JP6198116B2 - 電気機械変換素子の製造方法、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
図7(a)及び図7(b)はそれぞれ、分極処理前及び分極処理後の圧電素子のP−Eヒステリシスループ特性の測定例を示す特性図である。図7に示すように、±150[kv/cm]の電界強度をかけてP−Eヒステリシスループ特性を測定する。そして、最初の0[kv/cm]時の分極をPiniとし、+150[kv/cm]の電圧印加後、0[kv/cm]まで戻したときの0[kv/cm]時の分極をPrとしたときに、Pr−Piniの値を分極量差として定義する。この分極量差(Pr−Pini)から分極状態の良し悪しを判断することができる。例えば、分極量差(Pr−Pini)は10[μC/cm2]以下となっていることが好ましく、図7(b)に示すように、5[μC/cm2]以下となっていることがさらに好ましい。一方、分極量差(Pr−Pini)の値が、図7(a)に示すように、10[μC/cm2]よりも大きい場合は、圧電素子からなる圧電アクチュエータとして連続駆動後の変位変化については、十分な特性が得られない。
図3の基板14としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100[μm]以上600[μm]以下の範囲の厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成例においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図3に示すような液室(圧力室)13を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していく。この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝を掘ることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。本構成例としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiO2もエッチングされてしまうため、この点も留意して利用することが好ましい。
図3に示すように電気機械変換素子としての圧電素子16によって発生した力を受けて振動板15が変形して、液室(圧力室)13のインクなどの液体の液滴を吐出させる。そのため、振動板15としては所定の強度を有したものであることが好ましい。材料としては、Si、SiO2、Si3N4などを例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により作製したものが挙げられる。さらに、図3に示すような共通電極(下部電極)161及び圧電膜162の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、圧電膜としては、一般的に材料としてPZTが使用される場合が多い。従って、振動板15の材料は、PZTの線膨張係数8×10−6(1/K)に近い5×10−6(1/K)以上10×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料が好ましい。さらには7×10−6(1/K)以上9×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料がより好ましい。具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等が挙げられる。これらの材料を、例えばスパッタ法又はゾルゲル法を用いてスピンコーターにて作製することができる。膜厚としては0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲が好ましく、0.5[μm]以上3[μm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より小さいと、図3に示すような液室(圧力室)13の加工が難しくなる。また、上記範囲より大きいと振動板15が変形しにくくなり、インク滴などの液滴の吐出が不安定になる。
共通電極(第1駆動電極)161としては、金属もしくは金属と酸化物からなっていることが好ましい。ここで、どちらの材料も振動板15と共通電極161を構成する金属膜との間に密着層を入れて剥がれ等を抑制するように工夫している。以下に密着層含めて金属電極膜及び酸化物電極膜の詳細について記載する。
密着層は、例えば次のように形成する。Tiをスパッタ成膜後、成膜したチタン膜をRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて熱酸化して酸化チタン膜にする。熱酸化の条件は、例えば、650[℃]以上800[℃]以下の範囲の温度、1[分]以上30[分]以下の範囲の処理時間、及びO2雰囲気である。酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいがチタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とする。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方がチタンO2膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTAによる酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。また、Ti以外の材料としては、Ta、Ir、Ru等の材料を用いることもできる。密着層の膜厚としては、10[nm]以上50[nm]以下の範囲が好ましく、15[nm]以上30[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲以下の場合においては、密着性に懸念があり、また、この範囲以上になってくると、その密着層の上で作製する電極膜の結晶の質に影響が出てくる。
金属電極膜の金属材料としては、従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これらの合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO2)との密着性が悪いために、前述の密着層を先に積層することが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80[nm]以上200[nm]以下の範囲が好ましく、100[nm]以上150[nm]以下の範囲がより好ましい。この範囲より薄い場合においては、共通電極161として十分な電流を供給することができなくなり、液滴の吐出をする際に不具合が発生する。さらに、この範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる。また、白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、インク吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生する。
酸化物電極膜の材料としては、SrRuO3(以下、適宜「SRO」と略す。)を用いることが好ましい。SrRuO3以外にも、Srx(A)(1−x)Ruy(1−y)、A=Ba、Ca、B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述されるような材料も挙げられる。酸化物電極膜は例えばスパッタ法等の成膜方法により作製することができる。スパッタ条件によってSrRuO3の薄膜の膜質が変わる。従って、特に結晶配向性を重視し、第1駆動電極のPtの(111)面方位にならってSrRuO3の膜についても(111)面方位に配向させるためには、成膜温度については500[℃]以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。例えば特許文献2に記載のSRO成膜条件については、室温で成膜した後、RTA処理にて結晶化温度(650℃)で熱酸加している。この場合、SRO膜としては、十分結晶化され、電極としての比抵抗としても十分な値が得られるが、膜の結晶配向性としては、(110)面方位が優先配向しやすくなり、その上に成膜したPZTについても(110)面方位に配向しやすくなる。
圧電膜162の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO3)とチタン酸(PbTiO3)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrO3とPbTiO3の比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般PZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr、 B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O3、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
個別電極(第2駆動電極)163としては、金属もしくは酸化物と金属からなっていることが好ましい。以下に酸化物電極膜及び金属電極膜の詳細について記載する。
酸化物電極膜の材料等については、前述の共通電極(第1駆動電極)161で使用した酸化物電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。酸化物電極膜(SRO膜)の膜厚としては、20[nm]以上80[nm]以下の範囲が好ましく、40[nm]以上60[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変形(変位)や変形(変位)の劣化特性については十分な特性が得られない。また、この範囲を超えると、その後に成膜した圧電膜(PZT膜)の絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
金属電極膜の材料等については、前述の共通電極(第1駆動電極)161で使用した金属電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。金属電極膜とで記載しており、膜厚としては30[nm]以上200[nm]以下の範囲が好ましく、50[nm]以上120[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲より薄い場合においては、個別電極163として十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生する。また、上記膜厚範囲より厚いと、白金族元素の高価な材料を使用する場合にコストアップとなる。また、白金を材料とした場合に膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して配線などを作製する際に、膜剥がれ等のプロセス不具合が発生しやすくなる。
成膜・エッチングの工程による圧電素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、第1絶縁保護膜17の材料は緻密な無機材料とする必要がある。また、第1絶縁保護膜17として有機材料を用いる場合は、十分な保護性能を得るために膜厚を厚くする必要があるため、適さない。第1絶縁保護膜17を厚い膜とした場合、振動板15の振動を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低い液滴吐出ヘッドになってしまう。薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物、窒化物、炭化膜を用いるのが好ましいが、第1絶縁保護膜17の下地となる電極材料、圧電体材料及び振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、第1絶縁保護膜17の成膜法も、圧電素子16を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法やプラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。第1絶縁保護膜17の好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD法などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。好ましい材料としては、Al2O3、ZrO2、Y2O3、Ta2O3、TiO2などのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特にALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制することができる。
配線19、21及び電極パッド18、20の材料は、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Irのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。これらの電極の作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。膜厚としては、0.1[μm]以上20[μm]以下の膜厚範囲が好ましく、0.2[μm]以上10[μm]以下の膜厚範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲より小さいと抵抗が大きくなり電極に十分な電流を流すことができなくなりヘッド吐出が不安定になる。一方、この膜厚範囲より大きいとプロセス時間が長くなる。また、共通電極161及び個別電極163に接続されるコンタクトホール17b(例えば10[μm]×10[μm])での接触抵抗としては、共通電極161に対して10[Ω]以下、個別電極163に対して1[Ω]以下が好ましい。さらに好ましくは、共通電極161に対して5[Ω]以下、個別電極163に対して0.5[Ω]以下である。この範囲を超えると十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生する。
第2絶縁保護膜22としての機能は、共通電極用の配線19や個別電極用の配線21の保護層としての機能を有するパシベーション層である。前述の図5及び図6に示したように、共通電極161や個別電極163の引き出し部(コンタクトホール17a)を除き、共通電極161及び個別電極163を被覆する。これにより、電極材料に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)とすることができる。第2絶縁保護膜22の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし、有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、パターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上にSi3N4を用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。また、膜厚は200[nm]以上とすることが好ましく、さらに好ましくは500[nm]以上である。膜厚が薄い場合は十分なパシベーション機能を発揮できないため、配線材料の腐食による断線が発生し、インクジェットの信頼性を低下させてしまう。
(態様1)
基板14上に、共通電極161等の第1駆動電極、圧電膜162等の電気機械変換膜及び個別電極163等の第2駆動電極が積層された構造を有する電気機械変換素子の製造方法において、基板14上に第1駆動電極を形成する工程と、該第1駆動電極上に電気機械変換膜を形成する工程と、該電気機械変換膜上に第2駆動電極を形成する工程と、第1駆動電極及び第2駆動電極上に第1絶縁保護膜17を形成する工程と、外部接続用の第1端子電極及び外部接続用の第2端子電極を第1絶縁保護膜上に形成する工程と、第1駆動電極、第2駆動電極それぞれに電気的に接続された配線19等の第1配線、配線21等の第2配線を第1絶縁保護膜上に形成する工程と、第1端子電極及び第2端子電極が露出するコンタクトホール17b等の開口部を有し、電気機械変換膜、第1配線及び第2配線上に第2絶縁保護膜を形成する工程と、第1端子電極及び第2端子電極の各位置に対応した第1接触部及び第2接触部を有する電極パッド18等の第1導電性部材及び電極パッド20等の第2導電性部材を第1端子電極及び第2端子電極に接触させて、第1導電性部材及び第2導電性部材にコロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を供給することにより、電気機械変換膜を分極処理する工程とを有し、分極処理する工程では、コロナ放電もしくグロー放電により発生した電荷が単位面積辺り均一の電荷量で供給される電荷供給領域内に、第1導電性部材と第2導電性部材とを同時に位置させて、第1導電性部材及び第2導電性部材に、コロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を供給し、電気機械変換膜を分極処理する。
これによれば、上記実施形態について説明したように、電荷供給領域内に、第1導電性部材と第2導電性部材とを同時に位置させて、コロナ放電又はグロー放電により電荷を発生させる。電荷供給領域には、単位面積あたり均一に電荷が供給されている。これらの結果、第1導電性部材及び第2導電性部材には互いに単位面積あたり均一な電荷が供給される。例えば、第1導電性部材の面積と第2導電性部材の面積との間に所定の差があれば、第1駆動電極の電荷量と第2駆動電極の電荷量との間には、所定の差が生じる。第1駆動電極と第2駆動電極との間の距離、及び第1駆動電極と第2駆動電極との面積の差が、いずれの電気機械変換素子においても互いに略同一であれば、第1駆動電極と第2駆動電極との電荷量の差により、第1駆動電極と第2駆動電極との電位差が生じる。この電位差によって、分極処理が行われる。第1駆動電極及び第2駆動電極に供給される電荷量が電気機械変換素子間で略同じであるので第1駆動電極と第2駆動電極との電位差も電気機械変換素子間で略同じになる。よって、製造された電気機械変換素子間の分極特性のばらつきを低減することができる。
(態様2)
(態様1)において、複数の電極パッド20等の第2導電性部材が列状に配置され、第2導電性部材の列方向と直交する第2導電性部材の列幅に、当該列方向に直交する1つの電極パッド18等の第1導電性部材の幅が、列方向で重なっている。
これによれば、上記実施形態の実施例1について説明したように、複数の第2導電性部材と1つの第1導電性部材とのそれぞれ少なくとも一部が電荷供給領域内に互いに位置させて、コロナ放電もしくはグロー放電を行う。第1導電性部材及び各第2導電性部材には互いに単位面積あたり均一な電荷が供給される。分極処理工程では、第1駆動電極の電荷量と第2駆動電極の電荷量との間に所定の差を生じさせることができるので、電気機械変換膜内部に所定の電位差が生じ所望の分極処理が行われる。よって、製造された電気機械変換素子間の分極特性のばらつきを低減することができる。
(態様3)
(態様2)において、第2導電性部材の列方向に対して直交する方向の列幅又は第1導電性部材の幅のいずれか一方が、他方に含まれている。
これによれば、上記実施形態の実施例2について説明したように、コロナワイヤ電極の直下における電荷供給領域内に複数の第2導電性部材と1つの第1導電性部材とを完全に配置することができ、ロスなく分極処理を行うことができる。
(態様4)
(態様1)において、複数の第1導電性部材が列状に配置され、かつ複数の第2導電性部材が列状に配置され、第1導電性部材の列方向と第2導電性部材の列方向とが互いに平行であり、第2導電性部材の列方向に直交する第2導電性部材の列幅に、第1導電性部材の列方向に直交する第1導電性部材の列幅が、列方向で重なっている。
これによれば、上記実施形態の実施例1について説明したように、複数の第2導電性部材と複数の第1導電性部材とのそれぞれ少なくとも一部が電荷供給領域内に互いに位置させて、コロナ放電もしくはグロー放電を行う。各第1導電性部材及び各第2導電性部材には互いに単位面積あたり均一な電荷が供給される。分極処理工程では、第1駆動電極の電荷量と第2駆動電極の電荷量との間に所定の差を生じさせることができるので、電気機械変換膜内部に所定の電位差が生じ所望の分極処理が行われる。よって、製造された電気機械変換素子間の分極特性のばらつきを低減することができる。
(態様5)
(態様4)において、第2導電性部材の列方向に対して直交する方向の列幅又は第1導電性部材の列方向に対して直交する方向の列幅のいずれか一方が、他方に含まれている。
これによれば、上記実施形態の実施例2について説明したように、コロナワイヤ電極の直下における電荷供給領域内に複数の第2導電性部材と複数の第1導電性部材とを完全に配置することができ、ロスなく分極処理を行うことができる。
(態様6)
(態様1)〜(態様5)のいずれかの電気機械交換素子の製造方法により得られた電気機械交換素子であって、電気機械変換膜の分極が、±150[kV/cm]の電界強度かけてヒステリシスループを測定する際、測定開始時の0[kV/cm]における分極をPiniとし、+150[kV/cm]の電圧印加後、0[kV/cm]まで戻した際の0[kV/cm]時の分極をPrとした場合に、PrとPiniの差が10[μC/cm2]以下である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、PrとPiniの差が10[μC/cm2]より大きい場合、電気機械変換膜を圧電アクチュエータとして使用した場合に連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない場合があるためである。本態様では、PrとPiniの差が10[μC/cm2]以下なので、電気機械変換膜を圧電アクチュエータとして使用した場合に連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られる。
(態様7)
液滴を吐出するノズル孔と、該ノズル孔が連通する加圧室と、該加圧室内の液体を昇圧させる吐出駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、吐出駆動手段として、加圧室の壁の一部を振動板で構成し、該振動板に(態様6)の電気機械変換素子を備える。
これによれば、上記実施形態について説明したように、態様6の電気機械変換素子を備えているため、予め十分に分極処理を施されており、分極量差の低い電気機械変換素子となっている。このため、所定の電位に対して電気機械変換素子が安定した変形を示し、その結果液滴吐出ヘッドも安定した液滴吐出を行うことが可能になる。
(態様8)
(態様7)の液滴吐出ヘッドを備えた。これによれば、上記実施形態について説明したように、態様7の液滴吐出ヘッドを備えているため、該液滴吐出ヘッドに含まれる電気機械変換素子は予め十分に分極処理を施されており、分極量差の低い電気機械変換素子となっている。このため、所定の電位に対して電気機械変換素子が安定した変形を示し、その結果液滴吐出装置も安定して液滴吐出を行うことが可能になる。
(態様9)
(態様7)の液滴吐出ヘッドで記録液剤を記録材に吐出して画像形成を行う。これによれば、上記実施形態について説明したように、態様7の液滴吐出ヘッドを備えているため、該液滴吐出ヘッドに含まれる電気機械変換素子は予め十分に分極処理を施されており、分極量差の低い電気機械変換素子となっている。このため、所定の電位に対して電気機械変換素子が安定した変形を示し、その結果画像形成装置も安定して液滴吐出を行うことが可能になる。よって、高画質の画像を形成できる。
11 ノズル孔
12 ノズル板
13 液室
14 液室基板
15 振動板
16 圧電素子
17 第1絶縁保護膜
17a コンタクトホール
18 電極パッド
19 配線
20 電極パッド
21 配線
22 第2絶縁保護膜
100 インクジェット記録装置
161 共通電極
162 圧電膜
163 個別電極
201 サンプルステージ
202 コロナワイヤ電極
203 コロナ電源
204 グリッド電極
205 グリッド電源
Claims (9)
- 基板上に、第1駆動電極、電気機械変換膜及び第2駆動電極が積層された構造を有する電気機械変換素子の製造方法において、
基板上に第1駆動電極を形成する工程と、
該第1駆動電極上に電気機械変換膜を形成する工程と、
該電気機械変換膜上に第2駆動電極を形成する工程と、
前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極上に第1絶縁保護膜を形成する工程と、
前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極にそれぞれ電気的に接続された第1配線及び第2配線を前記第1絶縁保護膜上に形成する工程と、
前記第1配線及び前記第2配線上に形成される膜であり、前記第1配線の一部及び前記第2配線の一部をそれぞれ露出させる複数の開口部を有する第2絶縁保護膜を形成する工程と、
前記第2絶縁保護膜の前記複数の開口部によって露出する前記第1配線の露出部及び前記第2配線の露出部を介して、コロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極に供給することにより、前記電気機械変換膜を分極処理する工程とを有し、
前記第1配線の露出部と前記第2配線の露出部とは、露出する面の面積に差があり、
前記分極処理する工程では、コロナ放電もしくグロー放電により発生した電荷が単位面積辺り均一の電荷量で供給される電荷供給領域内に、前記第1配線の露出部と前記第2配線の露出部とを同時に位置させて、前記第1配線の露出部及び前記第2配線の露出部を介して前記第1駆動電極及び前記第2駆動電極にコロナ放電もしくはグロー放電により発生した電荷を供給し、前記電気機械変換膜を分極処理することを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。 - 請求項1記載の電気機械変換素子の製造方法において、
複数の前記第2配線の露出部が列状に配置され、前記第2配線の露出部の列方向と直交する前記第2配線の露出部の列幅に、当該列方向に直交する1つの前記第1配線の露出部の幅が、列方向で重なっていることを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。 - 請求項2記載の電気機械変換素子の製造方法において、
前記第2配線の露出部の列方向に対して直交する方向の列幅又は前記第1配線の露出部の幅のいずれか一方が、他方に含まれていることを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。 - 請求項1記載の電気機械変換素子の製造方法において、
複数の前記第1配線の露出部が列状に配置され、かつ複数の前記第2配線の露出部が列状に配置され、前記第1配線の露出部の列方向と前記第2配線の露出部の列方向とが互いに平行であり、前記第2配線の露出部の列方向に直交する前記第2配線の露出部の列幅に、前記第1配線の露出部の列方向に直交する前記第1配線の露出部の列幅が、列方向で重なっていることを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。 - 請求項4記載の電気機械変換素子の製造方法において、
前記第2配線の露出部の列方向に対して直交する方向の列幅又は前記第1配線の露出部の列方向に対して直交する方向の列幅のいずれか一方が、他方に含まれていることを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれかの電気機械変換素子の製造方法により得られた電気機械変換素子であって、
前記電気機械変換膜の分極が、±150[kV/cm]の電界強度をかけてヒステリシスループを測定する際、測定開始時の0[kV/cm]における分極をPiniとし、+150[kV/cm]の電圧印加後、0[kV/cm]まで戻した際の0[kV/cm]時の分極をPrとした場合に、PrとPiniの差が10[μC/cm2]以下であることを特徴とする電気機械変換素子。 - 液滴を吐出するノズル孔と、該ノズル孔が連通する加圧室と、該加圧室内の液体を昇圧させる吐出駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
前記吐出駆動手段として、前記加圧室の壁の一部を振動板で構成し、該振動板に請求項6記載の電気機械変換素子を備えることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項7記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
- 請求項7記載の液滴吐出ヘッドで記録液剤を記録材に吐出して画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
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