JP6201461B2 - 分極処理装置 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、コロナワイヤ電極を用いた分極処理装置で、従来よりも分極処理時間を短縮化することを目的とする。
「液滴」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、樹脂、液体などと称されるものを含み、画像形成を行うことが可能に微細粒状化して液滴にできる全ての液体の液滴の総称として用いる。また、「記録媒体」とは、材質を紙に限定するものではなく、OHPシート、布なども含み、液滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録紙、記録用紙、使用可能な薄紙から厚紙、はがき、封筒あるいは単に用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、画像とは2次元画像に限らず、3次元画像も含まれる。
このとき、下部電極42および第3の電極47を共通電極、上部電極44および第4の電極48を個別電極として、共通電極、個別電極を保護する第2の絶縁保護膜49が形成され、その一部が開口されて電極パッド(PAD)として構成されている。共通電極用に作製されたものを共通電極パッド50、個別電極用に作製されたものを個別電極パッド51としている。
図5に示すように、コロナ帯電処理装置1は、サンプルステージ4と、コロナワイヤ電極2とグリッド電極3とを備えている。サンプルステージ4は、後述する図11に示すウェハ56で提供されるサンプル55をセットするためのものであり、サンプルステージ4自体に電圧印加が可能となっている。コロナワイヤ電極2とグリッド電極3とは、サンプルステージ4上にセットされたサンプル55(図11参照)に対向して設けられ、サンプル55に多数形成された電気機械変換素子部40Aに対してコロナ放電を行うものである。
すなわち、コロナワイヤ電極2へのコロナ電圧の印加は、コロナ電源7によりなされる。グリッド電極3へのグリッド電圧の印加は、グリッド電源8によりなされる。また、サンプルステージ4へのステージ電圧の印加は、ステージ電源9によりなされる。
また、サンプルステージ4側も印加電圧の調整が可能であると共に、サンプルステージ4自体を変えることにより電圧印加領域を変更することや、サンプルステージ4に対する加熱が可能になっている。サンプルステージ4を加熱する加熱手段としては、例えば温度調節機能が付加された電熱ヒータなどが用いられる。
例えば、図6(b)のように、ここで分極率Pr−Piniが10μC/cm2以下となっていることが好ましく、5μC/cm2以下となっていることがさらに好ましい。この値に満たない場合は、PZTの圧電アクチュエータとして連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない。
ここで、サンプルステージ4の電圧をコロナワイヤ電極2の電圧と逆極性に印加した際の分極処理に要した時間を図9に示す。なお、図9や後述する表1等では、サンプルステージを単に「ステージ」と記載することとする。図9より、サンプルステージを逆極性にしたことによって分極処理の効率が上がり、処理時間が短縮されていることが分かる。また、このとき電気機械変換膜中のクラック発生等の不具合も起きなかった。
(基板)
図1、図3、図4等に示した基板20としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に面方位(100)、(111)が広く使用されている。本構成においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図1に示すような圧力室21を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは、結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。
従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝を掘ることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。この点から、本構成としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiO2もエッチングされてしまうということが挙げられるため、この辺りも留意して利用している。
図1に示したように電気機械変換膜43によって発生した力を受けて、下地となる振動板30が変形変位して、圧力室21のインク滴を吐出させる。そのため、下地としては所定の強度を有したものであることが好ましい。材料としては、Si、SiO2、Si3N4をCVD法により作製したものが挙げられる。さらに図1に示すような下部電極42、電気機械変換膜43の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、電気機械変換膜としては、一般的に材料としてPZTが使用されることから線膨張係数8×10−6(1/K)に近い線膨張係数として、5×10−6〜10×10−6の線膨張係数を有した材料が好ましく、さらには7×10−6〜9×10−6の線膨張係数を有した材料がより好ましい。具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウムおよびそれらの化合物等であり、これらをスパッタ法もしくは、Sol−gel(ゾルゲル)法を用いてスピンコータにて作製することができる。膜厚としては0.1〜10μmが好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと図1に示すような圧力室21の加工が難しくなり、この範囲より大きいと下地(振動板30)が変形変位しにくくなり、インク滴の吐出が不安定になる。
図1、図3等に示した第1の電極としての下部電極42としては、金属もしくは金属と酸化物から成っていることが好ましい。ここで、どちらも振動板30と金属膜から成る下部電極42の間に密着層(図示せず)を入れて剥がれ等を抑制するように工夫している。以下に密着層(図示せず)を含めて金属電極膜、酸化物電極膜の詳細について記載する。
密着層の形成は、Tiをスパッタ成膜後、RTA(Rapid Thermal Annealing:急速熱処理)装置を用いて、650〜800℃、1〜30分、O2雰囲気でチタン膜を熱酸化して、チタン膜を酸化チタン膜にする。酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいがチタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とする。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方がチタンO2膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTAによる酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。またTi以外の材料としてはTa、Ir、Ru等の材料でも好ましい。
膜厚としては、10nm〜50nmが好ましく、15nm〜30nmがさらに好ましい。この範囲以下の場合においては、密着性に懸念があるのと、この範囲以上になってくるとその上で作製する電極膜の結晶の質に影響が出てくる。
金属材料としては従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これら合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO2)との密着性が悪いために、先の密着層を先に積層することが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80〜200nmが好ましく、100〜150nmがより好ましい。この範囲より薄い場合においては、共通電極として十分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。さらにこの範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる点や、白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、インク吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生する。
材料としてはSrRuO3を用いることが好ましい。左記以外にも、Srx(A)(1−x)Ruy(1−y)、A=Ba、Ca、 B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述されるような材料についても挙げられる。成膜方法についてはスパッタ法により作製される。スパッタ条件によってSrRuO3薄膜の膜質が変わるが、特に結晶配向性を重視し、下部電極(第1の電極)となるPt(111)にならってSrRuO3膜についても(111)配向させる。そのためには、成膜温度については500℃以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
Pt(111)上に作製したSRO結晶性については、PtとSROで格子定数が近いため、通常のθ−2θ測定では、SRO(111)とPt(111)の2θ位置が重なってしまい判別が難しい。Ptについては消滅則の関係からPsi=35°傾けた2θが約32°付近の位置には回折線が打ち消し合い、回折強度が見られない。そのため、Psi方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することでSROが(111)に優先配向しているかを確認することができる。図10に、2θ=32°に固定し、Psiを振ったときのデータを示す。Psi=0°ではSRO(110)ではほとんど回折強度が見られず、Psi=35°付近において、回折強度が見られることから本成膜条件にて作製したものについては、SROが(111)配向していることが確認できた。また、上述記載の室温成膜+RTA処理により作製されたSROについては、Psi=0°のときにSRO(110)の回折強度が見られる。
成膜後のSrとRuの組成比については、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。この範囲から外れると比抵抗が大きくなり、電極として十分な導電性が得られなくなる。
さらにSRO膜の膜厚としては、40nm〜150nmが好ましく、50nm〜80nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない点やPZTのオーバーエッチングを抑制するためのストップエッチング層としての機能も得られにくくなる。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。また比抵抗としては、5×10−3Ω・cm以下になっていることが好ましく、さらに1×10−3Ω・cm以下になっていることがさらに好ましい。この範囲よりも大きくなると共通電極として、第5の電極との界面で接触抵抗が十分得られず、共通電極として十分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。
図1、図3、図4等に示した電気機械変換膜43の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbZrO3)とチタン酸鉛(PbTiO3)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrO3とPbTiO3の比率が53:47の割合のときであり、化学式で示すと、Pb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般にPZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr、B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O3、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
PZTをSol−gel法により作製した場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ことで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加しても良い。
下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
また比誘電率としては600以上2000以下になっていることが好ましく、さらに1200以上1600以下になっていることが好ましい。このとき、この値を満たないときには十分な変位特性が得られず、この値より大きくなると、分極処理が十分行われず、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生する。
図1、図3等に示した第2の電極としての上部電極44としては、金属もしくは酸化物と金属から成っていることが好ましい。以下に酸化物電極膜、金属電極膜の詳細について記載する。
酸化物電極膜:
酸化物電極膜の材料等については第1の電極で使用した酸化物電極膜で記載しており、SRO膜の膜厚としては、20nm〜80nmが好ましく、40nm〜60nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や変位劣化特性については十分な特性が得られない。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
金属電極膜の材料等については第1の電極で使用した金属電極膜で記載しており、膜厚としては30〜200nmが好ましく、50〜120nmがさらに好ましい。この範囲より薄い場合においては、個別電極として十分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。さらにこの範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる点や白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して第3、第4の電極を作製する際に、膜剥がれ等のプロセス不具合が発生しやすくなる。
図4に示した第1の絶縁保護膜45の形成は、成膜・エッチングの工程による圧電素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、緻密な無機材料とする必要がある。有機材料では十分な保護性能を得るためには膜厚を厚くする必要があるため、適さない。絶縁膜を厚い膜とした場合、振動板の振動変位を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低いインクジェットヘッドなってしまうことが要因である。
薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物、窒化物、炭化膜を用いるのが好ましいが、絶縁膜の下地となる、電極材料、圧電体材料、振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、成膜法も圧電素子を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法やプラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD法などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。好ましい材料としては、Al2O3,ZrO2,Y2O3,Ta2O3,TiO2などのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特にALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制しようとしている。
また、第1の絶縁保護膜を2層にする構成も考えられる。この場合は、2層目の絶縁保護膜を厚くするため、振動板の振動変位を著しく阻害しないように第2の電極部付近において2層目の絶縁膜を開口するような構成も挙げられる。このとき2層目の絶縁膜としては、任意の酸化物、窒化物、炭化物またはこれらの複合化合物を用いることができるが、半導体デバイスで一般的に用いられるSiO2を用いることができる。成膜は任意の手法を用いることができ、CVD法,スパッタリング法が例示でき、電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。2層目の絶縁保護膜の膜厚は下部電極と個別電極配線に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚とする必要がある。すなわち絶縁膜に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらに、2層目の絶縁保護膜の下地の表面性やピンホール等を考慮すると膜厚は200nm以上必要であり、さらに好ましくは500nm以上である。
図4に示した第3の電極47、第4の電極48としては、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Irの何れかから成る金属電極材料であることが好ましい。作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。膜厚としては、0.1μm〜20μmが好ましく、0.2μm〜10μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと抵抗が大きくなり電極に十分な電流を流すことができなくなりヘッド吐出が不安定になり、この範囲より大きいとプロセス時間が長くなる。
また、共通電極、個別電極としてコンタクトホール部(10μm×10μm)での接触抵抗として、共通電極としては10Ω以下、個別電極としては1Ω以下が好ましく、さらに好ましくは、共通電極としては5Ω以下、個別電極としては0.5Ω以下である。この範囲を超えると十分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。
図4に示した第2の絶縁保護膜49としての機能は個別電極配線や共通電極配線の保護層の機能を有するパシベーション層である。図4に示す通り、個別電極引き出し部と図示しない共通電極引き出し部を除き、個別電極と共通電極上を被覆する。これにより電極材料に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高いインクジェットヘッドとすることができる。材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、後述のパターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上にSi3N4を用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。また、膜厚は200nm以上とすることがこのましくさらに好ましくは500nm以上である。膜厚が薄い場合は十分なパシベーション機能を発揮できないため、配線材料の腐食による断線が発生し、インクジェットの信頼性を低下させてしまう。
開口部分の形成には、フォトリソグラフィ法とドライエッチングを用いることが、第1の絶縁膜保護膜および第2の絶縁膜保護膜で圧電素子が保護されているため可能である。またパッド部の面積については、50×50μm2以上になっていることが好ましく、さらに100×300μm2以上になっていることが好ましい。この値に満たない場合は、十分な分極処理ができなくなり、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生する。
(実施例1)
図4に示した基板20となる6インチのシリコンウェハに、熱酸化膜(膜厚1μm)を形成し、下部電極42を形成するための密着膜として、チタン膜(膜厚30nm)をスパッタ装置にて成膜した後に、RTAを用いて750℃にて熱酸化した。これに、引き続き、金属膜として白金膜(膜厚100nm)、酸化物膜としてSrRuO膜(膜厚60nm)をスパッタ成膜した。スパッタ成膜時の基板20の加熱温度については550℃にて成膜を実施した。次に電気機械変換膜43としてPb:Zr:Ti=114:53:47に調整された溶液を準備し、スピンコート法により膜を成膜した。
具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5モル/リットルにした。この液を用いて、スピンコートにより成膜し、成膜後、120℃乾燥→500℃熱分解を行った。3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度750℃)をRTA(急速熱処理)にて行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回(24層)実施し、約2μmのPZT膜厚を得た。
このようにして図4に示すように、電気機械変換素子40、第1の絶縁保護膜45、第2の絶縁保護膜49、共通電極パッド50、個別電極パッド51等を含む電気機械変換素子部40Aを作製した。
コロナ放電により分極処理される電気機械変換素子部40Aを含む試料は、図11(a)に示すように、ウェハ56内に多数の電気機械変換素子部40Aを形成されたサンプル55で提供される。電気機械変換素子部40Aは、図11(a)、図11(b)において、矩形状をなす白抜き部分として示されている。ウェハ56には、ウェハ56の向きを合わせてサンプルステージ4にセットするためのオリエンテーションフラットと呼ばれるオリフラ部56aが形成されている。
図11(b)に示すように、サンプルステージ4には、ウェハ56のオリフラ部56aおよび外周輪郭形状に合わせた凹みである凹部4aが形成されている。凹部4aの深さDは、ウェハ56の厚み以下に設定されている。
実施例1と同様にして、第2の絶縁保護膜49(図4参照)を形成した後、図11(a)に示すように、作製したウェハ56内に多数の電気機械変換素子部40Aを形成されたサンプル55に対して、図5に示すコロナ帯電処理装置1により分極処理を行った。実施例2は、実施例1と比較して、ステージ電源9によりサンプルステージ4に加えられる印加電圧を−500Vとした処理条件のみ相違する。
実施例1と同様にして第2の絶縁保護膜49(図4参照)を形成した後、図11(a)に示すように、作製したウェハ56内に多数の電気機械変換素子部40Aを形成されたサンプル55に対して、図5に示すコロナ帯電処理装置1により分極処理を行った。
実施例3は、実施例1、2と比較して、ウェハ56内に白抜き部で示す電気機械変換素子部40Aに対してのみ、ステージ電源9によりサンプルステージ4に加えられる印加電圧を−100Vとした処理条件のみ相違する。実施例1および2では、ウェハ56内に白抜き部で示す電気機械変換素子部40A以外のウェハ56全体に渡り、ステージ電源9によりステージ電圧が印加されていた。実施例3では、白抜き部で示す電気機械変換素子部40A以外のウェハ56にはステージ電圧が印加されておらず、表1に示すとおり、「フロート」状態になっている。
すなわち、実施例3では、ステージ電源9によりサンプルステージ4に印加されるステージ電圧の印加部分が、サンプルステージ4の逆極性電圧印加部分のパターンと、ウェハ56内に白抜き部で示す電気機械変換素子部40Aのパターン形状とが、ほぼ等しく設定されている。
実施例3によれば、実施例1と同様の効果を奏する他、電気機械変換素子部40Aのみに逆極性の電圧を印加することで、コロナワイヤ電極2から発生した電荷を選択的に注入しやすくできる、という効果を奏する。
実施例1と同様にして第2の絶縁保護膜49(図4参照)を形成した後、図11(a)に示すように、作製したウェハ56内に多数の電気機械変換素子部40Aを形成されたサンプル55に対して、図5に示すコロナ帯電処理装置1により分極処理を行った。実施例4は、実施例3と比較して、白抜き部で示す電気機械変換素子部40A上と白抜き部で示す電気機械変換素子部40Aに対応した以外の部位を独立に電圧印加できるサンプルステージを用いて電気機械変換素子部40Aを−100V、電気機械変換素子部40A以外を50Vで分極処理を行った。
実施例4で使用したサンプルステージは、実施例3で使用したサンプルステージ4に、さらに電気機械変換素子部40A以外の部分も金属電極の薄板を配置した点が異なる。各電極間は放電しないよう3mm離している。
実施例1と同様にして第2の絶縁保護膜49(図4参照)を形成した後、図11(a)に示すように、作製したウェハ56内に多数の電気機械変換素子部40Aを形成されたサンプル55に対して、図5に示すコロナ帯電処理装置1により分極処理を行った。実施例5は、実施例1と比較して、サンプルステージ4を80℃に加熱して分極処理を行った点のみ相違する。
実施例5によれば、実施例1と同様の効果を奏する他、サンプルステージ4を介した試料の加熱によって、電気機械変換膜を加熱することが可能となり、電気機械変換膜内の機械的、電気的な変化を促して分極処理の効率を向上させることができる。これにより、実施例5では分極処理時間において実施例1や3よりもやや短く、実施例2や4よりやや長い結果を得た。
実施例1と同様にして第2の絶縁保護膜49(図4参照)を形成した後、図11(a)に示すように、作製したウェハ56内に多数の電気機械変換素子部40Aを形成されたサンプル55に対して、図5に示すコロナ帯電処理装置1により分極処理を行った。比較例は、実施例1〜5と比較して、サンプルステージ4をアース接地(GND)し、室温(RT)で分極処理を行った点のみ相違する。処理条件の詳細と要した処理時間は、表1に記載したとおりであり、比較例では、処理時間において実施例1〜5程の短縮化を図ることができなかった。
1×1010回駆動後の特性においては、一般的なセラミック焼結体と同等の特性を有していた。
また、電気機械変換素子が簡便な製造工程で(かつ、バルクセラミックスと同等の性能を持つ)形成でき、その後の圧力室形成のための裏面からのエッチング除去、ノズル孔を有するノズル板を接合することで液滴吐出ヘッドができる。図1および図13では液体供給手段、流路、流体抵抗についての記述は略した。
本発明の適用分野としては、直接的には印刷分野、特にデジタル印刷分野が挙げられる。画像形成装置としては、マルチファンクション・プリンタ(以下、「MFP」という)を使用するデジタル印刷装置、オフィス、パーソナルで使用するプリンタ、MFPなどが挙げられる。また、応用分野としては、インクジェット技術を利用する三次元造型技術などにも適用可能である。
また、記録媒体としては、用紙105に限らず、使用可能な薄紙から厚紙、はがき、封筒、或いはOHPシート等まで、インクジェットヘッドを用いて画像形成可能な全ての記録媒体を含むものである。
2 コロナワイヤ電極
3 グリッド電極
4 サンプルステージ
7 コロナ電源
8 グリッド電源
9 ステージ電源
10 ノズル板
11 ノズル
20 基板(アクチュエータ基板の一例)
21 圧力室
30 振動板
40 電気機械変換素子
40A 電気機械変換素子部
41 密着層
42 下部電極(第1の電極の一例)
43 電気機械変換膜
44 上部電極(第2の電極の一例)
45 第1の絶縁保護膜
46 コンタクトホール
47 第3の電極
48 第4の電極
49 第2の絶縁保護膜
50 共通電極パッド
51 個別電極パッド
55 サンプル(試料の一例)
56 ウェハ
100 インクジェットヘッド記録装置(画像形成装置の一例)
100A 記録装置本体
101 キャリッジ
102 インクジェットヘッド・記録ヘッド(液滴吐出ヘッドの一例)
104 印字機構部
105 用紙(記録媒体)
Claims (6)
- 基板または下地膜上に金属もしくは金属と酸化物から成る第1の電極を形成し、該第1の電極上に電気機械変換膜を形成し、該電気機械変換膜上に金属もしくは金属と酸化物から成る第2の電極を形成することにより構成した電気機械変換素子を有するアクチュエータ基板上の前記電気機械変換素子に対して、コロナ放電により分極処理を行う分極処理装置において、
前記アクチュエータ基板上に形成された少なくとも前記電気機械変換素子を含む試料をセットするためのサンプルステージと、
前記サンプルステージ上にセットされた前記試料に対向して設けられ、前記コロナ放電を行うコロナワイヤ電極またはコロナワイヤ電極とグリッド電極と、を備え、
前記サンプルステージが、前記コロナワイヤ電極と逆極性の電圧を印加されていることを特徴とする分極処理装置。 - 請求項1記載の分極処理装置において、
前記サンプルステージの体積抵抗率が、セットされる前記試料の体積抵抗率以下であることを特徴とする分極処理装置。 - 請求項1または2記載の分極処理装置において、
前記サンプルステージの逆極性電圧印加部分のパターンと、前記アクチュエータ基板上の前記電気機械変換素子のパターン形状とが、ほぼ等しいことを特徴とする分極処理装置。 - 請求項3記載の分極処理装置において、
前記サンプルステージの逆極性電圧印加部分のパターンと、前記アクチュエータ基板上の前記電気機械変換素子のパターン形状とを一致させる手段として、前記試料形状に合わせた凹部形状を前記サンプルステージ側に設けるとともに、前記凹部の深さが前記試料の厚み以下であることを特徴とする分極処理装置。 - 請求項3または4記載の分極処理装置において、
前記サンプルステージの逆極性電圧印加部分以外の部位が、前記コロナワイヤ電極と同極性の電圧を印加されていることを特徴とする分極処理装置。 - 請求項1ないし5の何れか1つに記載の分極処理装置において、
前記サンプルステージは、加熱手段を有していることを特徴とする分極処理装置。
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