JP6202714B2 - 薄膜トランジスタ素子の製造方法及び塗布型半導体層のパターニング方法 - Google Patents
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Description
有機デバイスは有機材料を用いているため、無機デバイスに比べ柔軟な構造を備え、比較的低温プロセスで作製することが可能である。特に、半導体材料をはじめ、絶縁材料、配線などを有機溶媒に溶かし溶液状にすることで、様々な塗布プロセス(スピンコート、ディップコート、印刷法やインクジェット法など)を利用することが可能となり、低コストで様々な応用デバイスを作製でき、また大面積化への展開も容易となる可能性がある。さらに有機デバイスは軽量でフレキシブルなため、様々な携帯端末やディスプレイ、ICタグなど幅広い装置に適用が可能である。
例えば非特許文献1〜3に記載のトランジスタでは、塗布型の低分子系半導体を可溶化した材料をsolution searing、ディップコーティング或いはインクジェット印刷法を用いて成膜し、その結晶成長や方位を制御することで移動度が飛躍的に向上する例を報告している。
薄膜トランジスタをディスプレイやセンサなどのアクティブ駆動に応用する場合では、チャネル長を10μm以下に微細化した素子を製造することが求められる。そして、素子間の不要な漏れ電流を抑制し、素子のオフ電流を低下させるには100μm以下の微細なエリアに半導体膜をパターニング形成する必要がある。
なお、本発明の薄膜トランジスタは、低分子または低分子系材料にアルキル鎖などを付与して可溶化した半導体材料、並びに高分子型の有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタ素子により適しているが、これに限定されるものではなく、塗布型の酸化物半導体、金属酸化物材料、カーボンナノチューブ、及びグラフェンなどを用いた薄膜トランジスタ素子にも適用可能な技術である。
以上のような本発明者らの検討結果及び知見に基づきなされた本発明の要旨は以下の通りである。
[2]上記[1]に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法において、前記半導体材料が、有機半導体または無機酸化物半導体であることを特徴とする。
[3]上記[1]または[2]に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法において、前記半導体溶液に対する前記半導体材料の濃度が、2重量%以下であることを特徴とする。
[4]上記[1]〜[3]の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法において、前記フッ素化処理が、含フッ素ガスを用いたプラズマ処理であることを特徴とする。
[5]上記[1]〜[4]の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法において、前記フッ素化処理によるエッチング深さを2nm以下に制限することを特徴とする。
[6]上記[1]〜[5]の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法において、前記焼成の温度が、前記半導体材料の沸点の1/2以下であることを特徴とする。
[8]上記[7]に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法において、前記パターニング用基板の表面がフッ素樹脂によりコーティングされ、かつ前記パターニング用基板の水接触角が105°以上であることを特徴とする。
[9]上記[7]または[8]に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法において、前記パターニング基板を前記半導体溶液上に配置した後、前記半導体溶液を塗布した前記基板を前記焼成を行う装置に設置するとともに、前記パターニング基板を水平方向にスライドさせることを特徴とする。
[10]上記[7]〜[9]の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法において、前記パターニング基板をスライドさせる速度を100mm/秒以下とすることを特徴とする。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
また、以下の各実施形態において説明する薄膜トランジスタ素子はいずれもボトムゲート・ボトムコンタクト型構造のものであるが、本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造に限らず、ボトムゲート・トップコンタクト型構造やトップゲート型構造の薄膜トランジスタの製造方法としても適用可能である。
「第1実施形態」
まず、第1実施形態に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法について図1〜図2Dを参照しながら説明する。図1〜図2Dは、本実施形態である薄膜トランジスタ素子の断面模式図であるが、薄膜トランジスタ素子10の特徴部分を見易くするために、一部の構成を省略して示している。また、図2A〜図2Dのそれぞれは、本実施形態に係る薄膜トランジスタ素子10の製造方法を説明するための概略図であり、各工程における断面模式図を示す。
本実施形態に係る薄膜トランジスタ素子10の製造方法は、基板11上に作製される薄膜トランジスタの製造方法であって、絶縁膜13上に活性領域となる塗布型半導体層17(単に、半導体層17ともいう)を形成する際において、水接触角が60°〜80°である絶縁膜13にフッ素化処理を施すことにより水接触角が80°〜110°である疎水性領域16を形成する工程と、絶縁膜13上に、半導体材料を有機溶媒に溶解させた半導体溶液17aを塗布し、その後焼成することで、自己組織的に活性領域と非活性領域とをパターニングする工程と、をこの順に備え、絶縁膜13及び疎水性領域16それぞれの水接触角の差を20°〜30°の範囲内とすることを特徴とする。
以下、本実施形態に係る薄膜トランジスタ素子10の製造方法について詳細に説明する。
絶縁膜13の材料は塗布形成が可能で、かつ濡れ性が良好な絶縁膜材料を用い、ポリマー絶縁膜材料を用いることが好ましい。例えば、シクロオレフィンポリマーまたはその誘導体、シクロオレフィン類をモノマーとして合成される主鎖に脂環構造を有するポリマー、メタクリル樹脂(PMMA)またはその誘導体、ポリカーボネート樹脂(PC)またはその誘導体、ポリビニルフェノール樹脂(PVP)またはその誘導体、またこれらポリマー樹脂と無機材料のハイブリッド絶縁材料などを用いることができる。
ここで、本実施系形態では、絶縁膜13上に塗布型半導体層17を形成(パターニング)する前にあらかじめ、塗布型半導体層17の形成領域以外の領域(非形成領域)に対してフッ素化処理施して非形成領域の疎水化を行うことで疎水性領域16を形成する。そうした上で塗布型半導体層17の材料である半導体溶液17aを塗布する。そのため、塗布型半導体層17の形成領域は絶縁膜13の本来の特性を持った領域となるため、絶縁膜13は濡れ性に良好な材料を用いることが好ましい。また、塗布型半導体層17の非形成領域はフッ素化処理を施すため、非形成領域の表面が粗くなるおそれがある。そのため、絶縁膜13はフッ素化処理に対して耐性を備えたものを用いることが好ましい。これらの観点より、絶縁膜13として、特に、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィン誘導体を用いることがより好ましい。
絶縁膜13の成膜厚さは、特に限定されないが、好ましくは50〜500nm、より好ましくは50〜200nmである。
なお、絶縁膜13上に形成する塗布型半導体層16の積層性を向上させる観点から、絶縁膜13の水接触角を75°以下とすることが好ましい。一方、絶縁膜13の水接触角が過度に小さいと塗布型半導体層17の分子配向および結晶性が悪くなるおそれがあるため、絶縁膜13の水接触角を50°以上とすることが好ましい。
ソース電極14及びドレイン電極15は、薄膜トランジスタの出力電極であり、導電性材料から構成することができる。ソース電極14及びドレイン電極15の材料としては、例えば、金、銀、ニッケルなどの金属コロイド粒子を分散させた溶液若しくは銀などの金属粒子を導電材料として用いたペーストが挙げられる。また、例えば、金属や合金、透明導電膜材料を、全面にスパッタ法や蒸着法等によって成膜後、レジスト材料を用い、フォトリソグラフィー法やスクリーン印刷法で所望のレジストパターンを形成した後、酸等のエッチング液でエッチングすることにより所望のパターンを形成することができる。また、金属や合金、透明導電膜材料を、マスクを用いてスパッタ法や蒸着法で直接所望のパターンを形成することもできる。これらスパッタ法や蒸着法に使用できる金属材料としては、アルミニウム、モリブデン、クロム、チタン、タンタル、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウム等が、透明導電膜材料としてはITO等が挙げられる。
まず、ソース電極14及びドレイン電極15を作製した絶縁膜13上に、薄膜トランジスタのチャネル領域となる領域(塗布型半導体層17の形成領域)のみをカバーする形でポジレジスト膜(不図示)をパターン形成する。
次に、フッ素化処理を施し、絶縁膜13の表面のうち、ポジレジスト膜によりカバーされていない露出された領域(非形成領域)の表面をフッ素化し、図2Bに示すように疎水性領域16を形成する。疎水性領域16を形成した後は、ポジレジスト膜を有機溶剤を用いて剥離、除去する。
フッ素化処理としては例えば、含フッ素ガスを用いたプラズマ処理を採用することができ、この場合に用いるガスとしてCF4ガスを例示できる。
具体的に説明すると、まず、本実施形態では、チャネル領域となる領域にのみ半導体層17を形成することから、半導体層17の非形成領域へはフッ素化処理を施し疎水性領域16とし、チャネル領域の形成領域と非形成領域である疎水性領域16とにパターニングする。このように、非形成領域を疎水化することにより、半導体溶液17aを塗布した際に、半導体層17の形成領域は絶縁膜13が備えている濡れ性が良好であることと、非形成領域には疎水性を付与したことから、半導体溶液17aは半導体層17の形成領域へ自発的に凝集する。しかしながら、疎水性領域16へのプラズマ照射によるエッチング量が多いと、絶縁膜13表面上に生じるエッチング溝による段差が大きくなり、この大きな段差が半導体溶液17aの自発的な凝集を阻害し、その結果、半導体層17のパターニング性が劣化してしまうおそれがある。
このようなことから、本実施形態では、プラズマ照射によって生じるエッチング溝の深さを小さく抑制することが好ましい。より具体的には、エッチング深さを2nm以下に制限することがより好ましい。さらに具体的には半導体層17として用いる半導体材料の分子長に匹敵する、或いはこれ以下のエッチング深さとすることが望ましい。
また、このようにエッチング溝の深さを小さくするためには、プラズマを照射する際の出力(パワー)を小さくし、またプラズマの照射時間を短くすることで達成できる。なお、プラズマ照射の好ましい条件は用いる照射機器によって若干変動するが、パワーを25〜100Wの範囲、またプラズマの照射時間を10〜30秒の範囲とすることが好ましい。
このように、活性領域となる半導体層17の形成領域である絶縁膜13と非活性領域となる疎水性領域16それぞれの水接触角の差を20°〜30°とすることにより、効率的に半導体溶液17aの自発的な凝集を促すことができるとともに、微細な領域への半導体層16のパターニング精度を高めることができる。その結果、薄膜トランジスタ素子の特性を向上させることができる。
まず、図2Cに示すように、上記フッ素化処理により表面の塗れ性・疎水性が制御された絶縁膜13上に、半導体溶液17aを塗布する。
半導体溶液17aとしては半導体材料を有機溶媒に溶解させたものを用いる。なお、塗布法によって半導体層17を成膜するため、用いる半導体材料は有機溶媒に溶解可能で塗布型のものであれば特に限定しないが、有機半導体や無機酸化物半導体を用いることができる。具体的には、低分子系の有機半導体材料にアルキル鎖などを付与して可溶化した半導体材料、高分子型の有機半導体材料、塗布型の酸化物半導体、金属酸化物材料、その他カーボンナノチューブやグラフェンなどを分散させた溶液を用いることができる。なお、半導体層17の結晶方位の制御ならびに半導体材料の可溶性の観点から、低分子系の有機半導体材料或いは結晶性の高い半導体溶液を用いることが好ましい。
半導体溶液17aは、上記したような半導体材料を有機溶媒に溶解させることで得ることができる。なお、半導体溶液17に対する半導体材料の濃度が高すぎると、半導体溶液17aを焼成し結晶化させる際に、疎水性領域16でも結晶が析出するおそれがあるため、半導体溶液17aに対する半導体材料の濃度を2重量%以下とすることが好ましい。
また、半導体層17の膜厚については特に限定しないが、半導体溶液17aの塗布量によって制御することができる。なお、半導体層17の膜厚を制御する方法としては、予め半導体溶液17a中にスペーサーを混合して上で絶縁膜13上に塗布する方法も挙げられる。
焼成する温度が高すぎると、半導体溶液17aを焼成し結晶化させる際に、疎水性領域16でも結晶が析出し、活性領域と非活性領域とのパターニング精度が劣化するおそれがあるため、焼成温度は、用いる半導体材料の沸点の1/2以下とすることが好ましい。
なお、上記で説明した塗布型半導体層のパターニング方法は、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する薄膜トランジス素子における塗布型半導体層17のパターニング方法であるが、上記のパターニング方法を、例えばトップゲート型構造の薄膜トランジス素子において適用する場合は、塗布型半導体層17を形成する前に、別途ゲート絶縁膜13とは異なる絶縁膜を基板11上に形成することにより、薄膜トランジスタ素子を製造することが可能となる。
次に、第2実施形態に係る薄膜トランジスタ素子20の製造方法について図3A〜図3Dを参照しながら説明する。図3A〜図3Dは、本実施形態である薄膜トランジスタ素子20、20´の断面模式図であるが、この薄膜トランジスタ素子20、20´の特徴部分を見易くするために、一部の構成を省略して示している。なお、図3A〜図3Dは第1実施形態と同様のボトムゲート・ボトムコンタクト型のトランジスタ素子であり、第1実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して示している。
本実施形態に係る薄膜トランジスタ素子20、20´の製造方法は、上記第1実施形態における半導体溶液17aの塗布する工程までは同様であるため、それ以降の工程について詳細に説明することとする。
その後、第1実施形態と同様の焼成工程を行い有機溶媒を蒸発させることで、図3Bに示すように、活性領域となる領域に塗布型半導体層27を形成することができ、活性領域と非活性領域とにパターニングすることができる。また、本実施形態のように、半導体溶液17a上に大きな疎水性を有するパターニング用基板18を配置することにより、より効率的に半導体溶液17aを自発的に凝集させることができるとともに、半導体溶液17aを基板11の表面全体に均一な厚みに引き延ばし薄膜化させることができる。
また、パターニング基板18の疎水性を大きくして半導体溶液17aの自発的な凝集を促すという観点から、パターニング用基板18の水接触角が105°以上であることが好ましい。
このように、パターニング基板18を水平方向にスライドさせながら焼成工程を行うことにより、パターニング基板18のスライド移動によって半導体溶液17aの表面が徐々に露出するため、露出された半導体溶液17a表面から順に焼成されて結晶化するとともに、結晶化した半導体溶液17aを半導体層27´の形成領域へ凝集させて塗布型半導体層27´を形成することができる。
次に、第3実施形態に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法について図4A〜図4Cを参照しながら説明する。図4A〜図4Cは、本実施形態である薄膜トランジスタ素子30の断面模式図であるが、この薄膜トランジスタ素子30の特徴部分を見易くするために、一部の構成を省略して示している。なお、図4A〜図4Cは第1実施形態と同様のボトムゲート・ボトムコンタクト型のトランジスタ素子であり、第1実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して示している。
本実施形態に係る薄膜トランジスタ素子30の製造方法は、上記第1実施形態における半導体溶液の塗布する工程までは同様であるため、それ以降の工程について詳細に説明することとする。
次に、図4Cに示すように、半導体溶液17aを加熱・焼成する前に、基板11を水平方向に対して傾斜させることにより、半導体溶液17aを半導体層37の形成領域(疎水性領域16以外の領域)に凝集させるとともに半導体溶液17aに傾斜を持たせる。
次に、基板11を傾斜された状態で基板11を加熱、焼成する。これにより、空気に触れた半導体溶液17aの表面から有機溶剤が蒸発し始め、半導体溶液17aの傾斜方向に沿った方位に結晶が析出する。
つまり、図4Cに示すように、基板11を接地面Gに対し、傾斜角度がθとなるよう傾斜させ、半導体溶液17aを半導体層37の形成領域に凝集させるとともに半導体溶液17aに角度θの傾斜を持たせる。そしてこの状態で、凝集させた半導体溶液17aを焼成することにより、傾斜角度θを備えた結晶化した半導体層37を得ることができる。
また、基板11を傾斜させる工程と焼成工程を同時に行うこともできる。傾斜させる工程と焼成工程を同時に行うことにより、半導体溶液17aが基板11の傾斜方向に沿って流動していくと同時に、この流動方向と同一方向に半導体溶液17aの結晶化が進むこととなる。なお、基板11を傾斜させる工程と焼成工程を同時に行う際は、半導体溶液17aが非形成領域16で焼成されないよう、焼成温度を、用いる半導体材料の沸点の1/2以下とすることが好ましい。
次に、第4実施形態に係る薄膜トランジスタ素子40の製造方法について説明する。なお、本実施形態についても、第1実施形態と同様のボトムゲート・ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタ素子について説明することとし、第1実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して説明する。
ここで、半導体層の結晶方位を制御する方法として上記第3実施形態では基板11を傾斜させる手法について説明したが、本実施形態では、半導体溶液17aを塗布した後に、基板11の側面方向から気体を吹き付ける方法を採用する。
つまり、半導体溶液17aを塗布した後に基板11の側面方向から気体を吹き付けることにより、基板11上の半導体溶液を半導体層の形成領域に凝集させるとともに、気体の風圧によって半導体溶液に傾斜した分布を持たせる。この状態で基板11を加熱、焼成すると、半導体溶液17aの傾斜方向に沿った方位に結晶が析出し、基板11に対して傾斜した半導体層37を得ることができる。
なお、吹き付ける気体は特に限定せず、空気や不活性ガス等を例示できる。また、吹き付ける際の流量等の条件は半導体溶液17aが基板11から零れ落ちない程度に適宜調整してよい。
まず、プラスチック基板上にモリブデンからなるゲート電極52をスパッタ法により成膜した。ゲート電極52の膜厚は50nmとした。
次に、シクロオレフィンポリマー(COP;日本ゼオン社製)からなる絶縁膜をスピンコート法により200nmの厚みとなるよう成膜した。当該絶縁膜の表面の水接触角を測定したところ70°であった。
次に、絶縁膜上に、金からなるソース電極54と、金からなるドレイン電極55を蒸着・フォトリソグラフィーを用いて形成した。
次に、フッ素化処理として含フッ素ガスを用いたプラズマ処理を施し、ポジレジスト膜により覆われていない露出された絶縁膜の表面をフッ素化し疎水性領域を形成した。本実施例ではCF4ガスを用い、出力を25W〜100Wの低出力範囲、処理時間を10秒〜30秒の範囲でプラズマ処理した。得られた疎水性領域の表面の水接触角を測定したところ98°〜100°であった。また、フッ素化処理によって形成された疎水性領域のエッチング溝の深さを測定したところ2nm以下であった。
その後、ポジレジスト膜を有機溶剤を用いて剥離した。
まず、上記フッ素化処理により表面の塗れ性・疎水性が制御された絶縁膜上に、半導体溶液を塗布する。半導体溶液としては、(低分子有機半導体層)を、濃度が2重量%となるよう有機溶媒に溶解させたものを用いた。半導体溶液の塗布量は20〜30μlとした。
次に、絶縁膜上に塗布した半導体溶液上に、フッ素ポリマー(Cytоp)を表面コーティングした超疎水性(水接触角110°)のプラスチック基板(パターニング用基板)を基板方向に押し当てるように配置し、半導体溶液を基板表面全体に行き渡るよう引き延ばした。さらに、この状態で、基板を加熱されたホットプレート上に設置するとともに、半導体溶液上に配置したパターニング用基板を10mm/秒の等速度でスライドさせた。これにより、半導体溶液の表面が徐々に露出し、露出された表面から順に焼成されて結晶化するとともに、結晶化した半導体溶液を半導体層の形成領域へ凝集させ、塗布型半導体層57を形成することができた。
また、本実施例に係る薄膜トランジスタ素子の電気特性(ドレイン電流(Id)―ゲート電圧(Vg)特性)のグラフを図6に示す。なお、図6中の「1.E−x」は、1.0×10−xを意味する。また、図6中の横軸はゲート電圧Vg(V)、縦軸はドレイン電流Id(A)である。
本実施例では、半導体層を微細にパターニングできるため、1.0pA(1.0×10−12A)以下の低いオフ電流と高いオン・オフ比を実現することができた。
11・・・基板
12,52・・・ゲート電極
13・・・絶縁膜
14,54・・ソース電極
15,55・・・ドレイン電極
16・・・疎水性領域
17,27,27´,37,47,57・・・塗布型半導体層(半導体層)
17a・・・半導体溶液
18・・・パターニング用基板
θ・・・傾斜角度
G・・・接地面
Claims (13)
- 基板上に作製される薄膜トランジスタの製造方法であって、
絶縁膜上に活性領域となる塗布型半導体層を形成する際において、
水接触角が60°〜80°である前記絶縁膜にフッ素化処理を施すことにより水接触角が80°〜110°である疎水性領域を形成する工程と、
前記絶縁膜上に、半導体材料を有機溶媒に溶解させた半導体溶液を塗布し、その後焼成することで、自己組織的に活性領域と非活性領域とをパターニングする工程と、
をこの順に備え、
前記絶縁膜が、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィン誘導体であり、前記絶縁膜及び前記疎水性領域それぞれの水接触角の差を20°〜30°の範囲内とすることを特徴とする薄膜トランジスタ素子の製造方法。 - 前記半導体材料が、有機半導体または無機酸化物半導体であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記半導体溶液に対する前記半導体材料の濃度が、2重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記フッ素化処理が、含フッ素ガスを用いたプラズマ処理であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記フッ素化処理によるエッチング深さを2nm以下に制限することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記焼成の温度が、前記半導体材料の沸点の1/2以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記絶縁膜上に塗布した前記半導体溶液を焼成する前に、前記疎水性領域が有する疎水性以上の疎水性を備えたパターニング用基板を、前記半導体溶液上に配置することにより、前記半導体溶液を前記基板の表面全体に均一な厚みに引き延ばし薄膜化させることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記パターニング用基板の表面がフッ素樹脂によりコーティングされ、かつ前記パターニング用基板の水接触角が105°以上であることを特徴とする請求項7に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記パターニング基板を前記半導体溶液上に配置した後、前記半導体溶液を塗布した前記基板を前記焼成を行う装置に設置するとともに、前記パターニング基板を水平方向にスライドさせることを特徴とする請求項7または8に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記パターニング基板をスライドさせる速度を100mm/秒以下とすることを特徴とする請求項7〜9の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記絶縁膜上に塗布した前記半導体溶液を焼成する前に、前記基板を水平方向に対して傾斜させて前記半導体溶液を前記疎水性領域以外の領域に凝集させ、凝集させた前記半導体溶液に傾斜を持たせることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 前記絶縁膜上に塗布した前記半導体溶液を焼成する前に、前記基板の側面から気体を吹き付けて前記半導体溶液を前記疎水性領域以外の領域に凝集させ、凝集させた前記半導体溶液に傾斜を持たせることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
- 絶縁膜上に塗布型半導体層をパターニングする方法であって、
水接触角が60°〜80°である前記絶縁膜にフッ素化処理を施すことにより水接触角が80°〜110°である疎水性領域を形成する工程と、
前記絶縁膜上に、半導体材料を有機溶媒に溶解させた半導体溶液を塗布し、その後焼成することで、自己組織的に前記塗布型半導体層をパターニングする工程と、
をこの順に備え、
前記絶縁膜が、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィン誘導体であり、前記絶縁膜と前記疎水性領域との水接触角の差を20°〜30°の範囲内とすることを特徴とする塗布型半導体層のパターニング方法。
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