配置や形態等によっては塗工が困難であり、また、被着面からの液状接着剤のはみ出しや液垂れが生じてしまう。一方、接着シートでは、予め液状材料がシート化されているため、接着層の面にせん断力を与えても接着層の厚みが不均一になりにくく、良好な接着性能を得ることができる。また、接着シートは、厚み管理が可能であり、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。中でも、例えば部材の被着面に対して斜め上方向から接着シートを貼り合せる場合には、接着層の面はせん断力を受けるため、有利である。また、例えば図9(a)に示すように第1部材1が内部空間1aと開口部1bとを有しており、第1部材1の内部に第1接着シート11の第1接着層22を貼り合せる場合には、第1部材の被着面に対して直上方向から接着シートを貼り合せることが困難であるため、有利である。なお、第2部材が内部空間と開口部とを有する場合も同様である。
上記の場合、接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、接着層は弱粘性または中粘着性とすることができる。接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性が向上するため、接着層の面にせん断力を与えた場合に、接着層の厚みがさらに不均一になりにくくすることができる。
第1部材および第2部材は、一方が固定されており、固定された部材の被着面を傾斜面とすることができる。傾斜面の傾斜角度は、30度以上180度以下の範囲内とすることができ、中でも45度以上180度以下の範囲内、特に90度以上180度以下の範囲内とすることができる。例えば、固定された部材の被着面が傾斜面である場合、液状接着剤は塗工が困難であり、また、塗布ムラや塗布漏れ、被着面からの液状接着剤のはみ出しや液垂れが生じてしまう。一方、接着シートでは、予め液状材料がシート化されているため、厚み管理が可能であり、厚みムラ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。
2.貼合工程
第1実施形態の製造方法における貼合工程は、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面と、上記第2接着シート付部材の上記第2接着層の他方の面とを貼り合せる工程である。本工程において、上記第1接着層および上記第2接着層は、互いに接触することにより硬化が進み、接触硬化により形成される硬化接着層が強い接着力を発現することができ、部材同士を接着することができる。
第1接着シート付部材および第2接着シート付部材において、第1接着層の第1部材側とは反対側に第1セパレータが配置されている、および/または、第2接着層の第2部材側とは反対側に第2セパレータが配置されている場合は、第1接着シート付部材の第1セパレータおよび/または第2接着シート付部材の第2セパレータを剥離し、露出した第1接着層の表面および第2接着層の表面を貼り合せる。
第1接着シート付部材の第1接着層と第2接着シート付部材の第2接着層との貼り合せ方法としては、特に限定されず、例えば、第1接着シート付部材の第1接着層と、第2接着シート付部材の第2接着層とを向かい合わせて、直上方向から貼り合せる方法を用いることができる。
また、他の貼り合せ方法としては、一方の接着シート付部材に対して、他方の接着シート付部材を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。例えば、液状接着剤を用いる場合、液状接着剤が塗布された部材を移動させて貼り合せることは非常に困難である。また、液状接着剤が塗布された部材を移動させると、被着面からの液状接着剤のはみ出しや液垂れが生じてしまう。一方、接着シートでは、予め液状材料がシート化されているため、接着シート付部材を移動させて貼り合せることができる。また、接着シートは、厚み管理が可能であり、厚みムラ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。
上記の方法の場合、移動する接着シート付部材の接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、移動する接着シート付部材の接着層は弱粘性または中粘着性とすることができる。接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、容易に剥離可能であり、貼り直しが可能となるからである。
さらに、他の貼り合せ方法としては、一方の部材が固定されており、固定された一方の接着シート付部材に対して、他方の接着シート付部材を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。なお、この方法の利点については、上述した通りである。
また、他の貼り合せ方法としては、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方が低粘性または高粘性を示す場合、第1接着シート付部材の第1接着層と、第2接着シート付部材の第2接着層とを向かい合わせて、一方を他方の被着面に対して平行方向にスライド移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。上記の貼り合せ方法は、例えば、第1部材および第2部材の接着面が水平面に対して所定の範囲内である場合に適している。
さらに、他の貼り合せ方法としては、第1接着層の他方の面および第2接着層の他方の面に対してせん断力を与えながら、第1接着シート付部材の第1接着層の他方の面と、第2接着シート付部材の第2接着層の他方の面とを貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述した通りである。中でも、例えば一方の接着シート付部材の被着面に対して斜め上方向から他方の接着シート付部材を貼り合せる場合には、接着層の面はせん断力を受けるため、有利である。また、例えば図9(a)~(d)に示すように、第1部材1が内部空間1aと開口部1bとを有しており、第1接着シート付部材20の内部に第2接着シート付部材30を嵌め込む場合には、液状接着剤の塗布厚みが不均一になりやすいのに対して、接着シートの接着層の厚みは不均一になりにくいため、有利である。なお、第1部材および第2部材の形態が逆の場合も同様である。
上記の場合、少なくとも一方の接着シート付部材の接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、少なくとも一方の接着シート付部材の接着層は弱粘性または中粘着性とすることができる。接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性が向上するため、接着層の面にせん断力を与えた場合に、接着層の厚みがさらに不均一になりにくくすることができる。
接着シート付部材が多面付け接着シート付部材である場合には、多面付け接着シート付部材から、1つの部材を有する部分を切り出して、他方の接着シート付部材に貼り合せることができる。
また、第1準備工程が、図2(a)、(b)に例示するような第1接着層22の片面にセパレータ23が配置され、第1接着層22が、第1接着層22を厚み方向に切断する切込部25を有し、切込部25により画定される第1接着部22aを有する第1接着シート11を用い、図3(a)に例示するように第1接着部22aの第1セパレータ21が配置されていない面に、第1部材1を貼り合せる第1接着シート貼合工程を有する場合、貼合工程では、図3(b)に例示するように、第1接着シート付部材20の第1セパレータ21から、第1接着部22aおよび第1部材1が順に積層された第1接着部付部材20aを剥離して、図示しないが、第1接着部付部材20aの第1接着部22aの面を、第2接着シート付部材に貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、複数の第1接着部を有していてもよい。なお、第2接着シート付部材についても、同様とすることができる。
さらに、第1準備工程が、図4(a)、(b)に例示するような第1接着層22の片面に第1セパレータ21が配置され、第1接着層22がパターン状の第1接着部22aを有する第1接着シート11を用い、図5(a)に例示するように第1接着部22aの第1セパレータ21が配置されていない面に、第1部材1を貼り合せる第1接着シート貼合工程を有する場合、貼合工程では、図5(b)に例示するように、第1接着シート付部材20の第1セパレータ21から、第1接着部22aおよび第1部材1が順に積層された第1接着部付部材20aを剥離して、図示しないが、第1接着部付部材20aの第1接着部22aの面を、第2接着シート付部材に貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、複数の第1接着部を有していてもよい。なお、第2接着シート付部材についても、同様とすることができる。
本工程は、第1接着層および第2接着層の粘着力の強弱に応じて、第1接着シート付部材および第2接着シート付部材の貼合に際し、一方を貼り直して位置決めする位置決め工程を有していてもよい。上記位置決め工程を有する場合、第1接着層および第2接着層は、先の「リワーク性が良好となる組合せ」の項で説明した粘着力の組合せとすることができる。
第1接着層および第2接着層は、接触により硬化反応を生じることができる。第1接着層および第2接着層の硬化温度は、常温を含むことができ、例えば5℃以上180℃以下の範囲内で設定することができる。硬化温度が常温を含むことで、加熱や冷却を行わなくてもよいようにできるため、物品の製造を簡便にすることができる。なお、常温とは23℃をいう。
また、第1接着層および第2接着層は、接触状態で加熱してもよい。第1接着層および第2接着層を接触させた状態で加熱することで、第1接着層および第2接着層の粘度を低下させて、第1接着層および第2接着層の密着性を高め、第1接着層および第2接着層に含まれる成分を移行しやすくすることができ、硬化反応を促進させることができるからである。また、第1接着層および第2接着層が粘着性を有さない場合や粘着性が低い場合でも、第1接着層および第2接着層を加熱することで、粘着性を発現させたり粘着性を高めたりすることができ、第1接着層および第2接着層の密着性を高めることができる。加熱温度は、第1接着層および第2接着層の組成に応じて適宜設定することができるが、例えば、30℃以上120℃以下の範囲内とすることができ、中でも40℃以上80℃以下の範囲内とすることができる。加熱温度が高すぎると、第1接着層および第2接着層のフロー性が大きくなり、接着剤が被着面からはみ出してしまい、はみ出た状態で硬化が進むことで外観不良の原因となる場合があるからである。また、低分子の単量体成分等の第1接着層および第2接着層に含まれる成分によっては、高温下で臭気が発生する。一方、加熱温度が低すぎると、硬化促進効果があまり得られず、工程時間の短縮が図りにくい場合がある。
また、第1接着層および第2接着層は、接触状態で押圧してもよい。第1接着層および第2接着層を接触させた状態で押圧することで、第1接着層および第2接着層を密着させ、第1接着層および第2接着層に含まれる成分を移行しやすくすることができ、硬化反応を促進させることができるからである。押圧方法としては、例えばローラーを用いて押圧する方法等が挙げられる。
また、第1接着層および第2接着層は、接触状態で光を照射してもよい。例えば、第1接着層および第2接着層の少なくともいずれか一方が光により活性化される成分を有する場合には、第1接着層および第2接着層を接触させた状態で光を照射することで、硬化反応を促進させることができる。また、上記の場合であって、第1接着層および第2接着層が粘着性を有さない場合や粘着性が低い場合でも、第1接着層および第2接着層に光を照射することで、粘着性を発現させたり粘着性を高めたりすることができ、第1接着層および第2接着層の密着性を高めることができる。照射する光は、反応性を高めることが可能であれば特に限定されないが、例えば、紫外光が挙げられる。
また、上記の加熱、押圧、光照射は、単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。例えば、加熱および押圧を行う場合、アイロンなどを用いて加熱圧着する方法等を用いることができる。
また、第1接着層および第2接着層は、貼り合せ後、所望の時間養生させることができる。第1接着層に含有される成分および第2接着層に含有される成分の拡散が進み、十分に硬化させることで強い接着力を発現することができるからである。養生時間は、第1接着層および第2接着層の組成に応じて適宜設定することができるが、例えば、0.5時間以上72時間以下の範囲内とすることができる。養生時間が短すぎても、貼り合せのやり直しがきかず、一方、養生時間が長すぎても、工程時間が伸びてしまう。
第1接着層および第2接着層は、接触による硬化反応が完了すると、硬化接着層となる。硬化接着層は、第1接着層に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第2接着剤成分が反応して硬化してなる硬化物層である。硬化接着層は、単一層であってもよいし、第1接着層および第2接着層の接触界面が残存していてもよい。
硬化接着層は、その強い接着力をもって第1部材と第2部材とを強固に貼り合せることができ、その状態を長時間保持可能な接着力を有することができ、中でも、引張せん断強度を高くすることができる。経時でせん断応力が掛る場合であっても、第1部材と第2部材との固定を長期間保持することができ、部材の剥がれを抑制することができるからである。硬化接着層の引張せん断強度は、上述した「第1接着層および第2接着層の粘着力の組合せ」の中の「反応性が良好となる組合せ」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
C.物品の製造方法の第2実施形態
本開示の物品の製造方法の第2実施形態(以下、第2実施形態の製造方法と略する場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1部材に、上記第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する準備工程と、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面に、上記第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面を貼り合せて、多層接着シート付部材とする第2接着シート貼合工程と、上記多層接着シート付部材の上記第2接着層の他方の面に、上記第2部材を貼り合せる第2部材貼合工程と、を有する。
図10は、第2実施形態の製造方法の一例を示す工程図である。図10に例示するように、まず、第1部材1に、第1接着層22を有する第1接着シート11の第1接着層22の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材20を準備する(図10(a)、準備工程)。図10(a)に示すように、第1接着シート11は、第1接着層22の他方の面(第1部材側と反対側の面)側に配置された第1セパレータ21を有していてもよい。次に、第1接着シート付部材20の第1接着層22の他方の面に、第2接着層24を有する第2接着シート12の第2接着層24の一方の面を貼り合せて、多層接着シート付部材50とする(図10(b)、第2接着シート貼合工程)。第1接着層22の他方の面に第1セパレータ21が配置されている場合は、第1セパレータ21を剥離して行う。図10(b)に示すように、第2接着シート12は、第2接着層24の他方の面(第1部材側と反対側の面)側に配置された第2セパレータ23を有していてもよい。第1接着層22および第2接着層24は、互いに接触することにより、硬化することができる。次に、多層接着シート付部材50の第2接着層24の他方の面に、第2部材2を貼り合せる(図10(c)、第2部材貼合工程)。第2接着層24の他方の面に第2セパレータ23が配置されている場合は、第2セパレータ23を剥離して行う。第2部材貼合工程において、第1接着層22および第2接着層24は、接触による硬化反応が完了することで強い接着力を発現した硬化接着層3となり、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、硬化接着層3および第2部材2を有する物品10が得られる。なお、図10(c)中のPは、第1接着層22および第2接着層24の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
第2実施形態の製造方法によれば、第1部材上にて第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とを貼り合せることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合せることができる。また、第1部材上で、第1接着シートおよび第2接着シートがそれぞれ貼り合せて積層されることから、2液型接着剤のような2液を混合する必要がなく、貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着シートを用いることから、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらにまた、第2部材側には接着層が設けられていないことから、第2部材の取り扱いが容易となる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
第2実施形態の製造方法は、第1部材および第2部材の種類や、部材同士を貼り合せた際の被着面(接着面)の方向、第1接着層および第2接着層の粘着力の程度に応じた施工が可能である。
以下、第2実施形態の製造方法における各工程について説明する。
1.準備工程
第2実施形態の製造方法における準備工程は、上記第1部材に、上記第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する工程である。準備工程は、上記第1実施形態の物品の製造方法の第1準備工程と同様とすることができる。
2.第2接着シート貼合工程
第2実施形態の製造方法における第2接着シート貼合工程は、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面に、上記第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面を貼り合せる工程である。
第2接着シートは、第2セパレータと上記第2セパレータの少なくとも一方の面側に設けられた第2接着層とを有することができる。すなわち、本工程は、第1接着シート付部材の第1セパレータを剥離し、第1セパレータが剥離されて露出した第1接着層の表面に、第2接着シートの第2セパレータが配置されていない面を貼合する工程とすることができる。
第1接着シート付部材の第1接着層の他方の面に、第2接着シートの第2接着層の一方の面を貼り合せる方法としては、特に限定されない。例えば、第2接着層の片面に第2セパレータが配置され、第2接着層を巻内面としてロール状に巻回された第2接着シートロールを用い、上記第2接着シートロールから必要量巻き出して、第2接着層と第1接着とを貼合した後切断する方法を用いることができる。また、第2接着層の両面に第2セパレータが配置された枚葉の第2接着シートを用い、第2接着シートの一方の第2セパレータを剥離して、露出した第2接着層と第1接着層とを貼り合せる方法を用いることができる。
第1接着シート付部材の第1接着層と第2接着シートの第2接着層との貼り合せ方法としては、特に限定されず、例えば、第1接着シート付部材の第1接着層と、第2接着シートの第2接着層とを向かい合わせて、直上方向から貼り合せる方法を用いることができる。
また、他の貼り合せ方法としては、少なくとも第1接着層の粘着力が0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内である場合、第2接着シートの第2接着層の一方の面に対して、第1接着シート付部材を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。第1接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性を向上させることができる。このとき、第1部材は、固定部材とすることができる。
さらに、他の貼り合せ方法としては、少なくとも第2接着層の粘着力が0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内である場合、第1接着シート付部材の第1接着層の他方の面に対して、第2接着シートを移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。第2接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性を向上させることができる。このとき、第1部材は、固定部材とすることができる。
また、他の貼り合せ方法としては、第2接着シートに対して、第1接着シート付部材を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。なお、この方法の利点については、上述の第1実施形態の製造方法の項に記載した通りである。
また、他の貼り合せ方法としては、第1接着層が低粘性または高粘性を示す場合、第1接着シート付部材の第1接着層の被着面に対して平行方向に、第2接着シートをスライド移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。
さらに、他の貼り合せ方法としては、第1接着層の他方の面および第2接着層の一方の面に対してせん断力を与えながら、第1接着シート付部材の第1接着層の他方の面と、第2接着シートの第2接着層の一方の面とを貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述の第1実施形態の製造方法の項に記載した通りである。中でも、例えば第1接着シート付部材の被着面に対して斜め上方向から第2接着シートを貼り合せる場合には、接着層の面はせん断力を受けるため、有利である。
上記の場合、移動する第1接着シート付部材の第1接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、移動する第1接着シート付部材の第1接着層は弱粘性または中粘着性とすることができる。第1接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性が向上するため、接着層の面にせん断力を与えた場合に、接着層の厚みがさらに不均一になりにくくすることができる。
第1接着シート付部材が多面付け第1接着シート付部材である場合には、多面付け第1接着シート付部材から、1つの第1部材を有する部分を切り出して、第2接着シートと貼り合せることができる。
また、第1準備工程が、図2(a)、(b)に例示するような第1接着層22の片面にセパレータ23が配置され、第1接着層22が、第1接着層22を厚み方向に切断する切込部25を有し、切込部25により画定される第1接着部22aを有する第1接着シート11を用い、図3(a)に例示するように第1接着部22aの第1セパレータ21が配置されていない面に、第1部材1を貼り合せる第1接着シート貼合工程を有する場合、第2接着シート貼合工程では、図3(b)に例示するように、第1接着シート付部材20の第1セパレータ21から、第1接着部22aおよび第1部材1が順に積層された第1接着部付部材20aを剥離して、図示しないが、第1接着部付部材20aの第1接着部22aの面を、第2接着シートと貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、複数の第1接着部を有していてもよい。
さらに、第1準備工程が、図4(a)、(b)に例示するような第1接着層22の片面に第1セパレータ21が配置され、第1接着層22がパターン状の第1接着部22aを有する第1接着シート11を用い、図5(a)に例示するように第1接着部22aの第1セパレータ21が配置されていない面に、第1部材1を貼り合せる第1接着シート貼合工程を有する場合、第2接着シート貼合工程では、図5(b)に例示するように、第1接着シート付部材20の第1セパレータ21から、第1接着部22aおよび第1部材1が順に積層された第1接着部付部材20aを剥離して、図示しないが、第1接着部付部材20aの第1接着部22aの面を、第2接着シートと貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、複数の第1接着部を有していてもよい。
第1接着層および第2接着層は、粘着力を調整することで、第1接着シート付部材および第2接着シートの貼合に際し、貼り直しが可能となり、位置調整を行うことができる。第1接着層および第2接着層は、先の「リワーク性が良好となる組合せ」の項で説明した粘着力の組合せとすることができる。
また、本工程においては、第1接着層および第2接着層を接触させた状態で、加熱してもよく、押圧してもよく、光を照射してもよい。なお、加熱、押圧および光照射については、上述の第1実施態様の製造方法と同様とすることができる。
本工程において、第1接着層および第2接着層は、接触により硬化反応が進むが、後述する第2部材貼合工程前に硬化が完了しないようにすることができる。第2接着層に第2部材を貼り合せることが困難となるからである。
3.第2部材貼合工程
第2実施形態の製造方法における第2部材貼合工程は、上記多層接着シート付部材の上記第2接着層の他方の面に、上記第2部材を貼り合せる工程である。
多層接着シート付部材の第2接着層の他方の面と第2部材とを貼り合せる方法としては、特に限定されない。例えば、多層接着シート付部材の第2接着層と、第2部材とを向かい合わせて、直上方向から貼り合せる方法を用いることができる。
また、他の貼り合せ方法としては、少なくとも第2接着層の粘着力が0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内である場合、多層接着シート付部材および第2部材のうち、一方に対して、他方を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。第2接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性を向上させることができる。
さらに、他の貼り合せ方法としては、第2部材に対して、多層接着シート付部材を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述の第1実施形態の製造方法の項に記載した通りである。
上記の方法の場合、移動する多層接着シート付部材の第2接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、移動する多層接着シート付部材の第2接着層は弱粘性または中粘着性とすることができる。第2接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性を向上させることができるからである。
また、他の貼り合せ方法としては、第1部材および第2部材のうち、一方が固定されており、多層接着シート付部材および第2部材のうち、固定された一方に対して、他方を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述の第1実施形態の製造方法の項に記載した通りである。
また、他の貼り合せ方法としては、第2接着層が低粘性または高粘性を示す場合、多層接着シート付部材の第2接着層と、第2部材とを向かい合わせて、一方を他方の被着面に対して平行方向にスライド移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。上記の貼り合せ方法は、例えば、第1部材および第2部材の接着面が水平面に対して所定の範囲内である場合に適している。
さらに、他の貼り合せ方法としては、第2接着層の他方の面に対してせん断力を与えながら、多層接着シート付部材の第2接着層の他方の面と、第2部材とを貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述の第1実施形態の製造方法の項に記載した通りである。中でも、例えば多層接着シート付部材の被着面に対して斜め上方向から第2部材を貼り合せる場合には、接着層の面はせん断力を受けるため、有利である。また、例えば図11(a)~(d)に示すように、第2部材2が内部空間2aと開口部2bとを有しており、第2部材2の内部に多層接着シート付部材50を嵌め込む場合には、液状接着剤の塗布厚みが不均一になりやすいのに対して、接着シートの接着層の厚みは不均一になりにくいため、有利である。
上記の場合、多層接着シート付部材の第2接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、多層接着シート付部材の第2接着層は弱粘性または中粘着性とすることができる。第2接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性が向上するため、接着層の面にせん断力を与えた場合に、接着層の厚みがさらに不均一になりにくくすることができる。
第2接着層は、粘着力を調整することで、多層接着シート付部材および第2部材の貼合に際し、貼り直しが可能となり、位置調整を行うことができる。
本工程は、第2接着シート貼合工程において第1接着層および第2接着層を貼り合せてから、養生時間内に行うことで、第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応が完了するまでの間、第2接着層の粘着性により第2部材を固定することができる。また、上記硬化反応の完了により、第2部材を強固に固定することができる。さらに、養生の間、作業者が他の施工を行うことができる。中でも、本工程は、第1接着層および第2接着層が接触してからで0.5時間以内に行うことができる。硬化が進むと第2部材に対する接着強度が低下する懸念があるからである。養生時間および硬化温度については、上述の第1実施態様の製造方法と同様である。
また、上記第2接着シート貼合工程において、加熱、押圧、光照射を行わない場合には、本工程において、第1接着層および第2接着層を接触させた状態で、加熱してもよく、押圧してもよく、光を照射してもよい。なお、加熱、押圧および光照射については、上述の第1実施態様の製造方法と同様とすることができる。
本工程において、上記第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応が完了すると、上記第1接着層および第2接着層が強固に接着して、第1部材と第2部材との間に硬化接着層が形成される。
硬化接着層の詳細および本態様の製造方法において説明しない内容については、上述の第1実施態様の製造方法と同様である。
D.物品の製造方法の第3実施形態
本開示の物品の製造方法の第3実施形態(以下、第3実施形態の製造方法と略する場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面と、上記第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面と、が貼り合わされてなる多層接着シートを準備する準備工程と、上記多層接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第1部材を貼り合せて、多層接着シート付部材とする第1部材貼合工程と、上記多層接着シート付部材の上記第2接着層の他方の面に、上記第2部材を貼り合せる第2部材貼合工程と、を有する。
図12は、第3実施形態の製造方法の一例を示す工程図である。図12に例示するように、まず、第1接着層22を有する第1接着シート11の第1接着層22の一方の面と、第2接着層24を有する第2接着シート12の第2接着層24の一方の面と、が貼り合わされてなる多層接着シート40を準備する(図12(a)、準備工程)。図12(a)に示すように、第1接着シート11は、第1接着層22の他方の面(第2接着層24と貼り合せる面と反対側の面)に配置された第1セパレータ21を有していてもよい。また、第2接着シート12は、第2接着層24の他方の面(第1接着層22と貼り合せる面と反対側の面)に配置された第2セパレータ23を有していてもよい。さらに、多層接着シート40では、第1接着層22および第2接着層24の他方の面に、それぞれ第1セパレータ21および第2セパレータ23が配置されていてもよい。次に、多層接着シート40の第1接着層22の他方の面に、第1部材1を貼り合せて、多層接着シート付部材50とする(図12(b)、第1部材貼合工程)。また、多層接着シート付部材50の第2接着層24の他方の面に、第2部材2を貼り合せる(図12(c)第2部材貼合工程)。多層接着シート40の第1接着層22の他方の面に第1セパレータ21が配置されている場合、第1セパレータ21を剥離して行う。同様に、多層接着シート40の第2接着層24の他方の面に第2セパレータ23が配置されている場合、第2セパレータ23を剥離して行う。多層接着シート40において、第1接着層22および第2接着層24は、互いに接触しており、第1部材貼合工程および第2部材貼合工程中に、第1接着層22中の成分と第2接着層24中の成分とが拡散して、硬化反応が生じて、強い接着力を発現することができる。第1接着層22および第2接着層24は、硬化反応の完了により硬化接着層3となり(図12(c))、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、硬化接着層3、および第2部材2を有する物品10が得られる。なお、図12(b)、(c)中のPは、第1接着層22および第2接着層24の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
図12(a)で例示した準備工程では、第1接着シート11と第2接着シート12とを貼り合せて多層接着シート40を形成する多層接着シート形成工程を含んでいる。多層接着シート形成工程については後述する。
第3実施形態の製造方法によれば、予め、第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とが積層された多層接着シートを用い、上記多層接着シートに対して各部材を貼り合せることで、部材同士の貼合時間の短縮を図ることができ、また、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合せることができる。さらに、上記多層接着シートを用いるため、2液型接着剤のような2液の混合が不要であり、部材同士の貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
以下、第3実施形態の製造方法の各工程について詳細に説明する。
1.準備工程
第3実施形態の製造方法における準備工程は、第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面と、第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面と、が貼り合わされてなる多層接着シートを準備する工程である。
多層接着シートは、第1接着層の第2接着層側とは反対側の面に第1セパレータを有していてもよく、第2接着層の第1接着層側とは反対側の面に第2セパレータを有していてもよい。したがって、多層接着シートは、第1セパレータおよび上記第1セパレータの少なくとも一方の面側に設けられた第1接着層を有する第1接着シートの第1接着層と、第2セパレータおよび上記第2セパレータの少なくとも一方の面側に設けられた第2接着層を有する第2接着シートの第2接着層と、が貼り合わされてなる多層体とすることができる。
多層接着シートは、第1接着層と第2接着層との接着界面において、硬化領域を有していてもよい。上記硬化領域とは、第1接着層および第2接着層のそれぞれに含有される成分が拡散して硬化した領域をいう。
本工程においては、別工程にて第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とが予め貼合された多層接着シートを準備してもよい。
また、本工程は、第1セパレータおよび上記第1セパレータの少なくとも一方の面側に設けられた第1接着層を有する第1接着シートの第1接着層と、第2セパレータおよび上記第2セパレータの少なくとも一方の面側に設けられた第2接着層を有する第2接着シートの第2接着層とを貼り合せて多層接着シートを形成する多層接着シート形成工程を有していてもよい。
多層接着シート形成工程では、例えば、第1接着層の両面に第1セパレータを有する第1接着シートと、第2接着層の両面に第2セパレータを有する第2接着シートと、を準備し、上記第1接着シートの一方の第1セパレータ、および上記第2接着シートの一方の第2セパレータをそれぞれ剥離して、露出した第1接着層および第2接着層を貼合して、多層接着シートを準備することができる。
第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層との貼り合せ方法としては、特に限定されず、例えば、第1接着シートの第1接着層と、第2接着シートの第2接着層とを向かい合わせて、直上方向から貼り合せる方法を用いることができる。
また、他の貼り合せ方法としては、少なくとも第1接着層の粘着力が0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内であり、第2接着シートの第2接着層の一方の面に対して、第1接着シートを移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。また、少なくとも第2接着層の粘着力が0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内であり、第1接着シートの第1接着層の一方の面に対して、第2接着シートを移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。第1接着層および第2接着層の少なくとも一方を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性を向上させることができる。
さらに、他の貼り合せ方法としては、第1接着層の一方の面および第2接着層の一方の面に対してせん断力を与えながら、第1接着シートの第1接着層の一方の面と、第2接着シートの第2接着層の一方の面と貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述の第1実施形態の製造方法の項に記載した通りである。
上記の場合、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方は弱粘性または中粘着性とすることができる。少なくとも一方の接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性が向上するため、接着層の面にせん断力を与えた場合に、接着層の厚みがさらに不均一になりにくくすることができる。
また、多層接着シート形成工程では、例えば、上記第1接着層の一方の面に第1セパレータを有し、第1接着層を巻内面としてロール状に巻回された第1接着シートロールと、上記第2接着層の一方の面に第2セパレータを有し、第2接着層を巻内面としてロール状に巻回された第2接着シートロールと、を準備し、それぞれ巻き出して、上記第1接着シートの上記第1接着層および上記第2接着シートの上記第2接着層を貼合し、所望の形状に切り出して、多層接着シートを準備することができる。
第1接着シートおよび第2接着シートの貼合は、作業者が手作業で行ってもよく、ロールラミネーター(例えば、フジプラ株式会社製 ラミパッカーLPP4513)等を使用して機械的、連続的に行ってもよい。上述した他の態様においても同様である。
また、本工程においては、第1接着層および第2接着層を接触させた状態で、加熱してもよく、押圧してもよく、光を照射してもよい。なお、加熱、押圧および光照射については、上述の第1実施態様の製造方法と同様とすることができる。
多層接着シートを準備後、すぐに後述する貼合工程を行わない場合は、多層接着シートは、第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応が進行しないように、低温環境下で保管することができる。上記低温環境下とは5℃以下の環境下をいい、多層接着シートは、中でも-20℃以上5℃以下の冷蔵庫もしくは冷凍庫に保管することができる。
(b)第1部材貼合工程および第2部材貼合工程
第3実施形態の製造方法における第1部材貼合工程は、上記多層接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第1部材を貼り合せて、多層接着シート付部材とする工程である。また、第3実施形態の製造方法における第2部材貼合工程は、上記多層接着シート付部材の上記第2接着層の他方の面に、上記第2部材を貼り合せる工程である。
多層接着シートにおいて、第1接着層の他方の面に第1セパレータが配置されている場合は、第1セパレータを剥離して露出した第1接着層に、第1部材を貼合することができる。また、多層接着シート付部材において、第2接着層の他方の面に第2セパレータが配置されている場合は、第2セパレータを剥離して露出した第2接着層に、第2部材を貼合することができる。
多層接着シートの第1接着層と第1部材との貼り合せ方法としては、特に限定されず、例えば、多層接着シートの第1接着層と、第1部材とを向かい合わせて、直上方向から貼り合せる方法を用いることができる。
また、他の貼り合せ方法としては、少なくとも第1接着層の粘着力が0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内である場合、第1部材および多層接着シートのうち、一方に対して、他方を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。少なくとも第1接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性を向上させることができる。
さらに、他の貼り合せ方法としては、第1接着層の他方の面に対してせん断力を与えながら、多層接着シートの第1接着層の他方の面と、第1部材とを貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述の第1実施形態の製造方法の項に記載した通りである。
上記の場合、少なくとも第1接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、少なくとも第1接着層は弱粘性または中粘着性とすることができる。第1接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性が向上するため、第1接着層の面にせん断力を与えた場合に、第1接着層の厚みがさらに不均一になりにくくすることができる。
多層接着シート付部材の第2接着層と第2部材との貼り合せ方法としては、特に限定されず、例えば、多層接着シート付部材の第2接着層と、第2部材とを向かい合わせて、直上方向から貼り合せる方法を用いることができる。
また、他の貼り合せ方法としては、少なくとも第2接着層の粘着力が0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内であり、多層接着シート付部材および第2部材のうち、一方に対して、他方を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。少なくとも第2接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性を向上させることができる。
さらに、他の貼り合せ方法としては、第2部材に対して、多層接着シート付部材を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述の第1実施形態の製造方法の項に記載した通りである。
また、他の貼り合せ方法としては、第1部材および第2部材のうち、一方が固定されており、多層接着シート付部材および第2部材のうち、固定された一方に対して、他方を移動させて貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述の第1実施形態の製造方法の項に記載した通りである。
さらに、他の貼り合せ方法としては、第2接着層の他方の面に対してせん断力を与えながら、多層接着シート付部材の第2接着層の他方の面と、第2部材とを貼り合せる方法を挙げることができる。この方法の利点については、上述の第1実施形態の物品の製造方法の記載した通りである。また、この方法については、上述の第2実施形態の製造方法と同様とすることができる。
上記の場合、少なくとも第2接着層の粘着力は0.05N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内とすることができる。すなわち、少なくとも第2接着層は弱粘性または中粘着性とすることができる。第2接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、リワーク性が向上するため、接着層の面にせん断力を与えた場合に、接着層の厚みがさらに不均一になりにくくすることができる。
第1部材貼合工程および第2部材貼合工程は、準備工程から第1接着層および第2接着層の接触による硬化反応が完了するまでの間に行うことができる。第1接着層および第2接着層の硬化が進むと、部材を貼り合せることが困難になる場合があるからである。準備工程において、多層接着シートが低温環境下に保管されない場合は、第1接着層および第2接着層が接触してから0.5時間以内に行うことができる。また、準備工程において、多層接着シートが低温環境下に保管されている場合は、低温環境下から解放されてから養生時間の間に行うことができる。養生時間については、上述の第1実施形態の製造方法と同様とすることができる。
また、上記準備工程において、加熱、押圧、光照射を行わない場合には、本工程において、第1接着層および第2接着層を接触させた状態で、加熱してもよく、押圧してもよく、光を照射してもよい。なお、加熱、押圧および光照射については、上述の第1実施態様の製造方法と同様とすることができる。
3.その他
その他、接着層の物性を利用した貼合方法や、第1部材および第2部材の配置、第1接着層および第2接着層の接触硬化反応により形成される硬化接着層等、第3実施形態の製造方法において説明しない内容については、上述の第1実施形態の製造方法および第2実施形態の製造方法と同様とすることができる。
E.物品の製造方法の第4実施形態
本開示の物品の製造方法の第4実施形態(以下、第4実施形態の製造方法と略する場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用いる物品の製造方法であって、第1部材に、上記第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する準備工程と、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面に、上記第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面を貼り合せる第2接着シート貼合工程と、を有する。
図13は、第4実施形態の製造方法の一例を示す工程図である。第4実施形態の製造方法は、準備工程(図13(a))および第2接着シート貼合工程(図13(b))を有する。図13(a)および(b)は、上述した図10(a)および(b)と同様である。第1接着層22および第2接着層24は、硬化反応の完了により硬化接着層3となる(図13(c))。図13(c)で示すように、第2接着シート貼合工程後、硬化接着層3の第1部材1とは反対側の面に、第2接着シート12の第2セパレータ23が配置されている場合は、第2セパレータ23を剥離してもよい。これにより、第1部材1および硬化接着層3を少なくとも有する物品10が得られる。
第4実施形態の製造方法によれば、第1部材上にて第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とを貼り合せることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって第1部材および接着層を一体化することができる。また、第1部材上で、第1接着シートおよび第2接着シートがそれぞれ貼り合せて積層されることから、2液型接着剤のような2液を混合する必要がなく、貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着シートを用いることから、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、一方の接着層の中に他の部材を包含させ、若しくは第1接着層および第2接着層の接触界面に他の部材を配置することで、硬化した接着層により上記他の部材を保持し、固定することができ、また、上記他の部材により第1部材の補修または補強等することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
第4実施形態の製造方法は、第2部材貼合工程を行わないこと以外は、上述の第2実施形態の製造方法と同様とすることができる。以下、第4実施形態の物品の製造方法の各工程について説明する。
1.準備工程
第4実施形態の製造方法における準備工程は、第1部材に、上記第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する工程である。準備工程については、上述の第2実施形態の製造方法の準備工程と同様とすることができる。
第1接着シートは、予め第1接着層の第1部材側の面、またはその反対側の面に他の部材が配置されていてもよく、第1接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。第1接着層と第2接着層とが接触硬化することで、他の部材を硬化接着層中に包含することが可能となるからである。図14に例示する物品10は、硬化接着層3中に他の部材4が包含されている。
2.第2接着シート貼合工程
第4実施形態の製造方法における第2接着シート貼合工程は、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面に、上記第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面を貼り合せる工程である。第2接着シート貼合工程については、上述の第2実施形態の製造方法の第2接着シート貼合工程と同様とすることができる。
第2接着シートは、第2接着層の一方の面(第1接着層側の面)に、他の部材が配置されていてもよく、第2接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。その理由については、先に述べた通りである。
第2接着シートは、第2接着層の他方の面(第1接着層側と反対側の面)に第2セパレータを有し、上記第2セパレータの上記第2接着層側表面が賦形面であってもよい。第2セパレータの第2接着層側表面を賦形面とすることで、図13(b)、(c)で例示するように、第1接着層22および第2接着層24との接触硬化後、第2接着層24上に配置されていた第2セパレータ23を剥離することにより、硬化接着層3表面に第2セパレータ23の賦形面の形状が賦形された物品10を得ることができ、意匠性を付与することができるからである。
本工程は、第1接着シート付部材に、第2接着シートの第2接着層の一方の面を貼り合せる前に、第1接着シート付部材の第1接着層の他方の面に、他の部材を配置する工程を有していてもよい。その理由については、先に述べた理由と同様である。
3.その他
第4実施形態の製造方法においては、第1接着シートおよび第2接着シートの少なくとも一方が、顔料を含むことができる。物品の製造方法をインフラ構造物の製造方法に適用する場合において、補修した箇所がどこであるかを遠くからでも視認しやすくすることができ、また、顔料を含むことで、接着シートを貼付する下地を保護することができるからである。
F.物品の製造方法の第5実施形態
本開示の物品の製造方法の第5実施形態(以下、第5実施形態の製造方法と略する場合がある。)は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能な第1接着層および第2接着層を用いる物品の製造方法であって、上記第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面と、上記第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面と、が貼り合わされてなる多層接着シートを準備する準備工程と、上記多層接着シートの上記第1接着層の他方の面に、第1部材を貼り合せる第1部材貼合工程と、を有する。
図15は、第5実施形態の製造方法の一例を示す工程図である。第5実施形態の製造方法は、準備工程(図15(a))および貼合工程(図15(b))を有する。図15(a)および(b)は、上述した図12(a)および(b)と同様である。第1接着層22および第2接着層24は、硬化反応の完了により硬化接着層3となる(図15(c))。図15(c)で示すように、貼合工程後、硬化接着層3の第1部材1とは反対側の面に、第2接着シート12の第2セパレータ23が配置されている場合は、第2セパレータ23を剥離してもよい。これにより、第1部材1および硬化接着層3を少なくとも有する物品10が得られる。
第5実施形態の製造方法によれば、予め、第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層とが積層された多層接着シートを用い、上記多層接着シートに対して部材を貼り合せることで、貼合時間の短縮を図ることができ、また、硬化により発現される強い接着力をもって第1部材および接着層を一体化することができる。さらに、上記多層接着シートを用いるため、2液型接着剤のような2液の混合が不要であり、貼り合せを簡便に行うことが可能である。加えて、接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、一方の接着層の中に他の部材を包含させ、若しくは第1接着層および第2接着層の接触界面に他の部材を配置することで、硬化した接着層により上記他の部材を保持し、固定することができ、また、上記他の部材により第1部材の補修または補強等することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
第5実施形態の製造方法は、第2部材貼合工程を行わないこと以外は、上述の第3実施形態の製造方法と同様とすることができる。以下、第5実施形態の物品の製造方法の各工程について説明する。
1.準備工程
第5実施形態の製造方法における準備工程は、上記第1接着層を有する第1接着シートの上記第1接着層の一方の面と、上記第2接着層を有する第2接着シートの上記第2接着層の一方の面と、が貼り合わされてなる多層接着シートを準備する工程である。準備工程については、上述の第3実施形態の製造方法の準備工程と同様とすることができる。
第1接着シートは、予め第1接着層の一方の面(第2接着層側の面)、またはその反対側の面に他の部材が配置されていてもよく、第1接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。また、第2接着シートは、予め第2接着層の一方の面(第1接着層側の面)に他の部材が配置されていてもよく、第2接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。第1接着層と第2接着層とが接触硬化することで、他の部材を硬化接着層中に包含することが可能となるからである。
第2接着シートは、第2接着層の他方の面(第1接着層側と反対側の面)に第2セパレータを有し、上記第2セパレータの上記第2接着層側表面が賦形面であってもよい。第2セパレータの第2接着層側表面を賦形面とすることで、第1接着層および第2接着層の接触硬化後、第2接着層上に配置されていた第2セパレータを剥離することにより、硬化接着層表面に第2セパレータの賦形面の形状が賦形された物品を得ることができ、意匠性を付与することができるからである。
2.貼合工程
第5実施形態の製造方法における貼合工程は、上記多層接着シートの上記第1接着層の他方の面に、第1部材を貼り合せる工程である。貼合工程については、上述の第3実施形態の製造方法の第1部材貼合工程と同様とすることができる。
本工程は、多層接着シート付部材の第1接着層の他方の面に、第1部材を貼り合せる前に、第1接着シート付部材の第1接着層の他方の面に、他の部材を配置する工程を有していてもよい。その理由については、先に述べた理由と同様である。
3.その他
第5実施形態の製造方法においては、第1接着シートおよび第2接着シートの少なくとも一方が、顔料を含むことができる。物品の製造方法をインフラ構造物の製造方法に適用する場合において、補修した箇所がどこであるかを遠くからでも視認しやすくすることができ、また、顔料を含むことで、接着シートを貼付する下地を保護することができるからである。
G.用途およびその詳細
本開示の物品の製造方法は、様々な分野の物品の製造方法に用いることができ、その用途は限定されないが、中でも、加熱や光照射が困難な物品の製造方法として用いることができる。具体的には、本開示の物品の製造方法は、建築物品、インフラ(インフラストラクチャー)構造物、自動車、電子部品に適用することができる。
1.建築物品
建築物品の製造方法には、第1実施形態から第3実施形態までのいずれかの物品の製造方法を用いることができる。
建築物品としては、例えば、家屋、ビル、建物、塔等の一般に建築業界で施工される建築構造物、これらに用いられる複合建材等が挙げられる。
第1部材および第2部材は、建築物品を構成する建材であり、その種類に応じて適宜選択される。上記建材は被着面を有すれば、その形態は特に限定されない。
上記建材は、例えば、無機材料、有機材料、またはこれらを組み合わせた複合材料、積層材料から構成されていても良い。第1部材および第2部材の材質は、同一であってもよく異なってもよく、使用環境や用途等に応じて、適宜選択して組み合わせることができる。
有機材料で形成された有機建材としては、例えば、木質板、有機物板等が挙げられる。木質板としては、例えば杉、檜、松、ラワン、チーク等の樹木で構成される木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。また、無機材料で形成された無機建材としては、例えば、スレート板やケイカル板、石膏ボード、レンガ、コンクリート、セメントモルタル、金属材料、セラミック材料等が用いられる。
上記建材としては、建築施工において公知のものが挙げられる、具体的には、既存の建築構造物の柱、梁、天井、壁、床などの躯体、新たに建築構造物を施工する際に躯体を構成するのに用いられる床板、壁板、天井板等の建築部材、躯体や建築部材を下地としてその表面に貼り合せて用いる表装材等が挙げられる。表装材としては、例えば、ビニル壁紙、織物壁紙、紙壁紙、無機質壁紙、化粧フィルム、タイル、パネル、化粧板等の壁装材、タイル、リノリウム、フローリングブロック、フローリング、クッションフロアー、フローリングボード等の化粧床材が挙げられる。
第1部材および第2部材の組合せとしては、例えば、一方を表装材とし、他方を建築構造物の躯体とすることができる。具体的には、第1部材および第2部材の一方が壁装材であり、他方が建築構造物の壁であってもよく、一方が化粧床材であり、他方が建築構造物の床であってもよい。また、第1部材および第2部材の一方を建築構造物の躯体とし、他方を別の建築構造物の躯体とすることができる。2種類の躯体間を第1接着層および第2接着層を介して貼り合せることで、硬化接着層を溶接やボルト固定の代替とすることができる。
2.インフラ構造物
インフラ構造物には、上述の物品の製造方法を用いることができ、中でも第4実施形態の製造方法を用いることができる。
インフラ構造物としては、例えば、橋梁、橋脚、トンネル、法面、道路舗装、河川管理施設、砂防堰堤、砂防床固工、下水管梁、下水処理場、港湾施設、空港、公営住宅、集合住宅、一般住宅、都市公園、官庁施設、海岸堤防、航路標識、道路標識、信号機、架線、送信設備、送電設備等が挙げられる。
例えば、第2部材を貼り付けることにより第1部材が補修または補強されたインフラ構造物とすることができる。また、第2部材を用いず、接着層に補修または補強部材(以下、補修・補強部材と略する。)が含まれている、または、接着層表面に補修・補強部材が配置されていることで、補修・補強部材を内包した硬化接着層により、第1部材が補修または補強されたインフラ構造物とすることができる。また、例えば、インフラ構造物である第1部材に、第2部材としてセンサ装置を取り付けることができる。また、第2部材を用いず、接着層にセンサ装置が含まれている、または、接着層表面にセンサ装置が配置されていることで、センサ装置を内包した硬化接着層を、インフラ構造物である第1部材に取り付けることができる。
第1部材および第2部材は、インフラ用部材であればよく、被着面を有していれば、その形態は特に限定されない。インフラ用部材としては、例えば、補修または補強前のインフラ構造物あるいはセンサ装置の取付前のインフラ構造物(以下、対象インフラ構造物)や、補修・補強部材、センサ装置等が挙げられる。インフラ構造物の製造方法においては、インフラ用部材である第1部材および第2部材のうち、一方は対象インフラ構造物であり、対象インフラ構造物は、固定されていてもよい。
補修・補強部材としては、従来公知の部材を用いることができ、例えば、接着層中に含浸可能な部材が挙げられる。具体的には、補強用途では、アラミド繊維、炭素繊維、ビニロン繊維、PET繊維等を挙げることができる。また、機能を付与できる補修用途では、広告用看板、塗装フィルム、防水シート、吸水シート、耐紫外線シート、保水シート、着色シート等を挙げることができる。なお、補強には、ヒビを隠したり、凹凸を消したりする補修を含み、さらに強度向上、保水、表面保護、加飾等の機能を付与するものも含む。
センサ装置は、インフラ用部材に貼り付けて、インフラ用部材の状態変化を検知するものである。センサ装置としては、例えばセンサ部と、RFタグとを備えるものが挙げられる。センサ部には、例えば慣性力(加速度、角速度)、歪み、音響波、超音波、電磁波等の物理量を検知することができるものが用いられる。センサ部としては、貼り付けるインフラ用部材の種類や材質に応じて従来公知のセンサ部を使用することができ、例えば、加速度センサ、角速度センサ、音響センサ、表面弾性波センサ、超音波センサ、歪みセンサ、GPS(グローバルポジションシステム)センサ、距離センサ(測距センサ)等を用いることができる。具体的には、センサ部は、インフラ構造物の振動、剥落、ひび割れ、位置ずれ、傾き、歪み等の変化を検知することができる。例えば、特開2016-194441号公報に開示されるセンサ装置を使用することができる。
また、センサ装置は、例えばコンクリート製のインフラ用部材に貼り付けて、その表面の状態変化を検知するものであってもよい。例えばコンクリート表面のクラックの発生やその成長、コンクリート表面の水分濃度や塩分等のイオン濃度の変化等を検知するものが用いられる。具体的には、導電性線材、光ファイバー、繊維含浸プラスチックフィルム、市販のひび割れ検知センサ(東京測器研究所社製 KZCA-A)等の従来公知のセンサ装置を使用することができる。また、例えば、特開2015-087351号公報に開示されるコンクリート異常検知部材を使用することもできる。
3.自動車
自動車の製造方法には、上述した物品の製造方法の第1実施形態から第3実施形態までのいずれかを用いることができる。
自動車の製造方法においては、第1部材および第2部材を自動車用部材として、双方を第1接着剤組成物および第1接着層を介して貼り合せることができる。
第1部材および第2部材は、自動車用部材であればよく、被着面を有していれば、その形態は特に限定されない。自動車用部材とは、自動車車体および上記自動車車体に取り付けられる自動車部品をいい、内装材、外装材の何れであってもよい。自動車部品は、一般に自動車に用いられる部品であれば特に限定されず、例えば、エンブレムなどの装飾部材、ピラー等の構造部材等が挙げられる。
上記自動車用部材の材料は、自動車の部位に応じて適宜選択することができ、例えば、無機材料、金属材料、セラミック材料、有機材料、またはこれらを組み合わせた複合材料や積層材料等が挙げられる。第1部材および第2部材の材質は、同一であってもよく異なってもよく、適宜選択して組み合わせることができる。第1部材および第2部材の材質の組合せとしては、例えば、ABSやCFRPなどの有機材料と金属類との組合せ、アルミとチタンとの組合せ等の異種金属の組合せ等が挙げられる。
4.電子部品
電子部品には、上述した物品の製造方法の第1実施形態から第3実施形態までのいずれかを用いることができる。
電子部品において、上述の物品の製造方法は、例えば、MEMS、チップ等の電子部品の固定や、基板同士の接合等に適用することができる。また、接着シートセットは、ダイボンディングフィルムとして利用することができる。
5.その他
本開示の物品の製造方法において、接着層にせん断力を与えながら、接着層および部材を貼り合せる、接着層および接着シート付部材を貼り合せる、あるいは接着層同士を貼り合せる場合には、中でも、加熱や光照射が困難な物品の製造方法として用いることができる。具体的には、ラケットのグリップの固定、ゴルフクラブのシャフトやグリップの接合、釣竿の継目やグリップの接合、自動車用部材等に使用されるカップ型鋼板やハット型鋼板同士の接合等に適用することができる。
II.重ね貼り装置
まず、本開示の重ね貼り装置について説明する。本開示の重ね貼り装置は、第1接着層を備える第1接着シートと、第2接着層を備える第2接着シートとを重ね貼りするための重ね貼り装置であって、上記第1接着層および上記第2接着層は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能である。
ここで、第1接着シートおよび第2接着シートを重ね貼りする場合、図16(a)に示すように、第1接着シート11と第2接着シート12とが、平面視上重なるように貼り合せることが求められる。特に、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層は、互いに接触することにより硬化して接着することができるため、第1接着シートと第2接着シートとが重なる領域がより広くなるように貼り合せることが求められる。仮に、図16(b)に示すように、第1接着シート11と第2接着シート12とが平面視上一部のみ重なると、図16(a)に示すように両接着シートが重ね貼りされた領域Raに比べて、図11(b)に示すように両接着シートが重ね貼りされた領域Rbが狭まってしまい、より広い領域において所定の接着性を発現することが困難になる。
また、第1接着シートと第2接着シートとが区別し難い場合には、両接着シートのうち、先に配置した接着シートがいずれの接着シートであり、次にいずれの接着シートを重ね貼りすべきかが分からなくなってしまうおそれがある。
これに対し、本開示においては、第1接着シートおよび第2接着シートを重ね貼りするための重ね貼り装置が、所定の構成を備えることにより、上述のような不具合を解消することができ、第1接着シートおよび第2接着シートの重ね貼りを効率良く行うことが可能である。また、重ね貼り装置を用いることにより、第1接着シートおよび第2接着シートを重ねる位置精度を確保することができる。
本開示の重ね貼り装置は、2つの態様を有する。以下、各態様について説明する。
A.重ね貼り装置の第1態様
本開示の重ね貼り装置の第1態様は、第1接着層を備える第1接着シートと、第2接着層を備える第2接着シートとを重ね貼りするための重ね貼り装置であって、上記第1接着層および上記第2接着層は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能であり、上記第1接着シートの上記第1接着層を、被着体に貼り付け可能に排出する第1排出部と、上記第2接着シートの上記第2接着層を、上記被着体に貼り付けられた上記第1接着シートの上記第1接着層に貼り付け可能に排出する第2排出部と、を有し、上記第1排出部による上記第1接着シートが排出される方向と、上記第2排出部による上記第2接着シートが排出される方向とが同じであり、上記第1排出部は、上記第1接着シートおよび上記第2接着シートが排出される方向に沿って上記第2排出部よりも上流側に配置されている。
図17は、本態様の重ね貼り装置の一例を示す概略図である。重ね貼り装置100は、図17に示すように、第1接着シートの第1接着層を、被着体に貼り付け可能に排出する第1排出部102aと、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に貼り付け可能に排出する第2排出部102bと、を備える。なお、図17に示す重ね貼り装置100は、第1排出部102a、第2排出部102bの他にも、ロール状に巻回された第1接着シートを巻き出し可能に保持する第1保持部104a、およびロール状に巻回された第2接着シートを巻き出し可能に保持する第2保持部104bを備え、さらに、第1接着層の片面側に配置された第1セパレータを巻き取ることが可能な第1巻取部103a、および第2接着層の片面側に配置された第2セパレータを巻き取ることが可能な第2巻取部103bを備える例である。さらにまた、図17に示す重ね貼り装置100は、第1排出部102a、第1保持部104aおよび第1巻取部103a等を支持するための第1枠部120a、ならびに、第2排出部102b、第2保持部104bおよび第2巻取部103b等を支持するための第2枠部120bを有し、また、第1保持部104aと第1巻取部103aとを同期させるための歯車である第1補助部107a、第2保持部104bと第2巻取部103bとを同期させるための歯車である第2補助部107b、第1枠部120aおよび第2枠部120bを連結するための連結部130を有する例である。
図18は、上述した図17に示す重ね貼り装置の観察面を第1面としたとき、当該第1面の裏面となる第2面から観察した重ね貼り装置の概略図である。重ね貼り装置では、図18に示す第2面側にロール状に巻回された第1接着シートおよび第2接着シートをそれぞれ第1保持部104aおよび第2保持部104bにより保持させ、このように保持された第1接着シートおよび第2接着シートを用いて、次のようにして貼り付けを行う。重ね貼り装置100では、図18の実線矢印に示すように第1接着シートおよび第2接着シートは、第1保持部104aおよび第2保持部104bから、第1排出部102aおよび第2排出部102bへとそれぞれ送られ、被着体に貼り付けられる。その後、図18の点線矢印に示すように、第1セパレータおよび第2セパレータは、第1巻取部103aおよび第2巻取部103bにより巻き取られて回収される。
図17、図18では、第1排出部102a上に第1巻取部103aが配置され、第1巻取部103a上に第1保持部104aが配置されており、また、第2排出部102b上に第2巻取部103bが配置され、第2巻取部103b上に第2保持部104bが配置された例を示している。第1巻取部103aおよび第1保持部104a、第2巻取部103bおよび第2保持部104bの位置は特に限定されず、各構成が所定の機能を発揮することができればよい。そのため、例えば、図19に示すように、第1排出部102a上に第1保持部104aが配置され、第1保持部104a上に第1巻取部103aが配置されていてもよく、第2排出部102b上に第2保持部104bが配置され、第2保持部104b上に第2巻取部103bが配置されていてもよい。なお、図19において説明していない符号については、図17、図18と同様とすることができる。
図20は、重ね貼り装置を用いた第1接着シートおよび第2接着シートの重ね貼りを説明するための説明図である。図20に示すように、第1排出部102aにより排出された第1接着シート11の第1接着層22を、被着体に貼り付け、その後、第2排出部102bにより排出された第2接着シート12の第2接着層24を、被着体に貼り付けられた第1接着シート11の第1接着層22に貼り付けることができる。なお、図20は、第1接着シート11が、第1接着層22の片面側に配置された第1セパレータ21を有し、第1排出部102aにより第1接着シート11が排出された後に、第1セパレータ21が回収され、第2接着シート12も同様に、第2接着層24の片面側に配置された第2セパレータ23を有し、第2排出部102bにより第2接着シート12が排出された後に、第2セパレータ23が回収される例を示している。
重ね貼り装置では、第1排出部により第1接着シートが排出される方向と、第2排出部により第2接着シートが排出される方向とが同じであり、第1排出部は、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に沿って第2排出部よりも上流側に配置されている。これにより、重ね貼り装置を被着体表面に沿って移動させた際に、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に重ね合うように、第2接着シートの第2接着層を貼り付けることができる。
ここで、第1排出部が、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に沿って第2排出部よりも上流側に配置されるとは、例えば、図20に示す第1排出部102aおよび第2排出部102bを、Y方向から観察した際に、図21に示すように、第1排出部102aおよび第2排出部102bが、矢印で示す進行方向に沿って配置され、かつ、この進行方向において第1排出部102aが第2排出部102bよりも上流側に配置されることを指す。なお、図21では、第1排出部102aの幅W2aと、第2排出部102bの幅W2bとが同じであり、第1排出部102aと第2排出部102bとが、進行方向に沿って全て重なるように配置された例である。
本態様の重ね貼り装置は、上述の物品の製造方法の第2実施形態および第4実施形態に使用することができる。以下、本態様の重ね貼り装置について説明する。
1.第1排出部
第1排出部は、第1接着シートの第1接着層を、被着体に貼り付け可能に排出することができる。また、第1排出部による第1接着シートが排出される方向と、第2排出部による第2接着シートが排出される方向とは同じであり、第1排出部は、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に沿って第2排出部よりも上流側に配置されている。
第1排出部は、第1接着シートの第1接着層を被着体に貼り付け可能に排出することができる部材であればよく、例えば、第1接着シートの第1接着層を被着体に貼り付け可能に案内することができる部材であってもよく、第1接着シートの第1接着層を被着体に貼り付けることができる部材であってもよい。例えば図17~図20に示す重ね貼り装置において、第1排出部は、第1接着シートの第1接着層を被着体に貼り付けることができる部材である。
第1排出部が、第1接着シートの第1接着層を被着体に貼り付けることができる部材である場合、第1接着シートの第1接着層を被着体に貼り付けることが可能な形状を有することができる。その形状としては、例えば、ロール状やヘラ状等が挙げられる。中でも、図17~図20に示すように、形状はロール状とすることができる。第1排出部がロール状である場合、第1排出部の回転により、第1接着シートの第1接着層を被着体に貼り付けることができる。なお、第1排出部は、通常、他の部材と連動していないため、第1排出部の回転は、他の部材等により制御されておらず、単独で動作する。
第1排出部がロール状である場合、第1排出部と第1接着シートとの接触面では、所定の摩擦を生じることができる。ここで、第1排出部と第1接着シートとの接触面とは、例えば、図20の点線で囲った領域Rmを指し、第1接着シート11が第1接着層22の片面側に配置された第1セパレータ21を有する場合には、第1排出部102aと第1セパレータ21との接触面を指す。第1排出部と第1セパレータとの接触面で所定の摩擦が生じることにより、第1接着層から第1セパレータが剥離しやすくなる。
第1排出部と第1セパレータとの接触面で摩擦を発生させる方法としては、例えば、第1排出部の表面、すなわち第1排出部の第1セパレータと接触する面に、所定の材料を用いる方法が挙げられる。第1排出部の表面に用いられる材料としては、例えば、コーティングダイヤモンド、コーティングCBN(立方晶窒化ホウ素)等の無機材料が挙げられる。また、第1排出部の表面に用いられるその他の材料としては、例えば、有機材料に粒子を分散させて埋め込んだ材料が挙げられる。有機材料には、例えば、ウレタンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンゴム、プロピレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、ハイパロンゴム、弗素ゴム等を用いることができる。また、粒子には、例えば、銅、ニッケル、銀、チタン、白色アルミナ質、解砕型アルミナ質、淡紅色アルミナ質、緑色炭化ケイ素、黒色炭化ケイ素等を用いることができる。
第1排出部の大きさについては、用いられる第1接着シートの幅等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。第1排出部は、第1接着シートの第1接着層を被着体に良好に貼り付けられる程度の大きさとすることができる。
2.第2排出部
第2排出部は、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に貼り付け可能に排出することができる。また、第2排出部による第2接着シートが排出される方向と、第1排出部による第1接着シートが排出される方向とは同じであり、第2排出部は、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に沿って第1排出部よりも下流側に配置されている。
第2排出部は、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に貼り付け可能に排出することができる部材であればよく、例えば、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に貼り付け可能に案内することができる部材であってもよく、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に貼り付けることができる部材であってもよい。例えば図17~図20に示す重ね貼り装置において、第2排出部は、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に貼り付けることができる部材である。
第2排出部が、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に貼り付けることができる部材である場合、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に貼り付けることが可能な形状を有する。その形状としては、例えば、ロール状やヘラ状等が挙げられる。中でも、図17~図20に示すように、形状はロール状とすることができる。第2排出部がロール状である場合、第2排出部の回転により、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に貼り付けることができる。なお、第2排出部は、他の部材に連動していないため、第2排出部の回転は、他の部材等により制御されておらず、単独で動作する。
本開示においては、第2排出部によって、第2接着シートの第2接着層を、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層と重ね合うように貼り付けることができる。そのため、第2排出部は、重ね貼り装置を被着体表面に沿って移動させた際に、被着体に貼り付けられた第1接着シートの第1接着層に、第2接着シートの第2接着層が重ね合うように配置されることができる。ここで、重ね合うとは、重ね貼り装置を被着体表面に沿って移動させ、第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層との貼り付けを行った際に、第2接着シートの第2接着層が、第1接着シートの第1接着層の一部の領域で重なっていることや、あるいは第1接着シートの第1接着層の全ての領域を覆うように重なっていること等を指す。中でも、後者とすることができる。第1接着シートの第1接着層において、より広い領域で第2接着シートの第2接着層と重ね合わせることができるからである。第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層の重なり合いは、例えば、図20のY方向から観察することで確認することができる。
第2排出部のその他の説明については、上述の第1排出部と同様とすることができる。
3.第1保持部および第2保持部
重ね貼り装置は、ロール状に巻回された第1接着シートを巻き出し可能に保持する第1保持部と、ロール状に巻回された第2接着シートを巻き出し可能に保持する第2保持部とを有することができる。第1接着シートおよび第2接着シートがロール状に巻回されていることで、省スペースで保管することが可能である。
第1保持部は、第1接着シートを保持することができ、第1接着シートを第1排出部へ巻き出すことができる部材である。また、第2保持部は、第2接着シートを保持することができ、第2接着シートを第2排出部へ巻き出すことができる部材である。
第1保持部および第2保持部は、例えば、図17に示す第1保持部104a、第2保持部104bのように、ロール状とすることができる。第1接着シートおよび第2接着シートの巻き出しを良好に行うことができるからである。
第1保持部がロール状である場合、図17に示すように、歯車を有することができる。重ね貼り装置が、第1接着シートから第1セパレータを巻き取る第1巻取部を有し、かつ、第1巻取部が歯車を有する場合であって、第1保持部の歯車が第1巻取部の歯車を連れ回す場合に、次のような理由から、第1接着シートの貼り付けを良好に行うことが可能となる。すなわち、第1保持部における歯車と軸心が同一となるように、ロール状に巻回された第1接着シートを第1保持部に保持させることで、第1保持部からの第1接着シートの巻き出しと、第1巻取部による第1セパレータの巻き取りとを、連動して行うことが可能できる。このような理由から、第1接着シートの貼り付けを良好に行うことが可能となる。なお、ここでの第1セパレータの巻き取りは、第1巻取部の歯車と軸心が同一となるように保持されたロールによって行うことができる。
第1保持部がロール状であり、歯車を有する場合であって、第1保持部における歯車と軸心が同一となるように、ロール状に巻回された第1接着シートを第1保持部に保持させる場合、第1保持部が有する歯車の大きさ、具体的には、第1保持部が有する歯車の半径は、第1接着シートの巻き出し量に応じて適宜調整することができる。例えば、重ね貼り装置が第1巻取部を有する場合、第1接着シートの巻き出し量と、第1セパレータの巻き取り量は、常に一定とすることができる。そのため、重ね貼り装置が第1巻取部を有する場合には、第1保持部の半径は、第1巻取部が有する歯車の半径に応じて適宜調整することができる。第1保持部が有する歯車の半径よりも、第1巻取部が有する歯車の半径が大きいと、第1接着シートの貼り付けは軽くなり、重ね貼り装置の動作を軽くすることができる。
また、第2保持部がロール状である場合、図17に示すように、歯車を有することができる。なお、第2保持部が歯車を有する場合については、上述の第1保持部が歯車を有する場合と同様とすることができる。
4.第1巻取部および第2巻取部
重ね貼り装置は、第1接着シートから第1セパレータを巻き取ることが可能な第1巻取部を有することができる。第1接着シートが、第1接着層の片面側に配置された第1セパレータを備え、第2接着シートが、第2接着層の片面側に配置された第2セパレータを備える場合、第1セパレータのみを巻き取ることで、第2セパレータにより重ね貼りした後の第1接着シートおよび第2接着シートを保護することができる。
また、重ね貼り装置は、上記第1巻取部と、第2接着シートから第2セパレータを巻き取ることが可能な第2巻取部とを有することができる。第1接着シートが、第1接着層の片面側に配置された第1セパレータを備え、第2接着シートが、第2接着層の片面側に配置された第2セパレータを備える場合、第1セパレータおよび第2セパレータの両方を巻き取ることで、作業効率を上げることができる。また、重ね貼り装置を、上述の物品の製造方法の第4実施形態に使用する場合には、第2セパレータの剥がし忘れを防ぐことができる。
第1巻取部は、例えば、図17に示す第1巻取部103aのように歯車を有し、当該歯車と軸心が同一となるようにロールが保持されることができる。第1巻取部を第1保持部と同期させることができるため、第1接着シートの巻き出しと、第1セパレータの巻き取りとを連動させ、第1接着シートおよび第2接着シートの重ね貼りを良好に行うことができるからである。
第1巻取部が歯車を有し、当該歯車と軸心が同一となるようにロールが保持されている場合、第1巻取部が有する歯車の大きさ、具体的には、第1巻取部が有する歯車の半径は、歯車と軸心が同一となるように保持されたロールによって巻き取られる第1セパレータの巻き取り量に応じて適宜調整することができる。例えば、重ね貼り装置は、第1接着シートの巻き出し量と、第1セパレータの巻き取り量は、常に一定とすることができる。そのため、重ね貼り装置における第1巻取部が有する歯車の半径は、第1保持部が有する歯車の半径に応じて適宜調整することができる。第1保持部が有する歯車の半径よりも、第1巻取部が有する歯車の半径が大きいと、第1接着シートの貼り付けは軽くなり、重ね貼り装置の動作を軽くすることができる。
また、第2巻取部は、例えば、図17に示す第2巻取部103bのように歯車を有し、当該歯車と軸心が同一となるようにロールが保持されることができる。なお、第2巻取部が歯車を有する場合については、上述の第1巻取部が歯車を有する場合と同様とすることができる。
5.押圧部
重ね貼り装置は、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートを押圧する押圧部を有することができる。第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層を接触させた状態で押圧することで、第1接着層および第2接着層を密着させ、硬化反応を促進させることができるからである。
押圧部は、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートを押圧する部材である。そのため、押圧部は、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層が十分に密着する程度に押圧する部材とすることができる。ここで、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層が十分に密着する程度とは、例えば、第1接着シートの第1接着層と第2接着シートの第2接着層との間に空気等が入り込まず、かつ第1接着シートおよび第2接着シートが切断されない程度をいい、第1接着シートおよび第2接着シートの種類や被着体に応じて適宜調整されるため、具体的な圧力等では定義されない。
押圧部は、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートを押圧することが可能な形状を有することができる。その形状としては、例えば、ロール状やヘラ状等が挙げられる。中でも、形状はロール状とすることができる。押圧部がロール状である場合、押圧部の回転により、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートを押圧することができる。なお、押圧部は、通常、他の部材と連動していないため、押圧部の回転は、他の部材等により制御されておらず、単独で動作する。
押圧部の大きさについては、用いられる第1接着シートおよび第2接着シートの幅等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。押圧部は、第1接着シートおよび第2接着シートが良好に押圧される程度の大きさとすることができる。
本開示においては、上記第2排出部が押圧部を兼ねていてもよく、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に沿って第2排出部よりも下流側に押圧部が配置されていてもよい。
6.加熱部
重ね貼り装置は、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートを加熱する加熱部を有することができる。第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層を接触させた状態で加熱することで、第1接着層および第2接着層の粘度を低下させて、第1接着層および第2接着層の密着性を高めることができ、硬化反応を促進させることができるからである。また、第1接着層および第2接着層が粘着性を有さない場合や粘着性が低い場合でも、第1接着層および第2接着層を加熱することで、粘着性を発現させたり粘着性を高めたりすることができ、第1接着層および第2接着層の密着性を高めることができる。
加熱部としては、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートを加熱することができる部材であればよく、例えば、サーマルヘッド、ヒートロール、温風ヒーター、ホットスタンプ、レーザー光源、紫外光ランプ、赤外光ランプ、IHヒーター、摩擦接合用ヘッド、超音波発生器、電気ヒーター等が挙げられる。中でも、被着体への転写性が良いことから、加熱部はヒートロールとすることができる。
加熱部での加熱温度としては、上述の物品の製造方法における加熱温度と同様とすることができる。なお、本開示においては、加熱により硬化反応が促進されればよいため、例えば熱硬化型の接着剤と比較して、加熱条件は低温および短時間でよい。
加熱部は、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に沿って第2排出部よりも下流側に配置される。
7.照射部
重ね貼り装置は、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートに光を照射する照射部を有することができる。例えば、第1接着層および第2接着層の少なくともいずれか一方が光により活性化される成分を有する場合、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層を接触させた状態で光を照射することで、硬化反応を促進させることができる。また、上記の場合であって、第1接着層および第2接着層が粘着性を有さない場合や粘着性が低い場合でも、第1接着層および第2接着層に光を照射することで、粘着性を発現させたり粘着性を高めたりすることができ、第1接着層および第2接着層の密着性を高めることができる。
照射部としては、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートに光を照射することができる部材であればよく、例えば、紫外光ランプ、ブラックライト、高圧水銀灯、LEDライト、メタルハライドランプ等が挙げられる。
照射部は、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に沿って第2排出部よりも下流側に配置される。
8.取手部
重ね貼り装置は、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に力を加えることで、第1排出部および第2排出部により第1接着シートおよび第2接着シートを貼り付けることができ、第1接着シートおよび第2接着シートの重ね貼りができるような位置に配置された取手部を有することができる。
重ね貼り装置が取手部を有することにより、手動で重ね貼り装置を用いることができる。したがって、被着体の被着面が例えば水平面、鉛直面、法線面、傾斜面である場合など、様々な被着面に第1接着シートおよび第2接着シートを適用することができ、従来の卓上の装置に比べて自由度が向上する。
重ね貼り装置は、例えば、図17に示す取手部領域R5に、図22に示す取手部105を備えることができる。なお、図23は、取手部105を有する重ね貼り装置の実際の写真であり、図24は、取手部105を有する重ね貼り装置を実際に使用したときの写真である。図24では、矢印方向に重ね貼り装置を動かし、第1接着シートおよび第2接着シートを貼り付けている。
取手部は、例えば、図25(a)、(b)に示すように、持手部151を有していても良い。図25(a)に示すように、取手部105に持手部151が備わっている場合には、持手部151を手で握り、重ね貼り装置を動かすことができる。また、図25(b)に示すように、取手部105に持手部151が備わっている場合には、取手部105を握った手が外れないように、ストッパーとしての機能を発揮することができる。なお、取手部に設けられる持手部は、必要に応じて様々な角度や長さ、形状で設けることができ、特に限定されない。
例えば、図26に示すように、取手部領域から、被着面に対し斜め垂直方向に取手部105を設けてもよい。この場合、取手部105の長さを長くし、かつ取手部105の先端に持手部151を設けることにより、重ね貼り装置を使用する使用者が、持手部151を手で握り、立った状態で重ね貼り装置を動かすことができる。したがって、使用者が楽な姿勢で作業することが可能となり、作業効率の向上を図ることができる。
取手部に用いられる材料は、取手部により重ね貼り装置を動かすことができる程度の強度を有する材料とすることができる。例えば、木材、革材、骨材、有機材、ゴム材等が挙げられる。また、取手部は、強度を増すために補強材料を含んでいてもよい。補強材料としては、例えば、有機材、鋼材等が挙げられる。
取手部の大きさや形状は、重ね貼り装置の使用方法に応じて適宜調整することができ、重ね貼り装置を動かすことができれば特に限定されない。
また、取手部に備えられる持手部の材料については、上述した取手部の材料と同様とすることができる。さらに、持手部の大きさや形状についても、取手部と同様に、重ね貼り装置の使用方法に応じて適宜調整することができ、重ね貼り装置を動かすことができれば特に限定されない。
9.第1切断部および第2切断部
重ね貼り装置は、第1接着シートを貼り付けた後に、第1接着シート、具体的には第1接着層を切断する第1切断部、および第2接着シートを貼り付けた後に、第2接着シート、具体的には第2接着層を切断する第2切断部を有することができる。
重ね貼り装置においては、例えば、図17に示すように、第1排出部102aの下流側第1切断部106aを設けることができ、第2排出部102bの下流側に第2切断部106bを設けることができる。第1切断部106aおよび第2切断部106bを有することにより、第1セパレータおよび第2セパレータが巻き取られた後に、カッター等で、第1接着層および第2接着層のみを切断することができ、作業効率の向上を図ることができる。
第1切断部および第2切断部は、第1接着層および第2接着層を切断することができる部材であればよく、例えば、鋼材、ステンレス鋼材、粉末鋼、クラッド材、セラミック、チタン等が挙げられる。第1切断部および第2切断部の形状としては、例えば、段付き形状、ハマグリ形状、本刃付け形状、片刃形状等が挙げられる。
第1切断部および第2切断部により、第1接着層および第2接着層を切断する方法としては、例えば、押し切り方式や引き切り方式が挙げられる。具体例としては、市販のセロハンテープのカッターのように、材料として鋼材を用いた第1切断部および第2切断部を段付き形状とし、段付き形状とした刃物を、山谷が交互になるように配置し、第1接着層および第2接着層に押し当てることで、山部分から引き切り、切断する方法が挙げられる。
10.その他の部材
重ね貼り装置は、上述した部材以外にも、必要に応じてその他の部材を有していてもよい。その他の部材としては、例えば、図17に示すように、第1排出部102a、第1保持部104aおよび第1巻取部103a等を支持するための第1枠部120aや、第2排出部102b、第2保持部104bおよび第2巻取部103b等を支持するための第2枠部120bが挙げられる。また、第1保持部104aと第1巻取部103aとの間の距離を設けるための第1補助部107aや、第2保持部104bと第2巻取部103bとの間の距離を設けるための第2補助部107bが挙げられる。さらに、第1枠部120aおよび第2枠部120bを連結するための連結部130が挙げられる。
第1枠部は、第1排出部、第1保持部および第1巻取部等の各部材を支持する部材である。また、第2枠部は、第2排出部、第2保持部および第2巻取部等の各部材を支持する部材である。そのため、第1枠部および第2枠部の材料は、上述した各部材を支持することができる材料であれば特に限定されず、所定の強度を有する材料とすることができる。
第1補助部は、第1保持部と第1巻取部との間の距離を設けるための部材である。また、第2補助部は、第2保持部と第2巻取部との間の距離を設けるための部材である。第1補助部および第2補助部の形状としては、例えば、ロール状が挙げられ、図17に示すように、第1補助部107aおよび第2補助部107bは、複数個設けることもできる。図17に示す例では、第1補助部107aおよび第2補助部107bは、歯車のように周囲に歯形を有し、第1補助部107aは、第1保持部104aおよび第1巻取部103aを連れ回し、第2補助部107bは、第2保持部104bおよび第2巻取部103bを連れ回している。
連結部は、第1枠部および第2枠部を連結する部材である。また、重ね貼り装置が取手部を有する場合には、連結部に取手部を設置することができる。ここで、図17に示すように、第1枠部120aと連結部130とを接合した点を接合点131aとすると、接合点131aは、第1排出部102aの中心と、第1接着シートの被着面に対して垂直線上に位置することができる。同様に、第2枠部120bと連結部130とを接合した点を接合点131bとすると、接合点131bは、第2排出部102bの中心と、第2接着シートの被着面に対して垂直線上に位置することができる。連結部に取手部を設けた際に、取手部から被着面に圧力を加えることで、第1排出部および第2排出部から被着面に所定の圧力を加えることができるからである。なお、このとき、第1排出部および第2排出部に均一に圧力を加えるために、連結部の中心に取手部を設けることができる。
第1排出部102a、第1巻取部103aおよび第1保持部104aの中心は、一直線上となるように配置されることができる。また、第2排出部102b、第2巻取部103bおよび第2保持部104bの中心は、一直線上となるように配置されることができる。このような配置とすることで、第1排出部および第2排出部に所定の圧力を加えることができ、第1テープおよび第2テープの貼り付けを良好に行うことができる。
11.第1接着シートおよび第2接着シート
第1接着シートおよび第2接着シートについては、上述の物品の製造方法に使用される第1接着シートおよび第2接着シートと同様とすることができる。
中でも、被着体側に貼り付けられる第1接着シートの第1接着層を弱粘着性または中粘着性とすることができる。第1接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、容易に剥離可能となり、貼り直しが可能となるからである。
また、第2接着シートの第2接着層を弱粘着性または中粘着性とすることもできる。第2接着層を弱粘着性または中粘着性とすることで、例えば、第1接着シートおよび第2接着シートが貼り付けられた被着体の第2接着シート側に、他の被着体を貼り合せる場合に、第1接着シートおよび第2接着シートが貼り付けられた被着体の第2接着層側の面に対して、他の被着体を移動させて貼り合せたり、他の被着体に対して、第1接着シートおよび第2接着シートが貼り付けられた被着体を移動させて貼り合せたりすることができる。
B.重ね貼り装置の第2態様
本開示の重ね貼り装置の第2態様は、第1接着層を備える第1接着シートと、第2接着層を備える第2接着シートとを重ね貼りするための重ね貼り装置であって、上記第1接着層および上記第2接着層は、互いに接触することにより硬化して接着することが可能であり、上記第1接着シートの上記第1接着層および上記第2接着シートの上記第2接着層を重ね合せる重ね合せ部と、上記第1接着シートの上記第1接着層が被着体に貼り付けられるように、重ね合せられた上記第1接着シートおよび上記第2接着シートを排出する排出部と、を有する。
図27は、本態様の重ね貼り装置の一例を示す概略図である。重ね貼り装置100は、図27に示すように、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層を重ね合せる重ね合せ部108a、108bと、重ね合せられた第1接着シートおよび第2接着シートを被着体に貼り付け可能に排出する排出部102と、を備える。なお、図27に示す重ね貼り装置100は、重ね合せ部108a、108bおよび排出部102の他にも、ロール状に巻回された第1接着シートを巻き出し可能に保持する第1保持部104a、およびロール状に巻回された第2接着シートを巻き出し可能に保持する第2保持部104bを備え、さらに、第1接着層の片面側に配置された第1セパレータを巻き取ることが可能な第1巻取部103a、および第2接着層の片面側に配置された第2セパレータを巻き取ることが可能な第2巻取部103bを備える例である。さらにまた、図27に示す重ね貼り装置100は、重ね合せ部108a、108b、排出部102、第1保持部104a、第2保持部104b、第1巻取部103aおよび第2巻取部103b等を支持するための枠部120を有し、また、第1保持部104aと第1巻取部103aとを同期させるための歯車である第1補助部107a、第2保持部104bと第2巻取部103bとを同期させるための歯車である第2補助部107bを有する例である。重ね貼り装置100では、ロール状に巻回された第1接着シートおよび第2接着シートをそれぞれ第1保持部104aおよび第2保持部104bにより保持させ、このように保持された第1接着シートおよび第2接着シートを用いて、次のようにして貼り付けを行う。重ね貼り装置100では、図27の実線矢印に示すように第1接着シートおよび第2接着シートは、第1保持部104aおよび第2保持部104bから、重ね合せ部108a、108bおよび排出部102へと送られ、被着体に貼り付けられる。その後、図27の点線矢印に示すように、第1セパレータおよび第2セパレータは、第1巻取部103aおよび第2巻取部103bにより巻き取られて回収される。
図27では、重ね合せ部108a、108b上に第1巻取部103aが配置され、第1巻取部103a上に第1保持部104aが配置されており、また、重ね合せ部108a、108b上に第2巻取部103bが配置され、第2巻取部103b上に第2保持部104bが配置された例を示している。第1巻取部および第1保持部、ならびに、第2巻取部および第2保持部の位置は特に限定されず、各構成が所定の機能を発揮することができればよい。そのため、例えば、重ね合せ部上に第1保持部が配置され、第1保持部上に第1巻取部が配置されていてもよく、重ね合せ部上に第2保持部が配置され、第2保持部上に第2巻取部が配置されていてもよい。
図28は、重ね貼り装置を用いた第1接着シートおよび第2接着シートの重ね貼りを説明するための説明図である。図28に示すように、重ね合せ部108a、108bにより第1接着シート11の第1接着層22および第2接着シート12の第2接着層24は重ね合され、重ね合された第1接着層22および第2接着層24は、第1接着層22が被着体側になるように、被着体に貼り付けられる。なお、図28は、第1接着シート11が、第1接着層22の片面側に配置された第1セパレータ21を有し、重ね合せ部108a、108bにより第1接着シート11が第2接着シート12と重ね合された後に、第1セパレータ21が回収され、第2接着シート12も同様に、第2接着層24の片面側に配置された第2セパレータ23を有し、重ね合せ部108a、108bにより第2接着シート12が第1接着シート11と重ね合された後に、第2セパレータ23が回収される例を示している。
本態様の重ね貼り装置は、上述の物品の製造方法の第3実施形態および第5実施形態に使用することができる。以下、本態様の重ね貼り装置について説明する。
1.重ね合せ部
重ね合せ部は、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層を重ね合せることができる。
重ね合せ部は、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層を重ね合せることが可能な形状を有することができる。その形状としては、例えば、ロール状やヘラ状等が挙げられる。中でも、図27、図28に示すように、形状はロール状とすることができる。重ね合せ部がロール状である場合、重ね合せ部の回転により、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層を重ね合せることができる。なお、重ね合せ部は、通常、他の部材と連動していないため、重ね合せ部の回転は、他の部材等により制御されておらず、単独で動作する。
重ね合せ部がロール状である場合、重ね合せ部と第1接着シートとの接触面では、所定の摩擦を生じることができる。ここで、重ね合せ部と第1接着シートとの接触面とは、例えば、図28の点線で囲った領域Rmを指し、第1接着シート11が第1接着層22の片面側に配置された第1セパレータ21を有する場合には、重ね合せ部108aと第1セパレータ21との接触面を指す。重ね合せ部と第1セパレータとの接触面で所定の摩擦が生じることにより、第1接着層から第1セパレータが剥離しやすくなる。
重ね合せ部と第1セパレータとの接触面で摩擦を発生させる方法としては、例えば、重ね合せ部の表面、すなわち重ね合せ部の第1セパレータと接触する面に、所定の材料を用いる方法が挙げられる。なお、重ね合せ部の表面に用いられる材料については、上述の第1態様の第1排出部の表面に用いられる材料と同様とすることができる。
また、重ね合せ部がロール状である場合、重ね合せ部と第2接着シートとの接触面では、所定の摩擦を生じることができる。なお、重ね合せ部と第2接着シートとの接触面で摩擦が生じる場合については、上述の重ね合せ部と第1接着シートとの接触面で摩擦が生じる場合と同様とすることができる。
重ね合せ部の大きさについては、用いられる第1接着シートおよび第2接着シートの幅等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。重ね合せ部は、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層を良好に重ね合せられる程度の大きさとすることができる。
2.排出部
排出部は、第1接着シートの第1接着層が被着体に貼り付けられるように、重ね合せられた上記第1接着シートおよび上記第2接着シートを排出することができる。
排出部は、重ね合せられた第1接着シートおよび第2接着シートを被着体に貼り付け可能に排出することができる部材であればよく、例えば、重ね合せられた第1接着シートおよび第2接着シートを被着体に貼り付け可能に案内することができる部材であってもよく、重ね合せられた第1接着シートおよび第2接着シートを被着体に貼り付けることができる部材であってもよい。例えば図27、図28に示す重ね貼り装置において、排出部は、重ね合せられた第1接着シートおよび第2接着シートを被着体に貼り付けることができる部材である。
排出部が、重ね合せられた第1接着シートおよび第2接着シートを被着体に貼り付けることができる部材である場合、重ね合せられた第1接着シートおよび第2接着シートを被着体に貼り付けることが可能な形状を有することができる。その形状としては、例えば、ロール状やヘラ状等が挙げられる。中でも、図27、図28に示すように、形状はロール状とすることができる。排出部がロール状である場合、排出部の回転により、重ね合せられた第1接着シートおよび第2接着シートを被着体に貼り付けることができる。なお、排出部は、通常、他の部材と連動していないため、排出部の回転は、他の部材等により制御されておらず、単独で動作する。
排出部の大きさについては、用いられる第1接着シートおよび第2接着シートの幅等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。排出部は、重ね合せられた第1接着シートおよび第2接着シートを被着体に良好に貼り付けられる程度の大きさとすることができる。
3.第1保持部および第2保持部
重ね貼り装置は、ロール状に巻回された第1接着シートを巻き出し可能に保持する第1保持部と、ロール状に巻回された第2接着シートを巻き出し可能に保持する第2保持部とを有することができる。なお、第1保持部および第2保持部については、上述の第1態様と同様とすることができる。
4.第1巻取部および第2巻取部
重ね貼り装置は、第1接着シートから第1セパレータを巻き取ることが可能な第1巻取部を有することができる。また、重ね貼り装置は、上記第1巻取部と、第2接着シートから第2セパレータを巻き取ることが可能な第2巻取部とを有することができる。なお、第1巻取部および第2巻取部については、上述の第1態様と同様とすることができる。
5.押圧部
重ね貼り装置は、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートを押圧する押圧部を有することができる。なお、押圧部については、上述の第1態様と同様とすることができる。
本開示においては、上記重ね合せ部が押圧部を兼ねていてもよく、上記排出部が押圧部を兼ねていてもよく、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に沿って排出部よりも下流側に押圧部が配置されていてもよい。
6.加熱部
重ね貼り装置は、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートを加熱する加熱部を有することができる。なお、加熱部については、上述の第1態様と同様とすることができる。
7.照射部
重ね貼り装置は、重ね合された第1接着シートおよび第2接着シートに光を照射する照射部を有することができる。なお、照射部については、上述の第1態様と同様とすることができる。
8.取手部
重ね貼り装置は、第1接着シートおよび第2接着シートが排出される方向に力を加えることで、排出部により第1接着シートおよび第2接着シートを貼り付けることができ、第1接着シートおよび第2接着シートの重ね貼りができるような位置に配置された取手部を有することができる。なお、取手部ついては、上述の第1態様と同様とすることができる。
9.切断部
重ね貼り装置は、第1接着シートおよび第2接着シートを貼り付けた後に、第1接着シート、具体的には第1接着層と、第2接着シート、具体的には第2接着層とを切断する切断部を有することができる。なお、切断部については、上述の第1態様の第1切断部および第2切断部と同様とすることができる。
10.その他の部材
重ね貼り装置は、上述した部材以外にも、必要に応じてその他の部材を有していてもよい。なお、その他の部材については、上述の第1態様と同様とすることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[材料]
第1接着剤組成物および第2接着剤組成物において用いた各成分の詳細を表1に示す。
[実施例1~10]
1.第1準備工程
片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム(膜厚:38μm、東セロ株式会社製、商品名:SP-PET-03、以下、第1セパレータAとする。)を用い、剥離処理面上に、下記表2に示す組成配合からなる第1接着剤組成物を塗工後の厚さが75μmとなるようにアプリケーターを用いてそれぞれ塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて、第1接着層を形成した。
次に、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム(膜厚:38μm、東セロ株式会社製、商品名:SP-PET-01、以下、第1セパレータBとする。)を用い、その剥離処理面を第1接着層と対向するように重ね合わせて2kgのローラーを用いて押圧した。これにより、第1接着層の両面に第1セパレータAおよびBがそれぞれ配置された第1接着シートを得た。
2.第2準備工程
第2セパレータBとして、第1セパレータBと同じものを用い、剥離処理面上に下記表2に示す組成配合から成る第2接着剤組成物を塗工後の厚さが25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて第2接着層を形成した。次に、第2セパレータAとして、第1セパレータAと同じものを用い、その剥離処理面を第2接着層と対向するように重ね合わせて2kgのローラーを用いて押圧した。これにより、第2接着層の両面に第2セパレータAおよびBがそれぞれ配置された第2接着シートを得た。
3.貼合工程
第1接着シートを、長さ25mm、幅12.5mmに裁断し、第1セパレータBを剥離して第1接着層を露出させ、第1部材(溶融亜鉛鍍金鋼板、JIS G3302/SGCC規格品、長さ100mm、幅25mm、厚さ1.5mm)の先端部分に貼り付けて、第1接着シート付部材を作製した。また、第2接着シートを第1接着シートと同様のサイズに裁断し、第2セパレータBを剥離して第2接着層を露出させ、第2部材(第1部材と同じ)の先端に貼りつけて、第2接着シート付部材を作製した。
第1接着シート付部材および第2接着シート付部材の、他方の第1セパレータおよび第2セパレータをそれぞれ剥離して、第1接着層および第2接着層をそれぞれ露出させ、接着層同士を長さ25mm、幅12.5mmの接着面積になるように貼り合せた。各接着シート付部材の部材同士を仮固定した後、その仮固定部分上に3kgの荷重をかけて23℃、50%雰囲気下で7日間もしくは1ヵ月間養生を行い、物品を得た。また、各接着シート付部材の部材同士を仮固定した後、仮固定部分上に3kgの荷重をかけた状態で、150℃下で30分の加熱を行い、熱硬化した際の強度測定用サンプルも別途作製した。
[比較例1]
第1部材上にアクリル系両面粘着テープ(スリーエム社製 商品名:Y-4180、アクリル粘着剤含有)を貼り合せ、上記両面粘着テープの片面のセパレータを剥離して、第2部材を貼り合せた。
[評価1]
(1)接着強度(引張せん断強度)
得られた物品の両端を、23℃、50%RHの環境下でテンシロン万能材料試験機(RTF-1350、株式会社エー・アンド・デイ製)に固定し、10mm/分で引っ張り、引張せん断強度を測定し、その値を接着強度とした(JIS K6850:1999(接着剤-剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法)準拠法)。具体的には、上述の物品の製造方法の項の中で説明した方法で測定した。
(2)硬化性
上記接着強度測定後、破断面を食指にて確認し、タックが残っていなければ○、残っていれば×とした。
(3)粘着性
第1接着シートを、縦25.4mm、横150mmのサイズに裁断し、第1セパレータBを剥離して、露出させた第1接着層上にPETフィルム(東洋紡社製A4100)を手動ローラーを用いて貼り合せた。その後、第1セパレータAを剥離して、露出させた第1接着層上にSUS板(304BA、被着面:研磨面、試料:縦25.4mm、横150mm)を手動ローラーを用いて貼り合せた。その後、PETフィルム付きの第1接着層をSUS板から20mm程、手で剥離し、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、型番:RTF-1150H)を用いて、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)および粘着力の試験法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠した条件(引張速度:300mm/分、剥離距離:150mm、剥離角:180°)で、SUS板面に対する第1接着層の粘着力(N/インチ)を測定した。第2接着シートの第2接着層の粘着力についても、上記と同様の方法により測定した。粘着力が0.05N/25mm以上を○とし、0.05N/25mm未満を×とした。結果を表2に示す。
[評価1考察]
実施例1~10と比較例1との結果から、非硬化系の接着剤組成物では凝集力が低いためせん断強度が低くなり、加熱にも耐えられないことが示唆された。また、実施例1~10の結果から、以下のことが示唆された。すなわち、実施例1および2を比較すると、EA-BA-AN重合体(組成E)量が多い程、靱性が向上し、強度が上がる傾向にあった。また、実施例1、3および4の比較から、固形(高分子)のエポキシ化合物(組成H)量が減少すると、全体的に硬く脆くなるため強度は多少低下する傾向にあるが、逆に液状(低分子)のエポキシ化合物(組成A)を少なくしたとしても、貼り合せ後の第1接着層および第2接着層に含まれる成分の拡散がうまくいかず、常温硬化性が低下する傾向にあった。ただし、この場合であっても、加熱すれば拡散が促進され強度は高くなった。実施例5~10を比較すると、アクリル系トリブロック共重合体(組成C)を添加することにより、相溶性と靱性が上がり、常温硬化性(特に7日後硬化のせん断強度の結果を参照。)に優れる。このとき、アクリル系トリブロック共重合体の添加量を増やすにつれ、第1接着層および第2接着層に含まれる成分の拡散性は低下するため、室温硬化性は低下する傾向にあるが、靱性が向上し加熱後の強度が特に向上する。
[実施例11]
1.第1準備工程
実施例1と同じ第1セパレータAを用い、剥離処理面上に、下記表3に示す組成配合の第1接着剤組成物を塗工後の厚さが75μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて第1接着層を形成し、第1接着シートを得た。
住居用床材を想定した3mm厚みの板材(MDF)を用い、MDFと上記第1接着シートの第1接着層とを対向するように重ね合わせて、2kgのローラーを用いて押圧した。これにより、MDFの片面に第1接着シートが配置された第1接着シート付き建材を得た。
2.第2準備工程
実施例1と同じ第2セパレータAを用い、剥離処理面上に、下記表3に示す組成配合の第2接着剤組成物を塗工後の厚さが25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて第2接着層を形成した。次に、同じく第2セパレータAを用い、剥離処理面を第2接着層と対向するように重ね合わせて2kgのローラーを用いて押圧して、第2接着層の両面に第2セパレータAが配置された第2接着シートを得た。
床を模した鉄板(溶融亜鉛めっき鋼板、1.5mm厚み)を用い、第2接着シートに設けられた一方の第2セパレータAを剥離して第2接着層を露出して、第2接着層と上記鉄板とを手指で貼り合せた。これにより、鉄版の片面に第2接着シートが配置された第2接着シート付き建材を得た。
3.貼合工程
第1接着シート付き建材および第2接着シート付き建材の第1セパレータAおよび第2セパレータBを剥離して、第1接着層および第2接着層をそれぞれ露出させて貼り合せ、建築物品を得た。実施例11の方法によれば、MDFおよび鉄板を簡便に貼合することが可能であることを確認した。
[比較例3]
主剤として、シリコーンエラストマー(信越化学社製 商品名:KE-66)と、硬化剤CAT-RC(信越化学社製)とを重量比で主剤:硬化剤=100:2となる割合で混合し、1液の液状型湿気硬化接着剤(以下、単に1液硬化型接着剤と称する場合がある。)を調製した。実施例11で使用したMDFの片面上に1液硬化型接着剤を塗布し、その塗布面に実施例1で使用した鉄板を貼り合せて建築物品を得た。比較例3では、1液硬化型接着剤の混合調製が煩雑であり、また、1液硬化型接着剤を塗布する際に、MDFからの液のはみだしが確認された。
[比較例4]
実施例11と同じ鉄板上に比較例1で用いた両面粘着テープを貼り合せ、上記両面粘着テープの片面のセパレータを剥離して、実施例11と同じMDFを貼り合せて建築物品を得た。比較例4では両面粘着テープを介してそれぞれの建材を貼り合せるだけのため、簡易に施工は可能であった。
[評価2]
1.引張せん断強度
以下の方法で評価サンプルを作製し、各評価サンプルについて引張せん断強度を測定した。評価サンプルの作製に使用したMDFは、全て実施例11で用いたものと同様とした。引張せん断強度は、評価1と同様の条件で行った。
(評価実施例1)
実施例11で作製した第2接着シートの一方の第2セパレータAを剥離し、露出した第2接着層をMDFに手指にて貼り合せ、他方の第2セパレータAを剥離した。その上に、実施例1で作製した第1接着シートの第1セパレータAを剥離して第1接着層を露出させ、第1接着層および第2接着層同士が接着するように貼り合せ、接着面積が12.5mm×25mmとなるように、上記第1接着層上に別のMDFを貼り合せた。その後、23℃、50%RH環境下にて24時間養生を行い、評価サンプル1を得た。評価サンプル1の引張せん断強度は3.4MPaであった。
(評価サンプル2)
比較例2で用いた接着剤を液状のまま、MDFの表面に塗布し、同じく接着面積12.5mm×25mmとなるように接着剤層上に別のMDFを貼り合せた。上記接着剤が液状のため固定ができないため、カプトンテープにて剥がれないように固定し、23℃、50%RH環境下にて24時間養生を行い、評価サンプル2を得た。評価サンプル2の引張せん断強度は1.2MPaであった。
(評価サンプル3)
MDF上に比較例3で用いた両面粘着テープを貼り合せ、上記両面粘着テープの片面のセパレータを剥離して、上記両面粘着テープ上に接着面積が12.5mm×25mmとなるように別のMDFを貼り合せた。その後、23℃、50%RH環境下にて24時間養生を行い、評価サンプル3を得た。評価サンプル3の引張せん断強度は0.2MPaであった。
[評価2考察]
比較例2では接着剤に含まれる硬化性有機化合物がシリコーン化合物のため、硬化後も柔らかく、引張せん断強度が1.2MPaと低強度となった。また、比較例3では粘着剤のため、引張せん断強度試験時にほぼ応力を示さず、ひたすら伸び続けるような結果となり、引張せん断強度は非常に低強度となった。一方、実施例11は、比較例2および3と比較して高い引張せん断強度を示した。
[実施例12~15]
1.第1接着シートの作製
片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム(第1セパレータA)を用い、剥離処理面上に、下記表4に示す組成配合からなる第1接着剤組成物を塗工後の厚さが75μmとなるようにアプリケーターを用いてそれぞれ塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて、第1接着層を形成した。
次に、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム(第1セパレータB)を用い、その剥離処理面を第1接着層と対向するように重ね合わせて2kgのローラーを用いて押圧した。これにより、第1接着層の両面に第1セパレータAおよびBがそれぞれ配置された第1接着シートを得た。
2.第2接着シートの作製
第2セパレータBとして、第1セパレータBと同じものを用い、剥離処理面上に下記表4に示す組成配合から成る第2接着剤組成物を塗工後の厚さが25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて第2接着層を形成した。次に、第2セパレータAとして、第1セパレータAと同じものを用い、その剥離処理面を第2接着層と対向するように重ね合わせて2kgのローラーを用いて押圧した。これにより、第2接着層の両面に第2セパレータAおよびBがそれぞれ配置された第2接着シートを得た。
3.接着シートセット
第1接着シートおよび第2接着シートを表4で示す組合せとすることで、接着シートセットとした。
[評価3]
(1)粘着性
実施例12~15の接着シートセットについて、第1接着シートの第1接着層および第2接着シートの第2接着層の各粘着力を測定した。粘着力の測定は、上記評価1の項で説明した方法と同様の方法により行った。結果を表4に示す。
(2)引張せん断強度
実施例12~15の接着シートセットについて、引張せん断強度を測定した。引張せん断強度は、上述の物品の製造方法の項の中の「第1接着層および第2接着層の粘着力の組合せ」の項の中で説明した方法により行った。結果を表4に記す。
(3)貯蔵弾性率
実施例12~15の接着シートセットについて、第1接着層および第2接着層の貯蔵弾性率を測定した。貯蔵弾性率は、上述の物品の製造方法の項の中の「第1接着層および第2接着層の粘着力の組合せ」の項の中で説明した方法により行った。結果を表4に記す。
(4)保持特性
実施例12~15の接着シートセットについて、保持力を測定した。保持力の測定は、上述の物品の製造方法の項の中の「第1接着層および第2接着層の粘着力の組合せ」の項の中で説明した方法により行った。結果を表4に記す。
(5)リワーク性
実施例12~15の接着シートセットについて、リワーク性を測定した。リワーク性の測定は、上述の物品の製造方法の項の中の「第1接着層および第2接着層の粘着力の組合せ」の項の中で説明した方法により行った。結果を表4に記す。
[評価3考察]
実施例12~15の結果より、硬化性有機化合物を含む第1接着層の粘着力を、硬化性有機化合物を含まない第2接着層の粘着力よりも強くする、中でも上記一方の接着層の粘着力を強粘着性とすることで、第2接着層の粘着性の強弱によらず、せん断強度が高い傾向を示した。また、リワーク性も良好である傾向を示した。このとき、上記第1接着層の厚みは上記第2接着層の厚みよりも大きかった。これらの結果から、一方の接着層の粘着力を他方の接着層よりも強くすることで、反応性およびリワーク性が向上することが示唆された。また、硬化性有機化合物を含む接着層の厚みを大きくすることで、同様の効果が得られることが示唆された。
一方の接着層の粘着力を他方の接着層よりも強くする、中でも上記一方の接着層の粘着力を強粘着性とすることで、保持力が高くなる傾向が示唆された。また、硬化性有機化合物を含む接着層の厚みを大きくすることで、同様の傾向が得られることも示唆された(実施例12、13)。これは、少なくとも一方が、凝集力が低い柔軟性を有する層となるが、同時に厚みにより粘着力を上げることにより全体的に応力を分散しやすくすることにより保持力を高くすることが可能であると推量される。さらに、第1接着層および第2接着層が共に弱粘着性である場合も、保持力が高くなることが示唆された(実施例15)。これは、第1接着層および第2接着層は弱粘着性であり、共に凝集力が高く硬い層となるため、どちらか一方に応力が集中せず全体で力を受け止め、せん断方向の耐力が高くなったと推量される。
実施例14は実施例12、13および15よりも保持力が低かった。表4の結果から、少なくとも一方の接着層について、貯蔵弾性率を所定の範囲内に設定することで、保持特性が向上することが示唆された。中でも、第1接着層および第2接着層が共に所定の範囲内に貯蔵弾性率を有することで、保持特性がさらに向上することが示唆された。
実施例12~15の結果から、第1接着層および第2接着層は、実施例13で示した組合せ、すなわち硬化性有機化合物を含む第1接着層が強粘着性であり、硬化性有機化合物を含まない第2接着層が弱粘着性である組合せが、反応性、リワーク性、保持特性の観点から最も良好であることが示唆された。