JP6198116B2 - 電気機械変換素子の製造方法、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 - Google Patents

電気機械変換素子の製造方法、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、電気機械変換素子の製造方法、その製造方法で製造される電気機械変換素子、その電気機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッド、その液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置及び画像形成装置に関するものである。
この種の電気機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドを有し、媒体を搬送しながらインク滴を用紙に付着させて画像形成を行うインクジェット記録装置で用いられている。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
従来、インクなどの液体の液滴を吐出するノズル孔と、このノズル孔に連通し液体を収容した液室(圧力室、加圧室、吐出室などとも称される。)と、その液室内の液体を加圧するための上記電気機械変換素子としての圧電素子とを備えた液滴吐出ヘッドが知られている。この液滴吐出ヘッドでは、圧電素子に所定の液滴吐出電圧が印加されることにより、液室の壁の一部を形成する振動板を変形させるように振動し、その振動板の変形により液室内の液体が加圧され、ノズル孔から液滴を吐出させることができる。
また。上記圧電素子を構成する圧電膜の結晶は、その圧電膜の作製直後で分極処理前では、図16(a)に示すように分極の向きがランダムな状態となっている。その後、分極処理を施すための分極電圧の印加を繰り返すことで、図16(b)に示すように圧電膜の結晶は、分極の向きが揃ったドメイン(分域)の集合体となってくる。この圧電膜の結晶における分極の向きは、圧電素子の分極特性及びその圧電素子を用いた液滴吐出ヘッドの特性の安定化のため、液滴吐出ヘッドの使用開始時から揃っていることが好ましい。
そこで、従来、液滴吐出ヘッドの使用開始前に、圧電素子の分極の向きを揃える分極処理を行う方法が知られている。例えば、特許文献1の電気機械変換素子の製造方法では、基板上に共通電極としての第1駆動電極を形成し、この第1駆動電極上に圧電材料を成膜して電気機械変換膜としての圧電膜を形成する。圧電膜の表面に、間隙を置いて対向するように、コロナ放電を発生させる電荷供給手段を配置する。そのコロナ放電により圧電膜の表面に電荷を供給する。これにより、圧電膜内に電位差を発生させて圧電膜の分極処理を行っている。
しかしながら、上記特許文献1の電気機械変換素子の製造方法では、圧電膜がコロナ放電により分極処理された後に、絶縁膜形成や配線形成などの後工程が行われる。これらの後工程では、例えば300℃を超える高い温度の熱処理が実施される。この熱処理が分極処理された圧電膜に対して実施されると、圧電膜が融解され再結晶され、圧電素子の分極の向きが揃っていない上記分極処理の前の状態に戻ってしまう虞がある。このため、分極処理を行ったにも関わらず、分極特性がばらついている各圧電素子を液滴吐出ヘッドに搭載した時に所定の駆動電圧に対する変位量が安定しない場合があった。電荷供給手段としては、上記コロナ放電以外にグロー放電を発生させるものでもよい。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は以下のとおりである。製造された電気機械変換素子間の分極特性のばらつきを低減することができる電気機械変換素子の製造方法、当該製造法によって製造され所望の分極特性を有する電気機械変換素子、当該電気機械変換素子を搭載し所望の液滴吐出特性を有する液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び高画質の画像を形成できる画像形成装置を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、基板上に、第1駆動電極、電気機械変換膜及び第2駆動電極が積層された構造を有する電気機械変換素子の製造方法において、基板上に第1駆動電極を形成する工程と、該第1駆動電極上に電気機械変換膜を形成する工程と、該電気機械変換膜上に第2駆動電極を形成する工程と、前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極上に第1絶縁保護膜を形成する工程と、前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極それぞれ電気的に接続された第1配線及び第2配線を前記第1絶縁保護膜上に形成する工程と、前記第1配線及び前記第2配線上に形成される膜であり、前記第1配線の一部及び前記第2配線の一部をそれぞれ露出させる複数の開口部を有する第2絶縁保護膜を形成する工程と、前記第2絶縁保護膜の前記複数の開口部によって露出する前記第1配線の露出部及び前記第2配線の露出部を介して、コロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極に供給することにより、前記電気機械変換膜を分極処理する工程とを有し、前記第1配線の露出部と前記第2配線の露出部とは、露出する面の面積に差があり、前記分極処理する工程では、コロナ放電もしくグロー放電により発生した電荷が単位面積辺り均一の電荷量で供給される電荷供給領域内に、前記第1配線の露出部と前記第2配線の露出部とを同時に位置させて、前記第1配線の露出部及び前記第2配線の露出部を介して前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極にコロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を供給し、前記電気機械変換膜を分極処理することを特徴とするものである。
本発明によれば、製造された電気機械変換素子間の分極特性のばらつきを低減することができる電気機械変換素子の製造方法、当該製造法によって製造され所望の分極特性を有する電気機械変換素子、当該電気機械変換素子を搭載し所望の液滴吐出特性を有する液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び高画質の画像を形成できる画像形成装置を提供できる、という特有な効果が得られる。
インクジェット記録装置の構成を示す斜視図である。 インクジェット記録装置の機構部の側面図である。 本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの基本構成部分である液滴吐出部の一構成例を示す概略構成図である。 基板上の振動板及び圧電素子の層構造の一例を示す断面図である。 圧電素子周辺の断面図である。 圧電素子周辺の平面図である。 (a)及び(b)はそれぞれ、分極処理前及び分極処理後の圧電素子のP−Eヒステリシスループ特性の測定例を示す特性図である。 分極処理装置の全体構成の一例を示す斜視図である。 コロナワイヤのワイヤ軸方向に対して直交する水平方向の距離に対する分極量差(Pr−Pini)の変化を示す特性図である。 分極処理装置における放電処理による圧電素子への電荷注入の様子を模式的に示す説明図である。 SrRuO膜を成膜した試料のX線回折測定結果を示す特性図である。 (a)は分離処理の実施例2を示す平面図であり、(b)は概略側面図である。 (a)は分離処理の実施例2を示す平面図であり、(b)は概略側面図である。 (a)は分離処理の比較例を示す平面図であり、(b)は概略側面図である。 複数の液滴吐出ヘッドを備えた構成を示す断面図である。 (a)は分極処理前における圧電膜の分域の様子を示す説明図。(b)は分極処理後における圧電膜の分域の様子を示す説明図である。
はじめに、本発明に係る液滴吐出ヘッドの一例であるインクジェット記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の構成について図面を参照して説明する。図1はインクジェット記録装置の構成を示す斜視図、図2はインクジェット記録装置の機構部の側面図である。
図1及び図2に示すインクジェット記録装置100は、印字機構部103等を収納している。印字機構部103等は装置本体の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ101に搭載した液滴吐出ヘッド1及び液滴吐出ヘッド1に対してインクを供給するインクカートリッジ102等で構成されている。そして、装置本体の下方部には前方側から多数枚の記録紙Pを積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)104を抜き差し自在に装着されている。また、記録紙Pを手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ105を有し、給紙カセット104あるいは手差しトレイ105から給送される記録紙Pを取り込み、印字機構部103によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ106に排紙する。
印字機構部103は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド107と従ガイドロッド108とでキャリッジ101を主走査方向に摺動自在に保持する。このキャリッジ101にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッド1を複数のインク吐出口(ノズル孔)を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ101には液滴吐出ヘッド1に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ102を交換可能に装着している。
インクカートリッジ102は上方に大気と連通する大気口、下方には液滴吐出ヘッド1へインクを供給する供給口が設けられている。内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド1へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液滴吐出ヘッド1としては各色毎に液滴吐出ヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液滴吐出ヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ101は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド107に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド108に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ101を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ109aで回転駆動される駆動プーリ110と従動プーリ111との間にタイミングベルト112を張装している。そして、このタイミングベルト112をキャリッジ101に固定し、主走査モータ109aの正逆回転によりキャリッジ101が往復に走査される。
一方、給紙カセット104にセットした記録紙Pを液滴吐出ヘッド1の下方側に搬送するために、給紙カセット104から記録紙Pを分離給装する給紙ローラ113及びフリクションパッド114と、記録紙Pを案内するガイド部材115とを有している。また、給紙された記録紙Pを反転させて搬送する搬送ローラ116と、この搬送ローラ116の周面に押し付けられる搬送コロ117及び搬送ローラ116からの記録紙Pの送り出し角度を規定する先端コロ118とを有する。搬送ローラ116は副走査モータ109bによってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ101の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ116から送り出された記録紙Pを液滴吐出ヘッド1の下方側で案内するため用紙ガイド部材である印写受け部材119を設けている。この印写受け部材119の用紙搬送方向下流側には、記録紙Pを排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ120と拍車121を設けている。さらに記録紙Pを排紙トレイ106に送り出す排紙ローラ123と拍車124と、排紙経路を形成するガイド部材125、126とを配設している。
このインクジェット記録装置100で記録時には、キャリッジ101を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している記録紙Pにインクを吐出して1行分を記録し、その後、記録紙Pを所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または記録紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録紙Pを排紙する。
また、キャリッジ101の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド1の吐出不良を回復するための回復装置127を配置している。回復装置127はそれぞれ図示していないキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ101は印字待機中にはこの回復装置127側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド1をキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全てのインク吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
更に、吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド1のインク吐出口を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。これにより、インク吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、このインクジェット記録装置100においてはアクチュエータユニットを有するインクジェット記録ヘッドを搭載しているので、安定したインク滴吐出特性が得られ、画像品質を向上することができる。
図3は、本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの基本構成部分である液滴吐出部10の一構成例を示す概略構成図である。図4は、基板上の振動板及び圧電素子の層構造の一例を示す断面図である。また、図5及び図6はそれぞれ、圧電素子16周辺の詳細な断面図及び平面図である。なお、図6において、第1絶縁保護膜17及び第2絶縁保護膜22の図示は省略し、圧電素子の構成が分かるように、一部の部材について第2絶縁保護膜を透視して記載している。
図3において、液滴吐出部10は、インクなどの液体の液滴を吐出するノズル孔11を有するノズル板12と、ノズル孔11に連通し液体を収容した液室13が形成された液室基板(以下、単に「基板」という。)14とを備えている。更に、基板14上には、成膜法により形成された振動板15と、振動板15を介して液室13内の液体を加圧するための電気機械変換素子としての圧電素子16とが設けられている。図3及び図4に示すように、圧電素子16は、基板14側の第1駆動電極としての共通電極161と、電気機械変換膜としてのPZTなどからなる圧電膜162と、圧電膜162の基板14側とは反対側の第2駆動電極としての個別電極163とが積層されている。図5及び図6に示すように、共通電極161には、第1配線としての配線19を介して、第1導電性部材としての電極パッド18に電気的に接続されている。また、個別電極163には、第2配線としての配線21を介して、第2導電性部材としての電極パッド20に接続されている。図3の液滴吐出部10において、圧電素子16の共通電極161と個別電極163との間に所定の周波数及び振幅の駆動電圧が印加される。この駆動電圧が印加された圧電素子16が、基板14と圧電素子16との間にある振動板15を変形させるように振動し、その振動板15の変形により液室13内の液体が加圧され、ノズル孔11から液滴を吐出させることができる。
また、第1絶縁保護膜17が、圧電素子16を覆うように形成されている第1絶縁保護膜17上には配線19や配線21が設けられている。共通電極161と配線19との間及び個別電極163と配線21との間はそれぞれ、第1絶縁保護膜17に形成された開口部のコンタクトホール17aを介して電気的に接続されている。
更に、配線19及び配線21が形成された後、全体を覆うように第2絶縁保護膜22が形成される。電極パッド18及び電極パッド20はそれぞれ、第2絶縁保護膜22に形成された開口部のコンタクトホールを介して配線19及び配線21に電気的に接続されている。この第2絶縁保護膜22が形成された後の基板14と圧電素子16と各種電極とを含む複合積層基板全体(以下、「アクチュエータ基板」という。)に対して、圧電素子16に空隙を介して非接触の状態で圧電素子16を覆うように設けられた構造体としてのサブフレーム(不図示)が接合されている。以上のように作製された圧電素子16に対して、コロナ放電もしくはグロー放電を行って発生した電荷を電極パッド18及び電極パッド20を介して圧電膜162に供給することにより、圧電膜162の分極処理を実施している。詳細には、電極パッド18及び電極パッド20の各表面に対向し、間隙を置いて配置された電荷供給手段(例えばコロナワイヤ、コロナ針など)によってコロナ放電を行う。例えばコロナワイヤを用いてコロナ放電させる場合には、大気中の分子をイオン化させることで、陽イオンを発生させ、電極パッド18及び電極パッド20を介して陽イオンが圧電膜162に供給される。これにより、圧電膜の分極処理が実施される。この分極処理方法では、電極パッド18及び電極パッド20の面積が互いに同じである場合、個別電極にはある値の電荷が発生するのに対し、個別電極側のパッド数より少ない共通電極には個別電極での電荷の値より小さい値の電荷が発生する。よって、個別電極と共通電極との電荷差によって圧電膜の内部の電位差が生じて、分極処理が実施される。
ここで、圧電膜162の分極処理の状態については、圧電素子のP−Eヒステリシスループ特性から判断することができる。
図7(a)及び図7(b)はそれぞれ、分極処理前及び分極処理後の圧電素子のP−Eヒステリシスループ特性の測定例を示す特性図である。図7に示すように、±150[kv/cm]の電界強度をかけてP−Eヒステリシスループ特性を測定する。そして、最初の0[kv/cm]時の分極をPiniとし、+150[kv/cm]の電圧印加後、0[kv/cm]まで戻したときの0[kv/cm]時の分極をPrとしたときに、Pr−Piniの値を分極量差として定義する。この分極量差(Pr−Pini)から分極状態の良し悪しを判断することができる。例えば、分極量差(Pr−Pini)は10[μC/cm]以下となっていることが好ましく、図7(b)に示すように、5[μC/cm]以下となっていることがさらに好ましい。一方、分極量差(Pr−Pini)の値が、図7(a)に示すように、10[μC/cm]よりも大きい場合は、圧電素子からなる圧電アクチュエータとして連続駆動後の変位変化については、十分な特性が得られない。
図8は分極処理装置の全体構成の一例を示す斜視図である。同図に示すように、サンプルステージ201には分極処理対象の電気機械変換素子を含む液滴吐出ヘッドが設置される。コロナワイヤ電極202には、分極電圧用のコロナ放電の電圧を供給するコロナ電源203が接続されている。サンプルステージ201とコロナワイヤ電極202との間には、メッシュ状の電極であるグリッド電極204が配置され、このグリッド電極204にはグリッド電圧を供給するグリッド電源205が接続されている。サンプルステージ201、コロナワイヤ電極202やグリッド電極204の移動方向は図8中の矢印に示す方向で、互いに同一方向である。なお、互いに同一方向ではなく異なる方向でもよく、サンプルステージ201、コロナワイヤ電極202又はグリッド電極204が回転可能にする。これにより、コロナワイヤ電極202又はグリッド電極204に対してサンプルステージ201上の液滴吐出ヘッドを自在に相対位置を変えることができる。
ここで、コロナワイヤのワイヤ軸方向に対して直交する水平方向の距離に対する分極量差(Pr−Pini)の変化を示す特性図である図9からわかるように、単位面積あたり均一の所望電荷量の電荷を供給できる水平距離の範囲がある。この範囲を含む領域を電荷供給領域と称する。図9からわかるように、所定の位置に固定されたコロナワイヤ電極の直下、つまり電極パッドとコロナワイヤ電極との水平距離が0であるときから徐々に遠ざかると、分極量差(Pr−Pini)が徐々に大きくなって分極状態が悪化していることがわかる。そこで、本実施形態では、後述するように、図8の概略側面図である図10に示すような上記電荷供給領域内に、電荷を供給する2つの電極パッド18、21が互いに位置させて分極処理を行っている。
ここで、図10において、コロナワイヤ電極202を用いて例えばコロナ放電させると、大気中の分子がイオン化して陽イオンと陰イオンが発生する。この発生したイオンのうち、陽イオンが圧電膜162に蓄積される。共通電極161と個別電極163との電荷差によって圧電膜162の内部に電位差が生じて、圧電膜162の分極処理が行われる。図10において、コロナワイヤ電極202と圧電素子の電極パッド20との間隙にグリッド電極204を設け、このグリッド電極204を3次元に移動させることで圧電素子16側における電荷供給領域を制御している。ここで、分極処理に必要な電荷量Qを考えると1E−8C以上の電荷量が蓄積されることが好ましく、4E−8C以上の電荷量が蓄積されることがさらに好ましい。この値に満たない場合は、分極処理が十分できず、PZTの圧電アクチュエータとして連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない。また、分極処理を行う際、クラック対策として加熱しながら実施することも可能である。特に基板に対して電気機械変換膜が拘束されている場合、分極処理時に発生した電界により、膜自身が歪もうとしても、拘束力のため自由に変形できない。加熱しながら分極処理した場合、電気機械変換膜の応力を緩和させながら処理できるため、所望の分極量差が得られてもクラックが発生しないためである。
次に、本実施形態の液滴塗布ヘッドを構成する構成要素である各部及び部材などの材料及び工法について、より具体的に説明する。
〔基板〕
図3の基板14としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100[μm]以上600[μm]以下の範囲の厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成例においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図3に示すような液室(圧力室)13を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していく。この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝を掘ることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。本構成例としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiOもエッチングされてしまうため、この点も留意して利用することが好ましい。
〔振動板〕
図3に示すように電気機械変換素子としての圧電素子16によって発生した力を受けて振動板15が変形して、液室(圧力室)13のインクなどの液体の液滴を吐出させる。そのため、振動板15としては所定の強度を有したものであることが好ましい。材料としては、Si、SiO、Siなどを例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により作製したものが挙げられる。さらに、図3に示すような共通電極(下部電極)161及び圧電膜162の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、圧電膜としては、一般的に材料としてPZTが使用される場合が多い。従って、振動板15の材料は、PZTの線膨張係数8×10−6(1/K)に近い5×10−6(1/K)以上10×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料が好ましい。さらには7×10−6(1/K)以上9×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料がより好ましい。具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等が挙げられる。これらの材料を、例えばスパッタ法又はゾルゲル法を用いてスピンコーターにて作製することができる。膜厚としては0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲が好ましく、0.5[μm]以上3[μm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より小さいと、図3に示すような液室(圧力室)13の加工が難しくなる。また、上記範囲より大きいと振動板15が変形しにくくなり、インク滴などの液滴の吐出が不安定になる。
[共通電極(第1駆動電極)]
共通電極(第1駆動電極)161としては、金属もしくは金属と酸化物からなっていることが好ましい。ここで、どちらの材料も振動板15と共通電極161を構成する金属膜との間に密着層を入れて剥がれ等を抑制するように工夫している。以下に密着層含めて金属電極膜及び酸化物電極膜の詳細について記載する。
[密着層]
密着層は、例えば次のように形成する。Tiをスパッタ成膜後、成膜したチタン膜をRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて熱酸化して酸化チタン膜にする。熱酸化の条件は、例えば、650[℃]以上800[℃]以下の範囲の温度、1[分]以上30[分]以下の範囲の処理時間、及びO雰囲気である。酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいがチタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とする。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方がチタンO膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTAによる酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。また、Ti以外の材料としては、Ta、Ir、Ru等の材料を用いることもできる。密着層の膜厚としては、10[nm]以上50[nm]以下の範囲が好ましく、15[nm]以上30[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲以下の場合においては、密着性に懸念があり、また、この範囲以上になってくると、その密着層の上で作製する電極膜の結晶の質に影響が出てくる。
〔金属電極膜〕
金属電極膜の金属材料としては、従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これらの合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO)との密着性が悪いために、前述の密着層を先に積層することが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80[nm]以上200[nm]以下の範囲が好ましく、100[nm]以上150[nm]以下の範囲がより好ましい。この範囲より薄い場合においては、共通電極161として十分な電流を供給することができなくなり、液滴の吐出をする際に不具合が発生する。さらに、この範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる。また、白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、インク吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生する。
〔酸化物電極膜〕
酸化物電極膜の材料としては、SrRuO(以下、適宜「SRO」と略す。)を用いることが好ましい。SrRuO以外にも、Srx(A)(1−x)Ruy(1−y)、A=Ba、Ca、B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述されるような材料も挙げられる。酸化物電極膜は例えばスパッタ法等の成膜方法により作製することができる。スパッタ条件によってSrRuOの薄膜の膜質が変わる。従って、特に結晶配向性を重視し、第1駆動電極のPtの(111)面方位にならってSrRuOの膜についても(111)面方位に配向させるためには、成膜温度については500[℃]以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。例えば特許文献2に記載のSRO成膜条件については、室温で成膜した後、RTA処理にて結晶化温度(650℃)で熱酸加している。この場合、SRO膜としては、十分結晶化され、電極としての比抵抗としても十分な値が得られるが、膜の結晶配向性としては、(110)面方位が優先配向しやすくなり、その上に成膜したPZTについても(110)面方位に配向しやすくなる。
ここで、例えば金属電極膜として(111)面方位に配向した白金膜を用い、その上に酸化物電極膜であるSrRuO膜を作製した場合に、酸化物電極の結晶性をX線回折測定により評価する方法について説明する。
PtとSrRuOとは格子定数が近いため、通常のX線回折測定におけるθ−2θ測定では、SRO膜の(111)面とPtの(111)面の2θ位置が重なってしまい判別が難しい。しかし、Ptについては消滅則の関係からPsi=35[°]に傾けた場合、2θが約32[°]付近の位置では回折線が打ち消し合い、Ptの回折強度が見られなくなる。そのため、Psi方向を約35[°]傾けて、2θが約32[°]付近のピーク強度で判断することでSROが(111)面方位に優先配向しているかを確認することができる。
図11に、シリコン基板上に、密着層として酸化チタン膜を成膜した後、(111)面方位に配向している白金膜を成膜し、その上に基板を例えば550[℃]に加熱しながらスパッタ法によりSrRuO膜を成膜した試料のX線回折測定結果を示す。
図11においては、2θ=32[°]に固定し、Psiを変化させたときのデータを示している。Psi=0[°]ではSROの(110)面の回折線はほとんど回折強度が見られず、Psi=35[°]付近において、回折強度が見られることから、この測定方法によりSROが(111)面方位に優先配向していることが確認できる。また、この結果から、本成膜条件にて作製したものについては、SROが(111)面方位に優先配向していることを確認できた。
また、上述記載のSRO膜を室温で成膜した後、RTA処理を行うことにより作製されたSRO膜について同様に評価を行ったところ、Psi=0[°]のときにSROにおける(110)面方位の回折強度が見られた。
圧電アクチュエータとして連続動作したときに、駆動させた後の変位量が、初期変位に比べてどのくらい劣化したかを見積もったところ、電気機械変換膜(例えばPZT)の配向性が非常に影響しており、(110)面方位では変位劣化抑制において不十分な場合がある。このため、上述のように酸化物電極膜は(111)面方位に配向していることが好ましい。
酸化物電極に用いるSrRuO膜の表面粗さは4[nm]以上、15[nm]以下であることが好ましく、6[nm]以上、10[nm]以下であることがさらに好ましい。なお、ここでの表面粗さについてはAFMにより測定される表面粗さ(平均粗さ)を意味している。
SrRuO膜の表面粗さは成膜温度に影響し、室温から300[℃]に基材を加熱して成膜した場合、表面粗さが非常に小さく2[nm]以下になる。この場合、表面粗さとしては、非常に小さくフラットになっているが、SrRuO膜の結晶性は十分でない場合がある。この様にSrRuO膜の結晶性が十分でない場合、その後に成膜する電気機械変換膜(例えばPZT膜)の圧電アクチュエータとしての初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られなくなる。表面粗さとしては、4[nm]以上15[nm]の範囲になっていることが好ましく、6[nm]以上10[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。従って上述に示すような、結晶性や表面粗さを得るためには、成膜温度としては500[℃]以上700[℃]、好ましくは520[℃]以上600[℃]の範囲で成膜を実施している。
成膜後のSrとRuの組成比については、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。この範囲から外れると比抵抗が大きくなり、電極として十分な導電性が得られなくなる。更に、SRO膜の膜厚としては、40[nm]以上150[nm]以下の範囲が好ましく、50[nm]以上80[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られず、圧電膜(PZT膜)のオーバーエッチングを抑制するためのストップエッチング層としての機能も得られにくくなる。また、この膜厚範囲を超えると、その後に成膜した圧電膜(PZT膜)の絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。また、比抵抗としては、5×10−3[Ω・cm]以下になっていることが好ましく、さらに1×10−3[Ω・cm]以下になっていることがさらに好ましい。この範囲よりも大きくなると共通電極161として、配線との界面で接触抵抗が十分得られず、共通電極161として十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生する。
〔圧電膜(電気機械変換膜)〕
圧電膜162の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO)とチタン酸(PbTiO)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O、一般PZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。これら材料は一般式ABOで記述され、A=Pb、Ba、Sr、 B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
圧電膜162の作製方法としては、スパッタ法もしくは、ゾルゲル法を用いてスピンコーターにて作製することができる。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。PZTをゾルゲル法により作製した場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ることで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加してもよい。
基板14の全面に圧電膜(PZT膜)162を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100[nm]以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
圧電膜162の膜厚としては0.5[μm]以上5[μm]以下の膜厚範囲が好ましく、1[μm]以上2[μm]以下の範囲がより好ましい。この膜厚範囲より小さいと十分な変形(変位)を発生することができなくなり、この膜厚範囲より大きいと何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。また、圧電膜162の比誘電率としては600以上2000以下の範囲になっていることが好ましく、さらに1200以上1600以下の範囲になっていることが好ましい。このとき、この範囲よりも小さいときには十分な変形(変位)特性が得られなかったり、この範囲より大きくなったりすると、分極処理が十分行われず、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生する。
〔個別電極(第2駆動電極)〕
個別電極(第2駆動電極)163としては、金属もしくは酸化物と金属からなっていることが好ましい。以下に酸化物電極膜及び金属電極膜の詳細について記載する。
〔酸化物電極膜〕
酸化物電極膜の材料等については、前述の共通電極(第1駆動電極)161で使用した酸化物電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。酸化物電極膜(SRO膜)の膜厚としては、20[nm]以上80[nm]以下の範囲が好ましく、40[nm]以上60[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変形(変位)や変形(変位)の劣化特性については十分な特性が得られない。また、この範囲を超えると、その後に成膜した圧電膜(PZT膜)の絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
〔金属電極膜〕
金属電極膜の材料等については、前述の共通電極(第1駆動電極)161で使用した金属電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。金属電極膜とで記載しており、膜厚としては30[nm]以上200[nm]以下の範囲が好ましく、50[nm]以上120[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲より薄い場合においては、個別電極163として十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生する。また、上記膜厚範囲より厚いと、白金族元素の高価な材料を使用する場合にコストアップとなる。また、白金を材料とした場合に膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して配線などを作製する際に、膜剥がれ等のプロセス不具合が発生しやすくなる。
〔第1絶縁保護膜〕
成膜・エッチングの工程による圧電素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、第1絶縁保護膜17の材料は緻密な無機材料とする必要がある。また、第1絶縁保護膜17として有機材料を用いる場合は、十分な保護性能を得るために膜厚を厚くする必要があるため、適さない。第1絶縁保護膜17を厚い膜とした場合、振動板15の振動を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低い液滴吐出ヘッドになってしまう。薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物、窒化物、炭化膜を用いるのが好ましいが、第1絶縁保護膜17の下地となる電極材料、圧電体材料及び振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、第1絶縁保護膜17の成膜法も、圧電素子16を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法やプラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。第1絶縁保護膜17の好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD法などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。好ましい材料としては、Al、ZrO、Y、Ta、TiOなどのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特にALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制することができる。
第1絶縁保護膜17の膜厚は、圧電素子16の保護性能を確保できる十分な薄膜とする必要があると同時に、振動板15の変形(変位)を阻害しないように可能な限り薄くする必要がある。第1絶縁保護膜17の膜厚は、20[nm]以上100[nm]以下の範囲が好ましい。100[nm]より厚い場合は、振動板15の変形(変位)量が低下するため、吐出効率の低い液滴吐出ヘッドとなる。一方、20[nm]より薄い場合は、圧電素子16の保護層としての機能が不足してしまうため、圧電素子16の性能が前述の通り低下してしまう。
また、第1絶縁保護膜17を2層にする構成も考えられる。この場合は、2層目の絶縁保護膜を厚くするため、振動板15の振動を著しく阻害しないように個別電極(第2駆動電極)163付近において2層目の絶縁保護膜を開口するような構成も挙げられる。この場合、2層目の絶縁保護膜としては、任意の酸化物、窒化物、炭化物またはこれらの複合化合物を用いることができ、また、半導体デバイスで一般的に用いられるSiOを用いることもできる。2層の第1絶縁保護膜17の成膜は任意の手法を用いることができ、例えばCVD法、スパッタリング法等が例示できる。電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。2層目の絶縁保護膜の膜厚は共通電極(第1駆動電極)161と個別電極163の配線21との間に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚とする必要がある。すなわち第1絶縁保護膜17に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらに、第1絶縁保護膜17の下地の表面性やピンホール等を考慮すると、第1絶縁保護膜17の膜厚は200[nm]以上必要であり、さらに好ましくは500[nm]以上である。
〔配線、電極パッド〕
配線19、21及び電極パッド18、20の材料は、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Irのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。これらの電極の作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。膜厚としては、0.1[μm]以上20[μm]以下の膜厚範囲が好ましく、0.2[μm]以上10[μm]以下の膜厚範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲より小さいと抵抗が大きくなり電極に十分な電流を流すことができなくなりヘッド吐出が不安定になる。一方、この膜厚範囲より大きいとプロセス時間が長くなる。また、共通電極161及び個別電極163に接続されるコンタクトホール17b(例えば10[μm]×10[μm])での接触抵抗としては、共通電極161に対して10[Ω]以下、個別電極163に対して1[Ω]以下が好ましい。さらに好ましくは、共通電極161に対して5[Ω]以下、個別電極163に対して0.5[Ω]以下である。この範囲を超えると十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生する。
〔第2絶縁保護膜〕
第2絶縁保護膜22としての機能は、共通電極用の配線19や個別電極用の配線21の保護層としての機能を有するパシベーション層である。前述の図5及び図6に示したように、共通電極161や個別電極163の引き出し部(コンタクトホール17a)を除き、共通電極161及び個別電極163を被覆する。これにより、電極材料に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)とすることができる。第2絶縁保護膜22の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし、有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、パターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上にSiを用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。また、膜厚は200[nm]以上とすることが好ましく、さらに好ましくは500[nm]以上である。膜厚が薄い場合は十分なパシベーション機能を発揮できないため、配線材料の腐食による断線が発生し、インクジェットの信頼性を低下させてしまう。
また、圧電素子16上とその周囲の振動板15上に開口部をもつ構造が好ましい。これは、前述の第1絶縁保護膜17の個別液室に対応した領域を薄くしていることと同様の理由である。これにより、高効率かつ高信頼性の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)とすることが可能になる。第2絶縁保護膜22で圧電素子16が保護されているため、第2絶縁保護膜22の開口部の形成には、フォトリソグラフィー法とドライエッチングを用いることができる。また、電極パッド18、20の面積については、50×50[μm]以上になっていることが好ましく、さらに100×300[μm]以上になっていることが好ましい。この値に満たない場合は、十分な分極処理ができなくなり、連続駆動後の変形(変位)劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生する。
次に、本実施形態の液滴吐出ヘッドの製造方法における放電を用いた分極処理のより具体的な一例について説明する。
以下に電気機械変換素子の具体的な製造方法について一例を挙げて説明する。ただし、本発明はこの例に限定されるものではない。
まず、6インチシリコンウェハに熱酸化膜(膜厚1[μm])を形成した。
次いで、第1駆動電極を形成した。具体的には、先ず、密着膜として、チタン膜(膜厚30[nm])をスパッタ装置にて成膜した後にRTAを用いて750[℃]にて熱酸化した。そして、引き続き金属膜として白金膜(膜厚100[nm])、酸化物膜としてSrRuO膜(膜厚60[nm])をスパッタ成膜した。スパッタ成膜時の基板加熱温度については550[℃]にて成膜を実施した。
次に、電気機械変換膜を形成した。具体的には、モル比でPb:Zr:Ti=114:53:47に調整された溶液を準備し、スピンコート法により膜を成膜した。
具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、ノルマルプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、ノルマルプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、上記酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。合成したPZT前駆体溶液中のPZT濃度は0.5[モル/L]とした。
上記前駆体溶液を用いて、スピンコートにより第1駆動電極が形成された基板上に成膜し、成膜後に120[℃]で加熱して乾燥を行い、その後さらに500[℃]熱分解を行う操作を複数回繰り返し行い、電気機械変換膜を積層した。
上記手順により繰り返し、電気機械変換膜を積層する際に、3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度750[℃])をRTA(急速熱処理)にて行った。3層目の熱分解処理後、RTA処理を施した電気機械変換膜(PZT)の膜厚は240[nm]であった。
上記工程を計8回(24層)実施し、PZTの部分の膜厚が約2[μm]の電気機械変換膜を得た。
次に、第2駆動電極の酸化物膜としてSrRuO膜(膜厚40[nm])を、金属膜としてPt膜(膜厚125[nm])を、それぞれスパッタ成膜した。
その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した。その後、ICPエッチング装置(サムコ製)を用いて電気機械変換膜、第2駆動電極をエッチングにより個別化し、図5及び図6に示すようなパターンを作製した。これにより、第2駆動電極は個別電極として機能し、第1駆動電極は個別化された電気機械変換膜や第2駆動電極に対して共通電極として機能する。
次に、第1絶縁保護膜17として、ALD法によりAl膜を50[nm]成膜した。
原材料としてAl源としては、トリメチルアルミニウム(TMA)(シグマアルドリッチ社製)、O源としては、オゾンジェネレーターによって発生させたOを用いた。そして、Al源、O源を交互に基板上に供給して積層させることで、成膜を行った。
その後、図5に示すように、エッチングによりコンタクトホール17bを形成した。
そして、第1配線、第2配線、第1導電性部材及び第2導電性部材の2つの電極パッドとしてAlをスパッタ成膜し、エッチングによりパターニング形成した。
さらにその後、第2絶縁保護膜22としてSiをプラズマCVDにより500[nm]成膜し、圧電素子(電気機械変換素子)16を作製した。
以上のように作製した圧電素子(電気機械変換素子)を含むアクチュエータ基板(不図示)に対して、共通液室の一部を形成する開口部(不図示)や圧電素子駆動IC(不図示)を配置するための開口部(不図示)等を設けたサブフレーム(不図示)を接着接合した。サブフレームはシリコンウェハを活用し作製し、サブフレームの表面には熱酸化膜を形成した。
次に、本実施形態の液滴吐出ヘッドの製造方法におけるコロナ放電を用いた分極処理の各実施例及び比較例について説明する。
図12(a)は分極処理の実施例1を示す平面図であり、図12(b)は概略側面図である。本実施例は、図12に示すように、複数(実施例1では2個)の第1導電性部材の電極パッド18を列状に配列し、複数(実施例1では5個)の第2導電性部材の電極パッド20を列状に配列した例である。互いの電極パッド列において、各電極パッド18の列幅W1と各電極パッド20の列幅W2とが、少なくとも一部重なるように各電極パッドを配置している。各列の列方向は互いに平行であることが好ましいが、これに限定する必要はない。また、電極パッド18及び電極パッド20の個数も1つであってもよく、この場合は電極パッド18の面積が電極パッド20より小さい場合であり、互いの位置関係において任意の方向から見たときに各電極パッドが重なっていればよい。このような電極パッドの位置において、上述した電荷供給領域に各電極パッドが互いに位置するように、液滴吐出ヘッドとコロナワイヤなどの電荷供給手段との相対位置を調整する。これにより、電荷供給領域に対してコロナ放電を行うと電極パッド18と電極パッド20とに略均一に電荷が供給される。よって、電極パッド18の面積と電極パッド20の面積との差に伴う個別電極と共通電極との間に供給される電荷の量に所望の差が生じる。電気機械変換素子に対する所望の分極処理が実施でき、電気機械変換素子の所望の分極特性を得ることができる。
図13(a)は分極処理の実施例2を示す平面図であり、図13(b)は概略側面図である。本実施例では、実施例1と比較すると、各電極パッド18の列幅W1と各電極パッド20の列幅W2とが、少なくとも一方の列幅に含まれ、各電極パッドが互いに完全に重なるように配置している。よって、電極パッド18の面積と電極パッド20の面積との差に伴う個別電極と共通電極との間に供給される電荷の量に所望の差が生じる。電気機械変換素子に対する所望の分極処理が全くロスなく実施でき、電気機械変換素子の所望の分極特性を得ることができる。
図14(a)は分離処理の比較例を示す平面図であり、図14(b)は概略側面図である。図14に示す比較例は、電極パッド18と電極パッド20との間が大きく離れ、電荷供給領域内に2つの電極パッドが互いに位置できなかった例を示す。この比較例では、電極パッド18の位置の上部にコロナワイヤ電極202が移動してきたときに放電を行い、コロナワイヤ電極202を電極パッド20の上部に移動させて再び放電を行う。
上記実施例1、上記実施例2及び比較例についてそれぞれ分極処理実験を行い、その実験結果を下記の表1に示す。分極処理装置の構成としては、スコロトロン方式を採用し、φ50[μm]のタングステンのワイヤに対して8[kV]、グリッド電極に対して2.5[kv]の電圧を印加して30秒間処理を行った。評価項目は分極量差(Pr−Pini)について行っている。実施例1では、分極量差が小さくなっていることがわかる。これは、各電極パッド列のいずれもがコロナワイヤ電極の略直下に容易に配置でき、各電極パッドが互いに少なくとも一部、電荷供給領域に位置され、略所望の分極処理が実施できたためである。また、実施例2では、パッド列が完全に重なっているため、より厳密にコロナワイヤ電極204の直下に両方の電極パッド列を配置することができ、各電極パッドが電荷供給領域に互いに、かつ完全に位置され、分極処理のロスが全くなかったからである。一方、比較例では、先に電極パッド18に対して放電して供給した電荷が、コロナワイヤ電極204を電極パッド20の位置に移動している間に大気中に漏れてしまい、下記の表1に示すように、分極量差が大きくなって所望の分極利処理が実施できていなかった。
Figure 0006198116
なお、本実施形態では1つのノズル孔からなる液滴吐出ヘッドについて説明したが、その実施形態に限定されるものではなく、図15に示すように複数の液滴吐出ヘッドを備えた構成とすることもできる。図15においては、図3の液滴吐出ヘッドを複数個直列に並べたものであり、同じ部材には同じ番号を付している。また、液体供給手段、流路、流体抵抗等については記載を省略したが、液滴吐出ヘッドに設けることのできる付帯設備を当然に設けることができる。上記実施例1、2で作製した電気機械変換素子を用いて、液滴吐出ヘッドを作製し液の吐出評価を行った。粘度を5[cp]に調整したインクを用いて、中間電位が10〜30[V]の単純Pull波形の電圧を印加してノズル孔からの吐出状況を確認したところ、全てのノズル孔からも吐出できていることを確認した。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
基板14上に、共通電極161等の第1駆動電極、圧電膜162等の電気機械変換膜及び個別電極163等の第2駆動電極が積層された構造を有する電気機械変換素子の製造方法において、基板14上に第1駆動電極を形成する工程と、該第1駆動電極上に電気機械変換膜を形成する工程と、該電気機械変換膜上に第2駆動電極を形成する工程と、第1駆動電極及び第2駆動電極上に第1絶縁保護膜17を形成する工程と、外部接続用の第1端子電極及び外部接続用の第2端子電極を第1絶縁保護膜上に形成する工程と、第1駆動電極、第2駆動電極それぞれに電気的に接続された配線19等の第1配線、配線21等の第2配線を第1絶縁保護膜上に形成する工程と、第1端子電極及び第2端子電極が露出するコンタクトホール17b等の開口部を有し、電気機械変換膜、第1配線及び第2配線上に第2絶縁保護膜を形成する工程と、第1端子電極及び第2端子電極の各位置に対応した第1接触部及び第2接触部を有する電極パッド18等の第1導電性部材及び電極パッド20等の第2導電性部材を第1端子電極及び第2端子電極に接触させて、第1導電性部材及び第2導電性部材にコロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を供給することにより、電気機械変換膜を分極処理する工程とを有し、分極処理する工程では、コロナ放電もしくグロー放電により発生した電荷が単位面積辺り均一の電荷量で供給される電荷供給領域内に、第1導電性部材と第2導電性部材とを同時に位置させて、第1導電性部材及び第2導電性部材に、コロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を供給し、電気機械変換膜を分極処理する。
これによれば、上記実施形態について説明したように、電荷供給領域内に、第1導電性部材と第2導電性部材とを同時に位置させて、コロナ放電又はグロー放電により電荷を発生させる。電荷供給領域には、単位面積あたり均一に電荷が供給されている。これらの結果、第1導電性部材及び第2導電性部材には互いに単位面積あたり均一な電荷が供給される。例えば、第1導電性部材の面積と第2導電性部材の面積との間に所定の差があれば、第1駆動電極の電荷量と第2駆動電極の電荷量との間には、所定の差が生じる。第1駆動電極と第2駆動電極との間の距離、及び第1駆動電極と第2駆動電極との面積の差が、いずれの電気機械変換素子においても互いに略同一であれば、第1駆動電極と第2駆動電極との電荷量の差により、第1駆動電極と第2駆動電極との電位差が生じる。この電位差によって、分極処理が行われる。第1駆動電極及び第2駆動電極に供給される電荷量が電気機械変換素子間で略同じであるので第1駆動電極と第2駆動電極との電位差も電気機械変換素子間で略同じになる。よって、製造された電気機械変換素子間の分極特性のばらつきを低減することができる。
(態様2)
(態様1)において、複数の電極パッド20等の第2導電性部材が列状に配置され、第2導電性部材の列方向と直交する第2導電性部材の列幅に、当該列方向に直交する1つの電極パッド18等の第1導電性部材の幅が、列方向で重なっている。
これによれば、上記実施形態の実施例1について説明したように、複数の第2導電性部材と1つの第1導電性部材とのそれぞれ少なくとも一部が電荷供給領域内に互いに位置させて、コロナ放電もしくはグロー放電を行う。第1導電性部材及び各第2導電性部材には互いに単位面積あたり均一な電荷が供給される。分極処理工程では、第1駆動電極の電荷量と第2駆動電極の電荷量との間に所定の差を生じさせることができるので、電気機械変換膜内部に所定の電位差が生じ所望の分極処理が行われる。よって、製造された電気機械変換素子間の分極特性のばらつきを低減することができる。
(態様3)
(態様2)において、第2導電性部材の列方向に対して直交する方向の列幅又は第1導電性部材の幅のいずれか一方が、他方に含まれている。
これによれば、上記実施形態の実施例2について説明したように、コロナワイヤ電極の直下における電荷供給領域内に複数の第2導電性部材と1つの第1導電性部材とを完全に配置することができ、ロスなく分極処理を行うことができる。
(態様4)
(態様1)において、複数の第1導電性部材が列状に配置され、かつ複数の第2導電性部材が列状に配置され、第1導電性部材の列方向と第2導電性部材の列方向とが互いに平行であり、第2導電性部材の列方向に直交する第2導電性部材の列幅に、第1導電性部材の列方向に直交する第1導電性部材の列幅が、列方向で重なっている。
これによれば、上記実施形態の実施例1について説明したように、複数の第2導電性部材と複数の第1導電性部材とのそれぞれ少なくとも一部が電荷供給領域内に互いに位置させて、コロナ放電もしくはグロー放電を行う。各第1導電性部材及び各第2導電性部材には互いに単位面積あたり均一な電荷が供給される。分極処理工程では、第1駆動電極の電荷量と第2駆動電極の電荷量との間に所定の差を生じさせることができるので、電気機械変換膜内部に所定の電位差が生じ所望の分極処理が行われる。よって、製造された電気機械変換素子間の分極特性のばらつきを低減することができる。
(態様5)
(態様4)において、第2導電性部材の列方向に対して直交する方向の列幅又は第1導電性部材の列方向に対して直交する方向の列幅のいずれか一方が、他方に含まれている。
これによれば、上記実施形態の実施例2について説明したように、コロナワイヤ電極の直下における電荷供給領域内に複数の第2導電性部材と複数の第1導電性部材とを完全に配置することができ、ロスなく分極処理を行うことができる。
(態様6)
(態様1)〜(態様5)のいずれかの電気機械交換素子の製造方法により得られた電気機械交換素子であって、電気機械変換膜の分極が、±150[kV/cm]の電界強度かけてヒステリシスループを測定する際、測定開始時の0[kV/cm]における分極をPiniとし、+150[kV/cm]の電圧印加後、0[kV/cm]まで戻した際の0[kV/cm]時の分極をPrとした場合に、PrとPiniの差が10[μC/cm]以下である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、PrとPiniの差が10[μC/cm]より大きい場合、電気機械変換膜を圧電アクチュエータとして使用した場合に連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない場合があるためである。本態様では、PrとPiniの差が10[μC/cm]以下なので、電気機械変換膜を圧電アクチュエータとして使用した場合に連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られる。
(態様7)
液滴を吐出するノズル孔と、該ノズル孔が連通する加圧室と、該加圧室内の液体を昇圧させる吐出駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、吐出駆動手段として、加圧室の壁の一部を振動板で構成し、該振動板に(態様6)の電気機械変換素子を備える。
これによれば、上記実施形態について説明したように、態様6の電気機械変換素子を備えているため、予め十分に分極処理を施されており、分極量差の低い電気機械変換素子となっている。このため、所定の電位に対して電気機械変換素子が安定した変形を示し、その結果液滴吐出ヘッドも安定した液滴吐出を行うことが可能になる。
(態様8)
(態様7)の液滴吐出ヘッドを備えた。これによれば、上記実施形態について説明したように、態様7の液滴吐出ヘッドを備えているため、該液滴吐出ヘッドに含まれる電気機械変換素子は予め十分に分極処理を施されており、分極量差の低い電気機械変換素子となっている。このため、所定の電位に対して電気機械変換素子が安定した変形を示し、その結果液滴吐出装置も安定して液滴吐出を行うことが可能になる。
(態様9)
(態様7)の液滴吐出ヘッドで記録液剤を記録材に吐出して画像形成を行う。これによれば、上記実施形態について説明したように、態様7の液滴吐出ヘッドを備えているため、該液滴吐出ヘッドに含まれる電気機械変換素子は予め十分に分極処理を施されており、分極量差の低い電気機械変換素子となっている。このため、所定の電位に対して電気機械変換素子が安定した変形を示し、その結果画像形成装置も安定して液滴吐出を行うことが可能になる。よって、高画質の画像を形成できる。
10 液滴吐出部
11 ノズル孔
12 ノズル板
13 液室
14 液室基板
15 振動板
16 圧電素子
17 第1絶縁保護膜
17a コンタクトホール
18 電極パッド
19 配線
20 電極パッド
21 配線
22 第2絶縁保護膜
100 インクジェット記録装置
161 共通電極
162 圧電膜
163 個別電極
201 サンプルステージ
202 コロナワイヤ電極
203 コロナ電源
204 グリッド電極
205 グリッド電源
特許第4927400号公報 特許第3782401号公報

Claims (9)

  1. 基板上に、第1駆動電極、電気機械変換膜及び第2駆動電極が積層された構造を有する電気機械変換素子の製造方法において、
    基板上に第1駆動電極を形成する工程と、
    該第1駆動電極上に電気機械変換膜を形成する工程と、
    該電気機械変換膜上に第2駆動電極を形成する工程と、
    前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極上に第1絶縁保護膜を形成する工程と
    記第1駆動電極及び前記第2駆動電極それぞれ電気的に接続された第1配線及び第2配線を前記第1絶縁保護膜上に形成する工程と、
    前記第1配線及び前記第2配線上に形成される膜であり、前記第1配線の一部及び前記第2配線の一部をそれぞれ露出させる複数の開口部を有する第2絶縁保護膜を形成する工程と、
    前記第2絶縁保護膜の前記複数の開口部によって露出する前記第1配線の露出部及び前記第2配線の露出部を介して、コロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極に供給することにより、前記電気機械変換膜を分極処理する工程とを有し、
    前記第1配線の露出部と前記第2配線の露出部とは、露出する面の面積に差があり、
    前記分極処理する工程では、コロナ放電もしくグロー放電により発生した電荷が単位面積辺り均一の電荷量で供給される電荷供給領域内に、前記第1配線の露出部と前記第2配線の露出部とを同時に位置させて、前記第1配線の露出部及び前記第2配線の露出部を介して前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極にコロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を供給し、前記電気機械変換膜を分極処理することを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
  2. 請求項1記載の電気機械変換素子の製造方法において、
    複数の前記第2配線の露出部が列状に配置され、前記第2配線の露出部の列方向と直交する前記第2配線の露出部の列幅に、当該列方向に直交する1つの前記第1配線の露出部の幅が、列方向で重なっていることを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
  3. 請求項2記載の電気機械変換素子の製造方法において、
    前記第2配線の露出部の列方向に対して直交する方向の列幅又は前記第1配線の露出部の幅のいずれか一方が、他方に含まれていることを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
  4. 請求項1記載の電気機械変換素子の製造方法において、
    複数の前記第1配線の露出部が列状に配置され、かつ複数の前記第2配線の露出部が列状に配置され、前記第1配線の露出部の列方向と前記第2配線の露出部の列方向とが互いに平行であり、前記第2配線の露出部の列方向に直交する前記第2配線の露出部の列幅に、前記第1配線の露出部の列方向に直交する前記第1配線の露出部の列幅が、列方向で重なっていることを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
  5. 請求項4記載の電気機械変換素子の製造方法において、
    前記第2配線の露出部の列方向に対して直交する方向の列幅又は前記第1配線の露出部の列方向に対して直交する方向の列幅のいずれか一方が、他方に含まれていることを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかの電気機械換素子の製造方法により得られた電気機械換素子であって、
    前記電気機械変換膜の分極が、±150[kV/cm]の電界強度かけてヒステリシスループを測定する際、測定開始時の0[kV/cm]における分極をPiniとし、+150[kV/cm]の電圧印加後、0[kV/cm]まで戻した際の0[kV/cm]時の分極をPrとした場合に、PrとPiniの差が10[μC/cm]以下であることを特徴とする電気機械変換素子。
  7. 液滴を吐出するノズル孔と、該ノズル孔が連通する加圧室と、該加圧室内の液体を昇圧させる吐出駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記吐出駆動手段として、前記加圧室の壁の一部を振動板で構成し、該振動板に請求項6記載の電気機械変換素子を備えることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  8. 請求項7記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
  9. 請求項7記載の液滴吐出ヘッドで記録液剤を記録材に吐出して画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
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