JP6202785B2 - 反射防止膜、光学系、光学機器、及び反射防止膜の成膜方法 - Google Patents
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Description
この場合、多光子吸収顕微鏡の光学系は、観察用の蛍光(可視光)と、蛍光を発生させる励起レーザ光としての近赤外光と、を透過させる必要がある。そのため、可視光から近赤外光を透過させる反射防止膜が必要とされてきた。ここで、励起光としてのレーザ光は、蛍光観察波長の約2倍の波長が必要になる。蛍光観察では、使用される試薬によって観察に使われる波長が決定する。使用される可視光の波長はおおよそ500nm前後であるので、反射防止膜は、可視光から近赤外(約1000nm)までの波長の光を透過することが好ましい。
また、最表層にウエットコートによる層を形成し、他の層に誘電体多層膜を積層した構成により、波長範囲400nm〜1600nmで1%以下の反射率の反射防止膜を実現することができる。この反射防止膜を光学部品に成膜することで、励起光として、より長波長のレーザ光を使用することができ、観察対象の内部観察において、より深部の観察を行うことができる。
図1に示す多光子吸収顕微鏡においては、レーザ光源101で発振させた短パルスレーザ光を多層膜フィルタ102で反射させ、光学系110を介して、観察台103上に置いた観察対象Sに照射する。このレーザ光の照射によって観察対象Sで発生した励起光は、多層膜フィルタ102を透過して観察者Bによる観察が可能となる。
この反射防止膜は、基板上に順に積層された12層からなり、基板から最も離れた第12層(最表層)は、超低屈折率物質である中空シリカを主成分とし、ウエットコートによって形成される超低屈折率層である。ウエットコートの形成方法としては、例えば、スピンコート、ディッピング、スプレー、インクジェット、スリットウォーターが使用可能である。また、ウエットコートによる超低屈折率層の屈折率は1.20〜1.29の間で任意の値に設定できる。
第1層 0.02<nd<0.11
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第12層 0.32<nd<0.39
各層における光学膜厚ndが、上記各式を満足しない場合は、波長範囲400nm〜1600nmの光に対して1%以下の反射率を実現することが難しくなる。
屈折率が1.20を下回ると適用可能な物質の選択が困難となり、1.29を上回ると、波長範囲400nm〜1600nmの光に対して1%以下の反射率を実現することが難しくなる。
基板の屈折率が1.44〜1.88の範囲外となると、波長範囲400nm〜1600nmの光に対して1%以下の反射率を実現することが難しくなる。
(実施例1〜4)
図2は、実施例1、実施例2、実施例3、及び実施例4に係る反射防止膜の層構成を示す表である。図3は、実施例1、実施例2、実施例3、及び実施例4に係る反射防止膜の最大反射率を示す表である。図4は、実施例1に係る反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。図5は、実施例2に係る反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。図6は、実施例3に係る反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。図7は、実施例4に係る反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。
図3は、基板の屈折率が、図3に示す基板屈折率範囲の最小値である場合と最大値である場合のそれぞれについて、最大反射率を示している。これらの最大反射率は、波長範囲400nm〜1600nmにおける最大反射率である。
図4においては、基板の屈折率nが1.44である場合を実線で示し、1.55である場合を破線で示している。
図5においては、基板の屈折率nが1.55である場合を実線で示し、1.70である場合を破線で示している。
図6においては、基板の屈折率nが1.70である場合を実線で示し、1.81である場合を破線で示している。
図7においては、基板の屈折率nが1.81である場合を実線で示し、1.88である場合を破線で示している。
高屈折率物質としてのTa2O5は、基板側から順に、第1、第3、第5、第7、第9、及び第11層の高屈折率層として配置され、低屈折率物質としてのSiO2は、基板側から順に、第2、第4、第6、第8、及び第10層の低屈折率層として配置され、超低屈折率物質は第12層(最表層、超低屈折率層)として配置されている。
第1層 0.02<nd<0.11
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図4に示すように、実施例1の反射防止膜は、屈折率1.44及び屈折率1.55のいずれの基板上においても、波長範囲400nm〜1600nmで反射率が1%以下となっている。屈折率1.44と屈折率1.55の間の範囲の屈折率の基板においても同様である。
図5に示すように、実施例2の反射防止膜は、屈折率1.55及び屈折率1.70のいずれの基板上においても、波長範囲400nm〜1600nmで反射率が1%以下となっている。屈折率1.55と屈折率1.70の間の範囲の屈折率の基板においても同様である。
図6に示すように、実施例3の反射防止膜は、屈折率1.70及び屈折率1.81のいずれの基板上においても、波長範囲400nm〜1600nmで反射率が1%以下となっている。屈折率1.70と屈折率1.81の間の範囲の屈折率の基板においても同様である。
図7に示すように、実施例4の反射防止膜は、屈折率1.81及び屈折率1.88のいずれの基板上においても、波長範囲400nm〜1600nmで反射率が1%以下となっている。屈折率1.81と屈折率1.88の間の範囲の屈折率の基板においても同様である。
図8は、実施例5及び実施例6に係る反射防止膜の層構成を示す表である。図9は、実施例5及び実施例6に係る反射防止膜の最大反射率を示す表である。図10は、実施例5に係る反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。図11は、実施例6に係る反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。
図9は、基板の屈折率が、図8に示す基板屈折率範囲の最小値である場合と最大値である場合のそれぞれについて、最大反射率を示している。これらの最大反射率は、波長範囲400nm〜1600nmにおける最大反射率である。
図10においては、基板の屈折率nが1.70である場合を実線で示し、1.45である場合を破線で示し、1.88である場合を一点鎖線で示している。図11においては、基板の屈折率nが1.44である場合を実線で示し、1.88である場合を破線でそれぞれ示している。
高屈折率物質としてのHfO2は、基板側から順に、第1、第3、第5、第7、第9、及び第11層の高屈折率層として配置され、低屈折率物質としてのSiO2は、基板側から順に、第2、第4、第6、第8、及び第10層の低屈折率層として配置され、超低屈折率物質は第12層(最表層、超低屈折率層)として配置されている。
第1層 0.02<nd<0.11
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第11層 0.02<nd<0.06
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図10に示すように、実施例5の反射防止膜は、屈折率1.44、1.70、及び1.88のいずれの基板上においても、波長範囲400nm〜1600nmで反射率が1%以下となっている。屈折率1.44、1.70、1.88の間の範囲の屈折率の基板においても同様である。
図11に示すように、実施例6の反射防止膜は、屈折率1.44及び屈折率1.88のいずれの基板上においても、波長範囲400nm〜1600nmで反射率が1%以下となっている。屈折率1.44と屈折率1.88の間の範囲の屈折率の基板においても同様である。
図12は、実施例7及び実施例8に係る反射防止膜の層構成を示す表である。図13は、実施例7及び実施例8に係る反射防止膜の最大反射率を示す表である。図14は、実施例7に係る反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。図15は、実施例8に係る反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。
図13は、基板の屈折率が、図12に示す基板屈折率範囲の最小値である場合と最大値である場合のそれぞれについて、最大反射率を示している。これらの最大反射率は、波長範囲400nm〜1600nmにおける最大反射率である。
図14においては、基板の屈折率nが1.44である場合を実線で示し、1.88である場合を破線で示している。
図15においては、基板の屈折率nが1.44である場合を実線で示し、1.88である場合を破線で示している。
高屈折率物質としてのTiO2は、基板側から順に、第1、第3、第5、第7、第9、及び第11層の高屈折率層として配置され、低屈折率物質としてのMgF2は、基板側から順に、第2、第4、第6、第8、及び第10層の低屈折率層として配置され、超低屈折率物質は第12層(最表層、超低屈折率層)として配置されている。
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図14に示すように、実施例7の反射防止膜は、屈折率1.44及び屈折率1.88のいずれの基板上においても、波長範囲400nm〜1600nmで反射率が1%以下となっている。屈折率1.44と屈折率1.88の間の範囲の屈折率の基板においても同様である。
図15に示すように、実施例8の反射防止膜は、屈折率1.44及び屈折率1.88のいずれの基板上においても、波長範囲400nm〜1600nmで反射率が1%以下となっている。屈折率1.44と屈折率1.88の間の範囲の屈折率の基板においても同様である。
上述の実施例1〜8において、光学部品の表面との密着度を高めたり、反射防止膜を施した光学部品の最表層の撥水性・防曇性・耐久性を高めるなどの目的で、光学部品と第1層との間、及び/又は、第12層のさらに外側に、光学特性に大きな影響を与えない範囲内で、別の層を付与してもよい。例えば、第12層の外側にSiO2のオーバーコートを行ってもよい。
102 多層膜フィルタ
103 観察台
110 光学系
S 観察対象
Claims (10)
- 高屈折率物質と、前記高屈折率物質より屈折率が低い低屈折率物質と、を基板上に交互に積層し、前記低屈折率物質より屈折率が低い超低屈折率物質を最表層に積層して12層とした反射防止膜であり、
前記基板から11番目の層の光学膜厚は、前記反射防止膜の全体の光学膜厚の4%以下であることを特徴とする反射防止膜。 - 前記基板側から順に、第1、3、5、7、9、11層に前記高屈折率物質を、第2、4、6、8、10層に前記低屈折率物質を、第12層に前記超低屈折率物質を積層したことを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
- 各層において、屈折率nと物理膜厚dの積で表される光学膜厚ndが、次の各式を満足することを特徴とする請求項2に記載の反射防止膜。
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ここで、前記屈折率nは、設計長波550nmにおける値である。 - 前記高屈折率物質はTiO2、Ta2O5、HfO2、Nb2O5、又はそれらとLa、Zrの混合物であり、前記低屈折率物質はSiO2、MgF2、又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の反射防止膜。
- 前記超低屈折率物質の屈折率は1.20〜1.29であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の反射防止膜。
- 前記基板の屈折率は1.44〜1.88の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の反射防止膜。
- 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の反射防止膜を有する1枚以上の光学基板で構成されたことを特徴とする光学系。
- 請求項7に記載の光学系を有することを特徴とする光学機器。
- 基板上に、高屈折率物質と、前記高屈折率物質より屈折率が低い低屈折率物質と、を交互に合計11層積層する第1成膜工程と、
前記第1成膜工程で積層した膜の上に、前記低屈折率物質より屈折率が低い超低屈折率物質を、ウエットコートによって最表層に積層する第2成膜工程と、
を備える反射防止膜の成膜方法であり、
前記基板から11番目の層の光学膜厚は、前記反射防止膜の全体の光学膜厚の4%以下とすることを特徴とする反射防止膜の成膜方法。 - 前記第1成膜工程においては、真空蒸着、IAD、プラズマによるアシスト、スパッタリング、又はイオンビームスパッタによって成膜することを特徴とする請求項9に記載の反射防止膜の成膜方法。
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