JP6497043B2 - 分極処理装置、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置 - Google Patents

分極処理装置、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、分極処理装置、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置あるいは画像形成装置に使用されるインクジェット記録装置や液滴吐出ヘッドは、インク滴を吐出するノズル、このノズルが連通する加圧室(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称される)、加圧室内のインクを加圧する圧電素子などの電気−機械変換素子等を備えていることが知られている。そして、エネルギー発生手段で発生したエネルギーで加圧室内インクを加圧することによってノズルからインク滴が吐出される。
液滴吐出ヘッドの一つとして、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものが知られている。例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室に独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
また、たわみ振動モードのアクチュエータに使用される圧電素子は、例えば、共通電極である下部電極と、下部電極上に形成されたPZT膜(圧電体層)と、PZT膜上に形成された個別電極である上部電極とで構成される。さらに、上部電極上には層間絶縁膜が形成されて下部電極と上部電極との絶縁が図られ、この層間絶縁膜に開口されたコンタクトホールを介して上部電極に電気的に接続される配線が設けられた構造が知られている(特許文献1、2参照)。
しかしながら、下部電極としては主にPtをベースにした金属電極を用いた実施例がほとんどであり、PZTの疲労特性に対する保証が懸念される。一般的にPZTに含まれるPb拡散による特性劣化が考えられており、酸化物電極を用いることで、疲労特性が改善されることが開示されている(特許文献3参照)。
また、図1に示すように電圧印加直前において圧電体結晶は分極の向きがランダムな状態となっていたものが、電圧印加を繰り返すことで、圧電体結晶は分極の向きが揃ったドメインの集合体となってくることが知られている。つまり、圧電素子の変位量の疲労現象、すなわち、繰り返し駆動中に分極が回転・伸縮を繰り返すため、駆動時間の経過とともに、その分極方向が駆動電界方向に沿って一部固定されてしまい、変位量が駆動中に低下してしまう。
このため、電圧印加を行う前から分極の向きを揃える分極処理工程(ポーリング工程、エージング工程などとも称される)が試みられており、所定の駆動電圧に対して変位量を安定化させる手法、つまり、駆動時における変位量の変動を抑制する手法が行われてきた(特許文献4、5)。
さらに、その手段として、DC電圧、AC電圧、あるいはパルス波形を印加する手法や、コロナ放電などの放電を用いる手法が知られている(例えば特許文献6)。これにより、電荷を供給し、圧電体内に電界を発生させる工夫が行われている。
また、圧電素子の作製に際し、SiウエハからMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスを応用して作製する場合、分極処理工程もまたウエハ(圧電素子を有するアクチュエータ基板)上で行うことが望ましい。この場合、直接電圧印加による方法では圧電素子に対し、プロービングする必要があるが、コロナ放電などの放電による分極処理は非接触の状態で分極処理が可能であるため、電圧印加に比べ処理能力が高いことが知られている。
また、特許文献7では、誘電体のエレクトレット化をする目的で、コロナ放電を採用して、無機誘電材料に対して分極処理する手段が開示されている。
しかしながら、従来の手法では、ウエハ面内あるいは同一平面上に形成されたサンプルに対して均一な分極処理がされにくいという問題は解消できていない。さらに、放電による分極処理手段を用いた場合、同一平面上に多数形成された電気−機械変換素子をすべて均一に分極処理するためにはすべての電気−機械変換素子に均一に電荷が供給される必要があり、均一な分極処理を行うことができる手法が求められている。
そこで、本発明は上記課題を鑑み、電気−機械変換素子を有するアクチュエータ基板に対し、アクチュエータ基板の面内において均一に分極処理を実施することができる分極処理装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の分極処理装置は、基板と、該基板上に形成される下地膜と、該下地膜上に形成される少なくとも1つの下部電極と、該下部電極上に形成される電気−機械変換膜と、該電気−機械変換膜上に形成される少なくとも1つの上部電極とを備えるアクチュエータ基板に対してコロナ放電又はグロー放電により分極処理を行う分極処理装置であって、前記アクチュエータ基板を保持するアース接地されたステージを有し、該ステージの面積は前記アクチュエータ基板の面積よりも大きく、前記ステージにおいて、前記アクチュエータ基板の外周より外側の部分には、前記基板及び前記下地膜と同じ材料を含む電界補正部材が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、電気−機械変換素子を有するアクチュエータ基板に対し、アクチュエータ基板の面内において均一に分極処理を実施することができる分極処理装置を提供することができる。
電圧印加を繰り返すことによる電気−機械変換膜内のドメイン構造の変化を示す模式図である。 コロナ放電を説明するための模式図である。 本発明に係る分極処理装置の構成の一例を示す模式図である。 図3における電界補正部材を示す図(A)及びその断面の模式図(B)である。 電界補正部材の一例における断面を示す模式図(A)及び(B)である。 電界補正部材の有無により生じる差異を説明するための模式図である。 電界補正部材の有無により生じる電界強度の差異を説明するための図である。 分極状態を説明するためのヒステリシスループの例を示す図である。 電気−機械変換膜における分極率とクラック発生率との関係の一例を示す図である。 電気−機械変換素子の構成の一例を示す模式図である。 電気−機械変換素子の構成の他の例を示す断面の模式図(A)及び平面の模式図である。 電気−機械変換素子のSRO膜(111)のXRDパターン図の例を示す図である。 液滴吐出ヘッドの構成の一例を示す模式図(A)及び他の例を示す模式図(B)である。 画像形成装置の構成の一例を示す斜視図である。 画像形成装置の構成の一例を示す側面図である。
以下、本発明に係る分極処理装置、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
本発明に係る本発明の分極処理装置は、図10に示されるように、基板13と、基板13上に形成される下地膜14と、下地膜14上に形成される少なくとも1つの下部電極(第1の電極15)と、該下部電極上に形成される電気−機械変換膜16と、電気−機械変換膜16上に形成される少なくとも1つの上部電極(第2の電極17)とを備えるアクチュエータ基板について分極処理を行う分極処理装置である。そして、図3に示されるように、前記アクチュエータ基板を保持するアース接地されたステージ(サンプルステージ44)を有し、該ステージの面積は前記アクチュエータ基板の面積よりも大きく、前記ステージにおいて、前記アクチュエータ基板の外周より外側の部分には、基板13と同じ材料を少なくとも含む電界補正部材40が設けられていることを特徴とする。
(分極処理装置)
本発明に係る分極処理装置について図面を参照しながら説明する。
まずコロナ放電の概要について説明する。コロナ放電では、図2に示されるようにコロナワイヤ53が電源52を介して、平面電極54と接続されており、電圧を印加することで、大気中の分子が持続的にイオン化される。イオン化された正負のイオンは、コロナワイヤ53と平面電極54との間に生じた電界に沿って移動し、発生した正のイオンはコロナワイヤ53と平面電極54との間に設置された被対象物55、例えば電気−機械変換素子に流れ込み、電荷が電気−機械変換素子に蓄積される。
電気−機械変換膜においては、電圧印加前は、例えば図1(A)に示されるように電気−機械変換膜内のドメイン50における分極方向がバラバラであったものが、電圧印加を繰り返していくと、図1(B)に示されるように分極の方向がある程度まとまって配向することとなる。これにより、電気−機械変換素子の変位量が低下してしまう。つまり、圧電素子の変位量の疲労現象、すなわち、繰り返し駆動中に分極が回転・伸縮を繰り返すため、駆動時間の経過とともに、その分極方向が駆動電界方向に沿って一部固定されてしまい、変位量が駆動中に低下してしまう。
これに対し、電気−機械変換素子を分極処理することで、変位量の変化を早期に収束させ、電気−機械変換素子の駆動力の経時的変化を減らすことができる。なお、分極処理は、ポーリング処理やエージング処理などとも称されることがある。
次に、本実施形態に係る分極処理装置の構成及び制御について図3〜図7を用いて説明する。なお、以下、コロナ放電を例に挙げて説明にするが、これに限られず、グロー放電の場合でも可能である。また、アクチュエータ基板を「ウエハ」と表記することもあるが、同じ意味を示すものである。
図3では、コロナ放電を発生させるコロナ電極41、分極処理の対象となるウエハを設置するためのサンプルステージ44、グリッド電極42が図示されており、グリッド電極42は、コロナ電極41とサンプルステージ44の間に備えられている。また、サンプルステージ44には分極処理の対象となるアクチュエータ基板が設置されるアクチュエータ基板設置部45が図示されており、サンプルステージ44上に電界補正部材40が設けられていることが図示されている。
本実施形態の分極処理装置において、図3では、コロナ電極41はコロナ電極用の電源に接続され、コロナ電極41がワイヤ状の電極であることが示されている。コロナ電極41の構成は特に限定されるものではなく、ワイヤ状のほかにも針状等にすることもでき、各種電導性の材料により構成することができる。本実施形態においては、ワイヤ状のものが好適に用いられ、太さは例えばφ50μmである。コロナ電極41に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく、タングステン、ステンレス等が挙げられ、タングステンを表面研磨、カーボンコート、金メッキ等したものも用いることができる。
また、図3では、グリッド電極42はグリッド電極用の電源に接続され、グリッド電極42がコロナ電極41とサンプルステージ44との間に配置されていることが示されている。グリッド電極42の材料としては、公知のものを用いることができ、例えば、ステンレス、タングステン等が挙げられる。また、網目の開口間隔は、特に制限はないが、例えば1〜3mmのものが挙げられる。グリッド電極42は、その形状を工夫することや、メッシュ加工を施すことにより、コロナ電極41に高電圧を印加したときに、コロナ放電により発生するイオンや電荷等が効率よく均一にサンプルステージ44に降り注ぐように構成されていることが好ましい。
コロナ電極41やグリッド電極42に印加する電圧の大きさは特に制限されるものではなく、必要に応じて適宜変更することが可能である。
本発明の分極処理装置は、分極処理の対象となるアクチュエータ基板を保持するアース接地されたサンプルステージ44を有している。サンプルステージ44の面積は、アクチュエータ基板の面積よりも大きくなっている。サンプルステージ44におけるアクチュエータ基板の外周より外側の部分には、後述する電界補正部材40が設けられる。
サンプルステージ44の材料としては、コロナ放電を行うことができる導電性の材料であれば特に制限はなく、例えば、ステンレス板やその他金属板等が挙げられる。
サンプルステージ44は、上面視、四角形に形成されており、アクチュエータ基板を保持する領域以外は電界補正部材40で覆われていることが好ましい。これによりコロナ電界において、位置による差異を抑制することができる。
図3に示す分極処理装置では、コロナワイヤが一つのみで構成されている。このような装置の場合、コロナ放電の処理範囲以上の面積をもつサンプルの場合、サンプルを移動させながらコロナ放電を実施することが好ましい。すなわち、サンプルステージ44には、コロナ放電した時に分極処理の対象に電荷等が照射(供給)されるエリアが限られるため、対象全体を処理できるように対象を移動させる移動手段が備えられていることが好ましい。移動手段は特に限定されるものではなく、サンプルステージ44が移動する構成としてもよい。
本実施形態に係る分極処理装置には、分極処理の対象を加熱する加熱手段が備えられていることが好ましい。アクチュエータ基板を加熱しながら分極処理を行った場合、対象の応力を緩和させながら処理できるため、所望の分極状態にするために多くの電荷量を供給してもクラックの発生を抑制することができる。
加熱手段の具体的手段は特に限定されるものではなく、レーザー、ホットチャック、ヒーター、ランプ等を用いて加熱するように構成することができる。また、加熱手段は、サンプルステージ44内に設置することもでき、サンプルステージ44外から加熱するように設置することもできる。
これらの中でも、レーザー装置を用いることが好ましく、レーザー装置を用いた場合、コロナ放電をしている領域に対して選択的に加熱することができる。また、レーザー装置はサンプルの加熱領域に応じて、個数を増やすことが可能である。
サンプルステージを加熱する機構としたとき、特に電気−機械変換膜のキュリー温度の1/3倍から1/2倍の温度を処理中に印加する場合、分極処理後に別の領域を分極処理することとなるが、コロナ放電により分極処理をしていない領域については、処理中の温度により熱履歴のみが発生し、脱分極が生じてしまう。
そこで、加熱源としてレーザーを採用することで、処理領域のみを選択的に加熱することができ、分極処理していない領域については、処理時以外は加熱していないので熱履歴がなく、脱分極を抑制することができる。また、レーザー加熱条件で変えることが可能なパラメータとして、レーザーパワー、レーザー照射時間、レーザー照射回数などが挙げられ、狙いの温度に応じて、パラメータを調整することができる。
処理中の温度としては、40℃以上300℃以下が好ましく、80℃以上250℃以下がより好ましい。40℃より小さいと、分極処理による十分な効果が得られないことがあり、300℃よりも大きいと、電気−機械変換素子の圧電特性(d31等)が損なわれることがある。
本実施形態の分極処理装置におけるサンプルステージ44は、アース接地されている。アース接地されていない場合、コロナ放電を行ってもコロナ電界が発生せず、分極処理がなされない。また、サンプルステージ44のアース接地は、アクチュエータ基板設置部45のみならず、電界補正部材40の部分(電界補正部材40の直下)についても行われている。すなわち、サンプルステージ44の全面でアース接地されている。
次に、本実施形態における電界補正部材40について説明する。図4は、図3における電界補正部材を示す図及びその断面の模式図である。図4(B)は図4(A)におけるAA断面図である。図4(B)に示されるように、サンプルステージ44において、アクチュエータ基板設置部45には電界補正部材40は設けられず、アクチュエータ基板が設置される部分より外側の部分には、電界補正部材40が設けられている。
コロナ放電による分極処理を実施することにより、ウエハには電界が生じるが、分極処理においてはこの電界がウエハ面内すべての領域で均一にすることが好ましい。また、コロナ放電による電界は主に、放電を発生させるコロナワイヤ(コロナ電極41)、コロナワイヤから対象となるサンプル(あるいはサンプルステージ44)までの距離、サンプルの電気特性(とくに抵抗特性)によって決定される。
アクチュエータ基板の中心部においては、上記で挙げた因子でほぼ決定されるが、アクチュエータ基板の外周部においては、アクチュエータ基板のエッジより外側の状態によっても左右されてしまう。すなわち、アクチュエータ基板のエッジの外側の状態によって、エッジの内側と外側とで電界が非連続な状態になってしまう。非連続な状態になると、アクチュエータ基板において均一に分極処理が行えず、このような分極処理を行った電気−機械変換素子を液滴吐出ヘッドに用いた場合、電気−機械変換素子によって吐出特性が異なり、全体として吐出安定性が得られない。
また、従来のサンプルステージは、導電部材のみで構成されているため、アクチュエータ基板の外周部とアクチュエータ基板の中心部での電界が異なっている。アクチュエータ基板には絶縁保護膜が形成されていることが多いが、アクチュエータ基板が設置されるサンプルステージは導電部材から成っているため、アクチュエータ基板の外周より外側の方が電界強度は高くなる。これは、アクチュエータ基板上は絶縁保護膜が形成されていることで、抵抗成分があることによる。そのため、アクチュエータ基板の外周より内側と外側とで電界が非連続となり、アクチュエータ基板の外周部で形成されている電気−機械変換素子とアクチュエータ基板の中心部で形成されている電気−機械変換素子に注入される電荷量に差が生じてしまう。これにより、分極の進展具合の差異、すなわち、バラツキが生じてしまう。
そこで、本発明では、サンプルステージ44において、アクチュエータ基板の外周より外側の部分には、アクチュエータ基板における基板13と同じ材料を少なくとも含む電界補正部材40を設けている。これにより、サンプルステージ44のアクチュエータ基板のエッジ外側についても、分極処理の対象となるサンプルと同様な状態にすることで、電界が非連続になることを抑制することができる。このため、アクチュエータ基板の面内に配置された電気−機械変換素子に対して、コロナ放電を利用した分極処理を実施する際に、アクチュエータ基板の中心部とアクチュエータ基板の外周部での分極特性のバラツキが抑制された電気−機械変換素子の作製が可能となる。
また、アクチュエータ基板の面内でのバラツキが抑制されるため、素子選別にかかるコストを抑制することができる。このような分極処理がされた電気−機械変換素子を液滴吐出ヘッド等に用いることにより、連続駆動させたときの変位量の変化を抑制することができ、インク吐出特性を良好に保持できる。また、これとともに、安定したインク吐出特性を得ることができる。
図5に、電界補正部材40の一例における断面図を示す。図5は、図4(B)における断面を示すものである。図5(A)における電界補正部材40は、Si及びSiOからなる例が図示されており(符号40a、40b)、このときのアクチュエータ基板における基板13はSiからなるものであり、電界補正部材40は基板13の材料を含んでいる構成である。
本発明において、電界補正部材40は、アクチュエータ基板における基板13及び下地膜14と同じ材料を含むことが好ましい。この場合、アクチュエータ基板における基板13及び下地膜14からなることが好ましい。図5(A)における電界補正部材40は、Si及びSiOからなる例であり、このときのアクチュエータ基板における基板13、下地膜14はSi、SiOからなるものである。すなわち、電界補正部材40は、アクチュエータ基板における基板13及び下地膜14からなる構成である。これにより、アクチュエータ基板の中心部とアクチュエータ基板の外周部との電界強度の差異をより低減させることができる。
また、電界補正部材40の厚みは、必要に応じて適宜変更することが可能であるが、アクチュエータ基板における基板13と同等の厚みであることが好ましい。上記の電界補正部材40のように基板13及び下地膜14と同じ材料を含む場合は、アクチュエータ基板における基板13と下地膜14を合わせた厚みと同じであることが好ましい。これにより、アクチュエータ基板の中心部とアクチュエータ基板の外周部との電界強度の差異をより低減させることができる。
また、図5(B)には、電界補正部材40のその他の例を示す。図5(B)における電界補正部材40は、Si、SiO及びSiからなる例が図示されている(符号40a、40b、40c)。このとき、アクチュエータ基板は、最表面に絶縁保護膜を有しており、該アクチュエータ基板における基板13、下地膜14、絶縁保護膜はSi、SiO、Siからなるものである。このように、電界補正部材40の構成を、アクチュエータ基板における基板13、下地膜14、絶縁保護膜の構成と同等のものとすることが好ましい。これにより、アクチュエータ基板の中心部とアクチュエータ基板の外周部との電界強度の差異をより低減させることができる。
なお、電界補正部材40がアクチュエータ基板における基板13、下地膜14、絶縁保護膜の構成と同等である場合、電界補正部材40の厚みは、アクチュエータ基板における基板13、下地膜14及び絶縁保護膜と同等であることが好ましい。
本発明において、電界補正部材40は、アクチュエータ基板における基板13と同じ材料を少なくとも含んでいればよく、上記のように適宜変更が可能である。すなわち、アクチュエータ基板における基板13、下地膜14、絶縁保護膜を構成するもののうち、任意に組合せを変えて構成することができる。また、電界補正部材40における層の順番についても、適宜変更が可能であるが、アクチュエータ基板における基板13、下地膜14、絶縁保護膜と同様の順に構成されることが好ましい。
図6に、電界補正部材40の有無により生じる差異を説明するための模式図を示す。図6は図4(A)におけるAA断面を示す模式図であり、アクチュエータ基板設置部45にアクチュエータ基板46が設置されていることが図示されている。図6紙面左側には、アクチュエータ基板46の外周より外側の部分に電界補正部材40が設けられているが、図6紙面右側には、アクチュエータ基板46の外周より外側の部分に電界補正部材40が設けられていない。これに対し、コロナ電極41、グリッド電極42、サンプルステージ44を用いて分極処理を行う。なお、図6におけるサンプルステージ44の全面はアース接地されている。
図7に、図6において分極処理を行った場合の電界強度を示す。図6における電界補正部材40は、図5(A)に示される構成例である。図7に示されるように、電界補正部材40を設けた場合、アクチュエータ基板の外周部と中心部で電界強度の値が近いことがわかる。
アクチュエータ基板46上には絶縁保護膜が形成されており、抵抗成分があるため電界強度が下がるが、電界補正部材40が設けられている部分においても電界補正部材40により電界強度が下がる。これにより、電界が非連続になることを抑制することができ、アクチュエータ基板の外周部と中心部で電界強度を近い値にすることができる。
一方、電界補正部材40を設けない場合、図7に示されるように、アクチュエータ基板の外周部と中心部で電界強度の値が大きく異なることがわかる。アクチュエータ基板46上には絶縁保護膜が形成されており、抵抗成分があるため電界強度が下がるが、電界補正部材40が設けられていない部分では、導電部材であるサンプルステージ44が表面に露出し、電界強度が高くなってしまう。これにより電界が非連続になってしまい、アクチュエータ基板46が均一に分極処理されない。
電界補正部材40の作製方法は、特に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、シリコンウエハに熱酸化膜を形成し、電界補正部材40とすることもできる。この他にも、スピンコートやスパッタ等により形成することもできる。なお、必要に応じてエッチング処理やダイシング処理を施してもよい。
また、アクチュエータ基板における基板13や下地膜14を形成するのと同時に、電界補正部材40を形成することも可能であり、この場合、電界補正部材40の作製工程を減らすことができ、コストの低減、作製の容易化を図ることができる。
電界補正部材40は、アクチュエータ基板の外周と接していることが好ましいが、本発明の効果が得られる範囲でアクチュエータ基板の外周と離れていてもよい。アクチュエータ基板の外周と接している場合、アクチュエータ基板の外周より内側と外側とで電界が非連続となることをより抑制することができる。また、電界補正部材40は、アクチュエータ基板における基板や下地膜と一体として形成されていてもよい。
次に、分極状態について説明する。
分極処理の状態については、P−Eヒステリシスループから判断することができる。図8(A)に示すように電界強度をかけてヒステリシスループを測定し、最初の0kV/cm時の初期状態の分極量をPini、電圧印加後に0kV/cmまで戻したときの0kV/cm時の分極量を残留分極Prとする。Pr−Piniの値を分極率として定義し、この分極率が小さいほど分極が進んでいると判断される。
通常、分極処理を行わない状態のヒステリシスは図8(A)のようにPiniは0に近い値であるが、分極処理を行うことで図8(B)のようにPiniが大きくなり、分極処理が進むことで分極量差Pr−Piniの値が小さくなる。分極率は、好ましくは10μC/cm以下であり、より好ましくは5μC/cm以下であり、これを満たす場合、分極処理が十分になされているといえる。10μC/cmよりも大きい場合、分極処理が十分でなく、電気−機械変換膜(例えば、後述するPZTによる膜)が圧電アクチュエータとして連続駆動した後の変位劣化について十分な特性が得られないことがある。
所望な分極率Pr−Piniを得るためには、コロナ、グリッド電極電圧やサンプルステージとコロナ、グリッド電極間距離等を調整することにより、達成が可能である。ところが、所望な分極率を得ようとした場合には、電気−機械変換膜に対して高い電界を発生させる必要があり、この影響により膜中にクラックが発生する。具体的な説明を行うと、後述する図10や図11に示すように、電気−機械変換膜16が、基板13に対して拘束状態がある場合においては、電界が発生し、その電界を受けて、自身が変形したくても、拘束力があるため自由に変形できない。
このため、ある一定以上の電界が生じた場合においては、電気−機械変換膜16が変形しようと膜応力が発生し、その応力を緩和させるために、膜中にクラックが発生してしまう。図9に、電気−機械変換膜16中に発生したクラック発生率(クラック発生したビット数/全ビット数)と分極率の関係を示す。分極率を小さくしようとするとクラック発生率が高くなり、これら2つの関係はトレードオフになっていることがわかる。
また、図2について述べたように、コロナワイヤを用いて、コロナ放電させるときには、大気中の分子をイオン化させることで、陽イオンを発生し、電気−機械変換素子の電極パッド部を介して陽イオンが流れ込むことで、電荷を電気−機械変換素子に蓄積している。上部と下部電極の電荷差によって内部電位差が生じて、分極処理が行われていると考えられている。
また、分極処理を行う際に必要な電荷量Qについては特に限定されるものではないが、例えば、電気−機械変換素子に1.0×10−8C以上の電荷量が蓄積されることが好ましく、4.0×10−8C以上の電荷量が蓄積されることがより好ましい。上記好適な範囲の電荷量を電気−機械変換素子に蓄積させることにより、より確実に分極処理を行うことができる。この値に満たない場合は、分極処理が十分できず、PZTの圧電アクチュエータとして連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないことがある。
アクチュエータ基板は、下部電極と電気的に接続される下部電極パッドと、上部電極と電気的に接続される上部電極パッドを有することもでき、上部電極パッドにコロナ放電又はグロー放電により発生した電荷を注入することにより、分極処理を行うことができる。また、上述したようにコロナ放電により発生した電荷は、正電荷であることが好ましい。
(アクチュエータ基板)
次に、アクチュエータ基板について図10、図11を用いて説明する。図10では、基板13、下地膜14、第1の電極15、電気−機械変換膜16、第2の電極17により構成されている例が示されている。また、絶縁保護膜、引き出し配線を含めた構成例について、図11(A)及び図11(B)に示す。第1の絶縁保護膜21は、コンタクトホール25、26を有しており、第1の電極15に対して、共通電極引き出し配線(第3の電極27)、第2の電極17に対して個別電極引き出し配線(第4の電極28)が伸びた構成となっている。このとき、第1の電極15を共通電極、第2の電極17を個別電極として、共通・個別電極引き出し配線を保護する第2の絶縁保護膜22が形成されている。図11(B)に示されるように、一部開口されて共通電極パッド23、個別電極パッド24を形成している。なお、図11(B)では絶縁保護膜は省略されている。
なお、第1の電極15は下部電極を示し、第2の電極は上部電極を示すものであり、それぞれ共通電極、個別電極とも称されることがある。
<基板>
アクチュエータ基板の基板13としては、特に制限されるものではないが、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、厚みが100〜600μmであることが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種を用いることができ、一般的に(100)、(111)が用いられており、本発明においては、(100)の面方位を持つ単結晶基板が好ましい。
また、圧力室18を作製する場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工するが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができる。
本発明においては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能であるが、この場合、マスク材として用いられ得るSiOもエッチングされてしまうことにも留意する。
<下地膜>
下地膜14(振動板とも称されることがある)は、電気−機械変換膜16によって発生した力を受けて、変形変位して圧力室18のインク滴を吐出させる。そのため、下地膜14としては所定の強度を有したものであることが好ましい。
下地膜14の材料としては、例えばSi、SiO、SiをCVD(Chemical Vapor Deposition)法により作製したものが挙げられる。
さらに、第1の電極15、電気−機械変換膜16の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、電気−機械変換膜16は、一般的な材料としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が使用されることから、下地膜14の材料は線膨張係数8×10−6(1/K)に近い線膨張係数として、5×10−6〜10×10−6の線膨張係数を有した材料が好ましく、さらには7×10−6〜9×10−6の線膨張係数を有した材料がより好ましい。
具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びこれらの化合物等であり、これらをスパッタ法もしくは、ゾルゲル法を用いてスピンコーター等にて作製することができる。
膜厚としては0.1μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜3μmがより好ましい。0.1μm未満の場合、圧力室18の加工が難しくなり、10μmより大きい場合、下地膜14が変形変位しにくくなり、インク滴の吐出が不安定になることがある。
<第1の電極>
第1の電極15としては、金属もしくは金属と酸化物からなっていることが好ましい。下地膜14と金属膜の間に密着層を積層させることで、剥がれ等を抑制することができる。以下、密着層含めて金属電極膜、酸化物電極膜の詳細について記載する。
−密着層−
密着層の作製の例としては、Tiをスパッタ成膜後、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて、650〜800℃、1〜30分、O雰囲気でチタン膜を熱酸化させ、チタン膜を酸化チタン膜にする方法が挙げられる。
酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいが、チタン膜の高温による熱酸化法が好ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成が必要となることに留意する。
さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方が酸化チタン膜の結晶性が良好になる。これは、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。従って、昇温速度の速いRTAによる酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。
また、Ti以外の材料としてはTa、Ir、Ru等が挙げられる。
密着層の膜厚としては、10nm〜50nmが好ましく、15nm〜30nmがより好ましい。10nm未満の場合、密着性に懸念があり、50nmよりも大きい場合、密着層上の膜において良好な結晶性が得られないことがある。
−金属電極膜−
第1の電極15における金属電極膜の金属材料としては、例えば白金、イリジウム、白金−ロジウムなどの白金族元素、これらの合金膜などが挙げられる。
また、白金を使用する場合には下地膜14(特にSiO)との密着性を考慮し、密着層を先に積層した後、金属電極膜を作製することが好ましい。
金属電極膜の作製方法の例としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が挙げられる。
金属電極膜の膜厚は、80〜200nmが好ましく、100〜150nmがより好ましい。80nm未満の場合、共通電極として十分な電流を供給できない場合があり、インク吐出をする際に不具合が発生する場合がある。200nmより大きい場合、白金族元素などの高価な材料を用いると、コスト増につながることがある。また200nmより大きい場合において、白金を用いて膜厚を厚くすると表面粗さが大きくなり、金属電極膜上の酸化物電極膜の表面粗さやPZTの結晶配向性に影響を及ぼして、インク吐出が不良となることがある。
−酸化物電極膜−
第1の電極15における酸化物電極膜の材料としては、SrRuOを用いることができ、これ以外にも、Sr(A)(1−x)Ru(B)(1−y)、A=Ba、Ca、B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述されるような材料についても用いることができる。SrとRuの組成比については、Sr/Ruが0.82〜1.22であることが好ましい。この範囲から外れると酸化物電極膜の比抵抗が大きくなり、電極として十分な導電性が得られなくなることがある。
酸化物電極膜の作製方法としては、例えばスパッタ法により作製する方法が挙げられる。このとき、SrRuO膜を成膜する場合、結晶配向性を考慮し、スパッタ条件を設定することが好ましい。例えば、第1の電極15の金属電極膜をPt(111)とした場合、SrRuO膜についても(111)配向させることが好ましく、そのためには成膜温度を500℃以上での基板加熱を行い、成膜するなどの検討をすること等が挙げられる。
例えば特許第3782401号公報に記載のSRO成膜条件については、室温で成膜した後、RTA処理にて結晶化温度(650℃)で加熱、酸化を行っている。この場合、SRO膜としては、十分結晶化され、電極としての比抵抗としても十分な値が得られるが、膜の結晶配向性としては、(110)が優先配向しやすくなり、その上にPZTを成膜すると(110)に配向しやすくなる。
以下にSRO膜を作製する場合の例やその考慮点について説明する。
例えばPt(111)上に作製したSRO膜の結晶性については、PtとSROで格子定数が近いため、通常のX線回折測定におけるθ−2θ測定では、SRO(111)とPt(111)の2θ位置が重なってしまい判別が難しい。Ptについては消滅則の関係からPsi=35°傾けた2θが約32°付近の位置には回折線が打ち消し合い、回折強度が見られない。
そのため、Psi方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することでSROが(111)に優先配向しているかを確認することができる。図12に、2θ=32°に固定し、Psiを振ったときの測定結果の例を示す。Psi=0°ではSRO(110)においてほとんど回折強度が見られず、Psi=35°付近において、回折強度が見られることから本成膜条件にて作製したものについては、SROが(111)配向していることが確認できる。また、上記した室温で成膜した後にRTA処理を行い作製したSRO膜については、Psi=0°のときにSRO(110)の回折強度が見られる。
また、連続駆動を行った場合、駆動させた後の変位量が初期変位に比べてどのくらい劣化したかを考慮すると、後述する電気−機械変換膜16におけるPZTの配向性が影響しており、(110)では変位劣化を抑制するには不十分となることがある。さらにSRO膜の表面粗さについては、成膜温度が影響しており、室温から300℃では表面粗さが小さくなり2nm以下になる。なお、表面粗さについてはAFM(Atomic Force Microscope、原子間力顕微鏡)により測定される表面粗さ(平均粗さ)を指標としている。
これらのことから、表面粗さとしては、フラットではあるが結晶性が十分でなく、その後成膜したPZTの圧電アクチュエータとしての初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないことから、SRO膜の結晶性や表面粗さを考慮する必要がある。
酸化物電極膜の表面粗さとしては、4nm〜15nmが好ましく、6nm〜10nmがより好ましい。上記の範囲を満たさない場合、その後成膜するPZTの絶縁耐圧が悪くなり、リークしてしまう場合がある。
上記の結晶性や表面粗さを得るためには、成膜温度を500℃〜700℃、より好ましくは520℃〜600℃として成膜をすることが好ましい。
酸化物電極膜の膜厚としては、40nm〜150nmが好ましく、50nm〜80nmがより好ましい。40nm未満の場合、初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないことがあり、PZTのオーバーエッチングを抑制するためのストップエッチング層としての機能も得られにくくなることがある。また、150nmより大きい場合、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が悪くなり、リークしてしまうことがある。
酸化物電極膜の比抵抗としては、5×10−3Ω・cm以下が好ましく、1×10−3Ω・cm以下がより好ましい。5×10−3Ω・cmよりも大きい場合、十分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生することがある。
<電気−機械変換膜>
電気−機械変換膜16の材料としては、PZTが好適に用いられる。PZTはジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合であり、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O、一般的にはPZT(53/47)と示されることがある。
PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料を一般式として表した場合、ABOで記述され、A=Pb、Ba、Sr B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が挙げられる。
これらの例としては、(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O等が挙げられ、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合の例である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
電気−機械変換膜16の作製方法としては、例えばスパッタ法やゾルゲル法を用いてスピンコーター等にて作製することが挙げられる。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
また、PZTをゾルゲル法により作製する場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ、均一の溶液を得ることで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加しても良い。
また、下地膜14全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得ることができる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度を調整し、PZT膜を作製していくのが好ましい。
電気−機械変換膜16の膜厚としては0.5μm〜5μmが好ましく、1μm〜2μmがより好ましい。0.5μm未満の場合、圧力室18の加工が難しくなり、5μmより大きい場合、下地膜14が変形変位しにくくなりインク滴の吐出が不安定になるほか、十分な変位を発生できなくなることがあり、また作製工程の負担が増加し、プロセス時間が長くなることがある。
また、比誘電率としては600以上2000以下であることが好ましく、1200以上1600以下がより好ましい。このとき、この値を満たないときには十分な変位特性が得られないことがあり、2000より大きくなると、分極処理が十分行われず、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないことがある。
<第2の電極>
第2の電極17としては、酸化物電極膜、金属電極膜を有していることが好ましい。
積層の順としては、酸化物電極膜、金属電極膜の順に積層される。第2の電極17における酸化物電極膜、金属電極膜は、第1の電極15における酸化物電極膜、金属電極膜と同じ態様とすることができるため、相違点について以下に説明する。
−酸化物電極膜−
第2の電極17における酸化物電極膜の膜厚としては、20nm〜80nmが好ましく、40nm〜60nmがより好ましい。20nm未満の場合、初期変位や変位劣化特性について十分な特性が得られないことがあり、80nmより大きい場合、その後成膜するPZTの絶縁耐圧が悪くなり、リークしやすくなることがある。
−金属電極膜−
第2の電極17における金属電極膜の膜厚としては30nm〜200nmが好ましく50nm〜120nmがより好ましい。30nm未満の場合、十分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生することがある。200nmより大きい場合、白金族元素などの高価な材料を用いると、コスト増につながることがある。また200nmより大きい場合において、白金を用いて膜厚を厚くすると表面粗さが大きくなり、さらに積層する場合、膜剥がれ等が発生することがある。
<第1の絶縁保護膜>
次に、第1の電極15上に積層される第1の絶縁保護膜21について説明する。
第1の絶縁保護膜21は成膜・エッチングの工程による電気−機械変換素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、緻密な無機材料が好ましい。有機材料では十分な保護性能を得るためには膜厚を厚くする必要があるため、好ましくないことがある。
第1の絶縁保護膜21の膜厚を大きくすると、下地膜14の振動変位を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低い液滴吐出ヘッドになってしまうことがある。
第1の絶縁保護膜21の膜厚を抑えつつ、高い保護性能を得るには、酸化物、窒化物、炭化物を用いるのが好ましく、第1の絶縁保護膜21の下地となる、電極材料、圧電体材料、下地膜材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。
成膜方法は電気−機械変換素子を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法やプラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。
第1の絶縁保護膜21に用いられる好ましい材料としては、Al、ZrO、Y、Ta、TiOなどのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。ALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制することができる。
第1の絶縁保護膜21の膜厚は、電気−機械変換素子の保護性能を確保できる十分な薄膜とする必要があると同時に、下地膜の変位を阻害しないように可能な限り薄くする必要があり、20nm〜100nmが好ましい。20nm未満の場合、電気−機械変換素子の保護層としての機能が不足してしまうため、電気−機械変換素子の性能が低下してしまうことがある。100nmより大きい場合、下地膜14の変位が低下するため、吐出効率の低い液滴吐出ヘッドとなることがある。
また、第1の絶縁保護膜21を2層にする構成とすることもできる。この場合、2層目の絶縁保護膜を厚くするため、下地膜14の振動変位を著しく阻害しないように第2の電極17付近において2層目の絶縁保護膜を開口するような構成とすることもできる。
このとき2層目の絶縁保護膜としては、酸化物、窒化物、炭化物又はこれらの複合化合物を用いることができ、また半導体デバイスで一般的に用いられるSiOなども用いることができる。
2層目の絶縁保護膜の成膜方法は公知の手法を用いることができ、CVD法、スパッタリング法なとが挙げられ、電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。
2層目の絶縁保護膜の膜厚は共通電極と個別電極配線に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚とする必要がある。すなわち絶縁保護膜に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらに、絶縁保護膜の下地の表面性やピンホール等を考慮すると膜厚は200nm以上が好ましく、500nm以上がより好ましい。
<第3の電極、第4の電極、電極パッド>
第3の電極27、第4の電極28(これらを引き出し配線と称することがある)及び電極パッド23、24の材料は、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Irのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。これらの電極の作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
膜厚としては、0.1〜20μmが好ましく、0.2〜10μmがより好ましい。0.1μm未満の場合、抵抗が大きくなり電極に十分な電流を流すことができなくなり、ヘッド吐出が不安定になることがある。一方、20μmより大きい場合、プロセス時間が長くなることがある。
また、共通電極及び個別電極に接続されるコンタクトホール25、26(例えば10μm×10μm)での接触抵抗としては、共通電極としは10Ω以下、個別電極としては1Ω以下が好ましい。より好ましくは、共通電極としては5Ω以下、個別電極としては0.5Ω以下である。この範囲を超えると十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生することがある。
また、電極パッド部の面積については、50×50μm以上が好ましく、100×300μm以上がより好ましい。この値を満たさない場合は、十分な分極処理ができなくなることがあり、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生することがある。
<第2の絶縁保護膜>
第2の絶縁保護膜22としての機能は、個別電極配線や共通電極配線の保護層の機能を有するパッシベーション層である。図11(A)に示されるように、第2の絶縁保護膜22は個別電極引き出し部と共通電極引き出し部を除き、個別電極と共通電極上を被覆する。これにより電極材料に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液滴吐出ヘッドとすることができる。
材料としては、公知の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられ、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
ただし有機材料の場合には膜厚を大きくする必要があるため、パターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上にSiを用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であり、好ましい。
また、膜厚は200nm以上が好ましく、500nm以上がより好ましい。200nm未満の場合、十分なパッシベーション機能を発揮できないため、配線材料の腐食による断線が発生し、液滴吐出の信頼性を低下させてしまうことがある。
電気−機械変換素子上とその周囲の下地膜上に開口部をもつ構造が好ましい。これは、前述の第1の絶縁保護膜21の個別液室領域を薄くしていることと同様の理由である。これにより、高効率かつ高信頼性の液滴吐出ヘッドとすることが可能になる。
開口部分の形成においては、第1及び第2の絶縁保護膜で電気−機械変換素子が保護されているため、フォトリソグラフィ法、ドライエッチングを用いることができる。
(液滴吐出ヘッド)
次に本発明に係る液滴吐出ヘッドについて説明する。
図13(A)に示されるように、ノズル11、ノズル板12、圧力室18を備える液滴吐出ヘッドが挙げられる。また、図13(B)に示されるように複数個配置させる構成としてもよい。
本発明によれば、電気−機械変換素子が簡便な製造工程で(かつバルクセラミックスと同等の性能を有する)形成でき、その後の圧力室形成のための裏面からのエッチング除去、ノズル孔を有するノズル板を接合することで液滴吐出ヘッドが得られる。なお、図中には液体供給手段、流路、流体抵抗についての記述は省かれている。
(画像形成装置)
次に、本発明の液滴吐出ヘッドを備える画像形成装置について説明する。本発明の画像形成装置の一例を図14、図15に示す。図14は画像形成装置の斜視図であり、図15は画像形成装置の気孔部の側面図である。
本発明における画像形成装置には、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載された液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部82等が収納されている。
装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(または給紙トレイ)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。そして、給紙カセット84または手差しトレイ85から給送される用紙83が取り込まれ、印字機構部82によって所要の画像が記録された後、後面側に装着された排紙トレイ86に用紙83が排紙される。
印字機構部82には、左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93が主走査方向に摺動自在に保持されている。
このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッドからなるヘッド94が複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列され、インク滴吐出方向を下方に向けて液滴吐出ヘッドが装着されている。またキャリッジ93にはヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95が交換可能な態様で装着されている。
インクカートリッジ95には上方に大気と連通する大気口、下方には液滴吐出ヘッドにインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体が設けられている。この多孔質体の毛管力により、液滴吐出ヘッドに供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液滴吐出ヘッドとしてここでは各色のヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドとしてもよい。
ここで、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、キャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100が張装されている。このタイミングベルト100はキャリッジ93に固定されており、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
また、画像形成装置には、給紙カセット84にセットした用紙83をヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102が設けられている。さらに、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とが設けられている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109が設けられている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112が設けられている。さらに、画像形成装置には、用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116が配設されている。
記録時には、キャリッジ93が移動しながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後、次の行の記録が行われる。記録終了信号又は用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83が排紙される。
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117が配置されており、回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。
キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段でヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止することができる。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持することができる。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等をクリーニング手段により除去でき、吐出不良を回復することができる。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
本発明の画像形成装置においては、下地膜の駆動の不良等によるインク滴吐出不良を抑制することができ、変位の変動を抑制することができることから、安定したインク滴吐出特性、画像品質の向上を図ることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。
なお、以下、実施例2とあるのは本発明に含まれない参考例2とする。
(実施例1)
<アクチュエータ基板の作製>
基板13としての6インチシリコンウエハ(膜厚625μm)上に、下地膜14としての熱酸化膜(膜厚1μm)を形成し、第1の電極15の密着層として、チタン膜(膜厚30nm)をスパッタ装置にて成膜した後にRTAを用いて750℃にて、熱酸化させた。
続いてチタン膜上に金属電極膜として白金膜(膜厚100nm)、酸化物電極膜としてSrRuO膜(膜厚60nm)をスパッタ成膜した。スパッタ成膜時の基板加熱温度については550℃にて成膜を実施した。
次に、電気−機械変換膜16の作製にあっては、Pb:Zr:Ti=114:53:47に調整されたPZT前駆体溶液を用いて、スピンコート法により成膜した。PZT前駆体溶液の塗布液の合成を以下に説明する。
出発材料として酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用い、酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。なお、化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてあるが、これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
次に、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、前述の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT前駆体溶液におけるPZT濃度は0.5mol/lであった。
このPZT前駆体溶液の塗布液を用いて、スピンコート法により成膜し、成膜後、120℃で乾燥させた後、500℃で熱分解を行った。3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度750℃)をRTAにて行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回(24層)実施し、膜厚が約2μmのPZT膜を得た。
次に、第2の電極17の酸化物電極膜としてSrRuO膜(膜厚40nm)、金属電極膜として白金膜(膜厚125nm)をスパッタ成膜した。その後、東京応化社製のフォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ社製)を用いて図11(A)及び図11(B)に示すようなパターンを作製した。
次に、第1の絶縁保護膜21として、ALD工法を用いてAl膜を50nm成膜した。このとき、原材料としてアルミニウムについては、TMA(トリメチルアルミニウム、シグマアルドリッチ社)、酸素についてはオゾンジェネレーターによって発生させたOを用い、これらを交互に積層させることで、成膜を進めた。その後、エッチングによりコンタクトホール25、26を形成し、第3の電極27、第4の電極28としてAlをスパッタ成膜し、エッチングによりパターニング形成した。
次に、第2の絶縁保護膜22としてSiをプラズマCVD法により500nm成膜し、エッチングにより個別電極パッド24、共通電極パッド23を形成し、図11(A)及び図11(B)に示すようなアクチュエータ基板を作製した。
<電界補正部材>
本実施例における電界補正部材40としては、シリコンウエハ上に、熱酸化膜を形成したものを用いた。すなわち、本実施例における電界補正部材40は、上述のアクチュエータ基板における基板13及び下地膜14からなるものであり、図5(A)に示されるようなSi/SiOの構成である。また、電界補正部材40の厚みは、上述のアクチュエータ基板における基板13及び下地膜14と同じである。
また、本実施例における電界補正部材40は、上述のアクチュエータ基板に沿って形成されている。
なお、本実施例における電界補正部材40は、上述したアクチュエータ基板の作製方法に沿って、上述のアクチュエータ基板とは別に10インチシリコンウエハを用いて作製した。電界補正部材40の成形については、アクチュエータ基板設置部45の形成や電界補正部材40の厚みの調整をエッチングにより行い、後述するサンプルステージ44の大きさに適合するようダイシングにより実施した。
<分極処理>
分極処理装置については、図3に示される分極処理装置を用いた。本実施例では、コロナ電極41としてφ50μmのタングステンのワイヤを用い、グリッド電極42としてステンレス製の開口率60%のグリッド電極を用いた。
本実施例で用いた分極処理装置におけるサンプルステージ44は、金メッキしたアルミ合金からなる導電部材であり、アクチュエータ基板設置部45及び電界補正部材40が設けられる部分はアース接地されている。また、本実施例におけるサンプルステージ44は、上面視、四角形に形成されており、上述のアクチュエータ基板を保持する領域以外は電界補正部材40で覆われていた。
また、加熱手段としては、ホットチャックを用いてサンプルステージ44を加熱し、95℃で処理を行った。
(実施例2)
実施例1において、電界補正部材40を上述のアクチュエータ基板における基板13と同じ構成とした以外は実施例1と同様にしてアクチュエータ基板を作製し、分極処理を行った。なお、電界補正部材40の厚みは、上述のアクチュエータ基板における基板13と同じである。
(比較例1)
実施例1において、電界補正部材40を設けずに分極処理を行ったこと以外は実施例1と同様にしてアクチュエータ基板を作製し、分極処理を行った。
(比較例2)
実施例1において、分極処理装置のサンプルステージ44の大きさを設置するウエハと同じ大きさとし、上面視、円形のものとした以外は実施例1と同様にしてアクチュエータ基板を作製し、分極処理を行った。なお、比較例2においては、電界補正部材40を設けていないことになる。
(比較例3)
実施例1において、分極処理装置のサンプルステージ44における電界補正部材40の直下はアース接地しなかったこと以外は実施例1と同様にしてアクチュエータ基板を作製し、分極処理を行った。
(評価)
<分極状態の評価>
実施例1〜2、比較例1〜3で作製したアクチュエータ基板について、電気特性の評価を行った。また、評価には液滴吐出の外周部に作製した電気−機械変換素子と液滴吐出の中心部に作製した電気−機械変換素子を用いて評価した。評価結果を表1に示す。
実施例1〜2については、比較例に比べ、アクチュエータ基板の中心部(ウエハ中心部)とアクチュエータ基板の外周部(ウエハ外周部)の分極率が近い値になっている。また、実施例2より実施例1の方がより近い値になっており、これは、コロナ電界がよりアクチュエータ基板の中心部とアクチュエータ基板の外周部とで同等になっているためである。これにより、分極処理の対象サンプルに近い膜構成と同等の電界補正部材を設ける方がより望ましいといえる。なお、この傾向はコロトロン方式、スコロトロン方式のいずれにおいても同じである。
一方、比較例1〜3についてはアクチュエータ基板の中心部とアクチュエータ基板の外周部とで分極率に差がみられる。これは、コロナ電界がアクチュエータ基板の中心部とアクチュエータ基板の外周部とで差が生じてしまうためである。
また、コロナワイヤ(コロナ電極41)に対してどの位置においても正対するようにサンプルステージ44が存在している方がコロナ電界は常に一定となるため、コロナワイヤが移動しても常にその下にステージが存在する四角形のステージの方がより望ましい。
また、比較例3について、サンプルステージ44における電界補正部材40が設けられる部分にはアース接地されていないことにより、コロナ電界を電気−機械変換素子が形成されているウエハ部分と同等に発生できていないことを示している。このことから、アース接地がサンプルステージ44の全面でされていることが必要である。
<吐出評価>
実施例1〜2及び比較例1〜3で作製した電気−機械変換素子を用いて、図13(B)に示される液滴吐出ヘッドを作製し、液滴の吐出評価を行った。粘度を5cpに調整したインクを用いて、単純Pull波形により−10〜−30Vの印加電圧を加えたときの吐出状況を確認したところ、すべてのノズル孔からも吐出できていることを確認した。
10 電気−機械変換素子
11 ノズル
12 ノズル板
13 基板
14 下地膜
15 第1の電極
16 電気−機械変換膜
17 第2の電極
21 第1の絶縁保護膜
22 第2の絶縁保護膜
23 共通電極パッド
24 個別電極パッド
25、26 コンタクトホール
27 第3の電極
28 第4の電極
40 電界補正部材
40a Si
40b SiO
40c Si
41 コロナ電極
42 グリッド電極
44 サンプルステージ
45 アクチュエータ基板設置部
46 アクチュエータ基板
50 ドメイン
51 ドメインの分極方向
52 電源
53 コロナワイヤ
54 平面電極
55 被対象物
81 記録装置本体
82 印字機構部
83 用紙
84 給紙カセット
85 手差しトレイ
86 排紙トレイ
91 主ガイドロッド
92 従ガイドロッド
93 キャリッジ
94 ヘッド
95 インクカートリッジ
97 主走査モータ
98 駆動プーリ
99 従動プーリ
100 タイミングベルト
101 給紙ローラ
102 フリクションパッド
103 ガイド部材
104 搬送ローラ
105 搬送コロ
106 先端コロ
107 副走査モータ
109 印写受け部材
111 搬送コロ
112、114 拍車
113 排紙ローラ
115、116 ガイド部材
117 回復装置
特許第3365485号公報 特許第4218309号公報 特許第3019845号公報 特開2004−202849号公報 特開2010−034154号公報 特開2006−203190号公報 WO2006/132193号公報

Claims (9)

  1. 基板と、
    該基板上に形成される下地膜と、
    該下地膜上に形成される少なくとも1つの下部電極と、
    該下部電極上に形成される電気−機械変換膜と、
    該電気−機械変換膜上に形成される少なくとも1つの上部電極とを備えるアクチュエータ基板に対してコロナ放電又はグロー放電により分極処理を行う分極処理装置であって、
    前記アクチュエータ基板を保持するアース接地されたステージを有し、
    該ステージの面積は前記アクチュエータ基板の面積よりも大きく、
    前記ステージ上において、前記アクチュエータ基板の外周より外側の部分には、前記基板及び前記下地膜と同じ材料を含む電界補正部材が設けられていることを特徴とする分極処理装置。
  2. 前記電界補正部材の厚みは、前記アクチュエータ基板における基板及び下地膜の厚みと同じであることを特徴とする請求項に記載の分極処理装置。
  3. 前記アクチュエータ基板は、最表面に絶縁保護膜を有し、
    前記電界補正部材は、前記基板、前記下地膜及び前記絶縁保護膜と同じ材料を含むことを特徴とする請求項に記載の分極処理装置。
  4. 前記ステージは、上面視、四角形に形成されており、前記アクチュエータ基板を保持する領域以外は前記電界補正部材で覆われていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の分極処理装置。
  5. 前記アクチュエータ基板は、前記下部電極と電気的に接続される下部電極パッドと、前記上部電極と電気的に接続される上部電極パッドを有し、
    前記上部電極パッドにコロナ放電又はグロー放電により発生した電荷を注入することにより、前記アクチュエータ基板の分極処理を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の分極処理装置。
  6. 前記コロナ放電により発生した電荷は、正電荷であることを特徴とする請求項に記載の分極処理装置。
  7. Siからなる基板と、
    該基板上に形成される下地膜と、
    該下地膜上に形成される少なくとも1つの下部電極と、
    該下部電極上に形成される電気−機械変換膜と、
    該電気−機械変換膜上に形成される少なくとも1つの上部電極とを備えるアクチュエータ基板に対してコロナ放電又はグロー放電により分極処理を行う分極処理装置であって、
    前記アクチュエータ基板を保持するアース接地されたステージを有し、
    該ステージの面積は前記アクチュエータ基板の面積よりも大きく、
    前記ステージ上において、前記アクチュエータ基板の外周より外側の部分には、Siを含む部材が設けられていることを特徴とする分極処理装置。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の分極処理装置により分極処理されたアクチュエータ基板を備えることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  9. 請求項8に記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする画像形成装置。
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